説明

ウエハ処理装置

【課題】プラズマエッチング装置において、シリコンウエハに比べて厚いサファイア基板を下部電極などのウエハステージ上に、下部電極のウエハ載置面との間隙をサファイア基板の処理中の温度が均一になるようにして保持することを可能とする。
【解決手段】ウエハに対する処理を行うためのチャンバーのステージ上にウエハーを載置してウエハの処理を行うプラズマエッチング装置において、該ウエハーWaを、該ウエハが該ステージとしての下部電極120a上に固定されるよう保持するウエハ保持部としてのクランプ部110と、該下部電極上に固定されたウエハーWaの温度が均一に保持されるよう、該ウエハとの間で熱交換を行う熱交換部とを備え、該下部電極は、そのウエハ載置面の形状をサファイアウエハの反り特性に合わせた形状となるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ処理装置に関し、特に、プラズマエッチングなどのウエハ処理装置における、ウエハを載置するステージとしての下部電極の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のドライエッチング装置では、ウエハステージである下部電極上に載置したウェハをクランプで押さえることにより、ドライエッチング装置内でウェハを固定している。
【0003】
図3は、例えば、特許文献1に開示のエッチング装置の概略構成を示す断面図である。
【0004】
図3において、チャンバ1には、エッチングガスを導入するガス導入管2および反応ガスを排出するガス排気管3が設けられている。
【0005】
また、チャンバ1には、チャンバ1内でプラズマP1を発生させる上部電極4および下部電極7が設けられ、上部電極4はRF電源13に接続されるとともに、下部電極7は絶縁層6を介してウェハ載置台5上に設置され、下部電極7内には、ウェハWを加熱するヒータ8が内蔵されている。
【0006】
また、下部電極7上には、ウェハクランプ9を昇降させるクランプリフタ12を介してリング状のウェハクランプ9が設けられ、ウェハクランプ9には、ウェハを点接触で上から押さえる爪部材9aが設けられている。
【0007】
また、ウェハクランプ9には、ウェハクランプ9を加熱するヒータ10が内蔵されるとともに、爪部材9aの先端には、ウェハクランプ9またはウェハWの温度を検出するサーミスタ11が取り付けられている。
【0008】
図4(a)は、図3のウェハクランプの概略構成を示す平面図、図4(b)は、図4(a)のA−A線で切断した断面図である。
【0009】
図4において、ウェハクランプ9は、ウェハWの外周に対応してリング状に構成され、ウェハクランプ9の内周には、ウェハWの外周部分を点接触で押さえる爪部材9aが設けられている。
【0010】
なお、ウェハクランプ9および爪部材9aは、例えば、セラミックなどの絶縁体で構成することができる。また、ウェハクランプ9には、ウェハクランプ9を加熱するヒータ10が内蔵されている。
【0011】
また、爪部材9aの先端には、ウェハクランプ9またはウェハWの温度を検出する温度検出手段が設けられ、温度検出手段としては、例えば、サーミスタ11などを用いることができる。
【0012】
また、図3において、RF電源13は、RF電源13のオン/オフ制御を行うRF電源制御装置14に接続されるとともに、温度制御装置15は、ヒータ8、10、サーミスタ11およびRF電源制御装置14に接続されている。
【0013】
そして、温度制御装置15は、RF電源制御装置14によるRF電源13のオン/オフ制御に基づいて、ヒータ10の温度を制御するとともに、サーミスタ11によるウェハWの表面温度の検出結果に基づいて、ヒータ8の温度を制御する。
【0014】
なお、この特許文献1に記載のエッチング装置では、ウェハクランプ9の温度を監視しつつ、ウェハクランプ9の温度を制御することにより、ウェハクランプ9に付着した反応生成物の膨張・収縮を抑制して、ウェハクランプ9に付着した反応生成物の剥離を抑制し、またウェハクランプ9への反応生成物の付着量を安定化させている。
【0015】
ところで、このようなエッチング装置には、下部電極に形成したガス噴出し口から冷却ガス冷媒をウエハに噴出してウエハの温度制御を行うものもある。
【0016】
図5は、このような構成のエッチング装置に用いられているウエハクランプ装置を説明する図である。
【0017】
このウエハクランプ装置200は、エッチング装置の下部電極220が取り付けられたベース部材201と、該ベース部材に設けられたクランプ部210とを有している。
【0018】
ここで、ベース部材201には、昇降シャフト212を駆動して、昇降シャフト212に取り付けられたクランプアーム211を昇降させるアクチュエータ213が設けられている。
【0019】
また、下部電極220は、その表面が凸状に湾曲した形状となっており、その表面には、例えば、複数のガス噴出し孔211aが外側円周上に設けれら、複数のガス噴出し孔211bが内側円周上に設けられている。また、これらの外側円周及び内側円周の間には、外側環状溝223aが形成され、ガス噴出し孔211bが配置されている内側円周のさらに内側には、内側環状溝223bが形成されている。この溝は、ガス噴出孔から噴出されたガスが円周方向及び半径方向に均一に広がるよう設けられている。さらに、下部電極の中央部にはガス排出口224が形成されている。
【0020】
このようなウエハクランプ装置200では、下部電極220上にウエハWbを載置した状態で、クランプアーム211を下降させてウエハWbの周縁部を下部電極側に押圧することで、ウエハは、下部電極220の表面に密着するよう変形する。
【0021】
このようにしてウエハを下部電極220に固定した後、プラズマエッチングを開始し、同時に冷媒ガスをガス噴出し孔から噴出すとともに、ガス排出孔から排出することで、エッチング処理で過熱されたウエハと冷媒ガスとの間で熱交換が行われて、ウエハが所定温度に保持されるよう冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2004−111468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
ところが、上記従来のウエハクランプ装置では、ウエハの反り特性が下部電極の曲率に対して適合しない場合は、図5(a)に示すように、ウエハWbと下部電極の周縁部との間に隙間ができ、冷媒ガスが漏れてしまうという問題があった。
【0024】
例えば、シリコンウエハを想定した曲率の下部電極を有するウエハクランプ装置において、サファイア基板などをクランプしようとすると、前記のような問題が生ずる。
【0025】
また、このような問題を回避するため、図5(b)に示すように、下部電極としてそのウエハ載置面をフラットにすることも考えられる。
【0026】
なお、図5(b)中、321a及び321bは複数のガス噴出し孔であり、図5(a)における複数のガス噴出し孔211a及び221bに相当するものである。また、324は、ガス排出口であり、図5(a)におけるガス排出口224に相当するものであり、さらに、323a及び323bは、外側環状溝及び内側環状溝であり、図5(a)における外側環状溝223a及び内側環状溝223bに相当するものである。
【0027】
しかしながら、このようにウエハ載置面をフラットにした下部電極に、図5(b)に示すように、上に凸の形状となる湾曲したウエハを載置した場合、ウエハ周縁部をクランプアームにより押圧して下部電極に固定しても、ウエハ中央部では、ウエハと下部電極のウエハ載置面との間に広い隙間ができることとなる。
【0028】
このため、ウエハのエッチング処理中には、ウエハ中央部とウエハ周縁部とで温度差が生ずることとなり、ウエハのエッチング処理をウエハ面内で均一にすることができないという問題が生ずる。
【0029】
本発明は、前記のような問題点を解決するためになされたものであり、シリコンウエハに比べて厚いサファイア基板を下部電極などのウエハステージ上に、下部電極のウエハ載置面との間隙をサファイア基板の処理中の温度が均一になるようにして保持することができるウエハ処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明に係るウエハ処理装置は、ウエハに対する処理を行うためのチャンバーと、該チャンバー内に設けられ、該ウエハーを載置するステージとを有し、該ウエハーをその表面を適切な温度に保持しながら処理するウエハ処理装置であって、該ウエハーを、該ウエハが該ステージ上に固定されるよう保持するウエハ保持部と、該ステージ上に固定されたウエハーの温度が均一に保持されるよう、該ウエハとの間で熱交換を行う熱交換部とを備え、該ステージは、そのウエハ載置面の形状をサファイアウエハの反り特性に合わせた形状としたものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0031】
本発明は、上記ウエハ処理装置において、前記サファイアウエハは、半導体発光素子を構成するものであることが好ましい。
【0032】
本発明は、上記ウエハ処理装置において、前記ステージは、そのウエハ載置面を凸状の湾曲面としたものであり、前記ウエハ保持部は、該ウエハの中心部が該ステージのウエハ載置部の頂点部に接触し、該ウエハの周縁部が該ステージのウエハ載置部の周縁部に接触するよう該ウエハの周縁部を該ステージ上の押圧固定するものであることが好ましい。
【0033】
本発明は、上記ウエハ処理装置において、前記熱交換部は、前記ステージのウエハ載置面とその上に押圧固定されたウエハとの隙間に、ガス状の熱交換媒体を供給するガス供給機構を有することが好ましい。
【0034】
本発明は、上記ウエハ処理装置において、前記ガス状の媒体は、Heガスであることが好ましい。
【0035】
本発明は、上記ウエハ処理装置において、前記ウエハの処理は、プラズマエッチング処理であることが好ましい。
【0036】
本発明は、上記ウエハ処理装置において、前記ステージは、前記チャンバー内にプラズマが発生するよう高周波電力を印加するための上下一対の電極のうちの下部電極を構成しており、前記下部電極の、該ウエハと対向する凸状表面の曲率を、該ウエハの温度が、前記ガス状媒体による該ウエハに対する熱交換により均一になる曲率としたものであることが好ましい。
【0037】
本発明は、上記ウエハ処理装置において、前記ウエハー温度を均一に保つ適切な形状の下部電極の曲率は、該下部電極の半径に対する該下部電極の中央部での高さである凸部ギャップの比率Pが、0.001≦P≦0.008となるよう設定されていることが好ましい。
【0038】
本発明は、上記ウエハ処理装置において、前記ウエハー温度を均一に保つ適切な形状の下部電極の曲率は、該下部電極の半径に対する該下部電極の中央部での高さである凸部ギャップの比率Pが0.001≦P≦0.004となるよう設定されていることが好ましい。
【0039】
本発明は、上記ウエハ処理装置において、前記ウエハー温度を均一に保つ適切な形状の下部電極の曲率は、前記下部電極の半径に対する前記凸部ギャップの比率Pが0.001≦P≦0.0021となるよう設定されていることが好ましい。
【0040】
本発明は、上記ウエハ処理装置において、前記下部電極は、その表面に、前記ガス状媒体を噴出すガス噴出口、及び該噴出されたガスを排出するガス排出口のうちの少なくともガス噴出口を形成するとともに、該ガス噴出口から噴出されたガスが円周方向に均一に広がるよう複数の環状の溝を同心円状に複数形成したものであることが好ましい。
【0041】
次に本発明の作用について説明する。
【0042】
本発明においては、ウエハに対する処理を行うためのチャンバーのステージ上にウエハーを載置してウエハの処理を行うウエハ処理装置において、該ウエハーを、該ウエハが該ステージ上に固定されるよう保持するウエハ保持部と、該ステージ上に固定されたウエハーの温度が均一に保持されるよう、該ウエハとの間で熱交換を行う熱交換部とを備え、該ステージは、そのウエハ載置面の形状をサファイアウエハの反り特性に合わせた形状としたので、シリコンウエハに比べて厚いサファイア基板を下部電極などのウエハステージ上に、下部電極のウエハ載置面との間隙をサファイア基板の処理中の温度が均一になるよう調節して保持することが可能となる。
【発明の効果】
【0043】
以上のように、本発明に係るウエハ処理装置によれば、シリコンウエハに比べて厚いサファイア基板を下部電極などのウエハステージ上に、下部電極のウエハ載置面との間隙をサファイア基板の処理中の温度が均一になるようにして保持することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係るプラズマエッチング装置(ウエハ処理装置)を説明する図であり、図1(a)は該プラズマエッチング装置に用いられるウエハのクランプ装置の要部構成を示す断面図であり、図1(b)は該クランプ装置を構成する下部電極(ウエハステージ)を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態1のプラズマエッチング装置の変形例を説明する図である。
【図3】図3は、特許文献1に開示のエッチング装置の概略構成を示す断面図である。
【図4】図4は、図3に示す従来のウェハクランパを説明する図であり、図4(a)は該クランパの概略構成を示す平面図、図4(b)は、図4(a)のA−A線で切断した断面図である。
【図5】図5は、従来のエッチング装置に用いられている他のウエハクランプ装置を説明する図であり、図5(a)はその問題点を説明する図、図5(a)のその問題に対する対策を説明する図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態1によるプラズマエッチング装置における下部電極の曲率について説明する図であり、図6(a)は、該下部電極の曲率の定義を示し、図6(b)は、該下部電極の曲率とHeリークとの関係を示し、図6(c)は、該下部電極の曲率とウエハー温度の面内バラツキとの関係を示している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0046】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係るプラズマエッチング装置(ウエハ処理装置)を説明する図であり、図1(a)は該プラズマエッチング装置に用いられるウエハのクランプ装置の要部構成を示す断面図であり、図1(b)は該クランプ装置を構成する下部電極(ウエハステージ)を示す平面図である。
【0047】
本発明の実施形態1によるプラズマエッチング装置は、図3に示す従来のプラズマエッチング装置と同様に、ウエハに対する処理を行うためのチャンバーと、該チャンバー内に設けられ、該ウエハーを載置するステージ(下部電極)とを有し、該ウエハーをその表面を適切な温度に保持しながら処理するものである。
【0048】
そして、この実施形態1のプラズマエッチング装置は、図1(a)に示すウエハクランプ装置100を有している。このウエハクランプ装置100は、該ウエハーを、該ウエハが該ステージ上に固定されるよう保持するウエハ保持部を含んでいる。
【0049】
また、このプラズマエッチング装置は、ステージ上に固定されたウエハーの温度が均一に保持されるよう、該ウエハとの間で熱交換を行う熱交換部を備えている。ここでは、ウエハは、半導体発光素子を構成するサファイアウエハとしており、このサファイアウエハは、シリコンウエハに比べて厚くかつ硬いものである。
【0050】
そして、この実施形態1では、ステージである下部電極120aは、外形円柱形状を有し、その上面であるウエハ載置面の形状をサファイアウエハの反り特性に合わせた形状としたものである。
【0051】
具体的には、下部電極120aは、そのウエハ載置面を凸状の湾曲面としたものであり、上記ウエハクランプ装置100は、該ウエハWaの中心部が該下部電極のウエハ載置部の頂点部に接触し、該ウエハの周縁部が該下部電極120のウエハ載置部の周縁部に接触するよう該ウエハの周縁部を該ステージ上の押圧固定するものである。
【0052】
このウエハクランプ装置100は、エッチング装置の下部電極120が取り付けられたベース部材101と、該ベース部材に設けられた上記ウエハ保持部としてのクランプ部110とを有している。
【0053】
ここで、クランプ部110を構成するベース部材101には、昇降シャフト112を駆動して、昇降シャフト112に取り付けられたクランプアーム111を昇降させるアクチュエータ113が設けられている。
【0054】
また、上記熱交換部は、前記ステージのウエハ載置面とその上に押圧固定されたウエハとの隙間に、ガス状の熱交換媒体を供給するガス供給機構を有する。つまり、下部電極120aの表面には、例えば、複数のガス噴出し孔121aが1つの外側円周上に設けれら、複数のガス噴出し孔121bが内側円周上に設けられている。また、これらの外側円周及び内側円周の間には、外側環状溝123aが形成され、ガス噴出し孔121bが配置されている内側円周のさらに内側には、内側環状溝123bが形成されている。これらの溝は、ガス噴出孔から噴出されたガスが円周方向及び半径方向に均一に広がるよう設けられている。さらに、下部電極の中央部にはガス排出口124が形成されている。上記ガス状の媒体は、Heガスであることが好ましい。
【0055】
なお、この実施形態のプラズマエッチング装置では、図3に示す従来のプラズマエッチング装置と同様に、上部電極、及びRF電源が上記下部電極とともに設けられている。
【0056】
これらの電極は、チャンバー内にプラズマが発生するよう高周波電力を印加するための上下一対の電極を構成しており、下部電極の、該ウエハと対向する凸状表面の曲率は、該ウエハの温度が、前記ガス状媒体による該ウエハに対する熱交換により均一になる曲率としている。
【0057】
図6は、本発明の実施形態1によるプラズマエッチング装置における下部電極の曲率について説明する図であり、図6(a)は、該下部電極の曲率の定義を示し、図6(b)は、該下部電極の曲率とHeリークとの関係を示し、図6(c)は、該下部電極の曲率とウエハー温度の面内バラツキとの関係を示している。
【0058】
つまり、図6では、シリコンウエハを用いてLSI(半導体集積回路)を製造する装置を、サファイアウエハを用いたLED(発光ダイオード)の製造に用いた場合の、下部電極の曲率の適切な範囲を示している。
【0059】
ここでは、下部電極は図1(a)及び(b)から分かるように円柱状を有し、下部電極の曲率は、図6(a)に示すように、y(下部電極のウエハを載置する上面の中心での高さ)/x(ウエハを載置する下部電極の上面の半径)としている。
【0060】
まず、図6(b)では、下部電極の表面とウエハの裏面との間の空間に供給されたHeガスのリーク量(Heリーク%)を目安として、下部電極の適正な曲率の範囲を示している。ここで、Heリーク%は、(設定圧力−実際の圧力)/設定圧力を示しており、図6(b)のグラフは、下部電極の曲率を変えたときのHeリーク%の変化を示している。
【0061】
つまり、LSIの製造に用いられるプラズマエッチング装置では、下部電極の表面とウエハの裏面との間の空間に供給されたHeガスの圧力が圧力センサ(図示せず)により測定されており、上記Heリーク%が図6(b)に示すように通常10%以上となると、リークNG(リーク状態が不良である)と判定され、エッチング処理が停止するよう構成されている。なお、ここでは、リーク状態の良否判定の基準としての、Heリーク%の値(10%)は、プラズマエッチング装置の機種により若干異なるが、通常はおおよそ10%前後となっている。
【0062】
従って、このLSIの製造に用いられるプラズマエッチング装置をLEDの製造に転用した場合も、下部電極の曲率は、Heリーク%が10%以下となるよう設定する必要があり、ここで用いているプラズマエッチング装置に対する測定結果(図6(b))から、0.008とすべきことが分かる。つまり、このプラズマエッチング装置では、下部電極の曲率を0.008以下とすることで、Heリーク%が10%以下となり、リーク状態の良否判定として、リークOK(リーク状態が良好である)と判定され、エッチング処理が実行されることとなる。
【0063】
また、図6(c)のグラフは、下部電極の曲率を変えたときのウエハ面内での温度バラツキ(Max−Min)、つまり最高温度と最低温度との差(以下、ウエハー温度面内バラツキという。)の変化を示している。
【0064】
ここで、温度の測定には、温度に応じてマークの濃さが変化するサーモラベルを、下部電極上に装着したウエハの表面に貼り付け、このサーモラベルのマークの濃度変化に基づいて、ウエハの該サーモラベルを貼り付けた部分での温度を検出している。
【0065】
また、上記ウエハー温度面内バラツキが図6(c)に示すように20℃以上となると、温度バラツキNG(温度の面内均一性が良好でない)と判定される。なお、ここでは、温度バラツキの良否判定の基準値は、LSIを処理するときのプラズマエッチング装置でのウエハー温度面内バラツキとしての許容値が20℃程度であったことから、LSIの処理に用いるプラズマエッチング装置をLEDの処理に転用する場合においても20℃としている。
【0066】
従って、LSIの製造に用いるプラズマエッチング装置をLEDの製造に転用した場合にも、下部電極の曲率を0.001以上で0.008以下の範囲とすることで、ウエハー温度面内バラツキが20℃以下となり、温度バラツキOK(ウエハ温度の面内均一性が良好な状態)にすることができる。
【0067】
なお、下部電極の曲率が小さすぎてもあるいは大きすぎても、ウエハー温度面内バラツキが増大するのは、サファイアウエハではウエハの反り生じているため、下部電極の上面の形状がフラットに近づいた場合でも、あるいは下部電極の上面の形状がサファイアウエハの反りに比べて大きく湾曲したものとなる場合でも、下部電極とウエハとの隙間が大きくなって下部電極によるウエハの冷却が不十分となるためである。
【0068】
この結果、下部電極の曲率は、下部電極の半径に対する前記凸部ギャップの比率Pが、0.001以上かつ0.008以下の範囲となるよう設定することが適正である。特に、ウエハー温度を均一に保つ適切な形状の下部電極の曲率は、下部電極の半径に対する前記凸部ギャップの比率Pが、0.001<P≦0.004の範囲となるよう設定することが好ましく、さらに、下部電極の曲率は、下部電極の半径に対する前記凸部ギャップの比率Pが0.001<P≦0.0021の範囲となるよう設定することがより好ましい。
【0069】
次に動作について説明する。
【0070】
このようなウエハクランプ装置100では、下部電極120a上にウエハWaを載置した状態で、クランプアーム111を下降させてウエハWaの周縁部を下部電極側に押圧することで、ウエハWaは、下部電極120aの表面に密着するよう変形する。
【0071】
このようにしてウエハWaを下部電極120aに固定した後、プラズマエッチングを開始し、同時に冷媒ガスをガス噴出し孔から噴出すとともに、ガス排出孔から排出することで、エッチング処理で過熱されたウエハと冷媒ガスとの間で熱交換が行われて、ウエハが所定温度に保持されるよう冷却される。
【0072】
以下、本発明の作用効果について説明する。
【0073】
従来は、シリコンウエハを用いた半導体装置を製造するLSI設備をそのまま、サファイアウエハを用いるLEDの製造装置として転用すると、特に、ウエハをプラズマエッチング装置のチャンバーの下部電極に固定保持するクランプ保持方式の転用を行うと、サファイアの反り特性により、ウエハ裏面での冷媒ガスであるHeリークが発生し、ウエハー冷却効果が不十分となるという問題があった。
【0074】
また、新規にLED向け設備を導入すると、初期コストが発生し、コスト競争力が低下してしまうという問題もあった。
【0075】
そこで、本発明では、青色LEDの製造において、設備の有効活用、処理の面内安定化を向上させるために、LSI設備の6インチLED製造への転用時に、サファイアウエハの特性によりウエハー冷却効果が不十分となり面内均一性の確保が困難であるという課題を、下部電極の形状(凸曲率)をサファイアの反り特性にあわせることにより解決している。
【0076】
つまり、本実施形態では、下部電極をサファイアの反り特性にあわせた曲率にすることにより、冷却媒体のHeリーク解消し、ウエハー冷却効率が確保でき、エッチング特性(均一性)を向上させている。この結果、LSI設備のLED設備への転用が可能となり初期コスト低減ができる。
【0077】
このように、本実施形態1では、ウエハに対する処理を行うためのチャンバーのステージ上にウエハーを載置してウエハの処理を行うプラズマエッチング装置において、該ウエハーWaを、該ウエハが該ステージ(下部電極)120a上に固定されるよう保持するウエハ保持部(クランプ部)110と、該ステージ上に固定されたウエハーの温度が均一に保持されるよう、該ウエハとの間で熱交換を行う熱交換部とを備え、該下部電極120aを、そのウエハ載置面の形状をサファイアウエハの反り特性に合わせた形状となるよう構成したので、シリコンウエハに比べて厚く硬いサファイアウエハを下部電極などのウエハステージ上に、該下部電極のウエハ載置面との間隙をサファイアウエハの処理中の温度が均一になるようにして保持することが可能となる。
【0078】
なお、上記実施形態1では、下部電極の表面形状は、凸形状の滑らかに湾曲した形状としているが、下部電極の表面形状は、図2に示すように下部電極の中央部分に湾曲のない平坦な部分を有する形状としてもよい。
【0079】
この場合、下部電極とウエハとは、ウエハ周縁部とウエハ中央部の近傍部分とで接触することとなり、その他の部分では、確実にウエハと下部電極との間にHeガスを供給するためのスペースを形成することができ、よりウエハ面内での高い温度均一性を得ることが可能となる。
【0080】
また、本実施形態1では、下部電極120aとして、例えば、その表面にガス噴出し孔とガス排出口とが形成されているものを挙げたが、下部電極は、ガス排出口が形成されていないものでもよく、この場合は、ウエハ周縁部で下部電極とウエハとの間から所定流量でHeガスが放出されることとなる。
【0081】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、ウエハ処理装置の分野において、シリコンウエハに比べて厚いサファイア基板を下部電極などのウエハステージ上に、下部電極のウエハ載置面との間隙をサファイア基板の処理中の温度が均一になるようして保持することができるウエハ処理装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0083】
100 ウエハクランプ装置
101 ベース部材
110 クランプ部
111 クランプアーム
112 昇降シャフト
113 アクチュエータ
120a 下部電極
121a,121b ガス噴出し孔
123a 外側環状の溝
123b 内側環状の溝
124 ガス排出口
Wa ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハに対する処理を行うためのチャンバーと、該チャンバー内に設けられ、該ウエハーを載置するステージとを有し、該ウエハーをその表面を適切な温度に保持しながら処理するウエハ処理装置であって、
該ウエハーを、該ウエハが該ステージ上に固定されるよう保持するウエハ保持部と、
該ステージ上に固定されたウエハーの温度が均一に保持されるよう、該ウエハとの間で熱交換を行う熱交換部とを備え、
該ステージは、そのウエハ載置面の形状をサファイアウエハの反り特性に合わせた形状としたものである、ウエハ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のウエハ処理装置において、
前記サファイアウエハは、半導体発光素子を構成するものである、ウエハ処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のウエハ処理装置において、
前記ステージは、そのウエハ載置面を凸状の湾曲面としたものであり、
前記ウエハ保持部は、該ウエハの中心部が該ステージのウエハ載置部の頂点部に接触し、該ウエハの周縁部が該ステージのウエハ載置部の周縁部に接触するよう該ウエハの周縁部を該ステージ上の押圧固定するものである、ウエハ処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載のウエハ処理装置において、
前記熱交換部は、
前記ステージのウエハ載置面とその上に押圧固定されたウエハとの隙間に、ガス状の熱交換媒体を供給するガス供給機構を有する、ウエハ処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載のウエハ処理装置において、
前記ガス状の媒体は、Heガスである、ウエハ処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載のウエハ処理装置において、
前記ウエハの処理は、プラズマエッチング処理である、ウエハ処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載のウエハ処理装置において、
前記ステージは、前記チャンバー内にプラズマが発生するよう高周波電力を印加するための上下一対の電極のうちの下部電極を構成しており、
前記下部電極の、該ウエハと対向する凸状表面の曲率を、該ウエハの温度が、前記ガス状媒体による該ウエハに対する熱交換により均一になる曲率としたものである、ウエハ処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載のウエハ処理装置において、
前記ウエハー温度を均一に保つ適切な形状の下部電極の曲率は、該下部電極の半径に対する該下部電極の中央部での高さである凸部ギャップの比率Pが、0.001≦P≦0.008となるよう設定されている、ウエハ処理装置。
【請求項9】
請求項7に記載のウエハ処理装置において、
前記ウエハー温度を均一に保つ適切な形状の下部電極の曲率は、
該下部電極の半径に対する該下部電極の中央部での高さである凸部ギャップの比率Pが0.001≦P≦0.004となるよう設定されている、ウエハ処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載のウエハ処理装置において、
前記ウエハー温度を均一に保つ適切な形状の下部電極の曲率は、
該下部電極の半径に対する前記凸部ギャップの比率Pが0.001≦P≦0.0021となるよう設定されている、ウエハ処理装置。
【請求項11】
請求項7に記載のウエハ処理装置において、
前記下部電極は、
その表面に、前記ガス状媒体を噴出すガス噴出口、及び該噴出されたガスを排出するガス排出口のうちの少なくともガス噴出口を形成するとともに、該ガス噴出口から噴出されたガスが円周方向に均一に広がるよう複数の環状の溝を同心円状に複数形成したものである、ウエハ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−146935(P2012−146935A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6310(P2011−6310)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】