説明

カメラ

【課題】電源オンした後のセットアップ中にAE及びAFを完了させて、該セットアップ完了後に撮影可能状態になるまでの時間を短縮すると共に撮影画像の品質に悪影響を与えることのないカメラを提供することである。
【解決手段】このカメラは、沈胴式の撮影レンズを備えており、被写体までの距離が外光測距部46によって測距される。この外光測距部46により得られた測距結果より、RISC32及びシステムコントローラ20にて上記撮影レンズの駆動時間が算出され、この撮影レンズの駆動時間と予め定められたセットアップ完了時間とから、撮影レンズの駆動開始時間が算出される。また、画角の変化が加速度センサ43で検出されるようになっており、上記撮影レンズの駆動開始時間までに加速度センサ43で画角の変化が検出された場合は、システムコントローラ20にて、上記撮影レンズの駆動開始時間までに得られた最後の測距位置を合焦位置として上記撮影レンズ系を駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカメラに関し、より詳しくは沈胴式のズームレンズを備えたカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ズームレンズを備えたデジタルカメラは、カメラ本体内に沈胴させたレンズ鏡枠内に、ズームレンズ群フォーカスレンズ群を収納している。こうしたカメラでは、カメラの電源がオンされると、レンズ鏡枠が所定の基準位置まで繰り出されると共に、内部のズームレンズ群及びフォーカスレンズ群が移動されて、撮影可能な準備状態になる。
【0003】
一方で、鏡枠のセットアップが完了する前に、撮影に必要な処理を完了して撮影を許可するカメラが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、カメラ前面のバリアを開いている動作中や鏡枠のセットアップ動作中に、自動露出(AE)や自動焦点(AF)動作が実行されるカメラが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−208952号公報
【特許文献2】特開2003−274270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1及び2に記載のカメラの目的は、電源オンから撮影可能状態になるまでのタイムラグの短縮である。
【0006】
ところで、何れのカメラも沈胴式の鏡枠を備えたものであるが、鏡枠のセットアップ動作中のレンズの位置と、セットアップ完了後のレンズ位置が異なるために、正確にAE、AFに必要な情報を得ることが困難なものであった。そのため、電源オンから撮影可能状態になるまでのタイムラグは短縮されるものの、撮影画像の品質に悪影響を与えるものとなってしまう。
【0007】
したがって本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電源オンした後のセットアップ中にAE及びAFを完了させて、該セットアップ完了後に撮影可能状態になるまでの時間を短縮すると共に撮影画像の品質に悪影響を与えることのないカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、沈胴式の撮影レンズを備えたカメラに於いて、被写体までの距離を測定する外光測距部と、上記外光測距部により得られた測距結果より上記撮影レンズの駆動時間を算出し、この撮影レンズの駆動時間と予め定められたセットアップ完了時間とから、撮影レンズの駆動開始時間を算出する算出手段と、画角の変化を検出する加速度センサと、上記撮影レンズの駆動開始時間までに上記加速度センサにより上記画角の変化が検出された場合に、上記撮影レンズの駆動開始時間までに得られた最後の測距位置を合焦位置として上記撮影レンズを駆動する制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明に於いて、上記加速度センサは、その検出角度若しくは検出方向に所定の閾値を有し、上記制御手段は、上記加速度センサが上記閾値以上の値を検出した場合に画角が変化したと判定することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明に於いて、上記加速度センサの閾値は、被写体距離若しくは焦点距離に応じて設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電源オンした後のセットアップ中にAE及びAFを完了させて、該セットアップ完了後に撮影可能状態になるまでの時間を短縮すると共に撮影画像の品質に悪影響を与えることのないカメラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に於けるデジタルカメラの電気系の構成を示すブロック図である。
【0014】
被写体10からの撮影光束は、防振光学系12及びオートフォーカス(AF)光学系13で構成される撮影レンズ系11を介して撮像素子15に入射される。この撮像素子15に入射された撮影光束は、ここで光電変換された後、撮像回路16を経てA/D変換器17にてデジタル信号に変換される。
【0015】
このA/D変換器17は、SDRAMで構成されるバッファメモリ21、デジタル信号処理回路(DSP)23、圧縮/伸長部24、インターフェース(I/F)26、外部I/F27、ビデオメモリ28、フラッシュメモリ(FLASH)30、RISC31及びEEPROM32と共に、それぞれ共通バスを介して、制御手段であるシステムコントローラ20に接続されている。また、このシステムコントローラ20には、上記撮像回路16、コントラスト検出部22、アクチュエータ駆動回路42、加速度センサ43、測距回路44、ブレ検出部48、測光回路49、ストロボ発光部50、モードLCD51、操作部52及び電源部55が接続されている。
【0016】
上記防振光学系12及びオートフォーカス光学系13は、アクチュエータ駆動回路42により適宜駆動される。また、防振光学系12は、加速度センサ43によって検出されたブレに基いて、これを防止するようになっている。
【0017】
上述したように、光学系を介して撮像素子15で撮像された光束は、ここで光電変換された後、アナログ画像信号として撮像回路16に出力され、A/D変換器17にてデジタル信号に変換される。このA/D変換器17によりデジタル化された画像信号は、DSP23に入力される。このDSP23では、画像信号のγ補正、ホワイトバランス補正、自動露出調整等のデジタル信号処理が施される。
【0018】
DSP23にて処理されたデジタル画像信号は、圧縮/伸長部24に入力されて、例えばJPEG規格に基いて画像圧縮/伸長が行われる。こうして圧縮/伸長された画像データは、ビデオメモリ28に転送されて記憶された後、ビデオ出力回路29を介して画像表示LCD39に表示可能であると共に、ビデオ出力端子38より外部機器に出力可能である。
【0019】
また、上記画像データは、I/F26からカードスロット35を介して、当該カメラに着脱自在な着脱メモリ36に記録することができる。更に、画像データは、外部I/F27を介して、外部入出力端子37より入出力が可能である。
【0020】
不揮発性メモリであるEEPROM32は、上述したバッファメモリ21、ビデオメモリ28、フラッシュメモリ30以外の記憶領域として、カメラ制御に必要な所定の制御パラメータを記憶する記憶手段である。
【0021】
加速度センサ43は、カメラの画角が変化したか否かを検出するためのものである。この加速度センサ43による画角の変化は、その検出角度または検出方向に所定の閾値を予め定めておき、この閾値以上の値となる出力が検出された場合に、システムコントローラ20によって画角が変化したと判定される。こうして画角が変化したと判定された場合は、再測距が行われる。
【0022】
また、上記加速度センサ43の閾値は、被写体距離または焦点距離によって異なるものであり、フラッシュメモリ30内に記憶されているか、上記被写体距離または焦点距離に応じてシステムコントローラ20内の演算部により算出されるものである。
【0023】
上記測距回路44は、外光装置45と共に外光測距部46を構成しているもので、この外光式の測距により、カメラから被写体10までの距離が測定される。
【0024】
尚、上記操作部52は、本カメラの種々の操作を行うためのもので、例えば、レリーズパワーオン、各種のモード設定、電池表示選択等を行うためのスイッチや釦で構成される。
【0025】
また、電源部55は、電源としてのカメラ電池56の電圧を、当該カメラシステムの各カメラ回路が必要とする電圧に変換して供給するために設けられている。
【0026】
次に、図2のタイミングチャート及び図3のフローチャートを参照して、本実施形態に於けるカメラのセットアップまでの動作について説明する。
【0027】
先ず、ステップS1にて、操作部52内の図示されないパワースイッチがオンされるまで待機する。そして、上記パワースイッチがオンされたならば、(0[ms])、ステップS2にてカメラシステムの初期化が行われる。次いで、ステップS3にて鏡枠のセットアップ動作が開始される。これにより、ズームレンズの移動が開始されると共に、画像表示LCD39に画像表示を行うために絞り及びシャッタが開放にされる。
【0028】
更に、ステップS4では、上記測距回路44及び外光装置45とから成る外光測距部46により外光式のAFが実行されて、被写体10までの距離が測定される。また、同時に加速度センサ43がオンされる。そして、ステップS5にて、上記ステップS4にて得られた測距結果が記憶された後、続くステップS6にて、フォーカスレンズのレンズ駆動時間SA[ms]が算出される。
【0029】
次に、ステップS7に於いて、このカメラのセットアップ完了時間EB[ms]と上記レンズ駆動時間SA[ms]とから、フォーカスレンズの駆動開始時間LS[ms]が算出される。
【0030】
一方、上記ステップS4にて加速度センサ43により上記光学系が監視されているが、ステップS8に於いて、レンズ駆動開始時間LSまでに加速度センサ43の出力が検出されたか否かが判定される。ここで、加速度センサ43の出力が検出されない場合はステップS11へ移行するが、出力が検出された場合はステップS9へ移行する。すなわち、上記ステップS8に於いて、加速度センサ43の出力が検出されない場合は、外光測距部46は駆動されない。
【0031】
ステップS9では、外光測距部46により外光式のAFが実行されて、合焦位置が求められる。次いで、ステップS10にて、上記ステップS9で得られた測距結果が記憶される。
【0032】
そして、ステップS11に於いて、レンズ駆動開始時間LSに到達したか否かが判定される。ここで、レンズ駆動開始時間LSに到達していなければ、上記ステップS8へ移行して以降の処理が繰り返される。一方、レンズ駆動開始時間LSに到達したならば、ステップS12へ移行して、該レンズ駆動開始時間LSまでの最後の測距位置が合焦位置とされて、フォーカスレンズが駆動される。
【0033】
つまり、レンズ駆動開始時間LSまでに加速度センサ43の出力が検出された場合は、該レンズ駆動開始時間LSまでの最後の測距位置が合焦位置とされて、フォーカスレンズが高速駆動される。一方、レンズ駆動開始時間LSまでに加速度センサ43の出力が検出されなかった場合は、システム初期化後に測距が行われて得られた測距位置が合焦位置とされて、その位置に向けてフォーカスレンズが駆動される。
【0034】
その後、ステップS13に於いて、セットアップ完了時間EBに到達したか、すなわちズームレンズ及びフォーカスレンズのセットアップが完了したか否かが判定される。ここで、セットアップが完了していない場合はエラー処理に移行する。一方、セットアップが完了していれば、本シーケンスが終了して、このカメラは撮影可能状態に入る。この場合、表示部である画像表示LCD39に撮影画像が表示されるようになる。
【0035】
尚、ズームレンズのセットアップ完了位置は、前回カメラを使用した時の最後に設定された位置とするが、これに限られるものではない。例えば、常にテレ端、またはワイド端に設定されるものであってもよいし、或いは予め所定位置に設定されるようにしてもよい。
【0036】
図2に示されるように、加速度センサ43は、フォーカスレンズの駆動中(LS以降)であっても、加速度センサ43を稼働状態にされている。そして、この加速度センサ43の出力が検出され、その検出出力が上記閾値以上となった場合に、フォーカスレンズの駆動後に再度測距が行われる。これにより、得られた測距位置が合焦位置となり、この合焦位置に向けてフォーカスレンズが駆動される。
【0037】
また、上述した実施形態に於いて、レンズ駆動開始時間LSは、測距結果によってレンズ駆動時間SAが変更される毎に更新されるものであってもよいし、また更新されなくともよい。
【0038】
更に、加速度センサ43により検出されるカメラの画角の変化分は、その閾値の設定により検出角度または検出方向に応じて変更が可能である。すなわち、閾値を小さい値にしておけば細かいブレも検出可能であり、閾値を大きい値に設定しておけば検出されるブレも大きいものとなり、細かいブレは検出されない。但し、細かいブレを検出すると再測距の可能性が高くなるので、ある程度大きな値を閾値とした方が望ましい。したがって、加速度センサ43の閾値は、固定のものではなく可変のものとしてもよい。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、カメラの電源がオンされた後のセットアップ完了までにAE及びAFを完了させて撮影可能状態になるまでの時間を短縮すると共に、ブレが生じた場合は再測距によりこれを解消するようにしたので、撮影画像の品質に悪影響を与えることを防止することができる。
【0040】
また、本発明は、インナーフォーカス式のカメラに好適のものであるが、これに限られるものではない。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態以外にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に於けるデジタルカメラの電気系の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に於けるカメラのセットアップまでの動作について説明するタイミングチャートである。
【図3】本実施形態に於けるカメラのセットアップまでの動作について説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
10…被写体、11…撮影レンズ系、12…防振光学系、13…オートフォーカス(AF)光学系、15…撮像素子、16…撮像回路、17…A/D変換器、20…システムコントローラ、21…バッファメモリ、23…デジタル信号処理回路(DSP)、24…圧縮/伸長部、26…インターフェース(I/F)、27…外部I/F、28…ビデオメモリ、30…フラッシュメモリ(FLASH)、31…RISC、32…EEPROM、39…画像表示LCD、43…加速度センサ、44…測距回路、45…外光装置、46…外光測距部、48…ブレ検出部、49…測光回路、51…モードLCD、52…操作部、55…電源部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈胴式の撮影レンズを備えたカメラに於いて、
被写体までの距離を測定する外光測距部と、
上記外光測距部により得られた測距結果より上記撮影レンズの駆動時間を算出し、この撮影レンズの駆動時間と予め定められたセットアップ完了時間とから、撮影レンズの駆動開始時間を算出する算出手段と、
画角の変化を検出する加速度センサと、
上記撮影レンズの駆動開始時間までに上記加速度センサにより上記画角の変化が検出された場合に、上記撮影レンズの駆動開始時間までに得られた最後の測距位置を合焦位置として上記撮影レンズを駆動する制御手段と、
を具備することを特徴とするカメラ。
【請求項2】
上記加速度センサは、その検出角度若しくは検出方向に所定の閾値を有し、上記制御手段は、上記加速度センサが上記閾値以上の値を検出した場合に画角が変化したと判定することを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項3】
上記加速度センサの閾値は、被写体距離若しくは焦点距離に応じて設定されることを特徴とする請求項2に記載のカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−91574(P2006−91574A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278297(P2004−278297)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】