説明

コンバイン

【課題】材料条件等に拘わらず安定状態で二番流量制御を開始することができるだけでなく、刈取作業開始直後におけるチャフシーブでのオーバーフローを回避し、三番飛散を防止する。
【解決手段】フィン開度を変更可能なチャフシーブと、二番還元物の流量を検出する二番流量センサSと、二番流量センサSの検出値に基づいてチャフシーブのフィン開度を自動制御する二番流量制御手段と、を備えるコンバインであって、該コンバインが刈取作業状態であるか否かを判断する刈取作業判断手段と、刈取作業開始後、二番流量センサSの検出値が所定値以上となるまでのあいだ、二番流量制御の開始を規制する二番流量制御開始規制手段と、二番流量制御開始規制手段が二番流量制御の開始を規制しているあいだ、チャフシーブのフィン開度を車速に応じた所定の開度に維持するフィン開度維持手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二番流量センサの検出値に基づいてチャフシーブのフィン開度を自動制御する二番流量制御手段を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脱穀選別部に設けられるチャフシーブのフィン開度を変更可能に構成すると共に、脱穀選別部の処理状況に応じてチャフシーブのフィン開度を自動制御するコンバインが知られている。例えば、特許文献1〜3に示されるコンバインでは、二番還元物の流量を二番流量センサで検出すると共に、二番流量センサの検出値に基づいてチャフシーブのフィン開度を自動制御する二番流量制御が行われるようになっている。このような二番流量制御によれば、材料条件等に拘わらず二番流量を適正化することができるので、高効率で精度の高い脱穀選別処理を行うことが可能になる。
【特許文献1】実公平1−20844号公報
【特許文献2】実公平3−42号公報
【特許文献3】特許第2855523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、刈取作業開始直後においては、刈取茎稈が脱穀選別部に到達していないため、刈取作業開始直後から二番流量制御を開始すると、チャフシーブのフィン開度が必要以上に閉じた状態となったり、不安定な制御状態が発生する惧れがある。そこで、二番流量制御を行う従来のコンバインでは、前処理部の茎稈搬送経路に設けられる茎稈検出スイッチ(前処理扱深さメインスイッチ)で刈取作業の開始を判断すると共に、刈始めの茎稈が脱穀選別部に到達するタイミングを車速に基づいて演算し、該演算したタイミングで二番流量制御を開始するようにしており、また、二番流量制御開始時におけるチャフシーブのフィン開度を車速に基づいて設定している(例えば、特許文献2、3参照)。
【0004】
しかしながら、刈始めの茎稈から脱穀された穀粒がチャフシーブに到達するタイミングは、刈取材料の性状(屑の多さ、水分量の違いなど)によりズレが生じるため、穀粒が到達していない状態で二番流量制御が始まる惧れがあった。そして、穀粒が無い状態で二番流量制御が始まると、チャフシーブのフィン開度が必要以上に閉じた状態に制御されてしまうため、二番還元物が二番流量センサ位置に到達して正常な制御状態になるまでのあいだに、チャフシーブがオーバーフロー状態になり、三番飛散が発生する可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、フィン開度を変更可能なチャフシーブと、二番還元物の流量を検出する二番流量センサと、二番流量センサの検出値に基づいてチャフシーブのフィン開度を自動制御する二番流量制御手段と、を備えるコンバインであって、該コンバインが刈取作業状態であるか否かを判断する刈取作業判断手段と、刈取作業開始後、二番流量センサの検出値が所定値以上となるまでのあいだ、二番流量制御の開始を規制する二番流量制御開始規制手段と、二番流量制御開始規制手段が二番流量制御の開始を規制しているあいだ、チャフシーブのフィン開度を車速に応じた所定の開度に維持するフィン開度維持手段と、を備えることを特徴とする。
このようにすると、二番還元物が二番流量センサ位置まで到達してから二番流量制御が開始されるので、材料条件等に拘わらず安定状態で二番流量制御を開始することができる。しかも、刈取作業開始後、二番流量制御が開始されるまでのあいだは、チャフシーブのフィン開度が車速に応じた所定の開度に維持されるので、刈取作業開始直後におけるチャフシーブでのオーバーフローを回避し、三番飛散を防止することができると共に、確実に二番還元させてスムーズに二番流量制御に移行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
[第一実施形態]
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、茎稈を刈取る前処理部2と、刈取茎稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀選別部3と、脱穀済みの排稈を後処理する後処理部4と、選別した穀粒を貯留する穀粒タンク5と、オペレータが乗車する操作部6と、クローラ式の走行部7とを備えて構成されている。
【0007】
前処理部2は、未刈り茎稈の分草及び引起しを行いつつ、茎稈の株元を刈り取り、刈り取った茎稈を脱穀選別部3に向けて搬送する。脱穀選別部3への搬送過程では、稈長に応じた茎稈の挟持位置調整が行われ、脱穀選別部3における扱深さが適正に保たれるようになっている。また、前処理部2は、その全体が走行機体の前端部に昇降自在に連結されており、非刈取走行時には上昇操作され、刈取走行時には下降操作される。
【0008】
図2に示すように、脱穀選別部3は、茎稈を扱室8に沿って搬送する脱穀フィードチェン9と、脱穀済みの茎稈を後処理部4まで搬送する排藁搬送装置10と、扱室8に回転自在に内装され、搬送茎稈から処理物(混合物を含む穀粒)を脱穀する扱胴11と、ここで脱穀された処理物を漏下する第一受網12と、第一受網12から漏下せずに扱室8の終端まで達した処理物を単粒化処理する処理胴13と、ここで単粒化された処理物を漏下させる第二受網14と、第一受網12や第二受網14から漏下した処理物を揺動選別する揺動選別体15と、該揺動選別体15の前方で選別風を起風する圧風ファン16と、一番物を回収する一番ラセン17と、二番物を回収する二番ラセン18と、二番ラセン18の前方で二番選別風を起風する二番選別ファン19と、揺動選別体15の終端部上方に設けられる排塵室20と、該排塵室20に回転自在に内装される排塵ファン21とを備えて構成されている。そして、一番ラセン17によって回収された一番物は、揚穀筒22を介して穀粒タンク5に貯留され、二番ラセン18によって回収された二番物は、二番還元筒23を介して揺動選別体15上に還元されるようになっている。
【0009】
揺動選別体15は、第一受網12から漏下した処理物を後方へ順次搬送する揺動流板24と、該揺動流板24から搬送される処理物を篩い選別するチャフシーブ25と、該チャフシーブ25から漏下した処理物をさらに篩い選別するグレンシーブ26と、チャフシーブ25の後方に配置されるストロラック27とを備える揺動アッセンブリであり、図示しない駆動機構(クランク機構、カム機構など)によって所定の周期で連続的に往復揺動される。
【0010】
チャフシーブ25は、前後方向に所定間隔を存して並列する複数のフィン25aを備えて構成されている。各フィン25aは、前低後高状に傾斜しており、揺動選別体15の揺動に伴って処理物を後方へ移送しつつ、フィン25a間の隙間から穀粒を漏下させる。チャフシーブ25におけるフィン25a間の隙間(フィン開度)は変更可能であり、このフィン開度変更に基づいて二番還元物の流量が適正化されるようになっている。具体的には、二番還元筒23の二番還元口Kに、二番還元物の流量を検出する二番流量センサSを設けると共に、該二番流量センサSの検出値が所定の目標値となるように、チャフシーブ25のフィン開度を自動制御する二番流量制御が行われるようになっている。
【0011】
図3〜図5に示すように、二番還元筒23は、二番ラセン18の終端から二番還元口Kに至る二番還元用の穀粒流路を形成しており、その内部には、二番物を揚上搬送するラセン搬送体28が回転自在に内装されている。また、ラセン搬送体28の上端部には、二番物を外周方向に投擲する放出板29と、投擲された二番物を二番還元口Kに向けて放出ガイドする円弧状の放出ガイド30とが設けられており、二番還元筒23の上端部まで搬送された二番物は、放出板29の投擲作用並びに放出ガイド30のガイド作用を受けて、二番還元口Kから積極的に放出されるようになっている。
【0012】
図3〜図6に示すように、本実施形態の二番流量センサSは、二番還元筒23の終端部に形成される穀粒流路(二番物放出流路)において穀粒の流量を検出するように設けられており、穀粒流路の内部で穀粒と衝突する衝突板31と、衝突板31に作用する衝突力が回動力として伝達される回動部材32と、回動部材32を回動自在に支持する支点軸33と、穀粒流路の外部で回動部材32の回動力を検出する感圧センサ34とを備えて構成され、該感圧センサ34の検出値を二番物の検出流量として出力するようになっている。
【0013】
具体的に説明すると、二番還元筒23の天板23aには、二番流量センサSの取付孔(図示せず)が形成されており、この取付孔を塞ぐように二番流量センサSの取付プレート35が取り付けられる。取付プレート35は、長孔35aを貫通する取付ボルト36で天板23aに取付けられており、取付ボルト36を緩めると、長孔35aに沿った取付プレート35の位置変更により、二番流量センサSの取付角度を調節することが可能になる。
【0014】
取付プレート35には、回動部材32が貫通可能な貫通孔35bが形成されると共に、その周縁から複数の支持プレート38が角筒状に立設されている。角筒状に立設された支持プレート38の内部には、回動部材32が挿通されると共に、側方から支持プレート38及び回動部材32を貫く支点軸33により、回動部材32が回動自在に支持される。本実施形態の支点軸33は、支点軸ベース39及び支点軸ベース取付ボルト40を介して支持プレート38に取り付けられており、支点軸33の位置調節が容易である。
【0015】
衝突板31は、穀粒流路の内部に位置する回動部材32の一端部に一体的に設けられる。本実施形態では、放出ガイド30の延長線に沿って衝突板31を配置することにより、比較的流れ方向が安定した穀粒を衝突板31に衝突させるようになっている。尚、放出ガイド30の裏側には、送風装置41が設けられており、この送風装置41の送風により、衝突板31の裏側に溜まった物が選別室内に向けて吹き飛ばされるようになっている。
【0016】
感圧センサ34は、穀粒流路の外部に位置する回動部材32の他端部に当接するように配置されている。本実施形態の感圧センサ34は、センサベース42及びセンサベース取付ボルト43を介して支持プレート38に取り付けられており、感圧センサ34の位置調節や交換が容易である。回動部材32における感圧センサ34との当接面は、衝突板31の取付面と同じ面である。また、その反対側の面には、調整ボルト44が当接しており、その進退操作により回動部材32の微小回動範囲調整(ガタ取り調整)が可能となっている。
【0017】
図7に示すように、コンバイン1には、マイコン(CPU、ROM、RAM、カレンダーなどを含む)からなる制御装置45が搭載されている。制御装置45の入力側には、前処理部2の運転状態を検出する前処理運転状態検出センサ46と、脱穀選別部3の運転状態を検出する脱穀運転状態検出センサ47と、走行主変速レバー(図示せず)の操作位置を検出する主変速レバーポテンショメータ48と、前処理部2の高さを検出する前処理ポテンショメータ49と、前処理部2の所定の茎稈搬送位置で搬送茎稈の有無を検出する前処理扱深さメインスイッチ50と、刈取材料の水分量を検出する水分計51と、車軸回転に基づいて車速を検出するT/M回転センサ52と、チャフシーブ25のフィン開度を検出するフィン開度ポテンショメータ53と、前述した二番流量センサSとが接続されており、また、制御装置45の出力側には、チャフシーブ25のフィン開度を変更するフィン開度調節モータ54が接続されている。
【0018】
そして、制御装置45においては、二番流量センサSの検出値が所定の目標値となるように、チャフシーブ25のフィン開度を自動制御する二番流量制御が実行される。具体的には、二番流量センサSの検出値が目標値を超えた場合は、二番還元物の流量を減らすべく、チャフシーブ25のフィン開度を大きくする一方、二番流量センサSの検出値が目標値に満たない場合は、二番還元物の流量を増やすべく、チャフシーブ25のフィン開度を小さくするが、このような制御手順は、従来の二番流量制御とほぼ同様であるため、二番流量制御の詳細フロー及び説明は省略する。
【0019】
本発明は、コンバイン1が刈取作業状態であるか否かを判断する刈取作業判断手段と、刈取作業開始後、二番流量センサSの検出値が所定値以上となるまでのあいだ、二番流量制御の開始を規制する二番流量制御開始規制手段と、二番流量制御開始規制手段が二番流量制御の開始を規制しているあいだ、チャフシーブ25のフィン開度を車速に応じた所定の開度に維持するフィン開度維持手段と、を備えることを特徴としている。このようなコンバイン1によれば、二番還元物が二番流量センサSの位置まで到達してから二番流量制御が開始されるので、材料条件等に拘わらず安定状態で二番流量制御を開始することができる。しかも、刈取作業開始後、二番流量制御が開始されるまでのあいだは、チャフシーブ25のフィン開度が車速に応じた所定の開度に維持されるので、刈取作業開始直後において第一受網12から漏下する処理物の供給量に対してフィン開度が小さすぎることにより発生する二番物の過剰循環や、フィン開度が大きすぎることにより発生する過少循環を防止しつつ、スムーズに二番流量制御に移行することができる。これにより、二番物の過剰循環に伴う動力ロスの増加、三番飛散の増加、損傷粒の増加、二番ラセン18や二番流量センサSの破損などを防止できるだけでなく、二番物の過少循環に伴う自動制御の開始遅れ、選別性能の悪化、枝梗付着粒の増加なども防止することができる。
【0020】
二番流量制御開始規制手段は、刈取作業開始後、二番流量センサSの検出値が所定の既定値以上となるまでのあいだ、二番流量制御の開始を規制するにあたり、前記の既定値を任意に設定することができる。例えば、刈取作業開始後、二番還元物が二番流量センサSの位置に到達したタイミングで二番流量制御を開始するのであれば、前記の既定値を極小値とし、二番流量センサSが極少量の二番還元物を検出したタイミングで二番流量制御を開始させるようにする。また、刈取作業開始後、二番還元物の量が安定してから二番流量制御を開始するのであれば、前記の既定値を二番流量制御の目標値近辺とし、二番流量センサSが十分な量の二番還元物を検出したタイミングで二番流量制御を開始させるようにする。
【0021】
フィン開度維持手段は、刈取作業開始時の車速が速いとき、開き気味にチャフシーブ25のフィン開度を維持し、刈取作業開始時の車速が遅いとき、閉じ気味にチャフシーブ25のフィン開度を維持する。例えば、チャフシーブ25のフィン開度を複数段階にランク分けすると共に、車速の低速域から高速域を数種類の段階に分け、車速が低速域の場合は、チャフシーブ25のフィン開度を小さい開度に維持し、車速が高くなるほど、チャフシーブ25のフィン開度を大きい開度に維持する。
【0022】
刈取作業判断手段は、コンバイン1の各種状態に基づいて刈取作業状態であるか否かを判断する。従来では、前処理扱深さメインスイッチ50がONであるか否かに基づいて刈取作業状態を判断していたが、本実施形態では、前処理部2が運転状態か否か、脱穀選別部3が運転状態か否か、主変速レバーが前進位置であるか否か、前処理部2の高さが所定高さ以下か否か、前処理扱深さメインスイッチ50がONであるか否かに基づいて刈取作業状態を複合的に判断するようになっている。すなわち、上記の条件が全て満たされたとき、初めて刈取作業状態であると判断するので、刈取作業状態であるか否かを正確に判断でき、その結果、非刈取作業状態における不要な制御動作を防止することができる。
【0023】
さらに、本実施形態の制御装置45は、上記の各種手段の他に、目標二番流量決定手段と、行程間フィン開度継承手段と、制御中フィン開度変更手段とを備えている。目標二番流量決定手段は、刈取作業開始時に二番流量制御の目標二番流量を決定する手段であり、本実施形態では、作業を行う日付と、刈取材料の水分量と、車速に基づいて二番流量制御の目標二番流量を決定するようになっている。具体的には、制御装置45内のカレンダーにより、8月と判断した場合は、枝梗が付きやすい極早稲の刈取作業であると推定して、目標二番流量を多めに設定し、9月〜10月と判断した場合は、標準材の刈取作業であると推定して、目標二番流量を標準流量に設定し、さらに、11月と判断した場合は、損傷が発生しやすい晩稲の刈取作業であると推定して、目標二番流量を少なめに設定する。このようにすると、刈取材料の時期的な条件に応じて目標二番流量を設定し、枝梗付着粒や損傷粒の発生を抑制することができる。
【0024】
また、目標二番流量決定手段は、水分計51の検出値に基づいて刈取材料の水分量を判断し、この水分量に基づいて二番流量制御の目標二番流量を増減させる。例えば、刈取材料の水分量が極端に多い場合(例えば、30%以上)や、刈取材料の水分量が極端に少ない場合(例えば、15%以下)、目標二番流量を少なくし、実際の二番流量が減少又は無くなるようにチャフシーブ25のフィン開度を制御する。このようにすると、高水分材料の過剰な二番還元による動力損失や、低水分材料の過剰な二番還元による損傷粒の発生を抑制することができる。尚、本実施形態の目標二番流量決定手段は、さらに、T/M回転センサ52の検出値に基づいて刈取作業開始時の車速を判断し、該車速に基づいて二番流量制御の目標二番流量を増減させるが、車速に応じた目標二番流量の設定は公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0025】
行程間フィン開度継承手段は、行程間の移動に伴う刈取作業の中断時に、チャフシーブ25のフィン開度を初期状態に戻すことなく、前行程の刈終りにおけるフィン開度を次行程の刈始めまで継承する手段である。具体的には、前述した条件に基づいて刈取作業状態を判断すると共に、その判断結果がNOとなったとき、二番流量制御を一旦停止し、現在のフィン開度に固定する。このようにすると、次行程の刈始めに際し、二番流量制御を安定状態で再開できるので、制御開始時の不安定動作を防止し、選別性能を向上させることができる。尚、本実施形態では、前行程の刈終りの車速と、次行程の刈始めの車速が同じであるという前提でフィン開度を固定しているが、前行程の刈終りの車速と、次行程の刈始めの車速が異なる場合、車速の差分を加味して、次行程の刈始めにおけるフィン開度を決定することが好ましい。例えば、以下の式により次行程のフィン開度ランクを決定する。
次行程ランク=前行程ランク×((次行程車速+車速差分)/次行程車速)
【0026】
制御中フィン開度変更手段は、二番流量制御の実行中であっても、車速が急激に上昇した場合に、二番流量制御よりも優先してチャフシーブ25のフィン開度を所定量開き側にオフセットする手段である。このような手段によれば、車速上昇に伴って脱穀選別部3の処理量が急激に増加しても、チャフシーブ25でのオーバーフローを未然に防止し、三番飛散を抑えることができる。また、二番物の過剰循環も回避できるので、二番物の過剰循環による二番流量センサSの破損も防止することができる。
【0027】
本実施形態の制御中フィン開度変更手段は、車速上昇後、それに応じて脱穀選別部3の処理量が増加するまでの遅れ時間を演算し、該遅れ時間が経過してからチャフシーブ25のフィン開度を所定量開き側にオフセットするようになっている。この遅れ時間は、例えば、前処理部2による脱穀フィードチェン9までの茎稈搬送時間と、脱穀フィードチェン9による扱室8までの茎稈搬送時間を加算することにより求めることができる。このようにすると、車速上昇後、実際に脱穀選別部3の処理量が増加するタイミングでチャフシーブ25のフィン開度を所定量開き側にオフセットすることができるので、車速上昇直後にオフセットを実行した場合のように、瞬間的な過少循環状態が発生することがなく、その結果、枝梗付着粒の発生や切れ藁の混入を防止することができる。
【0028】
次に、上記のような各種手段を構成する制御装置45の具体的な制御手順について、図8を参照して説明する。この図に示すように、制御装置45は、まず、前記の刈取作業判断手段(S101〜S104)によって刈取作業の開始を判断する。具体的には、前処理部2及び脱穀選別部3が運転状態か否か(S101)、主変速レバーが前進位置であるか否か(S102)、前処理部2の高さが所定高さ以下か否か(S103)、前処理扱深さメインスイッチ50がONであるか否か(S104)を判断し、これらの判断が全てYESになったとき、刈取作業が開始されたと判断する。
【0029】
刈取作業の開始を判断したら、日付の読み込みと(S105)、水分量の読み込みと(S106)、車速の読み込み(S107)を行うと共に、これらの読み込みデータに基づいて二番流量制御の目標二番流量を決定する(S108:目標二番流量決定手段)。また、前述したフィン開度維持手段(S109)によってチャフシーブ25のフィン開度を車速に応じた所定の開度にセットする。次に、二番流量センサSの検出値が既定値以上になったか否かを判断し、該判断結果がYESになるまで二番流量制御の開始を規制する(S110:二番流量制御開始規制手段)。
【0030】
二番流量センサSの検出値が既定値以上になったら、二番流量制御を開始する(S111)。二番流量制御の実行中は、車速信号を読み込みつつ(S112)、車速の急激な上昇を判断しており(S113)、車速が急激に上昇した場合は、車速上昇分に応じたフィン開度を計算すると共に(S114)、処理量が増加するまでの遅れ時間(搬送時間)を計算し(S115)、該遅れ時間分だけ遅延した後に(S116)、チャフシーブ25のフィン開度を開き側にオフセットする(S117:制御中フィン開度変更手段)。
【0031】
また、二番流量制御の実行中も、前処理扱深さメインスイッチ50がONであるか否か(S118)、前処理部2の高さが所定高さ以下か否か(S119)、主変速レバーが前進位置であるか否か(S120)を判断し、いずれかがNOと判断されたら、行程間の移動による作業中断と判断し、現在のフィン開度を継承する(S121:行程間フィン開度継承手段)。また、二番流量制御の実行中に、前処理部2や脱穀選別部3が非運転状態となったら(S122)、制御が終わる。
【0032】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、フィン開度を変更可能なチャフシーブ25と、二番還元物の流量を検出する二番流量センサSと、二番流量センサSの検出値に基づいてチャフシーブ25のフィン開度を自動制御する二番流量制御手段と、を備えるコンバイン1であって、該コンバイン1が刈取作業状態であるか否かを判断する刈取作業判断手段と、刈取作業開始後、二番流量センサSの検出値が所定値以上となるまでのあいだ、二番流量制御の開始を規制する二番流量制御開始規制手段と、二番流量制御開始規制手段が二番流量制御の開始を規制しているあいだ、チャフシーブ25のフィン開度を車速に応じた所定の開度に維持するフィン開度維持手段とを備えているので、二番還元物が二番流量センサSの位置まで到達してから二番流量制御が開始される。これにより、材料条件等に拘わらず安定状態で二番流量制御を開始することができる。しかも、刈取作業開始後、二番流量制御が開始されるまでのあいだは、チャフシーブ25のフィン開度が車速に応じた所定の開度に維持されるので、刈取作業開始直後において第一受網12から漏下する処理物の供給量に対してフィン開度が小さすぎることにより発生する二番物の過剰循環や、フィン開度が大きすぎることにより発生する過少循環を防止しつつ、スムーズに二番流量制御に移行することができる。これにより、二番物の過剰循環に伴う動力ロスの増加、三番飛散の増加、損傷粒の増加、二番ラセン18や二番流量センサSの破損などを防止できるだけでなく、二番物の過少循環に伴う自動制御の開始遅れ、選別性能の悪化、枝梗付着粒の増加なども防止することができる。
【0033】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る制御装置の処理手順について、図9を参照して説明する。ただし、第一実施形態と共通の部分は、第一実施形態と同じ符号を付けることにより、第一実施形態の説明を援用する。
【0034】
図9に示すように、第二実施形態は、二番流量制御の実行中に車速が急激に上昇した場合に、チャフシーブ25のフィン開度を所定量開き側にオフセットするのではなく、二番流量制御のゲイン(制御感度)を所定時間(又は目標二番流量に入るまでのあいだ)にわたって敏感にすることにより、車速上昇に伴う処理量の急激な増加に対応するようにした点が第一実施形態と相違している。具体的には、車速の急激な上昇を判断したら(S201)、処理量が増加するまでの遅れ時間(搬送時間)を計算すると共に(S202)、二番流量制御のゲインを変更する(S203)。そして、変更したゲインによる二番流量制御(S204)を所定時間が経過するまで実行し(S205)、所定時間が経過したら元のゲインに復帰させ(S206)、通常の二番流量制御状態に戻る。このようにしても、車速上昇時においては、第一実施形態と同様に、チャフシーブ25でのオーバーフローを防止し、三番飛散を抑えることができる。また、二番物の過剰循環も回避できるので、二番物の過剰循環による二番流量センサSの破損も防止することができる。
【0035】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る制御装置の処理手順について、図10を参照して説明する。ただし、第一実施形態と共通の部分は、第一実施形態と同じ符号を付けることにより、第一実施形態の説明を援用する。
【0036】
図10に示すように、第三実施形態は、行程間の移動による作業中断と判断した場合に、現在のフィン開度を継承するのではなく、所定時間経過後にフィン開度を全開にする点が第一実施形態と相違している。具体的には、S118〜S120のいずれかがNOと判断されたら、行程間の移動による作業中断と判断し、この判断から所定時間が経過すると(S301)、チャフシーブ25のフィン開度が全開になるようにフィン開度調節モータ54を作動させる(S302)。このようにすると、フィン部分で穀粒が漏れやすくなって、行程間で作業を中断した時に発生する二番還元での穀粒の無駄な持ち回りがなくなり、穀粒の損傷や三番飛散を防止できる。
なお、作業中断に伴って扱室8への穀稈の供給が停止すると、二番還元量が多い状態から急激に減少することになるので、このことを作業中断の判断条件として適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】脱穀選別部の内部側面図である。
【図3】二番還元筒の側面図である。
【図4】二番還元筒のA矢視図である。
【図5】二番還元筒のA矢視断面図である。
【図6】二番流量センサの側面図である。
【図7】制御装置の入出力を示すブロック図である。
【図8】第一実施形態に係る制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】第二実施形態に係る制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】第三実施形態に係る制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
1 コンバイン
2 前処理部
3 脱穀選別部
23 二番還元筒
25 チャフシーブ
45 制御装置
S 二番流量センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィン開度を変更可能なチャフシーブと、
二番還元物の流量を検出する二番流量センサと、
二番流量センサの検出値に基づいてチャフシーブのフィン開度を自動制御する二番流量制御手段と、
を備えるコンバインであって、
該コンバインが刈取作業状態であるか否かを判断する刈取作業判断手段と、
刈取作業開始後、二番流量センサの検出値が所定値以上となるまでのあいだ、二番流量制御の開始を規制する二番流量制御開始規制手段と、
二番流量制御開始規制手段が二番流量制御の開始を規制しているあいだ、チャフシーブのフィン開度を車速に応じた所定の開度に維持するフィン開度維持手段と、
を備えることを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−193944(P2008−193944A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31862(P2007−31862)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】