説明

コンバインの排藁処理装置

【課題】コンバインの後部に配設された排藁処理装置において、排藁排出口に設けるカバーを、排出される排藁量が増加して堆積し、所定量以上カバー内に堆積すると、自動的にカバーが開いて堆積量許容量を増加させて、排藁切断装置部分で詰まりが発生しない排藁排出口の構造を提案するものである。
【解決手段】コンバイン1の機体後部に排藁処理装置11としてのカッター装置30を配置し、該カッター装置30下部の排藁排出口57の左右一側または両側に排藁案内板55の上部を左右回動自在に枢支し、該枢支部59の上部機体側と排藁案内板55の中途部の間に弾性体56を介装し、排藁案内板55を内側または外側に傾斜するように付勢したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稲や麦等を収穫する自脱型コンバインの後部に装着する排藁処理装置としてのカッター装置下部に設けるカバーの技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機体前部に配置した刈取装置により穀稈を刈り取り、脱穀装置へ搬送して、脱粒後の排稈を機体の後部に配置したカッター装置に搬送して、排稈を所定の長さに切断できるようにしたコンバインにおいて、カッター装置の下部から直接切藁を排出するものは既に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平6−52416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コンバインにより刈取作業を行う場合、圃場への出入り口は傾斜が大きいために刈り取りながら進入することは難しく、圃場の四隅は旋回しながら刈り取ることができないので、これら圃場への出入り口や四隅は予め手作業で刈り取る必要がある。また、曲がった畦等がある場合にもコンバインで畦に沿って走行することができず刈取作業ができない場合があり、このような場合にも残った部分は手で刈り取る必要がある。
このように手で刈り取った穀稈はある程度周囲を刈り取った後やその圃場の刈取が終了後に、手扱き作業により行うが、このときコンバインの走行は停止して行う。しかし、停止して脱穀作業を行う場合、穀稈の量が多い場合には、切断藁の量も多くなり、排藁排出口に排藁が集中して積もって排出口内にも溜まり、排藁がカッター装置等へ巻き付き、絡まり等が発生して、作業が中断してしまう恐れがある。
【0004】
本発明は、以上の不具合を解決すべく、コンバインの後部に配設された排藁処理装置において、排藁排出口に設けるカバーを、排出される排藁量が増加して堆積し、所定量以上カバー内に堆積すると、自動的にカバーが開いて堆積量許容量を増加させて、排藁切断装置部分で詰まりが発生しない排藁排出口の構造を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、コンバインの機体後部に排藁処理装置としてのカッター装置を配置し、該カッター装置下部の排藁排出口の左右一側または両側に排藁案内板の上部を左右回動自在に枢支し、該枢支部の上部機体側と排藁案内板の中途部の間に弾性体を介装し、排藁案内板を内側または外側に傾斜するように付勢したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0008】
即ち、手扱き作業等機体の走行を停止した状態で脱穀作業を行った場合に、排藁排出口下方の排藁の堆積量が増えて排藁案内板上に堆積すると、その排藁の自重により排藁案内板が下方に押されて外側へ回動し、排藁排出口下方の空間を大きく広げることができるようになり、排藁がカッター装置で詰まることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態である自脱型コンバインの全体構成を示す側面図、図2は本発明の一実施例である自脱型コンバインの排藁処理装置の後面図、図3は自脱型コンバインの排藁処理装置の側面図、図4は本発明のねじりバネ及び排藁案内板と排藁排出口との関係を示す後面図、図5は本発明の一実施例である自脱型コンバインの排藁処理装置の排藁案内板が閉じた状態と開いた状態を示す後面図、図6は本発明のねじりバネ及び排藁案内板の斜視図、図7は本発明の一実施例である自脱型コンバインの作業時を示す略後面図で、(a)は排藁量が少ない場合で、(b)は排藁量が多い場合である。
【0010】
まず、自脱型コンバインの全体構成から説明する。
図1において、自脱型コンバイン1は、クローラ式走行装置を備えた左右の走行装置2・2上に機体フレーム3を配置し、該機体フレーム3の前端部に刈取部4が、油圧シリンダ5により刈取フレーム6を介して昇降自在に配設されている。
刈取部4における穀稈搬送機構7の直後方にフィードチェーン8を備えた脱穀部9が配設され、この脱穀部9の直下方位置に揺動選別部10が配設され、脱穀部9の後部に排藁処理装置11が配設されている。該排藁処理装置11はカッター装置30等を内装している。
【0011】
前記機体フレーム3の前部であって進行方向右側には、操向用のステアリングホイールや変速レバーや作業レバー等を装備した運転キャビン12が配設され、該運転キャビン12の直後方位置に、脱穀及び選別された後の穀粒を貯溜するグレンタンク13が配設されている。該グレンタンク13の後部には、その貯溜された穀粒を機体外部に搬出するための排出オーガ14が連設されている。また、運転キャビン12の下部に、動力源となるエンジン等を収納した図示省略のエンジンルームが配設されている。
【0012】
刈取部4は、刈取フレーム前端に配置した分草体15、この分草体15の後方に配設される刈刃装置16、分草体15の後上方に配設される穀稈引起装置等を備えている。
そして圃場に植立した穀稈を分草体15にて分草して取り込み、穀稈引起装置で引き起こして、穀稈の株元を刈刃装置16で刈り取る。その後、穀稈搬送機構7へ受け渡し、穀稈搬送装置7で挟持して後方へ搬送し、株元を脱穀部9のフィードチェーン8へ受け継ぐようにしている。
【0013】
脱穀部9は、扱室17及び処理室18を有し、扱室17には、機体の前後方向に軸支された扱胴19が内装され、扱胴19の下方には受網21が張架されている。処理室18には、扱室17の後側部に配置した排塵口を介して処理室18の前部と連通して、該処理室18内に処理胴22が前後方向に内装され、前記扱胴19で脱穀処理できなかった穀粒等を再処理するようにしている。該処理胴22の下方には処理網23が張架されている。
【0014】
扱室17を形成する脱穀上面カバーの側面部には、フィードチェーン8との間に穀稈の株元側を挟持する挟扼杆(図示せず)が設けられている。そして、刈取部4の穀稈搬送機構7から受け継いだ穀稈の株元側をフィードチェーン8と挟扼杆とで挟持して搬送しつつ、穀稈の穂先側を扱室17内に通過させ、扱胴19外周部に配置した複数の扱歯(図示せず)で脱穀を行う。
【0015】
脱穀処理及び再処理された穀粒は受網21又は処理網23を通過して下方の揺動選別部10へと至る一方、排藁は後方の排藁処理装置11へと搬送するようにしている。
【0016】
揺動選別部10は、受網21の下方に前端を臨ませて前後方向に揺動可能に支持された揺動選別装置24を備えている。該揺動選別装置24は、フィードパンや選別篩線やチャフシーブやグレンシーブ等より構成される。前記フィードパン下方には、選別風を送るための唐箕が配置され、揺動選別装置24の下方の前部には一番コンベアを配置して、揚穀コンベアを介してグレンタンク13に精粒を貯留し、一番コンベアの後部には二番コンベアを配置して、二番還元コンベアを介して揺動選別装置24前部へ二番物を戻すようにしている。
【0017】
図2及び図3を用いてコンバインの排藁処理装置の構成、及び、その駆動系について説明する。
排藁処理装置11は脱穀後の排藁をそのまま放出したり、結束装置により結束して放出したり、カッター装置30により所定長さに切断するものであり、本実施例ではカッター装置30を設けた構成について説明する。カッター装置30は、低速軸31上に設けた低速回転刃35や高速軸32上に設けた高速回転刃37等からなるカッター、排藁案内回転体33、及び排出コンベア34等からなり、それぞれを平行に配置している。前記低速軸31上には低速回転刃35と送込ディスク36を一定の間隔に嵌装し、高速軸32上には高速回転刃37を低速回転刃35と送込ディスク36との間に位置するように嵌装する。
駆動構成は、エンジンからの動力がVベルト39を介してプーリ40に伝えられ、低速軸31が回転される。該低速軸31上には歯車44が固設されて歯車45と噛合させており、該歯車45により高速軸32を逆回転させる。この二本の軸が互いに逆方向に回転することにより排藁が両者の間に送られて切断されていくのである。また、低速軸31上に固設したスプロケット41よりチェーン42を介してスプロケット43に動力を伝えて排出コンベア34を回転させる。該排出コンベア34は株元側にスクリュー34aを有し、左右中央部に跳ね出し板46が固設され、これらの下方が底板により覆われている。該排出コンベア34の回転により、切断された株元側を穂先側へ搬送し、跳ね出し板46の回転により切断された穂先部と株元部が一様になるよう、混合されて図7の如く排出させているのである。但し、排出コンベア34を設けずにそのまま下方へ排出する構成とすることもできる。
【0018】
排藁案内回転体33は、シャフト38にスポンジ或いはゴム等の弾性体により筒状に覆われており、シャフト38はカッター室カバー50に嵌着された長円系のメタル51に軸支され、両端で連結体48に枢支され回転自在に支持されている。連結体48は付勢バネ47に固着され、付勢バネ47の他端はピン49に係止され、排藁案内回転体33を、常に前方に引っ張っているのである。
【0019】
該付勢バネ47により、シャフト38を低速軸31の上に引っ張っており、排藁案内回転体33は低速回転刃35に近付くのであるが、最高に接近した状態で、排藁案内回転体33の外周は、低速回転刃35の間に非接触の間隔を具備すべく構成しているのである。故に、排藁が搬送されない場合には、排藁案内回転体33は低速軸31の側から従動されることはなく回転せず、排藁が搬送されて排藁案内回転体33と低速回転刃35の両者に接すると互いに逆方向に回転し下方へ送り込まれ、排稈が増加すると付勢バネ47に抗して間隔が広がるように移動するのである。
【0020】
このような構成にすることにより、脱穀されてきた排藁は、排藁案内回転体33により適当に加圧され、カッターに導かれ、株元部が穂先部より先行することなく同時にカッター装置30に送られ、切断長の長短を生ずることなく細断されて排出コンベア34により排出されていくのである。
【0021】
図2、図4及び図5において、排藁処理装置11の下部に配設される排藁排出口57の下部周囲にはカバーが配設されており、排藁を下方へ落下するように案内している。本発明では、後部カバーはゴムタレ等で構成し、左右一側または両側には左右回動可能な排藁案内板55・55で構成している。該排藁案内板55・55の上部は回転自在に支持されて、弾性体となるねじりバネ56・56により内側に付勢して配設され、排藁案内板55・55は後面視で逆「ハ」字状に配設されている。
図4、図6において右側について説明する。排藁案内板55は略直方体に形成されており、前後方向に配設されている。該排藁案内板55は鋼板であっても合成樹脂製であっても比較的固いゴム等で構成してもよい。該排藁案内板55の前後両端の上部が排藁処理装置11の排藁排出口57の筐体に(前板と後板)の下部に枢軸59・59により左右回転自在に枢支されている。排藁案内板55の前後両短辺の枢軸59・59よりも下方の上部にねじりバネ56の下端がピン61等で枢支されている。前記ねじりバネ56の他端(上端)はピン58等で排藁処理装置11の筐体に(前板と後板)の枢軸59・59よりも上方に枢支されている。ねじりバネ56は両端が狭くなるように付勢している。但し、ねじりバネ56両端の係止構成は限定するものではない。
【0022】
また、前記排藁案内板55はねじりバネ56により左右内側または外側に回動するように付勢されているので、所望の位置に止める為にストッパー60・60が筐体に設けられている。該ストッパーは排藁案内板55に対して2カ所、左右で4カ所配設されている。但し、ねじりバネ56に力が掛かっていない状態が「く」字状である場合には、ストッパー60を省く構成とすることもできる。
【0023】
図7を用いて本発明の一実施例である自脱型コンバインの作業時の様子を説明する。
本発明では、排藁案内板55・55の上部がコンバインの排藁排出口57の左右両側における前面及び後面にねじりバネ56により付勢された状態で吊設されており、排藁排出口57から落下した排藁量Aが所定量以上となると開くようにしている。
【0024】
作業時において、図7(a)に示す如く、排藁排出口57から排出される排藁Aが少量若しくは通常量の場合は、排藁案内板55が通常の位置、つまり、後面視略逆「ハ」字状に、ねじりバネ56で付勢されて、左右の排藁案内板55の下端が内側に向いて傾斜した状態となっており、排藁は排藁排出口57下方に集められる。
【0025】
機体の走行を停止し、手扱き作業を行い、図7(b)に示すように、排藁A’の如く排藁が多く堆積してくると、排藁の自重により排藁案内板55をねじりバネ56の付勢力に抗して外方向に回動しようとする。排藁案内板55が外方向に回動されて、図4に示すピン58と枢軸59を結ぶ線を越えると、死点越えとなって排藁案内板55はねじりバネ56の付勢力により外方向に開き、ストッパー60に当接するまで開く方向に回動される。こうして開いた状態となり、後面視略「ハ」字状、つまり、左右の排藁案内板55の下端が外側に向いた状態になり、排藁排出口57の下方は排藁案内板55が垂下した状態よりも大きな空間となる。
【0026】
こうして排藁案内板55・55の下方が開いた状態となると、排藁排出口57の下方の空間が大きくなり、排藁が更に落下しても堆積しても両側方へ広がるように落下し、カッター装置30に詰まることがないのである。そして、手扱き作業が終了すると、排藁案内板55を内方向に押してやるだけで元の内側に向いた状態に戻るのである。
【0027】
なお、排藁案内板55の上部の回動支点となる枢軸59の位置をピン58の下方よりも外側に配置しねじりバネ56で内側に付勢したり、または、排藁案内板55の上下中途部にコイルバネの一端を係止して他端を排藁案内板55よりも内側に係止して常時内側に傾斜するように付勢しておく構成とすることも可能である。
【0028】
このように構成することで、排藁案内板55は常時内側に傾斜した状態となり、通常の刈取作業では、排藁は列状集められて落下される。そして、手扱き作業等で走行停止した状態で脱穀作業を行うと、切断された排藁が排藁排出口57より落下して堆積して、排藁案内板55に至り、排藁の自重により排藁案内板55をコイルバネの付勢力に抗して下方に押し下げるように回動して開く、こうして排藁排出口57下方の空間を広げることができる。そして、次の位置まで機体を移動させると排藁排出口57下方の排藁がなくなり、排藁案内板55はコイルスプリングの付勢力により閉じる方向に回動され、元の状態となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態である自脱型コンバインの全体構成を示す側面図。
【図2】本発明の一実施例である自脱型コンバインの排藁処理装置の後面図。
【図3】自脱型コンバインの排藁処理装置の側面図。
【図4】本発明のねじりバネ及び排藁案内板と排藁排出口の関係を示す後面図。
【図5】本発明の一実施例である自脱型コンバインの排藁処理装置の排藁案内板が閉じた状態と開いた状態を示す後面図。
【図6】本発明のねじりバネ及び排藁案内板の斜視図。
【図7】本発明の一実施例である自脱型コンバインの作業時を示す略後面図で、(a)は排藁量が少ない場合で、(b)は排藁量が多い場合である。
【符号の説明】
【0030】
1 自脱型コンバイン
8 フィードチェーン
11 排藁処理装置
17 扱室
30 カッター装置
33 排藁案内回転体
34 排出コンベア
35 低速回転刃
36 送込ディスク
37 高速回転刃
46 跳ね出し板
55 排藁案内板
56 ねじりバネ
57 排藁排出口
58 ピン
59 枢軸
60 ストッパー
61 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバインの機体後部に排藁処理装置としてのカッター装置を配置し、該カッター装置下部の排藁排出口の左右一側または両側に排藁案内板の上部を左右回動自在に枢支し、該枢支部の上部機体側と排藁案内板の中途部の間に弾性体を介装し、排藁案内板を内側または外側に傾斜するように付勢したことを特徴とするコンバインの排藁処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−109733(P2006−109733A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298998(P2004−298998)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【Fターム(参考)】