説明

コンクリート基礎用アンカーボルト保持具と、アンカーボルト付き保持具

【課題】 生コンクリート内に埋め込むアンカーボルトを垂直に保持することができ、生コンクリート内に埋め込んでコンクリート基礎を補強できるようにする。
【解決手段】 生コン充填空間内に配置可能な基材に、アンカーボルトを差込み可能な差込孔又はアンカーボルトをねじ込み可能なネジ孔を設け、前記基材が生コンクリート内に埋め込まれるようにした。基材にそれを生コン充填空間内又は生コンクリート内に支持可能な支持部を設けた。基材が板状又は網状であり、差込孔は基材の裏面又は表面に筒状に突設したもの、ネジ孔は基材の裏面又は表面に突設した筒状部の内周面に、アンカーボルトをねじ込み螺合可能なネジが形成されたものとした。ネジ孔は基材の孔の裏面又は表面にナットを取付けたものでもよい。支持部を基材の横幅方向両端部を内側に折り返した折り返し部としてもよい。基材の下方に支持脚を設けてもよい。基材には流入孔を設けることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はコンクリート基礎用アンカーボルト保持具と、アンカーボルト付き保持具に関し、建物、特に、木造住宅のコンクリート基礎の施工に使用するのに適するものである。
【背景技術】
【0002】
木造住宅では、コンクリート基礎の上に木製角材(土台)を載せ、コンクリート基礎の上に突出しているボルト(通常「アンカーボルト」と呼ばれている。)の上部を、土台に開口されている連結孔に差込んでナット締めして、土台をコンクリート基礎に固定している。
【0003】
コンクリート基礎は、一般には、地面を掘削して形成した基礎溝の底に割り栗(石)を敷き、その上にコンクリートを打ってフーチング層を形成し、このフーチング層の上にコンクリートパネル(以下「型枠」という。)を対向配置し、その型枠間のコンクリート充填空間内に生コンクリートを充填して施工される。この場合、アンカーボルトがコンクリート充填空間内に配置され、その下部が生コンクリート内に埋め込まれて固定され、上部はコンクリート基礎の上面よりも上に突設されている。アンカーボルトはコンクリート基礎と土台を連結する重要な役割を担う部材であるため、コンクリート基礎の所定位置に、所定の高さで埋め込まれてコンクリート基礎の上方に真っ直ぐに(垂直に)突出することが要求される。
【0004】
従来のコンクリート基礎では、道糸を張ってアンカーボルトの埋設位置や突出寸法(突出高)を決めているが、コンクリート基礎の上面より上方に突出するアンカーボルトの上部が傾斜したり曲がったりすることがあり、アンカーボルトの上部と、コンクリート基礎の上に載せた土台の連結孔との位置合わせが難しいとか、傾斜している或いは曲がっている上部をハンマーで叩いて垂直にして位置合わせをしなければならず、コンクリート基礎と土台との連結作業が面倒であった。
【0005】
従来、アンカーボルトの位置決めを行うための治具として、対向配置された二枚の型枠の上端に載せて使用する位置決め治具(特許文献1)や、基礎の損壊を防止するための手段を備えた位置決め治具(特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−214988号公報
【特許文献2】特開2002−88775号公報
【0007】
前記特許文献1記載の位置決め治具は、型枠の上端に載せる板材の中央部にアンカーボルトを挿入するための貫通孔が設けられたものであり、当該板材の表裏面に設けられた突条を型枠の内壁に接触させることによって、アンカーボルトの位置ずれを防止するものである。この位置決め治具はアンカーボルトを生コン内に埋め込んでから、型枠を取り外すときに撤去しなければならず、撤去に手間がかかるという難点があった。
【0008】
前記特許文献2記載の位置決め治具は、基礎の上部に埋設固定される補強プレートにアンカーボルトを螺合するためのネジ孔を設けたものであり、そのネジ孔に螺合されたアンカーボルトの上方は補強プレートの表面側に突出し、その突出部分が型枠の上端に載せるアンカープレートに取付けられたものである。このような構造の位置決め治具は、補強プレートを撤去する必要はないものの、アンカープレート自体は撤去しなければならないため、特許文献1の場合と同様に、その撤去作業に手間がかかるという難点があった。また、補強プレートがコンクリート基礎の上面に被さっているだけであるため上面から剥がれ易いという難点もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明の解決課題は、型枠内へのアンカーボルトの位置決めが容易であり、アンカーボルトが傾斜しにくく、真っ直ぐ(垂直)に突出し、コンクリート基礎の施工が容易なコンクリート基礎用アンカーボルト保持具と、アンカーボルト付き保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具はアンカーボルトを脱着可能なものであり、アンカーボルト付き保持具はアンカーボルト保持具にアンカーボルトを取付けたものである。
【0011】
本願発明のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具は、コンクリート基礎の施工時にアンカーボルトを型枠間の生コン充填空間内に配置して、アンカーボルトを生コン充填空間内に配置するアンカーボルト保持具であり、生コン充填空間内に配置可能な基材と、基材に、アンカーボルトを差込み可能な差込孔又は差込み筒、又はアンカーボルトを螺合可能なネジ孔又はネジ筒が設けられ、基材が生コン充填空間内に充填される生コンクリート内に埋め込まれるか、生コンクリートの上から生コンクリート内に押し込まれるものである。基材には生コン充填空間に支持可能な支持部を設けることができる。
【0012】
本願発明のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具における基材は、板状であっても網状であってもよい。差込孔はバーリング加工により板材又は網材の一部をその裏面又は表面に筒状に突設させたものでも、基材にあけた孔に筒状の補助具を差込んだものでも、基材にあけた孔の表面又は裏面に筒状の補助具を取付けたものでもよい。ネジ孔は、板状の基材にバーリング加工により成形した筒状の孔の内周面にネジを切ったものでも、基材にあけた孔内に、ネジ孔が形成された筒状の補助具を差込んだものでも、ネジ孔が形成された筒状の補助具を基材の孔の裏面又は表面に取付けたものでも、基材の孔の表面又は裏面にナットを固定したものでもよい。
【0013】
基材が板材の場合は、基材の上方から充填される生コンクリートが、基材の下方(裏側)に流入可能な流入孔を基材に開口することができる。
【0014】
本願発明のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具における支持部は、基材の横幅方向両側方に設けることも、基材の下方に伸びる支持脚とすることもできる。基材の幅方向両端部に設ける場合は、基材の両端間の寸法を対向配置された型枠の内面に当接可能な寸法にして、その両端部を型枠の内面に支持できる支持部とすることができる。この場合、基材の幅方向両端部を差込孔又はネジ孔側に弧状に折り返して、その折り返し部間の寸法を対向配置された型枠の内面に当接可能な寸法にして、その折り返し部を支持部とすることもできる。支持脚は基材の横幅方向両側を下方に折り曲げて形成することができる。支持脚は生コン充填空間内の底面に立設できる長さにするとか、生コン充填空間内の途中まで充填された生コンクリートの上に立設するとか、その生コンクリート内に押し込んで立設可能とすることができる。支持脚の外側に突出するビードを設け、そのビードを型枠の内面に当接する支持部とすることもできる。
【0015】
本願発明のアンカーボルト付き保持具は、アンカーボルト保持具の差込孔にアンカーボルトを差込むか、ネジ孔にアンカーボルトをねじ込んだものである。アンカーボルトは汎用のJ型のものでも、直線状のものでも、その他の形状、構造のものでもよい。
【発明の効果】
【0016】
本願発明のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具は次のような効果がある。
(1)基材が生コンクリート内に埋め込まれるか、生コンクリートにその上からに押し込まれるものであるため、生コンクリート打設後に撤去する必要がなく、コンクリート基礎の施工が容易になる。
(2)基材が生コンクリート内に埋め込まれるものであるため、基材が補強材となり、強固なコンクリート基礎を施工することもできる。
(3)アンカーボルトが、型枠内に水平又は略水平に配置可能な基材により垂直に支持されるので、コンクリート基礎の上面よりも上方に突出するアンカーボルトの上部が垂直になり、その上部とコンクリート基礎の上に載せた土台の連結孔との位置合わせが容易になる。
(4)アンカーボルトを差込孔に差込むか、ネジ孔にねじ込むことができるため、コンクリート基礎の上に突出するアンカーボルトの突出長の調節が容易になる。
(5)板状の基材をバーリング加工して筒状に突出させて差込孔とすれば、基材が薄い金属板や網材であってもアンカーボルトを垂直に保持できる。バーリング加工して突出させた筒部内面にネジを切れば、基材が薄い金属板であっても、そのネジ孔にアンカーボルトをねじ込んで垂直に保持することができる。
(6)板状や網状の基材に孔をあけ、その表面側又は裏面側にナットを固定すれば、ネジ孔の形成が容易になる。基材の孔に筒状の補助具を差込むか、孔の下に筒状の補助具を取付けるかしてあるので、基材が薄い板材や網材であっても筒状の差込孔を形成でき、アンカーボルトを垂直に支持することができる。
(7)基材の幅方向両端側に支持部を設ければ、その支持部を型枠内面に接触させて基材を型枠の高さ方向所定位置に支持できるので、アンカーボルトを型枠内の所定位置に容易に位置決めすることができる。
(8)基材の幅方向両端面を内側(差込孔又はネジ孔方向)に湾曲する円弧状にして、素の湾曲端部を支持部とすれば、型枠を取外しても、コンクリート内に埋め込まれた基材の支持部がコンクリート基礎の側面にほとんど突出せず、基材の端部が外にめくれて突出するようなことがなく安全である。
(9)基材の幅方向両側面にビードを突設して支持部とすれば、型枠を取外してもコンクリート内に埋め込まれた基材の支持部がコンクリート基礎の側面にほとんど突出せず、支持部が外にめくれて突出するようなことがなく安全である。
(10)基材に流入孔を開口するか、基材に網材を使用して網目を流入口とすると、型枠内に充填される生コンクリートがそれら流入孔を通って基材の裏面側に流れ込むことができ、基材が邪魔して生コンクリートが基材の裏側に回り込みにくくなって、コンクリート基礎内に巣(空間)ができるようなことがなく、強固なコンクリート基礎を成型することができる。また、基材の上下に充填される生コンクリートが基材で仕切られないため、コンクリート基礎の強度が損なわれない。
【0017】
本願発明のアンカーボルト付き保持具は、アンカーボルトが予め、基材の差込孔に差込まれているか、又は基材のネジ孔にねじ込まれているので、コンクリート基礎の施工時に、一々、基材にアンカーボルトを差込んだりねじ込んだりする面倒がなく、施工が容易になる。また、アンカーボルトが垂直に保持されているので、コンクリート基礎の上面よりも上方に突出するアンカーボルトの上部が傾斜しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本願発明のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具の一例を示す斜視図、(b)はバーリングによって基材の裏面側に筒状の突起を設けた場合の一例を示す縦断面図、(c)は基材の裏面側にナットを溶接固定した場合の一例を示す縦断面図。
【図2】(a)は本願発明のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具における両支持脚の夫々にビードを一本ずつ設け、両支持脚の下端に突片を設けた場合の一例を示す斜視図、(b)は(a)の縦断面図。
【図3】本願発明のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具の他例であり、(a)は両支持脚の夫々にビードを二本ずつ設けた場合の一例を示す斜視図、(b)は基材の幅を細くした例を示す斜視図。
【図4】本願発明のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具の基材に網材を使用した例であり、(a)は基材の斜視図、(b)は基材にあけた孔に補助具を差込む場合の説明図、(c)は基材にあけた孔に補助具を上から差込んだ状態の縦断面図。
【図5】本願発明のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具の他例であり、(a)は基材にあけた孔の周囲を一段窪ませて、その窪み箇所に補助具を上から差込んだ状態の縦断面図、(b)は基材にあけた穴の下に補助具を取付けた場合の縦断面図。
【図6】図1(c)のアンカーボルト付き保持具を使用したコンクリート基礎の施工例の説明図。
【図7】図4(c)のアンカーボルト付き保持具を使用したコンクリート基礎の施工例の説明図。
【図8】図5(a)のアンカーボルト付き保持具を使用したコンクリート基礎の施工例の説明図。
【図9】図5(b)のアンカーボルト付き保持具を使用したコンクリート基礎の施工例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具及びアンカーボルト付き保持具の実施形態の一例について図面を参照して説明する。これら図において、基材にアンカーボルトを取付けた場合がアンカーボルト付き保持具、基材にアンカーボルトを取付ける前の状態がアンカーボルト保持具である。以下、説明の便宜上、いずれの保持具も、単に保持具という。
【0020】
(板状の基材の例1)
図1(a)に示す保持具1は板状の基材2の中央部にネジ孔3が縦方向に形成され、ネジ孔3内にアンカーボルトBをねじ込み可能であり、基材2の横幅方向両側面に支持部4が形成され、その支持部4を対向配置された二枚の型枠F(図6)の内面に接触させて、基材2を型枠F間に支持できるようにしたものである。
【0021】
基材2には金属板、硬質樹脂板等の板材を使用することができる。その横幅方向両端に形成された支持部4は基材2の横幅方向両端部をネジ孔3側(内側:裏面側)に湾曲させて折り返して形成してある。両支持部4間の長さは、対向配置されたコンクリート基礎成型用の型枠F(図6)の間の幅と同じにして、型枠Fの間の生コン充填空間15(図6)内に基材2を配置すると、支持部4が型枠Fの内面に接触して両型枠F間に保持(支持)されるようにしてある。
【0022】
基材2が板材の場合は、その基材2に生コンクリートCが流入可能な大きさ(サイズ)の流入孔6を開口して、前記生コン充填空間15(図6)内に打設される生コンクリートCが、基材2の上方から流入孔6を通過して基材2の下方(裏側)に流れ込むことができるようにしてある。図1(a)に示した流入孔6は細長孔であるが、その形状は円形、多角形等であっても良く、サイズ、個数、開口位置等は生コンクリートCが流入し易いように選定することができる。
【0023】
基材2に設けたネジ孔3は、板材をバーリング加工して、図1(b)に示すように、板材の内面(裏面:図1(b)では下面)側に筒状の突起7を設け、その突起7の内周面にネジを切って形成することができる。筒状の突起7は基材2の外面(表面:図1(b)では上面)側に突出させることもできる。
【0024】
ネジ孔3は図1(c)に示すように、板状の基材2の中央部又は略中央部に孔8をあけ、その孔8の裏側にナット9を固定することにより、そのナット9のネジ孔を基材2のネジ孔3とすることもできる。ナット9は基材2の表面側(外側)に設けることも、裏面(内面)と表面(外面)の双方に設けることもできる。ナット9は溶接や接着剤などによって基材2に固定することができる。
【0025】
ネジ孔3にはアンカーボルトBを基材2の裏側からねじ込んで(螺合して)、その上部を基材2の上方に突出させ、略J型の下部を基材2の下方に突出させることができる。アンカーボルトBのねじ込み寸法を調節することにより、基材2の上方に突出する突出長を調節することができる。図示したアンカーボルトは下端がJ型であるが、直線状のものであっても、他の形状、構造のものであってもよい。
【0026】
バーリング加工して突出させた基材2の突起7(図1(b))の内面にはネジを切らずにアンカーボルトBを差込み可能な差込孔としておくこともできる。この場合、差込まれたアンカーボルトBが安定するように、突起7の突出方向先端側(図1(b)の下端側)を次第に細くしておくこともできる。
【0027】
(板状の基材の例2)
図2(a)、(b)に示す保持具1は、基材2の長手方向両端部(肩部)11を下向きに折り曲げて板状の支持脚10を形成し、両支持脚10の下端側を次第に内側傾斜にして、下端部間の間隔W(図2(b))を対向配置された型枠F(図6)の間の幅よりも狭くして、対向配置された型枠F間に保持具1を配置し易くすると共に、両支持脚10の肩部(折り曲げ部:基材の横幅方向両端部)11間の寸法L(図2(b))を、両型枠F間の寸法と同じ又は略同じ寸法にして支持部4とし、対向配置された型枠Fの間に支持脚10を入れて、支持脚10を生コン充填空間15(図6)内の底(通常はフーチング層)の上に立てる(載せる)か、生コン充填空間15内の途中まで充填された生コンクリートCの上に載せたり、押し込んだりすることができるようにしてある。また、支持脚10を所定の深さに配置すると支持部4が両型枠Fの内周面に接触して型枠F間に保持されるようにもしてある。この場合、支持脚10の夫々に内側に突出するビード(突条)12を縦方向に入れて支持脚10を補強してある。また、支持脚10の下端に内側に突出する突片13を設けて支持脚10の下部を補強してある。
【0028】
(板状の基材の例3)
図3(a)に示す保持具1は、板状の基材2の中央部にネジ孔3を設け、基材2の横幅方向両側に設けた支持脚10の夫々に、外側に突出するビード(半円弧状の突条)14を二本ずつ縦向きに突設して、それらビード14を型枠F(図16)の内面に接触する支持部4としたものである。このビード14は支持脚10を補強する機能もある。この場合も、基材2に、生コンクリートCが流入可能な流入孔6を、図1(a)のように開口することもできる。
【0029】
(板状の基材の例4)
本願発明の保持具として図3(b)に示すものは、基材2の幅を狭く(細く)し、その基材2の横幅方向中央部にネジ孔3を開口し、その両外側に生コンクリートCが流入可能な流入孔6を開口し、基材2の横幅方向両側を下方に曲げて支持脚10を形成し、支持脚10の下端から内側に曲がる突片13を設け、支持脚10に内側に突出するビード12を設けたものである。ネジ孔3はネジのない差込孔とすることもできる。この場合も、基材2の横幅方向両端角部(肩部)11を、型枠F(図6)の内面に接触して支持される支持部4としてある。
【0030】
(網材の基材の例1)
基材2には金網、樹脂製網といった網材を使用することもできる。その一例として図4(a)に示すものは、下向きコ字状の網材の横幅方向略中央部をバーリング加工して筒状の突起7を突設し、その突起7を筒状の差込孔3としたものである。網材を使用することによりその網目が生コンクリートCが流入可能な流入孔6となる。網材も金属、樹脂以外の材質製とすることができる。図4(a)では基材2の横幅方向両端角部(肩部)11を型枠Fの内面に接触して支持される支持部4としてある。
【0031】
(網材の基材の例2)
図4(b)、(c)に示すものは、基材2に網材を使用し、その横幅方向両端部を下向きに曲げて下向きコ字状にし、基材2の横幅方向略中央部に孔20をあけ、その孔20内に筒状の補助具21を差込んだものである。補助具21は孔20内に差込可能な外径の筒部23の上端部外周に、前記孔20よりも大径の鍔24を設けてあり、図4(c)のように筒部23を孔20に差込むと、鍔24が孔20の上外周縁に支持されるようにしてある。筒部23のない周面にネジを切ってネジ孔とすることもできる。図4(b)のように孔20をあけた場合、その裏面に図1(c)のようにナットを取付けてネジ孔を形成することもできる。ナットは孔20の上面(表面)に取付けることもできる。
【0032】
(基材の一部を窪ませた例)
本願発明の保持具として図5(a)に示すものは、基材2に網材又は板材を使用し、下向きコ字状の基材2の横幅方向略中央部に孔20をあけ、その孔20の周囲を下方に窪ませ、その孔20に補助具21の筒部23を差込んで、孔20の周囲の窪み部分25内に鍔24を収容して、基材2の上面と鍔24の上面を同じ高さ(面一)にしたのである。この場合も、補助具21の筒部23の内周面にネジを切ってネジ孔とすることができる。
【0033】
(基材の他例)
本願発明の保持具として図5(b)に示すものは、基材2に網材又は板材を使用し、下向きコ字状の基材2の横幅方向略中央部に孔20をあけ、その孔20の裏面に補助具21の鍔24を固定したものである。この固定は溶接、接着剤等で行うことができる。この場合の補助具21の筒部23の内周面も、ネジを切ってネジ孔とすることができる。
【0034】
(施工例1)
図1(c)に示す保持具1を使用してコンクリート基礎を施工する場合の一例を図6に示す。図6は次のように施工する方法である。
(1)保持具1のネジ孔3にその裏面側からJ型のアンカーボルトBをねじ込んで、アンカーボルトBの上部を所定長だけ基材2の上方に突出させる。
(2)アンカーボルトBをセットした保持具(アンカーボルト付き保持具)1を、対向配置された型枠Fの上方から型枠F間の生コン充填空間15内に配置する。このとき、保持具1の支持部4を型枠Fの内面に接触させて保持具1を所定位置に支持させる。
(3)両型枠F間の生コン充填空間15内に生コンクリートCを充填して、保持具1の基材2及びアンカーボルトBの下部を生コンクリートC内に埋め込む。この場合、基材2の上に充填された生コンクリートCは基材2の流入孔6から基材2の裏面側に流れ込む。基材2が網材の場合は網目から流れ込む。
(4)自然乾燥によって生コンクリートCが固まったら、型枠Fを取り外して養生する。
【0035】
(施工例2)
施工例1は、アンカーボルト付き保持具1を、対向配置された型枠Fの上方から型枠F間の生コン充填空間15内に配置してから生コンクリートCを充填する場合の例であるが、コンクリート基礎の施工例としては、生コン充填空間15内(図6)の途中まで生コンクリートCを充填してから、その生コンクリートCの上にボルト付き保持具1を載せて、アンカーボルトBの下部を生コンクリートC内に差込み、その後に、基材2の上から生コンクリートCを充填して、基材2及びアンカーボルトBの下部を生コンクリートC内に埋め込むこともできる。
【0036】
(施工例3)
施工例1、2は、アンカーボルト付き保持具1を使用する場合であるが、アンカーボルトBを基材2にセットしないで使用することもできる。この場合は、型枠F間の生コン充填空間15(図6)内の途中まで生コンクリートCを充填し、その生コンクリートCの上に基材2を載せ、その状態で基材2のネジ孔3にその上方から、下部が直線状であるアンカーボルトBをねじ込んでアンカーボルトBの下部を生コンクリートC内に差込み、上部を型枠Fの上方に突出させ、その基材2の上から更に生コンクリートCを充填して、基材2及びアンカーボルトBの下部を生コンクリートC内に埋め込むこともできる。この場合、途中まで充填した生コンクリートCに、先に、アンカーボルトBの下部を押し込み、そのアンカーボルトBの上から基材2の差込孔3を被せて基材2を生コンクリートCの上に載せ、その状態で基材2の上から生コンクリートCを打ち込んで、基材2を生コンクリートC内に埋め込むこともできる。
【0037】
(施工例4)
図3(a)、(b)に示す保持具1を使用して施工する場合は次のようにする。
(1)保持具1のネジ孔3にその裏面側からJ型のアンカーボルトBをねじ込んで、アンカーボルトBの上部を所定長だけ基材2の上方に突出させる。
(2)アンカーボルトBをセットした保持具1を生コン充填空間15(図6)の上方からその内部に配置する。このとき、保持具1の支持脚10を生コン充填空間15内の底面(例えば、フーチング層)の上に設置することも、保持具1の支持部4を型枠Fの内面に接触させて保持具1を支持することもできる。
(3)生コン充填空間15内に生コンクリートCを流し込んで、保持具1の基材2及びアンカーボルトBの下部を生コンクリートC内に埋め込む。この場合、基材2の上に充填された生コンクリートCは基材2の流入孔6から基材2の裏面側に流れ込む。基材2が網材の場合はその網目から流れ込む。
(4)自然乾燥によって生コンクリートCが固まったら、型枠Fを取り外して養生する。
【0038】
(施工例5)
図4(c)の網材を使用した保持具1は、板材を使用した保持具と同様に使用することもできるが、図7のように生コン充填空間15内に生コンクリートCを充填してから、その生コンクリートC内にアンカーボルトBをねじ込んで、アンカーボルトBの下部を生コンクリートC内に埋め込み、そのアンカーボルトBに基材2の差込孔3を上方から被せて生コンクリートCの上面にのせ、その基材2を両側部26が生コンクリートCと型枠Fの間に入るまで押し込み、生コンクリートCの上面と補助具21の鍔24の上面を同じ高さ(面一)にする。この場合、鍔24の上面が生コンクリートCの上面よりも一段下がるまで押し込むこともできる。可能であれば、生コンクリートCの上面に被せた基材2の上から更に生コンクリートCを充填して、生コンクリートCの上面と補助具21の鍔24の上面を同じ高さ(面一)にすることも、生コンクリートCが鍔24の上に被さるようにすることもできる。図4(c)の保持具1は、基材2に予めアンカーボルトBを差込み、その状態で、生コンクリート充填前に、生コン充填空間15内に配置してから、生コンクリートCを充填して基材2及びアンカーボルトBの下部を生コンクリートC内に埋め込むこともできる。
【0039】
(施工例6)
図5(a)の保持具1の場合は、図8に示すように、生コン充填空間15内に生コンクリートCを充填してから、その生コンクリートC内にアンカーボルトBをねじ込んで、アンカーボルトBの下部を生コンクリートC内に埋め込み、そのアンカーボルトBに基材2の差込孔3を上方から被せ、基材2の両側部26を生コンクリートCと型枠Fの間に押し込んで、基材2の上面及び補助具21の鍔24の上面を生コンクリートCの上面と同じ高さ(面一)にする。この場合、基材2及び鍔24の上面が生コンクリートCの上面よりも一段下がるまで押し込むこともできる。
【0040】
(施工例6)
図5(b)の保持具1の場合は、図9に示すように、生コン充填空間15内に生コンクリートCを充填してから、その生コンクリートC内にアンカーボルトBをねじ込んで、アンカーボルトBの下部を生コンクリートC内に埋め込み、そのアンカーボルトBに基材2の差込孔3の筒部23を上方から被せ、基材2の両側部26を生コンクリートCと型枠Fの間に押し込んで、基材2の上面を生コンクリートCの上面と同じ高さ(面一)にする。この場合、基材2の上面が生コンクリートCの上面よりも一段下がるまで押し込むこともできる。
【0041】
図2(a)、(b)、図3(a)、(b)に示す保持具1も、図6〜図9の場合と同様に、生コン充填空間15内に配置して、基材2及びアンカーボルトBの下部を生コンクリートC内に埋め込むこともできる。
【0042】
アンカーボルトBはL型、J型、直線型等のどのような形状のものであってもよい。差込孔3はそれに差込むアンカーボルトBが傾かないように支持できるものが望ましく、そのためには適当な長さのあるものが望ましく、また、下方先細りにしておき、それにアンカーボルトBを強く押し込むとアンカーボルトBが差込孔3の外周面が内面に接して傾きにくくなるようにすることが望ましい。いずれの形状の場合も、アンカーボルトBを差込む孔はネジ孔でもネジ無し孔のいずれでもよい。アンカーボルトBを垂直に保持できれば、筒状ではなく、図4(b)に示す孔20のような孔(肉薄の孔)でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本願発明の保持具1は住宅用コンクリート基礎の他に、アンカーボルトBを立設する必要のあるコンクリート基礎、例えば土木工事用のコンクリート基礎を一として、各種基礎の施工にも利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 アンカーボルト保持具(保持具)
2 基材
3 ネジ孔、差込孔
4 支持部
6 流入孔
7 突起
8 孔
9 ナット
10 支持脚
11 肩部
12 ビード
13 突片
14 ビード
15 充填空間
20 孔
21 補助具
23 筒部
24 鍔
25 窪み部分
26 側部
B アンカーボルト
C 生コンクリート
F 型枠
G 地面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠間の生コン充填空間内に生コンクリートを打ち込んでコンクリート基礎を施工する際に、下部を生コンクリート内に埋め込み、上部を生コンクリートの上面よりも上方に突出させるアンカ−ボルトを保持するアンカーボルト保持具において、生コン充填空間内に配置可能な基材が、アンカーボルトを差込み可能な差込孔又は差込み筒、又はアンカーボルトをねじ込み可能なネジ孔又はネジ筒を備え、前記基材が生コン充填空間内に充填される生コンクリート内に埋め込まれるか又は生コンクリートの上面から生コンクリート内に押し込まれるものであることを特徴とするコンクリート基礎用アンカーボルト保持具。
【請求項2】
請求項1記載のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具において、基材に、生コン充填空間に支持可能な支持部が設けられたことを特徴とするコンクリート基礎用アンカーボルト保持具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具において、基材が板状又は網状であり、差込孔は基材をバーリング加工して基材の裏面又は表面に筒状に突設したもの、又は基材の孔内に筒状の補助具が差込まれたもの、又は基材の孔の表面又は裏面に筒状の補助具が取付けられたものであることを特徴とするコンクリート基礎用アンカーボルト保持具。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具において、基材が板状又は網状であり、ネジ孔は基材をバーリング加工して基材の裏面又は表面に突設した筒状部の内周面に、アンカーボルトをねじ込み可能なネジが形成されたもの、又は基材の孔にネジ孔が形成された筒状の補助具が差込まれたもの、又は、基材の孔にネジ孔が形成された筒状の補助具が取付けられたものであることを特徴とするコンクリート基礎用アンカーボルト保持具。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具において、基材が板状又は網状であり、ネジ孔は基材に開口した孔の裏面又は表面に、アンカーボルトをねじ込み可能なナットを取付けたものであることを特徴とするコンクリート基礎用アンカーボルト保持具。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具において、支持部が基材の横幅方向両端部を内側に折り返した折り返し部であることを特徴とするコンクリート基礎用アンカーボルト保持具。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具において、基材の下方に支持脚が設けられ、支持脚は生コン充填空間内の底面又は途中まで充填された生コンクリートの上に立設するか、又はその生コンクリートの中に押し込んで立設可能であることを特徴とするコンクリート基礎用アンカーボルト保持具。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項記載のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具において、基材が板材であり、その基材にその上方から充填された生コンクリートが下方に流入可能な流入孔が開口されたことを特徴とするコンクリート基礎用アンカーボルト保持具。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項記載のコンクリート基礎用アンカーボルト保持具の差込孔にアンカーボルトが差込まれるか、又はネジ孔にアンカーボルトがねじ込まれたことを特徴とするアンカーボルト付き保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−11053(P2013−11053A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132451(P2011−132451)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000247971)株式会社マルナカ (10)
【Fターム(参考)】