説明

キャパシタ

【課題】充放電サイクル特性をより高めることができるキャパシタを提供する。
【解決手段】本発明のキャパシタ10は、炭素材料を含む正極20と、リチウム遷移金属窒化物(遷移金属はFe,Co,Ni,Cuのうちいずれか1以上)を含む負極16と、正極20と負極16との間に介在しリチウムイオンを伝導し少なくともプロピレンカーボネート(PC)を含む電解液36と、を備えている。正極20は、炭素材料として比表面積が1000m2/g以上の活性炭を含むものとしてもよいし、炭素材料として比表面積が20m2/g以下の黒鉛を含むものとしてもよい。また、電解液36は、主成分をPCとしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャパシタとしては、正極ではアニオンの吸着反応を利用し、負極ではLiの電気化学反応を利用したいわゆるハイブリッドキャパシタが知られている。このハイブリッドキャパシタは、電気二重層キャパシタより電圧が高く、より大きなエネルギーが得られるのが特徴である。例えば、このようなキャパシタとして、正極では活性炭を含みリチウム塩の陽イオン及び陰イオンが吸着脱離し、負極ではLi4Ti512を含みリチウム塩の陽イオンがインターカレーションし、且つ放電終止電圧が0Vであり、エネルギー密度、出力密度が高く、且つ高容量の特性を示すものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、負極の活物質としてチタン酸リチウムを3重量%〜18重量%含み、正極に多孔質炭素を備えることにより、充放電サイクルにおける過電圧を抑制したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−282838号公報
【特許文献2】特開2007−294654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1、2のキャパシタでは、より高容量化を計っているもののまだ十分でなく、更なる高容量化や繰り返し充放電時の特性(充放電サイクル特性)などを向上することが望まれていた。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、充放電サイクル特性をより高めることができるキャパシタを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、正極に炭素材料を含み、負極にリチウム遷移金属窒化物を含み、且つ電解液にプロピレンカーボネートを含むものとすると、充放電サイクル特性をより高めることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明のキャパシタは、
炭素材料を含む正極と、
リチウム遷移金属窒化物(遷移金属はFe,Co,Ni,Cuのうちいずれか1以上)を含む負極と、
前記正極と負極との間に介在しリチウムイオンを伝導し少なくともプロピレンカーボネートを含む電解液と、
を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のキャパシタは、充放電サイクル特性をより高めることができる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推測される。例えば、このようなキャパシタでは、出力密度を向上させる上で、電解液の低粘度化を図ることが課題とされていた。例えば、プロピレンカーボネート(PC)のような低粘性溶媒を電解液とし、負極に黒鉛を用いたときには、Liが黒鉛内に挿入されず、負極として動作できない(電池として充放電できない)ことがあった。また、PCを電解液とし、負極に金属リチウムを用いたときには、デンドライトが形成しやすく、充放電サイクル特性が低下する問題があった。ここで、リチウム遷移金属窒化物を負極に用いたところ、PCのような低粘性溶媒中においてもLiの吸蔵放出を行うことが可能であり、デンドライトの形成も抑制されるため、より高容量化を図ることができ、繰り返し充放電時の容量低下などをより抑制することができるものと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】キャパシタ10の一例の構成を表す構成図。
【図2】実施例1の充放電曲線。
【図3】実施例3の充放電曲線。
【図4】比較例1の充放電曲線。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のキャパシタは、炭素材料を含む正極と、リチウム遷移金属窒化物(遷移金属はFe,Co,Ni,Cuのうちいずれか1以上)を含む負極と、正極と負極との間に介在し少なくともプロピレンカーボネートを含む電解液と、を備えている。本発明のキャパシタは、正極では電解液に含まれるアニオンを吸着・脱離し、負極では電解液に含まれるリチウムの電気化学反応により充放電を行う、いわゆるハイブリッドキャパシタとして構成されていてもよい。あるいは、本発明のキャパシタは、正極では電解液に含まれるアニオンをインターカレーションすることにより蓄電するものとしてもよい。
【0011】
本発明のキャパシタにおいて、正極は、例えば炭素材料と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。炭素材料としては、特に限定されるものではないが、アニオンをトラップすることができるものが好ましく、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類などが挙げられる。このうち、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛類や高比表面積を示す活性炭類などが好ましい。炭素材料としての黒鉛は、比表面積が20m2/g以下であることが好ましく、10m2/g以下であることがより好ましい。比表面積が20m2/g以下では、充放電サイクルを行ったときの容量維持率をより高めることができる。この黒鉛の比表面積は、作製の容易性から1m2/g以上であることが好ましい。なお、正極に含まれる黒鉛は、電解液に含まれるアニオンをインターカレーションして蓄電するものとしてもよい。また、炭素材料としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましい。なお、正極に含まれる活性炭は、電解液に含まれるアニオンを吸着・脱離して蓄電するものとしてもよい。導電材は、正極の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、炭素材料粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンマー(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。炭素材料、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで炭素材料をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。
【0012】
本発明のキャパシタにおいて、負極は、例えばリチウム遷移金属窒化物と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。このリチウム遷移金属窒化物を負極に含んでいると、より低粘度の電解液(例えばプロピレンカーボネートなど)でもLiを吸蔵・放出することができる。リチウム遷移金属窒化物に含まれる遷移金属は、Fe,Co,Ni,Cuのうちいずれか1以上とし、このうちCoがより好ましい。このリチウム遷移金属窒化物は、Li3-xxN(MはFe,Co,Ni,Cuのうちいずれか1以上の遷移金属、0<x<1)で表されるものとしてもよい。このxの範囲は、0.2≦x≦0.8が好ましく、0.3≦x≦0.6がより好ましい。0.2≦x≦0.8の範囲では、放電容量をより高めることができる。また、負極に用いられる導電材、結着材、溶剤などは、それぞれ正極で例示したものを用いることができる。負極の集電体には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状は、正極と同様のものを用いることができる。
【0013】
本発明のキャパシタにおいて、電解液は、プロピレンカーボネートを含んでいる。こうすれば、より低粘度とすることが可能であり、より低温での蓄電特性が向上したり、Liの伝導をより容易とすることができる。この電解液は、プロピレンカーボネートを主成分とすることが好ましい。このとき、主成分以外の成分としては、例えば、非水系溶媒としてもよい。ここで、電解液に含まれる非水系溶媒のうち、プロピレンカーボネートを70重量%以上を含むものとしてもよいし、80重量%以上を含むものとするのが好ましく、90%以上を含むものとするのがより好ましく、95重量%以上を含むものとするのが更に好ましい。また、電解液は、プロピレンカーボネートのみを非水系溶媒とするものとしてもよい。電解液に含まれる他の非水系溶媒としては、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、ヒドロフラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネート(EC)やビニレンカーボネート(VC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのヒドロフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。また、この電解液には、リン系、ハロゲン系などの難燃剤を添加してもよい。
【0014】
本発明のキャパシタにおいて、電解液にはLiを含む支持塩が含まれている。この支持塩は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。支持塩の濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。
【0015】
本発明のキャパシタは、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、キャパシタの使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複合して用いてもよい。
【0016】
本発明のキャパシタの形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。
【0017】
以上詳述した本実施形態のキャパシタによれば、正極に炭素材料を備え、負極にリチウム遷移金属窒化物(遷移金属はFe,Co,Ni,Cuのうちいずれか1以上)を備え、電解液の主成分としてプロピレンカーボネートを含んでいるため、より電解液を低粘度とすることが可能であり、充放電サイクル特性をより高めることができる。
【0018】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【実施例】
【0019】
以下には、本発明のキャパシタを具体的に作製した例を実施例として説明する。
【0020】
[窒化物負極の作製]
Li3Nと金属Coを所定比で混合し、混合粉を坩堝にいれ、窒素気流中で反応させた。反応は、700℃で5時間行った。その後、得られた黒灰色の焼結体を粉砕し、リチウムコバルト窒化物粒子を得た。ここでは、Li2.6Co0.4N、Li2.7Co0.3N、Li2.4Co0.6Nとなる所定比とした。得られたリチウムコバルト窒化物粒子と、導電材としてのアセチレンブラックと、結着材としてのPVDF粉末を85:5:10の割合で混合し、乳鉢で混練し、成形装置を用いてシート化したあと、パンチで打ち抜き、直径12mmの円板シート電極を作成した。これらの一連の工程は、グローブボックス内で行った。また、得られた窒化物粒子を、X線回折装置を用いて評価した結果、Li3Nと同様のパターンが得られ、Coが固溶していると共に、不純物が混在していないことがわかった。
【0021】
[活性炭電極の作製]
活性炭粉体(大阪ガスケミカル社製M30)を700℃水素気流中で熱処理したあと、この活性炭粒子と、アセチレンブラックと、PVDF粉末とを90:5:5の重量割合で混合し、乳鉢で混練し、成形装置を用いてシート化したあと、パンチで打ち抜き、直径12mmの円板シート電極とした。
【0022】
[黒鉛1電極の作製]
黒鉛粉体(Timcal社製KS6)を700℃、水素気流中で熱処理したあと、このグラファイト粉体G1と、導電材としてのアセチレンブラックと、結着材としてのPVDF粉末を85:5:10の重量割合で混合し、乳鉢で混練し、成形装置を用いてシート化したあと、パンチで打ち抜き、直径12mmの円板シート電極とした。
【0023】
[黒鉛2電極の作製]
黒鉛粉体(大阪ガスケミカル社製MCMB)を700℃水素気流中で熱処理したあと、黒鉛粉体、アセチレンブラック、PVDF粉末を85:5:10の割合で混合し、乳鉢で混練し、成形装置を用いてシート化したあと、パンチで打ち抜き、直径12mmの円板シート電極とした。
【0024】
[Li電極の作成]
Li金属板(本城金属製、厚さ400μm)を、パンチで打ち抜き、直径12mmの円板シート電極とした。
【0025】
(比表面積測定)
本検討に用いた活性炭、黒鉛1の比表面積をBET法により評価した。BET測定は、日本ベル製BELSORPにより窒素吸着の1点BET法で測定した。その測定結果は後述する表1に示した。なお、黒鉛2は、5.3m2/gであった。黒鉛1粉体の比表面積は、活性炭に比べ、はるかに小さいことがわかった。
【0026】
[実施例1]
キャパシタは、次のように作製した。図1は、2電極セルとして構成されたキャパシタ10の構成を表す説明図である。まず、集電部材32が接続された導電体であるアルミニウム製の円筒基体12の上面中央に設けられたキャビティ14に、負極16と、セパレータ18と、正極20とを各極が非接触状態となるようにこの順に積層する。次に、キャビティ14の内周に密接する絶縁リング22を配置し、更にこの絶縁リング22の内周に押圧バネ34が設けられた円柱状の導電部材である押圧部材33を挿入した。次に、電解液36をキャビティ14に注入し、円筒基体12の上面にパッキン28及び絶縁リング29を配置した。この円筒基体12の上方に、集電部材37が接続された導電体である蓋26を配置した。そして、円筒基体12と蓋26とを上下から加圧した状態で固定し、キャパシタ10とした。このキャパシタ10では、集電部材32と円筒基体12と負極16とが一体化されて負極側となり、集電部材37と蓋26と押圧部材33と正極20とが一体化されて正極側となる。なお、キャパシタ10は、負極16と正極20とが絶縁リング22及び絶縁リング29により絶縁されている。実施例1では、集電体としてのアルミニウムシート上に正極活物質としての活性炭を形成したものを正極20とし、負極活物質としてLi2.6Co0.4Nを形成したものを負極16とし、ポリオレフィンメンブラン(旭化成ケミカルズ製)をセパレータ18とした。また、1.0mol/Lの濃度で支持塩としてのLiPF6を非水系溶媒としてのプロピレンカーボネート(PC)に溶解させたものを電解液36とした。
【0027】
[実施例2〜4]
正極に黒鉛1をアルミニウムシート上に形成した電極を用い、負極にLi2.7Co0.3Nをアルミニウムシート上に形成した電極を用いた以外は実施例1と同様の構成としたキャパシタを実施例2とした。また、正極に黒鉛1をアルミニウムシート上に形成した電極を用い、負極にLi2.6Co0.4Nをアルミニウムシート上に形成した電極を用いた以外は実施例1と同様の構成としたキャパシタを実施例3とした。また、正極に黒鉛1をアルミニウムシート上に形成した電極を用い、負極にLi2.4Co0.6Nをアルミニウムシート上に形成した電極を用いた以外は実施例1と同様の構成としたキャパシタを実施例4とした。
【0028】
[比較例1、2]
正極に活性炭をアルミニウムシート上に形成した電極を用い、負極にLi金属を用いた以外は実施例1と同様の構成としたキャパシタを比較例1とした。また、正極に活性炭をアルミニウムシート上に形成した電極を用い、負極に黒鉛2を用いた以外は実施例1と同様の構成としたキャパシタを比較例2とした。
【0029】
[充放電試験]
実施例1〜4及び比較例1,2のキャパシタの充放電試験を行った。作製したキャパシタを充放電装置(北斗電工製HJ1001)に接続し、参照極と正極、及び参照極と負極との電位差を同時に測定し、各極の挙動をモニターした。充放電試験では、4.5Vまで1mAにて定電流充電を行ったのち、1mAにて2.5Vまで放電を行った。この充放電を1サイクルとし、このサイクルを100サイクル行う充放電サイクル試験を行った。この3サイクル目の放電容量を初期放電容量V0とし100サイクル目の放電容量を充放電サイクル試験後の放電容量Vcとし、次式(1)を用いて、容量維持率Vk(%)を算出した。容量維持率Vk(%)=Vc/V0×100…式(1)
【0030】
[測定結果]
実施例1〜4及び比較例1の各キャパシタの測定結果を表1に示す。表1には、正極の材料及びその比表面積、負極との材料、電解液、3サイクル目の放電容量及び100サイクル後の容量維持率を示した。また、実施例1,3及び比較例1の充放電曲線を図2〜4にそれぞれ示した。PCを電解液に用いた充放電特性の検討では、比較例2では、充電が行えなかったのに対し、実施例1〜4のキャパシタでは、充放電が可能であった。このことから、Li3-xCoxN電極は、PC溶媒の電解液でも充放電が可能であることがわかった。正極に活性炭を用いたセルと正極に黒鉛を用いたセルの特性の比較では、いずれのセルにおいても、充放電は可能であった。このことから、黒鉛であっても、正極であれば蓄電電極として機能することがわかった。また、正極に黒鉛を用いたセルの放電量は、正極に活性炭を用いたセルに比べ、2倍以上となり、より多くの蓄電が可能であることがわかった。また、充放電サイクル試験の結果では、負極にLi3-xCoxN電極を用いたキャパシタは、負極にLi金属を用いたキャパシタよりいずれも容量維持率は高く、Li3-xCoxN電極の採用により、サイクル特性を向上できることがわかった。なお、Li3-xCoxN(0.3≦x≦0.6)の範囲では放電容量や容量維持率に大きな差がなくいずれも好適な値を示した。
【0031】
【表1】

【符号の説明】
【0032】
10 キャパシタ、12 円筒基体、14 キャビティ、16 負極、18 セパレータ、20 正極、22 絶縁リング、26 蓋、28 パッキン、29 絶縁リング、32,37 集電部材、33 押圧部材、34 押圧バネ、36 電解液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料を含む正極と、
リチウム遷移金属窒化物(遷移金属はFe,Co,Ni,Cuのうちいずれか1以上)を含む負極と、
前記正極と負極との間に介在しリチウムイオンを伝導し少なくともプロピレンカーボネートを含む電解液と、
を備えたキャパシタ。
【請求項2】
前記正極は、前記炭素材料として比表面積が1000m2/g以上の活性炭を含む、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項3】
前記正極は、前記炭素材料として比表面積が20m2/g以下の黒鉛を含む、請求項1に記載のキャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−206127(P2010−206127A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53018(P2009−53018)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】