説明

キャップ付き筆記具

【課題】 不使用時にキャップが外れてしまうのを防ぐことができる上、使用時には押圧操作によってキャップを簡単に外すことができるようにする。
【解決手段】 キャップ20の周壁に、外方からの押圧操作によりキャップ内側へ変形可能な変形部21aを設け、キャップ内側へ変形した際の変形部21aにより軸筒10を押圧して、キャップ20が軸筒10から外されるようにしたキャップ付き筆記具において、変形部21aの外表面を、キャップ周壁の外表面と略面一に、又はキャップ周壁の外表面よりも凹ませて設け、変形部21aに隣接する外表面に、変形部21aの外表面よりもキャップ内側へ凹んだ逃し凹部21b,21cを設け、前記押圧操作のための指fを前記逃し凹部21b,21cによって逃すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修正ペンを含むキャップ付き筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キャップ付き筆記具は、そのキャップを外す際の衝撃で、インクが飛び散る等の問題があり、特にインク吐出量が比較的多い直液式筆記具において前記問題が著しかった。そこで、キャップと筆記具本体の嵌合力を弱めに設定することも考えられるが、このようにした場合には、キャップが不用意に外れてしまったり、振動や温度等の影響で流出したインクが、キャップと筆記具本体の間の嵌合箇所から洩れたり等することが懸念される。
このような問題を解決するために、例えば、特許文献1に記載の発明では、キャップ(1)の側面に、内側へ撓み可能な操作体(14)と、該操作体(14)の自由端側で外方へ突出する釦部(15)とを備え、釦部(15)が押圧されて操作体(14)が内側へ撓んだ際に、該操作体(14)の内面を、筆記具本体(2)の前端側の傾斜部(12)に摺接させて、キャップ(1)が前方へ押し出されるようにしている。
【0003】
ところで、前記従来技術によれば、搬送中の振動等に起因して、筆記具が梱包箱の内面等に当接した場合に、その当接によって前記釦部(15)が押圧され、キャップ(1)が外れてしまうおそれがある。
そこで、前記操作体(14)から突出する部分(釦部(15))を省いて、前記振動等により操作体(14)が押圧変形されないようにすることが提案される。
しかしながら、前記のように突出部分(釦部(15))を省いた場合には、前記操作体(14)を内側へ押圧変形させる際の操作性を著しく損ねてしまうため、工夫を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−1981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、不使用時にキャップが外れてしまうのを防ぐことができる上、使用時には押圧操作によってキャップを簡単に外すことができるキャップ付き筆記具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための技術的手段は、キャップの周壁に、外方からの押圧操作によりキャップ内側へ変形可能な変形部を設け、キャップ内側へ変形した際の前記変形部により軸筒を押圧して、前記キャップが前記軸筒から外されるようにしたキャップ付き筆記具において、前記変形部の外表面を、キャップ周壁の外表面と略面一に、又はキャップ周壁の外表面よりも凹ませて設け、前記変形部に隣接する外表面に、前記変形部の外表面よりもキャップ内側へ凹んだ逃し凹部を設け、前記押圧操作のための指を前記逃し凹部によって逃すようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような作用効果を奏する。
変形部の外表面が、キャップ周壁の外表面と略面一か、又はキャップ周壁の外表面よりも凹んでいるため、搬送中の振動等に起因し、変形部が梱包箱の内面等に当接されて、キャップが外れてしまうようなことを防止することができる。
しかも、変形部を変形させてキャップを外す際には、変形部を押圧操作した指が、逃し凹部に逃されて深く沈み込むため、変形部の変形量を比較的大きく確保することができる上、変形部を押圧操作する際の操作性を向上することができる。
よって、不使用時にキャップが外れてしまうのを防ぐことができる上、使用時には押圧操作によってキャップを簡単に外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るキャップ付き筆記具の一例を示す断面図である。
【図2】同キャップ付き筆記具におけるキャップ本体部と密閉部材を示す半断面図である。
【図3】(a)はキャップ本体部の一例を示す平面図、(b)は(a)に対する正面図である。
【図4】(a)はキャップを軸筒に装着した状態を示す要部拡大図、(b)は変形部に押圧力が加わってキャップが軸筒から外された状態を示す要部拡大図である。
【図5】(a)はキャップを弓なりに撓ませた状態を示す要部拡大図、(b)は変形部の復元力により軸筒を弾いてキャップが外された状態を示す要部拡大図である。
【図6】図4における(IV)−(IV)線端面図であり、(a)は変形部に押圧力が加わっていない状態を示し、(b)は変形部に押圧力が加わった状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための一形態では、キャップの周壁に、外方からの押圧操作によりキャップ内側へ変形可能な変形部を設け、キャップ内側へ変形した際の前記変形部により軸筒を押圧して、前記キャップが前記軸筒から外されるようにしたキャップ付き筆記具において、前記変形部の外表面を、キャップ周壁の外表面と略面一に、又はキャップ周壁の外表面よりも凹ませて設け、前記変形部に隣接する外表面に、前記変形部の外表面よりもキャップ内側へ凹んだ逃し凹部を設け、前記押圧操作のための指を前記逃し凹部によって逃すようにする。
【0010】
さらに、前記変形部の好ましい具体的形態としては、前記キャップの周壁に、該周壁をキャップ径方向へ貫通する略凹状の切欠部を設け、該切欠部の内側の部分を、自由端側がキャップ内側へ撓み可能な前記変形部とする。
【0011】
さらに、操作する指の沈み込みにより前記変形部を効果的に変形させるためには、前記逃し凹部は、前記変形部の自由端部に隣接するようにして、キャップ周壁の外表面に設けられる。
【0012】
さらに、操作する指が前記自由端側に対する反対側寄りに置かれた場合にも、その指を深く沈み込ませて前記変形部を効果的に変形させるためには、前記逃し凹部は、前記変形部の両側端部に対してその両側から隣接するように、キャップ周壁の外表面に設けられる。
【0013】
また、変形した前記変形部が復元する際の弾発力によって前記キャップを容易に外せるようにするためには、前記変形部は、弓なりに弾性変形可能な縦断面凹状に形成され、キャップ内側へ変形した際に、その自由端側の部分によって前記軸筒を押圧するように構成される。
なお、この形態は、前記逃し凹部を具備しない独立した発明としても、前述したキャップを外し易くする等の作用効果を奏する。
すなわち、この独立した発明は、キャップの周壁に、外方からの押圧操作によりキャップ内側へ変形可能な変形部を設け、キャップ内側へ変形した際の前記変形部により軸筒を押圧して、前記キャップが前記軸筒から外されるようにしたキャップ付き筆記具において、前記変形部は、弓なりに弾性変形可能な縦断面凹状に形成され、キャップ内側へ変形した際に、その自由端側の部分によって前記軸筒を押圧することを特徴とする。
この独立した発明には、前記変形部が、キャップ周壁の外表面から突出する態様も含まれる。
【0014】
さらに、前記変形部が復元する際の弾発力を効果的に得る形態としては、前記変形部は、前記縦断面凹状の部分の中央側が他の部分よりも薄肉に形成されている。
【0015】
また、前記変形部により前記軸筒を押圧する際の接触状態を安定させて、前記キャップを外し易くするためには、前記軸筒の前端側に先窄み状の傾斜面を形成し、前記変形部の自由端側に、前記傾斜面に摺接される複数の凸部を設ける。
【0016】
また、前記変形部を押圧する際の滑り止め、前記切欠部からの異物侵入防止等の観点から好ましい形態としては、前記切欠部を跨るようにして前記変形部を覆う弾性被覆部を設ける。
なお、この形態は、前記逃し凹部等を具備しない独立した発明としても、前記した滑り止め及び異物侵入防止等の作用効果を奏する。
すなわち、この独立した発明は、キャップの周壁に、外方からの押圧操作によりキャップ内側へ変形可能な変形部を設け、キャップ内側へ変形した際の前記変形部により軸筒を押圧して、前記キャップが前記軸筒から外されるようにしたキャップ付き筆記具において、前記キャップの周壁に、該周壁をキャップ径方向へ貫通する略凹状の切欠部を設け、該切欠部の内側の部分を、自由端側がキャップ内側へ撓み可能な前記変形部とし、前記切欠部を跨るようにして前記変形部を覆う弾性被覆部を設けたことを特徴とする。
【0017】
以下、上記形態の特に好ましい具体例を、図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明中、「キャップ軸方向」とは、キャップの軸心(中心)が延びる方向を意味する。また、「キャップ径方向」とは、前記キャップ軸方向に略直交する方向を意味する。「軸筒軸方向」とは、軸筒の軸心(中心)が延びる方向を意味し、前記キャップ軸方向と同方向である。また、「キャップ径外方向」とは、前記キャップ径方向において軸心から離れる方向を意味する。
【0018】
図1は、本発明に係るキャップ付き筆記具の一例を示している。
このキャップ付き筆記具1は、長尺筒状の軸筒10と、該軸筒10の前端側に着脱可能に接続されるキャップ20とを備え、キャップ20の周壁に、外方からの押圧操作によりキャップ内側へ変形可能な変形部21aを設け、キャップ内側へ変形した際の前記変形部21aにより軸筒10を押圧して、前記キャップ20が前記軸筒10から外されるようにしている。
このキャップ付き筆記具1は、軸筒10内の空間に直接充填されるインクを前方へ導き筆記部30の前端から突出する直液式筆記具として構成される。
【0019】
軸筒10は、前軸11と後軸12とを接続してなる一体筒状に構成される。なお、この軸筒10の他例としては、単一の筒状部材からなる態様や、3つ以上の筒体を接続してなる態様とすることも可能である。
【0020】
前軸11の外周面の前端側には、先窄み状の傾斜面11aが形成されている。この傾斜面11aは、前方(図1によれば左方向)へ向かって徐々に縮径された略円錐状の面である。
前軸11における前記傾斜面11aよりも前側の部分は小径筒状に形成され、この筒状部分の外周面には、キャップ20に対し全周にわたって凹凸状に嵌り合いインク洩れを防止する環状溝11bが設けられる。
前軸11における前記傾斜面11aよりも後側の部分は、キャップ20に嵌り合う大径筒状に形成され、この筒状部分の外周面には、キャップ20をキャップ軸方向へ乗り越えさせて嵌合する環状突起11cが形成される。
前軸11における環状突起11cよりも後ろ側には、キャップ20の後端縁に当接して該後端縁を受ける環状凸部11dが設けられる。そして、前軸11における環状凸部11dよりも更に後側の部分は、後軸12の前端開口部に挿入され嵌合接続されている。
また、前軸11内周面における前端側には、後軸12内から前方へ吐出されるインクを一時的に貯溜するインク貯溜溝11eが設けられる。このインク貯溜溝11eは、軸筒軸方向へ連続する溝であり、周方向に間隔を置いて複数設けられる。
【0021】
後軸12は、後端部を閉鎖した有底筒状に形成され、前軸11の後端部に嵌合接続されている。
【0022】
キャップ20は、図2に示すように、略有底筒状のキャップ本体部21と、該キャップ本体部21内に不動に接続された密閉部材22とから構成される。
【0023】
キャップ本体部21は、前軸11の前側部分に着脱可能に接続可能な有底筒状に形成され、その周壁には、外方からの押圧操作により自由端部21a1側をキャップ内へ弾性的に撓み変形可能な変形部21aが設けられる。
変形部21aの外表面は、キャップ本体部21周壁の外表面と略面一、又はキャップ本体部21周壁の外表面よりも凹んで設けられる。換言すれば、変形部21aは、キャップ本体部21における変形部21a以外の部分の外表面から径外方向へ突出しないように設けられる。
【0024】
変形部21aは、キャップ本体部21の周壁に、該周壁をキャップ径方向へ貫通する平面視略凹状(図3参照)の切欠部21dを設けることで、この切欠部21dの内側に形成された方持ち梁状の部分であり、その基端側に対する逆端側の自由端部21a1を、軸筒後方(図1〜5によれば右方)へ向けている。
この変形部21aは、図示例によれば、軸心を挟んで対向するように二つ設けられる。
【0025】
各変形部21aは、弓なりに弾性変形可能な縦断面凹状に形成され、キャップ内側へ変形した際に、自由端部21a1側の内縁によって軸筒10の傾斜面11aを押圧する。
この変形部21aの自由端部21a1の外表面は、キャップ本体部21における後端側(図2及び3によれば右端側)の外表面(突起21h以外の部分における最大径部分)と、略面一になっている。
この変形部21aは、キャップ軸方向において、縦断面凹状の部分の中央側が、キャップ内側へ凹むようにして、その両側の部分よりも徐々に薄肉になるように形成される。この構成によれば、変形部21aの中央側が押圧された際に、該変形部21aを効果的に弓なり変形させることができる。
【0026】
そして、変形部21aの凹状の表面には、指fの滑り止めになるとともに変形部21aの変形を促進するように、複数の凹凸条21a2が設けられる。
この凹凸条21a2は、キャップ軸方向に直交する方向の突条と凹溝を交互に並べることで形成される。
【0027】
また、変形部21aの自由端部21a1側の内縁には、軸筒10の傾斜面11aに摺接可能な複数の凸部21eが設けられる。これら凸部21eは、図示例によれば、変形部21aの自由端部21a1側の内縁を、断面略階段状に形成することで形成された複数の突起である。
この構成によれば、変形部21aがキャップ内側へ撓んだ際に、変形部21aの自由端部21a1側の内縁と、軸筒10の傾斜面11aとの間の当接力が、複数の凸部21eに略均等に分散されるため、変形部21aと傾斜面11aを安定した接触状態にすることができる。
【0028】
そして、キャップ本体部21の外表面における変形部21aに隣接する部分には、押圧操作のための指f(図4参照)を逃すために、変形部21aの外表面よりもキャップ内側へ凹んだ第1及び第2の逃し凹部21b,21cが設けられる。
【0029】
第1の逃し凹部21bは、変形部21aの自由端部21a1に対し、切欠部21dを間に置いて、その後方側(図1〜5によれば右方側)から隣接するようにして、キャップ本体部21周壁の外表面に設けられている。そして、この第1の逃し凹部21bは、図示例によれば、前方へ向かってキャップ内側へ傾斜する傾斜面状に形成される(図2及び3参照)。
【0030】
第2の逃し凹部21cは、変形部21aの両側端部に対し、切欠部21dを間において、その両側から隣接するように、キャップ本体部21周壁の外表面に設けられている(図3(b)参照)。換言すれば、この第2の逃し凹部21cは、変形部21a及び切欠部21dを、キャップ周方向の両側から挟むようにして二つ配設される。
図示例についてより詳細に説明すれば、各第2の逃し凹部21cは、キャップ内側へ凹む略円弧状に形成される(図3(a)参照)。この第2の逃し凹部21cのキャップ軸方向の長さは、変形部21a表面の凹状部分を全て含む長さに設定される。
【0031】
また、キャップ本体部21には、必要に応じて、切欠部21dを跨るようにして変形部21aを覆う弾性被覆部23が設けられる。
この弾性被覆部23は、エラストマー樹脂等の弾性を有する合成樹脂材料の被膜であり、キャップ本体部21を成形する際に同時成形(二色成形)される。
【0032】
弾性被覆部23は、図示例では、キャップ本体部21の周方向及び軸方向において部分的に設けられて、変形部21a及び切欠部21dを覆うようにしているが、他例としては、変形部21a及び切欠部21dを覆う筒状に形成された態様や、キャップ本体部21の外面を全て覆う態様等とすることも可能である。
さらに、この弾性被覆部23の他例としては、キャップ本体部21とは別体に成形されたものを、キャップ本体部21に対し装着するようにしてもよい。
【0033】
また、キャップ本体部21の底部(図1〜2によれば左端部)には、該キャップ本体部21の内側の空間を、キャップ前側で外部へ連通する通気口21fが設けられる。この通気口21fは、キャップ周方向に間隔を置いて複数設けられている。
この通気口21fは、キャップ本体部21内の空間を経て、キャップ本体部21の後端(図2における右端)の開口部まで連通しており、キャップ20が万が一誤飲されて喉に詰まった場合に、呼吸のための通気通路を確保する。
【0034】
また、キャップ本体部21底部には、キャップ内で後方へ突出するように、接続突起21gが設けられる。この接続突起21gの突端側には、キャップ径外方向(図2によれば上方向)へ突出する係止部21g1が設けられる。
接続突起21gは、後述する密閉部材22の被接続穴22bに圧入された際に、係止部21g1を被接続穴22b内壁に食い込ませる。
【0035】
また、キャップ本体部21内周面の開口端側(図2によれば右端側)には、キャップ20が軸筒10に嵌め合わせられる際、軸筒10の環状突起11cを軸方向へ乗り越えるように、乗越え突起21iが設けられる。この突起21iは、緩やか傾斜面を有する断面山形の突起であり、キャップ周方向に間隔を置いて複数(図示例によれば四つ)設けられている。
【0036】
また、キャップ本体部21内周面には、キャップ軸方向へわたる縦リブ21jが、周方向へ略等間隔を置いて複数設けられる。これら複数の縦リブ21jは、キャップ20内周面と軸筒10外周面との当接力を、周方向に略均等に分散することで、キャップ20内周面と軸筒10外周面とを安定した接触状態に保持する。
【0037】
また、キャップ本体部21の外周面には、略半球状の突起21hが、キャップ軸方向へ間隔を置いて複数設けられる(図3参照)。これら突起21hは、キャップ本体部21及び当該キャップ付き筆記具1が平坦面上に載置された際に、転がり防止として作用する。
【0038】
密閉部材22は、キャップ本体部21内の底部側に接続された略有底筒状の部材であり、その開口端側(図2の右端側)の内周面に、前軸11前端側の環状溝11bに対し気密状に嵌り合う環状突部22aを有する。
また、密閉部材22の底部には、キャップ本体部21の接続突起21gを嵌合するための、被接続穴22bが設けられる。この被接続穴22bは、深さ方向へ行くにつれて徐々に狭くなるように形成される。
また、密閉部材22の外周部には、キャップ軸方向へ連続する凹部22cが、周方向に間隔を置いて複数設けられる。これら凹部22cは、密閉部材22がキャップ本体部21内に接続された状態で、キャップ本体部21底部の通気口21fに連通し、キャップ内外の通気路を確保する。
【0039】
前記構成の密閉部材22は、キャップ20が軸筒10に嵌め合わされた状態で、筆記部30を密閉された空間に収容し、筆記部30からインクが揮発するのを防止したり、衝撃等に起因して筆記部30周りのインクがキャップ20外へ流出するのを防いだり等する。
このキャップ20の他例としては、キャップ本体部21と密閉部材22とを一体の部材とした構成としてもよい。
【0040】
なお、図1中、符号30は、後軸12内から吐出されるインクを毛細管力によって前方へ導く筆記部、符号40は、筆記部30の後端に接続されるとともに前後方向へ進退可能に設けられた弁体、符号50は、弁体40によって開閉される弁座部材、符号60は、弁体40を閉弁方向へ付勢するコイルスプリング、符号70は、コイルスプリング70の後端を受けるよう固定されるとともに弁体40の後側部分を進退可能に内在し支持する受け部材、符号80は、後軸12内に進退自在に設けられてインクを攪拌する攪拌体である。
【0041】
次に、上記構成のキャップ付き筆記具1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
図4(a)に示すように、軸筒10にキャップ20を装着した状態では、変形部21aの外表面の最大径部分(自由端部21a1の外縁部)が、キャップ本体部21周壁の外表面と略面一であるため、例えば、搬送中に当該キャップ付き筆記具1が梱包箱等に当接したとしても、変形部21aが押されてキャップ20が外れてしまうようなことがない。
【0042】
また、軸筒10からキャップ20を外す際には、例えば、図4(b)に示すように、変形部21aから第1の逃し凹部21bにわたる範囲が、指f,fによって摘まれて押圧されると、指fの先端側が第1の逃し凹部21b内へ沈み込むとともに、同指fの腹部分は第2の逃し凹部21c内へ沈み込み、変形部21aがキャップ内側へ撓む。
したがって、仮に逃し凹部21b,21cがない場合と比較し、変形部21aの撓み量を大きく確保することができる。
【0043】
そして、撓んだ変形部21aは、自由端部21a1の内縁側の複数の凸部21eを、軸筒10の傾斜面11aに摺接させることで、軸筒10を後方へ押動する。そのため、キャップ20内周面の乗越え突起21i(図2参照)と軸筒10外周面の環状突起11cとの乗越え嵌合状態が解除されて、キャップ20が軸筒10から外れる(図4(b)参照)。
この際、変形部21aと傾斜面11aとが複数の凸部21eにより安定した摺接状態になり、さらに、キャップ20内周面と軸筒10外周面とがキャップ20内周面の複数の縦リブ21j(図2参照)により安定した摺接状態になるため、これらの相乗効果として、変形部21aを押圧変形するための力にばらつきが生じ難く、変形部21aを指fで押圧する際の操作感が良好となる。
【0044】
また、図5に示すように、例えば、主に変形部21aの凹状部分に押圧力が加えられた場合には、変形部21aが弓なりに変形する(図5(a)参照)。そして、この弓なりに変形した変形部21aが弾性的に復元する際の弾発力によって、キャップ20内周面の乗越え突起21i(図2参照)と軸筒10外周面の環状突起11cとの乗越え嵌合状態が解除されるとともに、軸筒10が後方へ弾かれ、キャップ20が前方へ抜ける(図5(b)参照)。
そのため、比較的軽い摘み操作でもって、キャップ20を外すことができる。
【0045】
よって、本実施の形態のキャップ付き筆記具1によれば、不使用時にキャップ20が外れてしまうのを防ぐことができる上、使用時にはキャップ20の両変形部21a,21aを両側から摘む押圧操作によって該キャップ20を簡単に外すことができ、しかも、前記押圧操作を良好に行える位置を、キャップ軸方向の比較的広い範囲に確保することができる。
【0046】
なお、前記説明(図4〜6参照)では、弾性被覆部23を省略した状態で作用効果を説明しているが、弾性被覆部23を有する場合は、前記同様の作用効果を有するのに加えて、変形部21aを押圧操作する指fが滑るのを防止したり、切欠部21d(図3参照)から異物が侵入するのを防止したり等、更なる作用効果を奏する。
【0047】
なお、上記実施の形態によれば、変形部21aを片持ち梁状に形成したが、他例としては、キャップ本体部21の一部又は全部を弾性を有する材料からなる変形部(図示せず)とし、この変形部がキャップ内側へ変形して軸筒10を押圧するようにすることも可能である。
【0048】
また、上記実施の形態によれば、逃し凹部21b,21cをキャップ本体部21周壁の外表面に配置したが、他例としては、変形部21aの自由端部21a1をキャップ本体部21の開口端部に略一致させるとともに、この自由端部21a1に対し、その後方側から隣接するようにして、軸筒10周壁の外表面に逃し凹部(図示せず)を設けるようにしてもよい。
【0049】
また、図示例では、所謂直液式筆記具を構成したが、他例としては、軸筒10内の中綿に染み込ませたインクを前方へ導いて筆記部から吐出する中綿式筆記具や、インク収容管内のインクをチップ先端から突出するようにしたボールペン、修正ペン等を構成することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:キャップ付き筆記具 10:軸筒
11a:傾斜面 20:キャップ
21a:変形部 21a1:自由端部
21b:第1の逃し凹部 21c:第2の逃し凹部
21d:切欠部 23:弾性被覆部
f:指

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップの周壁に、外方からの押圧操作によりキャップ内側へ変形可能な変形部を設け、キャップ内側へ変形した際の前記変形部により軸筒を押圧して、前記キャップが前記軸筒から外されるようにしたキャップ付き筆記具において、
前記変形部の外表面を、キャップ周壁の外表面と略面一に、又はキャップ周壁の外表面よりも凹ませて設け、
前記変形部に隣接する外表面に、前記変形部の外表面よりもキャップ内側へ凹んだ逃し凹部を設け、前記押圧操作のための指を前記逃し凹部によって逃すようにしたことを特徴とするキャップ付き筆記具。
【請求項2】
前記キャップの周壁に、該周壁をキャップ径方向へ貫通する略凹状の切欠部を設け、該切欠部の内側の部分を、自由端側がキャップ内側へ撓み可能な前記変形部としたことを特徴とする請求項1記載のキャップ付き筆記具。
【請求項3】
前記逃し凹部は、前記変形部の自由端部に隣接するようにして、キャップ周壁の外表面に設けられていることを特徴とする請求項2記載のキャップ付き筆記具。
【請求項4】
前記逃し凹部は、前記変形部の両側端部に対してその両側から隣接するように、キャップ周壁の外表面に設けられていることを特徴とする請求項2又は3記載のキャップ付き筆記具。
【請求項5】
前記変形部は、弓なりに弾性変形可能な縦断面凹状に形成され、キャップ内側へ変形した際に、その自由端側の部分によって前記軸筒を押圧することを特徴とする請求項2乃至4何れか1項記載のキャップ付き筆記具。
【請求項6】
前記変形部は、前記縦断面凹状の部分の中央側が他の部分よりも薄肉に形成されていることを特徴とする請求項5記載のキャップ付き筆記具。
【請求項7】
前記軸筒の前端側に先窄み状の傾斜面を形成し、前記変形部の自由端側に、前記傾斜面に摺接される複数の凸部を設けたことを特徴とする請求項2乃至6何れか1項記載のキャップ付き筆記具。
【請求項8】
前記切欠部を跨るようにして前記変形部を覆う弾性被覆部を設けたことを特徴とする請求項2乃至7何れか1項記載のキャップ付き筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−245710(P2012−245710A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119749(P2011−119749)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000108328)ゼブラ株式会社 (172)
【Fターム(参考)】