説明

エンジン

【課題】コンパクトな構成でクランク軸の出力方向を変換することができるエンジンを提供する。
【解決手段】水平方向に配置したクランク軸31と、クランク軸31と垂直に配置される出力軸85と、クランク軸31の動力を出力軸85に伝達する動力伝達機構80と、を具備し、動力伝達機構80は、クランク軸31と平行に配置される駆動軸部83aと、クランク軸31の動力を駆動軸部83aへと伝達する駆動ギヤ81及び従動ギヤ82と、駆動軸部83aの動力を出力軸85へと伝達する駆動ベベルギヤ83b及び従動ベベルギヤ84と、を具備する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向に配置されたクランク軸を有するエンジンの技術に関し、より詳細には、クランク軸に対して垂直方向に配置された軸にクランク軸の動力を伝達する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水平方向に配置されたクランク軸に対して垂直方向に配置された作業機の入力軸にクランク軸の動力を伝達するエンジンの技術は公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、従来例に係るエンジンを備える車両について、図10により説明する。
車両900は、アッカーマン操舵式芝刈機であって、前後水平方向にクランク軸931を有するエンジン908と、このクランク軸931に対して垂直方向に配置された入力軸912aを有するモア909と、を備えている。そして、エンジン908のクランク軸931には、クランクプーリ933aが固設されているとともに、モア909の入力軸912aには、入力プーリ912bが固設されている。また、エンジン908の下方には、左右水平方向にカウンター軸990が配置されており、このカウンター軸990に左右一対のカウンタープーリ991・991が固設されている。そして、クランクプーリ933a、左右一対のカウンタープーリ991・991、入力プーリ912bに無端帯であるベルト912cが巻回され、エンジン908のクランク軸931の動力が、クランクプーリ933a、ベルト912c、カウンタープーリ991、ベルト912c、入力プーリ912b、入力軸912aに伝達されてモア909の回転刃912が駆動される。
【特許文献1】実開昭60−10427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記従来のエンジン908は、カウンター軸990および左右一対のカウンタープーリ991・991を配置するスペースや、このカウンタープーリ991・991を介してクランクプーリ933aおよび入力プーリ912bにベルト912cを巻回するスペースを確保する必要があるため、車両900の小型化を図る上で制約になるという問題があった。また、エンジン908を車両900へ取り付けた後に、ベルト912cを各プーリ933a・991・912bに巻回する必要があるため、作業効率が悪いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、水平方向に配置したクランク軸と、前記クランク軸と垂直に配置される出力軸と、前記クランク軸の動力を前記出力軸に伝達する動力伝達機構と、を具備するものである。
【0006】
請求項2においては、前記動力伝達機構は、前記クランク軸と平行に配置される入力軸と、前記クランク軸の動力を前記入力軸へと伝達する第一ギヤ列と、入力軸の動力を前記出力軸へと伝達する第二ギヤ列と、を具備するものである。
【0007】
請求項3においては、前記第一ギヤ列は、前記クランク軸のクランクギヤに隣接して設けられる第一駆動ギヤと、前記入力軸に具備され、前記第一駆動ギヤにより取り出された前記クランク軸の動力を前記入力軸に伝達する第一従動ギヤと、を具備するものである。
【0008】
請求項4においては、前記第一ギヤ列は、前記クランク軸のクランクピンに隣接して設けられる第二駆動ギヤと、前記入力軸に具備され、前記第二駆動ギヤにより取り出された前記クランク軸の動力を前記入力軸に伝達する第二従動ギヤと、を具備するものである。
【0009】
請求項5においては、前記第一ギヤ列は、前記クランク軸のバランスウェイトに隣接して設けられる第三駆動ギヤと、前記入力軸に具備され、前記第三駆動ギヤにより取り出された前記クランク軸の動力を前記入力軸に伝達する第三従動ギヤと、を具備するものである。
【0010】
請求項6においては、前記動力伝達機構は、前記クランク軸の動力を前記出力軸へと伝達する第三ギヤ列を具備するものである。
【0011】
請求項7においては、前記第三ギヤ列は、前記クランク軸に具備され前記クランク軸の動力を出力する出力部材に隣接して設けられる第四駆動ギヤと、前記出力軸に具備され、前記第四駆動ギヤにより取り出された前記クランク軸の動力を前記出力軸に伝達する第四従動ギヤと、を具備するものである。
【0012】
請求項8においては、前記出力部材は、クランクプーリである。
【0013】
請求項9においては、前記第四駆動ギヤと前記クランク軸とは弾性継手を介して連結されるものである。
【0014】
請求項10においては、前記第三ギヤ列は、前記クランク軸のクランクピンに隣接して設けられる第五駆動ギヤと、前記出力軸に具備され、前記第五駆動ギヤにより取り出された前記クランク軸の動力を前記出力軸に伝達する第五従動ギヤと、を具備するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、コンパクトな構成でクランク軸の出力方向を変換できるため、車両の小型化が容易であるとともに、無端帯の巻回が容易になるため、作業効率が向上する、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0017】
まず、本発明の第一実施例に係るエンジン8を備える車両1の全体構成について、図1により説明する。
図1に示すように、車両1は、アッカーマン操舵式芝刈機であって、車両フレーム2と、車両フレーム2の後部に支持される後車軸駆動装置3と、車両フレーム2の前部に支持される前車軸支持装置6と、後車軸駆動装置3・前車軸支持装置6間にて車両フレーム2によって支持されるエンジン8と、車両フレーム2の下方に昇降可能に吊設されるモア9と、を備えている。
【0018】
そして、後車軸駆動装置3には油圧モータ4が収納されており、油圧モータ4は、油圧ポンプ(図示省略)によって駆動可能に流体接続されている。前記油圧ポンプは、プーリ4bを介して入力軸4aに伝達される動力により駆動される。
【0019】
エンジン8は、ボンネット13内に収納され、ボンネット13直後のダッシュボードから後上方にハンドル14が延設されているとともに、エンジン8の直前の車両フレーム2には、ラジエータ15が搭載されている。そして、ボンネット13内では、油圧シリンダなどに作動油を補給するためのリザーバタンク16がエンジン8後方に配設されている。
【0020】
さらに、車両フレーム2の後部にはリアカバー17が搭載され、リアカバー17の上面には運転席18が搭載されている。そして、リアカバー17内には、後車軸駆動装置3が配設されている。
【0021】
モア9は、後車軸駆動装置3によって駆動される後輪5・5と、前車軸支持装置6によって支持される前輪7・7との間にて、車両フレーム2の下方に配設されている。そして、車両フレーム2の左右側板前端部には、左右のモアハンガー10・10がそれぞれ連結され、モアハンガー10・10は各リンクロッド11・11を介してモア9の前端に連結されており、これによりモア9が昇降可能に吊設されるようにしている。また、モア9の回転刃12は、入力プーリ12bを介して入力軸12aに伝達される動力により駆動される。
【0022】
次に、本発明の第一実施例に係るエンジン8について、図1から図3により説明する。
図2に示すように、エンジン8は、下部にオイルパン20を備え、このオイルパン20の上部にシリンダブロック30を備え、このシリンダブロック30の上部にシリンダヘッド40を備えている。
【0023】
シリンダブロック30内には、クランク軸31が前後水平方向に架設され、このクランク軸31の前後端部は、シリンダブロック30の前後面からそれぞれ突出している。クランク軸31の後端には、フライホイル32が固設されているとともに、クランク軸31の前端には、クランクプーリ33が固設されている。クランクプーリ33は、本発明に係る出力部材の実施の一形態であり、クランク軸31の動力を出力するためのものである。
【0024】
クランク軸31の上方には、冷却ファン50が配置され、この冷却ファン50のファン軸51には、プーリ52が固設されているとともに、冷却水ポンプ60が取り付けられている。冷却ファン50の側方には、図示せぬオルタネータが配置され、このオルタネータには、プーリが固設されている。
【0025】
そして、クランク軸31のクランクプーリ33、ファン軸51のプーリ52、前記オルタネータのプーリに、一本のベルト70が巻回されており、このベルト70を介してクランク軸31からの動力が伝達されて、冷却ファン50、冷却水ポンプ60、前記オルタネータが駆動される。
【0026】
また、図3に示すように、クランク軸31の中途部には、複数のバランスウェイト31a・31a・・・、クランクピン31b・31b・・・が形成される。
クランクピン31bには、コネクティングロッド34の一端が枢支される。コネクティングロッド34の他端にはピストン35が枢支され、ピストン35の受ける燃焼圧力は、コネクティングロッド34を介してクランク軸31に伝達される。
バランスウェイト31aはクランクピン31bの前後両側に形成され、クランク軸31の回転や重量のバランスを調整し、エンジン8の振動を抑制する。
【0027】
クランク軸31上であってクランクプーリ33の後方には、クランクギヤ36が固設される。クランクギヤ36は、カムギヤ37と歯合し、クランク軸の動力はカムギヤ37を介して図示せぬカム軸等に伝達される。
【0028】
また、オイルパン20の前部下側には、切り欠き部21が形成されている。切り欠き部21は、オイルパン20の前下角部が側面視略矩形上に切り欠かれて形成される空間であり、この切り欠き部21にギヤボックス87が配置される。
【0029】
次に、エンジン8が具備する動力伝達機構80について説明する。動力伝達機構80は、主として駆動ギヤ81、従動ギヤ82、駆動ベベルギヤ軸83、従動ベベルギヤ84、出力軸85、ギヤケース86、ギヤボックス87等を具備する。
【0030】
駆動ギヤ81は、クランクギヤ36とクランクプーリ33との間において、クランクギヤ36に隣接して配置され、クランク軸31に固設される。駆動ギヤ81は、本発明に係る第一駆動ギヤの実施の一形態である。本実施例においては、駆動ギヤ81をクランクギヤ36と一体として構成しているが、本発明はこれに限らず、それぞれ別個に構成することも可能である。
【0031】
駆動ベベルギヤ軸83は、クランク軸31の下方において、クランク軸31と平行に配置される。駆動ベベルギヤ軸83は、本発明に係る入力軸の実施の一形態である。駆動ベベルギヤ軸83は、駆動軸部83aと、駆動軸部83aの一端に形成される駆動ベベルギヤ83bと、から構成される。駆動軸部83aの他端には、従動ギヤ82が固設され、当該従動ギヤ82は、駆動ギヤ81と歯合する。従動ギヤ82は、本発明に係る第一従動ギヤの実施の一形態である。駆動ギヤ81と従動ギヤ82とによって、本発明に係る第一ギヤ列が構成される。
ギヤケース86は、シリンダブロック30及びギヤボックス87の前側面に固設され、クランクギヤ36、カムギヤ37、駆動ギヤ81、従動ギヤ82等を覆う。また、クランク軸31の前端はギヤケース86の前側面から突出し、当該クランク軸31の突出した部分にクランクプーリ33が固設されている。
【0032】
出力軸85は、クランク軸31の下方において、クランク軸31と垂直に(長手方向を上下方向として)配置される。出力軸85には従動ベベルギヤ84が固設され、当該従動ベベルギヤ84は、駆動ベベルギヤ83bと歯合する。駆動ベベルギヤ83bと従動ベベルギヤ84とによって、本発明に係る第二ギヤ列が構成される。
ギヤボックス87は、駆動ベベルギヤ軸83、従動ベベルギヤ84、出力軸85等を覆う。
【0033】
図2に示すように、出力軸85の下端部には、第一出力プーリ85a及び第二出力プーリ85bが固設される。
図1に示すように、第一出力プーリ85aと、入力軸4aの上端に固設されるプーリ4bとの間には、ベルト4cが巻回される。
第二出力プーリ85bと、入力軸12aの上端に固設される入力プーリ12bとの間には、ベルト12cが巻回される。
【0034】
上記の如く構成された車両1において、クランク軸31の動力は、駆動ギヤ81、従動ギヤ82、駆動ベベルギヤ軸83、及び従動ベベルギヤ84を介して出力軸85に伝達される(図3参照)。また、出力軸85の動力は、第一出力プーリ85a、ベルト4c、プーリ4b、及び入力軸4aを介して後車軸駆動装置3に伝達され、後輪5が回転する(図1参照)。さらに、出力軸85の動力は、第二出力プーリ85b、ベルト12c、入力プーリ12b、及び入力軸12aを介してモア9に伝達され、回転刃12が回転する(図1参照)。
【0035】
以上の如く、本実施例に係るエンジン8は、水平方向に配置したクランク軸31と、クランク軸31と垂直に配置される出力軸85と、クランク軸31の動力を出力軸85に伝達する動力伝達機構80と、を具備するものである。
このように構成することにより、コンパクトな構成でクランク軸31の出力方向を変換できるため、車両1の小型化が容易であるとともに、無端帯であるベルト4c・12cの巻回が容易になるため、作業効率を向上させることができる。また、ベルト4c・12cによる動力伝達経路を短くすることができるため、動力の伝達ロスを低減することができる。さらに、動力伝達機構80を予めエンジン8に取り付けることでモジュール化することができ、車両1の組み立て時の作業効率を向上させることができる。
【0036】
また、動力伝達機構80は、クランク軸31と平行に配置される駆動軸部83aと、クランク軸31の動力を駆動軸部83aへと伝達する駆動ギヤ81及び従動ギヤ82と、駆動軸部83aの動力を出力軸85へと伝達する駆動ベベルギヤ83b及び従動ベベルギヤ84と、を具備するものである。
このように構成することにより、コンパクトな構成でクランク軸31の出力方向を変換できるため、車両1の小型化が容易であるとともに、無端帯であるベルト4c・12cの巻回が容易になるため、作業効率が向上する。また、ベルト4c・12cによる動力伝達経路を短くすることができるため、動力の伝達ロスを低減することができる。さらに、動力伝達機構80を予めエンジン8に取り付けることでモジュール化することができ、車両1の組み立て時の作業効率を向上させることができる。
【0037】
また、本実施例において、本発明に係る前記第一ギヤ列は、クランク軸31のクランクギヤ36に隣接して設けられる駆動ギヤ81と、駆動ベベルギヤ軸83に具備され、駆動ギヤ81により取り出されたクランク軸31の動力を駆動ベベルギヤ軸83に伝達する従動ギヤ82と、を具備するものである。
このように構成することにより、コンパクトな構成でクランク軸31の出力方向を変換できるため、車両1の小型化が容易であるとともに、無端帯であるベルト4c・12cの巻回が容易になるため、作業効率が向上する。また、ベルト4c・12cによる動力伝達経路を短くすることができるため、動力の伝達ロスを低減することができる。さらに、動力伝達機構80を予めエンジン8に取り付けることでモジュール化することができ、車両1の組み立て時の作業効率を向上させることができる。
【0038】
次に、本発明の第二実施例に係るエンジン208について、図4により説明する。なお、第一実施例に係るエンジン8と略同一構成の部材には、同一符号を付し、説明を省略する。
【0039】
本実施形態に係る動力伝達機構280は、主として駆動ギヤ281、従動ギヤ282、駆動ベベルギヤ軸83、従動ベベルギヤ84、出力軸85、ギヤケース286、第一ギヤボックス287a、第二ギヤボックス287b等を具備する。
【0040】
本実施例におけるクランク軸231は、第一実施例に係るクランク軸31に形成されるバランスウェイト31a・31a・・・のうちの1つに代えて、駆動ギヤ281を形成したものである。すなわち、駆動ギヤ281は、クランクピン31bに隣接して配置される。駆動ギヤ281は、本発明に係る第二駆動ギヤの実施の一形態である。なお、駆動ギヤ281は、クランク軸231と一体で形成される構成に限らず、それぞれ別個に構成し、クランク軸231に駆動ギヤ281を固設する構成とすることも可能である。
駆動ベベルギヤ軸83の駆動軸部83aの一端側には、従動ギヤ282が固設され、当該従動ギヤ282は、駆動ギヤ281と歯合する。従動ギヤ282は、本発明に係る第二従動ギヤの実施の一形態である。駆動ギヤ281と従動ギヤ282とによって、本発明に係る第一ギヤ列が構成される。
【0041】
出力軸85は、クランクプーリ33の下方において、クランク軸231と垂直に(長手方向を上下方向として)配置される。出力軸85に固設される従動ベベルギヤ84は、駆動ベベルギヤ83bと歯合する。
【0042】
ギヤケース286は、シリンダブロック30の前側面に固設され、クランクギヤ36、カムギヤ37等を覆う。
第一ギヤボックス287aは、シリンダブロック30の下面に固設されるオイルパン20の前部に一体的に形成され、従動ギヤ282、駆動ベベルギヤ軸83の駆動軸部83a等を覆う。
第二ギヤボックス287bは、ギヤケース286の下部に配置され、第一ギヤボックス287aの前側面に固設される。第二ギヤボックス287bは、駆動ベベルギヤ軸83の駆動ベベルギヤ83b、従動ベベルギヤ84、出力軸85等を覆う。
なお、本実施例において、オイルパン20と第一ギヤボックス287aとを一体として構成しているが、本発明はこれに限らず、別個に構成することも可能である。また、ギヤケース286と第二ギヤボックス287bとは別体に構成しているが一体として構成することも可能である。
【0043】
以上の如く、本実施例において、本発明に係る前記第一ギヤ列は、クランク軸231のクランクピン31bに隣接して設けられる駆動ギヤ281と、駆動軸部83aに具備され、駆動ギヤ281により取り出されたクランク軸231の動力を駆動軸部83aに伝達する従動ギヤ282と、を具備するものである。
このように構成することにより、コンパクトな構成でクランク軸231の出力方向を変換できるため、車両1の小型化が容易であるとともに、無端帯であるベルト4c・12cの巻回が容易になるため、作業効率が向上する。また、ベルト4c・12cによる動力伝達経路を短くすることができるため、動力の伝達ロスを低減することができる。さらに、動力伝達機構280を予めエンジン208に取り付けることでモジュール化することができ、車両1の組み立て時の作業効率を向上させることができる。
【0044】
次に、本発明の第三実施例に係るエンジン308について、図5により説明する。なお、第二実施例に係るエンジン208と略同一構成の部材には、同一符号を付し、説明を省略する。
【0045】
本実施形態に係る動力伝達機構380は、主として駆動ギヤ381、従動ギヤ382、駆動ベベルギヤ軸83、従動ベベルギヤ84、出力軸85、ギヤケース286、第一ギヤボックス287a、第二ギヤボックス287b等を具備する。
【0046】
本実施例におけるクランク軸331は、第一実施例に係るクランク軸31に形成されるバランスウェイト31a・31a・・・のうちの1つに隣接して駆動ギヤ381を形成したものである。駆動ギヤ381は、本発明に係る第三駆動ギヤの実施の一形態である。なお、駆動ギヤ381は、クランク軸331と一体で形成される構成に限らず、それぞれ別個に構成し、クランク軸331に駆動ギヤ381を固設する構成とすることも可能である。
駆動ベベルギヤ軸83の駆動軸部83aの一端側には、従動ギヤ382が固設され、当該従動ギヤ382は、駆動ギヤ381と歯合する。従動ギヤ382は、本発明に係る第三従動ギヤの実施の一形態である。駆動ギヤ381と従動ギヤ382とによって、本発明に係る第一ギヤ列が構成される。
【0047】
以上の如く、本実施例において、本発明に係る前記第一ギヤ列は、クランク軸331のバランスウェイト31aに隣接して設けられる駆動ギヤ381と、駆動軸部83aに具備され、駆動ギヤ381により取り出されたクランク軸331の動力を駆動軸部83aに伝達する従動ギヤ82と、を具備するものである。
このように構成することにより、コンパクトな構成でクランク軸331の出力方向を変換できるため、車両1の小型化が容易であるとともに、無端帯であるベルト4c・12cの巻回が容易になるため、作業効率が向上する。また、ベルト4c・12cによる動力伝達経路を短くすることができるため、動力の伝達ロスを低減することができる。さらに、動力伝達機構380を予めエンジン308に取り付けることでモジュール化することができ、車両1の組み立て時の作業効率を向上させることができる。
【0048】
次に、本発明の第四実施例に係るエンジン408について、図6により説明する。なお、第一実施例に係るエンジン8と略同一構成の部材には、同一符号を付し、説明を省略する。
【0049】
本実施例に係る動力伝達機構480は、主として駆動ベベルギヤ483b、従動ベベルギヤ484、出力軸85、ギヤケース486等を具備する。
【0050】
本実施例に係るクランク軸31には、第一実施例における駆動ギヤ81に代えて、駆動ベベルギヤ483bが固設される。なお、本実施例においては、クランクギヤ36と駆動ベベルギヤ483bとを別個に構成するものとするが、本発明はこれに限るものではなく、クランクギヤ36と駆動ベベルギヤ483bとを一体として構成することも可能である。
【0051】
出力軸85は、クランク軸31の下方において、クランク軸31と垂直に(長手方向を上下方向として)配置される。出力軸85の上端には、従動ベベルギヤ484が固設され、当該従動ベベルギヤ484は、駆動ベベルギヤ483bと歯合する。駆動ベベルギヤ483bと従動ベベルギヤ484とによって、本発明に係る第三ギヤ列が構成される。
ギヤケース486は、シリンダブロック30の前側面に固設され、クランクギヤ36、カムギヤ37、駆動ベベルギヤ483b、従動ベベルギヤ484、出力軸85等を覆う。
【0052】
以上の如く、本実施例に係る動力伝達機構380は、クランク軸31の動力を出力軸85へと伝達する駆動ベベルギヤ483b及び従動ベベルギヤ484を具備するものである。
このように構成することにより、コンパクトな構成でクランク軸31の出力方向を変換できるため、車両1の小型化が容易であるとともに、無端帯であるベルト4c・12cの巻回が容易になるため、作業効率が向上する。また、ベルト4c・12cによる動力伝達経路を短くすることができるため、動力の伝達ロスを低減することができる。さらに、動力伝達機構480を予めエンジン408に取り付けることでモジュール化することができ、車両1の組み立て時の作業効率を向上させることができる。
また、クランクギヤ36やカムギヤ37等を覆うギヤケース486内に、駆動ベベルギヤ483b、従動ベベルギヤ484、出力軸85等を配置することができるため、部品点数及びコストの削減をはかることができる。
【0053】
次に、本発明の第五の実施例に係るエンジン508について、図7により説明する。なお、第四実施例に係るエンジン408と略同一構成の部材には、同一符号を付し、説明を省略する。
【0054】
本実施例に係る動力伝達機構580は、主として駆動ベベルギヤ583b、従動ベベルギヤ484、出力軸85、ギヤケース486等を具備する。
【0055】
本実施例に係るエンジン508が、第四実施例に係るエンジン408と異なる点は、本実施例に係る駆動ベベルギヤ583bが、クランクプーリ33と隣接する位置において、クランク軸31に固設されている点である。駆動ベベルギヤ583bは、本発明に係る第四駆動ギヤの実施の一形態である。また、従動ベベルギヤ484は、本発明に係る第四従動ギヤの実施の一形態である。駆動ベベルギヤ583bと従動ベベルギヤ484とによって、本発明に係る第三ギヤ列が構成される。
なお、本実施例においては、駆動ベベルギヤ583bとクランクプーリ33とを別個に構成するものとするが、本発明はこれに限るものではなく、駆動ベベルギヤ583bとクランクプーリ33とを一体として構成することも可能である。
【0056】
以上の如く、本実施例において、本発明に係る前記第三ギヤ列は、クランク軸31に具備されクランク軸31の動力を出力するクランクプーリ33に隣接して設けられる駆動ベベルギヤ583bと、出力軸85に具備され、駆動ベベルギヤ583bにより取り出されたクランク軸31の動力を出力軸85に伝達する従動ベベルギヤ484と、を具備するものである。
このように構成することにより、コンパクトな構成でクランク軸31の出力方向を変換できるため、車両1の小型化が容易であるとともに、無端帯であるベルト4c・12cの巻回が容易になるため、作業効率が向上する。また、ベルト4c・12cによる動力伝達経路を短くすることができるため、動力の伝達ロスを低減することができる。さらに、動力伝達機構580を予めエンジン508に取り付けることでモジュール化することができ、車両1の組み立て時の作業効率を向上させることができる。
また、クランクギヤ36やカムギヤ37等を覆うギヤケース486内に、駆動ベベルギヤ583b、従動ベベルギヤ484、出力軸85等を配置することができるため、部品点数及びコストの削減を図ることができる。さらに、ギヤケース486、クランクプーリ33、駆動ベベルギヤ583b、従動ベベルギヤ484、出力軸85をモジュール化することができ、エンジン508の組み立て時の作業効率を向上させることができる。
なお、本発明に係る出力部材は本実施例に係るクランクプーリ33に限るものではなく、他のプーリやギヤ等であってもよい。
【0057】
次に、本発明の第六の実施例に係るエンジン608について、図8により説明する。なお、第五実施例に係るエンジン508と略同一構成の部材には、同一符号を付し、説明を省略する。
【0058】
本実施例に係る動力伝達機構680は、主として駆動ベベルギヤ583b、弾性継手688、従動ベベルギヤ484、出力軸85、ギヤケース486等を具備する。
【0059】
本実施例に係るエンジン608が、第四実施例に係るエンジン408と異なる点は、本実施例に係るクランク軸631と駆動ベベルギヤ583bとが、弾性継手688によって連結されている点である。本実施例における弾性継手688は、ゴム継手や樹脂継手等の、衝撃や振動を減衰・吸収する継手で構成される。
また、本実施例に係るクランクプーリ33は、駆動ベベルギヤ583bの前側面に固設される。
【0060】
なお、本実施例においては、駆動ベベルギヤ583bとクランクプーリ33とを別個に構成するものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、駆動ベベルギヤ583bとクランクプーリ33とを一体として構成することも可能である。
【0061】
以上の如く、本実施例に係る駆動ベベルギヤ583bとクランク軸631とは弾性継手688を介して連結されるものである。
このように構成することにより、コンパクトな構成でクランク軸631の出力方向を変換できるため、車両1の小型化が容易であるとともに、無端帯であるベルト4c・12cの巻回が容易になるため、作業効率が向上する。また、ベルト4c・12cによる動力伝達経路を短くすることができるため、動力の伝達ロスを低減することができる。さらに、動力伝達機構680を予めエンジン608に取り付けることでモジュール化することができ、車両1の組み立て時の作業効率を向上させることができる。さらにまた、クランク軸631の回転変動を弾性継手688により吸収することができるため、出力軸85へ振動や衝撃が少なく、安定した動力を伝達することができる。
また、クランクギヤ36やカムギヤ37等を覆うギヤケース486内に、駆動ベベルギヤ583b、弾性継手688、従動ベベルギヤ484、出力軸85等を配置することができるため、部品点数及びコストの削減を図ることができる。さらに、ギヤケース486、クランクプーリ33、駆動ベベルギヤ583b、弾性継手688、従動ベベルギヤ484、出力軸85をモジュール化することができ、エンジン608の組み立て時の作業効率を向上させることができる。
【0062】
次に、本発明の第七の実施例に係るエンジン708について、図9により説明する。なお、第四実施例に係るエンジン408と略同一構成の部材には、同一符号を付し、説明を省略する。
【0063】
本実施例に係る動力伝達機構780は、主として駆動ベベルギヤ783b、従動ベベルギヤ784、出力軸85、ギヤケース786、ギヤボックス787等を具備する。
【0064】
本実施例におけるクランク軸731は、第一実施例に係るクランク軸31に形成されるバランスウェイト31a・31a・・・のうちの1つに代えて、または、その側部に駆動ベベルギヤ783bを形成したものである。駆動ベベルギヤ783bは、本発明に係る第五駆動ギヤの実施の一形態である。なお、駆動ベベルギヤ783bは、クランク軸731と一体で形成される構成に限らず、それぞれ別個に構成し、クランク軸731に駆動ベベルギヤ783bを固設する構成とすることも可能である。
【0065】
出力軸85は、クランク軸731の下方において、クランク軸731と垂直に(長手方向を上下方向として)配置される。出力軸85の上端には、従動ベベルギヤ784が固設され、当該従動ベベルギヤ784は、駆動ベベルギヤ783bと歯合する。従動ベベルギヤ784は、本発明に係る第五従動ギヤの実施の一形態である。駆動ベベルギヤ783bと従動ベベルギヤ784とによって、本発明に係る第三ギヤ列が構成される。
【0066】
ギヤケース786は、シリンダブロック30の前側面に固設され、クランクギヤ36、カムギヤ37等を覆う。
ギヤボックス787は、シリンダブロック30の下面に固設され、従動ベベルギヤ784、出力軸85等を覆う。
なお、本実施例において、オイルパン20とギヤボックス787とを一体として構成しているが、本発明はこれに限らず、それぞれ別個に構成することも可能である。
【0067】
以上の如く、本実施例において、本発明に係る前記第三ギヤ列は、クランク軸731のクランクピン31bに隣接して設けられる駆動ベベルギヤ783bと、出力軸85に具備され、駆動ベベルギヤ783bにより取り出されたクランク軸731の動力を出力軸85に伝達する従動ベベルギヤ784と、を具備するものである。
このように構成することにより、コンパクトな構成でクランク軸731の出力方向を変換できるため、車両1の小型化が容易であるとともに、無端帯であるベルト4c・12cの巻回が容易になるため、作業効率が向上する。また、ベルト4c・12cによる動力伝達経路を短くすることができるため、動力の伝達ロスを低減することができる。さらに、動力伝達機構780を予めエンジン708に取り付けることでモジュール化することができ、車両1の組み立て時の作業効率を向上させることができる。
また、ギヤボックス787をオイルパン20と一体として構成することで、部品点数及びコストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第一実施例に係るエンジンを備える車両を示した側面図。
【図2】同じくエンジンを示した側面図。
【図3】同じくエンジンの拡大断面図。
【図4】本発明の第二実施例に係るエンジンの拡大断面図。
【図5】本発明の第三実施例に係るエンジンの拡大断面図。
【図6】本発明の第四実施例に係るエンジンの拡大断面図。
【図7】本発明の第五実施例に係るエンジンの拡大断面図。
【図8】本発明の第六実施例に係るエンジンの拡大断面図。
【図9】本発明の第七実施例に係るエンジンの拡大断面図。
【図10】従来例に係るエンジンを備える車両を示した側面図。
【符号の説明】
【0069】
1 車両
9 モア
31 クランク軸
31a バランスウェイト
31b クランクピン
33 クランクプーリ(出力部材)
36 クランクギヤ
81 駆動ギヤ(第一駆動ギヤ)
82 従動ギヤ(第一従動ギヤ)
83 駆動ベベルギヤ軸
83a 駆動軸部(入力軸)
83b 駆動ベベルギヤ
84 従動ベベルギヤ
85 出力軸
281 駆動ギヤ(第二駆動ギヤ)
282 従動ギヤ(第二従動ギヤ)
381 駆動ギヤ(第三駆動ギヤ)
382 従動ギヤ(第三従動ギヤ)
483b 駆動ベベルギヤ(第四駆動ギヤ)
484 従動ベベルギヤ(第四従動ギヤ)
783b 駆動ベベルギヤ(第五駆動ギヤ)
784 従動ベベルギヤ(第五従動ギヤ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に配置したクランク軸と、前記クランク軸と垂直に配置される出力軸と、前記クランク軸の動力を前記出力軸に伝達する動力伝達機構と、を具備するエンジン。
【請求項2】
前記動力伝達機構は、前記クランク軸と平行に配置される入力軸と、前記クランク軸の動力を前記入力軸へと伝達する第一ギヤ列と、入力軸の動力を前記出力軸へと伝達する第二ギヤ列と、を具備する請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記第一ギヤ列は、前記クランク軸のクランクギヤに隣接して設けられる第一駆動ギヤと、前記入力軸に具備され、前記第一駆動ギヤにより取り出された前記クランク軸の動力を前記入力軸に伝達する第一従動ギヤと、を具備する請求項2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記第一ギヤ列は、前記クランク軸のクランクピンに隣接して設けられる第二駆動ギヤと、前記入力軸に具備され、前記第二駆動ギヤにより取り出された前記クランク軸の動力を前記入力軸に伝達する第二従動ギヤと、を具備する請求項2に記載のエンジン。
【請求項5】
前記第一ギヤ列は、前記クランク軸のバランスウェイトに隣接して設けられる第三駆動ギヤと、前記入力軸に具備され、前記第三駆動ギヤにより取り出された前記クランク軸の動力を前記入力軸に伝達する第三従動ギヤと、を具備する請求項2に記載のエンジン。
【請求項6】
前記動力伝達機構は、前記クランク軸の動力を前記出力軸へと伝達する第三ギヤ列を具備する請求項1に記載のエンジン。
【請求項7】
前記第三ギヤ列は、前記クランク軸に具備され前記クランク軸の動力を出力する出力部材に隣接して設けられる第四駆動ギヤと、前記出力軸に具備され、前記第四駆動ギヤにより取り出された前記クランク軸の動力を前記出力軸に伝達する第四従動ギヤと、を具備する請求項6に記載のエンジン。
【請求項8】
前記出力部材は、クランクプーリである請求項7に記載のエンジン。
【請求項9】
前記第四駆動ギヤと前記クランク軸とは弾性継手を介して連結される請求項7または請求項8に記載のエンジン。
【請求項10】
前記第三ギヤ列は、前記クランク軸のクランクピンに隣接して設けられる第五駆動ギヤと、前記出力軸に具備され、前記第五駆動ギヤにより取り出された前記クランク軸の動力を前記出力軸に伝達する第五従動ギヤと、を具備する請求項6に記載のエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−14098(P2010−14098A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177289(P2008−177289)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】