説明

アンテナ装置

【課題】 複共振化した各共振周波数のフレキシブルな調整が可能で、小型化や薄型化が可能なアンテナ装置を提供すること。
【解決手段】 絶縁性の基板本体2と、基板本体にそれぞれ金属箔でパターン形成されたグランド面GND、第1エレメント3および第2エレメント4とを備え、第1エレメントが、グランド面側に配した基端に給電点FPが設けられて延在し、途中に誘電体アンテナのアンテナ素子ATが接続されていると共に先端に第1補助アンテナ部6が接続され、第2エレメントが、第1エレメントの基端側に接続されて延在し、途中に受動素子P2が接続されていると共に先端に第2補助アンテナ部7が接続され、第1補助アンテナ部と第2補助アンテナ部とが、可撓性の薄膜導体で形成されていると共に折り返されて基板本体の上方に該基板本体との間に間隔を空けて延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数共振化が可能なアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信機器において、アンテナの共振周波数を複共振化するためには、放射電極と誘電体ブロックとを備えたアンテナや、スイッチ,制御電圧源を用いたアンテナ装置が提案されている。
例えば、誘電体ブロックによる従来技術としては、特許文献1では、放射電極を樹脂成型体に形成し、さらに誘電体ブロックを接着剤で一体化することで高効率を得る複合アンテナが提案されている。
【0003】
また、スイッチ,制御電圧源を用いた従来技術として、特許文献2では、第1の放射電極と、第2の放射電極と、第1の放射電極の途中部と第2の放射電極の基端部との間に介設され、第2の放射電極を第1の放射電極と電気的に接続又は切断させるためのスイッチとを備えるアンテナ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−81000号公報
【特許文献2】特開2010−166287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術においても、以下の課題が残されている。
すなわち、特許文献1に記載のような誘電体ブロックによる技術では、放射電極を励振する誘電体ブロックを使用しており、機器毎に誘電体ブロック、放射電極パターン等の設計が必要になり、その設計条件によってアンテナ性能が劣化したり、不安定要素が増加する不都合がある。また、放射電極が樹脂成型体の表面に形成されているため、樹脂成型体上に放射電極パターンを設計する必要があり、実装する通信機器やその用途に応じて、アンテナ設計、金型設計が必要になり、大幅なコストの増大を招いてしまう。さらに、誘電体ブロックと樹脂成型体とを接着剤で一体化するので、接着剤のQ値以外にも接着条件(接着剤の厚み、接着面積等)により、アンテナ性能が劣化したり、不安定要素が増加する不都合がある。
また、特許文献2に記載のようなスイッチ,制御電圧源を用いたアンテナ装置の場合、スイッチで共振周波数の切り替えを行うために、制御電圧源の構成やリアクタンス回路等が必要であり、アンテナ構成が機器毎に複雑化し、設計の自由度が無く、容易なアンテナ調整が困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、複共振化した各共振周波数のフレキシブルな調整が可能で、用途や機器毎に応じたアンテナ性能を安価かつ容易に確保できると共に小型化や薄型化が可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明のアンテナ装置は、絶縁性の基板本体と、該基板本体にそれぞれ金属箔でパターン形成されたグランド面、第1エレメントおよび第2エレメントとを備え、前記第1エレメントが、前記グランド面側に配した基端に給電点が設けられて延在し、途中に誘電体アンテナのアンテナ素子が接続されていると共に先端に第1補助アンテナ部が接続され、前記第2エレメントが、前記第1エレメントの基端側に接続されて延在し、途中に受動素子が接続されていると共に先端に第2補助アンテナ部が接続され、前記第1補助アンテナ部と前記第2補助アンテナ部とが、可撓性の薄膜導体で形成されていると共に折り返されて前記基板本体の上方に該基板本体との間に間隔を空けて延在していることを特徴とする。
【0008】
このアンテナ装置では、第1補助アンテナ部と第2補助アンテナ部とが、可撓性の薄膜導体で形成されていると共に折り返されて基板本体の上方に該基板本体との間に間隔を空けて延在しているので、第1,第2補助アンテナ部と基板本体上のグランド面、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子のアンテナ素子および各エレメントとの間で生じる浮遊容量を効果的に利用することで、複共振化させることができる。
また、第1補助アンテナ部と第2補助アンテナ部とが、可撓性の薄膜導体で形成されていると共に折り返されているので、第1,第2補助アンテナ部と基板本体との間隔を適宜変更可能であり、設置箇所の隙間が変化した場合や第1,第2補助アンテナ部を湾曲させて配置させなければならない場合でも、実装する筐体の配置条件にフレキシブルに対応することができる。特に、第1,第2補助アンテナ部には、アンテナ素子や受動素子を実装せず、これらを基板本体側にのみ実装することで、第1,第2補助アンテナ部の可撓性を十分に確保することができる。
また、アンテナ素子および各受動素子の選択によって、各共振周波数やインピーダンスをフレキシブルに調整可能であり、用途や機器、設計条件に応じた2共振化が可能なアンテナ装置を得ることができる。
さらに、第1,第2補助アンテナ部と基板本体の平面内の各エレメントとの延在形状で設計が可能であり、従来の誘電体ブロックや樹脂成型体等を使用する場合に比べて薄型化が可能であると共に、誘電体アンテナであるアンテナ素子の選択によって、小型化および高性能化が可能になる。また、金型、設計変更等によるコストが必要なく、低コストを実現することができる。
【0009】
第2の発明のアンテナ装置は、第1の発明において、前記第1補助アンテナ部と前記第2補助アンテナ部とが、絶縁性フィルムに金属箔でパターン形成されていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第1補助アンテナ部と第2補助アンテナ部とが、絶縁性フィルムに金属箔でパターン形成されているので、高い可撓性を得ることができると共に、絶縁性フィルムの材料として高い誘電率のものを適宜選択することで、第1,第2補助アンテナ部のパターン短縮効果が得られると共に、所望の周波数帯が低い場合や更なる小型化が要望されている場合にも対応可能になる。さらに、汎用のフレキシブルプリント基板を利用することができ、コストの低減を図ることが可能である。
【0010】
第3の発明のアンテナ装置は、第1又は第2の発明において、前記第1補助アンテナ部と前記第2補助アンテナ部との開放端が、互いに逆方向に向けて配されていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第1補助アンテナ部と第2補助アンテナ部との開放端が、互いに逆方向に向けて配されているので、互いのインピーダンスが高い部分同士が逆向きとなり、結合を抑制することができると共に、互いの間に生じる浮遊容量を効果的に利用することができる。
【0011】
第4の発明のアンテナ装置は、第1から第3のいずれかの発明において、前記第1補助アンテナ部の開放端が、前記アンテナ素子の開放端に対して逆方向に向けて配されていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第1補助アンテナ部の開放端が、アンテナ素子の開放端に対して逆方向に向けて配されているので、互いのインピーダンスが高い部分同士が逆向きとなり、結合を抑制することができると共に、互いの間に生じる浮遊容量を効果的に利用することができる。
【0012】
第5の発明のアンテナ装置は、第1から第4のいずれかの発明において、前記第1補助アンテナ部および前記第2補助アンテナ部と前記基板本体との間に、スペーサが設置されていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第1補助アンテナ部および第2補助アンテナ部と基板本体との間にスペーサが設置されているので、所定厚さに設定したスペーサにより第1,第2補助アンテナ部と基板本体との間隔を一定に保持することができる。また、スペーサの材料を高誘電体材料とすることで、第1,第2補助アンテナ部のパターン短縮効果が得られる。さらに、ゴム等の弾性材料を採用することで、衝撃吸収効果も得ることが可能である。
【0013】
第6の発明のアンテナ装置は、第1から第5のいずれかの発明において、前記基板本体に金属箔でパターン形成されていると共に前記第1エレメントの基端から延びて先端が前記給電点から離間した位置で前記グランド面に接続された第3エレメントを備え、前記第1エレメントが、前記グランド面側に配した基端に給電点が設けられていると共に前記グランド面から離間する方向に延びる第1延在部と、該第1延在部の先端から前記グランド面に沿った方向に延びる第2延在部とを有し、前記第2エレメントが、前記第1エレメントの基端から前記第1延在部から離間する方向に延びる第3延在部と、該第3延在部の先端から前記第1延在部に沿って前記グランド面から離間する方向に延びる第4延在部とを有し、前記第1補助アンテナ部が、前記第2延在部の先端から前記基板本体の上方に向けて延在する第5延在部と、該第5延在部の先端から前記第2延在部に沿って延在する第6延在部とを有し、前記第2補助アンテナ部が、前記第4延在部の先端から前記基板本体の上方に向けて延在する第7延在部と、該第7延在部の先端から前記第6延在部に沿って延在する第8延在部とを有し、前記第2延在部が、前記グランド面との間の浮遊容量を発生可能に前記グランド面に対して間隔を空けて延在していると共に途中に前記アンテナ素子が設けられていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、上記各延在部の配置により、第1延在部と第4延在部との間の浮遊容量と、第1補助アンテナ部(主に第6延在部)と第7延在部との間の浮遊容量と、第1補助アンテナ部(主に第6延在部)と第8延在部との間の浮遊容量と、第1補助アンテナ部(主に第6延在部)とアンテナ素子との間の浮遊容量と、第1補助アンテナ部(主に、第6延在部)とグランド面との間の浮遊容量と、アンテナ素子とグランド面との間の浮遊容量と、第7延在部とグランド面との間の浮遊容量と、第8延在部とグランド面との間の浮遊容量とを発生させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明のアンテナ装置によれば、第1補助アンテナ部と第2補助アンテナ部とが、可撓性の薄膜導体で形成されていると共に折り返されて、各エレメント、アンテナ素子及び受動素子が設けられた基板本体の上方に該基板本体との間に間隔を空けて延在しているので、各共振周波数をフレキシブルに調整可能であり、設計条件に応じた2共振化が可能であると共に、小型化および高性能化が可能になる。
したがって、本発明のアンテナ装置は、多様な用途や機器に対応した複共振化が容易に可能になると共に、省スペース化と配線および設置の自由度の向上とを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るアンテナ装置の一実施形態において、第1及び第2補助アンテナ部を展開させた状態(a)と折り返した状態(b)とを示す要部の平面図である。
【図2】本実施形態において、アンテナ装置を示す要部の側面図である。
【図3】本実施形態において、アンテナ素子を示す斜視図(a)、平面図(b)、正面図(c)および底面図(d)である。
【図4】本実施形態において、アンテナ装置で生じる浮遊容量を示す配線図である。
【図5】本発明に係るアンテナ装置の実施例において、2共振化におけるVSWR特性(電圧定在波比)を示すグラフである。
【図6】本発明に係るアンテナ装置の実施例において、900MHz帯の放射パターンを示すグラフである。
【図7】本発明に係るアンテナ装置の実施例において、1800MHz帯の放射パターンを示すグラフである。
【図8】本発明に係るアンテナ装置の実施例において、湾曲配置してスペーサの厚みを6mmとした場合(a)と、湾曲配置してスペーサの厚みを3mmとした場合(b)と、垂直配置してスペーサの厚みを6mmとした場合(c)とのアンテナ装置を示す要部の側面図である。
【図9】本発明に係るアンテナ装置の実施例において、湾曲配置してスペーサの厚みを6mmとした場合と、湾曲配置してスペーサの厚みを3mmとした場合と、垂直配置してスペーサの厚みを6mmとした場合との第1及び第2の共振周波数を示すグラフである。
【図10】本実施形態の他の例において、アンテナ装置を示す筐体を破断した際の要部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るアンテナ装置の一実施形態を、図1から図5を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態におけるアンテナ装置1は、図1及び図2に示すように、絶縁性の基板本体2と、該基板本体2にそれぞれ銅箔等の金属箔でパターン形成されたグランド面GND、第1エレメント3、第2エレメント4及び第3エレメント5とを備えている。
なお、グランド面GNDには、RF回路部品等の実装領域が設けられる。
【0018】
上記第1エレメント3は、グランド面GND側に配した基端に給電点FPが設けられて延在し、途中に誘電体アンテナのアンテナ素子AT及び第1受動素子P1が接続されていると共に先端に第1補助アンテナ部6が接続されている。
上記第2エレメント4は、第1エレメント3の基端側に接続されて延在し、途中に第2受動素子P2が接続されていると共に先端に第2補助アンテナ部7が接続されている。
上記第3エレメント5は、第1エレメント3の基端から延びて先端が給電点FPから離間した位置でグランド面GNDに接続されている。また、第3エレメント5の途中には、第3受動素子P3が接続されている。
【0019】
上記第1補助アンテナ部6と第2補助アンテナ部7とは、図1の(b)及び図2に示すように、可撓性の薄膜導体で形成されていると共に折り返されて基板本体2の上方に該基板本体2との間に間隔を空けて延在している。また、第1補助アンテナ部6および第2補助アンテナ部7と基板本体2との間には、スペーサ8が設置されている。
【0020】
これらの第1補助アンテナ部6と第2補助アンテナ部7とは、絶縁性フィルム9に銅箔等の金属箔でパターン形成されている。本実施形態では、絶縁性フィルム9を構成する2層のポリイミド膜の間に第1補助アンテナ部6及び第2補助アンテナ部7を構成する銅箔が設けられたフレキシブルプリント基板を採用している。なお、第1補助アンテナ部6及び第2補助アンテナ部7は、半田付けにより第1エレメント3及び第2エレメント4に接続されているが、他の接続構造を採用しても構わない。
【0021】
上記第1エレメント3は、グランド面GND側に配した基端に給電点FPが設けられていると共にグランド面GNDから離間する方向に延びる第1延在部E1と、該第1延在部E1の先端からグランド面GNDに沿った方向(対向するグランド面GNDの端辺)に延びる第2延在部E2とを有している。
上記第2エレメント4は、第1エレメント3の基端から第1延在部E1から離間する方向に延びる第3延在部E3と、該第3延在部E3の先端から第1延在部E1に沿ってグランド面GNDから離間する方向に延びる第4延在部E4とを有している。
【0022】
上記第1補助アンテナ部6は、第2延在部E2の先端から基板本体2の上方に向けて延在する第5延在部E5と、該第5延在部E5の先端から第2延在部E2に沿って延在する第6延在部E6とを有している。
上記第2補助アンテナ部7は、第4延在部E4の先端から基板本体2の上方に向けて延在する第7延在部E7と、該第7延在部E7の先端から第6延在部E6に沿って延在する第8延在部E8とを有している。
【0023】
上記第1及び第2補助アンテナ部6,7は、いずれも第1エレメント3及び第2エレメント4よりも線幅が広く設定されている。特に、第6延在部E6及び第7延在部E7は幅広に形成されており、アンテナ占有面積を大きくすると共に、アンテナ素子AT及び各エレメント間とで生じる浮遊容量を効果的に利用して広帯域化を図っている。
なお、低い共振周波数に対応する補助アンテナ部を内側(アンテナ素子ATに近い側)に配置することが好ましい。すなわち、本実施形態では、低い周波数帯である第1の周波数f1に対応する第1補助アンテナ部6を、高い周波数帯である第2の周波数f2に対応する第2補助アンテナ部7よりも内側に配置している。これにより、低い周波数帯である第1の周波数f1に対応する第1補助アンテナ部6を、アンテナ素子ATに近づけると共にグランド面GNDに設置されるRF回路部品や筐体等から遠ざけることができる。
【0024】
上記第2延在部E2は、グランド面GNDとの間の浮遊容量を発生可能にグランド面GNDに対して間隔を空けて延在していると共に途中に上記アンテナ素子ATが設けられている。
なお、上記第3エレメント5は、第1延在部E1に対して第2エレメント4と反対側に延び、途中で折れ曲がって第1延在部E1から離間した位置でグランド面GNDに接続されている。
【0025】
上記第1補助アンテナ部6と第2補助アンテナ部7との開放端は、互いに逆方向に向けて配されている。また、第1補助アンテナ部6の開放端は、アンテナ素子ATの開放端(第2延在部E2の先端側の端部)に対して逆方向に向けて配されている。
【0026】
上記基板本体2は、一般的なプリント基板であって、本実施形態では、長方形状のガラスエポキシ樹脂等からなるプリント基板の本体を採用している。
上記給電点FPは、同軸ケーブル等の給電手段を介して高周波回路(図示略)の給電点に接続される。この給電手段としては、同軸ケーブル、レセプタクル等のコネクタ、接点が板バネ形状を有する接続構造、接点がピンプローブ形状またはピン形状を有する接続構造、ハンダ付け用のランドを用いた接続構造等の種々の構造が採用可能である。
例えば、給電手段として同軸ケーブルを採用する場合、グランド面GNDの基端側に同軸ケーブルのグランド線が接続されると共に、同軸ケーブルの芯線が給電点FPに接続される。
【0027】
上記アンテナ素子ATは、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子であって、例えば図3に示すように、セラミックス等の誘電体101の表面にAg等の導体パターン102が形成されたチップアンテナである。このアンテナ素子ATは、共振周波数等の設定に応じて、その長さ、幅、導体パターン102等が互い異なる素子を選択しても構わないと共に、同じ素子を選択しても構わない。
上記第1受動素子P1〜第3受動素子P3は、例えばインダクタ、コンデンサまたは抵抗が採用される。
【0028】
第1エレメント3、第2エレメント4、第1補助アンテナ部6及び第2補助アンテナ部7は、互いの間の各浮遊容量と、グランド面GNDとの間の浮遊容量とを発生可能に、それぞれ間隔を空けて延在している。
すなわち、図4に示すように、第1延在部E1と第4延在部E4との間の浮遊容量Caと、第1補助アンテナ部6(主に第6延在部E6)と第7延在部E7との間の浮遊容量Cbと、第1補助アンテナ部6(主に第6延在部E6)と第8延在部E8との間の浮遊容量Ccと、第1補助アンテナ部6(主に第6延在部E6)とアンテナ素子ATとの間の浮遊容量Cdと、第1補助アンテナ部6(主に、第6延在部E6)とグランド面GNDとの間の浮遊容量Ceと、アンテナ素子ATとグランド面GNDとの間の浮遊容量Cf、第7延在部E7とグランド面GNDとの間の浮遊容量Cgと、第8延在部E8とグランド面GNDとの間の浮遊容量Chとが発生可能である。
【0029】
上記スペーサ8は、例えばABS等の樹脂で形成された直方体又は板状体であり、絶縁性の接着剤や両面シール等で設置されている。このスペーサ8の厚さや基板本体2上の設置位置は、アンテナ装置1の設置箇所のスペースやアンテナ素子ATの実装位置等に応じて決定される。本実施形態では、図2に示すように、スペーサ8が、基板本体2の端辺から離間した位置であって、アンテナ素子ATとグランド面GNDとの間に設置され、第1及び第2補助アンテナ部6,7が、折り返した際に湾曲して配置された状態となっている。なお、第1及び第2補助アンテナ部6,9は、絶縁性フィルム9を介してスペーサ8上面に接着剤や両面テープ等によって固定されている。
【0030】
次に、本実施形態のアンテナ装置1における共振周波数について、図5を参照して説明する。
【0031】
本実施形態のアンテナ装置1では、図5に示すように、第1の共振周波数f1および第2の共振周波数f2の2つに複共振化される。
上記第1の共振周波数f1は、2つの共振周波数のうち低い周波数帯(例えば、900MHz帯)のものであり、アンテナ素子ATと、第1エレメント3と、第1補助アンテナ部6の長さと、各浮遊容量Ca〜Cfとで決定される。
また、上記第2の共振周波数f2は、2つの共振周波数のうち高い周波数帯(例えば、1800MHz帯)のものであり、第1エレメント3と、第2エレメント4と、第2補助アンテナ部7の長さと、浮遊容量Ca,Cb,Cc,Cg,Chとで決定される。
【0032】
さらに、第1の共振周波数f1の最終的な調整は、第1受動素子P1を用いてフレキシブルに調整可能である。
また、第2の共振周波数f2の最終的な調整は、第2受動素子P2を用いてフレキシブルに調整可能である。
【0033】
また、第1の共振周波数f1におけるインピーダンスは、各浮遊容量Ca〜Cfで決定される。
また、第2の共振周波数f2におけるインピーダンスは、各浮遊容量Ca,Cb,Cc,Cg,Chで決定される。
さらに、各共振周波数に対して、第3受動素子P3を用いて、最終的なインピーダンス調整をフレキシブルに行うことができる。
【0034】
したがって、第1の共振周波数f1は、主に図4中の破線A1で囲まれた部分で調整される。
また、第2の共振周波数f2は、主に図4中の破線A2で囲まれた部分で調整される。
このように、アンテナ動作において、アンテナ素子AT及び各受動素子P1〜P3だけでなく、エレメント間の浮遊容量と、各エレメントとグランド面GNDとの間の浮遊容量と、第1及び第2補助アンテナ部6,7と各エレメントやグランド面GNDとの浮遊容量とを利用することで、アンテナ占有領域の小型化を実現することができる。
【0035】
このように本実施形態のアンテナ装置1では、第1補助アンテナ部6と第2補助アンテナ部7とが、可撓性の薄膜導体で形成されていると共に折り返されて基板本体2の上方に該基板本体2との間に間隔を空けて延在しているので、第1及び第2補助アンテナ部6,7と基板本体2上のグランド面GND、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子のアンテナ素子ATおよび各エレメントとの間で生じる浮遊容量を効果的に利用することで、複共振化させることができる。
【0036】
また、第1補助アンテナ部6と第2補助アンテナ部7とが、可撓性の薄膜導体で形成されていると共に折り返されているので、第1及び第2補助アンテナ部6,7と基板本体2との間隔を適宜変更可能であり、設置箇所の隙間が変化した場合や第1及び第2補助アンテナ部6,7を湾曲させて配置させなければならない場合でも、実装する筐体の配置条件にフレキシブルに対応することができる。特に、第1及び第2補助アンテナ部6,7には、アンテナ素子ATや受動素子を実装せず、これらを基板本体2側にのみ実装することで、第1及び第2補助アンテナ部6,7の可撓性を十分に確保することができる。
【0037】
また、アンテナ素子ATおよび各受動素子P1〜P3の選択によって、各共振周波数やインピーダンスをフレキシブルに調整可能であり、用途や機器、設計条件に応じた2共振化が可能なアンテナ装置を得ることができる。
さらに、第1及び第2補助アンテナ部6,7と基板本体2の平面内の各エレメントとの延在形状で設計が可能であり、従来の誘電体ブロックや樹脂成型体等を使用する場合に比べて薄型化が可能であると共に、誘電体アンテナであるアンテナ素子ATの選択によって、小型化および高性能化が可能になる。また、金型、設計変更等によるコストが必要なく、低コストを実現することができる。
【0038】
また、第1補助アンテナ部6と第2補助アンテナ部7とが、絶縁性フィルムに金属箔でパターン形成されているので、高い可撓性を得ることができると共に、絶縁性フィルムの材料として高い誘電率のものを適宜選択することで、第1及び第2補助アンテナ部6,7のパターン短縮効果が得られると共に、所望の周波数帯が低い場合や更なる小型化が要望されている場合にも対応可能になる。さらに、汎用のフレキシブルプリント基板を利用することができ、コストの低減を図ることが可能である。
【0039】
または、第1補助アンテナ部6と第2補助アンテナ部7との開放端が、互いに逆方向に向けて配されているので、互いのインピーダンスが高い部分同士が逆向きとなり、結合を抑制することができると共に、互いの間に生じる浮遊容量を効果的に利用することができる。
さらに、第1補助アンテナ部6の開放端が、アンテナ素子ATの開放端に対して逆方向に向けて配されているので、互いのインピーダンスが高い部分同士が逆向きとなり、結合を抑制することができると共に、互いの間に生じる浮遊容量を効果的に利用することができる。
【0040】
また、第1補助アンテナ部6および第2補助アンテナ部7と基板本体2との間にスペーサ8が設置されているので、所定厚さに設定したスペーサ8により第1及び第2補助アンテナ部6,7と基板本体2との間隔を一定に保持することができる。また、スペーサ8の材料を高誘電体材料とすることで、第1及び第2補助アンテナ部6,7のパターン短縮効果が得られる。さらに、ゴム等の弾性材料を採用することで、衝撃吸収効果も得ることが可能である。
【実施例】
【0041】
次に、本実施形態のアンテナ装置を実際に作製した実施例において、各共振周波数での2共振化におけるVSWR特性(電圧定在波比)と放射パターンとスペーサ条件を変更した場合とについて測定した結果を、図5から図9を参照して説明する。
【0042】
なお、各受動素子は、第1受動素子P1:10nH、第2受動素子P2:1.5nH、第3受動素子P3:10nHのいずれもインダクタを使用した。また、スペーサ8の厚さは、6mmとした。
図5に示すように、本発明の実施例では、第1の共振周波数f1:927.13MHz、VSWR:1.17、帯域幅(V.S.W.R≦3):82.9MHzであり、第2の共振周波数f2:1848.97MHz、VSWR:1.28、帯域幅(V.S.W.R≦3):593.1MHzであった。
【0043】
また、放射パターンの測定については、第1延在部E1の延在方向であってグランド面GNDに向かう方向をX方向とし、第2延在部E2の延在方向の逆方向をY方向とし、基板本体2の表面に対する垂直方向をZ方向とした。この際のYZ面に対する垂直偏波,水平偏波および電力利得を測定した。
【0044】
図6は、900MHz帯域の第1の共振周波数f1における放射パターン(YZ面)であり、平均電力利得が0.4dBiであった。
図7は、1800MHz帯域の第2の共振周波数f2における放射パターン(YZ面)であり、平均電力利得が−0.4dBiであった。
【0045】
次に、第1及び第2補助アンテナ部の配置条件に対する共振周波数の影響を確認した結果を、図8に示す。ここでは、湾曲配置してスペーサ8の厚みを6mmとした場合(図8の(a))と、湾曲配置してスペーサ8の厚みを3mmとした場合(図8の(b))と、垂直配置してスペーサ8の厚みを6mmとした場合(図8の(c))とで、それぞれ第1及び第2の共振周波数f1,f2の変化を測定して比較した。なお、上記湾曲配置とは、第1及び第2補助アンテナ部6,7を、基板本体2から上方に一旦、斜め方向に向けて湾曲状態で延在させた後にスペーサ8上面に沿って設置した場合であり、上記垂直配置とは、第1及び第2補助アンテナ部6,7を、基板本体2から上方に一旦、垂直方向に向けて延在させた後にスペーサ8上面に沿って設置した場合である。
【0046】
また、垂直配置してスペーサ8の厚みを6mmとした場合(図8の(c))では、スペーサ8を基板本体2の端辺近傍であって、図1におけるアンテナ素子ATの右側に設置している。
この結果からわかるように、各配置に対して共振周波数は、900/1800MHz帯共に±1%程度のわずかな変化に抑えられており、第1及び第2補助アンテナ部の配置に帯する周波数変動が少なく、実装する機器毎の対応が容易であることがわかる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0048】
例えば、上記実施形態では、第2延在部にアンテナ素子を設けたが、第4延在部にもアンテナ素子を設けても構わない。この場合、第4延在部のアンテナ素子により、第2エレメントの長さを短縮することができ、アンテナ占有面積が狭い場合などに好適である。
また、第4延在部へのアンテナ素子の採用により浮遊容量Caを大きく得ることもできる。
【0049】
さらに、上記実施形態のようにフレキシブルプリント基板を利用して第1及び第2補助アンテナ部を設けることが好ましいが、他の可撓性の導体薄膜で形成しても構わない。例えば、可撓性を有した薄型のガラエポ基板を用いてその上に第1及び第2補助アンテナ部を銅箔等の金属箔でパターン形成したものでも構わない。
【0050】
また、上記実施形態では、第1及び第2補助アンテナ部を設けたフレキシブルプリント基板を、スペーサ上に取り付けて基板本体上方に設置しているが、他の例として、図10に示すように、スペーサを用いず、第1及び第2補助アンテナ部6,7を設けたフレキシブルプリント基板を、アンテナ装置が内蔵される通信機器等の筐体20の内面に接着剤や両面テープ等で貼り付けることで、基板本体2上方に延在するように設置しても構わない。
【符号の説明】
【0051】
1…アンテナ装置、2…基板本体、3…第1エレメント、4…第2エレメント、5…第3エレメント、6…第1補助アンテナ部、7…第2補助アンテナ部、8…スペーサ、AT…アンテナ素子、E1…第1延在部、E2…第2延在部、E3…第3延在部、E4…第4延在部、E5…第5延在部、E6…第6延在部、E7…第7延在部、E8…第8延在部、GND…グランド面、P1…第1受動素子、P2…第2受動素子、P3…第3受動素子、FP…給電点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基板本体と、
該基板本体にそれぞれ金属箔でパターン形成されたグランド面、第1エレメントおよび第2エレメントとを備え、
前記第1エレメントが、前記グランド面側に配した基端に給電点が設けられて延在し、途中に誘電体アンテナのアンテナ素子が接続されていると共に先端に第1補助アンテナ部が接続され、
前記第2エレメントが、前記第1エレメントの基端側に接続されて延在し、途中に受動素子が接続されていると共に先端に第2補助アンテナ部が接続され、
前記第1補助アンテナ部と前記第2補助アンテナ部とが、可撓性の薄膜導体で形成されていると共に折り返されて前記基板本体の上方に該基板本体との間に間隔を空けて延在していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記第1補助アンテナ部と前記第2補助アンテナ部とが、絶縁性フィルムに金属箔でパターン形成されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンテナ装置において、
前記第1補助アンテナ部と前記第2補助アンテナ部との開放端が、互いに逆方向に向けて配されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナ装置において、
前記第1補助アンテナ部の開放端が、前記アンテナ素子の開放端に対して逆方向に向けて配されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナ装置において、
前記第1補助アンテナ部および前記第2補助アンテナ部と前記基板本体との間に、スペーサが設置されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置において、
前記基板本体に金属箔でパターン形成されていると共に前記第1エレメントの基端から延びて先端が前記給電点から離間した位置で前記グランド面に接続された第3エレメントを備え、
前記第1エレメントが、前記グランド面側に配した基端に給電点が設けられていると共に前記グランド面から離間する方向に延びる第1延在部と、該第1延在部の先端から前記グランド面に沿った方向に延びる第2延在部とを有し、
前記第2エレメントが、前記第1エレメントの基端から前記第1延在部から離間する方向に延びる第3延在部と、該第3延在部の先端から前記第1延在部に沿って前記グランド面から離間する方向に延びる第4延在部とを有し、
前記第1補助アンテナ部が、前記第2延在部の先端から前記基板本体の上方に向けて延在する第5延在部と、該第5延在部の先端から前記第2延在部に沿って延在する第6延在部とを有し、
前記第2補助アンテナ部が、前記第4延在部の先端から前記基板本体の上方に向けて延在する第7延在部と、該第7延在部の先端から前記第6延在部に沿って延在する第8延在部とを有し、
前記第2延在部が、前記グランド面との間の浮遊容量を発生可能に前記グランド面に対して間隔を空けて延在していると共に途中に前記アンテナ素子が設けられていることを特徴とするアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−26861(P2013−26861A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160366(P2011−160366)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】