説明

キャンドモータ型電動式ウォーターポンプ

【課題】ロータとステータとの間に缶構造物が挿入されたキャンドモータ型電動式ウォーターポンプを提供する。
【解決手段】本発明によるキャンドモータ型電動式ウォーターポンプは、水力部カバーとモータハウジングとの間に配置され、水力部と駆動モータを分離する渦巻ボディー部と、ロータとステータとの間に配置され、ロータとステータを分離する缶部で構成され、渦巻ボディー部と缶部が一体型に形成される缶一体型渦巻ボディーと、渦巻ボディー部の内側に設置され、ロータ及びモータ軸を回転可能に支持する回転子支持部と、を含み、缶一体型渦巻ボディーと回転子支持部の締結構造にインペラが結合された状態でのロータの回転バランスの測定を可能にすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャンドモータ型電動式ウォーターポンプに係り、より詳しくは、ロータとステータとの間に缶構造物が挿入されたキャンドモータ型電動式ウォーターポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ウォーターポンプは車両で冷却水を循環させる役割をするもので、一般の内燃機関車両では、エンジン動力をプーリー及びベルトを介して伝達して駆動するエンジン駆動式ウォーターポンプと、電気を用いて駆動する電動式ウォーターポンプに分類される。
電動式ウォーターポンプは、バッテリーなどから提供される電気を用いて電動モータを駆動し、これによってインペラが回転して冷却水を吸入及び吐出する。
また、電動式ウォーターポンプは、エンジンの駆動力が不要であるため、燃費改善効果が約2〜3%向上することが知られており、冷却水の温度を精密に制御できるため、既に多くの自動車製造会社では量産車両に対して広く適用している。
【0003】
電気自動車、例えばハイブリッド車両の場合、EVモードなどのようにエンジン駆動が停止される状況が存在し、燃料電池車両や純粋な電気車両の場合、ウォーターポンプを駆動させるエンジンが搭載されていないため、これら電気自動車では冷却水を循環させるためのウォーターポンプとして電動式ウォーターポンプを使用しなければならない。
一方、車両用電動式ウォーターポンプとして遠心ポンプの一種である渦巻ポンプ(volute pump)が広く使われているが、これは電動モータにより回転するインペラ(羽根車)を備え、電動モータの駆動によりインペラが回転すると、渦巻ケーシングの中央の吸入口から吸入された冷却水が渦巻ケーシング内に設けられた螺旋状の室を通過し、この時に発生する遠心力により吐出口に吐出される方式である。
【0004】
図1は、従来のキャンドモータ型の電動式ウォーターポンプを示す概略図である。図1に示すように、キャンドモータ型の電動式ウォーターポンプは、駆動源の電動モータ1と冷却水の吸入力/吐出力を生成する水力部2を含み、水力部2は内部に螺旋状の流動空間、すなわち螺旋状の室が形成された水力部カバー2aと、電動モータ1により回転するインペラ5を含む。
電動モータ1はロータ3とステータ4との間の電磁気的作用により回転力を発生させ、この回転力はロータ3に連結されるモータ軸3aを介してインペラ5に伝達されてインペラ5を回転させる。
【0005】
モータ軸3aはロータ3の前後に配置された軸受け7によりモータハウジング6に回転可能に支持される。
キャンドモータ型の電動式ポンプは、ロータ3とステータ4との間に缶構造物8を挿入し、水力部2をロータ3まで延長してロータ3が水に浸ることにより、投入される水がロータ3から発生する摩擦熱を適切に冷却させる構造を有する。
この時、缶構造物8はロータ3とステータ4を分離する隔壁の役割をし、缶シーリングラバー(図示せず)によりロータ3とステータ4との間を密封する。
【0006】
しかしながら、キャンドモータ型構造のウォーターポンプは、その特性上、水力部2がロータ3まで連結されることにより、次のような問題点がある。
第1に、モータ軸3aを支持する前部軸受け7aを固定しにくく、前部軸受け7aの構造体を導入する場合、部品数が多くなる。
第2に、ロータ3とステータ4との間に発生する電磁気力によりインペラ5が回転し、水を吸入する時、水は水の吸入方向に対して反対軸方向に推力を発生させ、これによってインペラ5の位置が変わるため、効率を低下させる問題点がある。
第3に、モータハウジング6と渦巻室との間の気密を保つためのOリングと、水力部カバー2aと渦巻室との間の気密を保つためのOリングの位置を定めにくく、生産工程が困難である。
第4に、インペラ5とロータ3のモータ軸3aが組み立てられた状態でのバランス作業が不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−042483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、缶一体型渦巻ボディーに回転子支持部を挿入装着することにより、回転子支持部の一側にモータ軸支持用前部軸受けを固定できるキャンドモータ型電動式ウォーターポンプを提供することにその目的がある。
また、本発明は、回転子支持部によりモータ軸を堅固に支持してインペラの固定位置の変化を低下させることにより効率向上が可能なキャンドモータ型電動式ウォーターポンプを提供することにその目的がある。
さらに、水力部カバーと渦巻ボディー部との間にOリングを1つだけ装着してもよいため、従来技術に比してOリングの位置を定めることが容易となるキャンドモータ型電動式ウォーターポンプを提供することにその目的がある。
最後に、缶一体型渦巻ボディーと回転子支持部アセンブリーにインペラが組み立てられた状態でのロータアセンブリーの回転バランスの測定が可能となるキャンドモータ型電動式ウォーターポンプを提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたキャンドモータ型電動式ウォーターポンプであって、水力部カバー(2a)とモータハウジング(6)との間に配置され、水力部(2)と駆動モータ(1)を分離する渦巻ボディー部(18)と、ロータ(3)とステータ(4)との間に配置され、ロータ(3)とステータ(4)を分離する缶部(19)で構成され、前記渦巻ボディー部(18)と缶部(19)が一体形成される缶一体型渦巻ボディー(20)と、前記渦巻ボディー部(18)の内側に設置され、ロータ(3)及びモータ軸(3a)を回転可能に支持する回転子支持部(23)と、を含むことを特徴とする。
【0010】
前記渦巻ボディー部(18)は、水力部カバー(2a)の内側面に接触する接触部に設置されたOリング(9)により水力部カバー(2a)と気密を保ち、前記渦巻ボディー部(18)の周縁部がフランジ状に形成されて水力部カバーとモータハウジング(6)との間に締結固定されることを特徴とする。
【0011】
前記回転子支持部(23)は、渦巻ボディー部(18)の一側面に挿入締結される締結部(21)と、前記締結部(21)から軸方向に形成され、内部に軸受けを装着固定する軸受けハウジング(22)と、前記締結部(21)と軸受けハウジング(22)との間に形成され、水力部(2)に流入された流体をロータ(3)に誘導する流体移動通路(24)と、を含むことを特徴とする。
【0012】
前記回転子支持部(23)は、缶一体型渦巻ボディー(20)に形成された溝によりクリップ締結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるキャンドモータ型電動式ウォーターポンプは、以下の効果を有する。
第1に、缶一体型渦巻ボディー及び回転子支持部を用いたキャンドモータ型の電動式ウォーターポンプを適用する場合、水力部とモータハウジングを完全に分離することができる。
第2に、缶一体型渦巻ボディーに回転子支持部をさらに構成することにより、ロータ及びステータとの間の電磁気的作用から発生した回転力によりロータ及びモータ軸アセンブリーが回転する時、揺らぐことなく堅固に支持することができる。
第3に、電動モータから伝達された回転力によりインペラが回転する時、インペラにより流体の流れ反対方向に推力が発生する場合、回転子支持部によりインペラの偏心回転及び浮上を防止することができる。
第4に、ロータを組み立てる時、缶一体型渦巻ボディーの缶部の内側に、後部軸受け、ロータ及びモータ軸、そして渦巻ボディー部の内部に前部軸受けが内蔵された回転子支持部の順に一方向に連続して組み立てることができるため、組立性を向上させる。
第5に、缶一体型渦巻ボディーにロータアセンブリー及びインペラが結合された状態でのバランス作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来技術によるキャンドモータ型のウォーターポンプを示す概略図である。
【図2】本発明の一実施例によるキャンドモータ型のウォーターポンプを示す断面図である。
【図3】図2に示した回転子支持部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
図2は本発明の一実施例によるキャンドモータ型電動式ウォーターポンプを示す断面図であり、図3は図2に示した回転子支持部の斜視図である。
本発明は、キャンドモータ型電動式ウォーターポンプの一般的な構造に、渦巻ボディー部18及び缶部19が一体に射出された構造と、缶一体型渦巻ボディー20に回転子支持部23を挿入する構造を適用することにより、ロータアセンブリーとインペラ5が組み立てられた状態でのロータアセンブリーの回転バランスの測定が可能となるキャンドモータ型電動式ウォーターポンプに関する。
【0016】
本発明によるキャンドモータ型電動式ウォーターポンプは、インペラ5の回転により水を吸入する水力部2と、インペラ5を駆動させるための駆動モータ1と、で構成される。
水力部2は一側に吸入口2bを有する水力部カバー2aと、水力部カバー2aの内部に設置されたインペラ5を含む。
吸入口2bは、例えば燃料電池自動車両において、冷却水をウォーターポンプの内部に吸入するための吸入通路であって、水力部カバー2aから軸方向に突出形成される。
水力部カバー2aは、インペラ5の上部をカバーする役割をし、インペラ5の回転により吸入口2bを介して冷却水(水)を水力部2の内部に吸入することができる。
【0017】
駆動モータ1は、水力部カバー2aにボルト締結されるモータハウジング6と、モータハウジング6の内部に電磁気力により回転力を発生させるロータ3及びステータ4と、水力部2を完全に防水するための缶一体型渦巻ボディー20と、を含む。
この時、缶一体型渦巻ボディー20は、水力部カバー2aとモータハウジング6との間に半径方向に位置する渦巻ボディー部18と、渦巻ボディー部18から軸方向に形成される缶部19と、で構成され、渦巻ボディー部18は水力部カバー2aとモータハウジング6との間を分離する隔壁の役割をし、缶部19はロータ3とステータ4との間を分離する隔壁の役割をする。
より詳しくは、渦巻ボディー部18は、水力部カバー2aとモータハウジングとの間の境界部分に位置し、水力部2に流入された水がモータハウジング6のステータ4に流れることを防止する。
【0018】
例えば、渦巻ボディー部18の周縁部はフランジ状に形成され、水力部カバー2aとモータハウジング6との間に挿入され、ボルトにより貫通及び締結され、フランジ部の内側の側面にOリング9が設置され、Oリング9により水力部カバー2aと渦巻ボディー部の側面との間の気密を保つことにより、水力部2に流入された水がモータハウジング6のステータ4側に流れることを防止できる。
従来、Oリング9が水力部カバー2aと渦巻ボディー部との間の1ケ所と、モータハウジング6と渦巻ボディー部との間の1ケ所に装着されるため、Oリング9の位置を定めにくく、部品数及び組立工数の増加により原価を上昇させる問題があったが、本発明ではモータハウジング6と渦巻ボディー部18との間にOリング9を装着する必要がないため、部品数及び組立工数が減少して原価が低減できる効果がある。
【0019】
缶部19は、ロータ3とステータ4との間に位置してロータ3を囲むように円筒状に形成され、缶部19によりロータ3が密封される。
また、缶部19は、水力部2と連通し、水力部2とロータ3との間に流体移動通路24を提供して水力部2に流入された水がロータ3に供給される。
この構造からなる渦巻ボディー部18と缶部19は一体射出成形される。
缶部19の内部にはロータ3が装着され、モータ軸3aはロータ3を貫通してロータ3と一体に回転可能に結合される。
本発明による一実施例では、ロータ3とモータ軸3aを回転可能に支持するための回転子支持部23をさらに提供する。
【0020】
回転子支持部23は、渦巻ボディー部18の内側に挿入締結される締結部21と、締結部21から軸方向に直径が小さく形成されて内部にモータ軸3a支持用前部軸受け7aを固定できる軸受けハウジング22と、で構成される。
この時、締結部21と軸受けハウジング22との間には流体移動通路24が形成され、流体移動通路24を介して水力部2とロータ3を連通させることにより、水力部2に流入された水をロータ3に供給してロータ3から発生した熱を冷却させることができる。
本発明の一実施例による締結部21は、その外側面にねじ山を有してもよく、ねじ山を用いて渦巻ボディー部18の内側にねじ締結されることにより渦巻ボディー部18との間に堅固な締結力を保つことができる。
【0021】
本発明の他の実施例による締結部21の締結構造は、締結部21の外側面に形成された締結突起と渦巻ボディー部18に形成された溝により締結部21を渦巻ボディー部にクリップ締結することができる。
軸受けハウジング22は、内部に前部軸受け7aを収容するための収容空間を設けて前部軸受け7aを締まりばめ固定することにより、ロータ3に一体に結合されたモータ軸3aを支持するための前部軸受け7aの固定が容易になる。
また、モータ軸3aの後端部を支持するための後部軸受け7bは缶部19の底面に挿入固定される。
【0022】
上記締結構造により、缶一体型渦巻ボディー20と回転子支持部23が組み立てられた状態、すなわちロータ3及びモータ軸3aを収容する缶一体型渦巻ボディー20と、モータ軸3a及びロータ3を支持するための回転子支持部23と、インペラ5が組み立てられた状態でのロータ3の回転バランスを測定することができる。
缶一体型渦巻ボディー20は、缶部19の外側面に別の突起構造を考案して缶部19とステータ4との間を固定することができる。
したがって、本発明によれば、缶一体型渦巻ボディー20及び回転子支持部23を用いてキャンドモータ型の電動式ウォーターポンプを適用する場合、水力部2とモータハウジング6を完全に分離することができる。
【0023】
また、缶一体型渦巻ボディー20に回転子支持部23をさらに構成することにより、ロータ3及びステータ4との間の電磁気的作用から発生した回転力によりロータ3及びモータ軸3aのアセンブリーが回転する時、揺らぐことなく堅固に支持できる。
さらに、電動モータから伝達された回転力によりインペラ5が回転する時、インペラ5により流体の流れ反対方向に推力が発生する場合、回転子支持部23がインペラ5の偏心回転及び浮上を防止できる。
その他、ロータを組み立てる時、缶一体型渦巻ボディー20の缶部19の内側に、後部軸受け、ロータ3及びモータ軸3a、そして渦巻ボディー部18の内部に前部軸受け7aが内蔵された回転子支持部23の順に一方向に連続して組み立てることができるため、組立能率が向上する。
最後に、缶一体型渦巻ボディー20にロータアセンブリー及びインペラ5が結合された状態でのバランス作業が可能となる。
【符号の説明】
【0024】
1 駆動モータ
2 水力部
2a 水力部カバー
2b 吸入口
3 ロータ
3a モータ軸
4 ステータ
5 インペラ
6 モータハウジング
7a 前部軸受け
7b 後部軸受け
9 Oリング
18 渦巻ボディー部
19 缶部
20 缶一体型渦巻ボディー
21 締結部
22 軸受けハウジング
23 回転子支持部
24 流体移動通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャンドモータ型電動式ウォーターポンプであって、
水力部カバー(2a)とモータハウジング(6)との間に配置され、水力部(2)と駆動モータ(1)を分離する渦巻ボディー部(18)と、ロータ(3)とステータ(4)との間に配置され、ロータ(3)とステータ(4)を分離する缶部(19)で構成され、前記渦巻ボディー部(18)と缶部(19)が一体形成される缶一体型渦巻ボディー(20)と、
前記渦巻ボディー部(18)の内側に設置され、ロータ(3)及びモータ軸(3a)を回転可能に支持する回転子支持部(23)と、
を含むことを特徴とするキャンドモータ型電動式ウォーターポンプ。
【請求項2】
前記渦巻ボディー部(18)は、水力部カバー(2a)の内側面に接触する接触部に設置されたOリング(9)により水力部カバー(2a)と気密を保ち、前記渦巻ボディー部(18)の周縁部がフランジ状に形成されて水力部カバーとモータハウジング(6)との間に締結固定されることを特徴とする請求項1に記載のキャンドモータ型電動式ウォーターポンプ。
【請求項3】
前記回転子支持部(23)は、渦巻ボディー部(18)の一側面に挿入締結される締結部(21)と、前記締結部(21)から軸方向に形成され、内部に軸受けを装着固定する軸受けハウジング(22)と、前記締結部(21)と軸受けハウジング(22)との間に形成され、水力部(2)に流入された流体をロータ(3)に誘導する流体移動通路(24)と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のキャンドモータ型電動式ウォーターポンプ。
【請求項4】
前記回転子支持部(23)は、缶一体型渦巻ボディー(20)に形成された溝によりクリップ締結されることを特徴とする請求項1に記載のキャンドモータ型電動式ウォーターポンプ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−92143(P2013−92143A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−138621(P2012−138621)
【出願日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【出願人】(510145439)明和工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】