説明

コンバインの変速制御装置

【課題】
コンバインの発進時における刈取搬送部の駆動変速を適正化し、刈取作業を円滑に行なえるものとする。
【解決手段】
刈取自動変速入切スイッチ(SW1)を入りにすると、主変速レバーポジションセンサ(SE1)の検出値に応じて走行無段変速装置(15)及び刈取無段変速装置(19)の変速設定をし、所定時間後に刈取変速モータ位置検出センサSE2の検出値が設定値より低いときには、刈取無段変速装置(19)の刈取駆動速度に応じて走行無段変速装置(15)を減速変速する。また、検出値が設定値より高いときには、刈取無段変速装置(19)の駆動速度に応じた走行無段変速装置(15)の変速を停止するコントローラ(35)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの変速制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインにおいて、走行装置の走行速度を無段階に変速する走行無段変速装置、収穫作業装置の作動速度を無段階に変速する作業用無段変速装置、及び、変速用制御手段が設けられ、変速用制御手段が、走行変速用操作具が中立位置から走行用不感帯を越えて走行出力開始位置になると出力を開始し、それから更に高速側に操作されるほど高速変速状態となるように走行用無段変速装置を変速操作し、及び、走行変速用操作具が中立位置から作業用不感帯を越えて作業出力開始位置になると出力を開始し、それから更に高速側に操作されるほど高速変速状態となるように作業用無段変速装置を変速操作する形態で、且つ、作業出力開始位置を走行出力開始位置よりも中立位置側として、走行用無段変速装置及び作業用無段変速装置を変速操作するようにしたものは、公知である(特許文献1)。
【0003】
また、機体の走行が停止したとき、穀稈の刈り取りと搬送をする前処理部の駆動を停止させる機能と前処理部が所定の高さまで上昇したときに、前処理部の駆動を停止させる機能を備えたコンバインにおいて、このコンバインに強制掻き込みスイッチを設け、強制掻き込みスイッチを入り操作したときに、機体の走行をもしくは前処理部の上昇にかかわらず、前処理部を駆動させるように構成したコンバインは、公知である(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3756140号公報
【特許文献2】特許第3756120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の技術では、変速用制御手段が、走行変速用操作具が中立位置から走行用不感帯を越えて走行出力開始位置になると出力を開始し、それから更に高速側に操作されるほど高速変速状態となるように走行用無段変速装置を変速操作し、また、走行変速用操作具が中立位置から作業用不感帯を越えて作業出力開始位置になると出力を開始し、それから更に高速側に操作されるほど高速変速状態となるように作業用無段変速装置を変速操作する形態であるので、走行停止状態から走行開始状態になった作業開始時の低速走行状態では、作業無段変速装置の低速駆動や駆動の遅れにより刈取穀稈に対する作業速度が不足したり、また、作業部の穀稈搬送量の増大時に、作業部の駆動効率不良による駆動速度低下が発生するような不具合が発生することがあった。
【0006】
そこで、本発明はこのような不具合を解消し、低速走行状態でも作業部の駆動速度を適正化しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、このような従来技術のもつ問題点を解決するために、次の技術的手段を講じた。
請求項1記載の発明は、走行装置(2)変速駆動用の走行無段変速装置(15)と、該走行無段変速装置(15)を手動で変速操作する主変速レバー(17)と、該主変速レバー(17)の変速操作位置検出用の主変速レバーポジションセンサ(SE1)と、刈取搬送部(8)変速駆動用の刈取無段変速装置(19)と、該刈取無段変速装置(19)変速作動用の刈取変速モータ(37)と、該刈取変速モータ(37)の変速作動位置を検出する刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)とを備えたコンバインにおいて、前記走行無段変速装置(15)と刈取無段変速装置(19)とを関連させて変速制御する走行刈取関連変速制御の入切を指定する刈取自動変速入切スイッチ(SW1)を設け、該刈取自動変速入切スイッチ(SW1)を切り指定にした場合に、前記主変速レバーポジションセンサ(SE1)の検出値に応じて前記走行無段変速装置(15)を変速駆動して、刈取無段変速装置(19)の変速駆動を停止し、前記刈取自動変速入切スイッチ(SW1)を入り指定にした際には、前記主変速レバーポジションセンサ(SE1)の検出値に応じて前記走行無段変速装置(15)及び刈取無段変速装置(19)を変速駆動し、所定時間後に刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)の検出値が設定値よりも低いときには、前記刈取無段変速装置(19)の刈取駆動速度に応じた走行駆動速度になるように走行無段変速装置(15)を減速し、また、所定時間後に刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)の検出値が設定値よりも高いときには、刈取無段変速装置(19)の刈取駆動速度に応じた走行無段変速装置(15)の変速を停止するコントローラ(35)を備えたことを特徴とするコンバインの変速制御装置とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1の発明において、前記刈取搬送部(8)の上昇時に刈取駆動を自動停止させる制御を入切する刈取自動停止スイッチ(SW2)を設け、該刈取自動停止スイッチ(SW2)を入りにすると、刈取搬送部(8)の上昇時における刈取駆動の自動停止を実行し、且つ、前記刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)の検出値が設定値よりも高いときには、前記刈取自動変速入切スイッチ(SW1)が切り状態と同様の変速制御をし、また、刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)の検出値が設定値よりも低いときには、前記刈取自動変速入切スイッチ(SW1)が入り状態と同様の変速制御をするコントローラ(35)を備えたことを特徴とするコンバインの変速制御装置とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1の発明において、掻込操作具により入切することのできる掻込操作スイッチ(SW3)を設け、該掻込操作スイッチ(SW3)が入り状態である場合には、前記主変速レバー(17)が中立位置にあっても、予め設定した所定速度で前記刈取無段変速装置(19)を駆動し、前記走行無段変速装置(15)の駆動を停止するコントローラ(35)を備えたことを特徴とするコンバインの変速制御装置とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によると、刈取自動変速入切スイッチ(SW1)を入り指定にした際に、刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)の検出値が設定値よりも低いときには、刈取無段変速装置(19)の刈取駆動速度に追従するように所定の減速基準に基づき走行無段変速装置(15)を減速するので、走行停止状態から走行を開始した低速走行での刈取開始時には、刈取搬送部(8)の駆動遅れによる刈取穀稈の踏み倒しによる穀稈の姿勢不良を回避し、また、刈取搬送部(8)の穀稈搬送量の増大時に、刈取搬送部(8)の駆動効率不良による駆動速度低下が発生すると、車速を遅くすることができ、刈取負荷に応じた走行速度を自動的に設定し、穀稈の詰りによる機械の破損を防止し、耐久性及び刈取作業精度の向上を図ることができる。
【0011】
請求項2記載の発明によると、請求項1の発明の効果に加えて、コンバインの畦際での旋回走行の都度、刈取搬送部(8)の駆動を手動操作により入切する必要もなく、刈取搬送部(8)の昇降に応じて駆動の入切をすることができ、旋回時の操作を簡単にすることができる。
【0012】
請求項3記載の発明によると、請求項1の発明の効果に加えて、走行停止時の掻込操作スイッチ(SW3)の入り状態では、刈取無段変速装置(19)を所定速度で駆動し、刈取搬送部(8)で穀稈の引起し、切断及び搬送を円滑に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの伝動展開図である。
【図4】制御ブロック図である。
【図5】制御フローチャート図である。
【図6】制御フローチャートである。
【図7】制御フローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に示すこの発明の実施例について説明する。
まず、本発明を備えたコンバインの全体構成について説明する。図1及び図2に示すように、コンバイン1の走行車体2の下方には、左右一対のクローラ走行装置3,3を配設し、走行車体2上には、右側前部に操縦部4を、操縦部4の後方にグレンタンク6を、左側前部に脱穀部5を、脱穀部5及びグレンタンク6の後方に排稾処理装置7をそれぞれ配設している。操縦部4及び脱穀部5の前方には、植立穀稈を分草引起しながら刈り取り後方の脱穀部5に向けて搬送する刈取搬送部8を昇降自在に設けている。
【0015】
次に、図3に基づきコンバインの伝動構成について説明する。
エンジンEの左右一側の出力軸11から排出伝動装置12を経由して穀粒排出装置13を駆動し、グレンタンク6の穀粒を排出するようにしている。また、左右他側の出力軸11から走行ベルト伝動装置14を経て静油圧式の走行無段変速装置15に動力を伝達し、走行無段変速装置15を主変速レバー17(図1に示す)で手動変速した走行動力をミッションケース16内の走行伝動装置を経由して左右クローラ走行装置2,2に伝達している。
【0016】
また、左右他側の出力軸11から刈取・脱穀伝動装置18を経由して刈取搬送部8駆動用の静油圧式の刈取無段変速装置19へ動力を伝達している。しかして、刈取無段変速装置19で変速された刈取動力が刈取伝動ケース8aの刈取出力軸8bを経て刈取搬送部8の刈取入力軸20に入力され、刈取無段変速装置19で変速された動力により刈取搬送部8の穀稈引起し装置、刈刃装置、穀稈搬送装置等が駆動される。また、刈取伝動ケース8aのフィードチエン出力軸8cを経て脱穀部5のフィードチエン21に動力が伝達されるように構成している。
【0017】
また、刈取・脱穀伝動装置18の下手側から脱穀伝動装置22に脱穀動力を分岐し、この脱穀伝動装置22を経由して脱穀部5の排稾搬送装置23、二番処理胴24、排塵処理胴25、扱胴26、唐箕27、一番揚穀装置28、第2唐箕29、二番揚穀装置30、排塵ファン31、揺動選別棚32及び排稾処理装置7へ動力を伝達している。
【0018】
次に、コンバインのクローラ走行装置3,3と刈取搬送部8の回転変速制御構成について説明する。
コントローラ35の入力側には、センサ類及びスイッチを接続している。刈取自動変速入切スイッチSW1(走行速度と刈取駆動速度とを関連的に変速する変速制御の入切をする)、刈取自動停止スイッチ(刈取搬送部8が所定高さ以上に上昇すると刈取搬送部8の駆動を自動停止する制御を停止する)SW2、掻込ぺダルスイッチSW3、刈取無段変速装置19増速用の刈取増速スイッチSW4、刈取無段変速装置19減速用の刈取減速スイッチSW5を接続している。
【0019】
また、主変速レバーポジションセンサSE1(走行無段変速装置15変速用の主変速レバー17の操作位置を検出する)、刈取変速モータ位置検出センサSE2(刈取無段変速装置19変速用の刈取変速モータ37の変速位置を検出する)、車速センサSE3、刈取搬送部8の回転数を検出する刈取回転数検出センサSE4を接続している。
【0020】
また、コントローラ35の出力側には駆動手段を介して刈取変速モータ37、走行無段変速装置15の増速変速用バルブ38、走行無段変速装置15の減速変速用バルブ39を接続している。
【0021】
次に、コンバインの刈取搬送部8の変速制御内容について説明する。
このコンバインの変速制御装置は、刈取搬送部8の駆動速度と機体の走行速度を別々に変速できるコンバインにおいて、刈取搬送部8の刈取自動変速の入切を指定する刈取自動変速入切スイッチSW1を備えている。そして、刈取自動変速入切スイッチSW1を切り指定にした際には、主変速レバー17の操作位置に応じた駆動速度になるように走行無段変速装置15及び刈取無段変速装置19を変速し、走行速度に応じた刈取変速を停止する。
【0022】
また、刈取自動変速入切スイッチSW1を入り指定にした際には、主変速レバー17の操作位置に応じて走行無段変速装置15及び刈取無段変速装置19を変速設定し、所定時間後に刈取変速モータ位置検出センサSE2の検出値が設定値より低いときには、走行無段変速装置15を刈取速度に応じた減速変速する。また、検出値が設定値より高いときには、走行無段変速装置15の刈取速度に応じた減速変速を停止する。
【0023】
前記構成によると、刈取自動変速入切スイッチSW1を入り指定にした際には、刈取搬送部8の刈取駆動速度が低いときには走行無段変速装置15を減速変速するので、停止から走行を開始した低速走行中の刈取開始時において、走行速度を適正化し、刈取搬送部8の駆動遅れによる刈取穀稈の踏み倒しによる穀稈の姿勢不良を回避できる。また、刈取搬送部8の穀稈搬送量の増大時において、刈取搬送部8の駆動効率不良による刈取搬送部8の駆動速度低下時には、刈取駆動速度に対応するように車速を遅くすることができ、刈取負荷に応じた車速を自動的に設定し、穀稈の詰りによる機械の破損を防止し、耐久性及び刈取作業精度の向上を図ることができる。
【0024】
また、前記変速制御において、刈取自動停止スイッチSW2を切りにし、刈取搬送部8の上昇時に刈取搬送部8の駆動を自動停止させる機能が作動しない状態では、主変速レバー17の操作位置に応じて走行無段変速装置15及び刈取無段変速装置19を変速設定し、所定時間後に刈取無段変速装置19の駆動速度が低速の場合には、刈取駆動速度に応じた走行駆動速度になるように走行無段変速装置19を変速設定するようにしている。
【0025】
また、刈取自動停止スイッチSW2が入りの場合には、刈取変速モータ位置検出センサSE2の検出値が設定値より低いときには、主変速レバーポジションセンサSE1の検出値に応じて走行無段変速装置15及び刈取無段変速装置19を変速設定し、所定時間後に走行無段変速装置15を刈取速度に応じた変速速度に設定する。また、検出値が設定値より高いときには、刈取無段変速装置19の変速を停止するようにしている。
【0026】
このように構成すると、低速走行時に刈取無段変速装置19の駆動速度に応じて走行無段変速装置15の駆動速度を設定しながら、コンバインの畔際での旋回の都度、刈取搬送部8の駆動を手動操作により入切する必要もなく、刈取搬送部8の昇降に応じて駆動の入切が可能となり、旋回時の操作を簡単にすることができる。
【0027】
また、操縦部4の座席にオペレータが座った状態で例えば左足で操作できる位置に掻込ぺダル(図示省略)を設け、この掻込ぺダルを踏み込み操作し掻込ぺダルスイッチSW3を入りにすると、主変速レバー17が中立位置にあっても、コントローラ35により予め設定した所定駆動速度で刈取無段変速装置19を駆動し、刈取搬送部8を駆動するように構成している。
【0028】
前記構成によると、低速走行時に刈取無段変速装置19の駆動速度に応じて走行無段変速装置15の駆動速度を設定しながら、走行停止時に掻込ぺダルを操作すると、刈取搬送部8を所定速度で駆動し、刈取搬送部8の穀稈の引越、切断、搬送作用を円滑に行なうことができる。
【0029】
次に、図5のフローチャートについて説明する。
刈取自動変速入切スイッチSW1が入りか否かを判定し(ステップS51)、切りであると、主変速レバーポジションセンサSE1の検出値に応じて走行無段変速装置15及び刈取無段変速装置19の駆動設定をし、刈取無段変速装置19の変速を停止設定にする(ステップS52)。
【0030】
また、刈取自動変速入切スイッチSW1が入りであると、掻込ぺダルスイッチSW3の入切を判定し(ステップS53)、入りであると、「設定値/主変速レバーポジションセンサSE1の検出値」に応じて刈取無段変速装置19を駆動設定し、走行無段変速装置15の駆動を停止設定にする(ステップS54)。次いで、刈取無段変速装置19の駆動/停止を判定し(ステップS55)、駆動中であると、前記ステップS54に戻り、また、停止であれば、前記ステップS51に戻る。
【0031】
また、掻込ぺダルスイッチSW3の入切を判定し(ステップS53)、切りであると、刈取自動停止スイッチSW2の入切を判定し(ステップS56)、切りであると、主変速レバーポジションセンサSE1の検出値に応じて走行無段変速装置15及び刈取無段変速装置19の変速設定をし、所定時間後に刈取無段変速装置19の刈取駆動速度に応じた走行駆動速度になるように走行無段変速装置15を変速設定する(ステップS57)。
【0032】
また、刈取自動停止スイッチSW2の入切を判定し(ステップS56)、入りであると、刈取変速モータ位置検出センサSE2の検出値が設定値より高いか低いかを判定し(ステップS58)、検出値が設定値より低いと、前記ステップS57に移行する。また、検出値が設定値より高いときには、前記ステップS52に移行する。
【0033】
なお、掻込ぺダルは例えば操縦部4のオペレータの左足で操作できる位置に配設されていて、掻込ぺダルを踏み込み、掻込ぺダルスイッチSW3をONすると、走行停止時にも刈取搬送部8が駆動され、穀稈引起し装置、刈刃装置、穀稈搬送装置を駆動するように構成している。
【0034】
次に、図6に基づきコンバインの変速制御の他の実施例について説明する。
このコンバインの変速制御装置は、刈取無段変速装置19により刈取搬送部8の駆動速度を変速し、走行無段変速装置15により機体の走行速度を変速し、刈取無段変速装置19の駆動速度を刈取変速モータ37で変速できるようにしたコンバインにおいて、車速センサSE3を設け、刈取・脱穀クラッチレバーのクラッチ入り操作により、車速に応じて刈取搬送部8の刈取回転数を変速設定すべくコントローラ35から前記刈取変速モータ37に制御出力するにあたり、車速センサSE3が停止状態から走行開始から走行増速検出をすると、これに応じて刈取変速モータ37に刈取増速出力をし、刈取搬送部8の刈取回転数検出センサSE4が目標回転数に到達あるいは目標回転数を超過した場合には、所定時間にわたり減速変速出力をしないようにして当該駆動回転数を維持し、所定時間経過後に減速変速出力をし、目標回転数になると回転数変速を停止するようにしている。
【0035】
コンバインの停止状態から走行を開始した低速走行時には、刈取回転数の変速制御のハンチング作動により、刈取搬送部8の駆動が停止したり、あるいは、駆動開始したりを繰り返す場合があり、刈取回転数が安定しない不具合が発生する。しかし、前記構成によると、停止状態からの低速走行が安定するまでは、刈取搬送部8の回転数を所定刈取回転数に維持するので、このような不具合を回避することができる。
【0036】
また、前記低速走行時の刈取回転数の制御において、車速センサSE3が停止状態から走行開始検出に基づき刈取変速モータ37に増速変速出力をし、刈取搬送部8の回転数が目標回転数に到達あるいは目標回転数を超過する場合において、刈取変速モータ37への減速出力中に車速センサSE3及び刈取回転数検出センサSE4の検出値に基づき更に刈取回転数の減速指令を出力するときには、所定時間にわたり回転数を増速した後に減速制御し、目標回転数になると回転数変速を停止するようにしている。
【0037】
前記構成によると、刈取無段変速装置19変速用の刈取変速モータ37を回転数減速変速終端付近で敢えて増速変速することで、ハンチング的に刈取回転数の増減を行い、低速走行時の刈取無段変速装置19の回転を維持し、刈取搬送部8の刈取回転の停止を回避することができる。
【0038】
また、前記低速走行時の刈取変速制御において、刈取回転数が安定し、その所定時間経過後に減速変速出力をするにあたり、通常の回転数減速変速出力よりも遅い減速変速出力をし、徐々に減速するようにしている。急激な回転数の減速変速をすると、刈取搬送部8の回転が停止するような不具合が発生することがある。しかし、前記構成によると、このような不具合を防止することができる。
【0039】
また、前記低速走行時の刈取変速制御において、刈取搬送部8の刈取回転数が安定し、その所定時間後に刈取減速変速出力をするにあたり、刈取変速モータ位置検出センサSE2の検出値が停止位置より所定値刈取回転数の高い側に至った時に、刈取減速変速出力を一時停止し、その所定時間経過後に刈取減速出力をし目標回転数に至るようにしている。
【0040】
しかして、前記構成によると、刈取変速モータ37の停止位置付近での刈取無段変速装置15の回転を安定させ、刈取搬送部8の回転変速制御を安定させ精度を高めることができる。
【0041】
また、前記低速走行時の刈取回転変速制御において、車速センサSE3が所定値以上の走行状態から所定値以下の車速を検出し、更に、主変速レバー17の操作位置が中立位置あるいは後進変速位置を検出したときには、刈取変速モータ37を連続的に減速側に変速して刈取無段変速装置19の駆動を停止し、刈取搬送部8の駆動を停止するようにしている。
【0042】
また、前記刈取搬送部8の停止条件の成立時には、刈取無段変速装置19の制御目標回転数を「0」に設定し、刈取回転数の追従変速制御を停止し、刈取搬送部8の駆動停止制御を確実に行なうようにしている。
【0043】
コンバインの走行停止時には、車速センサSE3の検出遅れに同調して刈取搬送部8の駆動停止が遅れる場合がある。しかし、前記構成によると、前記不具合を回避し、走行停止時にも刈取搬送部8の駆動停止を迅速に追従させることができる。
【0044】
また、前記低速走行時の刈取回転変速制御において、刈取自動変速入切スイッチSW1を入りに指定した場合には、掻込ぺダルの掻込操作を解除し、掻込ぺダルスイッチSW3がOFF状態になっても、刈取搬送部8の駆動が一旦停止するまでは、クローラ走行装置3,3の停止を継続するようにしている。
【0045】
前記構成によると、走行停止時における掻込ぺダルの操作を楽にしながら、刈取搬送部8の駆動継続を容易に行なうことができる。
次に、図6のフローチャートについて説明する。
【0046】
刈取回転数制御が開始されると、車速センサSE3の検出値を読み込み(ステップS1)、停車検出か否かを判定し(ステップS2)、Yesであると、刈取初期回転変速制御を許可する(ステップS3)。Noであると、刈取初期回転変速制御が許可されているか否かを判定する(ステップS4)。Noであると、刈取通常回転変速制御を実行し(ステップS6)、刈取初期回転変速制御を解除する(ステップS7)。また、Yesであると、「車速検出値>所定値」か否かを判定し(ステップS5)、Noであると、前記ステップS6〜7に移行する。また、Yesであると、車速検出値から刈取回転目標値を算出し(ステップS8)、刈取回転数検出センサSE4の検出値を読み込む(ステップS9)。
【0047】
次いで、「刈取目標回転数<検出刈取回転数」か否かを判定し(ステップS10)、Yesであると、刈取回転増速出力をセットし(ステップS11)、刈取減速出力停止時間タイマをセットする(ステップS12)。また、Noであると、「刈取目標回転数>刈取検出回転数」か否かを判定し(ステップS13)、Noであると、ステップS1に戻る。
【0048】
また、Yesであると、各監視タイマのカウントを開始し(ステップS14)、刈取減速出力停止タイマがアップしたか否かを判定し(ステップS15)、Noであると、減速出力(遅い)監視タイマをセットし(ステップS16)、ステップS1に戻る。
【0049】
また、Yesであると、減速出力(遅い)監視タイマがアップしたか否かを判定し(ステップS17)、Yesであると、刈取初期回転変速制御を解除し(ステップS18)、また、Noであると、「刈取変速モータ37の変速位置≦低速限界」か否かを判定し(ステップS19)、Noであると、減速出力停止時間をセットし(ステップS20)、刈取減速出力(遅い)をセットする(ステップS21)。
【0050】
また、Yesであると、刈取減速出力停止タイマがアップしたか否かを判定し(ステップS22)、Noであると、刈取強制増速出力タイマをセットし(ステップS23)、ステップS1に戻る。また、Yesであると、刈取強制増速出力タイマがアップしたか否かを判定し(ステップS24)、YesであるとステップS1に戻り、Noであると、刈取増速出力をセットし(ステップS25)、ステップS1に戻る。
【0051】
次に、図7のフローチャートについて説明する。
刈取回転数制御が開始されると、車速センサSE3の検出値を読み込み(ステップS31)、刈取搬送部8の上昇時あるいは車体後進走行時において刈取搬送部8の駆動を自動停止する刈取自動停止制御が許可されているか否かを判定する(ステップS32)。Noであると、車速センサSE3が走行検出をしているか否かを判定し(ステップS33)、Yesであると、刈取搬送部8の上昇時刈取自動停止制御を許可し(ステップS34)、刈取搬送部8を所定回転数で回転する刈取回転通常制御を実行する(ステップS37)。
【0052】
また、刈取自動停止制御が許可されているか否かを判定し(ステップS32)、Yesであると、「車速検出値>所定値」か否かを判定し(ステップS35)、Yesであると、刈取回転通常制御を実行する(ステップS37)。また、Noであると、主変速レバー17が前進操作か否かを判定し(ステップS36)、Yesであると、刈取回転通常制御を実行する(ステップS37)。
【0053】
また、Noであると、「刈取変速モータ37の変速位置≦停止位置」か否かを判定し(ステップS38)、Yesであると、刈取自動停止制御を解除し(ステップS39)、また、Noであると、刈取減速出力(速い)をセットし(ステップS40)、ステップS1に戻る。
【符号の説明】
【0054】
2 走行装置
8 刈取搬送部
15 走行無段変速装置
17 主変速レバー
19 刈取無段変速装置
35 コントローラ
37 刈取変速モータ
SW1 刈取自動変速入切スイッチ
SW2 刈取自動停止スイッチ
SW3 掻込操作スイッチ
SE1 主変速レバーポジションセンサ
SE2 刈取変速モータ位置検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(2)変速駆動用の走行無段変速装置(15)と、該走行無段変速装置(15)を手動で変速操作する主変速レバー(17)と、該主変速レバー(17)の変速操作位置検出用の主変速レバーポジションセンサ(SE1)と、刈取搬送部(8)変速駆動用の刈取無段変速装置(19)と、該刈取無段変速装置(19)変速作動用の刈取変速モータ(37)と、該刈取変速モータ(37)の変速作動位置を検出する刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)とを備えたコンバインにおいて、前記走行無段変速装置(15)と刈取無段変速装置(19)とを関連させて変速制御する走行刈取関連変速制御の入切を指定する刈取自動変速入切スイッチ(SW1)を設け、該刈取自動変速入切スイッチ(SW1)を切り指定にした場合に、前記主変速レバーポジションセンサ(SE1)の検出値に応じて前記走行無段変速装置(15)を変速駆動して、刈取無段変速装置(19)の変速駆動を停止し、前記刈取自動変速入切スイッチ(SW1)を入り指定にした際には、前記主変速レバーポジションセンサ(SE1)の検出値に応じて前記走行無段変速装置(15)及び刈取無段変速装置(19)を変速駆動し、所定時間後に刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)の検出値が設定値よりも低いときには、前記刈取無段変速装置(19)の刈取駆動速度に応じた走行駆動速度になるように走行無段変速装置(15)を減速し、また、所定時間後に刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)の検出値が設定値よりも高いときには、刈取無段変速装置(19)の刈取駆動速度に応じた走行無段変速装置(15)の変速を停止するコントローラ(35)を備えたことを特徴とするコンバインの変速制御装置。
【請求項2】
請求項1の発明において、前記刈取搬送部(8)の上昇時に刈取駆動を自動停止させる制御を入切する刈取自動停止スイッチ(SW2)を設け、該刈取自動停止スイッチ(SW2)を入りにすると、刈取搬送部(8)の上昇時における刈取駆動の自動停止を実行し、且つ、前記刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)の検出値が設定値よりも高いときには、前記刈取自動変速入切スイッチ(SW1)が切り状態と同様の変速制御をし、また、刈取変速モータ位置検出センサ(SE2)の検出値が設定値よりも低いときには、前記刈取自動変速入切スイッチ(SW1)が入り状態と同様の変速制御をするコントローラ(35)を備えたことを特徴とするコンバインの変速制御装置。
【請求項3】
請求項1の発明において、掻込操作具により入切することのできる掻込操作スイッチ(SW3)を設け、該掻込操作スイッチ(SW3)が入り状態である場合には、前記主変速レバー(17)が中立位置にあっても、予め設定した所定速度で前記刈取無段変速装置(19)を駆動し、前記走行無段変速装置(15)の駆動を停止するコントローラ(35)を備えたことを特徴とするコンバインの変速制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−92089(P2011−92089A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249074(P2009−249074)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】