説明

グラウンドアンカー

【課題】 油を使用することなく、皿ばねの端部に摩耗が生じるのを防止し、皿ばねの錆による機能の低下を防止する。
【解決手段】 一端部が地盤40に定着され、他端部が地表43から露出するテンドン2と、テンドン2の他端部と地表43との間に設けられ、テンドン2を緊張させた状態に保持する定着具7と、定着具7に設けられてテンドン2の緊張力を地表43側に伝達させるとともに、地盤40の変動によるテンドン2の緊張力の変動を吸収する皿ばね19とを備える。定着具7と皿ばね19との間には、皿ばね19の定着具7との接触部を被覆するカバー27、34が設けられ、このカバー27、34により皿ばね19の定着具7との接触部が摩耗するのが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウンドアンカーに関し、特に、地盤の変動によるテンドンの緊張力の変動を吸収する弾性部材を備えたグラウンドアンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のグラウンドアンカーの一例として、図10に示すように、一端部が地盤40に定着され、他端部が地表から露出するテンドン52と、テンドン52の他端部と地表との間に設けられ、テンドン52を緊張させた状態に保持する定着具57と、定着具57に装着されてテンドン52の緊張力を地表に伝達させるとともに、地盤40の変動によるテンドン52の緊張力の変動を吸収する弾性部材68とを備えたグラウンドアンカー50が提案されている。
【0003】
この場合、定着具57は、テンドン52側に固着される第1定着板58と、地表側に固着される第2定着板65とを有し、この第1定着板58と第2定着板65との間に弾性部材68である一つの皿ばね69が介装されている。
【0004】
また、グラウンドアンカーの他の例として、図11に示すように、定着具57の第1定着板58と第2定着板65との間に2つの皿ばね69、69を直列に介装させて弾性部材68を構成したグラウンドアンカー50が提案されている。
【0005】
上記のような構成のグラウンドアンカー50にあっては、テンドン52の緊張力を第1定着板58、皿ばね、及び第2定着板65を介して地表側に伝達させることにより、切土法面等の地すべり防止対策等を図ることができる。また、凍土、融解等によって地盤が変動した場合であっても、その変動に追従して皿ばね69が伸縮変形することにより、地盤の変動に影響されることなくテンドン52の緊張力を地盤側に確実に伝達させることができ、長期的に切土法面等の地すべり防止対策等を図ることができるものである(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2003−184080
【特許文献2】特開2003−184081
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような構成のグラウンドアンカー50にあっては、皿ばね69と第1定着板58との間、皿ばね69と第2定着板65との間、及び隣接する皿ばね69と皿ばね69との間に何も設けられていないため、皿ばね69が伸縮変形した場合に、皿ばね69が水平方向、円周方向に変位することにより、皿ばね59の端部が第1定着板58、第2定着板65、又は隣接する皿ばね69の端部と摺動し、その部分に摩耗が生じてしまう。このような摩耗が皿ばね69の端部に生じると、皿ばね69の表面に塗布されている防錆用の塗装が剥がれてしまい、錆の発生原因となる。グラウンドアンカー50は、テンドン52に大きな緊張力を与えて使用することが多く、また屋外で使用することが多いため、錆に対する環境条件が極めて厳しく、長期的に見た場合、端部の塗装の損傷により生じた錆が次第に皿ばね69の全体に拡大し、皿ばね69の強度に影響を及ぼしてしまう。また、皿ばね69は、高品質のばね鋼で形成されているため、錆が生じることにより、皿ばね69としての機能が大幅に低下してしまう。
【0007】
一方、皿ばね69に錆が生じるのを防止するため、図12に示すように、地表に敷設した受圧板55の凹部56内にテンドン52の他端部、第1定着板58、皿ばね69、及び第2定着板65を収納し、凹部56内に油を充填して開口部を蓋60で閉塞することにより、皿ばね69に錆が生じるのを防止するように構成したグラウンドアンカー50が提案されている。
【0008】
しかし、上記のような構成のグラウンドアンカー50にあっては、皿ばね69を収納する凹部56の体積が大きいため、大量の油が必要となり、コストが高くついてしまう。また、第1定着板58と第2定着板65とによって閉じられた部分に皿ばね69が位置しているため、その部分への油の充填が難しく、皿ばね69の端部に十分な量の油を供給することができない。このため、油を充填する場合にも、皿ばね69の表面に塗料を塗布して防錆対策を施す必要があり、却ってコストが高くついてしまう。
【0009】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、油を使用することになく、また皿ばねの表面に塗装を施すことなく、皿ばねの端部に摩耗が生じるのを確実に防止でき、これにより、コストを高くすることなく、長期的に安定した性能が得られるグランドアンカーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するために、以下のような手段を採用している。
すなわち、請求項1に係る発明は、一端部が地盤に定着され、他端部が地表から露出するテンドンと、該テンドンの他端部と前記地表との間に設けられ、該テンドンを緊張させた状態に保持する定着具と、該定着具に設けられて前記テンドンの緊張力を地表側に伝達させるとともに、地盤の変動によるテンドンの緊張力の変動を吸収する弾性部材とを備えたグラウンドアンカーであって、前記定着具と前記弾性部材との間に、前記弾性部材の前記定着具との接触部を被覆するカバーを設けたことを特徴とする。
本発明によるグラウンドアンカーによれば、弾性部材の定着具との接触部はカバーで被覆されることになるので、地盤の変動により弾性部材が弾性変形しても、弾性部材が定着具と摺動するようなことはなく、弾性部材に摩耗が生じるようなことはない。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のグラウンドアンカーであって、前記定着具は、前記テンドンの他端部に固着される第1定着板と、地表に固着される第2定着板とを有し、前記第1定着板と前記第2定着板との間に、前記弾性部材が前記テンドンの軸線方向に弾性変形可能に介装されていることを特徴とする。
本発明によるグラウンドアンカーによれば、テンドンの緊張力は、第1定着板、弾性部材、及び第2定着板を介して地盤側に伝達される。また、地盤変動が生じた場合には、弾性部材が第1定着板と第2定着板との間でテンドンの軸線方向に伸縮変形することにより、地盤変動によるテンドンの緊張力の変動が吸収されることになる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のグラウンドアンカーであって、前記弾性部材は、前記第1定着板と前記第2定着板との間に介装される一つの皿ばねからなり、該皿ばねと第1定着板との間及び該皿ばねと第2定着板との間に、該皿ばねの第1定着板との接触部及び該皿ばねの第2定着板との接触部を被覆するカバーがそれぞれ設けられていることを特徴とする。
本発明によるグラウンドアンカーによれば、皿ばねの第1定着板との接触部、及び皿ばねの第2定着板との接触部はそれぞれカバーで被覆されることになるので、第1定着板と第2定着板との間で皿ばねが伸縮変形しても、皿ばねの第1定着板との接触部及び第2定着板との接触部が摩耗するようなことはない。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項2に記載のグラウンドアンカーであって、前記弾性部材は、前記第1定着板と前記第2定着板との間に直列に介装される複数の皿ばねからなり、第1定着板側の皿ばねと第1定着板との間、隣接する皿ばね間、及び第2定着板側の皿ばねと第2定着板との間に、第1定着板側の皿ばねの第1定着板との接触部、隣接する皿ばねの相手方との接触部、及び第2定着板側の皿ばねの第2定着板との接触部を被覆するカバーがそれぞれ設けられていることを特徴とする。
本発明によるグラウンドアンカーによれば、第1定着板側の皿ばねの第1定着板との接触部、隣接する皿ばねの相手方との接触部、及び第2定着板側の皿ばねの第2定着板との接触部はそれぞれカバーで被覆されることになるので、第1定着板と第2定着板との間で皿ばねが伸縮変形しても、第1定着板側の皿ばねの第1定着板との接触部、隣接する皿ばねの相手方皿ばねとの接触部、第2定着板側の皿ばねの第2定着板との接触部が摩耗するようなことはない。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項3又は4に記載のグラウンドアンカーであって、前記カバーは、前記皿ばねの荷重―変位曲線に対して与える影響が5%未満となる断面形状に形成されていることを特徴とする。
本発明によるグラウンドアンカーによれば、第1定着板側の皿ばねの第1定着板との接触部、隣接する皿ばねの相手方皿ばねとの接触部、及び第2定着板側の皿ばねの第2定着板との接触部をカバーで被覆しても、皿ばねの荷重―変位曲線にほとんど影響を与えることがないので、皿ばねの本来の特性がカバーによって阻害されるようなことはない。
【発明の効果】
【0015】
以上、説明したように、本発明のグランドアンカーによれば、弾性部材の定着具との接触部、すなわち皿ばねの第1定着板との接触部及び第2定着板との接触部はカバーで被覆され、また隣接する皿ばねの相手方皿ばねとの接触部もカバーで被覆されることになるので、地盤の変動によって弾性部材(皿ばね)が弾性変形して径方向、円周方向に変位しても、弾性部材(皿ばね)の定着具(第1定着板及び第2定着板)との接触部、及び隣接する皿ばねの相手方皿ばねとの接触部が摩耗するようなことはない。従って、弾性部材(皿ばね)、定着具(第1定着板及び第2定着板)等を油に浸漬させる必要はなく、また弾性部材(皿ばね)の表面に塗装を施す必要もないので、コストを高くすることなく、長期的に安定した性能が得られることになる。
また、カバーによって皿ばねの特性(荷重―変位曲線)が受ける影響は非常に小さいので、所望の性能が確実に得られることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に示す本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図6には、本発明によるグラウンドアンカーの第1の実施の形態が示されていて、図1はグラウンドアンカーの略全体を示す縦断面図、図2は図1の皿ばねの斜視図、図3は図2のA−A線断面図、図4は第2カバーの断面図、図5は図4のB部の拡大図、図6は第2カバーの変形例の部分拡大図、図7は第2カバーの断面図、図8は図7のC部の拡大図である。
【0017】
すなわち、このグラウンドアンカー1は、切土法面等の地すべり対策等に利用されるものであって、図1に示すように、対象箇所の地盤40に打設されるテンドン2と、テンドン2を緊張させた状態に保持する定着具7と、テンドン2の緊張力を地盤40側に伝達させるとともに、地盤40の変動によるテンドン2の緊張力の変動を吸収する弾性部材18とを備えている。
【0018】
テンドン2は、複数本のPC鋼撚り線等の線状部材3からなるものであって、筒状のシース4内に収納された状態で地盤40の削孔41内に挿入されている。テンドン2の各線状部材3は、一端部(下端部)がシース4と共にグラウド(図示せず)によって地盤40の深層部(図示せず)に定着され、他端部(上端部)が受圧板5を貫通して地表43から露出している。
【0019】
テンドン2の地表43から露出している他端部と地表43との間には定着具7が設けられている。定着具7は、図1に示すように、テンドン2の他端部に固着される第1定着板8と、第1定着板8の上部に密着した状態で設けられる支圧板11と、支圧板11にテンドン2を固定するチャック13と、地表43に敷設されている受圧板5の上部に固着される第2定着板15とを備えている。
【0020】
第2定着板15は、金属製の板状をなすものであって、中心部に上下面間を貫通する貫通孔16が設けられ、この貫通孔16内に筒状の金属製の案内パイプ17の上端部が下方から挿入され、案内パイプ17と第2定着板15との間は溶接等によって一体に連結されている。
【0021】
受圧板5は、コンクリート等から形成されるものであって、中心部に上下面間を貫通する支持孔6が設けられ、この支持孔6内に上方から案内パイプ17を挿入させることにより、第2定着板15が受圧板5の上部に固着される。案内パイプ17の下端部は、受圧板5の支持孔6内に挿入されているシース4の上端部に溶接等により一体に連結されている。
【0022】
第1定着板8は、金属製の板状をなすものであって、中心部に上下面間を貫通する貫通孔9が設けられている。第1定着板8の下面側の貫通孔9の周縁部には筒状のスライドパイプ10の上端部が溶接等により一体に連結され、このスライドパイプ10は、第2定着板15の案内パイプ17の内側に上方からスライド自在に挿入されている。
【0023】
支圧板11は、板状をなすものであって、第1定着板8の上部に貫通孔9を閉塞するように密着した状態で設けられている。支圧板11の複数箇所には、上下面間を貫通するテンドン支持孔12が設けられ、各テンドン支持孔12内をテンドン2の各線状部材3が挿通している。各テンドン支持孔12の上端開口部は、内周面が所定の角度のテーパ面に形成され、この上端開口部に後述するチャック13が係合可能に構成されている。
【0024】
チャック13は、複数の楔状の爪14を組み合わせて構成したものであって、各爪14の外面は支圧板11のテンドン支持孔12の上端開口部のテーパ面に合致するテーパ面に形成され、各爪14の内面にはテンドン2の線状部材3の外面に噛み込ませるための凹凸が設けられている。
【0025】
支圧板11の各テンドン支持孔12内にテンドン2の線状部材3を挿通させ、各線状部材3をジャッキ(図示せず)により緊張させた状態で、各線状部材3の外周面と各テンドン支持孔12の内周面との間にチャック13を打ち込むことにより、各線状部材3の他端部がチャック13及び支圧板11を介して第1定着板8に支持され、各線状部材3が緊張された状態に保持される。
【0026】
弾性部材18は、図1及び図2に示すように、皿ばね19であって、ばね鋼等を素材として切頭円錐板状に形成されている。皿ばね19の中心部には、上下面間を貫通する貫通孔20が設けられ、この貫通孔20内に第1定着板8のスライドパイプ10を挿通させることにより、皿ばね19が第1定着板8と第2定着板15との間に介装される。
【0027】
皿ばね19は、頂部が第1定着板8側に位置し、底部が第2定着板15側に位置するように、両定着板8、15間に介装されている。皿ばね19は、頂部側の端面21及び底部側の端面22が内周面23及び外周面24と直交する平面に形成され、頂部側の端面21と外周面24とが交差する角部25が第1定着板8の下面側に接触し、底部側の端面22と内周面23とが交差する角部26が第2定着板15の上面側に接触している。
【0028】
皿ばね19の頂部と第1定着板8との間、皿ばね19の底部と第2定着板15との間には、それぞれ第1カバー27及び第2カバー34が介装され、これらの第1カバー27及び第2カバー34によって皿ばね19の頂部の上端側の角部25(第1定着板8との接触部25)、及び皿ばね19の底部の下端側の角部26(第2定着板15との接触部26)が被覆される。
【0029】
第1カバー27は、図4及び図5に示すように、テーパ筒状の筒状部28と、筒状部28の上端に一体に設けられる環状のフランジ部30とからなる断面略L形状をなすものであって、筒状部28とフランジ部30との境界部は所定の曲率のアール面32に形成されている。第1カバー27は、上記の形状に限らず、皿ばね19の特性(荷重―変位曲線)に対して、与える影響が5%未満となるような形状であれば良い。
【0030】
第1カバー27は、筒状部28を皿ばね19の貫通孔20内に嵌合させることにより皿ばね19の頂部に装着される。この場合、第1カバー27の筒状部28の外周面29が皿ばね19の頂部の端面21の上端部に接触することによりその部分が被覆され、第1カバー27のフランジ部30の下面31が皿ばね19の外周面24の上端部に接触することによりその部分が被覆される。
【0031】
皿ばね19の頂部に第1カバー27を装着することにより、第1カバー27の上端部が第1定着板8の下面側に接触する。この場合、第1カバー27の第1定着板8との接触部は、図5に示すように、所定の曲率のアール面32に形成され、皿ばね19が弾性変形する際に、第1定着板8との間の摩擦抵抗を低減させている。第1カバー27の第1定着板8との接触部は、図6に示すように、第1定着板8の下面に略平行な平面33に形成しても良い。
【0032】
第2カバー34は、図7及び図8に示すように、環状のフランジ部35と、フランジ部35の外周端に一体に設けられるテーパ筒状の筒状部36とからなる断面略L形状をなすものであって、フランジ部35と筒状部36との境界部は所定の曲率のアール面37に形成されている。第2カバー34は、上記の形状に限らず、皿ばね19の特性(荷重―変位曲線)に対して、与える影響が5%未満となるような形状であれば良い。
【0033】
第2カバー34は、フランジ部35の上面側を皿ばね19の底部の内周面23側に嵌合させることにより皿ばね19の底部に装着される。この場合、第2カバー34のフランジ部35の上面が皿ばね19の底部の内周面23の下端部に接触することによりその部分が被覆され、第2カバー34の筒状部36の内周面が皿ばね19の底部の端面22の下端部に接触することによりその部分が被覆される。
【0034】
皿ばね19の底部に第2カバー34を装着することにより、第2カバー34の下端部が第2定着板15の上面側に接触する。この場合、第2カバー34の第2定着板15との接触部は、図8に示すように、所定の曲率のアール面37に形成され、皿ばね19が弾性変形する際に、第2定着板15との間の摩擦抵抗を低減させている。第2カバー34の第2定着板15との接触部は、図示はしないが、第2定着板15の下面に略平行な平面に形成しても良い。
【0035】
第1カバー27及び第2カバー34の素材としては、例えばステンレス鋼が挙げられる。但し、これに限定することなく、耐食性に優れた素材であれば良い。第1カバー27及び第2カバー34の表面に必要に応じて四フッ化エチレン樹脂等のコーティングを施し、潤滑性を高めても良い。
【0036】
上記のように構成したこの実施の形態によるグラウンドアンカー1にあっては、テンドン2の緊張力を定着具7及び弾性部材18である皿ばね19を介して地盤40側に伝達することにより、地盤40の表層部42が深層部と受圧板5との間で圧縮され、表層部42に地すべり等が生じるのが防止される。
【0037】
そして、凍土、融解等の地盤40の変動が生じた場合には、地盤40の変動に追従して皿ばね19がテンドン2の軸線方向に伸縮変形することにより、その変動が吸収されてテンドン2の緊張力が変動するのが防止され、テンドン2の緊張力が過大になってテンドン2が破損等するのを防止する。
【0038】
この場合、皿ばね19は、伸縮変形することによって径方向、円周方向に変位することになるが、皿ばね19の頂部側の角部25(第1定着板8との接触部)は第1カバー27で被覆され、皿ばね19の底部側の角部26(第2定着板15との接触部)は第2カバー34で被覆されているので、皿ばね19の頂部側の角部25及び底部側の角部26が第1定着板8及び第2定着板15と直接摺動するようなことはない。
【0039】
従って、皿ばね19の頂部側の角部25が第1定着板8と摺動して摩耗が生じるようなことはなく、また、底部側の角部26が第2定着板15と摺動して摩耗が生じるようなことはないので、皿ばね19に摩耗による錆が生じるようなことはなく、錆による皿ばね19の強度の低下、機能の低下を防止できることになる。この結果、皿ばね19の特性を十分に発揮させることができるので、グラウンドアンカー1としての安定した機能を長期的に発揮できることになる。
【0040】
さらに、皿ばね19の表面に塗装を塗布したり、皿ばね19、第1定着板8、第2定着板15等を油に浸漬させる必要もないので、コストを大幅に削減することができることになる。
【0041】
図9には、本発明によるグラウンドアンカーの第2の実施の形態が示されていて、このグラウンドアンカー1は、定着具7の第1定着板8と第2定着板15との間に、2つ皿ばね19、19を直列に設けて弾性部材18を構成し、上側の皿ばね19と第1定着板8との間に第1カバー27を介装させ、上側の皿ばね19と下側の皿ばね19との間に2つの第2カバー34、34を介装させ、下側の皿ばね19と第2定着板15との間に第1カバー27を介装させたものであって、その他の構成は前記第1の実施の形態に示すものと同様である。
【0042】
この場合、上側の皿ばね19の第1定着板8との接触部25は第1カバー27で被覆され、下側の皿ばね19の第2定着板15との接触部25は第1カバー27で被覆され、上側の皿ばね19の下側の皿ばね19との接触部26は第2カバー34で被覆され、下側の皿ばね19の上側の皿ばね19との接触部26は第2カバー34で被覆されている。
【0043】
そして、この実施の形態に示すグラウンドアンカー1にあっても、前記第1の実施の形態に示すものと同様に、凍土、融解等の地盤40の変動が生じた場合には、地盤40の変動に追従して2つの皿ばね19、19がテンドン2の軸線方向に伸縮変形することにより、その変動が吸収されてテンドン2の緊張力が変動するのが防止され、テンドン2の緊張力が過大になってテンドン2が破損等するのを防止する。
【0044】
この場合、2つの皿ばね19、19は、伸縮変形することによって径方向、円周方向に変位することになるが、上側の皿ばね19の頂部側の角部25(第1定着板8との接触部)は第1カバー27で被覆され、下側の皿ばね19の頂部側の角部25(第2定着板15との接触部)は第1カバー27で被覆され、上側の皿ばね19の底部側の角部26(下側の皿ばね19との接触部)は第2カバー34で被覆され、下側の皿ばね19の底部側の角部26(上側の皿ばね19との接触部)は第2カバー34で被覆されているので、上側の皿ばね19の頂部側の角部25が第1定着板8と、下側の皿ばね19の頂部側の角部25が第2定着板15と、上側の皿ばね19の底部側の角部26が下側の皿ばね19の底部と、下側の皿ばね19の底部側の角部26が上側の皿ばね19の底部と直接摺動するようなことはない。
【0045】
従って、上側の皿ばね19の頂部側の角部25が第1定着板8と摺動して摩耗が生じるようなことはなく、下側の皿ばね19の頂部側の角部25が第2定着板15と摺動して摩耗が生じるようなことはなく、上側の皿ばね19の底部側の角部26が下側の皿ばね19と摺動して摩耗が生じるようなことはなく、下側の皿ばね19の底部側の角部26が上側の皿ばね19と摺動して摩耗が生じるようなことはないので、各皿ばね19に摩耗による錆が生じるようなことはなく、錆による各皿ばね19の強度の低下、機能の低下を防止できることになる。この結果、各皿ばね19の特性を十分に発揮させることができるので、グラウンドアンカー1としての安定した機能を長期的に発揮できることになる。
【0046】
さらに、各皿ばね19の表面に塗装を塗布したり、各皿ばね19、第1定着板8、第2定着板15等を油に浸漬させる必要もないので、コストを大幅に削減することができることになる。
【0047】
なお、前記の各実施の形態においては、弾性部材18として1つの皿ばね19、2つの皿ばね19、19を用いた例について説明したが、図示はしないが、2つ以上の皿ばねを用いて弾性部材を構成しても良いものであり、その場合にも、同様の作用効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明によるグラウンドアンカーの第1の実施の形態を示した縦断面図である。
【図2】図1の皿ばねの斜視図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図4は第2カバーの断面図である。
【図5】図4のB部の拡大図である。
【図6】第2カバーの変形例を示した部分拡大図である。
【図7】第2カバーの断面図である。
【図8】図7のC部の拡大図である。
【図9】本発明によるグラウンドアンカーの第2の実施の形態を示した縦断面図である。
【図10】従来のグラウンドアンカーの一例を示した縦断面図である。
【図11】従来のグラウンドアンカーの他の例を示した縦断面図である。
【図12】従来のグラウンドアンカーの他の例を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 グラウンドアンカー
2 テンドン
5 受圧板
7 定着具
8 第1定着板
11 支圧板
13 チャック
15 第2定着板
18 弾性部材
19 皿ばね
25 角部
26 角部
27 第1カバー
34 第2カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が地盤に定着され、他端部が地表から露出するテンドンと、該テンドンの他端部と前記地表との間に設けられ、該テンドンを緊張させた状態に保持する定着具と、該定着具に設けられて前記テンドンの緊張力を地表側に伝達させるとともに、地盤の変動によるテンドンの緊張力の変動を吸収する弾性部材とを備えたグラウンドアンカーであって、
前記定着具と前記弾性部材との間に、前記弾性部材の前記定着具との接触部を被覆するカバーを設けたことを特徴とするグラウンドアンカー。
【請求項2】
前記定着具は、前記テンドンの他端部に固着される第1定着板と、地表に固着される第2定着板とを有し、前記第1定着板と前記第2定着板との間に、前記弾性部材が前記テンドンの軸線方向に弾性変形可能に介装されていることを特徴とする請求項1に記載のグラウンドアンカー。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記第1定着板と前記第2定着板との間に介装される一つの皿ばねからなり、該皿ばねと第1定着板との間及び該皿ばねと第2定着板との間に、該皿ばねの第1定着板との接触部及び該皿ばねの第2定着板との接触部を被覆するカバーがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項2に記載のグラウンドアンカー。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記第1定着板と前記第2定着板との間に直列に介装される複数の皿ばねからなり、第1定着板側の皿ばねと第1定着板との間、隣接する皿ばね間、及び第2定着板側の皿ばねと第2定着板との間に、第1定着板側の皿ばねの第1定着板との接触部、隣接する皿ばねの相手方との接触部、及び第2定着板側の皿ばねの第2定着板との接触部を被覆するカバーがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項2に記載のグラウンドアンカー。
【請求項5】
前記カバーは、前記皿ばねの荷重―変位曲線に対して与える影響が5%未満となる断面形状に形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のグラウンドアンカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−9318(P2006−9318A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185438(P2004−185438)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【出願人】(592016784)守谷鋼機株式会社 (16)
【出願人】(302061613)住友電工スチールワイヤー株式会社 (163)
【出願人】(000228660)日本コンクリート工業株式会社 (50)
【出願人】(504242641)大陽ステンレススプリング株式会社 (1)
【Fターム(参考)】