説明

コンバイン

【課題】脱穀作用及び送塵作用に優れる送塵弁を備えるコンバインを提供することを目的とする。
【解決手段】機体前後方向に扱胴26が架設される扱室36と、扱室36の上部を覆う扱胴カバー37と、扱胴カバー37の内面に、扱胴26の搬送方向に所定間隔で配設される複数の送塵弁38a・38b・・・と、を備えるコンバイン100において、送塵弁38a・38b・・・の内、扱室36の入口端に配設される第一送塵弁38aは、扱胴26の搬送方向に対して、戻し方向に傾斜され、第二、第三送塵弁38b、38cは、送り方向に傾斜されて配設されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体前後方向に扱胴が架設される扱室と、該扱室の上部を覆う扱胴カバーと、該扱胴カバーの内面に、該扱胴の搬送方向に所定間隔で配設される複数の送塵弁と、を備えるコンバインの技術に関し、より詳細には、複数の送塵弁を配設する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機体前後方向に扱胴が架設される扱室と、該扱室の上部を覆う扱胴カバーと、該扱胴カバーの内面に、該扱胴の搬送方向に所定間隔で配設される複数の送塵弁と、を備えるコンバインの送塵弁の技術は公知となっている。
例えば、特許文献1には、扱室の内周壁に、該扱室内に回転自在に収蔵軸架される扱胴の軸と交叉して傾斜角度を変更調節自在に装着する脱穀機の扱室内送塵弁において、該送塵弁のうち、扱室始端側の送塵弁の傾斜角度を終端側の送塵弁の傾斜角度より小なる傾斜角度に変更ならしめる変更手段を施してあることを特徴とする脱穀機の扱室内送塵弁における調節装置が開示されている。
【特許文献1】実開平2−29233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に開示されている送塵弁は、終端側の送塵弁により、扱室終端側の送塵作用をよくさせるとともに、始端側の送塵弁の角度を終端側の送塵弁の角度よりも小さくすることにより、扱室始端側の送塵作用を抑えて、脱穀作用を向上させるように調節するものであるが、この送塵弁は、扱胴の軸と直角方向までしか角度を小さくできないため、送塵作用を弱めることはできるが、戻し作用が生じない。すなわち、送塵弁を戻し方向にまで傾斜させて、脱穀作用を高めるには限界があった。また、戻し作用を与えると、詰まりの原因になると考えられていた。
【0004】
本発明は以上の状況に鑑み、脱穀作用及び送塵作用に優れる送塵弁を備えるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上のとおりであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
すなわち、請求項1においては、
機体前後方向に扱胴が架設される扱室と、
該扱室の上部を覆う扱胴カバーと、
該扱胴カバーの内面に、該扱胴の搬送方向に所定間隔で配設される複数の送塵弁と、
を備えるコンバインにおいて、
前記複数の送塵弁の内、前記扱室の入口端に配設される送塵弁は、前記扱胴の搬送方向に対して、戻し方向に傾斜され、他の送塵弁は、送り方向に傾斜されて配設される、ものである。
【0007】
請求項2においては、
前記扱胴の下方周囲に受網が配設され、
該受網の上面には、該扱胴の搬送方向と略直交して複数の仕切板が配設され、
前記入口端の送塵弁は、前記扱室の入口端に配設される仕切板よりも入口側に配設される、ものである。
【0008】
請求項3においては、
前記複数の送塵弁は、リンク構造により連結されて、前記扱胴カバーに回動自在に支持され、該送塵弁に連結される操作手段の回動操作により、連動して回動される、ものである。
【0009】
請求項4においては、
前記複数の送塵弁は、前記操作手段の回動操作により回動されて、送り方向に傾斜され、前記複数の仕切板と平面視において交差する位置に配設可能とされる、ものである。
【0010】
請求項5においては、
前記複数の送塵弁は、前記操作手段の回動操作により回動されて、戻し方向に傾斜されて配設される、ものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、
戻し方向に傾斜される入口端の送塵弁により、枝梗除去が十分でない扱室入口付近の穀稈及び脱粒された穀粒が、扱室の入口方向に戻されて再度扱かれて、脱穀作用が向上し、枝梗除去の精度が向上する。
また、送り方向に傾斜される他の送塵弁により、穀稈及び脱粒された穀粒が滞留し易い扱室出口付近の搬送が促進されて、送塵作用が向上し、扱胴の動力が低減されない。
【0013】
請求項2においては、
戻し方向に傾斜される入口端の送塵弁が、仕切板よりも入口側に配設されることにより、枝梗除去が十分でない扱室入口付近の穀稈及び脱粒された穀粒が、扱室の入口方向に戻されて再度扱かれて、脱穀作用が向上し、枝梗除去の精度が向上する。
【0014】
請求項3においては、
送塵弁を回動操作することにより、送塵弁の角度を変更することができるため、穀稈の状態に応じて、脱穀作用や送塵作用を調整することができる。
また、一の回動操作により、すべての送塵弁の角度を変更することができるため、変更が容易である。
【0015】
請求項4においては、
送り方向に傾斜された送塵弁が、仕切板と平面視において交差する位置に配設されることにより、脱粒作用が促進されて、穀稈及び脱粒された穀粒が滞留し易い仕切板付近の搬送が促進されて、送塵作用が向上し、扱胴の動力が低減されない。
【0016】
請求項5においては、
戻し方向に傾斜される送塵弁により、枝梗除去が十分でない穀稈及び脱粒された穀粒が、扱室の入口方向に戻されて再度扱かれて、脱穀作用が向上し、枝梗除去の精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るコンバインを示した側面図、図2は同じく平面図、図3は送塵弁と受網との関係を示した正面図、図4は同じく平面図、図5は同じく側面図、図6は(a)送塵弁を示した下方斜視図(b)同じく正面図(c)同じく側面図(d)同じく平面図、図7は送塵弁及びリンク構造を示した平面図、図8は送り方向に傾斜された送塵弁と受網との関係を示した平面図、図9は戻し方向に傾斜された送塵弁と受網との関係を示した平面図である。
【0018】
先ず、本発明の一実施例に係るコンバイン100の全体構成について、図1から図3を用いて説明する。
なお、以下の説明では、走行機体1の進行方向に向かって左側を単に「左側」とし、同じく進行方向に向かって右側を単に「右側」とする。また、本実施例では、二条刈りのコンバインについて説明するが、三条刈り以上のコンバインであってもよい。
【0019】
図1及び図2に示すように、コンバイン100は、左右一対の走行クローラ2によって走行機体1が支持されており、この走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む刈取部3が昇降調節可能に装着されている。走行機体1の左側には、刈り取られた穀稈を脱穀、選別する脱穀部5が配設され、走行機体1の右側には、脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク7が、脱穀部5と横並びに配設されている。走行機体1の後部には、排出オーガ8が旋回可能に設けられており、穀粒タンク7の内部の穀粒が、排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。そして、穀粒タンク7の前方には、運転部10が配設されている。
【0020】
運転部10には、オペレータが搭乗するステップ11と、このステップ11上のハンドルコラム12に設けられた略U形の操縦ハンドル13と、この操縦ハンドル13の後方に設けられた運転座席14と、この運転座席14の左側方のサイドコラム15に設けられた主変速レバー16と副変速レバー17と刈取クラッチレバー18と刈取変速レバー19とが配設されている。そして、運転座席14の下方には、コンバイン100自体の走行や後述するフィードチェーン6を駆動するための動力源となるエンジン20が配設されている。
【0021】
また、刈取部3下部の刈取フレーム21の下方には、圃場の未刈り穀稈の株元を切断する刈刃装置(図示省略)が配設されている。刈取部3前部の刈取フレーム21の前方には、圃場の未刈り穀稈を引き起こす2条分の引起装置23が配設されている。引起装置23とフィードチェーン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置22によって刈り取られた穀稈をフィードチェーン6へと搬送する穀稈搬送装置24が配設されている。引起装置23下部の刈取フレーム21の前端には、圃場の未刈り穀稈を分草する分草体25が突設されている。
【0022】
このような構成として、コンバイン100は、エンジン20にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取部3を駆動して圃場の未刈り穀稈を連続的に刈り取ることができる。
【0023】
また、脱穀部5は、脱穀カバー5aに覆われ、穀稈脱穀用の扱胴26と、この扱胴26が前後方向に架設される扱室36と、この扱胴26の下方周囲に配設される受網39とを備えているとともに、扱胴26の下方に配設され、受網39から落下する脱粒物を選別する揺動選別装置27及び唐箕ファン28と、扱胴26の後部から取り出される脱穀排出物を再処理する処理胴29と、揺動選別装置27後部で藁屑や塵埃等を排出する排塵ファン30等を備えている。
そして、脱穀部5は、刈取部3から穀稈搬送装置24によって搬送された穀稈の株元側が、フィードチェーン6に受け継がれて後方へと挟持搬送されて、穀稈の穂先側が扱胴26内に搬入され、扱胴26の回転(図3に示す正面視時計回り)により、穀稈が脱穀されながら、前方から後方に搬送され、揺動選別装置27による揺動選別と、唐箕ファン28による風選別とが行われ、一番物と二番物と藁屑等に分別されるように構成されている。
また、詳しくは後述するが、扱室36の上部は、扱胴カバー37で覆われており、この扱胴カバー37の内面には、穀稈に抵抗を与えて脱穀作用を向上させるための複数(本実施例では3つ)の送塵弁38a・38b・・・が、扱胴26の搬送方向に所定間隔で配設されている(図3から図5参照)。
【0024】
そして、揺動選別装置27の下方側の唐箕ファン28の後方には、揺動選別装置27によって選別された穀粒(一番物)を取り出す一番コンベア31が左右方向に横設され、この一番コンベア31の後方には、枝梗付き穀粒等(二番物)を取り出す二番コンベア32が左右方向に横設されている。揺動選別装置27は、受網39から落下した脱穀物が、図示しないフィードパン及びチャフシーブ等によって揺動選別(比重選別)されるように構成している。そして、揺動選別装置27のグレンシーブ(図示省略)から落下した穀粒等は、唐箕ファン28からの選別風によって藁屑や塵埃等が除去され、一番コンベア31と二番コンベア32上へと落下する。
【0025】
一番コンベア31の右側端には、上下方向に延びる揚穀筒33の下端が連通接続されており、一番コンベア31から取り出された穀粒が、この揚穀筒33を介して穀粒タンク7へと搬入されるように構成されている。一方、二番コンベア32の一側は、揚穀筒33と交差して前後方向に延びる還元筒(図示省略)を介して、揺動選別装置27のフィードパンの上面側に連通接続されており、二番物を揺動選別装置27前部のフィードパン上面側に戻して再選別されるように構成されている。
【0026】
そして、フィードチェーン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェーン34が配設されている。フィードチェーン6の後端側から排藁チェーン34に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態のまま走行機体1の後方に排出されるか、または脱穀部5の後方に配設された排藁カッタ35にて適宜長さに短く切断された後、走行機体1の後方下方に排出されるように構成されている。
【0027】
次に、送塵弁38a・38b・・・について、図3から図7を用いて説明する。
前述のように、脱穀部5は、前後方向に扱胴26が架設される扱室36と、この扱室36の上部を覆う扱胴カバー37と、この扱胴カバー37の内面に、扱胴26の搬送方向(図4及び図5に示すX方向)に所定間隔で配設され、穀稈に抵抗を与えて脱穀作用を向上させるための複数(本実施例では3つ)の送塵弁38a・38b・・・とを備えている(図3から図5参照)。
【0028】
図6に示すように、送塵弁38a・38b・・・は、それぞれ平面視略長方形(図6(d)参照)で、この端部(左端)の下辺が扱胴26外周の形状に沿って略円弧状(図6(b)参照)に形成され、側面視逆L字状(図6(c)参照)に折曲されて、穀粒を滞留させる抵抗面47a、47b、47cが形成されている。
そして、送塵弁38a・38b・・・は、扱胴カバー37に回動自在に支持されており、扱室36の入口側から出口側に向かって、第一送塵弁38a、第二送塵弁38b、第三送塵弁38cの順番に配設されている(図4及び図5参照)。具体的には、送塵弁38a、38b、38cの中途部には、孔が開口されており、この孔にそれぞれ第一、第二、第三ボルト40a、40b、40cが挿通されている。ボルト40a、40b、40cは、扱胴カバー37に固定されており、送塵弁38a、38b、38cは、このボルト40a、40b、40cを介して、扱胴カバー37に回動自在に支持されている。
【0029】
また、図7に示すように、送塵弁38a・38b・・・は、一端(右端)がリンク構造41により連結されて、扱胴カバー37に回動可能に支持され、操作レバー43の回動操作により、3つの送塵弁38a・38b・・・が、連動して回動されるように構成されている。
リンク構造41は、連結板42、連結ピン46a、46b、46c等により構成されている。連結板42には、前端部に第一連結孔45aが開口され、後端部に第三連結孔45cが開口され、第一連結孔45aと第三連結孔45cとの間(やや第三連結孔45cより)に第二連結孔45bが開口されている。そして、送塵弁38a、38b、38cと連結板42とは、それぞれ連結孔45a、45b、45cに連結ピン46a、46b、46cが挿入されて、回動自在に連結されている。
操作レバー43は、一端がハンドル部43aとされ、他端が第一送塵弁38aに固定されている。ハンドル部43aは、脱穀カバー5aの上面から運転席側に突出して配設されている。操作レバー43の回動基部には、係止部(図示省略)が形成されており、ステップに乗った状態で操作レバー43を回動操作して、任意の回動位置で保持できるように構成されている(図2参照)。そして、操作レバー43を回動操作することにより第一送塵弁38aが回動され、連結板42を介して他の第二、第三送塵弁38b・38cが、連動して回動されるように構成されている(図7参照)。
【0030】
そして、図4及び図7に示すように、送塵弁38a・38b・・・の内、扱室36の入口端(前端)に配設される第一送塵弁38aは、扱胴26の搬送方向に対して、戻し方向に傾斜され、第二、第三送塵弁38b、38cは、送り方向に傾斜されて配設されている。
具体的には、図7に示すように、第一送塵弁38aは、ボルト40aを回動軸として、平面視で、左右方向(線L)に対して時計回りに図7に示す所定角度α(数度、0〜15度程度)回動されて、扱胴26の搬送方向に対して戻し方向に傾斜されている。一方、第二、第三送塵弁38b、38cは、それぞれボルト40b、40cを回動軸として、平面視で、左右方向(線L)に対して反時計回りに図7に示す所定角度α(数度、0〜15度程度)回動されて、扱胴26の搬送方向に対して送り方向に傾斜されている。
【0031】
このような構成により、扱胴26の回転(図3に示す正面視時計回り)により、穀稈が脱穀されながら、前方から後方(図4及び図5に示すX方向)に搬送されると、扱室36の入口側では、戻し方向に傾斜されている第一送塵弁38a(抵抗面47a)の抵抗により、穀稈及び脱粒された穀粒が、扱室36の入口方向に戻される。そして、扱室36の出口側では、送り方向に傾斜される第二、第三送塵弁38b、38c(抵抗面47b、47c)により、穀稈及び脱粒された穀粒に抵抗を与えつつ、同時に扱室36の出口方向への案内がなされる。なお、穀稈の量や長さ、水分等に応じて、操作レバー43を回動操作して、送り量を調節することができる。
【0032】
そして、操作レバー43を平面視反時計回り(図7に示す黒矢印方向)に回動操作すると、第一送塵弁38aが第一ボルト40aを回動軸として平面視反時計回りに回動される。そして、第一連結ピン46a、連結板42、第二連結ピン46bを介して、第二送塵弁38bが第二ボルト40bを回動軸として平面視反時計回りに回動される。さらに、連結板42、第三連結ピン46cを介して、第三送塵弁38cが第三ボルト40cを回動軸として平面視反時計回りに回動される。
【0033】
ここで、第一連結孔45aは、連結板42の短手方向に長い長孔とされている(図7参照)。このため、第一送塵弁38aの回動に伴って、第一連結孔45aを介して連結板42が、第一ボルト40aの周面に沿って連結板42の短手方向(図7に示す上下方向)に摺動されるため、操作レバー43の回動操作による一連の送塵弁38a・38b・・・の回動が円滑にされる。
なお、詳細な説明は省略するが、操作レバー43を上記と反対方向(平面視時計回り)に回動操作することにより、同様にして送塵弁38a・38b・・・が反対方向(平面視時計回り)に連動して回動される。
【0034】
また、図3から図5に示すように、扱胴26の下方周囲に受網39が配設され、この受網39の上面には、扱胴26の搬送方向と略直交して複数(本実施例では2つ)の仕切板44a、44bが配設されている。
仕切板44a、44bは、穀稈に抵抗を与えて脱穀作用を向上させるためのものであって、受網39の内周面(上面)と同程度の周長に形成されており、受網39の内周面(上面)に沿って、半径方向中心側に突設されている。仕切板44a、44bは、扱室36の入口側から出口側に向かって、第一仕切板44a、第二仕切板44bの順番に、受網39の前後方向(搬送方向)長さを略三等分するように配設されている。
そして、入口端の第一送塵弁38aは、入口端の第一仕切板44aよりも扱室36の入口側に配設され、第二、第三送塵弁38b、38cは、第二仕切板44bの前後両側に配設されている。つまり、第一、第二、第三送塵弁38a、38b、38cの間に、第一仕切板44a、第二仕切板44bが配設されている。
【0035】
ここで、フィードチェーン6により扱胴26内に搬送された穀稈は、入口端の第一仕切板44a付近で脱穀され始める。つまり、入口端の第一仕切板44a(扱室36入口)付近では、穀稈及び脱粒された穀粒の枝梗除去が十分でない。そこで、前記のような構成にすることにより、入口端の第一仕切板44a(扱室36入口)付近では、戻し方向に傾斜されている第一送塵弁38a(抵抗面47a)の抵抗により、穀稈及び脱粒された穀粒が扱室36の入口方向に戻され、枝梗除去が十分でない扱室36入口付近の穀稈及び脱粒された穀粒が、扱室36の入口方向に戻されて再度扱かれる。
【0036】
また、前述のように、送塵弁38a・38b・・・は、操作レバー43を平面視反時計回り(図7及び図8に示す黒矢印方向)に回動操作することにより、連動して平面視反時計回りに回動されるものであるが、この場合、送塵弁38a・38b・・・は、図8に示すように、送り方向に傾斜されて、仕切板44a、44bと平面視において交差する位置に配設されるように構成されている。具体的には、図8に示すように、第一送塵弁38aは、左端が第一仕切板44aと平面視において交差する位置に配設され、第二送塵弁38bは、右端が第一仕切板44a、左端が第二仕切板44bと平面視において交差する位置に配設され、第三送塵弁38cは、右端が第二仕切板44bと平面視において交差する位置に配設されるように構成されている。
【0037】
また、前述のように、送塵弁38a・38b・・・は、操作レバー43を平面視時計回り(図7及び図9に示す黒矢印方向)に回動操作することにより、連動して平面視時計回りに回動されるものであるが、この場合、送塵弁38a・38b・・・は、図9に示すように、戻し方向に傾斜されて配設されるように構成されている。さらに、この場合、第三送塵弁38cは、左端が第二仕切板44bと平面視において交差する位置に配設されるように構成されている。
【0038】
以上のように、コンバイン100は、機体前後方向に扱胴26が架設される扱室36と、扱室36の上部を覆う扱胴カバー37と、扱胴カバー37の内面に、扱胴26の搬送方向に所定間隔で配設される複数の送塵弁38a・38b・・・と、を備えるコンバイン100において、送塵弁38a・38b・・・の内、扱室36の入口端に配設される第一送塵弁38aは、扱胴26の搬送方向に対して、戻し方向に傾斜され、第二、第三送塵弁38b、38cは、送り方向に傾斜されて配設されるものである。
このような構成により、戻し方向に傾斜される入口端の第一送塵弁38aにより、枝梗除去が十分でない扱室36入口付近の穀稈及び脱粒された穀粒が、扱室36の入口方向に戻されて再度扱かれて、脱穀作用が向上し、枝梗除去の精度が向上する。また、送り方向に傾斜される第二、第三送塵弁38b、38cにより、穀稈及び脱粒された穀粒が滞留し易い扱室36出口付近の搬送が促進されて、送塵作用が向上し、扱胴26の動力が低減されない。
【0039】
そして、扱胴26の下方周囲に受網39が配設され、受網39の上面には、扱胴26の搬送方向と略直交して複数の仕切板44a、44bが配設され、入口端の第一送塵弁38aは、扱室36の入口端に配設される第一仕切板44aよりも入口側に配設されるものである。
このような構成により、戻し方向に傾斜される入口端の第一送塵弁38aが、第一仕切板44aよりも入口側に配設されることにより、枝梗除去が十分でない扱室36入口付近の穀稈及び脱粒された穀粒が、扱室36の入口方向に戻されて再度扱かれて、脱穀作用が向上し、枝梗除去の精度が向上する。
【0040】
また、送塵弁38a・38b・・・は、リンク構造41により連結されて、扱胴カバー37に回動自在に支持され、第一送塵弁38aに連結される操作レバー43の回動操作により、連動して回動されるものである。
このような構成により、送塵弁38a・38b・・・を回動操作することにより、送塵弁38a・38b・・・の角度を変更することができるため、穀稈の状態に応じて、脱穀作用や送塵作用を調整することができる。また、一の回動操作により、すべての送塵弁38a・38b・・・の角度を変更することができるため、変更が容易である。
【0041】
そして、送塵弁38a・38b・・・は、操作レバー43の回動操作により回動されて、送り方向に傾斜され、複数の仕切板44a、44bと平面視において交差する位置に配設可能とされるものである。
このような構成により、脱粒作用が促進されて、穀稈及び脱粒された穀粒が滞留し易い仕切板44a、44b付近の搬送が促進されて、送塵作用が向上し、扱胴26の動力が低減されない。
【0042】
また、送塵弁38a・38b・・・は、操作レバー43の回動操作により回動されて、戻し方向に傾斜されて配設されるものである。
このような構成により、枝梗除去が十分でない穀稈及び脱粒された穀粒が、扱室36の入口方向に戻されて再度扱かれて、脱穀作用が向上し、枝梗除去の精度が向上する。
さらに、この場合、第三送塵弁38cは、左端が第二仕切板44bと平面視において交差する位置に配設されるものであるため、脱粒作用が促進される第二仕切板44b付近にあって、枝梗除去が十分でない穀稈及び脱粒された穀粒が、扱室36の入口方向に戻されて再度扱かれて、脱穀作用が向上し、枝梗除去の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例に係るコンバインを示した側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】送塵弁と受網との関係を示した正面図。
【図4】同じく平面図。
【図5】同じく側面図。
【図6】(a)送塵弁を示した下方斜視図(b)同じく正面図(c)同じく側面図(d)同じく平面図。
【図7】送塵弁及びリンク構造を示した平面図。
【図8】送り方向に傾斜された送塵弁と受網との関係を示した平面図。
【図9】戻し方向に傾斜された送塵弁と受網との関係を示した平面図。
【符号の説明】
【0044】
26 扱胴
36 扱室
37 扱胴カバー
38a 第一送塵弁
38b 第二送塵弁
38c 第三送塵弁
39 受網
41 リンク構造
43 操作レバー
44a 第一仕切板
44b 第二仕切板
100 コンバイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前後方向に扱胴が架設される扱室と、
該扱室の上部を覆う扱胴カバーと、
該扱胴カバーの内面に、該扱胴の搬送方向に所定間隔で配設される複数の送塵弁と、
を備えるコンバインにおいて、
前記複数の送塵弁の内、前記扱室の入口端に配設される送塵弁は、前記扱胴の搬送方向に対して、戻し方向に傾斜され、他の送塵弁は、送り方向に傾斜されて配設される、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記扱胴の下方周囲に受網が配設され、
該受網の上面には、該扱胴の搬送方向と略直交して複数の仕切板が配設され、
前記入口端の送塵弁は、前記扱室の入口端に配設される仕切板よりも入口側に配設される、
ことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記複数の送塵弁は、リンク構造により連結されて、前記扱胴カバーに回動自在に支持され、該送塵弁に連結される操作手段の回動操作により、連動して回動される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記複数の送塵弁は、前記操作手段の回動操作により回動されて、送り方向に傾斜され、前記複数の仕切板と平面視において交差する位置に配設可能とされる、
ことを特徴とする請求項3に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記複数の送塵弁は、前記操作手段の回動操作により回動されて、戻し方向に傾斜されて配設される、
ことを特徴とする請求項3に記載のコンバイン。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−220251(P2008−220251A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62385(P2007−62385)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】