説明

カバー開閉機構及び当該カバー開閉機構を備えた印字装置

【課題】カバーが開放位置にあるときに、さらに開放方向に荷重を掛けた場合に、カバーが容易に外れることができ、且つ、カバーの回動には、がたつきが生じることがないカバー開閉機構及び当該カバー開閉機構を備えた印字装置を提供すること。
【解決手段】前面カバー3を最大限に開放すると、前面カバー3のヒンジ部31の側端部が当接部65に当接し、軸受穴63の第二の切欠部64に、軸部33の第一の切欠部が対向する。この状態で、前面カバー3を開放方向に押圧すると、当接部65の左端の端部が支点となり、ヒンジ部31の前面カバー3側の基部が力点となり、軸部33が作用点となり、軸部33の中心から第一の切欠部方向に力が掛かり、軸受部62の軸受穴63の第二の切欠部64に、軸部33の第一の切欠部が対向していることから、軸部33が軸受穴63から離脱してヒンジ部31の破損が防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体に開閉可能に取り付けられるカバーの開閉機構及びそれを備えた印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷用紙の補充や詰まった用紙の除去、部品の修理や交換等を行うために、テープ印字装置、プリンタ、ファクシミリ等の印字装置の本体を覆うカバーを、軸部を中心に閉鎖位置と開放位置の間で回動可能に保持するカバーの開閉機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。このカバー開閉機構によると、カバーを回動させるだけで簡単にカバーを開放・閉鎖させることができ、印字装置のメンテナンスを容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−142975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のカバー開閉機構では、カバーが開放位置まで開放された状態で、使用者が、さらに、開放方向にカバーを回動しようとして荷重を掛けた場合に、カバー開閉機構のヒンジ部を破損してしまうという問題点があった。また、カバーが外れ易いように、ヒンジ部の軸穴を大きくすると、カバーのがたつきが生じるという問題点があった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、カバーが開放位置にあるときに、さらに開放方向に荷重を掛けた場合に、カバーが容易に外れることができ、且つ、カバーの回動には、がたつきが生じることがないカバー開閉機構及び当該カバー開閉機構を備えた印字装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載のカバー開閉機構は、軸部によって装置本体に回動可能に軸支される一対のヒンジ部を備え、前記装置本体の上面を覆う閉止位置と、上面を開放する開放位置との間で前記軸部を中心に回動するカバーの開閉機構であって、前記一対のヒンジ部には、装置本体に設けられた一対の軸受穴に嵌合する円柱状の軸部が各々設けられ、前記軸部の頂上部において、前記カバーを開放位置から更に外側に押圧した場合に、前記軸部が前記軸受穴の壁面に押圧される位置に第一の切欠部を形成したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載のカバー開閉機構は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記軸受部には、前記カバーを開放位置から更に外側に押圧した場合に、当該軸受部が前記軸部から押圧される位置に第二の切欠部を形成したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載のカバー開閉機構は、請求項2に記載の発明の構成に加え、前記装置本体には、前記カバーを開放位置に維持するために、前記ヒンジ部の側端部が当接する当接部が設けられ、当該当接部の前記装置本体の外側面の端部と前記軸受穴の中心とを結んだ線を半径とする円弧が、前記軸受穴の側面と交わる位置を含むように前記第二の切欠部を形成したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載の印字装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載のカバー開閉機構を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載のカバー開閉機構では、前記軸部の頂上部において、前記カバーを開放位置から更に外側に押圧した場合に、軸部が前記軸受穴の壁面に押圧される位置に第一の切欠部を形成しているので、開放位置から更に開放方向に、荷重が掛かった場合には、カバーのヒンジ部の軸部の第一の切欠部から軸受穴から容易に外れるので、ヒンジ部を破損することを防止できる。また、第一の切欠部は、軸部の一部にしか形成されていないので、カバーを回動してもがたつくことがない。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載のカバー開閉機構は、請求項1に記載の発明の効果に加え、前記軸受部には、前記カバーを開放位置から更に外側に押圧した場合に、当該軸受部が前記軸部から押圧される位置に第二の切欠部が形成されている。従って、開放位置から更に開放方向に、荷重が掛かった場合には、カバーのヒンジ部の軸部の第一の切欠部が軸受穴の第二の切欠部から容易に外れるので、ヒンジ部を破損することを防止できる。また、第二の切欠部は、軸受穴の一部にしか形成されていないので、カバーを回動してもがたつくことがない。
【0012】
また、本発明の請求項3に記載のカバー開閉機構は、請求項2に記載の発明の効果に加え、前記装置本体には、前記カバーを開放位置に維持するために、前記ヒンジ部の側端部が当接する当接部が設けられ、当該当接部の前記装置本体の外側面の端部と前記軸受穴の中心とを結んだ線を半径とする円弧が、前記軸受穴の側面と交わる位置を含むように前記第二の切欠部を形成しているので、当接部に開放位置から更に開放方向に、荷重が掛かった場合には、カバーのヒンジ部の軸部の第一の切欠部が軸受穴の第二の切欠部から容易に外れるので、ヒンジ部を破損することを防止できる。また、第二の切欠部は、軸受穴の一部にしか形成されていないので、カバーを回動してもがたつくことがない。
【0013】
また、本発明の請求項4に記載の印字装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】印字装置1の斜視図である。
【図2】印字装置1の底面図である。
【図3】印字装置1の前面カバー3を開放位置に回動した状態の底面図である。
【図4】前面カバー3の斜視図である。
【図5】前面カバー3を取り外した状態の印字装置1の底面図である。
【図6】軸受穴63近傍の拡大図である。
【図7】ヒンジ部31を拡大した斜視図である。
【図8】ヒンジ部31を拡大図した平面図である。
【図9】前面カバー3を最大限開放した態のヒンジ部31近傍の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態であるカバー開閉機構を備えた印字装置1について、図面を参照して説明する。この印字装置1は、接続されたコンピュータ装置から送信される印字データを、テープ状の印刷媒体へ印字するためのラベルプリンタである。この印字装置1には、図示外のテープカセットが着脱可能に内蔵されている。
【0016】
まず、図1乃至図3を参照して、印字装置1の概略構成について説明する。尚、図1における印字装置1では、前面カバー3の設けられている側が正面とする。図1に示すように、印字装置1は、略直方体形状に形成され、フレーム部2と、当該フレーム部2に開放可能に軸支され、印字装置1の正面側を覆う前面カバー3と、フレーム部2に固定され印字装置1の背面を覆う背面カバー4とから構成されている。また、フレーム部2の右上端部には、印刷されたテープ状の印刷媒体を切断するための押しボタン5が設けられている。また、フレーム部2の左側面には、各種のジャックが設けられている。また、図2及び図3に示すように、印字装置1の底面は、長方形の平板状に形成された底部6から構成され、当該底部6の四隅には、各々ゴム製の足61が設けられている。
【0017】
次に、図1、図3及び図4を参照して、前面カバー3の構造を説明する。前面カバー3は、正面視、略長方形に形成され、中央部が盛り上がった形状である。この前面カバー3は、印字装置1に内蔵されたテープカセットを着脱するときに、開放されるものである。図4に示すように、前面カバー3の裏面の長手方向の一端部には、板状に形成された一対のヒンジ部31,32が所定間隔を開けて、平行に設けられている。前面カバー3に於いて、ヒンジ部31,32が設けられた側と反対側の端部には、前面カバー3を開放するときに、指を掛ける複数の凸部が形成された壁部である側壁部38形成されている。この側壁部38の下端部には、前面カバー3を閉じた場合に、フレーム部2に設けられた図示外の被係止部に係止されるフック39が設けられている。また、前面カバー3には、印字装置1に収納されたテープカセットに貼り付けられたラベルを目視するための略四角形の窓部30が形成されている。尚、前記ヒンジ部31の内側には、軸部33が凸設されており、ヒンジ部32の内側にも同様の軸部が形成されている。尚、軸部33には、後述する第一の切欠部36(図7参照)が形成されている。軸部33の構造の詳細は、後述する。
【0018】
次に、図5及び図6を参照して、フレーム部2の底部6の端部に形成された軸受部62及び軸受穴63について説明する。図5に示すように、フレーム部2の底部6の左上の角部には、底部6よりも一段下がった平面から構成された軸受部62が形成されている。この軸受部62は、ヒンジ部31に対応するものである。この軸受部62には、上部が半円状に抉られた長穴である軸受穴63が穿設されている。そして、この軸受穴63の上部の半円状部分の斜め左上部分に第二の切欠部64が扇形状に穿設されている。また、軸受穴63の下端部の部分の近傍には、前面カバー3を最大限に開放位置にした時に、ヒンジ部31の側端部が当接する当接部65が形成されている。尚、印字装置1のフレーム部2では、ヒンジ部32に対応して、当接部65と同様の構造の軸受部、軸受穴及び第二の切欠部が設けられている。尚、図6に示す当接部65の左端(外側)の端部を中心とし、当該当接部65の左端(外側)の端部と軸受穴63の半円部の中心とを結んだ直線70を半径とした円弧71が、前記軸受穴63の側面と交わる位置を含むように第二の切欠部64が形成されている。ここに、第二の切欠部64が形成されているのは、前面カバー3を開放位置に最大限開いたときに、更に前面カバー3の開放方向に力を掛けると、軸部33が乗り越える位置がこの部分だからである。
【0019】
次に、図7及び図8を参照して、ヒンジ部31の構造について説明する。ヒンジ部31は、平面視、先端に向かって幅が狭くなる略台形状の板状に形成され、その先端側の内側(図7に於ける上面)には、前記軸受穴63に嵌合する円柱状の軸部33がヒンジ部31と直交する方向に凸設されている。軸部33の下部には、軸部より半径の大きい円柱状の基部34が形成されている。
【0020】
軸部33の頂上部35には、頂上部35の一部を切欠いた第一の切欠部36が形成されている。この切欠部36は、前面カバー3を開放位置に最大限開いたときに、前記軸受穴63の第二の切欠部64に対向する位置に、前記第二の切欠部64の扇形の中心角と略同じ位の角度の大きさで切欠いて形成されている。尚、ヒンジ部32にも軸部33と同様の構造を持った軸部が形成されている。
【0021】
次に、図2、図3、図6及び図9を参照して、前面カバー3の開放動作について説明する。図2に示すように、前面カバー3を閉じた状態から、テープカセットを交換する場合には、図3に示すように、前面カバー3の側壁部38に指を掛けて前面カバー3を開放する。前面カバー3を最大限に開放すると、図9に示すように、前面カバー3のヒンジ部31の側端部が当接部65に当接して止まる。この時に、軸受部62の軸受穴63の第二の切欠部64に、軸部33の第一の切欠部36が対向する。この状態で、さらに、前面カバー3を開放方向に押圧する(荷重を掛ける)と、図9に於ける当接部65の左端の端部が支点となり、ヒンジ部31の前面カバー3側の基部が力点となり、軸部33が作用点となる。従って、図6に示す円弧71を軌跡として、図9に示すヒンジ部31が回動するように力を受ける。この場合には、軸部33の中心から第一の切欠部36方向に力が掛かる。ここで、軸受部62の軸受穴63の第二の切欠部64に、軸部33の第一の切欠部36が対向していることから、軸部33が軸受穴63から離脱し、ヒンジ部31が破損することを防止できる。尚、ヒンジ部32及びその軸受部においても同様の構造となっているので、ヒンジ部32が破損することを防止できる。また印字装置1では、軸受穴63の半円部分の一部しか第二の切欠部64を形成していないので、前面カバー3を回動しても、がたつきが生じることがない
【0022】
また、本発明は、以上詳述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。本発明は、上記実施の形態の印刷装置だけでなく、ヒンジ部により回動可能に軸支されて開放されるカバーを備えた各種の装置に適用できる。また、カバーを開放して、交換されるものは、テープカセットに限られず、印字用紙、電池等、印字装置の内部に内蔵されるものであれば良い。
【符号の説明】
【0023】
1 印字装置
2 フレーム部
3 前面カバー
4 背面カバー
6 底部
31,32 ヒンジ部
33 軸部
34 基部
35 頂上部
36 第一の切欠部
38 側壁部
61 足
62 軸受部
63 軸受穴
64 第二の切欠部
65 当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部によって装置本体に回動可能に軸支される一対のヒンジ部を備え、前記装置本体の上面を覆う閉止位置と、上面を開放する開放位置との間で前記軸部を中心に回動するカバーの開閉機構であって、
前記一対のヒンジ部には、装置本体に設けられた軸受穴に嵌合する円柱状の軸部が各々設けられ、
前記軸部の頂上部において、前記カバーを開放位置から更に外側に押圧した場合に、前記軸部が前記軸受穴の壁面に押圧される位置に第一の切欠部を形成したことを特徴とするカバー開閉機構。
【請求項2】
前記軸受部には、前記カバーを開放位置から更に外側に押圧した場合に、当該軸受部が前記軸部から押圧される位置に第二の切欠部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のカバー開閉機構。
【請求項3】
前記装置本体には、前記カバーを開放位置に維持するために、前記ヒンジ部の側端部が当接する当接部が設けられ、
当該当接部の前記装置本体の外側面の端部と前記軸受穴の中心とを結んだ線を半径とする円弧が、前記軸受穴の側面と交わる位置を含むように前記第二の切欠部を形成したことを特徴とする請求項2に記載のカバー開閉機構。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のカバー開閉機構を備えたことを特徴とする印字装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−238851(P2010−238851A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84205(P2009−84205)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】