説明

エマルジョン燃料供給装置及びエマルジョン燃料燃焼装置

【課題】装置全体を小型化でき、かつ簡易な構造であって既存の設備にも容易に適用可能なエマルジョン燃料供給装置及びエマルジョン燃料燃焼装置を提供する。
【解決手段】燃料油を燃焼装置に送出する既設の燃料油管Kから分岐して、水及び燃料油を混合させる合流管19と、この合流管19に連結しかつ水及び燃料油の混合溶液を撹拌してエマルジョン化させる撹拌手段4と、この撹拌手段4に連結してエマルジョン燃料を燃焼部Bへと送出する燃料配管34と、燃料配管34に連結しかつ撹拌手段4と燃焼部Bとの間に介在される分離器1と、を有する。そして分離器1は、エマルジョン燃料が流入する流入口36と、エマルジョン燃料を流出させる流出口37とを備えており、分離器1の流入口36が、鉛直方向において流出口37よりも下方に位置している

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルジョン燃料供給装置及びエマルジョン燃料燃焼装置に関し、詳しくは水と燃料油よりエマルジョン燃料を生成し、これを燃焼装置に供給可能なエマルジョン燃料供給装置及びエマルジョン燃料燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、排気ガスの削減化など環境保護意識の高まりや燃料コストの高騰から、エマルジョン燃料が注目を浴びている。エマルジョン燃料とは水と燃料油とを混合して得られる燃料であり、以下のような利点を備える。
【0003】
エマルジョン燃料を内燃機関で着火すると、低沸点の水粒子が気化・蒸発する。すると水粒子の周りを取り囲む油が飛散し、油はより細かい粒子となる。この微爆作用により燃料の噴霧油滴中に含まれた水粒子が、燃焼に伴う熱により気化蒸発をする際に、周囲の油滴を更に微細化する。この結果体積当たりの油粒子の表面積が大きくなり、すなわち酸素との接触面積が増加するため、酸素との反応が向上して燃焼が促進し、局部的な不完全燃焼を低減できる。
【0004】
上記の効果に加えて、エマルジョン燃料は炭素分の多い燃料に対して水が触媒となり燃焼を促進させることができる。その他、水が蒸発する際に蒸発潜熱を火炎から奪うことにより、火炎のピーク温度を抑制するなどの作用を有する。これにより高効率な燃焼が実現でき、粒子状物質や窒素酸化物など環境汚染の源を低減できる。このような有益性からエマルジョン燃料を利用可能なエマルジョン燃料供給装置が種々開発されている(例えば特許文献1)。
【0005】
ところでエマルジョン燃料の燃焼効率を高めるためには、水と燃料油との均一性が要である。ところが、予め調合されたエマルジョン燃料を貯蓄タンクに溜める構造では、時間経過によりエマルジョン燃料が水と燃料油とに分離されて、燃料における含水率の上昇による着火不良や、内燃機関の潤滑不良、錆の発生による異常摩擦など、部材の耐久性の低下を引き起こす虞がある。特に、装置の停止時に装置内に残留したエマルジョン燃料が、時間の経過に伴って分離し、装置の再開時において水分が燃焼部へと送られる結果、燃焼に支障をきたす虞があった。
【0006】
また、装置内で精製されたエマルジョン燃料を一時的に貯蔵するための貯蓄タンクは、装置全体の大型化を促す。同様に、エマルジョン燃料の分離を低減するために乳化剤を添加する形態は、乳化剤用のタンクや、これと連結する専用の配管を用意する必要があり、装置の複雑化や高コスト化を誘引する。また、既存の装置との代替において、現況のスペースに収納しきれない問題もあった。
【0007】
上記の問題を受け、エマルジョン燃料の送出管とは別個に、燃料油専用の送出管を設け、エマルジョン燃料の低質時には燃料油のみを送出する構造とした装置が開発されている(例えば特許文献2)。すなわち、燃料を燃焼部へ送出する送出管を、それぞれの燃料供給源に連結した専用径路に分岐させ、この岐路地点においては三方弁などの弁を使用し、流路方向を適宜調整することで、燃焼部側へ送出する燃料を択一的に選択可能としている。このような形態の一例として、装置の運転再開時には油成分のみを供給可能なエマルジョン燃料製造供給装置を図17に示す。図17は特許文献2のエマルジョン燃料製造供給装置に係る各部品と配管の系統を示す簡略図である。図17のエマルジョン燃料製造供給装置800は、原料810が、原料タンク811から供給ポンプ812により混合槽814へ投入され、水810a、乳化剤810b、軽油810cが混ぜ合わされた混合流体813が作られる。混合流体813は、ポンプ815により乳化装置803へ送り出され、エマルジョン燃料808となって燃料ポンプ804によりエンジン802へ供給される。また、乳化装置803とエンジン802の配管の途中にリリーフ弁805を介して混合槽814へ繋がる配管が設定され、また、軽油タンク811cからは、混合槽814への配管途中で枝分かれし、燃料ポンプ804の直前に三方弁である供給弁806を介して接続されている。これにより適宜配管を切り替えることができ、具体的には燃料供給を純粋な軽油810cとエマルジョン燃料808とに自在に変更できる。
【0008】
すなわち、エマルジョン燃料製造供給装置800を始動させるときは、図18(a)に示すように、軽油810cが図の太線の部分を移動し、純粋な軽油のみで始動する。その後の通常運転時では、図18(b)に示すように、エマルジョン燃料808がエンジン802へと送り込まれる。さらに装置800を停止させるときは、図18(c)に示すように配管内に残留するエマルジョン燃料808を撹拌槽814へ戻し、軽油タンク811cと直接エンジン802とをつなぐ配線とする。これにより配管内に残留しているエマルジョン燃料808は全て軽油810cに置換される。したがってエンジン停止から再開時の間に、配管内に残留しているエマルジョン燃料808が分離して、この水がエンジン再開時にエンジン側へと流入するのを回避でき、つまりエンジン再開時には純粋な軽油のみで駆動できる。
【0009】
しかしながら、図17及び図18の装置800は、燃料を切り替えるための配管が複雑であり、したがって配管ラインの切換を実現する供給弁806の制御系も含めて装置のメンテナンスに手間がかかる。さらに、水と油との乳化を促進させるため乳化剤810b等の界面活性剤や、乳化装置803を別途必要とするため、装置の大型化及びコストの上昇につながる虞もある。加えて、新たなシステムであるため既存の燃焼装置には適用できず、エマルジョン燃料の普及の妨げとなっていた。
【特許文献1】特開平4−313616号公報
【特許文献2】特開2007−204600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来のこのような問題点を解消するためになされたものである。本発明の主な目的は、乳化剤を使用せず、また生成後のエマルジョン燃料を一時的に貯蓄するための貯蔵領域を不要として装置全体を小型化することにある。また、他の重要な目的は、配管を簡便としながら、装置の再開時には油分の高い燃料を燃焼部へと送出可能とすることにある。さらに他の目的として、既存の設備にも容易に適用可能として、エマルジョン燃料の普及に資するエマルジョン燃料供給装置及びエマルジョン燃料燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の第1のエマルジョン燃料供給装置は、燃料油を燃焼させる既存の燃焼装置に付加可能なエマルジョン燃料供給装置であって、燃料油を燃焼装置に送出する既設の燃料油管Kから分岐して、水及び燃料油を混合させる合流管19と、水供給源から供給した水を合流管19へ送出するための少なくとも一の水ポンプP1と、合流管19に連結し、かつ水及び燃料油の混合溶液を撹拌してエマルジョン化させる撹拌手段4と、撹拌手段4に連結してエマルジョン燃料を燃焼部Bへと送出する燃料配管34と、燃料配管34に連結し、かつ撹拌手段4と燃焼部Bとの間に介在される分離器1と、を有する。そして分離器1は、エマルジョン燃料が流入する流入口36と、エマルジョン燃料を流出させる流出口37とを備えており、分離器1の流入口36が、鉛直方向において流出口37よりも下方に位置していることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第2のエマルジョン燃料供給装置は、撹拌手段4の撹拌を停止した状態で、分離器1に滞留するエマルジョン燃料の内、水分が少なく油分が多い成分を燃焼部B側へと移動させつつ、水分が多く油分が少ない成分を分離器1内に滞留するよう構成してなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第3のエマルジョン燃料供給装置は、分離器1の内部には空洞が形成されており、空洞を略鉛直方向において複数段に区画しつつ、それぞれの区画の少なくとも一部が連通するように仕切り可能な仕切り板38を有している。そして分離器1内部の最下段の区画域39に流入口36を設けており、分離器1内に蓄えられる燃料の内、水分が多く油分が少ない成分が下段の区画域39に沈降し、かつ水分が少なく油分が多い成分が上段の区画域39に移動されるよう構成してなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第4のエマルジョン燃料供給装置は、分離器1の流出口37と、燃焼部Bとの高低差hが10mm〜20mmであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第5のエマルジョン燃料供給装置は、分離器1の流出口37は、鉛直方向において燃焼部Bよりも下方に位置している。また燃料配管34の少なくとも一部が、燃焼部B側を上方としかつ流出口37側を下方として傾斜を帯びた姿勢に固定されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第6のエマルジョン燃料供給装置は、第3のエマルジョン燃料供給装置における燃料配管34の内径が13mm以上であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第7のエマルジョン燃料供給装置は、撹拌手段4が、鉛直方向において燃焼部Bよりも上方に固定されている。そして燃料配管34の少なくとも一部が、撹拌手段4側を上方とし、かつ燃焼部B側を下方として傾斜を帯びた姿勢に固定されてなることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第8のエマルジョン燃料供給装置は、第5のエマルジョン燃料供給装置における燃料配管34の内径が8mm以下であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の第9のエマルジョン燃料供給装置は、分離器60を複数有しており、燃料配管34は、撹拌手段4側に近接する上方の第1の分離器60aの流出口37と、燃焼部B側に近接する下方の第2の分離器60bの流入口36とを連結している。さらに燃料配管34は、第1の分離器60aの流出口37から第2の分離器60bの流入口36側へ下方に伸びる下降勾配領域45と、この下降勾配領域45から連続し、第2の分離器60bの流入口36との連結領域44において、第2の分離器60b側を上方とする姿勢に屈曲した上昇勾配領域46とを有している。そして上昇勾配領域46が、第1の分離器60aの流出口37よりも下方に位置することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の第10のエマルジョン燃料供給装置は、下降勾配領域45及び上昇勾配領域46とを有する燃料配管34を複数備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の第11のエマルジョン燃料供給装置は、さらに水ポンプP1の作動状態を制御する制御手段15を有することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の第12のエマルジョン燃料供給装置は、水ポンプP1を複数有しており、制御手段15がそれぞれの水ポンプP1を独立して停止状態または作動状態に制御可能に構成していることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の第13のエマルジョン燃料供給装置は、制御手段15が、さらに撹拌手段4の作動状態を制御可能であって、かつ撹拌手段4の駆動からの経過時間を計測可能な計時手段2を有しており、計時手段2により計測された所定の時間経過後に、制御手段15によって水ポンプP1を作動状態に構成していることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の第14のエマルジョン燃料供給装置は、水ポンプP1と撹拌手段4の間に配置し、かつ合流管19に連結して、水と燃料油との混合溶液を加熱する加熱手段11を有することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の第15のエマルジョン燃料供給装置は、水を貯蓄するための水タンク12を有しており、水ポンプP1が水タンク12に連結して、水タンク12内の水を合流管19へ送出可能に構成していることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の第16のエマルジョン燃料供給装置は、撹拌手段4が、中空円筒状の内壁6と、円筒状の略中心を長手方向に挿通して回転可能な回転シャフト7と、回転シャフト7の軸方向と略直交する方向に突出するよう連結され、連結部から内壁6側へ放射状に延伸しており、かつ回転シャフト7の動きに追従して連結部を中心に回転可能な撹拌羽根8とを備えている。そして撹拌羽根8が、羽の厚み方向に貫通した流通孔20を有していることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の第17のエマルジョン燃料供給装置は、撹拌羽根8の一部を折曲させて羽面を傾斜させていることを特徴とする。
【0028】
また、本発明の第18のエマルジョン燃料供給装置は、撹拌羽根8が、回転シャフト7との連結部から内壁6側への略放射方向を基準線21として折曲されており、撹拌羽根8の折曲角度が25°〜30°であることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の第19のエマルジョン燃料供給装置は、撹拌手段4の手前に配置され、原料を予め混合させる予備撹拌層23を有することを特徴とする。
【0030】
また、本発明の第20のエマルジョン燃料燃焼装置は、水と燃料油とからなるエマルジョン燃料を燃焼可能なエマルジョン燃料燃焼装置であって、燃料油またはエマルジョン燃料を燃焼可能な燃焼部Bと、燃料油を貯蓄するための燃料油タンクT1と、この燃料油タンクT1と燃焼部Bとを連結し、燃料油を燃焼部Bへ送出可能な燃料油管Kと、燃料油管Kに連結して燃焼部Bへエマルジョン燃料を流出可能なエマルジョン燃料供給装置と、を有している。そしてこのエマルジョン燃料供給装置が第1ないし第19のエマルジョン燃料供給装置のいずれか一であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明のエマルジョン燃料供給装置によれば、主に重油や軽油のみを燃焼部に供給する従来型の燃焼装置に適用できる。すなわち既存の設備を利用できるため低コストでエマルジョン燃料を適用でき、環境負荷の低減されたエマルジョン燃料の普及を促進できる。
【0032】
また、本発明のエマルジョン燃料供給装置であれば、燃料油用とエマルジョン燃料用とにそれぞれ専用の配管を設けずして、主に一の配管系統のみを利用する。そして、この配管で、装置の再開時においては、燃焼部側へ油分の高い燃料を燃焼側へ送出し、その後はエマルジョン燃料を送出させることができる。言い換えると、一の配管系統のみで、油分の異なる燃料を送出することができる。これは、本発明の装置が、分離器でもって、分離したエマルジョン燃料の実質上油成分のみを燃焼部側へ送出可能な独特の構造を備えるからである。すなわち、エマルジョン燃料が時間経過とともに分離し、比重の大きい水成分が下層へと沈降し、一方、油成分が上層へと移動する特徴を積極的に利用したものである。この結果、エマルジョン燃料供給装置の配管を容易とでき、機械的または時間的な制御を簡便とできる他、メンテナンスが容易となる。また装置の動作中、常に流路方向を略一定として、配管系統の切り替えを要しないないため、操作を簡易としつつ、ライフ特性をも改善できる。
【0033】
さらに本発明のエマルジョン燃料供給装置及びエマルジョン燃料燃焼装置であれば、乳化剤等の界面活性剤を不要としてエマルジョン燃料を生成できる。これは撹拌手段による高い撹拌能力を備えるからである。水と液体燃料油のみを混合することで得られるエマルジョン燃料は、液体燃料油だけで燃焼させるよりも著しく高い熱量を得ることができる。また、水の配合量分だけ燃料コストを低減することができる他、二酸化炭素の排出を50%以下に抑制できることを本発明者は確認しており、したがって排煙量を顕著に軽減させて環境負荷を低減した燃料とできる。さらに、乳化剤を不要とすることでコストを削減できる。加えて得られたエマルジョン燃料を一時的に貯蔵するタンクを省略できるため、装置全体を小型化できる。
【0034】
特に燃料油を燃焼装置に送出する燃料油管の一部に、エマルジョン燃料を精製する径路を挿入する構造とすることで、既存の燃焼装置を適用してこれにエマルジョン燃料を供給する形態へと容易に流用できる。
【0035】
さらに、本発明の装置は、制御手段により水ポンプの稼働状態を制御できる。これにより、撹拌装置内に供給する燃料油と水との配合比率を適宜調整できる。またエマルジョン燃料精製に要する水の送出量を過不足なく適量とできる。特に、装置の再開時において、水の供給の開始を所定の時間だけ遅らせることで、この所定の間に撹拌装置内へ燃料油のみを送出できる。この結果、上記、エマルジョン燃料の分離した油成分が、装置の再開時において先に消費される際に、相対的に残留エマルジョン燃料の含水率が高くなるが、この所定の間に燃料油のみを供給することによって、先行して消費した油成分を補填できる。つまり装置の再開当初においても、油水の配合比率を所定の割合として、質の高いエマルジョン燃料を精製することができる。
【0036】
また、本発明の装置は、鉛直方向における分離器と燃焼部との位置関係に応じて、燃料配管の内径を所定の径とする。これにより、エマルジョン燃料供給装置の作動停止後に装置内に残存したエマルジョン燃料が水層と油層とに分離した際、分離器内において水成分を比重の大きい下層へと沈降させて、装置の再開時に水成分が燃焼装置側へ進行するのを回避する。一方、上層へと移動する油成分のみを燃焼側へと送出可能とでき、装置の運転再開時における着火不良を回避できる。
【0037】
さらに本発明の装置によれば、撹拌手段による撹拌の効率性が一層高まり、原料の均質性が向上された品質の高いエマルジョン燃料を供給できる。この結果、原料の十分な撹拌が実現された良質なエマルジョン燃料とした後に燃焼装置へと供給することができる。つまり、エマルジョン燃料供給装置の起動開始後に初めて原料を混合してエマルジョン化を図り、エマルジョン燃料生成後は速やかにこれを燃焼装置へと供給することが可能となり、精製されたエマルジョン燃料を一時的に貯蓄する必要がない。したがってエマルジョン燃料の貯蔵タンクを省略できる。このように連続精製方式とすることで、装置の小型化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための、エマルジョン燃料供給装置及びエマルジョン燃料燃焼装置を例示するものであって、本発明は、エマルジョン燃料供給装置及びエマルジョン燃料燃焼装置を以下のものに特定しない。さらに、本明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」、及び「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【実施例1】
【0039】
(構造)
実施例1のエマルジョン燃料供給装置100(以下、単に「装置」と記載することがある。)は、主に燃料油のみを燃焼させる既存の燃焼装置900に付加できる。さらに装置100は、水と燃料油とからエマルジョン燃料を製造し、得られたエマルジョン燃料を燃焼装置へと供給可能とする。実施例1における燃料油とは重油や軽油などを意味しており、またエマルジョン燃料とは例えば水と軽油、水と重油、メタノールと軽油のように不溶性燃料同士を乳化させた燃料のことを言う。図1に、実施例1に係るエマルジョン燃料供給装置100の構成を示す配管簡略図を記し、図2にこのエマルジョン燃料供給装置100の操作に係るタイミングチャートを示す。以下、図1及び図2を用いてエマルジョン燃料の生成に係る一連の流路系統を説明する。
【0040】
一般的な既存の燃焼装置900は図1の一点鎖線領域で示すように、燃料油を貯蓄する燃料油タンクT1と、内燃機関を備える燃焼部Bと、この燃料油タンクT1と燃焼部Bとを連結して燃料油を燃焼部Bへ流出させる燃料油管Kとで主に構成される。そして燃料油は燃料油管Kを介して略一方向に進行して燃焼部Bへと送出される。この従来の燃焼装置900に実施例1のエマルジョン燃料供給装置100を付加することでエマルジョン燃料を燃焼部Bへ供給可能とする。
【0041】
具体的に、エマルジョン燃料供給装置100の配管にかかる簡略図を、図1の二点鎖線領域に示す。エマルジョン燃料供給装置100は、既存の燃料油管Kを分岐するように燃料油管Kの径路途中に連結する。そして図1に示すように、燃料油の進行方向において、分岐以降の燃料油管K側には第1の燃料油弁VAを、また分岐以降のエマルジョン燃料供給装置100側には第2の燃料油弁VBをそれぞれ設けている。そして各弁の開閉を切り替えることで、既存の燃焼装置900あるいはエマルジョン燃料供給装置100の使用を適宜選択できる。例えば、通常の燃料供給はエマルジョン燃料供給装置100を介してエマルジョン燃料とし、エマルジョン燃料供給装置100の故障時、あるいは装置100の初期動作の際には、既存の燃焼装置900を使用する形態とできる。
【0042】
また装置100は、第2の燃料油弁VBと連結し、第2の燃料油弁を経由した燃料油が、水供給源より供給された水と合流する合流管19を備える。言い換えると、燃料油管Kより分岐した合流管19は、径路途中で水供給源より水を供給され、燃料油及び水を混合させる。さらに合流管19は撹拌手段4に連結して、この混合溶液を撹拌手段4へと送出する。撹拌手段4は、モータMを駆動源としており、内部に設けられた撹拌羽根によって、流入した混合溶液を有効に撹拌してエマルジョン化させる。得られたエマルジョン燃料は、燃料配管34を経由して燃焼部B側へと送出される。また、エマルジョン燃料供給装置100は、燃料配管34に連結し、かつ撹拌手段4と燃焼部Bとの間に介在する分離器1を有する。この分離器1の詳細については後述するが、エマルジョン燃料が分離器1を通過することで、エマルジョン燃料の水成分を沈降させ、一方で油成分のみを高効率に回収して、これを燃料側へと供給する形態とできる。
【0043】
すなわち、図1のエマルジョン燃料供給装置100は、燃焼部Bへの燃料油の直接的な供給径路を維持したまま、さらに分岐した合流管19側へ燃料油を送出してエマルジョン燃料とした後、これを燃焼部Bへ送出するエマルジョン燃料精製径路を備える。つまり、燃料油のみを送出する既存の燃料油専用径路に、エマルジョン燃料精製用の専用径路をバイパス接続した構造としている。そして、エマルジョン燃料を燃焼部Bへと供給する通常の形態では、第1の燃料油弁VAを閉じ、かつ第2の燃料油弁VB を開放することで、燃料油の供給径路をエマルジョン燃料供給装置100側とする。また、エマルジョン燃料供給装置100を作動させない場合は、第1の燃料油弁VAのみを開放して、既存の燃焼装置の形態としても使用できる。
【0044】
さらに装置100は、水供給源から供給した水を合流管19へ送出するための少なくとも一の水ポンプP1、P2を備える。図1の例では、水供給源として水を貯蓄するための水タンク12を利用している。さらに水タンク12に水ポンプP1、P2を連結し、この水ポンプP1、P2を介して水タンク12内の水を合流管19へ送出可能としている。
【0045】
また装置100は、水ポンプP1、P2の作動状態を制御する制御手段15を備える。図1の例では、制御手段15は2個の水ポンプP1、P2をそれぞれ独立して停止状態または作動状態に制御できる。ところで、第2の燃料油弁VBの開放により、常時、略一定した燃料油が合流管19へと流出する。この燃料油の送出量に応じた水量を、水供給源側の水ポンプでもって調節することで、燃料油と水との配分量を適宜調節できる。
【0046】
また、制御手段15は、駆動時からの時間経過に伴って各部材のON/OFF動作を制御する開閉制御手段5と、装置100の駆動時からの経過時間を計測可能な計時手段2を備える。この計時手段2と開閉制御手段5とを連動させることで、装置100に内在する総エマルジョン燃料の水油の配分を精密に制御でき、この結果、エマルジョン化に必要な原料を過不足なく撹拌可能として、品質の高いエマルジョン燃料を得られる。
【0047】
(燃料供給の流れ)
さらに、図1のエマルジョン燃料供給装置は、同一の配管を利用しながら、時間の経過に応じて、油分の異なる燃料を燃焼部B側へと送出できることを特長とする。具体的には、装置の停止後に、装置内に残留したエマルジョン燃料の分離による油成分を、分離器1によって抽出する。そして装置100の運転再開時には、この抽出された略油成分のみを流出させて、これを燃焼し、所定の時間経過後にエマルジョン燃料を燃焼部Bへと送出可能な形態としている。以下、図2のタイミングチャートを併用して、時間経過に沿った流路系統を説明する。まずエマルジョン燃料供給装置100の始動時、スイッチSWをオンにし、始動命令を制御手段15へと伝送する。始動信号を受信した制御手段15は、加熱手段11及びモータMを起動させ撹拌手段4を駆動させる。また、運転開始から所定の時間Tだけ、水ポンプP1、P2を停止状態とするのが好ましい。これにより、所定の時間、合流管19への水の供給が停止する。一方で、燃料油は、装置の運転開始から常に燃料油タンクT1から自然流により放出されており、第2の燃料油弁VBを介して合流管19へと進行する。すなわち運転開始から所定の時間Tだけ、撹拌手段4側には燃料油のみが供給される。これは、上述の装置100の運転再開時に、残留エマルジョン燃料の略油成分のみが先行して消費されるため、相対的に水成分の割合が増加する現象を考慮したものである。つまり、水ポンプP1、P2の作動を所定の時間Tだけ遅延させることで、水の供給を停止し、燃料油のみを送出する。この結果、先行して消費された油成分の油量を補給して、全体の水油の配合量を適切に維持できるため、質の高いエマルジョン燃料を得られる。
【0048】
さらにモータMの駆動開始より所定の時間T経過後、制御手段15によって、水タンク12に接続された水ポンプP1、P2を作動状態とし、合流管19へ水を供給する。この結果、合流管19で燃料油と水とが合流されて混合流体となり、この混合流体を撹拌手段4でもって撹拌させる。撹拌手段4で混合流体をエマルジョン化した後、得られたエマルジョン燃料を燃焼部Bへと供給する。
【0049】
また、撹拌手段4の駆動から水ポンプP1、P2の作動までの所要時間Tは、撹拌羽根の枚数または形状、撹拌手段4や分離器1の容量、モータMの回転数、あるいは後述する加熱手段11における加熱温度等に依存して適宜決定される。例えば、図1のように燃焼部Bに2基のバーナを備え、撹拌手段4の容積が2.9リットル、分離器1の容積が約0.5リットルの形態において、燃料油の供給を60リットル/時間、水の供給を燃料油の供給量の25%とした場合、水ポンプP1、P2の遅延時間を3分〜10分とすることで燃料効率の高いエマルジョン燃料を得ることができる。
【0050】
さらに、エマルジョン燃料の供給を停止する際には、スイッチSWをオフにして制御手段15に停止命令を伝送する。制御手段15は水ポンプP1、P2を停止状態とし、これとほぼ同時に加熱手段11及びモータMを停止させる。また、エマルジョン燃料供給装置10は、装置100の作動中にわたって、点灯表示可能な運転ランプLを具備してもよい。
【0051】
なお、水と燃料油との混合溶液を撹拌手段4に流入させる前に、この混合溶液を加熱してエマルジョン化の効率を高めることもでき、この結果、エマルジョン燃料の精製に要する時間を短縮できる。具体的に加熱手段11は、図1に示すように流路系統において水ポンプP1、P2及び撹拌手段4の間に配置されている。詳しくは水タンク12からの水と燃料油タンクT1からの燃料油が混合する合流管19を加熱手段11に連結し、さらにこの加熱手段11を経由して混合溶液を撹拌手段4に送出可能な構造とする。加熱手段11としては例えばオイルヒータが利用できる。また混合流体は50℃〜100℃に加温されることが好ましく、これにより原料の分散状態をより均一化できる。
【0052】
また、原料混合前のラインの一部に永久磁石を装着しても良く、これにより分子が活性化した水が撹拌手段4に供給される。さらに撹拌手段4の手前に配置された予備撹拌槽23内で水と液体油燃料が予め荒混ぜされ、その後この混合液体が撹拌手段4内に移動し、モータMにより駆動された撹拌羽根8により何段階もの対流で十分に撹拌される。この結果、乳化剤を使用せずとも高品質なエマルジョン燃料が精製され、これが燃焼部Bに送られて燃焼する。
【0053】
また、図1のエマルジョン燃料供給装置100は、水タンク12に接続された水ポンプP1、P2を2基備える。さらに水ポンプP1、P2は、内燃機関として同じく2基備え付けられた各バーナB1、B2とそれぞれ電気的に接続しており、制御手段15によってバーナB1、B2のON/OFF信号を各水ポンプP1、P2側へ伝達可能にしている。これによりバーナB1、B2の燃焼状態に応じてそれぞれの水ポンプP1、P2の作動状態を独立して制御することができ、この結果、水の供給量を調節できる。例えばバーナB1、B2の燃焼状態が安定した際、あるいはバーナでの燃焼量を減少させる際、一方のバーナB1を停止させると共に、この信号を受け、一方の水ポンプP1を閉状態とする。この結果、総合的な水の供給量を減縮させ、ひいてはエマルジョン燃料の精製量を抑制できる。つまり稼働中のバーナB2に必要な適量の燃料を供給でき好ましい。
【0054】
このように図1の例では水ポンプP1、P2とバーナB1、B2の搭載数を同一として、バーナの稼働数に応じて対応する水ポンプを同数だけ稼働させることで、過不足無く適量のエマルジョン燃料を燃焼部Bへと送出できる。すなわち詳細な流量制御を不要とし、水ポンプP1、P2のON/OFFによる簡便な制御で、原料の送り出し量を適切に制御でき好ましい。このように適量の燃料を供給する形態により、省エネルギーで環境付加を低減できる他、過剰な温度上昇による炉の損傷を回避し、部材の耐性を向上できる。ただ、バーナの燃焼状態に応じた水供給量を、水ポンプの作動状態でもって調整可能な形態であれば、装置における水ポンプとバーナの搭載数は特に限定されない。
【0055】
また、水タンク12には水ポンプP1、P2を経由して水を合流管19側へと供給する水流路管17が接続されている。また水流路管17には水供給弁V1、V2を連結していることが好ましい。これにより流体の流出方向を一定とできる。例えば図1の例では水供給弁V1、V2としてサイフォン効果を防止する逆止弁を採用しており、この結果、水流を水流路管17から合流管19へとし、燃料油が水流路管17に進行して原料が混合するのを防止できる。また水タンク12は必ずしも必要とせず、例えばタンクレス供給方式で水を供給し、これを圧力調整弁や流量調節弁などの弁を介して水の供給量を調節することもできる。
【0056】
(撹拌工程)
以下に、水及び燃料油の混合流体を撹拌してエマルジョン化する手段について説明する。混合流体は加熱手段11を通過し加温され、さらに流路管継手22を介して予備撹拌槽23に投入される。予備撹拌槽23は、この混合流体を撹拌手段4に流出させるために、撹拌手段4の前段階に配置された貯蓄槽である。言い換えると、混合流体はいったん予備撹拌槽23内に投入され荒混ぜされた後、中空円筒状の撹拌手段4内に流出し十分に撹拌される。このように複数段階の撹拌手段を通過することで原料の撹拌性を一層高めることができる。
【0057】
図3、図4は、図1における予備撹拌槽23及び撹拌手段4のIII−III’線及びIV−IV’線におけるそれぞれの断面図である。図3、図4に示すように、予備撹拌槽23は原料の混合流体を貯蔵できるよう中空状であって、さらに撹拌手段4の外面を被覆するように撹拌手段4よりも大きい径を備える。この予備撹拌槽23と撹拌手段4の内部は共通する中空部を備えており、さらに撹拌手段4には、予備撹拌槽23内の混合流体が撹拌手段4の内部へと流入可能に複数の孔が形成されている。具体的には図3、図4に示すように、撹拌手段4は、外壁の厚さ方向に貫通する貯留槽流出孔24を複数設けており、図4の例ではこれらの貯留槽流出孔24を対向して形成している。予備撹拌槽23の外壁はこの貯留槽流出孔24上を覆う位置に配置されており、予備撹拌槽23内に投入された混合流体が、貯留槽流出孔24を通過して撹拌手段4へと送出される。
【0058】
また、装置100は撹拌手段4に流入する前工程で流体の前処理を施すこともできる。図1、図3、図4の例では合流管19と撹拌手段4との連結部に設けられた流路管継手22の少なくとも一部に、管の内部の中空状を形成する管壁に永久磁石を装着させて、磁気による分子の微粒子化を促している。永久磁石とは、大きな磁化を受けその磁気力を保持する磁石を指し、具体的にはKS鋼・OP磁石・フェライト・アルニコなどが使用される。図3、図4に示すように、流路継手22の管路の少なくとも一部を被覆するよう磁石固定コア25が固定され、この磁石固定コア25を構成する永久磁石26に狭まれた管内を混合流体が通過することで、原料の水分子構造を磁気力によって微粒子に分解できる。これにより後の工程である水と燃料油との撹拌過程において、ミクロ単位の油滴を生成し易く生成燃料の一層の品質向上を図ることができる。特に実施例1の装置100は始動開始時の命令後初めて原料を混合・撹拌してエマルジョン化を図るため、分子処理手段を有することでエマルジョン化の促進によるエマルジョン燃料の生成スピードを向上でき好ましい。また、流体の前処理のタイミングは撹拌工程の前であれば特に限定されず、例えば図1〜図4の例では水と燃料油との混合後に行うが、水のみの供給時点で水分子の微粒子化を実行しても構わない。また、装置100は分子処理工程を省略してコスト及び装置のサイズを低減することもできる。
【0059】
(撹拌手段)
さらに撹拌手段4内に流入した混合流体は、撹拌手段4の内筒部に設置した撹拌羽根8によって高速に撹拌される。具体的に、図3の撹拌手段4は、中空円筒状の内壁6と、円筒状の略中心を長手方向に挿通して回転可能な回転シャフト7とを有する。さらに撹拌手段4は、外筒29の長手方向における両端を閉塞する閉塞面27を有し、少なくとも一方の閉塞面27は回転シャフト7が貫通してこの回転シャフト7を回転可能に軸支できる回転シャフト受け28の役割を担う。この閉塞面27は、図3に示すように外筒29の両端を閉塞するように連結され、回転シャフト受け28の周縁域に設置されたボルト用受け座30にボルト31で固定して、閉塞面27と外筒29を頑強に連結している。ただ、双方の部材の連結方法はこれに限定せず、例えば一体に成形することで一の部材とし、応力の高い強靱な構造とすることもできる。
【0060】
さらに、この回転シャフト7の軸方向と略直交する方向に突出するよう複数の撹拌羽根8が連結されている。撹拌羽根8は回転シャフト7との連結部から撹拌手段4の内壁6側へ放射状に延伸しており、かつ回転シャフト7の動きに追従して連結部を中心に回転できる。撹拌羽根8は回転シャフト7と強固に連結され、混合流体を撹拌可能であれば、ポリマー、金属、樹脂など材質は特に限定されない。また撹拌羽根8の表面に無数のドットや格子状など凹凸形状にパターン形成できる他、防錆加工など種々の表面処理を施してもよい。実施例1ではステンレススチール(SUS)を使用した。SUSは鉄にクロムを含有させた合金鋼であって、さらにニッケルを含有する場合もある。特に、実質上クロムを18%及びニッケルを8%含有するSUS304の使用が耐食性及び耐孔食性の観点から好ましい。また、回転シャフト7と撹拌羽根8とは別個の部材で強固に連結される。ただし、双方の部材を一体に成形して部品点数の低減によるコスト削減や、連結部の一層の強化を図ることもできる。
【0061】
図6は撹拌羽根8の簡略図を、また図7は撹拌羽根8の平面図をそれぞれ示す。さらに図8は撹拌羽根8の一部側面図であって、具体的には図7における一枚の撹拌羽根8を外側から(図7の矢印方向から)側面視した際の一部側面図である。この撹拌羽根8は、図7に示すように、羽根の厚み方向に貫通した流通孔20を有する。撹拌羽根8は回転シャフト7との連結部を中心として放射状に延伸されており、羽根の外周で構成される円状の径方向に一定の間隔で断続されている。
【0062】
また図6〜図8に示すように、撹拌羽根8の一部を折曲させて羽面の角度を変化させている。具体的には撹拌羽根8上であって、回転シャフト7との連結部から円周側への略放射方向、すなわち径を基準線21として折曲しており、この撹拌羽根8の折曲角度θを25°〜30°とする(図8参照)。すなわち撹拌羽根8は、フラップ状に折り曲げられて羽根の反りを大きくしており、さらに尖端はミキサーの爪のように折曲している。
【0063】
撹拌羽根8は基準線21を山あるいは谷に折曲することで対向する2方向への反りを有する。すなわち撹拌手段4内における燃料を送り出す正方向、あるいはこの正方向と反対の逆方向へと、撹拌羽根8の配置方向を適宜選択できる。撹拌羽根8の装着方向は特に限定されないが、反りが対向するように少なくとも一部の配列が正逆方向になることが好ましい。これにより撹拌によるさらなる対流が増して混合流体は一層均質な混合状態となる。一方、撹拌手段4の他の形態を図5に示す。図5の撹拌手段4における撹拌羽根8は、図3の撹拌羽根8と同一であるが、反りの方向が異なる。すなわち図5の撹拌羽根8は、燃料の送り出し方向に反りの方向を統一して配置している。この結果、燃料の送り出し能力を高められ、撹拌手段4よりエマルジョン燃料を速やかに送出することができる。
【0064】
また、図3及び図5に示す撹拌手段4は、回転シャフト7の外周面と離間して回転シャフト7の周囲を被覆するスペーサ10を有する。スペーサ10は回転シャフト7の径よりも大きい径を有しており、内部の中空状に回転シャフト7を挿通して、回転シャフト7の回転に連動状態に固定されている。図3及び図5の例では、スペーサ10を回転シャフト7の長手方向に沿って略等間隔に配列して、アンカー32により回転シャフト7と固定している。また撹拌手段4は、撹拌羽根8の回転面と離間しかつ略平行な姿勢になるよう配置された抵抗板9を備える。図9は図3のIX−IX’線における断面図であり、抵抗板9の一部拡大図を示す。この抵抗板9は撹拌手段4内に固定されたスペーサ10に連結されて、回転する撹拌羽根8により生じる対流を一層あおってさらなる混合流体の拡散を助長する。
【0065】
抵抗板9は図3に示すように、複数の撹拌羽根8の間、或いは撹拌羽根8を狭むように配置される。ただ、抵抗板9の配置間隔は特に限定されない。図3の例では2枚の抵抗板9の間に2枚の撹拌羽根8が内在するように位置決めされている。抵抗板9を備えることで、撹拌手段4内での撹拌対流効果が一層有効となり、原料の混合による均一性がより促進される。この結果、乳化剤を使用することなくエマルジョン燃料を円滑に生成することができる。
【0066】
また、撹拌手段4内の撹拌羽根8を回転させる回転シャフト7の駆動方法は特に限定されない。図3の例では回転シャフト7を接合用プーリーPとテーパーキー33により固定する。さらに図1に示すように回転力を発生する電動機としてモータMを採用し、このモータMの回転モータ軸と撹拌手段4の回転シャフト7とを巻掛伝導の接合用プーリーPを介して動力を伝達している。
【0067】
撹拌手段4が上記の構造を備えることで、水と燃料油との混合流体を撹拌する能力が極めて高くなり、乳化剤などの界面活性剤を使用せずとも、原料を十分に撹拌することができるため良質なエマルジョン燃料を得ることができる。つまり、撹拌手段ではまず、予備撹拌槽23内で水と液体燃料が荒混ぜされ、その後撹拌手段4内に移動した混合燃料がモータMにより駆動された撹拌羽根8により何段階もの対流で十分に撹拌される。すなわち、撹拌手段4の内筒部に設置した回転シャフト7がモータ駆動により回転し、この回転シャフト7に連結された撹拌羽根8及び抵抗板9が追従して回転する。さらに撹拌羽根8の反りの方向を一定とせずランダムに対向配置させることで大小様々な渦流が不規則に生成されて乱流となる。図7の撹拌羽根8の例では羽根の折曲により構成される折曲面18を、撹拌羽根8の回転面より図の奥側へと深めて立体的に形成している。そして撹拌羽根8を回転して折曲面18を混合流体と衝突させ、さらにこの衝突の抵抗に逆らうように図7の場合であれば撹拌羽根8を左回転させる。これにより混合流体の撹拌性を高めると共に、抵抗板9に対流が衝突してさらなる乱流を発生し、混合流体の拡散を一層促進する。また、混合流体は図3に示すように撹拌羽根8あるいは抵抗板9の遠心力により撹拌手段4の内壁6に衝突し、内筒部の圧を上昇させる。ほぼ同時に撹拌羽根8の折曲面18が混合流体を一方向に押し出すと共に、この反作用により混合流体がの一部が流通孔20を該押出方向と反対方向に通過する。上記構成により、撹拌手段4の中空内において混合流体が部材に衝突、あるいは移動を繰り返すことで生成燃料の油滴密度を高め良質な燃料を生成する。このように精製されたエマルジョン燃料は、図1に示すように撹拌手段4の一部に連結された流出管継手33を介して燃料配管34へと流出し、燃焼部Bへ供給される。そして流出用ポンプP3あるいはコンプレッサーにより燃料を圧縮してその圧力を高め、内燃機関でもって噴霧し燃焼させる。
【0068】
実施例1の制御手段15であれば、装置100の駆動時には燃料油のみを供給する流路形態とし、これにより着火不良や着火に要する時間の短縮を図れる。さらに燃焼の安定後には燃料油の流出経路をエマルジョン燃料を供給することで、燃焼のエネルギー効率を高めることができる。
【0069】
さらに実施例1のエマルジョン燃料供給装置100は、駆動から初めてエマルジョン燃料の製造が開始され、この精製されたエマルジョン燃料を燃焼部B側へと速やかに送出する。したがって、エマルジョン燃料を一時的に貯蓄する貯蓄タンクを必要としないため、装置100の小型化が図られる。さらにこのように連続処理方式の装置100では、貯蓄による分離を回避できるため、燃料の質が悪化する懸念を払拭できる。さらに原料の配合比率を制御手段15でもって精密に制御できるため、質の高いエマルジョン燃料を燃焼部Bへ供給して、安定した燃焼を維持できる。
【0070】
また、燃料配管34の系統内に電気的制御可能な弁を設ける形態とすることもできる。これにより撹拌手段4からのエマルジョン燃料の送出のタイミングを制御して、撹拌時間を一層精密に制御可能とできる。さらに、撹拌手段4を通過した混合溶液を燃料供給弁の手前で再び撹拌手段4内に循環させる循環構造を有する形態を付加してもよい。さらに装置100の停止時において、装置100内に残留したエマルジョン燃料が、燃料配管34を経由して燃料油管K側に逆行するのを回避するため、燃料油管Kの一部に逆止弁を設ける構造としてもよい。
【0071】
(分離器)
ところで、装置100の運転を停止直後、装置100内にはエマルジョン燃料が残留する。この残留エマルジョン燃料は、時間の経過と共に油成分と水成分とに分離される。実施例1のエマルジョン燃料装置100において、撹拌手段4内に残留した残留エマルジョン燃料については、装置100の再開とほぼ同時にモータMを起動させることで撹拌されることとなり、均質性を高めて再エマルジョン化される。さらに、撹拌手段4以降の残留エマルジョン燃料については分離器1内に滞留する。この分離器1にて、分離した油成分のみを抽出し、装置100の運転再開時にこの油成分を燃焼部側へと送出する。この結果、分離されて生じた水成分が、装置100の運転再開時に燃焼部B側へ送出されて着火不良となることを回避し、かつ油分の高い油成分のみを燃焼部B側へと送出することで再開時の着火をスムーズに実現する。この油成分を先行して送出する間に、並行してエマルジョン燃料を生成し、そして生成後には速やかにエマルジョン燃料を送出する形態とすることで、装置100の駆動時には高い油分のみを燃焼部Bへ供給し、引き続いてエマルジョン化された燃料が燃焼部B側へ送出される。したがって、燃焼部Bへの燃料供給を途切れることなく連続して維持でき、安定した燃焼状態を得られる。以下、分離器1について詳しく説明する。
【0072】
分離器1は、図1に示すように、撹拌手段4を通過したエマルジョン燃料が流入する流入口36と、このエマルジョン燃料を流出させる流出口37とを備える。また実施例1の装置100では、撹拌手段4を鉛直方向において燃焼部Bよりも下方に固定している。そして撹拌手段4と連結した分離器1の流入口36は、燃焼部Bと連結した流出口37よりも下方に位置している。また装置100の停止後に分離器1内に蓄えられたエマルジョン燃料は、流入口36側と流出口37側で、水油の含有比率が異なる成分に分離する。すなわち分離器1内の残留エマルジョンは、時間の経過につれ、分離器1の流出口37側の燃料を、流入口36側の燃料成分と比較して、水分が低く油分が高い成分とできる。そして装置100の運転再開時には、この油分の高い燃料を燃焼部Bへと供給する。
【0073】
(高低差)
図10はエマルジョン燃料供給装置100の分離器1近傍における配管の一部拡大図である。図10の分離器1は、燃焼部Bよりも低位置に固定されており、すなわち分離器1の流出口37を鉛直方向において燃焼部Bよりも下方に設置している。また、分離器1及び燃焼部Bは、これらの双方を連結する連結管として燃料配管34を備える。この燃料配管34と連結される分離器1の流出口37と、燃焼部Bとの高低差hが10mm〜20mmになるよう位置決めされていることが好ましい。高低差hを上記の範囲とすることで、装置の停止の間に分離した残留エマルジョンの水分が、高位置側の燃焼部Bへと流出することを回避できる。また、撹拌手段4と燃焼部Bとを接続する燃料配管34が、水平もしくは燃焼部B側が上方となる姿勢に固定される。この燃料配管34は、例えば傾斜を帯びた直線状、あるいは配管の一部を折曲した段差状、U字状などとできる。図10の例では、この流出口37と燃焼部Bとを連結する燃料配管34を、燃料の送出方向である燃焼部B側に上昇するよう傾斜を帯びた直線状としている。そして水平方向を基準として、その傾斜角度θ2を3°以上とした。このように分離器1を燃焼部Bよりも低位置とし、また燃料配管34の傾斜を上記の範囲とすることで、装置100の停止後から再開時までの静止状態の間、撹拌手段4以降の分離器1内に残存したエマルジョン燃料は低地側に沈降する。つまり、エマルジョン燃料の成分が分離した場合であっても、低質化したエマルジョン燃料が上方の燃焼部B側へ進行することを回避できる。
【0074】
さらに、上記の構成における分離器1において、燃料配管34の内径は13mm以上、好ましくは13mm以上34mm以下とする。13mmより細い径であれば、管内における燃料の移動が滞り、燃料が管内を閉塞して装置100内の圧が過度に上層する虞が高い。したがって燃料配管34の内径を上記の範囲に特定することで、管内における燃料をスムーズに通過させ、装置100の内圧を好適に維持できる。
【0075】
また、分離器1の具体的な構成について説明する。図11は、実施例1に係る分離器1及びその周辺の簡略図である。図11の分離器1は、連結される燃料配管34の勾配が上記範囲内であって、さらに燃焼部Bとの高低差hにおいても上記範囲を満たす。また図11の分離器1は、扁平形状であって、鉛直方向に対して傾斜を帯びて固定される。傾斜は燃焼部B側を高くして、撹拌手段4側を低くする姿勢に構成されており、図11では右下がりとしている。さらに分離器1の底面側であって、かつ傾斜の低地側(図11の右下)に流入口36を設け、さらに分離器1の上面側に流出口37を備える。
【0076】
また、分離器1は内部に空洞が形成されている。そして分離器1は、この空洞を略鉛直方向において複数段に区画しつつ、それぞれの区画の少なくとも一部が連通するように仕切り可能な仕切り版38を有する。例えば図11の仕切り版38は、平板状であって、一端を分離器1の内壁に連結して、他端は内壁から離間して固定されている。すなわち仕切り版38によって区画された分離器1内のそれぞれの区画域39は、仕切り版38と分離器1の内壁との離間域を介して互いに連通している。さらに仕切り版38は、水平方向を基準にして、分離器1全体の傾斜と逆方向に勾配を備えており、すなわち図11の例では右上がりに傾斜を帯びている。図11の例では、一の仕切り版38によって分離器1の内部を上段と下段の区域に分割しているが、仕切り版38の設置数と、区画数については特に限定しない。ここでは、説明のために各区画域39に名称を付し、上段側を上段側区画域39a、下段側を下段側区画域39bと呼称する。
【0077】
分離器1が上記の構造を備えることで、エマルジョン燃料供給装置100内に残留したエマルジョン燃料が水成分と油成分にそれぞれ分離した際に、この分離器1でもって油成分のみを効率良く回収し、装置100の運転再開時に実質上油成分のみを燃焼部へと送出できる。具体的に、図12は図11に示す分離器1の一部断面拡大図である。装置100の通常の運転時においては、流入口36から流入したエマルジョン燃料は、分離器1内の最下段の区画域39に設けられた流入口36を介して、下段側区画域39bに進行する。そして連通域40を通過後、上段側区画域39aへと移動し、さらに流出口37を介して分離器1外へと流出する。すなわち燃焼部へと供給される。
【0078】
一方、装置100が停止後、装置100内の燃料の流動が停滞し、時間の経過につれて残留したエマルジョン燃料が分離する。実施例1の装置100では、このエマルジョン燃料が分離する特性を積極的に利用し、分離器1でもって分離した油成分を抽出して、これを有効に利用することを特長とする。すなわち、図12に示すように、分離器1内で比重の大きい水性分42を下方へと沈降させ、比重の小さい油成分4を上層へと移動させる。この際、分離器1は、各区画域39a、39bにおいて底面が傾斜を帯びており、かつ各区画域39の勾配方向を交互にすることで、比重の大きい水成分が最も下段の区画域39bにおける低位置側へと移動できるよう構成されている。流入口36は、この低位置近傍に連結されており、したがって、分離器1内における最も低位置側に沈降した水成分を、自重によって流入口36を介して撹拌手段4側へと回収可能とする。さらに回収された流体は、装置100の運転再開時に再びエマルジョン化され、燃料の効率化を図れて好ましい。一方、上層に蓄積する油成分43は、上段側区画域39aに移動する。そして装置100の運転再開時に流出口37を介して、実質上油成分43のみを燃焼部Bへと供給できる。
【0079】
上記の構造であれば、撹拌手段4の撹拌を停止した状態で、時間の経過にともなって残存エマルジョン燃料が比重の差により上層を油成分、下層を水成分として分離した場合であっても、分離器1内における水分が少なく油分が多い成分を上段の区画域39に移動させつつ、水分が多く油分が少ない成分を下段の区画域39に沈降させて分離器1内に滞留させることができる。すなわち、燃料配管34における燃焼部Bに近接する側を油層、撹拌手段4に近接する側を水層とでき、これにより装置の再開時に万一残存する混合流体が燃焼部B側へ進行した場合であっても、油成分が燃焼部Bへと移動する。したがって、水分の進行を回避して着火不良を回避できる。同時に下層側は自重により撹拌手段4へと回収され、モータMの再開により撹拌が促進され再度エマルジョン化を実現できる。したがって、残留エマルジョン燃料が分離し、含水率が高い状態のまま燃焼部Bへ進行することを著しく低減できる。
【0080】
また、分離器1全体の傾斜角度θ3は3°〜5°が好ましい。さらに仕切り版38の傾斜θ4は5°〜15°が好ましい。つまり、分離器1の底面あるいは仕切り版38を、それぞれの傾斜が交互になるよう上記の範囲に特定することで、分離した水性分を一層効率良く低位置側へと移動させることができ、この結果、油成分と水成分とを効率良く分別できる。また鉛直方向いおいて、撹拌手段4の上方に分離器1が固定されることが好ましい。これより残留エマルジョンの油成分を高位置側の分離器1で、油分の純度が高い油成分を収集でき、一方、分離器1内の下層側に沈降した水成分を、さらに低位置側の撹拌手段4に回収しやすくできる。
【0081】
さらに分離器1は開口部である空気抜き41を有することが好ましい。図12の例では、分離器1の上面側であって、かつ傾斜の上方に空気抜き41を設け、この空気抜き41を介して分離器1内の空洞と、分離器1の外部とを連通可能とした。これにより燃料の揮発成分が外部へと吸気されて、分離器1内部の圧が過度に上昇することを回避できる。すなわち、燃料の揮発による分離器1内の圧の高まりを減圧して、分離器1内の圧を調整できる。この結果、下層の水成分を撹拌手段4に回収しやすくでき好ましい。
【0082】
また実施例1のエマルジョン燃料供給装置100は、図1に示すように、既存の燃料油管Kの流路系統における2箇所に装置100をバイパス接続している。つまり三方弁など複雑な分岐弁を使用することなく装置100を連結できる。この結果、配管を容易として機械的及び時間的な制御を簡便とでき、また装置装置の耐久性を向上して好ましい。対して、分岐弁を複数有する形態であれば、それぞれの分岐弁の開閉の時間差を設けるなど相関的な時間制御が必要となり制御が複雑となる。
【0083】
さらに、実施例1の装置100は従来の燃料供給系統に流用するのが容易である。これは装置100が、上述の通り、生成されたエマルジョン燃料の一時的な貯蔵タンクを不要として全体の容量をコンパクト化できるからである。したがって、既存の装置の配置スペースに対して、装置100を装着する際に必要な増加領域を最小限に抑制できる。加えて、装置100は専用のバーナを必須としておらず、種々の燃焼装置を採用できる。したがって、図1の一点鎖線及で示す従来タイプの装置900、すなわち主に燃料油のみを燃焼装置へと供給する装置において、燃料油タンク、燃焼装置及びその配管をそのまま流用することができ、この燃料油タンク及び燃焼装置間に、水供給系統と撹拌系統をバイパス接続することで、従来の装置を実施例1の装置100に容易に流用することができる。
【0084】
このように実施例1のエマルジョン燃料供給装置及びエマルジョン燃料燃焼装置は、燃焼用バーナにより給湯用、冷暖房用など燃焼用燃料を供給する既設の燃料油供給流路管の一部に水供給流路管、ヒーター、撹拌手段を連結しうるバイパス管路を設置し、既設の燃焼用バーナに供給する事を可能とした構造である。また、複数の弁を介する流路径路の切り替えなど複雑な配管を必要とせず、簡易なライン系統とし設置及びメンテナンスの負担を極減できる。
【実施例2】
【0085】
また、実施例1の分離器1を他の形態とした例を実施例2として挙げる。実施例2のエマルジョン燃料供給装置100は、実施例1の装置と比較して分離器に係る構造のみが相違しており、他の構造については同様である。したがって実施例1の装置と同様の構造については同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0086】
実施例2の分離器50及びその周辺の簡易図を図13に示す。分離器50は、実施例1の分離器1と同様に、低位置側に流入口36を、さらに高位置側に流出口37をそれぞれ備えており、この分離器1を通過する流体において、分離器1の流出口37側の油分を、流入口36側の油分より高くできる。また、分離器50と燃焼部Bとを連結する燃料配管34においても実施例1と同一の傾斜を有し、また内径についても同様とする。さらに、分離器50と燃焼部Bとの高低差における相対的な位置関係についても実施例1と同様であり、すなわち分離器50の上方に燃焼部Bを固定してなる。
【0087】
図14は実施例2の分離器50に係る拡大図である。この図に示すように、分離器50は水平方向よりも鉛直方向に長い縦型タイプである。また分離器50内は、実施例1と同様、内部に空洞が形成されている。ただ、実施例2の分離器50は内部の空洞が区画されておらず、鉛直方向に連通した一の空間域から構成される。また、図13及び図14の例では、分離器50は鉛直方向に固定されており、すなわち傾斜を帯びない姿勢で固定されている。
【0088】
実施例2の分離器50は、実施例1と同様、装置100の停止以降に、分離したエマルジョン燃料の油成分を上層に集める。そして装置100の運転再開時には、この略油成分のみを流出口37を介して燃焼部B側へと送出させる。一方、比重の大きい水成分は下層に沈降させて、燃焼部B側へ進行するのを回避する。この結果、運転開始時には、残存するエマルジョン燃料の油成分を送出して着火を可能とし、着火のための新たな燃料油を必要としない。また、燃料油を送出するための専用の配管を設けずして、同一の配管で、運転再開時には、油分の高い燃料油を送出し、その後、精製されたエマルジョン燃料を速やかに送出できる。
【0089】
実施例1及び実施例2のエマルジョン燃料供給装置では、撹拌手段4を低位置側に配置することが好ましい。この結果、撹拌手段4と、分離器1、50及び燃焼部Bとの高低差を稼ぐことができ、油分の高い油成分を抽出することができる。
【実施例3】
【0090】
さらに、分離器の別の形態を備えるエマルジョン燃料供給装置を実施例3として、この分離器60に係るエマルジョン燃料供給装置100の一部拡大図を図15に示す。また図16は、図15の分離器近傍における拡大図である。実施例3のエマルジョン燃料供給装置100は、実施例1及び実施例2の装置と比較して、分離器に係る構造のみが相違しており、したがって同様の構造については同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0091】
実施例3のエマルジョン燃料供給装置は、実施例1及び実施例2と比較して、鉛直方向における撹拌手段4と燃焼部Bとの相対位置が異なる。すなわち、実施例3のエマルジョン燃料供給装置では、撹拌手段4が燃焼部Bの上方側に位置しており、具体的には図15に示すように、鉛直方向において分離器60の流出口37が燃焼部Bよりも上方に位置している。さらに、撹拌手段4と燃焼部Bとの間に設けられる分離器60は、単一でもよいが、図15に示すように複数とすることが好ましい。これにより、残留エマルジョン燃料が高位置側から低位置側へ移動する形態であっても、それぞれの成分を効率良く分別することができる。
【0092】
図15の例では、撹拌手段4と燃焼部Bとを連結する燃料配管34の途中径路に、3つの分離器60が略水平あるいは傾斜を帯びて固定されている。。さらに詳しくは、燃焼部B側に最も近接する分離器60を、その流入口36が流出口37とが直線状に位置するよう略水平に固定している。一方、他の分離器60については、流入口36が、鉛直方向において流出口37よりも下方となる姿勢に傾斜を帯びて固定されている。
【0093】
また燃料配管34は、撹拌手段4側に近接する上方の第1の分離器60aの流出口37と、燃焼部B側に近接する下方の第2の分離器60bの流入口36とを連結する。そして燃料配管34の少なくとも一部は、図15に示すように、撹拌手段4側を上方とし、かつ燃焼部B側を下方として傾斜を帯びた姿勢に固定されており、すなわち燃焼部B側に近接するにつれて下降している。そして燃料配管34と分離器60の流入口36との連結領域44においては、実質的に燃料の進行方向である燃焼部B側が上昇するよう、燃料配管34を屈曲していることが好ましい。さらに詳しくは、第1の分離器60aと第2の分離器60bとを連結する燃料配管34は、その一部を屈曲して段差状に形成されている。燃料配管34の形状について、流体の実質上の進行方向にしたがって具体的に説明する。燃料配管34は、第1の分離器60aの流出口37近傍においては略水平に固定され、続いてこの水平域から下方に屈曲する。すなわち、燃料配管34は、第1の分離器60aの流出口37から、第2の分離器60bの流入口36側へ下方に伸びる下降勾配領域45を有する。そして燃料配管34は、この下降勾配領域45の最低部において上方に屈曲した上昇勾配領域46を備える。具体的に、上昇勾配領域46は、下降勾配領域45から連続しており、そして第2の分離器60bの流入口36との連結領域44において、この第2の分離器60b側を上方とする姿勢に屈曲している。さらに上昇勾配領域46の端部は、第2の分離器60bの流入口36と連結する(図16参照)。また図15の例では、上昇勾配領域46が、第1の分離器60aの流出口37よりも下方に位置する。より具体的には、燃料配管34は、鉛直方向において、第1の分離器60aと第2の分離器60bとの高低差の間に配置されている。一方、燃料配管34の内径は8mm以下、好ましくは1.5mm以上8mm以下とする。このように撹拌手段4から燃焼部Bまでの流路において、上記範囲の内径を有する燃料配管34を利用して、上記の独特の勾配を設けることで、装置100内に残留するエマルジョン燃料が分離した場合であっても、油分の高い油成分のみを低位置側の燃焼部Bへと移送することができる。それはエマルジョン燃料の流速を低減できるからである。
【0094】
すなわち、撹拌手段4の撹拌を停止した状態で、撹拌手段4の流路以降に残留するエマルジョン燃料は、自重によって低位置側へと移動する。ただ、上記範囲の内径を有する燃料配管34であれば、エマルジョン燃料の進行速度を制限して、緩やかに流動させることができる。そして残留エマルジョン燃料は、図16に示すように、下降勾配を備える燃料配管34内を移動し、上昇勾配に変化する連結領域44にて、流動速度をゆるめる。そして減速したまま分離器60内へと進行する。分離器60内で略滞留したエマルジョン燃料は、比重の差より下層側の水成分42と、上層側の油成分43とに分離する。そして上層の油成分43のみが流出口37を介して燃料配管34側に進行し、燃焼部Bへと供給される。
【0095】
また、上記燃料の移動に影響を及ぼさない範囲であれば、燃料配管34の一部が、第2の分離器60bよりも下方に位置されていてもかまわない。すなわち燃料配管34と第2の分離器60bとの連結領域44において、屈曲における最も低い部分が第2の分離器60bよりも下方に位置する形態とできる。これにより上昇勾配領域46の傾斜度を高めることができ、エマルジョン燃料の分離後における水分の高い成分を、燃焼部Bへ供給することを回避できる。
【0096】
さらに図15の例では、下降勾配領域45及び上昇勾配領域46とを備える燃料配管34を複数有する。そして燃料配管34の径路途中に複数の分離器60を備える。この分離器60は、流入口36側を低位置としてかつ流出口37側を高位置とする姿勢に勾配を付加して固定されることが好ましい。これにより、装置100の停止中、残留エマルジョン燃料において、高位置の撹拌手段4側から低位置の燃焼部B側への流動速度を好適に調整しつつ、分離器内での水油の分離を促進できるからである。したがって、それぞれの分離器の傾斜度は一定、あるいは配置位置によって勾配に緩急をつけるなどそれぞれに規定してもよく、流体の進行スピードを考慮して決定することができる。例えば、燃焼部Bに最も近接する側の分離器60のみを略水平とし、他の分離器60については燃焼部B側を高くしつつ撹拌手段4側を低くする姿勢に固定するなど、燃料配管の部位によって、流体速度を変化させる構造としてもよい。ただ、少なくとも一の分離器60は、燃焼部Bの近傍に設置されることが好ましい。これにより、燃焼部Bの直前で燃料の分離を促すことができるため、水分が燃焼部B側へと流出することを一層確実に回避しつつ、水分を低減した油分を燃焼部側へと送出できる。
【0097】
また分離器60は、図16に示すように、流入口36側の開口部に挿入して連結されたソケット47を備える。このソケット47は、内部を空洞とする管であって、一方の端部を分離器60の内部に、他方の端部を分離器60の外部にそれぞれ配置している。ソケット47の外部側の端部は、燃料配管34に連通する状態で連結継手48により燃料配管34と締結されており、燃料配管34内を通過した流体を、ソケット47を介して分離器60内へと移動させることができる。したがって、連結強度の観点からはソケット47の外径を燃料配管34の内径と略一致させることが好ましい。さらにソケット47は、分離器60と同様の勾配姿勢に固定されており、すなわち燃料配管34との連結側を下方にし、他端側を上方とする姿勢に傾斜を帯びて固定される。図15の例では、燃料配管34の上昇勾配領域46と、このソケット4の傾斜が略同一であり、つまり燃料配管34の延長線上にソケット4が連結されている。また、分離器60内でのソケット47の差し込み深さは特に限定しないが、図15に示すように、分離器60の内部にソケット47の配管を突き出すことで、分離器60内部で分離した油分を、水分よりも先に前方の配管へと送出できる。具体的には、分離器60は、分離器60の低い側が燃焼部Bから離間する側に相当するよう勾配を帯びており、この分離器60内の底位置に沈降した水分が、ソケット47と分離器60の隙間に滞留する。この結果、装置100の運転再開時に、分離した水分を油分より遅延して送出できる。つまりソケット47が、分離器60内で分離した水分を一時的に堰き止める役割を担っており、すなわち相対的に油分を先行して燃焼部B側へと移動させることができる。
【実施例4】
【0098】
また、実施例1のエマルジョン燃料供給装置100に、さらに燃焼部B及び燃料油タンクT1、及び燃焼部B及び燃料油タンクT1を連結する燃料油管Kを付加した燃焼装置を実施例4とする。燃焼部BはバーナB1、B2の燃焼状態を制御する燃焼制御手段を備えても良い。この燃焼部Bの燃焼制御手段とエマルジョン燃料供給装置100側の制御手段15とを連動させることで、バーナB1、B2の燃焼状態に応じた燃料供給量を制御することができる。
【0099】
例えば燃焼制御手段によって温度や二酸化炭素の排出量など周囲の環境因子を感知し、これに応じて燃焼量を調節する。さらに制御手段15はバーナの燃焼状態に連動して、これに適した水の送出量を水ポンプP1、P2によって調節する。すなわち、燃焼部Bに対するエマルジョン燃料や燃料油の供給量を、周囲の環境因子に応じた適量として、一層精密に制御できる。
【0100】
また制御手段による伝達方向はバーナ側からポンプあるいは弁への一方向に限定されず、命令伝達を双方向としてもよい。ただ、燃焼状態の制御と燃料供給側の制御は必ずしも連動する必要はなく、別個の制御手段として個々に設け、単独の操作とする形態でもよい。これにより例えば燃料油のみ、あるいはエマルジョン燃料のみを燃焼部Bへ供給する形態とできる。また、燃焼部Bの温度を計測可能とし、計測温度によって原料の配合比率を調節する形態としてもよい。
【0101】
上記構成のエマルジョン燃料供給装置及びエマルジョン燃料燃焼装置であれば、水の配合量を全体の30%まで高めても効率の良いエマルジョン燃料が生成されることを本発明者は確認している。また、燃焼用の燃料としてエマルジョン燃料を使用することで、燃料油のみを利用する場合と比較して、煤塵が抑制され、NOxやSOxなどを低減できる。さらに、エマルジョン燃料を完全燃焼させることができるため、管に煤(カーボン)等が付着することを回避できる。この結果、装置の耐用寿命を長期化でき、好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のエマルジョン燃料供給装置及びエマルジョン燃焼燃焼装置は、ボイラーあるいは自動車や船舶などの内燃機関に燃料を供給する燃料供給装置あるいは燃焼装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】実施例1に係るエマルジョン燃料供給装置の配管の簡略図である。
【図2】実施例1に係るエマルジョン燃料供給装置のタイミングチャートを示す。
【図3】図1のIII−III’線における断面図である。
【図4】図1のIV−IV’線における断面図である。
【図5】撹拌手段の他の形態を示す断面図である。
【図6】撹拌羽根の簡略図である。
【図7】撹拌羽根の平面図である。
【図8】撹拌羽根の一部側面図である。
【図9】図3のIX−IX’線における断面図である。
【図10】実施例1に係るエマルジョン燃料供給装置の配管における一部拡大図である。
【図11】実施例1に係るエマルジョン燃料供給装置の一部拡大図である。
【図12】実施例1の分離器に係る拡大図である。
【図13】実施例2に係るエマルジョン燃料供給装置の一部拡大図である。
【図14】実施例2の分離器に係る拡大図である。
【図15】実施例3に係るエマルジョン燃料供給装置の一部拡大図である。
【図16】実施例3の分離器近傍に係る拡大図である。
【図17】従来のエマルジョン燃料製造供給装置に係る各部品と配管の系統図を示す。
【図18】図17のエマルジョン燃料製造供給装置の説明図である。
【符号の説明】
【0104】
1、50、60…分離器
2…計時手段
4…撹拌手段
5…開閉制御手段
6…内壁
7…回転シャフト
8…撹拌羽根
9…抵抗板
10…スペーサ
11…加熱手段
12…水タンク
15…制御手段
17…水流路管
18…羽根の折曲面
19…合流管
20…流通孔
21…基準線
22…流路管継手
23…予備撹拌槽
24…貯留槽流出孔
25…磁石固定コア
26…永久磁石
27…閉塞面
28…回転シャフト受け
29…外筒
30…ボルト用受け座
31…ボルト
32…アンカー
33…流出管継手
34…燃料配管
36…流入口
37…流出口
38…仕切り板
39…区画域
39a…上段側区画域
39b…下段側区画域
40…連通域
41…空気抜き
42…水性分
43…油成分
44…連結領域
45…下降勾配領域
46…上昇勾配領域
47…ソケット
48…連結継手
60a…第1の分離器
60b…第2の分離器
100…エマルジョン燃料供給装置
800…エマルジョン燃料製造供給装置
802…エンジン
803…乳化装置
804…燃料ポンプ
805…リリーフ弁
806…供給弁
808…エマルジョン燃料
810…原料
810a…水
810b…乳化剤
810c…軽油
811…原料タンク
811c…軽油タンク
812…供給ポンプ
813…混合流体
814…混合槽
815…ポンプ
900…燃焼装置
B…燃焼部
1、B2…バーナ
h…高低差
K…燃料油管
L…運転ランプ
M…モータ
P…接合用プーリー
1、P2…水ポンプ
3…流出用ポンプ
SW…スイッチ
T…所定の時間
1…燃料油タンク
1、V2…水供給弁
3…エマルジョン燃料供給弁
A…第1の燃料油弁
B…第2の燃料油弁
θ…折曲角度
θ2、θ3、θ4…傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料油を燃焼させる既存の燃焼装置に付加可能なエマルジョン燃料供給装置であって、
燃料油を燃焼装置に送出する既設の燃料油管(K)から分岐して、水及び燃料油を混合させる合流管(19)と、
水供給源から供給した水を該合流管(19)へ送出するための少なくとも一の水ポンプ(P1)と、
該合流管(19)に連結し、かつ水及び燃料油の混合溶液を撹拌してエマルジョン化させる撹拌手段(4)と、
該撹拌手段(4)に連結してエマルジョン燃料を燃焼部(B)へと送出する燃料配管(34)と、
該燃料配管(34)に連結し、かつ前記撹拌手段(4)と燃焼部(B)との間に介在される分離器(1)と、
を有しており、
該分離器(1)は、エマルジョン燃料が流入する流入口(36)と、エマルジョン燃料を流出させる流出口(37)とを備えており、
前記分離器(1)の流入口(36)は、鉛直方向において流出口(37)よりも下方に位置していることを特徴とするエマルジョン燃料供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエマルジョン燃料供給装置において、
前記撹拌手段(4)の撹拌を停止した状態で、前記分離器(1)に滞留するエマルジョン燃料の内、水分が少なく油分が多い成分を燃焼部(B)側へと移動させつつ、水分が多く油分が少ない成分を該分離器(1)内に滞留するよう構成してなるエマルジョン燃料供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエマルジョン燃料供給装置において、
前記分離器(1)の内部には空洞が形成されており、該空洞を略鉛直方向において複数段に区画しつつ、それぞれの区画の少なくとも一部が連通するように仕切り可能な仕切り板(38)を有しており、
前記分離器(1)内部の最下段の区画域(39)に前記流入口(36)を設けており、
前記分離器(1)内に蓄えられる燃料の内、水分が多く油分が少ない成分が下段の区画域(39)に沈降し、かつ水分が少なく油分が多い成分が上段の区画域(39)に移動されるよう構成してなるエマルジョン燃料供給装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエマルジョン燃料供給装置において、
前記分離器(1)の流出口(37)と、燃焼部(B)との高低差(h)が10mm〜20mmであることを特徴とするエマルジョン燃料供給装置。
【請求項5】
請求項4に記載のエマルジョン燃料供給装置において、
前記分離器(1)の流出口(37)は、鉛直方向において燃焼部(B)よりも下方に位置しており、
前記燃料配管(34)の少なくとも一部が、該燃焼部(B)側を上方としかつ該流出口(37)側を下方として傾斜を帯びた姿勢に固定されていることを特徴とするエマルジョン燃料供給装置。
【請求項6】
請求項5に記載のエマルジョン燃料供給装置において、
前記燃料配管(34)の内径が13mm以上であることを特徴とするエマルジョン燃料供給装置。
【請求項7】
請求項4に記載のエマルジョン燃料供給装置において、
前記撹拌手段(4)は、鉛直方向において燃焼部(B)よりも上方に固定されており、
前記燃料配管(34)の少なくとも一部が、前記撹拌手段(4)側を上方とし、かつ燃焼部(B)側を下方として傾斜を帯びた姿勢に固定されてなることを特徴とするエマルジョン燃料供給装置。
【請求項8】
請求項7に記載のエマルジョン燃料供給装置において、
前記燃料配管(34)の内径が8mm以下であることを特徴とするエマルジョン燃料供給装置。
【請求項9】
請求項8に記載のエマルジョン燃料供給装置において、
前記分離器(60)を複数有しており、
前記燃料配管(34)は、前記撹拌手段(4)側に近接する上方の第1の分離器(60a)の流出口(37)と、燃焼部(B)側に近接する下方の第2の分離器(60b)の流入口(36)とを連結しており、
さらに該燃料配管(34)は、
前記第1の分離器(60a)の流出口(37)から、第2の分離器(60b)の流入口(36)側へ下方に伸びる下降勾配領域(45)と、
該下降勾配領域(45)から連続し、前記第2の分離器(60b)の流入口(36)との連結領域(44)において、該第2の分離器(60b)側を上方とする姿勢に屈曲した上昇勾配領域(46)と
を有しており、
該上昇勾配領域(46)が、前記第1の分離器(60a)の流出口(37)よりも下方に位置することを特徴とするエマルジョン燃料供給装置。
【請求項10】
請求項9に記載のエマルジョン燃料供給装置において、
前記下降勾配領域(45)及び上昇勾配領域(46)とを有する燃料配管(34)を複数備えることを特徴とするエマルジョン燃料供給装置。
【請求項11】
請求項6または10に記載のエマルジョン燃料供給装置において、さらに
該水ポンプ(P1)の作動状態を制御する制御手段(15)を有することを特徴とするエマルジョン燃料供給装置。
【請求項12】
請求項11に記載のエマルジョン燃料供給装置において、
前記水ポンプ(P1)を複数有しており、
前記制御手段(15)がそれぞれの水ポンプ(P1)を独立して停止状態または作動状態に制御可能に構成していることを特徴とするエマルジョン燃料供給装置。
【請求項13】
請求項12に記載のエマルジョン燃料供給装置において、
前記制御手段(15)は、さらに前記撹拌手段(4)の作動状態を制御可能であって、かつ該撹拌手段(4)の駆動からの経過時間を計測可能な計時手段(2)を有しており、
該計時手段(2)により計測された所定の時間経過後に、前記制御手段(15)によって前記水ポンプ(P1)を作動状態に構成していることを特徴とするエマルジョン燃料供給装置。
【請求項14】
請求項13に記載のエマルジョン燃料供給装置において、さらに
前記水ポンプ(P1)と前記撹拌手段(4)の間に配置し、かつ前記合流管(19)に連結して、前記水と燃料油との混合溶液を加熱する加熱手段(11)を有することを特徴とするエマルジョン燃料供給装置。
【請求項15】
請求項14に記載のエマルジョン燃料供給装置において、さらに
水を貯蓄するための水タンク(12)を有しており、
前記水ポンプ(P1)が該水タンク(12)に連結して、該水タンク(12)内の水を前記合流管(19)へ送出可能に構成していることを特徴とするエマルジョン燃料供給装置。
【請求項16】
請求項15に記載のエマルジョン燃料供給装置において、
前記撹拌手段(4)は、
中空円筒状の内壁(6)と、
前記円筒状の略中心を長手方向に挿通して回転可能な回転シャフト(7)と、
該回転シャフト(7)の軸方向と略直交する方向に突出するよう連結され、該連結部から前記内壁(6)側へ放射状に延伸しており、かつ該回転シャフト(7)の動きに追従して該連結部を中心に回転可能な撹拌羽根(8)と、
を備えており、
前記撹拌羽根(8)は、羽の厚み方向に貫通した流通孔(20)を有していることを特徴とするエマルジョン燃料供給装置。
【請求項17】
請求項16に記載のエマルジョン燃料供給装置において、
前記撹拌羽根(8)の一部を折曲させて羽面を傾斜させていることを特徴とするエマルジョン燃料供給装置。
【請求項18】
請求項17に記載のエマルジョン燃料供給装置において、
前記撹拌羽根(8)が、前記回転シャフト(7)との連結部から前記内壁(6)側への略放射方向を基準線(21)として折曲されており、
前記撹拌羽根(8)の折曲角度が25°〜30°であることを特徴とするエマルジョン燃料供給装置。
【請求項19】
請求項18に記載のエマルジョン燃料供給装置において、さらに
撹拌手段(4)の手前に配置され、前記原料を予め混合させる予備撹拌層(23)を有することを特徴とするエマルジョン燃料供給装置。
【請求項20】
水と燃料油とからなるエマルジョン燃料を燃焼可能なエマルジョン燃料燃焼装置であって、
燃料油またはエマルジョン燃料を燃焼可能な燃焼部(B)と、
燃料油を貯蓄するための燃料油タンク(T1)と、
前記燃料油タンク(T1)と燃焼部(B)とを連結し、該燃料油を燃焼部(B)へ送出可能な燃料油管(K)と、
前記燃料油管(K)に連結して前記燃焼部(B)へエマルジョン燃料を流出可能なエマルジョン燃料供給装置と、
を有しており、
前記エマルジョン燃料供給装置は請求項1ないし19のいずれか一に記載のエマルジョン燃料供給装置を用いることを特徴とするエマルジョン燃料燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−293819(P2009−293819A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145247(P2008−145247)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(508166615)
【出願人】(308016909)
【出願人】(308016910)
【Fターム(参考)】