説明

コンバインの変速制御装置

【課題】コンバインの低速走行時における走行速度と刈取搬送部の回転変速を適正化する。
【解決手段】主変速レバーポジションセンサ(SE1)の検出値に応じて走行無段変速装置(15)及び刈取無段変速装置(19)を変速設定し、所定時間後に刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)の検出値が設定値より高いときには、走行停止状態で刈取無段変速装置(19)を所定回転数で回転させる走行停止時刈取調整運転モードに移行し、刈取増速スイッチ(SW4)と刈取減速スイッチ(SW5)の操作により刈取無段変速装置(19)の回転数を増減設定するコントローラ(35)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの変速制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインにおいて、走行装置の走行速度を無段階に変速する走行無段変速装置、収穫作業装置の作動速度を無段階に変速する作業用無段変速装置、及び、変速用制御手段が設けられ、変速用制御手段が、走行変速用操作具が中立位置から走行用不感帯を越えて走行出力開始位置になると出力を開始し、それから更に高速側に操作されるほど高速変速状態となるように走行用無段変速装置を変速操作し、及び、走行変速用操作具が中立位置から作業用不感帯を越えて作業出力開始位置になると出力を開始し、それから更に高速側に操作されるほど高速変速状態となるように作業用無段変速装置を変速操作する形態で、且つ、作業出力開始位置を走行出力開始位置よりも中立位置側として、走行用無段変速装置及び作業用無段変速装置を変速操作するようにしたものは、公知である(特許文献1)。
【0003】
また、機体の走行が停止したとき、穀稈の刈り取りと搬送をする前処理部の駆動を停止させる機能と前処理部が所定の高さまで上昇したときに、前処理部の駆動を停止させる機能を備えたコンバインにおいて、このコンバインに強制掻き込みスイッチを設け、強制掻き込みスイッチを入り操作したときに、機体の走行をもしくは前処理部の上昇にかかわらず、前処理部を駆動させるように構成したコンバインは、公知である(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3756140号公報
【特許文献2】特許第3756120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の技術では、変速用制御手段が、走行変速用操作具が中立位置から走行用不感帯を越えて走行出力開始位置になると出力を開始し、それから更に高速側に操作されるほど高速変速状態となるように走行用無段変速装置を変速操作し、また、走行変速用操作具が中立位置から作業用不感帯を越えて作業出力開始位置になると出力を開始し、それから更に高速側に操作されるほど高速変速状態となるように作業用無段変速装置を変速操作する形態であるので、走行停止状態から作業開始時の低速走行状態では、作業無段変速装置の低速駆動や駆動の遅れにより刈取穀稈に対する作業速度が不足したり、また、作業部の穀稈搬送量の増大時に、作業部の駆動効率不良による駆動速度低下が発生するような不具合が発生することがあった。
【0006】
そこで、本発明はこのような不具合を解消し、低速走行状態でも作業部の駆動速度を適正化し、更に、走行停止状態での刈取搬送部の調整運転時での刈取無段変速装置の回転数調節を容易化し、また、刈取搬送部の上昇時における駆動停止操作を容易化しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、このような従来技術のもつ問題点を解決するために、次の技術的手段を講じた。
請求項1記載の発明は、走行装置(2)変速用の走行無段変速装置(15)と、該走行無段変速装置(15)を手動変速する主変速レバー(17)と、刈取搬送部(8)変速用の刈取無段変速装置(19)と、該刈取無段変速装置(19)変速用の刈取変速モータ(37)と、前記主変速レバー(17)の変速操作位置検出用の主変速レバーポジションセンサ(SE1)と、前記刈取変速モータ(37)の変速位置検出用の刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)と、刈取・脱穀クラッチ入切検出用の刈取・脱穀クラッチセンサ(SE5)と、走行無段変速装置(15)と刈取無段変速装置(19)とを関連的に変速制御する走行刈取関連変速制御の入切を指定する刈取自動変速入切スイッチ(SW1)と、刈取搬送部(8)の非作業高さへの上昇時に刈取駆動を自動的に停止させる刈取上昇時駆動停止制御の入切を指定する刈取上昇時自動停止スイッチ(SW2)と、刈取無段変速装置(19)増減変速用の刈取増速スイッチ(SW4)、刈取減速スイッチ(SW5)と、走行停止時における刈取搬送部(8)を駆動させる刈取調整回転スイッチ(SW6)を備え、前記刈取自動変速入切スイッチ(SW1)を切り指定にした際には、前記主変速レバーポジションセンサ(SE1)の検出値に応じて走行無段変速装置(15)を変速すると共に、刈取無段変速装置(19)を走行変速に同調した駆動設定として刈取無段変速装置(19)の変速を停止し、前記刈取自動変速入切スイッチ(SW1)を入り指定にした際には、前記主変速レバーポジションセンサ(SE1)の検出値に応じて走行無段変速装置(15)及び刈取無段変速装置(19)を変速設定し、所定時間後に刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)の検出値が設定値より低いときには、刈取無段変速装置(19)の刈取駆動速度に応じた走行駆動速度になるように走行無段変速装置(15)を減速変速し、また、所定時間後に刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)の検出値が設定値より高いときには、刈取無段変速装置(19)の刈取駆動速度に応じた走行無段変速装置(15)の変速を停止し、且つ、前記刈取・脱穀クラッチセンサ(SE5)の刈取・脱穀クラッチ入り検出状態で、前記走行停止時刈取調整回転スイッチ(SW6)を入りにすると、走行停止状態で刈取無段変速装置(19)を所定回転数で回転させる走行停止時刈取調整運転モードに移行し、刈取増速スイッチ(SW4)と刈取減速スイッチ(SW5)の操作により刈取無段変速装置(19)の回転数を増減設定するコントローラ(35)を備えたことを特徴とするコンバインの変速制御装置とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記刈取・脱穀クラッチセンサ(SE5)の刈取・脱穀クラッチ入り検出状態で、前記走行停止時刈取調整回転スイッチ(SW6)を入りにした前記走行停止時刈取調整運転モードでは、前記刈取上昇時自動停止スイッチ(SW2)が入りになると、刈取無段変速装置(19)の駆動を停止し、モニタ表示装置(40)に刈取搬送部上昇による駆動停止中である旨を表示するコントローラ(35)を備えたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの変速制御装置とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によると、刈取自動変速入切スイッチ(SW1)を入り指定にした際に、刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)の検出値が設定値より低いときには、刈取無段変速装置(19)の刈取駆動速度に追従するように所定の減速基準に基づき走行無段変速装置(15)を減速変速するので、走行停止から走行開始時の低速走行での刈取開始時に、刈取搬送部(8)の駆動遅れによる刈取穀稈の踏み倒しによる穀稈の姿勢不良を回避し、また、刈取搬送部(8)の穀稈搬送量の増大時に刈取搬送部(8)の駆動効率不良による駆動速度低下時には車速を遅くすることができ、刈取負荷に応じた走行速度を自動的に設定し、穀稈の詰りによる機械の破損を防止し、耐久性及び刈取作業精度の向上を図ることができる。
【0010】
また、走行停止時刈取調整運転モードでは、刈取搬送部(8)の上昇状態で脱穀部(5)及び刈取搬送部(8)を所定速度で駆動したりあるいは停止させて、脱穀部(5)及び刈取搬送部(8)の作業状態に対応させることができる。
【0011】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、走行停止時刈取調整運転モードにおいて、刈取上昇時自動停止スイッチ(SW2)を入りにした刈取搬送部(8)の上昇時刈取駆動停止中には、モニタ表示装置(40)に、刈取搬送部の上昇による駆動停止中である旨を表示するので、オペレータは刈取搬送部(8)の駆動停止理由を知ることができ、運転操作が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの伝動展開図である。
【図3】制御ブロック図である。
【図4】制御フローチャートである。
【図5】制御フローチャートである。
【図6】層厚センサの検出状態を示す図である。
【図7】層厚センサの検出状態を示す図である。
【図8】層厚センサの検出状態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に示すこの発明の実施例について説明する。
まず、本発明を備えたコンバインの全体構成について説明する。図1に示すように、コンバイン1の走行車体2の下方には、左右一対のクローラ走行装置3,3を配設し、走行車体2上には、右側前部に操縦部4を、操縦部4の後方にグレンタンク6を、左側前部に脱穀部5を、脱穀部5及びグレンタンク6の後方に排稾処理装置7をそれぞれ配設している。操縦部4及び脱穀部5の前方には、植立穀稈を分草引起しながら刈り取り後方の脱穀部5に向けて搬送する刈取搬送部8を昇降自在に設けている。
【0014】
次に、図2に基づきコンバインの伝動構成について説明する。
エンジンEの出力軸11の左右一側から排出伝動装置12を経由して穀粒排出装置13を駆動し、グレンタンク6の穀粒を排出するようにしている。また、左右他側の出力軸11から走行ベルト伝動装置14を経て静油圧式の走行無段変速装置15に動力を伝達し、走行無段変速装置15を主変速レバー17(図1に示す)で手動変速した走行動力をミッションケース16内の走行伝動装置を経由して左右クローラ走行装置2,2に伝達している。
【0015】
また、出力軸11の左右他側から刈取・脱穀動力を取り出し、刈取・脱穀伝動装置18を経由して刈取搬送部8駆動用の静油圧式の刈取無段変速装置19へ伝達している。しかして、刈取無段変速装置19で変速された刈取動力が刈取伝動ケース8aの刈取出力軸8b、刈取動力伝動装置8cを経て刈取搬送部8の刈取入力軸20へ伝達され、刈取無段変速装置19で変速された動力により刈取搬送部8の穀稈引起し装置、刈刃装置、穀稈搬送装置等が駆動される。また、刈取伝動ケース8aのフィードチエン出力軸8dを経て脱穀部5のフィードチエン21に動力が伝達される構成である。
【0016】
また、刈取・脱穀伝動装置18の中途部から脱穀動力を脱穀伝動装置22に分岐し、脱穀伝動装置22から処理胴伝動装置22aを経由して二番処理胴24及び排塵処理胴25に動力を伝達している。また、脱穀伝動装置22の中途部から扱胴伝動装置22bを経由して扱胴26に動力を伝達し、脱穀伝動装置22の終端側部から排藁伝動装置22cを経由して排稾搬送装置23に動力を伝達している。
【0017】
また、刈取・脱穀伝動装置18の終端側から唐箕伝動装置22dを経由して唐箕27に動力を伝達している。また、刈取・脱穀伝動装置18の終端側から脱穀後部伝動装置22eを経由して一番揚穀装置28、第2唐箕29、二番揚穀装置30、排塵ファン31及び揺動選別棚32に動力を伝達している。また、脱穀後部伝動装置22eの終端側から排藁処理伝動装置22を分岐し、排稾処理装置7へ動力を伝達している。
【0018】
次に、コンバインのクローラ走行装置3,3と刈取搬送部8の回転変速制御構成について説明する。
コントローラ35の入力側には、センサ類及びスイッチを接続している。刈取自動変速入切スイッチSW1(走行速度と刈取駆動速度とを関連的に変速する変速制御の入切をする)、刈取上昇時自動停止スイッチSW2(刈取搬送部8が所定高さ以上に上昇すると刈取搬送部8の駆動を自動停止する制御を入切する)、掻込ぺダルスイッチSW3、刈取無段変速装置19増速用の刈取増速スイッチSW4、刈取無段変速装置19減速用の刈取減速スイッチSW5、走行停止時刈取調整回転スイッチSW6、省エネアクセルスイッチSW7を接続している。
【0019】
また、主変速レバーポジションセンサSE1(走行無段変速装置15変速用の主変速レバー17の操作位置を検出する)、刈取変速モータ位置検出センサSE2(刈取無段変速装置19変速用の刈取変速モータ37の変速位置を検出する)、車速センサSE3、刈取搬送部8の回転数を検出する刈取回転数検出センサSE4、刈取・脱穀クラッチセンサSE5、層厚センサSE6を接続している。
【0020】
また、コントローラ35の出力側には駆動手段を介して刈取変速モータ37、走行無段変速装置15の増速変速用バルブ38、走行無段変速装置15の減速変速用バルブ39、モニタ表示装置40、アクセル開リレー42、アクセル閉リレー43を接続している。
【0021】
次に、コンバインの刈取搬送部8の変速制御内容について説明する。
このコンバインの変速制御装置は、刈取搬送部8の駆動速度と車体の走行速度を別々に変速できるコンバインにおいて、刈取搬送部8の刈取自動変速の入切を指定する刈取自動変速入切スイッチSW1を備えている。そして、刈取自動変速入切スイッチSW1を切り指定にした際には、主変速レバー17の操作位置に応じた駆動速度になるように走行無段変速装置15及び刈取無段変速装置19を変速し、走行速度に応じた刈取変速を停止する。
【0022】
また、刈取自動変速入切スイッチSW1を入り指定にした際には、主変速レバー17の操作位置に応じて走行無段変速装置15及び刈取無段変速装置19を変速設定し、所定時間後に刈取変速モータ位置検出センサSE2の検出値が設定値より低いときには、走行無段変速装置15を刈取速度に対応するように減速変速する。また、検出値が設定値より高いときには、走行無段変速装置15の刈取速度に応じた減速変速を停止する。
【0023】
前記構成によると、刈取自動変速入切スイッチSW1を入り指定にした際には、刈取搬送部8の刈取駆動速度が低いときには走行無段変速装置15を減速変速するので、停止から走行を開始した低速走行中の刈取開始時において、走行速度を適正化し、刈取搬送部8の駆動遅れによる刈取穀稈の踏み倒しによる穀稈の姿勢不良を回避できる。また、刈取搬送部8の穀稈搬送量の増大時において、刈取搬送部8の駆動効率不良による駆動速度低下時には、刈取駆動速度に対応するように車速を遅くすることができ、刈取負荷に応じた車速を自動的に設定し、穀稈の詰りによる機械の破損を防止し、耐久性及び刈取作業精度の向上を図ることができる。
【0024】
また、前記変速制御において、刈取上昇時自動停止スイッチSW2を切りにし、刈取搬送部8の上昇時に刈取駆動を自動停止させる機能が作動しない状態では、主変速レバー17の操作位置に応じて走行無段変速装置15及び刈取無段変速装置19を変速設定し、所定時間後に刈取無段変速装置19の駆動速度が所定値より低速の場合には、刈取駆動速度に応じた走行駆動速度になるように走行無段変速装置19を変速設定するようにしている。
【0025】
また、刈取上昇時自動停止スイッチSW2が入りの場合には、刈取変速モータ位置検出センサSE2の検出値が設定値より低いときには、主変速レバーポジションセンサSE1の検出値に応じて走行無段変速装置15及び刈取無段変速装置19を変速設定し、所定時間後に走行無段変速装置15を刈取速度に応じた速度に変速設定する。また、検出値が設定値より高いときには、刈取無段変速装置19の変速を停止するようにしている。
【0026】
このように構成すると、低速走行時に刈取無段変速装置19の駆動速度に応じて走行無段変速装置15の駆動速度を設定して、コンバインの畔際での旋回の都度、刈取搬送部8の駆動を手動操作により入切する必要もなく、刈取搬送部8の昇降に応じて駆動の入切が可能となり、旋回時の操作を簡単にすることができる。
【0027】
また、操縦部4の座席にオペレータが座った状態で例えば左足で操作できる位置に掻込ぺダル(図示省略)を設け、この掻込ぺダルを踏み込み操作し掻込ぺダルスイッチSW3を入りにすると、主変速レバー17が中立位置にあっても、コントローラ35の指令により予め設定した所定速度で刈取無段変速装置19を駆動し、刈取搬送部8を駆動するようにしている。
【0028】
前記構成によると、低速走行時に刈取無段変速装置19の駆動速度に応じて走行無段変速装置15の駆動速度を設定しながら、走行停止時に掻込ぺダルを操作すると、刈取搬送部8を所定速度で駆動し、刈取搬送部8の穀稈の引越、切断、搬送作用を円滑に行なうことができる。
【0029】
次に、コントローラ35の他の制御内容について説明する。
刈取搬送部8変速用の刈取無段変速装置19、車体の走行速度変速用の走行無段変速装置15、及び、制御用のコントローラ35を備え、刈取・脱穀クラッチレバーのクラッチ入切検出用の刈取・脱穀クラッチセンサSE5、刈取上昇時自動停止スイッチSW2(刈取搬送部8が所定高さより高い非作業高さに上昇すると、刈取搬送部8の駆動を自動停止させる)、刈取増速スイッチSW4、刈取減速スイッチSW5、走行停止時刈取調整回転スイッチSW6を設けたコンバインにおいて、刈取・脱穀クラッチセンサSE5の刈取・脱穀クラッチ入り検出状態で、走行停止時刈取調整回転スイッチSW6をONすると、走行停止状態で刈取無段変速装置19を所定回転数で回転させる走行停止時刈取調整運転モードに移行する。
【0030】
この走行停止時刈取調整運転モードでは、刈取無段変速装置19の回転数を刈取増速スイッチSW4、刈取減速スイッチSW5の操作により、例えば10段階の目標回転数を設定することができる。
【0031】
また、前記走行停止時刈取調整運転モードにおいて、前記刈取上昇時自動停止スイッチSW2をONにすると、刈取搬送部8が非作業位置へ上昇すると、刈取無段変速装置19の駆動を停止して刈取搬送部8を停止し、モニタ表示装置40に「刈取搬送部上昇による刈取停止中」である旨を表示するようにしている。
【0032】
なお、図4はその制御フローチャートである。
前記構成によると、走行停止時刈取調整運転モードにおいて、刈取搬送部8の上昇状態には脱穀部5及び刈取搬送部8を所定速度で駆動したり、あるいは、刈取搬送部8の駆動を停止させることができ、脱穀部5及び刈取搬送部8の作業状態に対応させた駆動にすることができる。
【0033】
また、走行停止時刈取調整運転モードにおいて、刈取上昇時自動停止スイッチSW2をONした刈取搬送部8の上昇時刈取停止中には、モニタ表示装置40に「刈取搬送部の上昇により駆動停止中」である旨を表示するので、オペレータは運転状態を認識しながら安心して作業を進めることができる。
【0034】
また、掻込ぺダルを踏み込み掻込ぺダルスイッチSW3のON状態において、前記刈取上昇時自動停止スイッチSW2がONすると、モニタ表示装置40装置に「刈取搬送部を下降させてください」と表示するようにしている。また、刈取・脱穀クラッチレバーを脱穀クラッチ入り状態、あるいは、刈取クラッチ及び脱穀クラッチの切り状態では、「刈取・脱穀クラッチレバーをクラッチ入り位置に操作してください」と表示するようにしている。また、主変速レバー17が「中立位置」以外のときには、「走行無段変速装置を中立にしてください」と表示し、ブザーにより警報するようにしている。
【0035】
図5に示すように、走行停止時刈取調整運転モードにおいて、掻込ぺダルスイッチSW3がONすると(ステップS11)、掻込ぺダルスイッチSW3のON状態における刈取無段変速装置19の駆動停止条件の有無が判定される(ステップS12)。即ち、刈取上昇時自動停止スイッチSW2がONして停止条件ありの場合には、モニタ表示装置40に「刈取搬送部を下降させてください」と表示する(ステップS13)。
【0036】
また、刈取・脱穀クラッチレバーを脱穀クラッチ入り状態、あるいは、刈取クラッチ及び脱穀クラッチ切り状態のときには、「刈取・脱穀クラッチレバーを刈取・脱穀クラッチ入り位置にしてください」と表示する(ステップS13)。また、主変速レバー17が「中立位置」以外のときには、「走行無段変速装置を中立位置に操作してください」と表示し(ステップS13)、ブザーにより警報する(ステップS14)。
【0037】
前記構成によると、走行停止時刈取調整運転モードにおいて、刈取搬送部の上昇時駆動自動停止が作動して刈取搬送部8が駆動されないときには、モニタ表示装置40に駆動されない理由を表示するので、オペレータが刈取搬送部8の駆動停止の理由を知ることができ、後続の操作を楽に行なうことができる。
【0038】
次に、コンバインの省エネ運転制御について説明する。
このコンバインには、アクセル制御装置を備え、省エネアクセルスイッチSW7を入りにすると本制御が開始される。本制御は、移動走行モードでは主変速レバー17の増減速操作に応じてエンジン回転数を増減調節する。また、刈取作業時や籾排出作業の作業モードでは、エンジン回転数を定格回転数に保ち、また、停車時にはエンジン回転数を所定の低い回転数に保持するようにしている。しかして、各作業状態に応じて効率良くエンジン出力をするようにアクセルレバーを動かすようにしている。
【0039】
このような省エネ運転制御機能を備え、脱穀部5の揺動選別棚32上には被選別物の層厚を検出する層厚センサSE6を設けたコンバインにおいて、図6に示すように、層厚センサSE6が揺動選別棚32上の被選別物の検出を開始し、被選別物がある状態(A時点)から被選別物がなくなったことを検出すると(B時点)、所定時間後のC時点になると、省エネ運転モードにおけるエンジンEを定格回転数で回転している作業モードから走行モードに自動的に切り換え、主変速レバー17の増減速操作に応じてエンジンEの回転数を増減調節するうにしている。
【0040】
また、上昇位置にある刈取搬送部8が下降し作業高さ以下になると、走行モードから作業モードに自動的に変更するようにしている。
なお、前記層厚センサSE6に代えて、刈取搬送部8の刈取穀稈有無センサ(図示省略)が刈取穀稈の無し検出をした時から所定時間経過すると、省エネ運転モードにおける作業モードから走行モードに自動的に切り換えるように構成してもよい。
【0041】
前記構成によると、省エネ運転モードの作業モードにおいて層厚センサSE6が揺動選別棚32上の被選別物がなくなったことを検出すると、所定時間後に作業モードから走行モードに自動的に切り換わるので、エンジンEの回転数を低くした省エネ運転をすることができ、燃料消費量を節約することができる。また、刈取搬送部8が非作業高さから作業高さに下降すると、走行モードから作業モードに自動的に復帰し、エンジン回転数を定格回転数に復帰させるので、操作を簡単化しながら円滑に作業を進めることができる。
【0042】
また、刈取・脱穀クラッチレバーをクラッチ入り位置に操作した場合に、揺動選別棚32上に被選別物がなく、且つ、刈取搬送部8が非作業高さにある場合には、省エネ運転モードにおける作業モードにせずに走行モードにするようにすると、エンジンEの回転数を低速回転にし省エネ運転をすることができる。
【0043】
次に、他の実施例について説明する。
図7に示すように、刈取作業が開始されるA時点から層厚センサSE6により停止状態の揺動選別棚32上の被選別物の層厚検出を開始し、順次層厚の増加が検出される。そして、基準層厚を検出したB時点になると揺動選別棚32の揺動、唐箕27、第2唐箕29の回転、及び、揺動選別棚32のシーブの開調節するようにしている。
【0044】
次いで、層厚センサSE6が基準層厚以上を検出しているB時点からC時点までの間、及び、C時点から層厚検出が順次減少し層厚無しを検出するD時点までは、揺動選別棚32の揺動、唐箕27、第2唐箕29の回転及びシーブの開調節を継続する。そして、層厚無し検出したD時点になると、揺動選別棚32の揺動、唐箕27、第2唐箕29の回転を停止し、シーブの閉調節をする。次いで、D時点から所定時間経過すると、刈取・脱穀クラッチを切り脱穀部5の他の部分の駆動も停止するようにしている。
【0045】
前記構成によると、揺動選別棚32の被選別物が所定層厚になると、揺動選別棚32の揺動、唐箕27、第2唐箕29の回転を開始し、揺動選別棚32のシーブを開調節して揺動選別作業を開始するので、省エネ運転をすることができ、揺動選別棚32の選別精度を高めることができる。
【0046】
次に、図8に基づき他の制御構成について説明する。
車両制御用コントローラとエンジン制御用コントローラとを備え、エンジン制御用コントローラから車両制御用コントローラに通信によりエンジン負荷率を送信可能なコンバインにおいて、エンジン負荷率が所定値以下の場合には、モニタ表示装置40に走行無段変速装置操作用の主変速レバー17を増速操作するようにメッセイジを表示し、オペレータに走行増速を促す。次いで、所定時間経過してもオペレータが走行増速をしない場合には、作業に支障のない範囲でアクセル閉リレー43を駆動してアクセルレバー(図示省略)を閉調節し、エンジンEの回転数を絞るようにしている。
【0047】
図8に示すように、エンジンEの負荷変動の履歴から負荷率のヒステリシス幅44を設定しておく。エンジン負荷率の変動状態を測定し、高負荷率Aから負荷率が順次低下し、ヒステリアス幅4の下限値を超え所定時間経過し低負荷率Bに検出すると、モニタ表示装置40に主変速レバー17を増速操作するようにとのメッセイジを表示する。そして、所定時間経過してもエンジン負荷率が上昇しない場合には、アクセル閉リレー43を駆動してアクセルレバーを閉調節し、エンジン負荷率を上昇させる。そして、エンジン負荷率が上昇しヒステリシス幅44の上限値を越えた高負荷率になると、アクセル閉リレー43による閉調節を停止し、所定の高負荷率を維持するようにしている。
【0048】
また、非作業の走行中にはオペレータに主変速レバー17の増速操作を促すメッセイジ表示をすると共に、アクセル閉リレー43を駆動してアクセルレバーを閉調節し、エンジン回転数を絞るように制御する。
【0049】
前記構成によると、エンジンEの余分な高速回転を回避し省エネ運転をすることができる。
【符号の説明】
【0050】
2 走行装置
5 脱穀部
8 刈取搬送部
15 走行無段変速装置
17 主変速レバー
19 刈取無段変速装置
35 コントローラ
37 刈取変速モータ
SW1 刈取自動変速入切スイッチ
SW2 刈取上昇時自動停止スイッチ
SW3 掻込操作スイッチ
SW4 刈取増速スイッチ
SW5 刈取減速スイッチ
SW6 刈取調整回転スイッチ
SE1 主変速レバーポジションセンサ
SE2 刈取変速モータ位置検出センサ
SE5 刈取・脱穀クラッチセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(2)変速用の走行無段変速装置(15)と、該走行無段変速装置(15)を手動変速する主変速レバー(17)と、刈取搬送部(8)変速用の刈取無段変速装置(19)と、該刈取無段変速装置(19)変速用の刈取変速モータ(37)と、前記主変速レバー(17)の変速操作位置検出用の主変速レバーポジションセンサ(SE1)と、前記刈取変速モータ(37)の変速位置検出用の刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)と、刈取・脱穀クラッチ入切検出用の刈取・脱穀クラッチセンサ(SE5)と、走行無段変速装置(15)と刈取無段変速装置(19)とを関連的に変速制御する走行刈取関連変速制御の入切を指定する刈取自動変速入切スイッチ(SW1)と、刈取搬送部(8)の非作業高さへの上昇時に刈取駆動を自動的に停止させる刈取上昇時駆動停止制御の入切を指定する刈取上昇時自動停止スイッチ(SW2)と、刈取無段変速装置(19)増減変速用の刈取増速スイッチ(SW4)、刈取減速スイッチ(SW5)と、走行停止時における刈取搬送部(8)を駆動させる刈取調整回転スイッチ(SW6)を備え、前記刈取自動変速入切スイッチ(SW1)を切り指定にした際には、前記主変速レバーポジションセンサ(SE1)の検出値に応じて走行無段変速装置(15)を変速すると共に、刈取無段変速装置(19)を走行変速に同調した駆動設定として刈取無段変速装置(19)の変速を停止し、前記刈取自動変速入切スイッチ(SW1)を入り指定にした際には、前記主変速レバーポジションセンサ(SE1)の検出値に応じて走行無段変速装置(15)及び刈取無段変速装置(19)を変速設定し、所定時間後に刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)の検出値が設定値より低いときには、刈取無段変速装置(19)の刈取駆動速度に応じた走行駆動速度になるように走行無段変速装置(15)を減速変速し、また、所定時間後に刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)の検出値が設定値より高いときには、刈取無段変速装置(19)の刈取駆動速度に応じた走行無段変速装置(15)の変速を停止し、且つ、前記刈取・脱穀クラッチセンサ(SE5)の刈取・脱穀クラッチ入り検出状態で、前記走行停止時刈取調整回転スイッチ(SW6)を入りにすると、走行停止状態で刈取無段変速装置(19)を所定回転数で回転させる走行停止時刈取調整運転モードに移行し、刈取増速スイッチ(SW4)と刈取減速スイッチ(SW5)の操作により刈取無段変速装置(19)の回転数を増減設定するコントローラ(35)を備えたことを特徴とするコンバインの変速制御装置。
【請求項2】
前記刈取・脱穀クラッチセンサ(SE5)の刈取・脱穀クラッチ入り検出状態で、前記走行停止時刈取調整回転スイッチ(SW6)を入りにした前記走行停止時刈取調整運転モードでは、前記刈取上昇時自動停止スイッチ(SW2)が入りになると、刈取無段変速装置(19)の駆動を停止し、モニタ表示装置(40)に刈取搬送部上昇による駆動停止中である旨を表示するコントローラ(35)を備えたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの変速制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−109978(P2011−109978A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270244(P2009−270244)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】