説明

コンバインの緩旋回装置

【課題】 グレンタンクの籾の貯留量により機体の重心位置が変化しても、緩旋回が一方に片寄ることがなく、違和感のない適正な旋回操作を確実に行うことができるようにしたコンバインの緩旋回装置を提供する。
【解決手段】 機体12の左右一側に配置されたグレンタンク内に配置され、グレンタンク内の籾貯留量を検出する籾センサ95、96、97の出力に基づいて、左右の選択クラッチ60、61を制御する左右のアクチュエータの少なくとも一方の制御値を設定する比例弁ドライバ回路88を備え、設定された制御値に基づいて、前記選択クラッチ60、61の少なくとも一方のアクチュエータを駆動する5軸クラッチ比例弁107を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩旋回時に適正な旋回操作を容易かつ確実に行えるようにしたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは、左右一対のクローラ走行装置に支持された機体の前部に、穀稈の刈取りを行う前処理部が配置され、機体の左右一側に、前処理部で刈取った穀稈から籾を脱穀する脱穀部が配置され、機体の左右他側に、運転席や、脱穀部で脱穀された籾を一時貯留するグレンタンクを備えている。
【0003】
前記コンバインは、左右1対のクローラ走行装置を正転又は逆転させてコンバインの前進、後進を行なわせるほか、左右のクローラ走行装置の走向速度を変えて旋回する緩旋回(ソフトターン)、左右いずれか一方のクローラ走行装置の走向を停止させて旋回する信地旋回(ブレーキターン)、左右のクローラ走行装置の走行方向を逆方向にして旋回する超信地旋回(スピンターン)等の旋回操作ができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3083466号公報(第2−3頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に左方向に回り刈りするコンバインにおいて、グレンタンクの籾貯留量が少ない作業開始時にあっては、機体が左荷重になって、左旋回のききがよいが、作業進行に伴いグレンタンクの籾貯留量が増加するに従って、機体重心が左右中心そして右側に移動し、左旋回のききが悪くなり、オペレータは、旋回フィーリングに違和感を生じる。
【0006】
前記の事情に鑑み、本発明は、例え湿田等の軟らかい圃場で作業する場合であっても、コンバインの緩旋回が一方に片寄ることなく、違和感のない適正な旋回操作を行えるようにしたコンバインの緩旋回装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は、エンジン(16)からの動力が伝達されるセンタギヤ(68)の回転を左右のサイドクラッチ(72、75)を介して左右駆動輪(80、83)に伝達すると共に、エンジン(16)からの動力をクラッチ・ブレーキ装置(50)及び左右選択クラッチ(60、61)を介して前記左右駆動輪(80、83)に伝達して、
前記左右のサイドクラッチ(72、75)の一方を接続して前記左右駆動輪(80、83)の一方に所定回転を伝達すると共に、前記クラッチ・ブレーキ装置(50)のクラッチ(51)を接続しかつ前記左右選択クラッチ(60、61)の他方を接続して前記左右駆動輪(80、83)の他方に緩速旋回を伝達してなる、コンバイン(10)の緩旋回装置において、
機体(12)に配置されたグレンタンク(17)の籾貯留量を検出する籾量検出手段(95、96、97)と、
前記左右選択クラッチ(60、61)を制御する左右アクチュエータ(62、63)の少なくとも一方の制御値を前記籾量検出手段(95、96、97)に基づき変更する旋回微調設定手段(88)と、
を備えたことを特徴とするコンバインの緩旋回装置にある。
【0008】
なお、前記した括弧内の符号等は、図面を参照するためのものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、一般に機体の左右一方に偏倚して位置するグレンタンクの籾貯留量により機体重心が変化しても、旋回微調設定手段により左右の少なくとも一方の選択クラッチの作動力を上記調整するので、例え湿田等の軟らかい圃場で作業する場合であっても、コンバインの緩旋回が一方に片寄ることがなく、違和感のない適正な旋回操作を容易かつ確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1乃至図10は、本発明の実施の形態を示すもので、図1は、本発明を適用したコンバインの側面図、図2は、コンバインの運転席の平面図、図3は、コンバインに配置された表示装置の正面図、図4は、コンバインに使用されるのトランスミッションの展開図、図5は、制御部のブロック線図、図6は、コンバインの旋回モード切替手順を示すプログラムフローチャート、図7は、旋回モード切替時における比例弁圧力設定手順を示すプログラムフローチャート、図8は、旋回初期設定手順を示すプログラムフローチャート、図9は、圃場における旋回モード切替時における比例弁圧力の圧力線図、図10は、路上における旋回モード切換え時における比例弁圧力の圧力線図である。
【0012】
図1に示すように、コンバイン10は、左右一対のクローラ走行装置11に支持された機体12を有し、該機体12の前端(図1の右側)に、穀稈の刈取りを行う前処理部13を昇降自在に備え、前記機体12の左右方向の一側(図1では紙面の奥側)に、前記前処理部13で刈取った穀稈から籾を扱ぎ取ると共に、脱穀された排藁を適宜長さに切断して排出する脱穀部15を備えている。
【0013】
また、前記機体12の左右方向の他側(図1の紙面では手前側)に、コンバイン10の駆動力を発生させるエンジン16と、内部に複数(例えば3個)のセンサを有し、前記脱穀部15で脱穀された籾を一時的に貯留すると共に、貯留した籾の量を検出するようにしたグレンタンク17と、該グレンタンク17内の籾を排出する排出オーガ18とを備え、前記エンジン16の上方に運転席20が配置されている。
【0014】
図1、図2に示すように、前記運転席20には、座席シート21が配置され、該座席シート21の前方及び側方には、フロント操作パネル22とサイド操作パネル23が配置されている。
【0015】
前記フロント操作パネル22には、前記前処理部13の昇降操作と、前記機体12の走向方向の操作を行う走向レバー25と、前記機体12の旋回モードの内の緩旋回を選択する緩旋回スイッチ26等が配置されている。
【0016】
前記サイド操作パネル23には、主変速レバー27と、前後方向の操作により前記機体12の走向速度を調節すると共に、前後方向の操作位置と、左右方向の操作により前記機体12の旋回モードの内の信地旋回又は超信地旋回を選択する副変速レバー28等が配置されている。
【0017】
また、前記運転席20の適宜位置には、図3に示すように、現在設定されているコンバインの運転モードを表示する表示器30が配置されている。該表示器30には、スイッチ31と複数(図3では14個)のランプ32が配置され、スイッチ31の操作によって点灯するランプ32の位置(例えば、運転モードに対応する数字)で、現在の運転モードを表示するようになっている。
【0018】
前記コンバイン10は、図4に示すような、トランスミッション40を備えている。油圧無段変速装置(HST)41には、その入力軸41aに固定されたプーリ41bに掛け渡されたベルト(図示せず)を介して、前記エンジン16(図1参照)の出力が入力される。
【0019】
また、前記HST41の出力軸41cには、ギヤ41dが固定されている。作業部入力軸42には、前記ギヤ41cと噛合うギヤ42aが固定されている。従って、前記エンジン16から出力された回転駆動力は、前記HST41により無段階に変速され、前記作業部入力軸42に伝達される。
【0020】
副変速機構43は、ギヤ軸45と、駆動軸46を備えている。前記ギヤ軸45には、前記ギヤ42aと噛合うように固定されたギヤ45aと、クラッチ45b、45cの操作によって該駆動軸45と係脱操作される複数のギヤ45d、45e、45fが回転自在に配置されている。前記駆動軸46には、前記ギヤ45d、45e、45fと噛合うギヤ46a、46b、46cと、ギヤ46dが固定されている。
【0021】
従って、前記作業部入力軸42の前記ギヤ42aが回転すると、ギヤ45aを介してギヤ軸45が回転する。このとき、前記副変速レバー28(図1参照)により前記クラッチ45b、45cを操作して、前記ギヤ45d、45e、45fの何れか(例えば、ギヤ45d)を前記ギヤ軸45に連結すると、連結された該ギヤ45dが該ギヤ軸45と共に回転する。そして、前記ギヤ45dと前記ギヤ46aを介して駆動軸46を回転させる。このとき、前記ギヤ45e、45fは、前記ギヤ軸45と切り離されているので空転することになる。
【0022】
中継軸47には、ギヤ47aが固定され、前記ギヤ46bと噛合うギヤ48が該中継軸47に対し回転自在に支持されている。前記中継軸47とギヤ48との間には、クラッチ・ブレーキ装置50が配置されている。
【0023】
前記クラッチ・ブレーキ装置50は、前記ギヤ48の駆動力を前記中継軸47に伝達するための多板摩擦クラッチ51と、前記中継軸47を固定するための多板摩擦ブレーキ52と、該多板摩擦クラッチ51を切り状態に、該多板摩擦ブレーキ52を入り状態に付勢するスプリング53と、油圧により前記スプリング53を圧縮させ、前記多板摩擦クラッチ51を入操作すると共に、前記多板摩擦ブレーキ52を切操作する油圧アクチュエータ55が配置されている。
【0024】
中間軸56には、前記中継軸47に固定された前記ギヤ47aと噛合うギヤ56aと、前記駆動軸46に固定された前記ギヤ46dと噛合うギヤ56bとが、切換クラッチ57を介して該中間軸56に対し回転自在に支持され、該切換クラッチ56の作動によりギヤ56a、56bのいずれか一方が該中間軸56に接合されるようになっている。
【0025】
従って、前記ギヤ46dから前記ギヤ56bを介して前記中間軸56に動力が伝達された場合、該中間軸56は前記駆動軸46とは逆方向に回転し、前記ギヤ47aから前記ギヤ56aを介して前記中間軸56に動力が伝達されて場合、該中間軸56は前記駆動軸46と同方向に回転する。
【0026】
また、前記中間軸56の両端部には、それぞれ選択クラッチ60と選択クラッチ61が配置されている。前記選択クラッチ60には、該選択クラッチ60の入切を操作する油圧アクチュエータ62が配置され、前記選択クラッチ61には、該選択クラッチ61の入切を操作する油圧アクチュエータ63が配置されている。
【0027】
前記選択クラッチ60の従動側には、前記中間軸56に回転自在に支持されたギヤ65が固定されている。同様に、前記選択クラッチ61の従動側には、前記中間軸56の回転自在に支持されたギヤ66が固定されている。
【0028】
センター軸67には、前記ギヤ46dと噛合うセンタギヤ68が固定され、前記駆動軸46の駆動力が前記ギヤ46dと該センタギヤ68を介してセンター軸67に伝達される。前記センタギヤ68の両側面には、それぞれ内歯68a、68bが形成されている。
【0029】
前記センター軸67の両端側には、操向軸70と操向軸71が配置されている。前記操向軸70には、前記内歯68aと係脱自在に噛合う歯が形成されたサイドクラッチ72が摺動自在に支持されると共に、前記選択クラッチ60の前記ギヤ65と噛合う伝動ギヤ73が固定されている。同様に、前記操向軸71には、前記内歯68bと係脱自在に噛合う歯が形成されたサイドクラッチ75が摺動自在に支持されると共に、前記選択クラッチ61の前記ギヤ66と噛合う伝動ギヤ76固定されている。
【0030】
従って、前記センタギヤ68の内歯68a、68bと、前記サイドクラッチ72とサイドクラッチ75が噛合っていると、該センタギヤ68の動力が各サイドクラッチ72、75に伝達され、各サイドクラッチ72、75が駆動される。
【0031】
前記センタギヤ68の内歯68a、68bと、前記サイドクラッチ72とサイドクラッチ75が切り離されている状態で、前記ギヤ65及び(又は)前記ギヤ66が回転すると、前記伝動ギヤ73及び(又は)前記伝動ギヤ76を介して前記操向軸70及び(又は)前記操向軸71が駆動され、該操向軸70及び(又は)該操向軸71を介して前記サイドクラッチ72及び(又は)前記サイドクラッチ75が駆動される。この時、前記センタギヤ68の内歯68a、68bと、前記各サイドクラッチ72とサイドクラッチ75が切り離されているので、前記センタギヤ68は空転する。
【0032】
車軸77は、一端に前記サイドクラッチ72と噛合う出力ギヤ78が固定され、他端に前記クローラ走行装置11(図1参照)の駆動輪80が固定されている。また、車軸81は、一端に前記サイドクラッチ75と噛合う出力ギヤ82が固定され、他端に前記クローラ走行装置11(図1参照)の駆動輪80、83が固定されている。
【0033】
従って、コンバイン10を直進走行させる場合には、多板摩擦クラッチ51を切り、多板摩擦ブレーキ52を入り、選択クラッチ60、61を切り状態とし、サイドクラッチ72、75をセンタギヤ68の内歯68a、68bに歯合させた状態に設定する。
【0034】
この状態で、駆動軸46が回転すると、ギヤ46dから、センタギヤ68、操向軸70、71、サイドクラッチ72、75、出力ギヤ78、82、車軸77、81を介して駆動輪80、83が同方向に同速度で駆動される。従って、左右一対のクローラ走行装置11を介してコンバイン10を直進走向させることができる。
【0035】
また、緩旋回する場合には、多板摩擦クラッチ51を入り、多板摩擦ブレーキ52を切り、選択クラッチ60(又は選択クラッチ61)を入り、選択クラッチ61(又は選択クラッチ60)を切り状態とし、サイドクラッチ75(又はサイドクラッチ72)をセンタギヤ68の内歯68b(又は内歯68a)に歯合させ、サイドクラッチ72(又はサイドクラッチ75)と内歯68a(又は内歯68b)の歯合を解除した状態に設定する。
【0036】
この状態で、旋回外側となるクローラ走行装置11は、直進走行と同様に駆動軸46が回転すると、ギヤ46dから、センタギヤ68、操向軸71(又は操向軸70)、サイドクラッチ75(又はサイドクラッチ72)、出力ギヤ82(又は出力ギヤ78)、車軸81(又は車軸77)を介して駆動輪83(又は駆動輪80)により駆動される。
【0037】
一方、旋回内側となるクローラ走行装置11は、駆動軸46が回転すると、ギヤ46b、ギヤ48、多板摩擦クラッチ51、中継軸47、ギヤ47a、ギヤ56a、中間軸56、選択クラッチ60(又は選択クラッチ61)、ギヤ65(又はギヤ66)、伝動ギヤ73(又は伝動ギヤ76)、操向軸70(又は操向軸71)、サイドクラッチ72(又はサイドクラッチ75)、出力ギヤ78(又は出力ギヤ82)、車軸77(又は車軸81)を介して駆動輪80(又は駆動輪83)により駆動される。
【0038】
この時、駆動輪83(又は駆動輪80)と駆動輪80(または駆動輪83)は、同方向に回転するが、旋回内側となる駆動輪80(又は駆動輪83)に伝達される動力は、ギヤ46とギヤ56b、ギヤ47aとギヤ56a、ギヤ65(又はギヤ66)と伝動ギヤ73(又は伝動ギヤ76)で減速されるため、駆動輪83(又は駆動輪80)に比べ駆動輪80(又は駆動輪83)の回転速度が減速されるので、コンバイン10は、駆動輪80(又は駆動輪83)を内側として旋回(ソフトターン)する。
【0039】
また、コンバイン10を信地旋回する場合には、多板摩擦クラッチ51を切り、多板摩擦ブレーキ52を入り、選択クラッチ60(又は選択クラッチ61)を入り、選択クラッチ61(又は選択クラッチ60)を切り状態とし、サイドクラッチ72(またはサイドクラッチ75)とセンタギヤ68の内歯68a(又は内歯68b)の歯合を解除させ、サイドクラッチ75(又はサイドクラッチ72)をセンタギヤ68の内歯68b(又は内歯68a)に歯合させた状態に設定する。
【0040】
この状態で、旋回外側となるクローラ走行装置11は、直進走行と同様に駆動軸46が回転すると、ギヤ46dから、センタギヤ68、サイドクラッチ75(又はサイドクラッチ72)、操向軸71(又は操向軸70)、出力ギヤ82(又は出力ギヤ78)、車軸81(又は車軸77)を介して駆動輪83(又は駆動輪80)により駆動される。一方、旋回内側となるクローラ走行装置11は、駆動軸46が回転しても、動力が伝達されないため停止した状態になっている。
【0041】
従って、コンバイン10は、停止しているクローラ走行装置11を中心として旋回(ブレーキターン)することができる。この時、コンバイン10は、一対のクローラ走行装置11の幅分だけ横方向に移動する。
【0042】
また、コンバイン10を超信地旋回させる場合には、多板摩擦クラッチ51を切り、多板摩擦ブレーキ52を入り、選択クラッチ60(又は選択クラッチ61)を入り、選択クラッチ60(又は選択クラッチ61)切り状態とし、サイドクラッチ72(またはサイドクラッチ75)とセンタギヤ68の内歯68a(又は内歯68b)の歯合を解除し、サイドクラッチ75(又はサイドクラッチ72)をセンタギヤ68の内歯68b(又は内歯68a)に歯合させた状態に設定する。
【0043】
この状態で、一方のクローラ走行装置11は、直進走行と同様に、駆動軸46が回転すると、ギヤ46dから、センタギヤ68、操向軸71(又は操向軸70)、サイドクラッチ75(又はサイドクラッチ72)、出力ギヤ82(又は出力ギヤ78)、車軸81(又は車軸77)を介して駆動輪83(又は駆動輪80)により駆動される。
【0044】
他方のクローラ走行装置11は、駆動軸46が回転すると、ギヤ46dから、ギヤ56b、切換クラッチ57、中間軸56、選択クラッチ60(又は選択クラッチ61)、ギヤ65(又はギヤ66)、伝動ギヤ73(又は伝動ギヤ76)、操向軸70(又は操向軸71)、サイドクラッチ72(又はサイドクラッチ75)、出力ギヤ78(又は出力ギヤ82)、車軸77(又は車軸81)を介して駆動輪80(又は駆動輪83)により駆動される。
【0045】
即ち、一方のクローラ走行装置11に対し、他方のクローラ走行装置11は逆方向に回転することになる。従って、コンバイン10は、略その位置で旋回(スピンターン)することができる。
【0046】
なお、前記選択クラッチ60、61等の旋回用摩擦係合要素は、選択クラッチ60、61に限らず。左右にそれぞれ配置した湿式多板ブレーキであって、左右の駆動輪80、83の制動力を制御するもの等、他の摩擦係合要素でも良い。
【0047】
前記コンバイン10の制御部は、図5に示すように構成されている。CPU85、比例弁ドライバ回路86、87、88を備えた制御ユニット90の入力側には、操向レバー25(図1参照)の操作位置を検出する操向レバーポテンショメータ91、感度切替設定ダイヤル92、前記前処理部13、脱穀部15(図1参照)の作動を検出する作業機クラッチスイッチ93、前記グレンタンク17(図1参照)に配置され、グレンタンク17内に貯留された籾の量を検出する3個の籾センサ95、96、97、オーバフローセンサ98、湿田スイッチ100等が接続されている。
【0048】
また、前記制御ユニット90の出力部には、サイドクラッチバルブ101、102、アンロードバルブ103、6軸クラッチ比例弁105、106、5軸クラッチ比例弁107等が接続されている。
【0049】
前記の構成で、コンバイン10の旋回制御の手順を、図6乃至図8に示すプログラムフローチャートと、図9、図10に示す圧力線図により説明する。
【0050】
まず、コンバイン10を使用する圃場の状態に合せ、油圧の出力カーブの初期設定(旋回初期設定)を行う。図8に示すように、予め、操作スイッチを操作して、例えば、出力カーブの低い「1」から出力カーブの高い「9」まで段階的に設定された油圧出力の出力カーブの中から圃場の状態にあった出力カーブを選択する。コンバイン10の制御ユニット90がバックアップモードに設定されているか否かを判定する(図8のステップS11、以下単にステップS○○という)。制御ユニット90がバックアップモードに設定されている場合、湿田スイッチが操作(ON)されているか否かを判定する(ステップS12)。
【0051】
湿田スイッチがONされている場合には、前記操作スイッチで選択された値を読込み(ステップS13)、読込んだ値に応じた設定値を表示する(ステップS14)。再び、湿田スイッチが操作されているか否かを判定し(ステップS15)、湿田スイッチが操作されていた場合には、表示された設定値を記憶する(ステップS16)。なお、油圧の出力カーブの初期設定は、グレンタンク17が空の状態を基本として行う。以下、圃場での作業は、記憶された油圧の出力カーブを基にコンバインの操向制御が行われる。
【0052】
旋回モードの切替は、図6に示すように、作業機クラッチスイッチ93のON、OFFを判定する(ステップS21)。作業機クラッチスイッチ93がOFFの場合、籾センサ95、96、97のON、OFFを判定する(ステップS22)。籾センサ95、96、97の何れもがOFFの場合、旋回モードを路上モードに設定する(ステップS23)。
【0053】
旋回モードが路上モードに設定されると、比例弁ドライバ回路88により、5軸クラッチ比例弁107が作動し、図9に示すように、操向レバー25の操作角度に対応して、旋回内側となる側のサイドクラッチ72(又はサイドクラッチ75)とセンタギヤ68の歯合を解除すると共に、選択クラッチ60(又は選択クラッチ61)をONさせる。また、比例制御弁107の出力を図示した圧力カーブで制御して、コンバイン10を緩旋回(ソフトターン)させる。
【0054】
前記図6のステップS21で作業機クラッチスイッチ93がONの場合あるいは、ステップS22で3個の籾センサ95、96、97の何れかがONの場合、湿田スイッチ100のON、OFFを判定する(ステップS24)。湿田スイッチ100がONの場合、旋回モードを湿田圃場モードに設定する(ステップS25)。また、湿田スイッチ100がOFFの場合にも、旋回モードを湿田圃場モードに設定する(ステップS26)。前記旋回モードが湿田圃場モードに設定された場合、比例弁圧力設定のサブルーチンへ移行する(ステップS27)。
【0055】
図7に示すように、比例弁圧力設定のサブルーチンでは、操向ポテンショメータ91の操作位置の読込みを行う(ステップS31)。籾センサ95、96、97のON、OFFの読込みを行う(ステップS32)。籾センサ97のON(グレンタンク17内に籾が一杯になっている状態)、OFF(グレンタンク17内に籾を貯留する余裕がある状態)を判定する(ステップS33)。籾センサ97がOFFの場合、籾センサ96のON(グレンタンク17内に籾が2/3以上貯留されている状態)、OFF(グレンタンク17内に貯留された籾が2/3以下の状態)を判定する(ステップS34)。籾センサ96がOFFの場合、籾センサ95のON(グレンタンク17内に籾が1/3以上貯留されている状態)、OFF(グレンタンク17内に貯留された籾が1/3以下、又はグレンタンク17が空の状態)を判定する(ステップS35)。
【0056】
前記ステップS35で、籾センサ95がOFFの場合、係数kにk0(k0=1)を設定する(ステップS36)。前記ステップS35で、籾センサ95がONの場合、係数kにk1(ただし、k1>k0)を設定する(ステップS37)。前記ステップS34で、籾センサ96がONの場合、係数kにk2(ただし、k2>k1)を設定する(ステップS38)。前記ステップS33で、籾センサ97がONの場合、係数kにk3(ただし、k3>k2)を設定する(ステップS39)。
【0057】
グレンタンク17内の籾の貯留量に応じた係数kaxを設定した後、比例弁の圧力を計算する(ステップS40)。計算された圧力を5軸クラッチ比例弁107の出力に変換し比例弁ドライバ回路88に出力する(ステップS41)。
【0058】
旋回モードが圃場モードに設定されると、比例弁ドライバ回路88により、5軸クラッチ比例弁107が作動し、図10に示すように、操向レバー25の操作角度に対応して、旋回内側となる側のサイドクラッチ72(又はサイドクラッチ75)とセンタギヤ68の歯合を解除すると共に、選択クラッチ60(又は選択クラッチ61)をONさせる。また、比例制御弁107の出力を、図示した圧力カーブk0、k1、k2、k3で制御して、コンバイン10を緩旋回(ソフトターン)させる。
【0059】
前記したように、グレンタンク17の籾の貯留量により機体12の重心位置が変化しても、旋回微調設定手段により左右一対の選択クラッチ60、61の少なくとも一方の選択クラッチ60(又は選択クラッチ61)作動力を調整するので、例え湿田等の軟らかい圃場で作業する場合であっても、コンバイン10の緩旋回が一方に片寄ることがなく、違和感のない適正な旋回操作を確実に行うことができる。
【0060】
なお、前記旋回微調設定手段は、比例弁ドライバ回路88に限らず、他の電気的設定手段でも良く、かつ選択クラッチ60、61で構成される左右一対の旋回用摩擦係合要素を作動するアクチュエータは、油圧アクチュエータに限らず、電動アクチュエータ等のアクチュエータでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明を適用したコンバインの側面図である。
【図2】コンバインの運転席の平面図である。
【図3】コンバインに配置された表示装置の正面図である。
【図4】コンバインに使用されるのトランスミッションの展開図である。
【図5】制御部のブロック線図である。
【図6】コンバインの旋回モード切替手順を示すプログラムフローチャートである。
【図7】旋回モード切替時における比例弁圧力設定手順を示すプログラムフローチャートである。
【図8】旋回初期設定手順を示すプログラムフローチャートである。
【図9】圃場における旋回モード切替時における比例弁圧力の圧力線図である。
【図10】路上における旋回モード切換時における比例弁圧力の圧力線図である。
【符号の説明】
【0062】
10 コンバイン
12 機体
16 エンジン
17 グレンタンク
50 クラッチ・ブレーキ装置
51 クラッチ
60 選択クラッチ
61 選択クラッチ
62 アクチュエータ(油圧アクチュエータ)
63 アクチュエータ(油圧アクチュエータ)
68 センタギヤ
72 サイドクラッチ
75 サイドクラッチ
80 駆動輪
83 駆動輪
88 旋回微調設定手段(比例弁ドライバ回路)
95 籾量検出手段(籾センサ)
96 籾量検出手段(籾センサ)
97 籾量検出手段(籾センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの動力が伝達されるセンタギヤの回転を左右のサイドクラッチを介して左右駆動輪に伝達すると共に、エンジンからの動力をクラッチ・ブレーキ装置及び左右選択クラッチを介して前記左右駆動輪に伝達して、
前記左右のサイドクラッチの一方を接続して前記左右駆動輪の一方に所定回転を伝達すると共に、前記クラッチ・ブレーキ装置のクラッチを接続しかつ前記左右選択クラッチの他方を接続して前記左右駆動輪の他方に緩速旋回を伝達してなる、コンバインの緩旋回装置において、
機体に配置されたグレンタンクの籾貯留量を検出する籾量検出手段と、
前記左右選択クラッチを制御する左右アクチュエータの少なくとも一方の制御値を前記籾量検出手段に基づき変更する旋回微調設定手段と、
を備えたことを特徴とするコンバインの緩旋回装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−158344(P2006−158344A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357617(P2004−357617)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】