説明

インクジェット用圧着用紙及び印字方法、並びに印画物

【課題】耐水強度が高く、耐水性、印字品質に優れ、接着剤組成物の劣化が生ずることのないインクジェット用圧着用紙を提供する。
【解決手段】パルプを主成分とする基材シート10と、該基材シート10を折り畳んだ際に対向する面に塗被される接着剤組成物13と、を有するインクジェット用圧着用紙1であって、基材シート10には、湿潤紙力剤が含有されており、接着剤組成物13は、少なくとも、コールドシール剤と、p−クレゾール・ジシクロペンタジエン・イソブチレンの反応生成物と、PDMAE類とを含み、p−クレゾール・ジシクロペンタジエン・イソブチレンの反応生成物は、コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、0.5〜3質量部配合され、PDMAE類は、コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、5質量部以上配合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用圧着用紙及び印字方法、並びに印画物に関し、特に、印字品質、インクの耐水性、耐水強度に優れ、黄ばみや、圧着後の予期せぬ開封不良の生ずることのないインクジェット用圧着用紙、印字方法、並びに印画物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、郵送コストの低減を目的とし、親展情報を記録した基材シートを二つ折り、又は三つ折に折り畳みされてなり親展性を持つ圧着用紙(例えば、圧着ハガキ等)が封書に代わり普及しつつある。この圧着用紙は、基材シートを二つ折り、又は三つ折に折り畳んだ際に該基材シートの対向する面の少なくとも一方の面に圧力により接着可能な再剥離型の接着剤組成物(例えば、感圧接着剤)が設けられた構成をとる。そして、この圧着用紙にレーザービーム方式等により親展情報を印刷し、印刷された親展情報が内側になるように(親展情報を隠蔽するように)基材シートを折り畳んだ状態で加圧することで、基材シート同士が圧着され、圧着された状態で受取人等に郵送等される。かかる圧着用紙によれば、郵送段階では、親展情報が外部から確認されることはなく、圧着用紙を受信した受取人等が、接着剤組成物を剥離することではじめて親展情報を確認することができる。
【0003】
ところが、レーザービーム方式による印刷では、トナー定着のために圧着用紙を加熱する必要がある。そうすると、その加熱によって不快臭が発生したり、加熱により接着剤組成物の劣化が進んだ場合には、接着力が低下し予期せぬ開封不良が発生することとなる。さらには、接着剤組成物が劣化した場合には圧着用紙に「黄ばみ」が発生し、視認性を著しく低下させる虞がある。
【0004】
ところで、最近レーザービーム方式に代わる印字方式として、水溶性インクを用いるインクジェット方式が注目されている。このインクジェット方式は、印刷と同様に巻取紙に直列ノズル連続インクジェット方式で直接印字を行う方式である。インクジェット方式によれば、ランニングコストが安く、最大300m/minにも達する高速印字によって大量の情報処理が可能となる。また、インクジェット方式に用いられる水溶性インクは、染料が5〜6質量%程度であって、その他の大部分は水分であることから、誘電率が高く、発熱に対する効率がよいという性質を有する。
【0005】
この場合、圧着用紙には、圧着用紙に当然に要求される機能のほか、水溶性インクを使用対象とする一般的なインクジェット用紙と同程度の、印字品質、インクの耐水性、インクの乾燥性が要求される。特に、基材シート上に設けられた接着剤組成物上に水溶性インクを用いて親展情報等の印字を行う場合において、該接着剤組成物の耐水性が悪い場合には、印字のにじみや、印字後に水に濡れた場合には、インクが流出してしまい、印字品質が低下することとなる。また、上記のように接着剤組成物が劣化した場合には、「黄ばみ」や、接着力が低下することによる予期せぬ開封不良が生ずることとなる。そこで、接着剤組成物には、高い耐水性のほか、圧着後の予期せぬ開封不良を生じさせることのない接着強度と、「黄ばみ」を生じさせることのない耐侯性が要求されている。
【0006】
また、圧着紙が、郵送中または郵便受け等で雨水等によりぬれてしまうと基材シートの表面および基材シート中の強度が低下し、基材シートの裂け、基材シートの破れなどの問題が生じ親展情報が消失してしまう等の重大な問題が生ずる。したがって、基材シートには、水に濡れてしまった場合であっても、裂けや破れが生ずることのない、高い耐水強度が要求されている。
【0007】
このような状況下、特許文献1には、天然ゴムを主成分とする接着剤と、ポリジメチルアミンエピクロルヒドリンとを含む接着剤組成物が基材シート上に設けられた圧着用紙が提案されている。特許文献1に提案されている圧着用紙によれば、接着剤組成物に耐水性を付与することができ、インクジェット方式における印字適性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4131692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に提案されている圧着用紙によれば、インクジェット方式における印字適性を向上させることができるものの、接着剤組成物の劣化による予期せぬ開封不良や、経時的な「黄ばみ」の発生を防止することができない。
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、インクに対する高い「耐水性」を有し、圧着後の予期せぬ開封不良や、「黄ばみ」の発生を防止でき、「印字適性」に優れ、かつ、優れた「耐水強度」を備えたインクジェット用圧着用紙及び印字方法並びに印画物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、パルプを主成分とする基材シートと、該基材シートを折り畳んだ際に対向する面に塗被される接着剤組成物とを有するインクジェット用圧着用紙であって、前記基材シートには、湿潤紙力剤が含有されており、前記接着剤組成物は、少なくとも、コールドシール剤と、下記の一般式1で示される化合物と、ポリジメチルアミンエピクロルヒドリン及び/又は変性ジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物とを含み、前記一般式1で示される化合物は、前記コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、0.5〜3質量部の範囲内で配合され、前記ポリジメチルアミンエピクロルヒドリン及び/又は変性ジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物は、前記コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、5質量部以上配合されていることを特徴とする。
【化1】

【0012】
この構成によれば、基材シートに含まれる湿潤紙力剤により基材シートに高い「耐水強度」を付与することができ、印字・圧着後のインクジェット用圧着用紙が、郵送中または郵便受け等で雨水等により濡れてしまった場合であっても、基材シートの裂け、基材シートの破れ等が生ずることがない。また、接着剤組成物には、コールドシール剤に加え、ポリジメチルアミンエピクロルヒドリン及び/又は変性ジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物が上記の範囲で含有されることから、インクに対する「耐水性」を向上させることができる。これにより、インクジェット方式により、接着剤組成物上に印字を行った場合に、印字の滲みや、水に濡れた際にインキが流れ出る等の問題が生ずることがなく、「印字品質」を向上させることができる。さらに、接着剤組成物には、上記一般式1で示される化合物が上記の範囲で含有されることから、接着剤組成物が劣化することによる予期せぬ開封不良や、「黄ばみ」の発生を防止することができる。
【0013】
また、前記湿潤紙力剤は、前記基材シートの固形分総質量に対し0.05〜2質量%の範囲内で含有されていてもよく、前記湿潤紙力剤が、ポリアミドエポキシ樹脂であってもよい。また、前記コールドシール剤が、(メタ)アクリル変性天然ゴムラテックスであってもよい。
【0014】
また、上記課題を解決するための本発明は、インクジェットプリンタを用いて、圧着用紙を折り畳んだ際に対向する面に所定情報の印字を行うための印字方法であって、前記圧着用紙が、少なくともパルプと湿潤紙力剤とを含む基材シートと、該基材シートを折り畳んだ際に対向する面に塗被される接着剤組成物とを有し、前記接着剤組成物は、少なくとも、コールドシール剤と、一般式1で示される化合物と、ポリジメチルアミンエピクロルヒドリン及び/又は変性ジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物と、シリカと、を含み、前記一般式1で示される化合物は、前記コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、0.5〜3質量部の範囲内で配合され、前記ポリジメチルアミンエピクロルヒドリン及び/又は変性ジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物は、前記コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、5質量部以上配合されていることを特徴とするインクジェット用圧着用紙であることを特徴とする。
【0015】
また、前記所定情報を、水溶性インクにより形成してもよい。
【0016】
本発明の印字方法によれば、印字時の環境にかかわらず、「印字品質」の高い印字が可能となる。また、固定情報の印字と、可変情報の印字をインクジェット方式により一時に行うことができる。
【0017】
また、前記所定情報を、水溶性インクにより形成することとしてもよい。本発明のインクジェット用圧着用紙は、基材シートおよび接着剤組成物ともに「耐水性」に優れることから、水溶性インクにより所定情報を印字して形成した場合であっても、印字品質の高い印字が可能となり、水溶性インクを用いた印字に特に好適に使用することができる。
【0018】
また、上記課題を解決するための本発明は、上記の特徴を有する印字方法により所定情報が形成された印画物であることを特徴とする。本発明の印画物によれば、印字品質が高く、接着剤組成物の劣化による予期せぬ開封不良や、「黄ばみ」の発生のない印画物とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のインクジェット用圧着用紙によれば、インクジェット方式による「印字品質」を向上させることができるほか、印字・圧着後に、郵送中または郵便受け等で雨水等により濡れてしまった場合であっても、基材シートの裂け、基材シートの破れ等が生ずることもない。さらに、接着剤組成物が劣化し、接着剤組成物の「接着力」が低下することによる予期せぬ開封不良や、「黄ばみ」の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のインクジェット用圧着用紙の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のインクジェット用圧着用紙の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明のインクジェット用圧着用紙の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のインクジェット用圧着用紙の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の実施例にかかるインクジェット用圧着用紙の概略斜視図であり、(a)は圧着前の概略斜視図、(b)は圧着後の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の圧着用紙について図面を用いて具体的に説明する。なお図1〜図4は、本発明の圧着用紙の層構成を示す概略断面図である。
【0022】
図示するように本発明のインクジェット用圧着用紙は、パルプを主成分とする基材シート10と、該基材シートを折り畳んだ際に対向する面に塗被される接着剤組成物13とから構成されている。
【0023】
図1は、2つ折タイプのインクジェット用圧着用紙の層構成を示す断面図であり、図中のA部分を基点としてX方向に折り畳むことで、5c面と5d面とが対向する構成をとる。そして、対向する面である5c面、5d面の双方の面に接着剤組成物13が設けられる。なお、本発明のインクジェット用圧着用紙は、基材シート10を任意の位置を基点として折り畳んだ際に対向する面に接着剤組成物13が設けられていればよく、この要件を具備するものであれば接着剤組成物13が設けられる位置について特に限定されることはない。また、いずれの箇所を起点として折り畳むかについても限定されることはなく、本発明のインクジェット用圧着用紙は、2つ折、後述するZ折以外にも適用可能である。また、図2に示すように、図1に示す構成において、折り畳んだ際に対向しない面(5a面、5b面)にも接着剤組成物13が設けられた構成としてもよい。後述するように、本発明の接着剤組成物13は、インクジェット方式による印字におけるインクの「耐水性」、「印字品質」に優れることから、折り畳んだ際に対向しない面に、インクジェット方式で、固定情報の印刷(プレ印刷)を行う際に、この構成を好適に使用することができる。
【0024】
また、必ずしも基材の一方の面の全面に接着剤組成物13が設けられている必要もなく、例えば図3に示す構成とすることもできる。図3は、3つ折(Z折り)タイプのインクジェット用圧着用紙の層構成を示す断面図であり、図中のA1部分を基点としてX方向に、A2部分を基点としてY方向それぞれ折り畳むことで、15b面と15c面とが対向し、15d面と15e面とが対向する構成をとる。この場合には、対向する面である15b面と15c面の双方の面、及び15d面と15e面の双方の面に接着剤組成物13が設けられる。なお、上記で説明したように、この場合においても、図4に示すように、折り畳んだ際に対向しない面(15f面、15a面)に接着剤組成物13を設ける構成とすることができる。
【0025】
本発明のインクジェット用圧着用紙1は、基材シート10に、湿潤紙力剤が含有されており、接着剤組成物13は、少なくとも、コールドシール剤と、一般式1で示される化合物(p−クレゾール・ジシクロペンタジエン・イソブチレンの反応生成物)と、ポリジメチルアミンエピクロルヒドリン及び/又は変性ジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物とから構成され、一般式1で示される化合物は、コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、0.5〜3質量部の範囲内で配合され、ポリジメチルアミンエピクロルヒドリン及び/又は変性ジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物は、コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、5質量部以上配合されていることを特徴とする。以下、本発明のインクジェット用圧着用紙1の各構成についてさらに詳細に説明する。
【化2】

【0026】
(基材シート)
本発明のインクジェット用圧着用紙1に使用される基材シート10に含まれるパルプについて特に制限はなく、圧着用紙の分野で用いられる従来公知のパルプを適宜選択して用いることができる。例えば、バージンパルプを原料パルプとする非再生紙や古紙パルプを原料パルプとする再生紙等が挙げられる。具体的には、バージンパルプとして、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、亜硫酸パルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)、ケミグランドパルプ(CGP)、漂白パルプ(BPGW)等が挙げられる。また、古紙パルプとして、漂白処理された古紙パルプ等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上を同時に用いることができる。
【0027】
また、ブロッキングを防止するためには、基材シート10に熱がこもらないことが好ましい。換言すれば、基材シート10の透気度は低いことが好ましい。このような点を考慮すると、基材シート10は、JIS P 8120に準拠したカナディアンフリーネスが380〜480mLの範囲に叩解された原料パルプであることが好ましい。カナディアンフリーネスが380〜480mLの範囲に叩解された原料パルプを用いることで基材シート10の透気度を低下させることができ、透気度が上昇することによるブロッキングの発生を防止することができる。中でも、基材シート10が、カナディアンフリーネスが上記範囲の広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)の混合物からなることが好ましく、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を45〜60質量%、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を30〜55質量%混合してなる基材シート10がより好ましい。
【0028】
(湿潤紙力剤)
また、本発明のインクジェット用圧着用紙1を構成する基材シート10には、圧着用紙1に、高い「耐水強度」を付与させるための湿潤紙力剤が含有されている。湿潤紙力剤を基材シート10に含有させることにより、基材シート10の湿潤引張強度を高くすることができ、水に濡れても破れにくいインクジェット用圧着用紙1を提供することができる。湿潤紙力剤について特に限定はされず、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂、ポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂などの樹脂を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、本発明においては、ポリアミドエポキシ樹脂を好適に使用することができる。ポリアミドエポキシ樹脂は、上記に例示される樹脂の中でも、特に良好な湿潤紙力を有することから、インクジェット用圧着用紙1の耐水強度をより向上させることができる。さらに、ポリアミドエポキシ樹脂は非ホルマリン系であることから環境の面からも好ましい。
【0029】
湿潤紙力剤の含有量について特に限定はないが、基材シート10(固形分)100質量部に対して0.05質量部より少ないと、湿潤紙力剤の材料によっては、基材シート10に所望の湿潤紙力を付与することができない虞があり、2質量部を超えると、基材シート10の原料の化学的バランスが崩れ、製造時において白水の発泡等が生じてしまう虞がある。このような点を考慮すると、湿潤紙力剤の含有量は、基材シート10(固形分)100質量部に対して、0.05質量部以上2質量部以下であることが好ましい。
【0030】
(接着剤組成物)
基材シート10を任意の位置で折り畳んだ際に、基材シート10同士が対向する面の少なくとも一方の面には、基材シート10から剥離可能に接着剤組成物13が設けられている。接着剤組成物13は、通常の状態では接着性や粘着性を示さず、折り畳んだ状態でシーラー等での加圧処理を行うことにより接着性を発現する組成物である。本発明のインクジェット用圧着用紙1を構成する接着剤組成物13は、コールドシール剤と、上記の一般式1で示される化合物(p−クレゾール・ジシクロペンタジエン・イソブチレンの反応生成物)と、ポリジメチルアミンエピクロルヒドリン及び/又は変性ジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物(以下、ポリジメチルアミンエピクロルヒドリン及び変性ジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物をPDMAE類と略称する場合がある。)とから構成される。
【0031】
接着剤組成物を構成するコールドシール剤は、天然ゴム系ラテックスを主体とし、圧着により基材シート同士を接着する感圧接着剤としての機能を果たす。天然ゴム系ラテックスについて特に限定はないが、耐ブロッキング性等を考慮すると、天然ゴムを無硫黄加硫し(メタ)アクリル酸メチルと混合した天然ゴムラッテクス、天然ゴムと(メタ)アクリル酸メチルをグラフト重合させて得られた天然ゴムラテックスが好適である。
【0032】
この天然ゴム系ラテックスの乳化剤は蛋白質であって、多量のアンモニアを添加することによってアニオン系分散液となっている。接着剤組成物に「耐水性」を付与するためにカチオン性ポリマーや多価金属塩等の従来公知の耐水化剤を含有させた場合には、アニオン系分散液と耐水化剤とが反応し凝集若しくは著しい増粘が起こることとなり、アニオン系分散液と耐水化剤を同時に混合することができない。
【0033】
本発明者らは、上記のコールドシール剤と混合した場合であっても、凝集若しくは増粘が起こることのない耐水化剤について鋭意研究した結果、塗料調製時のコールドシール剤の濃度が20%以下となる条件で、強撹拌下にPDMAE類を添加すると、コールドシール剤100質量部に対し5質量部付近で等電点となり粘度はピークに達し、これを過ぎるとカチオン系に変換し、PDMAE類の添加量が増加するに従って系の粘度が低下することを見出した。さらに、この間凝集塊を生成しないことを見出した。このように安定化にイオン返しができることは、PDMAE類が比較的低分子で、天然ゴムラテックス自体の分散剤が両性物質からなることによるものと推定される。
【0034】
したがって、本発明の接着剤組成物中には、コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、5質量部以上のポリジメチルアミンエピクロルヒドリン及び/又は変性ジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物(PDMAE類)が配合される。変性ジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物は、ポリジメチルアミンアンモニアエピクロルヒドリン及びポリジメチルアミンエチレンジアミンエピクロルヒドリンである。
【0035】
PDMAE類は、コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、5質量部以上の範囲であればよく、その上限について特に限定はないが、40質量部より多い場合には過剰スペックとなるほか、その分接着剤組成物中のコールドシール剤の含有量が減少し、接着剤としての機能が低下する虞がある。この点を考慮すると、PDMAE類は、コールドシール剤100質量部に対し5〜40質量部、好ましくは8〜30質量部の範囲内で配合されていることが好ましい。
【0036】
PDMAE類の分子量は10,000乃至100,000、より望ましくは10,000乃至30,000であり、カチオン当量は6.0〜7.5meq/gである。この分子量はPEOを基準物質として、高速液体クロマトグラフィーによって求めたものであり、カチオン当量はPDMAE類の固形分1gを1/400規定ポリビニル硫酸カリウム溶液でコロイド滴定し、トルイジンブル−0.1%溶液を指示薬として、青から赤紫に変化した時点の容量ml(CV値という)を4で除した数値である。
【0037】
PDMAE類は、後述する微細鉱物粉末の分散剤として用いてもよいが、予め通常のアニオン系分散剤で微細鉱物粉末を分散したものにコールドシール剤を加え、その後に加えることとしてもよい。コールドシール剤100質量部に対し、PDMAE類5質量部未満では殆ど流動性を失うほどの増粘が起き、5質量部以上で流動性が出てくることから、この5質量部に近づく付近で等電点に達したとみることができる。従って実用的には8質量部まで増量し、完全にカチオン性として流動性を与えた方がよい。この状態で保持すると分散質の電荷の再配列が起こり、残部のポリカチオンを追加したときの分散が良好で粘度が著しく低下する。
【0038】
なお、このような2段添加としなくても、ポリカチオンを連続的に混合したときは、著しい増粘現象を経ずに容易に接着用塗料が得られるが、上記2段添加の場合よりも粘度はやや高くなる。
【0039】
これらカチオン系の接着剤塗料では、等電点をピークとしてポリカチオンの増量に従って、実用的濃度では粘度が低下するので、要求される耐水性に応じて自由にポリカチオン量を調節することができる。また、カルシウム、マグネシウムの塩酸、硫酸、硝酸等の水に対する溶解度の高い塩類を併用することによって、ポリカチオン量を節約することも可能である。本発明は耐水性を同一としたときの接着剤組成中のポリカチオン量が少ないのが特徴であるが、このことはプレ印刷時の印刷適性を保持する上で有利である。
【0040】
接着剤組成物中に、微細鉱物粉末が含まれていていることが好ましい。接着剤組成物中に微細鉱物粉末を含有させることで、接着力のコントロールを所望の範囲内に容易に設定することが可能となる。微細鉱物粉末の含有量について特に限定はないが、コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、100〜250質量部の範囲内で含有されていることが好ましい。微細鉱物粉末としては、従来公知の微細鉱物粉末を適宜選択して使用可能であるが、印字適性を考慮すると、超微細無定形シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク、ゼオライト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム等一般に塗工用顔料に使用できる鉱物粉末が好ましい。中でも、微細鉱物粉末としてシリカを含有させた場合には、常温程度の低温下での乾燥が可能となることから、従来印字後に行われる乾燥工程における乾燥を、常温程度の乾燥温度で行うことができ、乾燥時の熱による接着剤組成物の劣化を防止できる点で好ましく用いることができる。これらの鉱物粉末で、二次粒子を形成しているものは3μm以下のものを使用することが望ましい。圧着時にかかる強度の線圧で大径2次粒子が崩壊し易く、親展面の印字部と重複した部分が剥離する際に対向面に移行し、転写事故となる頻度が高くなるためである。
【0041】
後添加に用いるポリカチオンは、ポリアルキレンポリアミンポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリアミドアミン(多塩基酸又はそのアルキルエステルとポリアルキレンポリアミンとの反応生成物)の鉱酸塩、1ポリアミドアミンエピクロルヒドリン、2−プロペンアミンハイドロクロライドホモポリマー、ポリアリルアミン、アリルアミン・ジアリルアミン共重合物、ポリビニルアミン等一般に耐水化剤として利用できるものは使用できるが、PDMAE類以外では、ポリアミドアミン鉱酸塩、ポリアミドアミン部分エピクロルヒドリン縮合物、2−プロペンアミンハイドロクロライドホモポリマー等が耐水性で特に優れている。ポリカチオンの基材シートへの塗布量は総計で片面当たりの0.4〜1.0g/m2(固形分)であり、望ましくは0.5〜0.7g/m2である。
【0042】
多価金属塩類については染料の不溶化に効果があり、特にカルシウム及びマグネシウムの塩酸、硝酸、硫酸塩が染料中の塩と置換して不溶化した染料生成物を形成するのに役立つ。これによって、ポリカチオンの添加量を節約することができる。
【0043】
また、接着剤組成物中には、上記一般式1で示される化合物(p−クレゾール・ジシクロペンタジエン・イソブチレンの反応生成物)が含まれる。上記一般式1で示される化合物(p−クレゾール・ジシクロペンタジエン・イソブチレンの反応生成物)は、軟化点約105℃、分子量600〜700の白色状粉末であり、公知のアニオン性乳化剤で平均粒子径が1〜2μmになるように乳化エマルジョン化して使用される。
【0044】
上記一般式1で示される化合物は、コールドシール剤の劣化を防止する機能を奏する。したがって、上記の一般式1で示される化合物を含む接着剤組成物13によれば、長期保存中にコールドシール剤が劣化することによる「接着力」の低下や、劣化による「黄ばみ」の発生を防止することができる。さらに、本発明の接着剤組成物13によれば、オゾン、紫外線、熱等によりコールドシール剤が劣化することもなく、また、接着後に予期せぬ開封不良が生ずることもない。
【0045】
ここで、上記一般式1で示される化合物の含有量が、前記コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、0.5質量部未満である場合には、接着剤組成物13の劣化防止性能を充分に発揮することができない虞が生じる。また、前記コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、3質量部より多い場合には、それ以上の劣化防止性能効果に変化がなく、過剰に含有させた場合には、その分接着剤組成物13に占めるコールドシール剤の割合が減少し、接着剤組成物13に要求される接着性を担保することができない虞が生ずることとなる。そこで、上記一般式1で示される化合物は、コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、0.5〜3質量部、好ましくは0.5〜1質量部の範囲内で含有される。
【0046】
かかる接着剤組成物の塗工方法について特に限定はなく、従来公知の塗工方法を適宜選択して塗工することができる。このような塗工方法としては、例えばエアーナイフコーター法、ブレードコーター法、ロッドメタリングコーター、カーテンコーター法、ロールコーター法などが挙げられる。グラビアオフセット、凸版、平板などの印刷方式で印刷する方法も採用することができる。
【0047】
接着剤組成物の塗工量についても特に限定はされないが、接着剤組成物の塗工量が、4g/m2未満の場合には、所望の接着力が得られず予期せぬ剥離が生じやすくなり、また10g/m2を超えると、接着力が強くなりすぎて易剥離性が低下しやすくなる。このような点を考慮すると、接着剤組成物の塗工量は、4〜10g/m2程度であることが好ましい。
【0048】
(インクジェット方式による印字)
次に、本発明の印字方法について説明する。本発明の印字方法は、インクジェットプリンタを用いて圧着用紙を折り畳んだ際に対向する面に所定情報の印字を行うための印字方法であって、圧着用紙が、少なくともパルプと湿潤紙力剤とを含む基材シートと、該基材シートを折り畳んだ際に対向する面に塗被される接着剤組成物とを有し、接着剤組成物は、少なくとも、コールドシール剤と、上記の一般式1で示される化合物と、ポリジメチルアミンエピクロルヒドリン及び/又は変性ジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物と、シリカと、を含み、一般式1で示される化合物は、コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、0.5〜3質量部の範囲内で配合され、ポリジメチルアミンエピクロルヒドリン及び/又は変性ジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物は、コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、5質量部以上配合されていることを特徴とするインクジェット用圧着用紙であることを特徴とする。
【0049】
本発明の印字方法で用いられるインクジェット用圧着用紙は、上記で説明したインクジェット用圧着用紙において、更にシリカが含有されている点に特徴を有する。このインクジェット用圧着用紙によれば、「印字品質」、「耐水性」、「耐水強度」に加え、接着剤組成物に含有されるシリカにより、インクの「乾燥性」を向上させることができる。これにより、従来印字後に行われる乾燥工程における乾燥を、常温程度の乾燥温度で行うことができ、乾燥時の熱による接着剤組成物の劣化を防止できるほか、生産性を向上させることが可能となる。なお、本発明の印字方法で用いられるインクジェット用圧着用紙は、上記で説明した本発明のインクジェット用圧着用紙において、さらにシリカを必須の構成とする以外は、上記で説明した通りであり、共通する成分についてのここでの説明は省略する。
【0050】
インクジェットプリンタについて特に限定はなく、従来公知のあらゆるインクジェットプリンタを適宜選択して使用可能である。また、本発明の印字方法は、少なくとも圧着用紙を折り畳んだ際に対向する面に所定情報の印字を行うものであるが、インクジェット方式による所定情報の印字は、折り畳んだ際に対向する面に加え、折り畳んだ際に対向しない面上に行うこともできる。
【0051】
この場合において、折り畳んだ際に対向する面上には、必ずしも上記の接着剤組成物が設けられていなくともよい。すなわち、基材シート上に直接印字を行うこととしてもよい。しかしながら、基材シート上に直接印字した際の印字適性を考慮すると、基材シートには、インク耐水性に優れるカチオン性樹脂が含有されていることが好ましい。このようなカチオン性樹脂としては、従来公知のカチオン性樹脂を用いることができ、例えば、上記で説明したPDMAEも使用可能である。なお、基材シートの全面(基材シートの一方の面、及び他方の面)に接着剤組成物が設けられている場合には、当該処理は不要である。
【0052】
また、本発明の印字方法によれば、「耐水性」「印字品質」、「耐水強度」のみならず「乾燥性能」に優れ、接着剤組成物の劣化が生ずることのないインクジェット用圧着用紙が用いられることから、圧着用紙を折り畳んだ際に対向する面(すなわち接着剤組成物上)に、インクジェット方式により、親展情報等の可変情報の印字を行う場合のみならず、従来、他の印字方法により行われていた固定情報の印刷にも好適に使用可能である。
【0053】
なお、本発明の印字方法に用いられるインクジェット用圧着用紙は、接着剤組成物の劣化を防止することができることから、固定情報の印刷等に、接着剤組成物が劣化してしまう紫外線硬化型樹脂を含むインクにより印字を行った場合であっても、接着剤組成物が劣化することはない。
【0054】
インクジェット方式に用いられるインクについても特に限定はなく、水溶性染料インクであっても、水溶性顔料インクであっても好適に使用可能である。本発明の印字方法に用いられるインクジェット用圧着用紙は「耐水性」、「印字品質」に極めて優れることから、水溶性染料インクで印字を行った場合であっても、インクの滲みがなく、高い印字品質で印字が可能となる。また、水に濡れた場合であってもインクが流出することもない。また、本発明の印字方法に用いられるインクジェット用圧着用紙は、接着剤組成物に含まれるPDMAEにより、水溶性顔料インクの定着性が高いことから、水溶性顔料インクで印字を行った場合であっても、開封時に印字された情報が対向する面に転写する異常転写が生ずることもない。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例を参照し本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、図5(a)は本実施例における圧着用紙の圧着前の概略斜視図を、図5(b)は圧着後の概略斜視図を示す図である。実施例中の部は、断らない限り、夫々乾燥質量部である。
【0056】
(実施例1)
<基材シートの調製>
CSFを400mlに調製したNBKP:50%と、CSFを420mlに調製したLBKP:50%としたパルプスラリーを混合しパルプスラリー混合物を作成し、湿潤紙力剤としてポリアミドエポキシ樹脂(商品名スミレーズレジン:住友化学工業製)をパルプスラリー混合物100質量部(固形分)に対して1.5質量部(固形分)、ロジン系エマルションサイズ剤(商品名ハーサイズ:ハリマ化成(株))をパルプスラリー混合物100質量部(絶乾量)に対して0.2質量部、顔料、澱粉、分散剤等を添加し基材シートを形成した。
【0057】
<接着剤組成物塗工液1の調製>
代表粒径1.2μmの無定形シリカ(カープレックス(登録商標)FPS101:塩野義製薬製)及び代表粒径2.5μmのタルク各75部をアニオン系分散剤と共に、水中に分散し、天然ゴム系ラテックス(FB−06FK:三井フラー製)100部を混合した。天然ゴム系ラテックス100部に対し、PDMAE−F(CAS.No:7−1517、CV値(固形比換算:24.0ml/g/s、カチオン当量:6.00meq/g、分子量:16700)を8部、p−クレゾール・ジシクロペンタジエン・イソブチレンの反応生成物(分子量700、平均粒子径1.2μm)を0.5部添加した。1時間後ポリカチオンとしてPDMAE−G(CAS.No:7−1517、CV値(固形比換算:28.1ml/g/s、カチオン当量:7.03meq/g、分子量:14500)を20部、カチオン澱粉(置換度0.15)15部、硫酸マグネシウム10部を添加して、濃度28%の接着剤組成物塗工液1を調製した。
【0058】
接着剤組成物塗工液1を、上記の基材シートの全面にエアーナイフコーターで塗工量が6g/m2(乾燥質量固形分)となるように塗工して、実施例のインクジェット用圧着用紙を得た。
【0059】
(比較例1)
実施例1の接着剤組成物塗工液からp−クレゾール・ジシクロペンタジエン・イソブチレンの反応生成物を除いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1のインクジェット用圧着用紙を得た。
【0060】
(比較例2)
実施例1の接着剤組成物塗工液からPDMAE−F、PDMAE−Gを除いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2のインクジェット用圧着用紙を得た。
【0061】
(比較例3)
実施例1の基材シートから湿潤紙力剤としてのポリアミドエポキシ樹脂を除いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3のインクジェット用圧着用紙を得た。
【0062】
(耐水強度試験)
実施例1、比較例1〜3の圧着用紙を3つ折り葉書のサイズ(12インチ×6インチ)に裁断して、図5(a)のZ部分を折り畳むZ折り(図5b参照)にしてメールシーラー(大日本印刷株式会社製)により圧着し、圧着された圧着用紙を1晩水中に浸けておいて、接着剤組成物を剥離した際に、紙破れの発生の有無を確認した。このとき紙破れの発生がないものを○、紙破れのあったものを×とした。評価結果を表1に示す。
【0063】
(劣化評価試験)
実施例1、比較例1〜3の圧着用紙を3つ折り葉書のサイズ(12インチ×6インチ)に裁断して、図5(a)のZ部分を折り畳むZ折りにしてメールシーラー(大日本印刷株式会社製)により圧着した。圧着後21日で圧着部分が開封したものを×、圧着後84日経過後に圧着部分の開封がなかったものを○とした。評価結果を表1に併せて示す。
【0064】
(印字適性評価試験)
実施例1、比較例1〜3のインクジェット用圧着用紙に、以下の水溶性染料インク、水溶性顔料インクで、図5(a)中のX部に印字を行い、実施例1、比較例1〜3の印画物を作成し、印字適性の評価を行った。このとき、印字部分においてインクの滲みがないものを○、印字部分においてインクの滲みがあるものを×とした。評価結果を併せて表1に示す。
【0065】
(水溶性染料インクによる印字)
プリンタ:Versamark(登録商標)(コダック・ヴァーサマーク株式会社製)
インク:コダック・ヴァーサマーク(登録商標)FV1041 IR ブラック・インク(コダック・ヴァーサマーク株式会社製)
印字速度:150mm/sec
乾燥温度:常温乾燥
【0066】
(水溶性顔料インクによる印字)
プリンタ:Truepress(登録商標) Jet520(大日本スクリーン製造株式会社製)
インク:T579110(大日本スクリーン製造株式会社製)
印字速度:128mm/sec
乾燥温度:常温乾燥
【0067】
(耐水性試験)
上記水溶性染料インクで印字を行った実施例1、比較例1〜3の印画物を水中に浸漬させ、インクの流失の有無を確認した。このとき、インクの流出がなかったものを○、インクの流出があったものを×とした。評価結果を表1に併せて示す。
【0068】
(転写評価試験)
上記水溶性顔料インクで印字を行った実施例1、比較例1〜3の印画物を形成後、直ちに上記の劣化評価試験と同様に圧着し、その後開封した際に、インクが対向する面に転写したか否かの評価を行った。このとき、転写がないものを○、転写があったものを×とした。評価結果を表1に併せて示す。
【0069】
【表1】

【0070】
表1からも明らかなように、本発明のインクジェット用圧着用紙は、全ての評価において良好な結果を得ることができた。一方、p−クレゾール・ジシクロペンタジエン・イソブチレンの反応生成物が含まれていない比較例1は、接着剤組成物が劣化し、予期せぬ開封不良が生じた。また、PDMAEが含まれていない比較例2は、染料インクにおけるインクの滲みや、水に浸漬させた場合にインクの流出が確認された。また、顔料インクにより印字を行った場合には、異常転写が発生した。また、湿潤紙力剤が含まれていない比較例3は、耐水強度に劣る結果となった。
【0071】
以上、本発明のインクジェット用圧着用紙、及び印字方法、並びに印画物について詳細に説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…インクジェット用圧着用紙
10…基材シート
13…接着剤組成物
A、A1、A2…折り畳み起点部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプを主成分とする基材シートと、該基材シートを折り畳んだ際に対向する面に塗被される接着剤組成物と、を有するインクジェット用圧着用紙であって、
前記基材シートには、湿潤紙力剤が含有されており、
前記接着剤組成物は、少なくとも、コールドシール剤と、一般式1で示される化合物と、ポリジメチルアミンエピクロルヒドリン及び/又は変性ジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物とを含み、
前記一般式1で示される化合物は、前記コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、0.5〜3質量部の範囲内で配合され、
前記ポリジメチルアミンエピクロルヒドリン及び/又は変性ジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物は、前記コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、5質量部以上配合されていることを特徴とするインクジェット用圧着用紙。
【化1】

【請求項2】
前記湿潤紙力剤は、前記基材シートの固形分総質量に対し0.05〜2質量%の範囲内で含有されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用圧着用紙。
【請求項3】
前記湿潤紙力剤が、ポリアミドエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット用圧着用紙。
【請求項4】
前記コールドシール剤が、(メタ)アクリル変性天然ゴムラテックスであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のインクジェット用圧着用紙。
【請求項5】
インクジェットプリンタを用いて、圧着用紙を折り畳んだ際に対向する面に所定情報の印字を行うための印字方法であって、
前記圧着用紙が、少なくともパルプと湿潤紙力剤とを含む基材シートと、該基材シートを折り畳んだ際に対向する面に塗被される接着剤組成物とを有し、
前記接着剤組成物は、少なくとも、コールドシール剤と、一般式1で示される化合物と、ポリジメチルアミンエピクロルヒドリン及び/又は変性ジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物と、シリカと、を含み、
前記一般式1で示される化合物は、前記コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、0.5〜3質量部の範囲内で配合され、
前記ポリジメチルアミンエピクロルヒドリン及び/又は変性ジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物は、前記コールドシール剤100質量部(固形分)に対し、5質量部以上配合されていることを特徴とするインクジェット用圧着用紙であることを特徴とする印字方法。
【化2】

【請求項6】
前記所定情報を、水溶性インクにより形成することを特徴とする請求項5に記載の印字方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の印字方法により形成される印画物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−25075(P2012−25075A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167041(P2010−167041)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(592175416)紀州製紙株式会社 (23)
【Fターム(参考)】