説明

エンジン

【課題】従来のエンジンは、カウンター軸や左右一対のカウンタープーリを配置するスペースや、このカウンタープーリを介してクランクプーリおよび入力プーリにベルトを巻回するスペースを確保する必要があるため、車両の小型化を図る上で制約になるという問題があった。また、エンジンを車両への取付後に、ベルトを各プーリに巻回する必要があるため、作業効率が悪いという問題があった。
【解決手段】クランク軸24の下方で、クランク軸24に対して平行に配置し、ベルト機構33を介して前記クランク軸24からの動力を受ける入力軸34と、入力軸34からの動力を出力し、クランク軸24に対して垂直に配置する第一出力軸35と、第一出力軸35に前記入力軸34の動力を伝達するベベルギヤ36と、を内装するギヤボックス41を備え、ギヤボックス41をエンジン5のシリンダブロック22にブラケット162を介して取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略水平方向にクランク軸を有するエンジンの技術に関し、より詳細には、クランク軸に対して垂直方向に配置された軸にクランク軸の動力を伝達する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クランク軸に対して垂直方向に配置された軸にクランク軸の動力を伝達するエンジンの技術は公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、従来例に係るエンジンを備える車両について、図10により説明する。
図10に示すようように、車両900は、アッカーマン操舵式芝刈機であって、前後水平方向にクランク軸924を有するエンジン905と、このクランク軸924に対して垂直方向に配置された入力軸906を有するモア907と、を備えている。そして、エンジン905のクランク軸924には、クランクプーリ924aが固設されているとともに、モア907の入力軸906には、入力プーリ906aが固設されている。また、エンジン905の下方には、左右水平方向にカウンター軸980が配置されており、このカウンター軸980に左右一対のカウンタープーリ980aが固設されている。そして、クランクプーリ924a、左右一対のカウンタープーリ980a、入力プーリ906aにベルト981が巻回され、エンジン905のクランク軸924の動力が、クランクプーリ924a、ベルト981、カウンタープーリ980a、ベルト981、入力プーリ906a、入力軸906に伝達されてモア907の回転刃907aが駆動される。
【特許文献1】実開昭60−10427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記従来のエンジン905は、カウンター軸980および左右一対のカウンタープーリ980aを配置するスペースや、このカウンタープーリ980aを介してクランクプーリ924aおよび入力プーリ906aにベルト981を巻回するスペースを確保する必要があるため、車両の小型化を図る上で制約になるという問題があった。また、エンジン905を車両への取付後に、ベルト981を各プーリ924a・980a・906aに巻回する必要があるため、作業効率が悪いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上のとおりであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
すなわち、請求項1においては、略水平方向にクランク軸を有するエンジンであって、前記クランク軸の下方で、該クランク軸に対して平行に配置し、第一動力伝達手段を介して前記クランク軸からの動力を受ける入力軸と、該入力軸からの動力を出力し、前記クランク軸に対して垂直に配置する出力軸と、該出力軸に前記入力軸の動力を伝達する第二動力伝達手段と、を内装する動力伝達ケースを備え、該動力伝達ケースを前記エンジンのシリンダブロックにブラケットを介して取り付けるものである。
【0006】
請求項2においては、前記動力伝達ケースと前記ブラケットを一体的に成型するものである。
【0007】
請求項3においては、前記出力軸からの動力を断接するクラッチを備え、該クラッチを前記ブラケットに取付可能とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1においては、動力伝達ケースをコンパクトに構成して、エンジンがコンパクトになるため、車両の小型化が容易である。そして、動力伝達ケースを予めエンジンに取り付けて、モジュール化できるため、取付作業の効率性が向上する。また、シリンダブロックを利用することにより、簡易な構成で動力伝達ケースをエンジンに取り付けることができる。さらに、動力伝達ケースを剛性の高いシリンダブロックに取り付けるため、取り付けの確実性が向上する。
【0010】
請求項2においては、動力伝達ケースおよびブラケットを一の取付作業でシリンダブロックに取り付けることができるため、取付作業の効率性が向上する。また、一体的に成型することにより、部品点数が少なくなるため、コストダウンが容易である。
【0011】
請求項3においては、出力軸から駆動対象への動力の伝達・遮断が切替可能となるため、エンジンの利便性が向上する。そして、クラッチを予めエンジンに取り付けて、モジュール化できるため、取付作業の効率性が向上する。また、ブラケットを利用することにより、簡易な構成でクラッチをエンジンに取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明の第一実施例に係るエンジンを備える車両を示した側面図、図2は本発明の第一実施例に係るエンジンを示した側面図、図3は同じく正面図、図4はベルト機構を示した正面図、図5はギヤボックスを示した側面断面図、図6は本発明の第一実施例に係るブラケットを示した正面図、図7は本発明の第二実施例に係るブラケットを示した正面図、図8は本発明の第三実施例に係るブラケットを示した正面図、図9は本発明の変形例に係るブラケットを示した一部拡大正面図、図10は従来例に係るエンジンを備える車両を示した側面図である。
【0013】
まず、本発明の第一実施例に係るエンジン5を備える車両100の全体構成について、図1により説明する。
図1に示すように、車両100は、アッカーマン操舵式芝刈機であって、車両フレーム2と、車両フレーム2の後部に支持される後車軸駆動装置3と、車両フレーム2の前部に支持される前車軸支持装置4と、後車軸駆動装置3・前車軸支持装置4間にて車両フレーム2によって支持されるエンジン5と、車両フレーム2の下方に昇降可能に吊設されるモア7とを備えている。
【0014】
そして、後車軸駆動装置3には油圧モータ8が収納されており、油圧モータ8は、油圧ポンプ(図示省略)によって駆動可能に流体接続されている。
【0015】
エンジン5は、ボンネット11内に収納され、ボンネット11直後のダッシュボードから後上方にハンドル12が延設されているとともに、エンジン5の直前の車両フレーム2には、ラジエータ14が搭載されている。そして、ボンネット11内では、油圧シリンダなどに作動油を補給するためのリザーバタンク17がエンジン5後方に配設されている。
【0016】
さらに、車両フレーム2の後部にはリアカバー15が搭載され、リアカバー15の上面には運転席16が搭載されている。そして、リアカバー15内には、後車軸駆動装置3が配設されている。
【0017】
モア7は、後車軸駆動装置3によって駆動される後輪18と、前車軸支持装置4によって支持される前輪19との間にて、車両フレーム2の下方に配設されている。そして、車両フレーム2の左右側板前端部には、左右のモアハンガー20がそれぞれ連結され、モアハンガー20は各リンクロッド20aを介してモア7の前端に連結されており、これによりモア7が昇降可能に吊設されるようにしている。
【0018】
次に、本発明の第一実施例に係るエンジン5について、図1から図6により説明する。
図2、図3に示すように、エンジン5は、下部にオイルパン21を備え、このオイルパン21の上部にシリンダブロック22を備え、このシリンダブロック22の上部にシリンダヘッド23を備えている。
【0019】
シリンダブロック22内には、クランク軸24が前後水平方向に架設され、このクランク軸24の前後端部は、シリンダブロック22の前後面からそれぞれ突出している。クランク軸24の後端部には、フライホイル25が固設されているとともに、クランク軸24の前端部には、前方から順に第一クランクプーリ24a、第二クランクプーリ24bが固設されている。
【0020】
そして、クランク軸24の上方には、冷却ファン13が配置され、この冷却ファン13のファン軸26には、プーリ26aが固設されているとともに、冷却水ポンプ27が取り付けられている。冷却ファン13の右方には、オルタネータ28が配置され、このオルタネータ28のオルタネータ軸29には、プーリ29aが固設されている。
【0021】
そして、クランク軸24の第二クランクプーリ24b、ファン軸26のプーリ26a、オルタネータ軸29のプーリ29aに、一本のベルト30が巻回されて補機駆動用ベルト機構53が構成されており、このベルト30を介してクランク軸24からの動力が伝達されて、冷却ファン13、冷却水ポンプ27、オルタネータ28が駆動される。
【0022】
また、シリンダヘッド23の前面側には、燃料噴射ポンプ31やカム軸(図示省略)を駆動するギヤ群(図示省略)を内装するギヤケース32が配置されている。
【0023】
また、オイルパン21の前部下側には、切欠き部21aが形成されている。切欠き部21aは、オイルパン21の前下角部が側面視略矩形状に切り欠かれて形成される空間であり、この切欠き部21a内に動力伝達ケースとなるギヤボックス41が配置されている。
【0024】
ギヤボックス41は、オイルパン21の切欠き部21a内の左右略中央部に配置されている。つまり、ギヤボックス41は、エンジン5の左右略中央部に配置されている。ギヤボックス41は、クランク軸24からの動力がベルト機構33を介して入力される入力軸34と、この入力軸34からの動力を出力する第一出力軸35と、この第一出力軸35に入力軸34の動力を伝達するベベルギヤ36(図5参照)と、を内装している。
【0025】
入力軸34は、クランク軸24の下方で、クランク軸24に対して平行(前後水平方向)に配置されている。入力軸34は、ギヤボックス41前部から突出するようにギヤボックス41に内装され、ギヤボックス41に軸受けを介して回動可能に支持されている(図5参照)。
【0026】
入力軸34の前端部には、入力プーリ34aが固設されている。入力プーリ34aの後側には、冷却ファン42(図5参照)が取り付けられており、後方に向かって冷却風を送風して、オイルパン21などを効率良く冷却できる。
【0027】
図4に示すように、入力軸34の入力プーリ34aとクランク軸24の第一クランクプーリ24aに、ベルト39が巻回されてベルト機構33が構成されている。ベルト39の内周側には、ベルト39に張力を付与するテンション部材となるテンションプーリ40が当接されている。テンションプーリ40は、バネなどの弾性部材(図示省略)によって右方に付勢されて、ベルト39に張力を付与している。テンションプーリ40は、ブラケット55を介してシリンダブロック22などに取り付けられている。ブラケット55には、長孔55aが左右方向に開口されており、この長孔55a内にテンションプーリ40のプーリ軸40aが摺動自在に配置されている。
【0028】
図2、図3に示すように、第一出力軸35は、クランク軸24に対して垂直(上下方向)に配置されている。つまり、第一出力軸35は、入力軸34に対しても垂直に配置されている。第一出力軸35は、ギヤボックス41の左右略中央部に配置されているとともに、エンジン5の前後範囲内に配置されている。つまり、第一出力軸35は、平面視においてエンジン5の投影範囲内に配置されている。第一出力軸35は、ギヤボックス41下部から突出するようにギヤボックス41に内装され、ギヤボックス41に軸受けを介して回動可能に支持されている(図5参照)。
【0029】
図5に示すように、ベベルギヤ36は、入力軸34の動力を第一出力軸35に伝達するためのものである。ギヤボックス41内では、入力軸34の端部(後端部)に一方のベベルギヤ36が固設され、このベベルギヤ36に噛合する他方のベベルギヤ36が第一出力軸35の端部(上端部)に固設されている。
【0030】
第一出力軸35の下端部には、第一出力部材となる第一出力プーリ35aがキー嵌合により固定されているとともに、第一出力軸35の同軸上に第二出力軸37が着脱可能に連結されている。
【0031】
第二出力軸37には、第二出力部材となる第二出力プーリ37aが電磁クラッチ38を介して設けられている。電磁クラッチ38は、第二出力軸37から第二出力プーリ37aへの動力の伝達・遮断を切り替えるクラッチとなるものである。なお、クラッチは、電磁クラッチ38に限定するものではなく、例えば、油圧クラッチなどでもよい。
【0032】
このような構成で、エンジン5のクランク軸24の動力は、図1から図3に示すように、第一クランクプーリ24a、ベルト39、入力プーリ34a、入力軸34、ベベルギヤ36、第一出力軸35に伝達される。そして、第一出力軸35の動力は、第一出力プーリ35a、ベルト82、プーリ83a、入力軸83に伝達されて前記油圧ポンプ(図示省略)が駆動される。また、第一出力軸35の動力は、第二出力軸37、第二出力プーリ37a、ベルト81、入力プーリ6a、入力軸6に伝達されてモア7の回転刃7aが駆動される。
【0033】
図6に示すように、ギヤボックス41は、左右一対のブラケット162を介してシリンダブロック22に取り付けられている。なお、左右一対のブラケット162は、左右略対象に構成されているため、以下、特に断りのない限り、一方のブラケット162について説明する。
【0034】
ブラケット162は、ギヤボックス41をシリンダブロック22に取り付けるものである。ブラケット162は、ギヤボックス41の左右両側から上方に延出されている。ブラケット162は、正面視略クランク状に形成された板状部材によって構成されている。具体的には、ブラケット162の形状は、ギヤボックス41の側面に沿って上方(垂直方向)に延出し、その後、切欠き部21a内のオイルパン21下面に沿って略垂直に折曲して外方(水平方向)に延出し、その後、シリンダブロック22の側面に沿って略垂直に折曲して上方(垂直方向)に延出している。
【0035】
ブラケット162には、複数(本実施例では4つ)のボルト孔63が上下方向に適宜間隔で穿設されている。このボルト孔63は、ブラケット162の外方(水平方向)延出部を挟んで上下に2つずつ穿設されている。つまり、ボルト孔63は、シリンダブロック22側とギヤボックス41側とに2つずつ穿設されている。
【0036】
一方、シリンダブロック22の側面には、ブラケット162上側2つのボルト孔63と側面視において重なる位置に、2つのボルト孔22aが穿設されている。また、ギヤボックス41の側面には、ブラケット162下側2つのボルト孔63と側面視において重なる位置に、2つのボルト孔41aが穿設されている。
【0037】
このような構成で、次のようにしてギヤボックス41がシリンダブロック22にブラケット162を介して取り付けられる。すなわち、ブラケット162上側2つのボルト孔63と、シリンダブロック22のボルト孔22aとを一致させた状態で、ボルト64を外方から螺挿することにより、ブラケット162をシリンダブロック22に取り付けることができる。そして、ブラケット162下側2つのボルト孔63と、ギヤボックス41のボルト孔41aとを一致させた状態で、ボルト65を外方から螺挿することにより、ブラケット162をギヤボックス41に取り付けることができる。
【0038】
なお、ブラケット162の形状は、本実施例に限定するものではない。例えば、ブラケット162を正面視略U字状に折り曲げて形成し、両側板をシリンダブロック22に取り付けるとともに、底板をギヤボックス41の上面(または下面)に取り付ける構成も可能である。また、ボルト64およびボルト孔22a、41a、63の個数も、本実施例に限定するものではない。
【0039】
以上のように、第一実施例に係るエンジン5は、略水平方向にクランク軸24を有するエンジン5であって、前記クランク軸24の下方で、該クランク軸24に対して平行に配置し、ベルト機構33を介して前記クランク軸24からの動力を受ける入力軸34と、該入力軸34からの動力を出力し、前記クランク軸24に対して垂直に配置する第一出力軸35と、該第一出力軸35に前記入力軸34の動力を伝達するベベルギヤ36と、を内装するギヤボックス41を備え、該ギヤボックス41を前記エンジン5のシリンダブロック22にブラケット162を介して取り付けるものである。このような構成により、ギヤボックス41をコンパクトに構成して、エンジン5がコンパクトになるため、車両の小型化が容易である。そして、ギヤボックス41を予めエンジン5に取り付けて、モジュール化できるため、取付作業の効率性が向上する。また、シリンダブロック22を利用することにより、簡易な構成でギヤボックス41をエンジン5に取り付けることができる。さらに、ギヤボックス41を剛性の高いシリンダブロック22に取り付けるため、取り付けの確実性が向上する。そして、ギヤボックス41がエンジン5と同一振動系となることにより、防振対策を簡素化できるため、コストダウンが容易である。
【0040】
次に、本発明の第二実施例に係るエンジン5について、図7により説明する。なお、図7において、第一実施例と同一符号の部材は第一実施例と同一構成であるため詳細な説明は省略する。
【0041】
第二実施例に係るエンジン5は、第一実施例に係るエンジン5に対して以下の点で相違する。すなわち、図7に示すように、第二実施例に係るエンジン5では、ギヤボックス41が左右一対のブラケット262を介してシリンダブロック22に取り付けられており、このブラケット262は、ギヤボックス41に一体的に成型されている。なお、左右一対のブラケット262は、左右略対象に構成されているため、以下、特に断りのない限り、一方のブラケット262について説明する。
【0042】
ブラケット262は、ギヤボックス41の左右両側から上方に延出されている。ブラケット262は、ギヤボックス41を鋳造等で成型するときに一体的に成型される。ブラケット262は、正面視略J字状(あるいは略L字状)に形成された板状部材によって構成されている。具体的には、ブラケット262の形状は、ギヤボックス41上部から切欠き部21a内のオイルパン21下面に沿って外方(水平方向)に延出し、その後、シリンダブロック22の側面に沿って略垂直に折曲して上方(垂直方向)に延出している。
【0043】
ブラケット262には、複数(本実施例では2つ)のボルト孔63が上下方向に適宜間隔で穿設されている。このボルト孔63は、シリンダブロック22側に穿設されている。
【0044】
このような構成で、ブラケット262のボルト孔63と、シリンダブロック22のボルト孔22aとを一致させた状態で、ボルト64を外方から螺挿することにより、ギヤボックス41がシリンダブロック22にブラケット262を介して取り付けられる。
【0045】
以上のように、第二実施例に係るエンジン5は、前記ギヤボックス41と前記ブラケット262を一体的に成型するものである。このような構成により、ギヤボックス41およびブラケット262を一の取付作業でシリンダブロック22に取り付けることができるため、取付作業の効率性が向上する。また、一体的に成型することにより、部品点数が少なくなるため、コストダウンが容易である。
【0046】
次に、本発明の第三実施例に係るエンジン5について、図8により説明する。なお、図8において、第一実施例と同一符号の部材は第一実施例と同一構成であるため詳細な説明は省略する。
【0047】
第三実施例に係るエンジン5は、第一実施例に係るエンジン5に対して以下の点で相違する。すなわち、図8に示すように、第三実施例に係るエンジン5では、ギヤボックス41が左右一対のブラケット362を介してシリンダブロック22に取り付けられており、この左右一対のブラケット362は、ギヤボックス41を取り付ける左右一対のブラケット162と、電磁クラッチ38を取り付ける左右一対のブラケット66と、を備えている。なお、左右一対のブラケット362は、左右略対象に構成されているため、以下、特に断りのない限り、一方のブラケット362について説明する。
【0048】
ブラケット362は、ギヤボックス41の左右両側に配置されている。ブラケット162の下端部には、ブラケット66が固定(あるいはブラケット162と一体的に成型)されている。ブラケット66は、ギヤボックス41の左右両側から下方に延出されている。ブラケット66は、正面視略逆L字状(あるいは略J字状)に形成された板状部材によって構成されている。具体的には、ブラケット66の形状は、ブラケット162の下端部から外方(水平方向)に延出し、その後、略垂直に折曲して下方(垂直方向)に延出している。この延出先端部は、電磁クラッチ38の下部に位置している。つまり、ブラケット362は、ギヤボックス41を挟んで上下に略対称に形成されている。
【0049】
そして、左右一対のブラケット66の左右間には、電磁クラッチ38が配置されている。電磁クラッチ38は、取付座67に取り付けられている。この取付座67の左右端部は、下方に略垂直に折曲されており、この折曲部には、ボルト孔67aが穿設されている。一方、ブラケット66の下部には、取付座67のボルト孔67aと側面視において重なる位置に、ボルト孔68が穿設されている。
【0050】
このような構成で、電磁クラッチ38の取付座67のボルト孔67aと、ブラケット66のボルト孔68とを一致させた状態で、ボルト69を外方から螺挿することにより、電磁クラッチ38をブラケット362に取り付けることができる。
【0051】
以上のように、第三実施例に係るエンジン5は、前記第一出力軸35からの動力を断接する電磁クラッチ38を備え、該電磁クラッチ38を前記ブラケット362に取付可能とするものである。このような構成により、第一出力軸35から駆動対象への動力の伝達・遮断が切替可能となるため、エンジン5の利便性が向上する。そして、電磁クラッチ38を予めエンジン5に取り付けて、モジュール化できるため、取付作業の効率性が向上する。また、ブラケット362を利用することにより、簡易な構成で電磁クラッチ38をエンジン5に取り付けることができる。さらに、電磁クラッチ38がエンジン5と同一振動系となることにより、防振対策を簡素化できるため、コストダウンが容易である。
【0052】
なお、上記実施の形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように変更してもよい。
図9に示すように、ブラケット162(262)とエンジン5を支持する機関脚70を一体的に成型することもできる。これにより、一の取付作業で機関脚70およびブラケット162(262)をシリンダブロック22に取り付けることができるため、取付作業の効率性が向上するとともに、部品点数が少なくなるため、コストダウンが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第一実施例に係るエンジンを備える車両を示した側面図。
【図2】本発明の第一実施例に係るエンジンを示した側面図。
【図3】同じく正面図。
【図4】ベルト機構を示した正面図。
【図5】ギヤボックスを示した側面断面図。
【図6】本発明の第一実施例に係るブラケットを示した正面図。
【図7】本発明の第二実施例に係るブラケットを示した正面図。
【図8】本発明の第三実施例に係るブラケットを示した正面図。
【図9】本発明の変形例に係るブラケットを示した一部拡大正面図。
【図10】従来例に係るエンジンを備える車両を示した側面図。
【符号の説明】
【0054】
5 エンジン
22 シリンダブロック
24 クランク軸
33 ベルト機構(第一動力伝達手段)
34 入力軸
35 第一出力軸(出力軸)
36 ベベルギヤ(第二動力伝達手段)
38 電磁クラッチ
41 ギヤボックス(動力伝達ケース)
162 ブラケット
262 ブラケット
362 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平方向にクランク軸を有するエンジンであって、前記クランク軸の下方で、該クランク軸に対して平行に配置し、第一動力伝達手段を介して前記クランク軸からの動力を受ける入力軸と、該入力軸からの動力を出力し、前記クランク軸に対して垂直に配置する出力軸と、該出力軸に前記入力軸の動力を伝達する第二動力伝達手段と、を内装する動力伝達ケースを備え、該動力伝達ケースを前記エンジンのシリンダブロックにブラケットを介して取り付けることを特徴とするエンジン。
【請求項2】
前記動力伝達ケースと前記ブラケットを一体的に成型することを特徴とする請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記出力軸からの動力を断接するクラッチを備え、該クラッチを前記ブラケットに取付可能とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−14099(P2010−14099A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177290(P2008−177290)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】