説明

アーク溶接方法

【課題】よりきれいなウロコ状のビードを形成可能なアーク溶接方法を提供すること。
【解決手段】消耗電極と母材との間に溶接電流を、絶対値の平均値が第1の値であるように流すことにより、アークを発生させつつ溶滴移行させる第1工程(S2)と、上記溶接電流を、絶対値の平均値が上記第1の値より小さい第2の値であるように流し、上記アークが発生している状態を継続させる第2工程(S5)と、を備え、上記第1工程(S2)と上記第2工程(S5)とを繰り返すアーク溶接方法であって、上記第2工程(S5)において、上記消耗電極と上記母材との間の溶接電圧Vfaが、上記第1工程(S2)における上記消耗電極と上記母材との間の溶接電圧に従って設定される目標電圧値Vdsとなるように上記消耗電極の送給速度Vfを修正する(S11)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーク溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、従来の溶接システムの一例を示す図である。同図における溶接システム91は、いわゆるステッチパルス溶接法を用いて溶接を行う。ステッチパルス溶接法とは、溶接時の入熱と冷却をコントロールすることにより、母材に与える熱影響を抑えやすい溶接法である。このステッチパルス溶接法を用いると、従来の薄板溶接に比べ、溶接外観を向上させ、溶接歪み量を低減させることができるとされている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
マニピュレータ9Mは、母材9Wに対してアーク溶接を自動で行うものであり、上アーム93、下アーム94及び手首部95と、これらを回転駆動するための複数のサーボモータ(図示せず)とによって構成されている。
【0004】
アーク溶接トーチ9Tは、マニピュレータ9Mの手首部95の先端部分に取り付けられており、ワイヤリール96に巻回された直径1mm程度の溶接ワイヤ97を母材9Wの教示された溶接位置に導くためのものである。溶接電源9WPは、アーク溶接トーチ9Tと母材9Wとの間に溶接電圧を供給する。母材9Wに溶接を行う際は、溶接ワイヤ97をアーク溶接トーチ9Tの先端から所望の突き出し長だけ突き出した状態で行われる。
【0005】
コンジットケーブル92は、内部に溶接ワイヤ97を案内するためのコイルライナ(図示せず)を備えており、アーク溶接トーチ9Tに接続されている。さらにコンジットケーブル92は、溶接電源9WPからの電力及びガスボンベ98からのシールドガスをもアーク溶接トーチ9Tに供給する。
【0006】
操作手段としてのティーチペンダント9TPは、いわゆる可搬式操作盤であって、マニピュレータ9Mの動作、ステッチパルス溶接を行わせるために必要な条件等を設定するためのものである。
【0007】
ロボット制御装置9RCは、マニピュレータ9Mに溶接動作の制御を実行させるためのものであり、内部に主制御部、動作制御部およびサーボドライバ(いずれも図示せず)等を備えている。そして、作業者がティーチペンダント9TPによって教示した作業プログラムに基づき、サーボドライバからマニピュレータ9Mの各サーボモータに動作制御信号を出力し、マニピュレータ9Mの複数の軸をそれぞれ回転させる。ロボット制御装置9RCは、マニピュレータ9Mのサーボモータに備えられたエンコーダ(図示せず)からの出力によって現在位置を認識しているのでアーク溶接トーチ9Tの先端位置を制御することができる。そして溶接部においては、以下に説明する溶接、移動、冷却を繰り返しながらステッチパルス溶接を行う。
【0008】
図11は、ステッチパルス溶接を行っているときの状態を説明するための図である。溶接ワイヤ97はアーク溶接トーチ9Tの先端から突出している。シールドガスGは、溶接開始時から溶接終了時まで常に一定の流量でアーク溶接トーチ9Tから吹き出される。以下、ステッチパルス溶接時の各状態について説明する。
【0009】
同図(a)は、アーク発生時の様子を示している。設定された溶接電流および溶接電圧に基づいて、溶接ワイヤ97の先端と母材9Wとの間にアークaが発生し、溶接ワイヤ97が溶融して母材9Wに溶融池Yが形成される。アークaが発生してから、教示された溶接時間が経過した後に、アークaを停止する。
【0010】
同図(b)は、アーク停止後の様子を示している。アーク停止後は、設定された冷却時間が経過するまで溶接後の状態を維持させる。すなわち、マニピュレータ9Mおよびアーク溶接トーチ9Tは溶接時の状態と同様に停止した状態で、アーク溶接トーチ9TからシールドガスGが吹き出されるだけとなるので、溶融池YがシールドガスGによって実質的に冷却されて凝固する。
【0011】
同図(c)は、アーク溶接トーチ9Tを次の溶接位置に移動させる様子を示している。冷却時間の経過後は、アーク溶接トーチ9Tを溶接進行方向に予め設定された移動ピッチMpだけ離間した位置であるアーク再開始点に移動させる。このときの移動速度は、設定された移動速度である。移動ピッチMpは、同図(c)で示すように溶融池Yが凝固した後の溶接痕Y’の外周側に溶接ワイヤ97を位置づけるように調整された距離である。
【0012】
同図(d)は、アーク再開始点においてアークaを再発生する様子を示している。溶接痕Y’の前端部に新たに溶融池Yが形成されて溶接が行われるようになる。このように、ステッチパルス溶接システム91では、アークを発生させて溶接を行っている状態と、冷却、移動を行っている状態とが交互に繰り返されることになる。そして、溶接痕であるウロコが重ね合わさるように溶接ビードが形成される。
【0013】
図12は、溶接施工後に形成される溶接ビードを説明するための図である。同図に示すように、最初のアーク開始点P1において溶接痕Scが形成され、溶接進行方向Drに向けて移動ピッチMpだけ離間した再アーク開始点P2においても同様の溶接痕Scが形成される。再アーク開始点P3以降においてもさらなる溶接痕Scが順次形成されていく。このように、溶接痕Scであるウロコが重なり合うように形成された結果、ウロコ状の溶接ビードBが形成されるのである。
【0014】
上述した方法では、図11(b)、図11(c)等に示したように、アークaを停止させ、その後アークaを再発生させる工程を繰り返している。アークaを再発生するには時間を要する。そのため、上述した方法では、溶接時間が長くなるといった問題が生じていた。また、アークaを再発生させるたびに、スパッタが発生し、溶接ビードBの外観が悪化するといった問題もあった。そこで、図13に示すように、アークaを停止させずアークaの再発生を不要にする溶接法が提案されている(たとえば特許文献2参照)。
【0015】
図13(b)、図13(c)によく表れているように、図11(b)、図11(c)に示した場合と異なり、溶融池Yを冷却する際にもアークaを停止させておらず、アークaが発生している状態を保っている。これにより、溶接時間の短縮化が図られている。また、アークaを再発生させる必要がなくなっているため、スパッタの発生を抑制することが可能になっている。この場合、たとえば、溶接を行う際にはパルス電流を用い、溶融池Yの冷却を行う際には直流電流を用いる方法が知られている。
【0016】
しかしながら、図13(b)、図13(c)に示すように、溶融池Yを冷却する際には、溶滴移行を防止すべく溶接電流を極めて小さくする必要がある。溶接電流が小さくなれば、溶融池Yを冷却している際にアーク切れが頻発する。アーク切れが頻発すると、溶接ビードBの外観の悪化を招いてしまう。このように、図13に示す方法は、溶接ビードBの外観の悪化を防止するのに十分ではなかった。
【0017】
また、さらに、パルス電流から直流電流に切り替える際に、溶接ワイヤ97と母材9Wとの間隔が小さくなってしまうことがある。このような場合、アークaの長さが変化することになり、アークaの圧力が変化することになる。このとき、溶融池Yが振動し、溶接ビードBの外観が悪化することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平6−55268号公報
【特許文献2】特開平11−267839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、よりきれいなウロコ状のビードを形成可能なアーク溶接方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によって提供されるアーク溶接方法は、消耗電極と母材との間に溶接電流を、絶対値の平均値が第1の値であるように流すことにより、アークを発生させつつ溶滴移行させる第1工程と、上記溶接電流を、絶対値の平均値が上記第1の値より小さい第2の値であるように流し、上記アークが発生している状態を継続させる第2工程と、を備え、上記第1工程と上記第2工程とを繰り返すアーク溶接方法であって、上記第2工程において、上記消耗電極と上記母材との間の溶接電圧が、上記第1工程における上記消耗電極と上記母材との間の溶接電圧に基いて設定される目標電圧値となるように上記消耗電極の送給速度を修正することを特徴とする。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記目標電圧値は、上記第1工程における上記消耗電極と上記母材との間の溶接電圧の平均値となるように設定される。
【0022】
このような構成によれば、上記第2工程における上記溶接電圧が、上記第1工程における上記溶接電圧の平均値となるように、上記消耗電極の送給速度を修正するため、上記第1工程から上記第2工程へ移行した際に大きな電圧変化が生じにくくなっている。このため、上記アークの長さが上記第1工程と上記第2工程とで大きく変化しにくくなっている。したがって、アーク長さが急激に変化するのを防ぐことができ、より美しい外観の溶接ビードを実現可能である。
【0023】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1工程は、パルス電流区間と、上記パルス電流区間の後に行われる電流値が一定となる一定区間を有しており、上記一定区間において上記消耗電極と上記母材との間の溶接電圧の平均値が予め定められた溶接電圧値となるように調整が行われており、上記第1工程が上記一定区間であるときに、上記第2工程への移行が行われる。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第2工程における上記溶接電流は、直流電流である。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第2工程においては、上記溶接電流に対して定電流制御を行う。
【0026】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に用いられる溶接システムの一例の構成を示す図である。
【図2】図1に示した溶接システムの内部構成を示す図である。
【図3】図2に示した送給速度設定回路の内部構成を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかるアーク溶接方法を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態にかかる溶接システムの各信号等のタイミングチャートを示す図である。
【図6】溶滴移行期間における溶接電流の変化を示す図である。
【図7】アーク継続期間における溶接電圧とアーク長の関係を示す図である。
【図8】送給速度設定回路における電圧差と送給速度差分との関係を示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態にかかるアーク溶接方法における溶滴移行期間における溶接電流の変化を示す図である。
【図10】従来の溶接システムの一例の構成を示す図である。
【図11】ステッチパルス溶接を行っているときの状態を説明する図である。
【図12】溶接施工後に形成される溶接ビードを説明するための図である。
【図13】ステッチパルス溶接を行っているときの状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0029】
図1は、本発明のアーク溶接方法を実施するための溶接システムの一例の構成を示す図である。
【0030】
図1に示された溶接システムAは、溶接ロボット1、ロボット制御装置2、および溶接電源装置3を備えている。溶接ロボット1は、母材Wに対してたとえばアーク溶接を自動で行うものである。溶接ロボット1は、ベース部材11、複数のアーム12、複数のモータ13、溶接トーチ14、ワイヤ送給装置16、およびコイルライナ19を備えている。
【0031】
ベース部材11は、フロア等の適当な箇所に固定される。各アーム12は、ベース部材11に軸を介して連結されている。
【0032】
溶接トーチ14は、溶接ロボット1の最も先端側に設けられた手首部12aの先端部に設けられている。溶接トーチ14は、消耗電極としてのたとえば直径1mm程度の溶接ワイヤ15を、母材W近傍の所定の位置に導くものである。溶接トーチ14には、Arなどのシールドガスを供給するためのシールドガスノズル(図示略)が備えられている。モータ13は、アーム12の両端または一端に設けられている(一部図示略)。モータ13は、ロボット制御装置2により回転駆動する。この回転駆動により、複数のアーム12の移動が制御され、溶接トーチ14が上下前後左右に自在に移動できるようになっている。
【0033】
モータ13には、図示しないエンコーダが設けられている。このエンコーダの出力は、ロボット制御装置2に与えられる。この出力値により、ロボット制御装置2では、溶接トーチ14の現在位置を認識するようになっている。
【0034】
ワイヤ送給装置16は、溶接ロボット1における上部に設けられている。ワイヤ送給装置16は、溶接トーチ14に対して、溶接ワイヤ15を送り出すためのものである。ワイヤ送給装置16は、送給モータ161、ワイヤリール(図示略)、およびワイヤプッシュ手段(図示略)、を備えている。送給モータ161を駆動源として、上記ワイヤプッシュ手段が、上記ワイヤリールに巻かれた溶接ワイヤ15を溶接トーチ14へと送り出す。ワイヤプッシュ手段としては、たとえば、交流サーボモータが用いられる。
【0035】
コイルライナ19は、その一端がワイヤ送給装置16に、その他端が溶接トーチ14に、それぞれ接続されている。コイルライナ19は、チューブ状に形成されており、その内部には、溶接ワイヤ15が挿通されている。コイルライナ19は、ワイヤ送給装置16から送り出された溶接ワイヤ15を、溶接トーチ14に導くものである。送り出された溶接ワイヤ15は、溶接トーチ14から外部に突出して消耗電極として機能する。
【0036】
図2は、図1に示した溶接システムAの内部構成を示す図である。
【0037】
図1、図2に示したロボット制御装置2は、溶接ロボット1の動作を制御するためのものである。図2に示すように、ロボット制御装置2は、動作制御回路21とインターフェイス回路22とによって構成されている。
【0038】
動作制御回路21は、図示しないマイクロコンピュータおよびメモリを有している。このメモリには、溶接ロボット1の各種の動作が設定された作業プログラムと後述するデータベースとが記憶されている。また動作制御回路21は、後述のロボット移動速度VRを設定する。動作制御回路21は、上記作業プログラム、上記エンコーダからの座標情報、およびロボット移動速度VR等に基づいて、溶接ロボット1に対して動作制御信号Mcを与える。この動作制御信号Mcにより、各モータ13は回転駆動し、溶接トーチ14を母材Wの所定の溶接開始位置に移動させたり、母材Wの面内方向に沿って移動させたりする。
【0039】
動作制御回路21には、図示しない操作設定装置が接続されている。この操作設定装置は、ユーザによって各種動作を設定するためのものである。
【0040】
データベースは、たとえば、母材Wの材質と、溶接ワイヤ15の材質および直径と、ロボット移動速度VRと、後述するアーク継続期間T2において流すべき直流電流の値との対応を示す表として上記メモリに記憶されている。上記操作設定装置を介して母材Wの材質と、溶接ワイヤ15の材質および直径とが入力され、さらにロボット移動速度VRが設定されたとき、動作制御回路21はデータベースを参照して直流電流の値を決定する。
【0041】
インターフェイス回路22は、溶接電源装置3と各種信号をやり取りするためのものである。インターフェイス回路22には、動作制御回路21から、電流設定信号Is、出力開始信号On、および送給速度設定信号Wsが送られる。
【0042】
溶接電源装置3は、溶接ワイヤ15と母材Wとの間に、溶接電圧Vwを印加し、溶接電流Iwを流すための装置であるとともに、溶接ワイヤ15の送給を行うための装置である。図2に示すように、溶接電源装置3は、出力制御回路31、電流検出回路32、送給速度設定回路33、送給制御回路34、インターフェイス回路35、および電圧検出回路36を備えている。
【0043】
インターフェイス回路35は、ロボット制御装置2と各種信号をやり取りするためのものである。具体的には、インターフェイス回路35には、インターフェイス回路22から、電流設定信号Is、出力開始信号On、および送給速度設定信号Wsが送られる。
【0044】
出力制御回路31は、複数のトランジスタ素子からなるインバータ制御回路を有する。出力制御回路31は外部から入力される商用電源(たとえば3相200V)をインバータ制御回路によって高速応答で精密な溶接電流波形制御を行う。
【0045】
出力制御回路31は、溶接トーチ14の先端に設けられたコンタクトチップを介して、溶接ワイヤ15と母材Wとの間に溶接電圧Vwを印加し、溶接電流Iwを流す。出力制御回路31の出力は、一端が溶接トーチ14に接続され、他端が母材Wに接続されている。これにより、溶接ワイヤ15の先端と母材Wとの間にアークaが発生する。このアークaによりもたらされる熱で溶接ワイヤ15が溶融する。そして、母材Wに対して溶接が施されるようになっている。
【0046】
出力制御回路31には、インターフェイス回路35,22を介して、動作制御回路21からの電流設定信号Is、および出力開始信号Onが送られる。さらに、出力制御回路31は、溶接ワイヤ15に流れる溶接電流Iwを検出する電流検出回路32から溶接電流Iwに対応する電流検出信号Idを受信する。
【0047】
電圧検出回路36は、溶接電圧Vwを検出するためのものである。電圧検出回路36は、溶接電圧Vwに対応する電圧検出信号Vdを出力制御回路31および送給速度設定回路33に出力する。
【0048】
送給速度設定回路33は、電圧検出信号Vdに基づいて算出される修正信号Dsを送給制御回路34へと出力する回路である。
【0049】
図3には、送給速度設定回路33の内部構造を示している。送給速度設定回路33は、電圧検出信号Vdを受信し、分離して出力する電圧分離回路331と、分離された信号をそれぞれ受信する演算回路332,333とを備えている。さらに、演算回路332,333の演算結果の差を増幅して出力する誤差増幅回路334と、誤差増幅回路334からの信号に応じて溶接ワイヤ15の送給速度を増減させる修正信号Dsを出力する修正信号出力回路335とを備えている。
【0050】
送給制御回路34は、溶接ワイヤ15の送給を行うための送給制御信号Fcを送給モータ161に出力するものである。送給制御信号Fcは、溶接ワイヤ15の送給速度Vfを示す信号である。また、送給制御回路34には、インターフェイス回路35,22を介して、動作制御回路21からの出力開始信号Onと、送給速度設定回路33からの送給速度設定信号Wsおよび修正信号Dsとが送られる。
【0051】
次に、本発明にかかるアーク溶接方法の第1実施形態について、図4〜図6を参照しつつ説明する。図4は本実施形態のアーク溶接方法の手順を示している。
【0052】
図5(a)は、ロボット移動速度VRの変化状態を示し、(b)は溶接電流Iwの変化状態を示す。ロボット移動速度VRは、母材Wの面内方向のうちの所定の溶接進行方向(図9に示した従来技術の溶接進行方向Drに対応する)に沿った溶接トーチ14の移動速度である。
【0053】
まず、外部からの溶接開始信号St(図2参照)が入力されることにより、過渡的な溶接開始処理(S1)が行われる。溶接開始処理(S1)においては、動作制御回路21は、出力開始信号Onを出力制御回路31および送給制御回路34に出力する。出力制御回路31は、溶接ワイヤ15と母材Wとの間に溶接電圧Vwを印加する。これにより、アークaが点弧される。
【0054】
溶接開始処理(S1)の完了後に、溶滴移行期間T1を開始する(S2)。溶滴移行期間T1の完了後、アーク継続期間T2(S5)を開始し、溶接終了の確認(S13)を行う。たとえばユーザから溶接終了の指示が出されている場合(S13=Yes)には、動作制御回路21は溶接終了処理を行って溶接を終了させる。溶接終了の指示が出ていない場合(S13=No)には、再度溶滴移行期間T1を開始する工程(S2)へ戻る。なお、溶接終了の確認(S13)は、溶滴移行期間T1の完了後に行っても構わない。その場合、アーク継続期間T2の終了後(S12=Yes)には自動的に溶滴移行期間T1を実施する。
【0055】
このようなアーク溶接方法では、図5に示すように、溶滴移行期間T1とアーク継続期間T2とを繰り返すことにより溶接が行われる。溶滴移行期間T1においては、溶接電流Iw1を流すことにより溶滴移行を行い、溶融池を形成する。一方、アーク継続期間T2においては、溶接電流Iw2を流すことにより、溶滴移行をほとんどさせることなく、且つ、アークaを維持しつつ溶接トーチ14を移動させる。以下具体的に説明する。
【0056】
溶滴移行期間T1では、従来技術の説明において図11(a)、図13(a)で示した、溶融池Yを形成する処理を行う。溶滴移行期間T1においては、図5(a)に示すように、ロボット移動速度VRを0に設定する。そのため溶接トーチ14は母材Wに対して停止している。同図(b)に示すように、溶接電流Iwとして、絶対値の平均値が電流値iw1である交流のパルスの溶接電流Iw1が流れている。溶滴移行期間T1においては、定電圧制御がなされている。定電圧制御では、溶接電流Iwは、溶接ワイヤ15の材質、直径、溶接ワイヤ15の突出し長さ、電極極性等の溶接条件が決定されれば、溶接ワイヤ15の送給速度Vfにより定まる。すなわち、溶接電流Iw1は、送給速度設定信号Wsにより設定される。溶接ワイヤ15の送給速度Vfは、たとえば650〜1000cm/minである。また、溶滴移行期間T1は、たとえば0.4〜0.5secである。
【0057】
図6は、溶接電流Iw1の時間変化を詳細に示す図である。図5においては、理解の便宜上、溶接電流Iw1は簡略化して示しているが、溶接電流Iw1は図6に示すような交流パルス電流である。図6における電流値iw1は、図5における電流値iw1に一致する。図6における時間のスケールは、図5における時間のスケールに比べ極めて小さい。図6において、溶接電流Iwを示す縦軸は、溶接ワイヤ15が陽極となったときに流れる電流をプラスとしている。
【0058】
本図から理解されるように、溶接電流Iw1は、周期Teにおいて電極プラス極性電流Iepと電極マイナス極性電流Ienとを1回ずつとる。周期Teは、たとえば20msec程度である。電極プラス極性電流Iepは、溶接ワイヤ15が陽極、母材Wが陰極となった状態で流れる電流である。電極プラス極性電流Iepは、プラス極性ピーク電流Ippと、プラス極性ベース電流Ipbとを含む。プラス極性ピーク電流Ippは、電極プラス極性期間Tppの間、流れる。電極プラス極性期間Tppは、たとえば2msecである。プラス極性ピーク電流Ippの絶対値Ieppは、たとえば300〜350Aである。一方、プラス極性ベース電流Ipbは、電極プラス極性期間Tpbの間、流れる。電極プラス極性期間Tpbは、たとえば14msecである。プラス極性ベース電流Ipbの絶対値Iepbは、たとえば30〜80Aである。
【0059】
電極マイナス極性電流Ienは、溶接ワイヤ15が陰極、母材Wが陽極となった状態で流れる電流である。電極マイナス極性電流Ienは、電極マイナス極性期間Tenの間、流れる。電極マイナス極性期間Tenは、たとえば3.0〜4.0msecである。電極マイナス極性電流Ienの絶対値Ienpは、たとえば50〜100Aである。
【0060】
プラス極性ピーク電流Ipp、プラス極性ベース電流Ipb、電極マイナス極性電流Ien、電極プラス極性期間Tpp、および電極マイナス極性期間Tenは、所定値に設定される。電極プラス極性期間Tpbは、溶接電圧Vwの平均値が予め定められた溶接電圧設定値と等しくなるようにフィードバック制御される。この制御によってアークaの長さが適正値に制御される。プラス極性ピーク電流Ipp、プラス極性ベース電流Ipb、および電極マイナス極性電流Ienの絶対値について時間平均した値が、電流値iw1に一致する。電流値iw1は、たとえば90Aである。
【0061】
さらに溶滴移行期間T1中に、溶接電圧Vwに対応する電圧検出信号Vdを受信した電圧分離回路331は、電圧検出信号Vdを演算回路332へと送信する(S3)。溶滴移行期間T1の終了後に、演算回路332は、溶滴移行期間T1における溶接電圧Vwの平均値を算出し、その平均値を目標電圧値Vdsとして誤差増幅回路334へ出力する(S4)。なお、本実施形態では、電極プラス極性期間Tpbは、溶接電圧Vwの平均値が予め定められた溶接電圧設定値と等しくなるようにフィードバック制御されていることから、目標電圧値Vdsとして予め定められた溶接電圧設定値を出力する手法をとることも可能である。
【0062】
図4に示すアーク継続期間T2では、従来技術の説明において図13(b),(c)で示した、溶融池Yを冷却する処理を、アークaを継続させつつ行う。アーク継続期間T2は、たとえば0.2〜0.3secである。
【0063】
アーク継続期間T2の開始時(S5)には、図5(a)に示すように、ロボット移動速度をV2に設定する。これにより溶接トーチ14は、所定の溶接進行方向に沿って移動を開始する。V2は、たとえば100cm/minである。ロボット移動速度をV2に設定した後速やかに直流電流値is1の設定を行う(S6)。
【0064】
直流電流値is1の設定(S6)は、動作制御回路21のメモリに記憶されたデータベースを参照して、ロボット移動速度VRがV2である場合に対応する値が自動的に選択されることによって行われる。アーク継続期間T2においては、溶接電流Iwは、図5(b)に示すように、この直流電流値is1を溶接電流Iw2として流れるように制御される。直流電流値is1は、たとえば5〜20A程度である。直流電流値is1は、溶滴移行が行われにくい程度の小さい値である。また、溶接電流Iw2は、溶接ワイヤ15が陽極、母材Wが陰極となった状態で流れる、いわゆる電極プラス極性電流である。なお溶接ワイヤ15は、母材Wに向かって溶滴移行期間T1における値より小さな値の送給速度Vfで送給される(図示略)。この送給速度Vfは、たとえば70cm/minである。送給速度Vfは予め直流電流値is1と対応するように作業プログラムに組み込まれた値であり、送給速度設定信号Wsにより動作制御回路21から送給速度設定回路33を経由して送給制御回路34へ送信される。
【0065】
図7は、送給速度設定回路33が機能していない場合に、アーク継続期間T2において溶接電圧Vwがとりうる挙動を示している。アーク継続期間T2においては定電流制御を行っている。すなわち、電流検出回路32からの電流検出信号Idに基づいて、出力制御回路31において溶接電流Vwを制御することにより、溶接電流Iwを一定としている。
【0066】
定電流の実現を目的として溶接電圧Vwを増減させる原因の一つに、溶接ワイヤ15と母材Wとの距離Dの変動がある。距離Dは、直接的に計測および制御している物理量ではないため、溶接の条件によって変動しうる。たとえば、母材Wの平坦度、溶接ロボット1のティーチング精度、溶接ワイヤ15の送給を阻害するように働く摩擦力などが挙げられる。距離Dが小さくなった場合、定電流を保つためには、溶接電圧Vwを小さくする制御がなされる。一方、距離Dが大きくなった場合、定電流を保つためには、溶接電圧Vwを大きくする制御がなされる。
【0067】
本実施形態においては、送給速度設定回路33は、アーク継続期間T2が開始された後、所定時間待機(S7)し、その間、溶接電圧Vwに対応する電圧検出信号Vdを受信する。待機する時間は、たとえば10ミリ秒〜数10ミリ秒の範囲から適宜設定される。電圧分離回路331は、この間に受信した電圧検出信号Vdを演算回路333へと送信する。演算回路333は、受信した電圧検出信号Vdから待機時間中における平均電圧値Vfaを算出して誤差増幅回路334へ送信する(S8)。
【0068】
誤差増幅回路334は、平均電圧値Vfaが、先に受信した目標電圧値Vdsからどれだけずれているかを検出し、その誤差を増幅し、誤差増幅信号Evを修正信号出力回路335へ送信する(S9)。誤差増幅信号Evによって伝達される増幅電圧差ΔVは、(Vfa―Vds)に正の定数をかけた値となる。修正信号出力回路335は、誤差増幅信号Evによって伝達された増幅電圧差ΔVに応じた修正信号Dsを送給制御回路34へ送信する(S10)。
【0069】
本実施形態では、修正信号出力回路335は、誤差増幅信号Evによって伝達された増幅電圧差ΔVに応じて送給速度差分ΔWsを決定する。この決定には、たとえば図8に示すグラフが用いられる。図8に示すように、増幅電圧差ΔV=0、すなわち平均電圧値Vfaが目標電圧値Vdsと等しい場合には、送給速度差分ΔWsは0に設定される。また、増幅電圧差ΔVの絶対値が、電圧差閾値ΔVth以下である場合、送給速度差分ΔWsは0に設定される。増幅電圧差ΔVの絶対値が電圧差閾値ΔVthよりも大である場合、図示されたグラフにしたがって送給速度差分ΔWsが設定される。本実施形態においては、増幅電圧差ΔVと送給速度差分ΔWsとがステップ状の関係とされている。修正信号出力回路335は、送給速度差分ΔWsを送給速度設定信号Wsに足し合わせる処理を行い、修正信号Dsとして送給制御回路34へ送信する。
【0070】
送給制御回路34は、修正信号Dsを受信すると、それに基づいて溶接ワイヤ15の送給速度Vfを修正する(S11)。なお、溶接ワイヤ15の送給速度Vfの修正をより精密に行うために、溶接トーチ14の先端付近に交流サーボモータを設置して溶接ワイヤ15の送給速度Vfの調整を行えるようにしてもよい。
【0071】
その後、アーク継続期間T2を終了させる時間かどうかの確認を行う(S12)。アーク継続期間T2を終了させる時間である場合(S12=Yes)には溶接終了の確認を行う(S13)。アーク継続期間T2を終了させる時間ではない場合(S12=No)には、再度所定時間待機する工程(S7)へ戻り、上述の工程を繰り返す。
【0072】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0073】
本実施形態によれば、上述した要因によって溶接ワイヤ15と母材Wとの距離Dが変動した場合、その変動に応じて増幅電圧差ΔVが変動する。送給速度設定回路33は、この増幅電圧差ΔVに基づいて、送給速度Vfを増減速させる制御を行う。この送給速度Vfの増減速は、平均電圧値Vfaが、目標電圧値Vdsに近づくように行われる。この結果、アークaの長さが、平均電圧値Vfaが目標電圧値Vdsをとるときの、望ましい長さに保たれることとなる。したがって、アークaの長さが長くなりすぎてアーク切れが生じたり、アークaの長さが短くなりすぎて短絡が生じたりするといった事態を回避することができる。これは、アーク溶接を安定して継続するとともに、溶接ビードの外観が乱れてしまうことを防止するのに適している。
【0074】
本実施形態では、目標電圧値Vdsが、直前に行われた溶滴移行期間T1における溶接電圧Vwの平均値として算出されている。このため、溶滴移行期間T1からアーク継続期間T2へ移行した際に、溶接電圧Vwが変化しにくくなっている。
【0075】
さらに、本実施形態によれば、アーク継続期間T2における溶接電流Iwの直流電流値is1は、動作制御回路21のメモリに記憶されたデータベースを参照して、ロボット移動速度VRに対応する値が自動的に選択されることによって行われる。このため、ユーザが直流電流値is1の設定を行う必要がなくなっており、ユーザの操作負担の軽減に加え、溶接結果のユーザの技術への依存度が低くなる。従って、本発明のアーク溶接方法は、ユーザの技術不足や経験不足によって溶接の出来が悪くなることを防ぐことができ、アーク溶接を安定して継続するとともに、溶接ビードの外観が乱れてしまうことを防止するのに適している。
【0076】
増幅電圧差ΔVが電圧差閾値ΔVth以下である場合に、送給速度差分ΔWsを0とすることにより、微小な増幅電圧差ΔVの発生によって送給速度Vfが頻繁に加減速されることを防止することができる。意図しない頻繁な加減速は、その加減速量が微小であっても不当なハンチングなどを誘発するおそれがある。本実施形態によれば、そのような制御の乱れを抑制することができる。電圧差ΔVと送給速度差分ΔWsとをステップ状に設定することは、増幅電圧差ΔVと送給速度差分ΔWsとの関係をたとえばテーブルの形態でデータ入力および保持することが可能であり使い勝手がよい。
【0077】
次に、本発明にかかるアーク溶接方法の第2実施形態について、図9を参照しつつ説明する。本実施形態におけるアーク溶接方法は、上述したアーク溶接方法と同様に、溶接システムAを用い、溶滴移行期間T1とアーク継続期間T2とを交互に繰り返すことにより行われる。図9には本実施形態におけるアーク溶接方法の溶滴移行期間T1の終期における溶接電流Iwの波形を示している。さらに、本実施形態におけるアーク溶接方法では、以下に示す方法により目標電圧値Vdsを決定する。なお、その他の手順は、上述したアーク溶接方法と同様である。
【0078】
図9に示すように、溶接電流Iw1は、溶接ワイヤ15の極性が+となるEP期間Tepおよび溶接ワイヤ15の極性が−となるEN期間Tenからなる単位周期Teを繰り返している。EP期間Tepにおいて、溶接電流Iw1は、電極プラス極性電流Iepとなる。EN期間Tenにおいて、溶接電流Iw1は、電極マイナス極性電流Ienとなる。電極マイナス極性電流Ienは、一定の値iw1nで流れる。一方、電極プラス極性電流Iepは、ピーク値iw1pをとるように増減する。
【0079】
EP期間Tepは、電極プラス極性電流Iepがピーク値iw1pをとるピーク期間Tpと、ピーク期間Tpよりも前の前半期間である増加期間Tuと、ピーク期間Tpよりも後の後半期間である減少期間Tdおよび一定期間Tbと、で構成されている。増加期間Tuは、電極マイナス極性電流Ienから電極プラス極性電流Iepに切り替わったときから開始される。増加期間Tuの間、溶接電流Iw1は増加する。溶接電流Iw1の電流値がピーク値iw1pに到達した時点で増加期間Tuは終了し、ピーク期間Tpの開始となる。ピーク期間Tpの間、溶接電流Iw1の値はピーク値iw1pのままである。ピーク期間Tpの終了後、減少期間Tdが開始される。減少期間Tdの間、溶接電流Iw1は減少する。溶接電流Iw1の電流値が、所定の値iw1dまで減少した時点で減少期間Tdは終了し、一定期間Tbが開始される。一定期間Tbの間、溶接電流Iw1の電流値は、一定の値iw1dで流れる。この一定期間Tbの終了後に、電極プラス極性電流Iepから電極マイナス極性電流Ienへの切り替えが行われる。
【0080】
ピーク値iw1p、値iw1n,iw1d、ピーク期間Tp、および、EN期間Tenは、所定値に設定される。一定期間Tbは、溶接電圧Vwの平均値が予め定められた溶接電圧設定値と等しくなるようにフィードバック制御される。この制御によってアークaの長さが適正値に制御される。
【0081】
EN期間Tenにおいては、溶接ワイヤ15が陰極側となっているため、溶接ワイヤ15の先端で溶滴が成長しやすい傾向がある。逆にEP期間Tepにおいては、ピーク値iw1pをとり、溶接ワイヤ15に大きな電磁ピンチ力が働くため、溶滴が落下しやすい傾向がある。溶滴が落下した後に、EN期間Tenに入り、再度溶滴が成長する。このように、1単位周期Teの間に1個の溶滴が溶接ワイヤ15から母材Wへ移行する。
【0082】
本実施形態では、一定期間Tbの間に、溶滴移行期間T1からアーク継続期間T2への移行を行う。さらに、目標電圧値Vdsを、一定期間Tbに行われるフィードバック制御に用いられる予め定められた溶接電圧設定値とする。この方法によれば、目標電圧値Vdsを溶滴移行期間T1ごとに算出する必要がなくなり、送給速度設定回路33の煩雑化を防ぐことができる。
【0083】
本実施形態のアーク溶接方法によると、一定期間Tbとこれに続くアーク継続期間T2のアーク長をほとんど同じとすることが可能である。このため、溶滴移行期間T1からアーク継続期間T2へ移行する際に、溶融池が振動しにくく、溶接ビードの外観が乱れにくくなっている。
【0084】
さらに、溶滴移行期間T1からアーク継続期間T2へ移行する際に、溶接ワイヤ15の先端に比較的大きな溶滴が残りにくくなっており、アーク継続期間T2中に不当に大きな溶滴が形成されるのを防ぐことができる。
【0085】
本発明の範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の具体的構成は、種々に設計変更自在である。上記実施形態では、増幅電圧差ΔVと送給速度差分ΔWsとをステップ状関係としたが、増幅電圧差ΔVと送給速度差分ΔWsとの関係をたとえば線形としてもよい。電圧差閾値ΔVthを設定することは安定した送給速度制御に好ましいが、電圧差閾値ΔVthを用いない制御を行ってもよい。
【0086】
上記では、溶接電流Iw1が交流のパルス電流である例を示したが、本発明はこれに限られず、溶接電流Iw1が直流の定電流等であってもよい。もちろん、溶接電流Iw2についても同様のことがいえる。
【符号の説明】
【0087】
A 溶接システム
1 溶接ロボット
11 ベース部材
12 アーム
12a 手首部
13 モータ
14 溶接トーチ
15 溶接ワイヤ(消耗電極)
16 ワイヤ送給装置
161 送給モータ
2 ロボット制御装置
21 動作制御回路
22 インターフェイス回路
3 溶接電源装置
31 出力制御回路(電流制御手段)
32 電流検出回路
33 送給速度設定回路(送給速度設定手段)
331 電圧分離回路
332,333 演算回路
334 誤差増幅回路
335 修正信号出力回路
34 送給制御回路
35 インターフェイス回路
36 電圧検出回路
D 距離
W 溶接母材(母材)
St 溶接開始信号
On 出力開始信号
Ws 送給速度設定信号
ΔWs 送給速度差分
Mc 動作制御信号
Fc 送給制御信号
VR ロボット移動速度
Iw,Iw1,Iw2 溶接電流
iw1 電流値(第1の値)
Vf 送給速度
Vw 溶接電圧
Vfa 平均電圧値
Vds 目標電圧値
ΔV 増幅電圧差
ΔVth 電圧差閾値
T1 溶滴移行期間(第1の期間)
T2 アーク継続期間(第2の期間)
Iep 電極プラス極性電流
Ien 電極マイナス極性電流
Ipp プラス極性ピーク電流
Ipb プラス極性ベース電流
Te 周期
Tep EP期間
Ten EN期間
Tpp,Tpb 電極プラス極性期間
Ten 電極マイナス極性期間
is1 直流電流値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消耗電極と母材との間に溶接電流を、絶対値の平均値が第1の値であるように流すことにより、アークを発生させつつ溶滴移行させる第1工程と、
上記溶接電流を、絶対値の平均値が上記第1の値より小さい第2の値であるように流し、上記アークが発生している状態を継続させる第2工程と、を備え、
上記第1工程と上記第2工程とを繰り返すアーク溶接方法であって、
上記第2工程において、上記消耗電極と上記母材との間の溶接電圧が、上記第1工程における上記消耗電極と上記母材との間の溶接電圧に基いて設定される目標電圧値となるように上記消耗電極の送給速度を修正することを特徴とする、アーク溶接方法。
【請求項2】
上記目標電圧値は、上記第1工程における上記消耗電極と上記母材との間の溶接電圧の平均値となるように設定される、請求項1に記載のアーク溶接方法。
【請求項3】
上記第1工程は、パルス電流区間と、上記パルス電流区間の後に行われる電流値が一定となる一定区間を有しており、上記一定区間において上記消耗電極と上記母材との間の溶接電圧の平均値が予め定められた溶接電圧値となるように調整が行われており、
上記第1工程が上記一定区間であるときに、上記第2工程への移行が行われる、請求項2に記載のアーク溶接方法。
【請求項4】
上記第2工程における上記溶接電流は、直流電流である、請求項1ないし3のいずれかに記載のアーク溶接方法。
【請求項5】
上記第2工程においては、上記溶接電流に対して定電流制御を行う、請求項4に記載のアーク溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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