説明

ウエーハカセット

【課題】カセット載置テーブルを引き出し及び収納する動作でウエーハカセット内のウエーハが飛び出さないようにすることを目的とする。
【解決手段】ウエーハカセット1は、対向する側板2にウエーハ10を収容する収容溝3が複数形成され、収容溝3は、ウエーハ10が収容される収容領域30と、ウエーハ10を収容領域30に収容する為のガイドの役割となる案内領域31と、から構成され、収容領域30より案内領域31を厚くして段差h3を形成している。そのため、ウエーハカセット1が載置された状態のカセット載置テーブルを引き出し及び収納する動作により、ウエーハ10がウエーハカセット1内から飛び出そうになっても、ウエーハ10の外周10bが案内領域31に形成された段差h3に接触するため、ウエーハ10がウエーハカセット1から飛び出すことを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のウエーハを収納できるウエーハカセットに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のウエーハを収納するウエーハカセットには、対向する側板に複数の収納溝が形成されており、この収納溝にウエーハを載置できるようになっている。
【0003】
しかし、ウエーハカセットを搬送する場合などにおいては、例えばウエーハカセットが転倒したり、傾いたりした際にウエーハカセット内部に収容されたウエーハが外部へ飛び出すことがある。そこで、ウエーハがウエーハカセットから飛び出すことを防止するために、種々の発明が提案されている。
【0004】
例えば、ウエーハを支持する支持プレートの支持面に滑り止めを敷設しているウエーハカセットがある(例えば、特許文献1を参照)。また、ウエーハカセットに形成された収納溝を閉鎖するウエーハ飛び出し防止用のストッパを備えるウエーハカセットがある(例えば、下記の特許文献2を参照)。さらには、ウエーハカセットの収納溝にウエーハを収納してストッパ棒によりウエーハを保持固定するものがある(例えば、下記の特許文献3を参照)。
【0005】
上記したようなウエーハカセットは、加工処理に移行するために加工装置に備えるカセット載置テーブルに載置される。カセット載置テーブルとしては、例えば、ガイド台にカセット載置テーブルを載せて前後方向にスライド移動させることができる引き出し式のカセット載置テーブルがある(例えば下記の特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−71617号公報
【特許文献2】特開平8−53187号公報
【特許文献3】特開平7−183367号公報
【特許文献4】特開平7−78794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引き出し式のカセット載置テーブルに上記したようなウエーハカセットを載置した場合において、当該カセット載置テーブルを引き出し及び収納する動作でウエーハカセット内に収容されたウエーハが外部へ飛び出すことがある。
【0008】
本発明は、ウエーハカセットを引き出し式のカセット載置テーブルに載置させた後、当該カセット載置テーブルを引き出したり収納したりする際に、ウエーハカセットの内部に収容されたウエーハが外部へ飛び出さないようにすることに課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るウエーハカセットは、板状加工物を収容するウエーハカセットであって、
該ウエーハカセットは、対向する側板にウエーハを収容する収容溝が複数形成され、該収容溝が板状加工物外周を支持し、板状加工物を積層状に収容することが可能であり、該収容溝は、板状加工物が収容される収容領域と、板状加工物を該収容領域に収容する為のガイドの役割となる案内領域と、から構成され、該収容領域より該案内領域を厚くして段差を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、対向する側板にウエーハを収容する収容溝が複数形成され、該収容溝は、板状加工物が適正な位置に収容される収容領域と、板状加工物を該収容領域に収容する為のガイドの役割となる案内領域とから構成され、収容領域より該案内領域を厚くして段差を形成している。そのため、カセット載置テーブルにウエーハカセットを載置して、カセット載置テーブルを引き出し及び収納する際にウエーハが前後方向に動こうとしても、収容溝に収容されたウエーハが案内領域の段差に接触するため、ウエーハカセット内に収容されたウエーハが外部へ飛び出すことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ウエーハを収容した状態のウエーハカセットの正面図及びウエーハが収納溝に載置された状態の部分拡大正面図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】ウエーハカセットにウエーハを搬送する工程の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すウエーハカセット1は、被加工物であるウエーハ10を複数収納できるウエーハカセットを示した一例である。まず、ウエーハカセット1の装置構成及び作用について説明する。
【0013】
図1に示すウエーハカセット1は、対向して配設され垂直方向に延びる一対の側板2と、一対の側板2の内壁側に複数形成されウエーハ10を支持するための収容溝3と、側板2の下端部に連結される底板5と、側板2の上端部に連結される天板6とを備えている。
【0014】
図1に示すように、一対の側板2には、垂直方向に延びるナット構造のボルト孔20及び20aがそれぞれ形成されている。
【0015】
図1に示すように、一対の側板2の下端部には、ナット構造のボルト孔20及び20aに複数のボルト7を螺合させて底板5と側板2とを固定させている。また、一対の側板2の上端部には、ナット構造のボルト孔20及び20aに複数のボルト8を螺合させて天板6と側板2とを固定させている。
【0016】
図2に示すように、側板2は、手前側が側板前部21で、奥側が側板後部22となっており、側板後部22を円形のウエーハ10の外周10bに合わせてウエーハ側に向けて湾曲させている。
【0017】
図1に示すように、複数の収容溝3は、それぞれ上下方向に所定の空間を設けて形成されており、当該空間がウエーハ10を搬出入できる収容口4となっている。そして、上下方向に収容溝3が複数形成されていることにより、側板2の側壁は階層構造となっている。このような構造としていることにより、ウエーハカセット1に複数のウエーハ10を積層状に収容できる。そして、ウエーハカセット1にウエーハ10を収容する際には、図2に示すように、ウエーハ10を保持した搬送手段11が収容口4から矢印A方向に水平移動してウエーハ10を進入させる。
【0018】
図1及び図2に示すように、収容溝3は、ウエーハ10を適正な位置で収容する収容領域30と、ウエーハ10を収容領域30に収容するためのガイドの役割となる案内領域31とから構成されている。
【0019】
収容領域30は、下方からウエーハ10を支持する支持面30aを有し、ウエーハ10の下面10aの端部を載置できるようなっている。これにより、ウエーハ10を適正な位置で収容領域30に収容することが可能となっている。
【0020】
案内領域31は、収容領域30の前部に設けられており、収容領域30の上面よりも上面位置を高くすることにより段差を設けて収容領域30よりも厚く形成されている。案内領域31の具体的な構成について以下に説明する。
【0021】
図1の部分拡大図に示すように、案内領域31は収容領域30に隣接しており、収容領域30よりもその形状を厚くして、収容領域30の厚みと案内領域31の厚みとの差を段差h3としている。当該段差h3は、案内領域31の厚さh1から収容領域30の厚さh2を差し引いて求められる。
【0022】
段差h3は、図2に示す側板2の側板前部21側に形成されている。これにより、段差h3がウエーハ10の前方への飛び出しを抑制するストッパ部材としての機能を有する。すなわち、ウエーハカセット10に収容されたウエーハ10が収容口4から外部へ飛び出そうになっても、ウエーハ10の外周10bが段差h3に接触するため、ウエーハ10がウエーハカセット1から飛び出すことがない。
【0023】
段差h3が形成される案内領域31の側壁を案内面31aとしている。案内面31aは、ウエーハ10の外形に沿った円弧状に形成され収容口4から搬入されたウエーハ10を収容領域30へガイドする役割を有しており、ウエーハ10を適正な位置に導くことができる。したがって、ウエーハ10の外周10bが案内面31aに接触することにより、ウエーハ10が収容領域30の支持面30aに安定して載置される。
【0024】
このように構成されるウエーハカセット1に対してウエーハ10を搬入出する手段としては、搬送手段がある。図3に示す搬送手段11は、ウエーハの上面10cを吸引保持する搬送パッドを備えている。
【0025】
以下においては、このように構成されるウエーハカセット1にウエーハ10を搬入出する一連の動作について説明する。
【0026】
ウエーハ10をウエーハカセット1に搬入する際には、図3(a)に示すように、搬送手段11によってウエーハ10の上面10cを吸引保持し、収容口4からウエーハカセット1の内部における収容溝3の上方に進入させる。
【0027】
収容溝3の上方に搬送手段11が進入した後、図3(b)に示すように、搬送手段11を下降させて収容領域30の支持面30aに接近させ、ウエーハ10の下面10aが収容領域30の支持面30aに当接したら、搬送手段11は吸引を停止してウエーハ10を切り離す。その結果、ウエーハ10は、図2に示した案内領域31の奥側において収容領域30に収容される。
【0028】
収容領域30に収容されたウエーハ10を搬出する場合には、上記の搬入動作の逆の動作を行えばよい。
【0029】
複数のウエーハ10がウエーハカセット1に収容された後は、ウエーハ10を加工処理工程に移すために、例えばウエーハカセット1を図示しない引き出し式カセット載置テーブルを備えた加工装置に搬送する。その後、ウエーハ10はウエーハカセット1が載置された引き出し式カセット載置テーブルを引き出し及び収納する際に生じる振動によって、ウエーハカセット1の内部から外部へ向けて飛び出そうになっても、ウエーハ10の外周10bが案内領域31に形成された段差h3に接触するため、ウエーハ10がウエーハカセット1の内部から飛び出すのを防止することができる。
【0030】
なお、実施形態にかかるウエーハカセット1は、引き出し式カセット載置テーブルに載置されるものに限定されるものではない。したがって、ウエーハカセット1は種々の加工装置及びカセットテーブルに適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1:ウエーハカセット
2:側板 20,20a:ボルト孔 21:側板前部 22:側板後部
3:収容溝
30:収容領域 30a:支持面
31:案内領域 31a:案内面
4:収容口
5:底板
6:天板
7:ボルト
8:ボルト
10:ウエーハ 10a:下面 10b:外周 10c:上面
11:搬送手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状加工物を収容するウエーハカセットであって、
該ウエーハカセットは、対向する側板にウエーハを収容する収容溝が複数形成され、該収容溝が板状加工物外周を支持し、板状加工物を積層状に収容することが可能であり、
該収容溝は、板状加工物が収容される収容領域と、
板状加工物を該収容領域に収容する為のガイドの役割となる案内領域と、
から構成され、
該収容領域より該案内領域を厚くして段差を形成したことを特徴とするウエーハカセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−89845(P2013−89845A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230546(P2011−230546)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】