説明

コンバイン

【課題】 機体上部に配管された排気装置と排出オーガとの干渉を防止したコンバインを提供する。
【解決手段】 刈取り、脱穀、選別後の籾を貯留するグレンタンク17と、上下方向と水平方向に回動自在に配置されて、前記グレンタンク17より籾を排出する排出オーガ21と、機体13上に搭載されたエンジン35に接続されて、機体13上方から排気ガスを排出する排気装置41と、を備えたコンバイン11であって、前記排気装置41と干渉する可能性のある領域に前記排出オーガ21を侵入させないようにする。これにより、コンバイン11の機体13上部に配管された排気装置41と排出オーガ21との干渉を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンバインに関し、より詳細には、コンバインの機体上部に配管された排気装置と排出オーガとの干渉及び接近を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの排気装置はエンジンから機体下部を通って機体後方側に配管され、エンジンで発生した排気ガスを機体後方で排出している。排気装置は排気音を低減させる排気サイレンサや排気ガスを排出するテールパイプ等から構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、排気サイレンサやテールパイプ等の排気装置が機体下部に配管されていると、走行中に巻上げられた泥等が排気装置に掛かり易い。排気装置に泥等が掛かると、排気サイレンサやテールパイプに泥等が抱き込まれて付着、固化する場合や、テールパイプに泥等が侵入する場合がある。特にコンバインが湿田で走行する場合には排気装置に泥等が大量に付着し、排気装置内への泥等の侵入も増大するため、コンバインの走行性能の低下が問題となる。
【0004】
このため、排気装置が機体上部に配管されたコンバインが開発されており、このような排気装置を備えたコンバインとして、例えば、エンジンルーム内に排気サイレンサが設けられ、前記排気サイレンサに接続されたテールパイプが機体上方に配管されており、前記テールパイプの後部が脱穀部の上部に固定されているコンバインが開発されている。また、エンジンからのエキゾーストパイプが機体上方に配管され、前記エキゾーストパイプに接続される排気サイレンサが脱穀部の上部に固定されており、テールパイプが前記排気サイレンサに接続されているコンバインも開発されている。
【0005】
上記のように排気装置を機体上部に配管したコンバインによれば、走行中に巻上げられた泥等が排気装置に掛かり難くなり、排気装置に泥等が抱き込まれることや、排気装置に泥等が侵入することが防止される。このため、排気装置の泥等の抱き込みや、泥等の侵入によるコンバインの走行性能の低下を防止することができる。
【0006】
一方、穀物を貯溜するグレンタンク、及びグレンタンク内の穀物をトラックの荷台等に移送するための排出オーガを備えたコンバインが従来から知られており、また、排出オーガが上下方向に俯仰自在かつ左右方向に旋回自在に構成されており、排出オーガの使用位置を予め設定しておき、使用時には前記使用位置へ自動的に旋回させるオートセット機能や、使用後にオーガレストの位置まで自動的に回帰・載置固定させるオートリターン機能を備えたコンバインも知られている。
【特許文献1】特開2005−261279号公報 (第26図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、排気装置が機体上部に配管されたコンバインの場合、排気装置の一部がコンバインの上部に突出する。また、テールパイプに藁屑や作物等が掛からないようにするため、テールパイプの高さをある程度高く設置する必要もある。そのため、排出オーガを不用意に俯仰、旋回させると、排気装置と排出オーガとが干渉して、双方とも変形、破損するおそれがある。
【0008】
また、排気装置が機体上部に配管されたコンバインの場合、排出オーガをテールパイプの排気口に接近して排気ガスに当たる位置まで旋回させて使用できるようにすると、排気ガスに含まれる煤が排出オーガに付着しやすくなり、排出オーガの表面が汚れやすくなるという問題もある。
【0009】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、機体上部に配管された排気装置と排出オーガとの干渉を防止するとともに、排気ガスによる排出オーガの汚れを防止したコンバインの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1に記載の発明では、刈取り、脱穀、選別後の籾を貯留するグレンタンクと、
上下方向と水平方向に回動自在に配置されて、前記グレンタンクより籾を排出する排出オーガと、
機体前方に設けられたエンジンに接続されて、機体上方から排気ガスを排出する排気装置と、を備えたコンバインであって、
前記排気装置と干渉する可能性のある領域に前記排出オーガを侵入させないようにしたことを特徴とするコンバインとする。
【0012】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、
排出オーガの上下角度を変化させる上下方向駆動手段と、
排出オーガの水平角度を変化させる水平方向駆動手段と、
排出オーガの上下角度を検出する上下角度検出手段と、
排出オーガの水平角度を検出する水平角度検出手段と、
排気装置と排出オーガとが干渉する可能性のある領域に対応する排出オーガの上下角度及び水平角度を記憶したデータ記憶部と、
前記上下角度検出手段及び水平角度検出手段の検出信号を一つの入力信号とし、前記上下方向駆動手段及び水平方向駆動手段を作動させるための制御信号を形成する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記上下角度検出手段及び水平角度検出手段からの検出信号により、排出オーガの位置は排気装置と干渉する可能性のある領域にあると検出されたときには、前記上下方向駆動手段及び水平方向駆動手段を作動又は停止させて排出オーガと排気装置の干渉を回避させる信号を発生することを特徴とするコンバインとする。
【0013】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記排出オーガの可動域において、排出オーガが排気装置と干渉する可能性のある領域にガード部材を設けたことを特徴とするコンバインとする。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、排出オーガの回動時に排気装置と干渉する可能性のある領域にガード部材を設けるとともに、
データ記憶部は、前記ガード部材と排出オーガとが干渉する可能性のある領域に対応する排出オーガの上下角度及び水平角度を記憶し、
制御手段は、上下角度検出手段及び水平角度検出手段からの検出信号により、排出オーガの位置は前記ガード部材と干渉する可能性のある領域にあると検出されたときには、前記上下方向駆動手段及び水平方向駆動手段を作動又は停止させて排出オーガとガード部材の干渉を回避させる信号を発生することを特徴とするコンバインとする。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項1から4のいずれか1項に記載の発明において、排気装置と干渉する可能性のある領域、及びテールパイプの排気口に接近する領域に排出オーガを侵入させないようにしたことを特徴とするコンバインとする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、排気装置と干渉する可能性のある領域に排出オーガを侵入させないようにしたため、コンバインの機体上部に配管された排気装置と排出オーガとの干渉を防止することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、手動操作、自動操作に関わらず、排出オーガの位置が排気装置と干渉する可能性のある領域にあると検出されたときには、排出オーガと排気装置の干渉を回避させる信号を発生し、排出オーガを上昇又は停止等させることができる。このため、コンバインの機体上部に配管された排気装置と排出オーガとの干渉を防止することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、排出オーガが排気装置と干渉する可能性のある領域に接近した場合でも、排気装置はガード部材によって防護されているため、コンバインの機体上部に配管された排気装置と排出オーガとの干渉を防止することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、排出オーガが排気装置と干渉する可能性のある領域に接近した場合でも、排気装置はガード部材によって防護されており、また、排出オーガの位置が前記ガード部材と干渉する可能性のある領域にあると検出されたときは、排出オーガとガード部材の干渉を回避させる信号を発生し、排出オーガを上昇又は停止等させることができる。このため、コンバインの機体上部に配管された排気装置と排出オーガとの干渉をより確実に防止することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、排気装置と干渉する可能性のある領域に排出オーガを侵入させないようにしたことに加えて、テールパイプの排気口に接近する領域にも排出オーガを侵入させないようにしたことにより、排気ガスに含まれる煤が排出オーガに付着し難くなり、排出オーガの表面の汚れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【実施例1】
【0023】
本発明の実施例1に係るコンバイン11について、図を用いて説明する。図1は本発明の実施例1に係るコンバイン11の側面図、図2はコンバイン11の正面図、図3はコンバイン11の平面図、図4は排気装置41の側面簡略図、図5は排気装置41の正面簡略図、図6は排気装置41の平面簡略図、図7は縦送りオーガ22と横送りオーガ23の接続部の側面簡略図、図8は排出オーガコントロールパネル61の斜視簡略図、図9は排出オーガコントローラ71の模式図である。
【0024】
まずコンバイン11の全体構成について説明する。図1、図2、図3、図4に示すように、コンバイン11は、左右のクローラを支承してなるクローラ走行装置12上に機体(シャーシ)13が配設されており、この機体13の前部右側にエンジン35が搭載されている。機体13の前方にはエンジン35の駆動力を変速してクローラ走行装置12に伝達するミッションケース38が配設されており、ミッションケース38にはクローラ走行装置12の駆動輪の車軸が設けられている。また、機体13の前部には刈取部14、機体13の上部において走行方向の左側には選別部16が設けられ、選別部16の上部には扱胴及びフィードチェーン等を具備する脱穀部15が設けられている。機体13の上部の右側前部にはキャビン31及び座席32が設けられており、機体13の右側後部には選別後の穀粒を貯留するグレンタンク17が設けられている。グレンタンク17の底部には排出コンベア18が前後方向に配設され、グレンタンク17の後部には排出オーガ21が立設されている。グレンタンク17に貯溜された穀粒は排出コンベア18により後方に搬送され、排出オーガ21の縦送りオーガ22、横送りオーガ23を経て、横送りオーガ23先端部の排出口24からトラック等へ排出される。
【0025】
図4に示すように、機体13前方のキャビン31の下方には前記エンジン35が搭載されるエンジンルーム33が設けられている。エンジンルーム33は上面、前面、左右側面がエンジンルームカバー(図示せず)により構成されており、後面はエンジンルーム後部フレーム34により構成されている。エンジンルーム33には、冷却用の外気を取り入れるための開部(図示せず)が右側方に設けられ、キャビン31の後部からエンジン35にかけては、吸気用プレクリーナー37や吸気サイレンサ等を配設した吸気経路が形成される。吸気経路はエンジン35に連結されており、この吸気経路を経由して取り込まれた外気は、エンジン35内で燃焼に使用される。
【0026】
次に排気装置41について説明する。図4に示すように、排気装置41はエンジン35の排気マニホールド36に接続され、エンジン35で発生した排気ガスの排気音を低減させて排出するものである。排気装置41は、エキゾーストパイプ42、排気サイレンサ43、テールパイプ45を有している。
【0027】
前記エキゾーストパイプ42は、エンジン35に接続されてエンジン35からの排気ガスを機体13の上方に導くものであり、エキゾーストパイプ42の全体形状は、図4、図5、図6に示すように、エンジン35の排気マニホールド36に接続される部分である上流側端部から機体13の後方に向けて延出して、エンジン35上で機体13の左側に向けて屈曲し、次に、機体13の後方に向けて屈曲してエンジンルーム後部フレーム34を貫通し、前記エンジンルーム後部フレーム34の貫通部の後方で機体13の上方に向けて屈曲しつつ、かつ機体13の左側に向けて延出し、次に、グレンタンク17と脱穀部15の間まで至ったところで再度機体13の後方に向けて水平方向に屈曲し、排気サイレンサ43に接続される下流側端部に至るように配管される形状である。
【0028】
前記排気サイレンサ43は、エキゾーストパイプ42に接続されて排気音を低減させるためのものであり、図4に示すように、脱穀部15の上方に配置されている。排気サイレンサ43の断面形状は略円形の筒状体であり、一端部にはエキゾーストパイプ42に接続するためのサイレンサ接続管44が設けられている。他端部には排気ガスを排出するテールパイプ45が設けられている。エキゾーストパイプ42との接続は、エキゾーストパイプ42の下流側端部と、サイレンサ接続管44とを接合させ、ボルト等で固定することにより行う。
【0029】
前記テールパイプ45は、図1、図4に示すように、排気サイレンサ43の下流側に設けられてエンジン35からの排気ガスを排出するためのものであり、排気サイレンサ43の上部から機体13の上方に向けて取り付けられている。テールパイプ45は、フィードチェーン19等からある程度離隔させてテールパイプ45に藁屑や作物等が掛からない高さとしている。また、テールパイプ45の排気口46は、座席32に着座したオペレータの位置より高所となるように設けている。これにより、テールパイプ45の排気口46から排出される排気ガスがオペレータに届きにくくなり、オペレータの感じる排気ガスの熱、臭気が低減してコンバイン11の快適性が向上している。さらに、テールパイプ45の排気口46は吸気用プレクリーナー37の位置よりも高所としており、テールパイプ45の排気口46から排出される排気ガスが、吸気用プレクリーナー37から吸引される外気に混入しにくくなり、コンバイン11の走行性能を向上させている。
【0030】
次に、排気装置41の支持について説明する。図4に示すように、エキゾーストパイプ42は、エンジンルーム後部フレーム34で支持されるようにしており、排気サイレンサ43は、脱穀部15において支持されるようにしている。エンジンルーム後部フレーム34と、脱穀部15とでは振動が異なるが、エンジンルーム後部フレーム34とエキゾーストパイプ42の固定は、防振部材を介在させて防振を図っており、エキゾーストパイプ42の支持部に亀裂が発生することを防止している。
【0031】
前述のように、排気装置41を機体13の上方に配管、支持させると、排気装置41に藁屑等が蓄積されにくくなる。また、排気サイレンサ43の脱穀部15での支持部では、排気サイレンサ43と脱穀部15との間隔を十分確保しており、排気サイレンサ43下部にハーネス、注油ホース等が配置されても、熱による影響を防ぐようにしている。
【0032】
次に、排出オーガ21について説明する。図1に示すように、排出オーガ21は縦送りオーガ22と横送りオーガ23とを有している。図7に示すように、横送りオーガ23の根元側は縦送りオーガ22の上部に上下方向に回動自在に接続される。縦送りオーガ22の側部にはブラケット55が突設され、横送りオーガ23の側部にはブラケット56が突設される。前記ブラケット55には上下方向駆動手段としてのシリンダ51の一端が回転自在に取り付けられ、前記ブラケット56にはシリンダ51の他端が回転自在に取り付けられる。シリンダ51の伸縮により、排出オーガ21は上下方向に俯仰する。また、横送りオーガ23には上下角度検出手段としての回転式ポテンショメータ53が設けられており、回転式ポテンショメータ53により、排出オーガ21の上下角度が検出される。
【0033】
前記縦送りオーガ22の中途部には、図7に示すように、平歯車57が外嵌固定されている。機体13側には水平方向駆動手段としてのアクチュエータ52が設けられており、アクチュエータ52の回転軸には平歯車58が設けられている。平歯車57と平歯車58は歯合しており、アクチュエータ52を作動させることにより、縦送りオーガ22および横送りオーガ23は一体的に水平方向に旋回する。平歯車58と同軸に水平角度検出手段としての回転式ポテンショメータ54が設けられる。回転式ポテンショメータ54により、排出オーガ21の水平角度が検出される。尚、前記上下角度検出手段及び前記水平角度検出手段は、回転式ポテンショメータの他、レゾルバ、ロータリーエンコーダ等の回転角度検出手段を用いることができる。
【0034】
次に、キャビン31内に配設される排出オーガ操作手段について説明する。キャビン31内に配設された座席32の側方に排出オーガコントロールパネル61が設けられる。図8に示すように、排出オーガコントロールパネル61上面には排出オーガ手動操作レバー62、セットダイヤル63、オートセットスイッチ64、オートリターンスイッチ65等が配置される。
【0035】
前記排出オーガ手動操作レバー62は前後左右の四方向に傾倒可能に構成されている。手動操作で排出オーガ手動操作レバー62を操作することにより、前記上下方向駆動手段としてのシリンダ51と、前記水平方向駆動手段としてのアクチュエータ52を作動させて、排出オーガ21の上下方向の俯仰操作、及び水平方向の旋回操作を行う。
【0036】
前記セットダイヤル63はオートセットスイッチ64と組み合わせて排出オーガ21のオートセットに使用される。オートセットにより、予め設定された目標位置まで排出オーガ21を自動で俯仰及び旋回させることができる。セットダイヤル63は前記目標位置を設定するためのものであり、オートセットスイッチ64を押すことにより、前記シリンダ51と前記アクチュエータ52が作動し、排出オーガ21は縦送りオーガ22を中心として目標位置まで自動的に俯仰及び旋回する。
【0037】
前記オートリターンスイッチ65は排出オーガ21による穀物排出作業の終了時などに使用される。オートリターンスイッチ65を押すことにより、前記シリンダ51と前記アクチュエータ52が作動し、排出オーガ21は自動的に俯仰及び旋回し、オーガレスト25上に載置される。
【0038】
図9に示すように、排出オーガ21の俯仰及び旋回を制御するために、制御手段としての排出オーガコントローラ71が設けられている。排出オーガコントローラ71は、排出オーガ手動操作レバー62の手動操作や、オートセット、オートリターンなどの排出オーガ21の俯仰及び旋回において、前記上下方向駆動手段としてのシリンダ51と、前記水平方向駆動手段としてのアクチュエータ52を制御するものである。排出オーガコントローラ71は、主にCPU72とデータ記憶部73とで構成される。前記CPU72は、上下角度検出手段としての回転式ポテンショメータ53及び水平角度検出手段としての回転式ポテンショメータ54の検出信号を一つの入力信号とする。
【0039】
前記データ記憶部73には、排出オーガ21の手動操作、オートセット及びオートリターンに関するデータと、コンバイン11の排気装置41及びキャビン31と排出オーガ21との干渉を考慮したデータとが記憶される。図1、図4に示すように、コンバイン11の機体13上部に配管された排気装置41のテールパイプ45及びキャビン31は、オーガレスト25に載置固定されたときの排出オーガ21の高さよりも上方に突出しているため、排出オーガ21がオーガレスト25に収納回動する時に、または、排出位置まで回動する時に、テールパイプ45及びキャビン31に干渉する可能性がある。また、オーガレスト25より下の部分である排気サイレンサ43等についても、排出オーガ21がオーガレスト25から外れている場合は、排出オーガ21をオーガレスト25より低い領域で俯仰及び旋回させることができるため、排出オーガ21とテールパイプ45等とが干渉する可能性がある。そこで、排気装置41及びキャビン31に干渉する可能性のある位置に対応する排出オーガ21の上下角度及び水平角度を求め、上下角度及び水平角度のデータをデータ記憶部73に記憶させる。尚、本実施例ではデータ記憶部73としてEEPROM(Electrionically Erasable and Programmable Read Only Memory:不揮発性半導体メモリの一種で、電気的に内容を書き込み可能な読み出し専用記憶装置)を用いたが、その他の形式のROMや他の記憶媒体などを用いてもよい。
【0040】
前記のように構成された排出オーガコントローラ71によれば、排出オーガ21が俯仰及び旋回している状態で回転式ポテンショメータ53、54から継続的に入力される入力信号及びデータ記憶部73に記憶されたデータを基に、CPU72は手動操作、オートセット及びオートリターンに関する演算処理を行う。そして、排出オーガ21の位置が排気装置41及びキャビン31と干渉する可能性のある位置であると検出されたときには、前記CPU72は、排出オーガ21を自動的に上昇又は停止させるための制御信号を出力し、排出オーガ21は自動的に上昇又は停止して排気装置41及びキャビン31との干渉を回避することができる。
【0041】
尚、排出オーガ21をテールパイプ45の排気口46に接近可能とし、排気口46からの排気ガスが当たる位置まで俯仰及び旋回できるようにすると、排気ガスに含まれる煤が排出オーガに付着しやすくなり、排出オーガの表面が汚れやすくなる。そこで、上記のデータに加えて、排気口46からの排気ガスが当たる可能性のある位置に対応する排出オーガ21の上下角度及び水平角度を求め、上下角度及び水平角度のデータをデータ記憶部73に記憶させるようにしてもよい。この場合、排出オーガ21の位置が排気口46からの排気ガスに当たる可能性のある位置であると検出されたときには、前記CPU72は、排出オーガ21を自動的に上昇又は停止させるための制御信号を出力し、排出オーガ21は自動的に上昇又は停止して、排出オーガ21がテールパイプ45の排気口46に接近することを防止する。
【0042】
尚、上記実施例1の説明では、排気装置41のテールパイプ45の高さがオーガレスト25に載置固定されたときの排出オーガ21の高さよりも高く、上方に突出しているコンバイン11について説明したが、図10及び図11に示すように、テールパイプ45の高さがオーガレスト25に載置固定されたときの排出オーガ21の高さよりも低いコンバイン11であっても、本発明を適用することができる。
【0043】
すなわち、図10及び図11に示すコンバイン11において、排出オーガ25がオーガレスト25から外れている場合は、排出オーガ25をオーガレスト25より低い領域で俯仰及び旋回させることができるため、排出オーガ25がテールパイプ45又は排気サイレンサ43等と干渉する可能性がある。そこで、テールパイプ45の高さがオーガレスト25に載置固定されたときの排出オーガ21の高さよりも低いコンバイン11であっても、排気装置41と干渉する可能性のある位置に対応する排出オーガ21の上下角度及び水平角度を求め、上下角度及び水平角度のデータをデータ記憶部73に記憶させることにより、排気装置41と排出オーガ25の干渉を回避することができる。
【実施例2】
【0044】
次に、本発明の実施例2に係るコンバイン11について説明する。実施例2では、コンバイン11の機体13上方にガード部材81を設けた点が実施例1とは大きく異なっている。実施例1と同一部分は同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0045】
図12に示すように、コンバイン11の機体13上方には、ガード部材81が設けられている。ガード部材81は、排出オーガ21がテールパイプ45に接近したときに、排出オーガ21と当接させ、テールパイプ45と排出オーガ21との干渉を防止する部材である。ガード部材81の取付位置及び形状は、テールパイプ45に干渉する可能性のある位置に対応する排出オーガ21の上下角度及び水平角度を求めた上で、その上下角度及び水平角度に排出オーガ21が侵入する前に、横送りオーガ23がテールパイプ45より先にガード部材81に当接する位置及び形状とする。
【0046】
具体的には、図12、図13に示すように、本実施例のガード部材81は、金属パイプを略逆U字状に屈曲して開放側が下となるようにしたガード部材主体82と、ガード部材主体82を後方から支持する支持体83とから構成され、前記ガード部材主体82及び支持体83は溶接手段で連結されている。また、ガード部材主体82及び支持体83の下端部に取付台(図示せず)を設け、この取付台を機体13上方に固定してガード部材81を取り付けている。そして、ガード部材主体82が正面視(より正確にはテールパイプ45と縦送りオーガ22を結ぶ前方から見て)で排気装置41の周囲を囲むように形成されて、該排気装置41の後方に配置される。但し、排気装置41の側部または前方に配置することも可能である。
【0047】
前記のような構成において、排出オーガ21の回動操作を誤って操作しても、排出オーガ21はガード部材81に当接し、排出オーガ21の旋回が停止され、排気装置41と当接することはない。つまり、排気装置41と排出オーガ21との干渉を防止することができる。尚、ガード部材81の周囲には緩衝部材を設けてもよく、また、取り付け位置は、縦送りオーガ22に接近させて取り付けることにより、ガード部材81を小型にすることができる。
【0048】
また、排気ガスによる排出オーガの汚れを防止するため、排気口46からの排気ガスが当たる可能性のある位置に対応する排出オーガ21の上下角度及び水平角度を求めた上で、その上下角度及び水平角度に排出オーガ21が侵入する前に、横送りオーガ23がガード部材81に当接するようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施例2の説明では、排気装置41のテールパイプ45の高さがオーガレスト25に載置固定されたときの排出オーガ21の高さよりも高く、上方に突出しているコンバイン11について説明したが、テールパイプ45の高さがオーガレスト25に載置固定されたときの排出オーガ21の高さよりも低いコンバイン11(図10、図11参照。)であっても、排気装置41と排出オーガ25の干渉の可能性があるため、本発明を適用することができる。本発明に係るガード部材81をコンバイン11の機体13上方に設けることにより、排気装置41と排出オーガ25の干渉を防止することができる。
【0050】
尚、実施例は上記に限定されるものではなく、例えば、以下のように変更してもよい。
【0051】
排気装置41を防護するガード部材81を設けた上で、排出オーガ21がガード部材81に干渉しないように排出オーガ21の動作を制御するようにしてもよい。このように構成することで、排出オーガコントローラ71が動作不良を起こした場合でも、排出オーガ21はガード部材81に当接し、排気装置41と当接して破損することはないのである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施例1に係るコンバイン11の全体側面図。
【図2】コンバイン11の正面図。
【図3】コンバイン11の平面図。
【図4】排気装置41の側面簡略図。
【図5】排気装置41の正面簡略図。
【図6】排気装置41の平面簡略図。
【図7】縦送りオーガ22と横送りオーガ23の接続部の側面簡略図。
【図8】排出オーガコントロールパネル61の斜視簡略図。
【図9】排出オーガコントローラ71の模式図。
【図10】他の実施例に係るコンバイン11の全体側面図。
【図11】他の実施例に係るコンバイン11の全体側面図。
【図12】本発明の実施例2に係るコンバイン11の全体側面図。
【図13】コンバイン11の正面図。
【符号の説明】
【0053】
11 コンバイン
12 クローラ走行装置
13 機体
14 刈取部
15 脱穀部
16 選別部
17 グレンタンク
18 排出コンベア
19 フィードチェーン
21 排出オーガ
22 縦送りオーガ
23 横送りオーガ
24 排出口
25 オーガレスト
31 キャビン
32 座席
33 エンジンルーム
34 エンジンルーム後部フレーム
35 エンジン
36 排気マニホールド
37 吸気用プレクリーナー
38 ミッションケース
41 排気装置
42 エキゾーストパイプ
43 排気サイレンサ
44 サイレンサ接続管
45 テールパイプ
46 排気口
51 上下方向駆動手段としてのシリンダ
52 水平方向駆動手段としてのアクチュエータ
53 上下角度検出手段としての回転式ポテンショメータ
54 水平角度検出手段としての回転式ポテンショメータ
55、56 ブラケット
57、58 平歯車
61 排出オーガコントロールパネル
62 排出オーガ手動操作レバー
63 セットダイヤル
64 オートセットスイッチ
65 オートリターンスイッチ
71 制御手段としての排出オーガコントローラ
72 CPU
73 データ記憶部
81 ガード部材
82 ガード部材主体
83 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取り、脱穀、選別後の籾を貯留するグレンタンクと、
上下方向と水平方向に回動自在に配置されて、前記グレンタンクより籾を排出する排出オーガと、
機体上に搭載されたエンジンに接続されて、機体上方から排気ガスを排出する排気装置と、を備えたコンバインであって、
前記排気装置と干渉する可能性のある領域に前記排出オーガを侵入させないようにしたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
排出オーガの上下角度を変化させる上下方向駆動手段と、
排出オーガの水平角度を変化させる水平方向駆動手段と、
排出オーガの上下角度を検出する上下角度検出手段と、
排出オーガの水平角度を検出する水平角度検出手段と、
排気装置と排出オーガとが干渉する可能性のある領域に対応する排出オーガの上下角度及び水平角度を記憶したデータ記憶部と、
前記上下角度検出手段及び水平角度検出手段の検出信号を一つの入力信号とし、前記上下方向駆動手段及び水平方向駆動手段を作動させるための制御信号を形成する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記上下角度検出手段及び水平角度検出手段からの検出信号により、排出オーガの位置は排気装置と干渉する可能性のある領域にあると検出されたときには、前記上下方向駆動手段及び水平方向駆動手段を作動又は停止させて排出オーガと排気装置の干渉を回避させる信号を発生することを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記排出オーガの可動域において、排出オーガが排気装置と干渉する可能性のある領域にガード部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項4】
排出オーガの回動時に排気装置と干渉する可能性のある領域にガード部材を設けるとともに、
データ記憶部は、前記ガード部材と排出オーガとが干渉する可能性のある領域に対応する排出オーガの上下角度及び水平角度を記憶し、
制御手段は、上下角度検出手段及び水平角度検出手段からの検出信号により、排出オーガの位置は前記ガード部材と干渉する可能性のある領域にあると検出されたときには、前記上下方向駆動手段及び水平方向駆動手段を作動又は停止させて排出オーガとガード部材の干渉を回避させる信号を発生することを特徴とする請求項2に記載のコンバイン。
【請求項5】
排気装置と干渉する可能性のある領域、及びテールパイプの排気口に接近する領域に排出オーガを侵入させないようにしたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−244309(P2007−244309A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73488(P2006−73488)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】