説明

アンテナ付き電子機器

【課題】 複数のアンテナコイルを有するアンテナ付き電子機器において、小型化可能にすること。
【解決手段】 電波時計は、時刻情報を含む電波信号を受信するためのアンテナ101を有しており、アンテナ101は時計ムーブメント201の輪郭から突出しないように設けられている。アンテナ101は、コア208に重ね巻きされた複数のアンテナコイル102、103を有しており、金属筐体内に収納して使用する場合には上層に巻回されインダクタンス値の大きいアンテナコイル102を使用し、プラスチック筐体内に収納して使用する場合には下層に巻回されインダクタンス値の小さいアンテナコイル103を使用することにより、筐体の種類に関係なく、小型化可能で、所定の電波受信感度を得ることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナコイルで電波を受信するアンテナ付き電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電波時計や携帯電話等のアンテナ付き電子機器が開発されている。
従来のアンテナ付き電子機器としては、コアと呼ばれるアンテナ磁芯部材にアンテナコイルを巻き電波を受信するアンテナ装置を用いている。
例えば、特許文献1、特許文献2に開示された電波時計においては、異なる複数の長波標準電波の周波数などに対応するために、コアに複数のコイルを備え、スイッチで切り換えることによってインダクタンスを変化させ、これによって同調周波数を変化可能なアンテナが開示されている。
【0003】
アンテナの受信感度は、コアの体積及びコイル体積に影響されるが、従来のような複数のコイルを備えていていると、コアの両端にあるアンテナを連結するための非巻線部が必要となる。そのため、所定の必要なコイル体積を得ようとすると、コアを大きくして各コイルの巻線回数を増やす必要があり、サイズが大きくなってしまうという問題がある。
これは特に、小型化が要求される携帯型電波時計や携帯電話等のアンテナ付き携帯型電子機器において大きな問題となる。
尚、前記特許文献1、2には、複数の同調回路を有する電波時計が開示されてはいるが、これはそれぞれ異なる周波数(例えば40kHzと60kHz)に同調させるものであり、同一の周波数に同調させるものではない。
【0004】
【特許文献1】特開2003−60520号公報の段落[0013]〜[0020]、図3、図4
【特許文献2】特許第3526874号公報の第3頁右欄〜第4頁右欄、第5図
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、複数のアンテナコイルを有するアンテナ付き電子機器において、小型化可能にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、複数のアンテナコイルを有するアンテナ付き電子機器において、前記複数のアンテナコイルは複数の層に重ね巻きされて成ることを特徴とするアンテナ付き電子機器が提供される。
ここで、前記複数のアンテナコイルのインダクタンス値は相互に相違するように構成してもよい。
また、前記複数の層に重ね巻きされた複数のアンテナコイルは、下層に巻回された第1のアンテナコイルと前記第1のアンテナコイルの上層に巻回された第2のアンテナコイルによって構成されて成り、前記第1のアンテナコイルのインダクタンス値は、前記第2のアンテナコイルのインダクタンス値よりも小さいように構成してもよい。
【0007】
また、前記第1、第2のアンテナコイルをプラスチック筐体に収納した場合には前記第1のアンテナコイルをアンテナとして使用し、前記第1、第2のアンテナコイルを金属筐体に収納した場合には前記第2のアンテナコイルをアンテナとして使用するように構成してもよい。
また、時計ムーブメントを有し、前記複数の層に巻回されたアンテナコイルは、前記時計ムーブメントの輪郭から突出しないように時計ムーブメント内に配設されて成るように構成してもよい。
また、前記各アンテナコイルの端子はリード基板に電気的に接続されて成るように構成してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数のアンテナコイルを有するアンテナ付き電子機器を小型化することが可能になる。
また、アンテナを収納する筐体の種類によって生じる受信感度の変化を抑制するように構成できる。したがって、電波時計においては、アンテナを収納する筐体に応じた受信特性の時計ムーブメントを複数種類用意する必要がなくなり、時計ムーブメントを兼用して複数種類の筐体に対応することが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係るアンテナ付き電子機器について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るアンテナ付き電子機器のブロック図であり、現在時刻の情報を含む時刻コード信号を電波信号で受信し、計時手段で計時している時刻を、前記時刻コード信号に含まれる現在時刻の情報で修正する電波時計の例を示している。
図1において、電波時計は、アンテナ101、電波受信部である電波受信IC(集積回路)104、電波時計の各構成要素を制御する制御回路105、竜頭等の操作部材106、制御回路105からの時刻信号に基づく時刻等を表示する表示手段としての表示機構107、各構成要素に駆動電力を供給する電源108を有している。
【0010】
電波受信IC104は、アンテナ101で受信した信号を増幅するAGC増幅回路、AGC増幅回路の出力信号から現在時刻を表す時刻コード信号を抽出する復調回路を有している。
表示機構107は、アナログ表示型電波時計の場合には、時針や分針を含む時刻針及びこれらの駆動機構によって構成され又、デジタル表示型電波時計の場合には、液晶表示装置等によって構成される。
【0011】
アンテナ101は、時刻情報を含む電波信号(日本では長波標準電波信号)を受信するための複数のアンテナコイル(第1のアンテナコイル103、第2のアンテナコイル102)を有している。アンテナコイル102、103は、各々、図示しないコンデンサに接続されている。アンテナコイル102、103及び対応するコンデンサは、各々、相互に同調周波数が同一で、且つ、前記電波信号の周波数(例えば40kHz)と同一同調周波数の同調回路を構成している。
【0012】
アンテナコイル102は、インダクタンス値がアンテナコイル103のインダクタンス値よりも大きく、アンテナ101を収納する筐体(外装)が金属(例えば、ステンレス、チタン)の場合に使用して良好な受信感度を得るアンテナコイルである。アンテナコイル103は、インダクタンス値がアンテナコイル102のインダクタンス値よりも小さく、アンテナ101を収納する筐体がプラスチックの場合に使用して良好な受信感度を得るアンテナコイルである。
尚、後述するように、筐体の材質等の種類に応じて、複数のアンテナコイル(アンテナコイル102とアンテナコイル103)のうちの適した特性の方を使用するように、予め製造時に選択されている。
【0013】
電波受信IC104は、アンテナコイル102を含む同調回路及びアンテナコイル103を含む同調回路のうちの、筐体の種類に応じて予め選択した同調回路で受信した電波信号を、前記復調回路で復調して現在時刻の情報を含む時刻コード信号を抽出し、前記時刻コード信号を制御回路105に出力する。制御回路105は、前記時刻コード信号に基づいて、制御回路内部に設けられている計時手段が計時している時刻を正しい現在時刻に修正し、表示機構107で表示する。これにより、表示機構107には正確な現在時刻が表示される。
このように、アンテナ101を収納する筐体の種類に応じて適切な特性を有するアンテナコイルを選択して使用するため、電波時計の筐体の材質による影響を受けることなく、良好な電波受信が可能になる。
【0014】
尚、電波受信IC104内にセレクタを設けて、アンテナコイル102、103の中のいずれのアンテナコイルの信号を受信するかを自動的に切り換えるように構成することも可能である。この場合、制御回路105は、今使用しているアンテナコイルでは、電波受信IC104から正しい時刻コード信号を受信できないような所定条件下では、電波を受信するアンテナコイルを他方に切り換えるように前記セレクタを制御する。これにより、アンテナ101を収納する筐体の材質が受信感度に与える影響を抑制して、自動的に良好な電波受信を行うことが可能になる。
【0015】
図2は、図1に示した電波時計の内部機構を示す正面図であり、図1と同一部分には同一符号を付している。
図3は、図1及び図2に示した電波時計に使用するアンテナの部分拡大正面図であり、図1及び図2と同一部分には同一符号を付している。
図4は、図1及び図2に示した電波時計に使用するアンテナの部分拡大底面図であり、図1〜図3と同一部分には同一符号を付している。
【0016】
図2〜図4において、電波時計は、円盤状の輪郭を有する時計ムーブメント201を有している。時計ムーブメント201は、円盤状の枠202を有している。枠202内には、電源108を構成する電池210、回路基板203、アンテナ101が収納されている。
回路基板203には、電波受信IC104、制御回路105等が半田付けされている。
アンテナ101は、時計ムーブメント201の輪郭から突出しないように、時計ムーブメント201輪郭内に配設されている。アンテナ101は一つの共通のコア208に、複数の層に重ね巻きされた複数のアンテナコイル102、103を有している。
前記複数のアンテナコイル102、103のインダクタンス値は相互に相違するように構成されている。下層に巻回された第1のアンテナコイル103のインダクタンス値は、上層に巻回された第2のアンテナコイル102のインダクタンス値よりも小さく構成されている。
【0017】
アンテナコイル102はアンテナ101を収納する筐体が金属の場合に使用して良好な受信感度を得るアンテナコイルであり、アンテナコイル103はアンテナ101を収納する筐体がプラスチックの場合に使用して良好な受信感度を得るアンテナコイルである。
下層に巻回されたアンテナコイル103の巻線は、上層に巻回されたアンテナコイル102の巻線よりも太い導電体の巻線によって構成されている。
【0018】
アンテナコイル102、103の端子はリード基板204に電気的に接続されている。即ち、アンテナコイル103の一端は、リード基板204に設けられた銅箔パターン207に電気的に接続され、その他端は銅箔パターン206に電気的に接続されている。また、アンテナコイル102の一端は、銅箔パターン206に電気的に接続され、その他端は銅箔パターン205に電気的に接続されている。アンテナコイル102、103の各端子とリード基板204との接続部はモールド剤401によって被われている。
【0019】
アンテナ101の製造にあたっては、アンテナコイル103用の線径の大きい導電体巻線の一端を銅箔パターン207に半田付け等の端末処理を行い、コア108に前記導電体巻線を所定回数巻回した後、前記巻線の他端について、銅箔パターン206に半田付け等の端末処理を行う。
次に、アンテナコイル103用の導電体巻線よりも線径の小さいアンテナコイル102用導電体巻線の一端を銅箔パターン206に半田付け等の端末処理を行い、アンテナコイル102の巻線の上層に前記導電体巻線を所定回数巻回した後、前記巻線の他端について、銅箔パターン205に半田付け等の端末処理を行う。
リード基板204と回路基板203は、貫通穴301を介してネジ209によって一体的に枠202に固定されており、これにより、リード基板204と回路基板203は電気的に接続されている。
【0020】
アンテナコイル102をアンテナとして使用する場合には、銅箔パターン205、206を回路基板203に電気的に接続して、アンテナコイル102を含む同調回路を電波受信IC104に接続するように半田付け等の処理を行う。一方、アンテナコイル103を使用する場合には、銅箔パターン206、207を回路基板203に電気的に接続して、アンテナコイル103を含む同調回路を電波受信IC104に接続するように半田付け等の処理を行う。尚、前記の如く、アンテナコイル102、103を自動的に選択するように構成する場合には、アンテナコイル102、103の双方を電波受信IC104に電気的に接続しておけばよい。
【0021】
ところで、前述したように、アンテナコイルを金属筐体に入れると感度が低下する。これはアンテナコイルに金属が近接することによりアンテナコイルの直列等価抵抗が増大しQ値が減少してしまうためと、アンテナ回路のインピーダンスが変化して受信回路とのインピーダンスマッチングがずれてしまうためである。また、アンテナ単体ではインダクタンスが小さい方が感度が良いが、金属筐体に封入した場合はインダクタンスが大きい方が感度が良くなる。
【0022】
この関係を図5に示す。図5は、アンテナコイルを含む同調回路のインダクタンスLと感度の関係を示す特性図で、同調回路をプラスチック筐体(外装)に収納した場合と金属筐体(外装)に収納した場合のそれぞれについてグラフにしたものである。横軸はアンテナコイルのインダクタンスL(mH)、縦軸は受信回路10との組合せによる感度(dBμV/m)である。
【0023】
図5から明らかなように、アンテナコイルのインダクタンスが大きい方(アンテナコイル102)が、金属筐体に入れた場合の感度低下の程度が軽減されるため金属筐体に対して有利な特性となる。一方プラスチックのように金属の影響が少ない筐体に封入することを想定した場合は、インダクタンスが小さい方(アンテナコイル103)が感度的には有利な特性となる。
【0024】
このように、電波時計モジュールを封入する筐体がプラスチックの場合と金属の場合ではアンテナコイルの最適なインダクタンス値が異なることから、本実施の形態のように、プラスチック筐体用と金属筐体用にそれぞれ最適化された複数のアンテナコイル(同調回路)を備えるようにして、製造時に筐体の種類に応じて適切な特性を有する方のアンテナコイルを使用するとうに選択する、あるいは、所定条件下で特性の適した方のアンテナコイルを自動的に選択するように切り換えることにより、筐体の種類に関わらず受信感度が良好で汎用性の高い電波時計モジュールを実現することができる。
【0025】
以上述べたように、本実施の形態によれば、複数のアンテナ102、103はコア208に複数の層に重ね巻きされているため、コイルを配設するスペースを削減でき、電波時計の小型化が可能になる。
また、前記のように複数のアンテナコイルが多層に巻回された構造になっているため、アンテナを収納する筐体の種類によって与えられる受信感度への影響を抑制するように構成できるので、電波時計においては、環境に対応したムーブメントを複数種類用意する必要が無くなり、ムーブメントを兼用して複数の環境に対応することができる。
また、一般に電波時計は金属の上に置かれると受信特性が変わってしまうが、そのような場合でも本実施の形態によれば置かれる環境にかかわらず最適な受信状態を実現することができるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
携帯型電波時計、携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)等のアンテナ付き携帯型電子機器をはじめとして、各種のアンテナ付き電子機器に適用することが可能である。また、筐体が金属やプラスチックの場合に限られず、種々の材料の筐体を用いたアンテナ付き電子機器に適用可能である。また、電波時計の場合、日本国のみならず米国等、周波数の異なる国で使用される電波時計にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係る電波時計のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電波時計の内部構成を示す正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電波時計に使用するアンテナの部分拡大正面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電波時計に使用するアンテナの部分拡大底面図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる電波時計の特性を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
101・・・アンテナ
102、103・・・アンテナコイル
104・・・電波受信IC
105・・・制御回路
106・・・操作部材
107・・・表示機構
108・・・電源
201・・・時計ムーブメント
202・・・枠
203・・・回路基板
204・・・リード基板
205、206、207・・・銅箔パターン
208・・・コア
209・・・ネジ
301・・・貫通穴
401・・・モールド剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナコイルを有するアンテナ付き電子機器において、
前記複数のアンテナコイルは複数の層に重ね巻きされて成ることを特徴とするアンテナ付き電子機器。
【請求項2】
前記複数のアンテナコイルのインダクタンス値は相互に相違することを特徴とする請求項1記載のアンテナ付き電子機器。
【請求項3】
前記複数の層に重ね巻きされた複数のアンテナコイルは、下層に巻回された第1のアンテナコイルと前記第1のアンテナコイルの上層に巻回された第2のアンテナコイルによって構成されて成り、
前記第1のアンテナコイルのインダクタンス値は、前記第2のアンテナコイルのインダクタンス値よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2記載のアンテナ付き電子機器。
【請求項4】
前記第1、第2のアンテナコイルをプラスチック筐体に収納した場合には前記第1のアンテナコイルをアンテナとして使用し、
前記第1、第2のアンテナコイルを金属筐体に収納した場合には前記第2のアンテナコイルをアンテナとして使用することを特徴とする請求項3記載のアンテナ付き電子機器。
【請求項5】
時計ムーブメントを有し、
前記複数の層に巻回されたアンテナコイルは、前記時計ムーブメントの輪郭から突出しないように時計ムーブメント内に配設されて成ることを特徴とする請求項1乃4のいずれか一に記載のアンテナ付き電子機器。
【請求項6】
前記各アンテナコイルの端子はリード基板に電気的に接続されて成ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載のアンテナ付き電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−140659(P2006−140659A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−327203(P2004−327203)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】