説明

コンバイン

【課題】脱穀室内での被処理物の扱胴と共回り、搬送穀稈の刺さり粒発生、搬送穀稈の抜けや千切れ、脱穀室内の藁屑の増加という課題。
【解決手段】穀稈供給搬送装置13の設置側とは反対側の脱穀室12の後部側方に排塵処理装置30を設ける。脱穀室12の後部の扱胴11と排塵処理胴31の間には、軸心が前記扱胴11と平行の回転体50を設け、回転体50の回転伝達経路は、扱胴11の扱胴軸51の後部から前記穀稈供給搬送装置13に続いて脱穀済みの穀稈を搬送する排藁搬送装置68への回転伝達経路を前方に分岐させて伝達するように構成したことを特徴とするコンバイン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、穀稈供給搬送装置による搬送穀稈を脱穀する扱胴の下側に扱網を設けて脱穀室を形成し、前記穀稈供給搬送装置と扱胴の間に、軸心が前記扱胴と平行の回転体を設けた構成は、公知である(特許文献1)
【特許文献1】特開2000−4654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記公知例は、穀稈供給搬送装置により搬送中の穀稈の中間部分の刺さり粒を回収する構成のため、脱穀室内で被処理物が扱胴と共回りするのは防止できず、この扱胴と共回りする被処理物から落下した穀粒が搬送穀稈に刺さって刺さり粒となるのは防止できないという課題がある。
また、公知例は、搬送中の穀稈に回転体が直接接触して刺さり粒を回収する構成のため、搬送穀稈の負荷が大きくなって、穀稈が抜けたり、或いは、千切れたりして、脱穀室内の藁屑が増加し、その結果、扱胴と共回りする被処理物が増加して、この被処理物から落下する穀粒の刺さり込んで刺さり粒が増加するという課題がある。
本願は、扱胴と共回りする被処理物の発生を回転体により抑制して、刺さり粒の発生を抑制すると共に、回転体への回転伝動を工夫したものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、穀稈供給搬送装置13による搬送穀稈を脱穀する扱胴11の下側に扱網18を設けて脱穀室12を形成し、前記穀稈供給搬送装置13の反対側の脱穀室12の後部側方には、該脱穀室12と排塵連通口33により連通する排塵処理胴31を有する排塵処理装置30を設け、前記脱穀室12の後部側方に、軸心が前記扱胴11と平行の回転体50を設け、該回転体50の回転伝達経路は、扱胴11の扱胴軸51の後部から前記穀稈供給搬送装置13に続いて脱穀済みの穀稈を搬送する排藁搬送装置68への回転伝達経路を前方に分岐させて伝達するように構成したことを特徴とするコンバインとしたものであり、穀稈供給搬送装置により搬送された穀稈は脱穀室12内に供給され、回転する扱胴11により脱穀される。
脱穀室12の終端側方に、軸心が扱胴11と平行の回転体50を設けているから、回転体50により脱穀室12の終端側で扱胴11の被処理物の共回りを抑制して、穀稈供給搬送装置13により搬送される脱穀済み穀稈に穀粒が刺さり込むのを抑制し、四番ロスを低減させる。
このとき、扱胴11の扱胴軸51の後部から排藁搬送装置68への回転を入力させる伝達経路を分岐させているので、回転体50には扱胴軸51からの回転が伝達されて、回転する。
本発明は、前記扱胴11の扱胴軸51の回転が伝達される中間出力軸64を設け、該中間出力軸64の前後両端側の夫々の回転を回転体50と排藁搬送装置68とに分岐伝達するように構成したことを特徴とするコンバインとしたものであり、扱胴11の扱胴軸51の回転が中間出力軸64に伝達され、中間出力軸64の前側から回転体50に、中間出力軸64の後部から排藁搬送装置68へ回転を夫々入力させて、回転体50および排藁搬送装置68を駆動する。
本発明は、前記中間出力軸64は、前記回転体50の回転軸66にカップリング65を介して着脱自在に連結して構成したことを特徴とするコンバインとしたものであり、回転体50は、中間出力軸64の回転がカップリング65を介して伝達され、中間出力軸64はカップリング65に着脱自在に連結しているので、扱胴軸51の中間伝動プーリ62はカップリング65の部分で取り外し可能となって、中間伝動プーリ62を外すことで中間出力プーリ63との間のベルト71の交換を行える。
本発明は、前記扱胴11の扱胴軸51の回転は、中間伝動プーリ62と中間出力プーリ63とベルト71により中間出力軸64に伝達するように構成したことを特徴とするコンバインとしたものであり、回転体50または/および排藁搬送装置68の回転に負荷が掛かると、中間出力プーリ63の回転が停止するように作用するが、扱胴11の扱胴軸51の回転は、ベルト71により伝達するので、ベルト71が滑ってメカロックを予防する。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明では、回転体50への回転伝達機構を排藁搬送装置68への回転伝達機構を利用して構成することができ、構成を簡素にして、製造コストを低くでき、安価に提供することができる。
請求項2の発明では、上記請求項1記載の発明の効果の他に、回転体50への回転を分岐させる伝達機構を、排藁搬送装置68の配置を利用して、前後に分岐させて構成することができ、構成を簡素にでき、安価にでき、また、分岐伝達機構のスペースも小さくできる。
請求項3の発明では、上記請求項2記載の発明の上記効果の他に、回転体50へカップリング65を介して回転を伝達するので、分解が容易になって、メンテナンスを容易にできる。
請求項4の発明では、上記請求項3記載の発明の効果の他に、回転伝達機構に掛かる負荷を軽減し、耐久性を向上させ、万一の破損を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の一実施例をコンバインの図面により説明すると、1はコンバインの機体フレーム、2は機体フレーム1の下方に設けた走行装置、3は機体フレーム1の上方に設けた脱穀装置、4は脱穀装置3の前側に設けた刈取部、5は脱穀装置3の側部に設けたグレンタンク、6はグレンタンク5の前側に設けた操縦部である。
前記脱穀装置3は、上部に扱歯10を有する扱胴11を略水平に軸装した脱穀室12を設ける。脱穀室12の一側には前記刈取部4により刈り取った穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置13の供給搬送チェン14を設けている。なお、理解を容易にするため、便宜的に前後左右等の方向を示して以下説明するが、これにより構成が限定されるものではない。
扱胴11は脱穀装置3の前板16と脱穀室後板17に軸装し、扱胴11の主として下方側は扱網18により包囲している。扱網18の下方には唐箕19の唐箕ケーシング20を設ける。前記脱穀室12の下方には前記唐箕19の送風により穀粒と異物とを風選し得る風選室21を形成し、風選室21内には、唐箕19の送風方向(前後方向)に往復揺動する揺動選別棚22により構成した揺動選別装置23を設ける。
【0007】
揺動選別装置23の構成は任意であるが、一例を示すと、前記揺動選別棚22の始端部(前端部)を唐箕ケーシング20の上方に位置させて移送棚部24に形成する。各移送棚部24の上面には、図示は省略するが、突起や凹凸を設けて揺動選別装置23の移送方向下手側に扱網18からの落下物を移送するように構成する。
移送棚部24の移送方向下手側にはグレンシーブ25を設ける。グレンシーブ25は、扱網18より落下した穀粒と異物とを選別するものであり、所定間隔をおいて揺動方向に複数並設する。グレンシーブ25は、薄い平板形状に形成し、移送方向の下手側(後側)が高くなるように傾斜させて設ける。
グレンシーブ25の下方から移送方向の下手側(後側)のストローラック26を設ける。揺動選別棚22の下方には一番コンベア27を設け、一番コンベア27の後側には二番コンベア28を設ける。
【0008】
前記扱い胴11の後部側方(終端側)には、排塵処理装置30を設ける。塵処理装置30は、扱胴11の軸心と略平行な排塵処理胴31を軸装し、脱穀室12の後部に設けた排塵連通口33により脱穀室12と連通させて構成する。排塵処理胴31の始端部は中板34に軸装し、中板34と脱穀室後板17との間に排塵連通口33を形成している。
35は、脱穀室12の後部下方に設けた扱網18より落下しない脱穀物(被処理物)を排出する脱穀物排出口であり、脱穀物排出口35の前側部分には縦桟36を並設して複数の排出孔37を形成し、脱穀物排出口35の後側部分は開放した開放落下口38に形成する。39はガイド体である。
前記縦桟36および排出孔37は、前記排塵連通口33と前後方向において並ぶ位置に夫々設け、縦桟36は、脱穀物排出口35に至った扱網18より落下しない脱穀物を、そのまま下方に落下排出させずに、落下の際の抵抗となって、扱網18より落下しない脱穀物が排塵連通口33から排塵処理装置30へ移行するのを補助し、脱穀室12の負荷を軽減させて、脱穀効率を向上させる。
【0009】
即ち、脱穀物排出口35を単に開放構成とすると、脱穀物排出口35に至った扱網18より落下しない脱穀物がそのまま下方に落下して排塵処理装置30への移行効率が低下し、また、揺動選別装置23の負荷が増加するが、縦桟36を設けたので、扱網18より落下しない脱穀物のうち比較的小さい被処理物だけ排出孔37から揺動選別装置23に落下させて揺動選別装置23の負荷を減少させ、また、扱網18より落下しない脱穀物のうちの更に排出孔37から落下しない比較的大きな被処理物は排塵処理装置30の排塵連通口33への移行効率を向上させ、全体として、選別精度および選別効率を向上させる。
前記排塵処理装置30の前側には、二番コンベア28により回収された二番物を処理する二番処理装置42を設ける。
二番処理装置42の二番処理胴44は、排塵処理胴31と同心状に配置する。二番処理装置42の二番処理胴44は、穀稈供給搬送装置13の搬送方向と反対に揺動選別棚22の始端部側上方に向けて被処理物を搬送するように構成し、扱網18の側方に位置している。
【0010】
二番処理装置42の二番処理胴44の始端部側上方には二番還元装置45の先端を開口させ、二番還元装置45の基部は二番コンベア28の終端に接続している。
46は吸引排塵ファン、47は吸引排塵ファン46のケーシング、48は脱穀装置3の後側にはカッター装置である。
しかして、脱穀室12の終端側には、被処理物が脱穀室12内で扱胴11と共回りするのを抑制する回転体50を設ける。
回転体50により脱穀室12の終端側における被処理物の共回りを抑制して、穀稈供給搬送装置13により搬送される脱穀済み穀稈に穀粒が刺さり込むのを抑制し、四番ロスを低減させる。
また、回転体50により被処理物の共回りを抑制することで、排塵処理装置30への取り込みを良好にし、脱穀室12の負荷を軽減させ、全体として脱穀処理および回収効率を向上させる。
前記回転体50は、その軸心方向を、前記扱胴11の軸心方向と平行になるように設ける。
そのため、回転体50をコンパクトに設けられる。
【0011】
前記回転体50は、少なくとも、前記扱胴11の扱胴軸51より上方に設ける。
前記扱胴11による脱穀は、扱胴11の下面側を穀稈を移動させて行う所謂「下扱き」であり、穀稈の搬送に回転体50の存在自体が影響を与えることはなく、しかも、回転体50を、少なくとも、扱胴11の扱胴軸51より上方に設けているので、被処理物の共回り抑制効果を向上させる。
しかして、回転体50は前記排塵連通口33の上方に臨ませ、排塵連通口33付近の排塵処理装置30の排塵処理胴31の上方は開放し、回転体50からの処理物を排塵処理装置30に誘導するように構成する。
そのため、回転体50により扱胴11との持ち回りが阻止された処理物が、排塵処理装置30へ取り込まれるのを良好にする。
即ち、脱穀装置3の側板52より内側の排塵処理胴31の側方に排塵連通口33を形成し、この排塵連通口33の上方を開放させている。
【0012】
しかして、回転体50は、正面視において、扱胴11と排塵処理胴31との左右中間に位置させ、回転体50の回転胴53の回転軸54を中板34と脱穀室後板17に軸装し、回転胴53の外周に放射方向に突出する板状体55を設けて構成し、該板状体55の接線方向の排塵処理装置30の排塵処理胴31の上方部分には開口部56を形成する。
そのため、扱胴11の外周を上方に持ち回される処理物は、回転体50により板状体55の接線方向の排塵処理装置30の開口部56に向けて飛ばされ、排塵処理装置30への引継効率が向上する。
即ち、回転体50は、扱胴11と同方向回転するように構成し、回転体50の板状体55と扱胴11の扱歯11の重なる部分では互いに反対回転とし、被処理物を開口部56に向けて飛散させるようにする。
この場合、回転体50は、その板状体55の先端回転軌跡が軸心方向視において扱胴11の扱歯11の先端回転軌跡と重なるように配置する。
そのため、回転体50の被処理物の共回り抑制効果を向上させる。
【0013】
しかして、前記回転体50の板状体55の形状は任意であるが、図10の実施例では、所謂スターホイルのように、放射方向に突き出る複数の突起57を有する板形状に形成する。
そのため、部品点数を少なくしつつ、一枚の板部材により複数の突起57を形成して、共回り抑制効果を向上させ、コストを低くする。
前記回転体50の突起57は、回転方向に対して先端に至るに従い後退角度を設けて構成する(図10)。
そのため、回転体50に藁屑の絡み付きを抑制し、共回り抑制効果を向上させる。
しかして、回転体50の板状体55は、回転胴53の軸心方向に所定間隔を置いて複数設け、各板状体55はその突起57を位相を変えて設ける(図10)。
具体的には、正面視各突起57の先端が互いに重ならないように位相を変えている(図10)。
【0014】
各板状体55の突起57の位相を前後で変えているので、扱胴11との持ち回りが阻止された処理物は前方または後方に送りながら下方に落とすことができ、共回り抑制効果を向上させる。
即ち、回転体50は、板状体55の突起57の位相を回転方向の前後で変えることにより、処理物を下方に落とすのみならず、前後のいずれかに送り作用も奏することで、共回り抑制効果を向上させる。
また、板状体55の突起57の位相を変えることによる送り作用により、回転体50の回転負荷の変動を少なく一定にさせることができる。
また、回転体50の板状体55の先端は、接触しない範囲で扱胴11の外周に可及的接近させて設ける。
そのため、扱歯11の基部に引っ掛かって扱胴11の外周面付近に存在する被処理物までも、回転体50の板状体55が除去するので、回転体50の被処理物の共回り抑制効果を向上させる。
【0015】
回転胴53の軸心方向に複数設けた板状体55は、扱胴11の前後の扱歯11各間に夫々が位置するように配置する。
そのため、各扱歯11間に位置する被処理物を確実に下方に導き、回転体50の被処理物の共回り抑制効果を向上させる。
しかして、扱網18の存在しない脱穀室12の終端側の部分のうちの前側部分は排塵連通部Hに形成し、排塵連通部H内に前記排塵連通口33を形成する。
また、扱網18の存在しない脱穀室12の終端側の部分のうちの後側部分は刺さり粒回収部Sに形成し、前記排塵連通部Hおよび刺さり粒回収部S内に前記扱胴11の後部を延長して臨ませる。
そして、前記回転体50は、前記前記排塵連通部Hおよび刺さり粒回収部Sの両者に跨って設ける。
そのため、回転体50は、排塵連通部Hでは被処理物の共回りを抑制して排塵処理装置30への移行を促進させ、刺さり粒回収部Sでは脱穀済みの穀稈に穀粒が入り込む刺さり粒の発生を抑制すると共に刺さり粒の回収効率を向上させる。
【0016】
前記刺さり粒回収部Sの排塵処理装置30の排塵処理胴31の上方には、案内板60を設ける。
前記刺さり粒回収部Sの排塵処理胴31の上方はケーシング61により包囲し、排塵処理装置30の処理物が脱穀室12側の搬送穀稈に刺さり込まないようにしているが、このケーシング61の上方に案内板60を設け、ケーシング61上に処理物が溜まるのを防止する。
しかして、扱胴11の扱胴軸51の後端には中間出力プーリ62を設け、中間伝動プーリ62の側方に中間出力プーリ63を設ける。中間出力プーリ63は中間出力軸64に固定し、中間出力軸64の一端には、カップリング65を介して前記回転体50の回転軸66を着脱自在に連結する。
中間出力軸64の他端は排藁入力ギヤケース67に軸装する。排藁入力ギヤケース67には排藁搬送装置68に回転伝達する排藁入力軸69の他端を軸装する。
【0017】
したがって、回転体50の回転伝達経路は、扱胴11の扱胴軸51の後部から前記穀稈供給搬送装置13に続いて脱穀済みの穀稈を搬送する排藁搬送装置68への回転伝達経路を前方に分岐させて伝達するように構成している。
また、回転体50と排藁搬送装置68との分岐は、前記中間出力軸64の前後両端側から夫々の回転を分岐伝達するように構成する。
そのため、回転体50の回転伝達経路は、排藁搬送装置68への回転伝達経路を利用するので、簡素に構成できる。
即ち、扱胴11の扱胴軸51の後端側より回転を回転体50およびと排藁搬送装置68に入力するように構成しているので、扱胴11の後側側方に回転体50を設置するのが容易になり、レイアウト容易になる。
また、回転体50の回転軸66は、カップリング65を介して中間出力軸64に着脱自在に連結しているので、扱胴軸51の中間伝動プーリ62はカップリング65の部分で取り外し可能となって、中間伝動プーリ62と中間出力プーリ63との間のベルト71の交換を容易にする。
【0018】
また、回転体50の回転軸66と、中間出力軸64との間の伝動は、ベルト71により行うので、詰まり時等のメカロックしたとき、ベルト71を滑らせて安全装置として負荷を逃がすことができる。
しかして、排藁入力軸69の中間部は穂先側排藁搬送装置68Aを貫通させ、排藁入力軸69の他端には株元側排藁搬送装置68Bの排藁株元搬送チェン70の排藁搬送チェン駆動歯車を設けて、排藁搬送チェンを駆動させ、排藁搬送チェンの回転を穂先側排藁搬送装置68Aに伝達している。
したがって、回転体50は、排藁搬送装置68の回転伝達経路からの回転を伝達するので、回転伝達機構を簡素に構成できる。
【0019】
(実施例の作用)
走行装置2により走行し、刈取部4で刈り取った穀稈は穀稈供給搬送装置13の供給搬送チェン14により搬送されて、脱穀室12に供給され、脱穀室12の扱胴11で脱穀される。
脱穀された脱穀物は、扱網18より揺動選別棚22に落下し、揺動選別棚22の揺動と唐箕19からの送風により選別され、穀粒は揺動選別棚22の選別網から一番コンベア28に回収され、一番コンベア28により回収された穀粒はグレンタンク5に貯留される。
また、二番コンベア28に回収された二番物は二番還元装置45により二番処理装置42に還元され、二番処理装置42の二番処理胴44により再処理されて揺動選別棚22の始端部に拡散排出される。
また、脱穀室12で脱穀された脱穀物のうち、扱網18より落下しない脱穀物の一部は脱穀室12の終端で排塵連通口33から排塵処理装置30に入って処理される。
【0020】
また、揺動選別棚22上に落下した処理物は風選室21で風選され、揺動選別棚22より落下しない処理物のうち藁屑・塵埃は吸引排塵ファン42により機外に吸引排出される。
しかして、脱穀室12の終端側には、被処理物が扱胴11と共回りするのを抑制する回転体50を設けているから、回転体50により脱穀室12の終端側で扱胴11の被処理物の共回りを抑制して、穀稈供給搬送装置13により搬送される脱穀済み穀稈に穀粒が刺さり込むのを抑制し、四番ロスを低減させる。
また、回転体50により被処理物が扱胴11と共回りするのを抑制するので、排塵処理装置30への取り込みを良好にし、脱穀室12の負荷を軽減させ、全体として脱穀処理および回収効率を向上させる。
【0021】
回転体50は、少なくとも、扱胴11の扱胴軸51より上方に設けているから、扱胴11の下面側を移動する搬送穀稈の搬送に回転体50の存在自体が影響を与えることはなく、しかも、回転体50を、少なくとも、扱胴11の扱胴軸51より上方に設けているので、被処理物の共回り抑制効果を向上させる。
また、回転体50は、排塵処理装置30の排塵連通口33の上方に臨ませているので、排塵連通口33上方での被処理物の共回りを抑制でき、排塵処理装置30への取り込みを良好にする。
しかして、回転体50は、正面視において、扱胴11と排塵処理胴31との左右中間に位置させているから、回転体50は脱穀室12内にコンパクトに設けられ、扱胴11および排塵処理装置30の両者に良好に作用させられ、合理的構成となる。
【0022】
回転体50は、回転胴53の回転軸54を中板34と脱穀室後板17に軸装し、中板34よりも後方に回転体50が設けられているので、脱穀室12の前側や中間部での脱穀やこなし作用には影響せず、中板34より後方の脱穀室12の終端で、被処理物の共回りを抑制でき、被処理物や搬送穀稈への穀粒の刺さり込むのを防止して、四番ロスの低減を効果的に行える。
回転体50は、その板状体55の先端回転軌跡が扱胴11の扱歯11の先端回転軌跡と重なるように配置してるので、扱歯11に引っ掛かって共回りする被処理物を、回転体50の板状体55が除去することができ、回転体50の被処理物の共回り抑制効果を向上させる。
また、回転体50の回転軸54の先端は、接触しない範囲で扱胴11の外周に可及的接近させて設けているので、扱歯11の基部に引っ掛かって扱胴11の外周面付近に存在する被処理物までも、回転体50の板状体55が除去することができ、回転体50の被処理物の共回り抑制効果を向上させる。
【0023】
板状体55は、回転体50の回転胴53の軸心方向に所定間隔を置いて複数設けると共に、扱胴11の前後の扱歯11各間に夫々板状体55が位置するように配置しているので、前後の扱歯11に引っ掛かっている被処理物を、回転体50の板状体55が除去して、確実に下方に導き、回転体50の被処理物の共回り抑制効果を向上させる。
回転体50は、回転体50の板状体55と扱胴11の扱歯11の重なる部分において互いに反対駆動回転させているので、扱胴11との被処理物の共回りを抑制するとともに、被処理物は回転体50の回転軸54により排塵処理胴31に向けて飛散させられ、排塵処理装置30への移行を促進でき、好適である。
【0024】
しかして、回転体50は前記排塵連通口33の上方に臨ませ、排塵連通口33付近の排塵処理装置30の排塵処理胴31の上方は開放しているから、回転体50により扱胴11との持ち回りが阻止された処理物は排塵連通口33付近の排塵処理胴31の上方へ向かって下方に落下し、排塵処理装置30へ取り込まれるのを良好にして、引継効率を向上させる。
しかして、回転体50は、回転胴53の外周に放射方向に突出する板状体55を設けて構成し、該板状体55の接線方向の排塵処理装置30の排塵処理胴31の上方部分に開口部56を形成しているから、扱胴11の外周を上方に持ち回される処理物は、回転体50により板状体55の接線方向の排塵処理装置30の開口部56に向けて飛ばされ、引継効率が向上する。
【0025】
即ち、回転体50は、回転体50の板状体55と扱胴11の扱歯11の重なる部分では互いに反対回転としているから、被処理物を開口部56に向けて飛散させる。
前記回転体50の板状体55の形状は、所謂スターホイルのように、放射方向に突き出る複数の突起57を有する板形状に形成しているから、部品点数を少なくしつつ、一枚の板部材により複数の突起57を形成して、共回り抑制効果を向上させ、コストを低くする。
前記回転体50の突起57は、回転方向に対して先端に至るに従い後退角度を設けて構成しているから、回転体50に藁屑の絡み付きを抑制し、共回り抑制効果を向上させる。
しかして、回転体50の板状体55は、回転胴53の軸心方向に所定間隔を置いて複数設け、各板状体55はその突起57を位相を変えて設けているから、扱胴11との持ち回りが阻止された処理物は前後のいずれかに送りながら下方に落とされることになり、送り作用を受けながら落下して、共回り抑制効果を向上させる。
【0026】
しかして、扱網18の存在しない脱穀室12の終端側の部分のうちの前側部分は排塵連通部Hに形成し、排塵連通部H内に前記排塵連通口33を形成し、扱網18の存在しない脱穀室12の終端側の部分のうちの後側部分は刺さり粒回収部Sに形成し、前記排塵連通部Hおよび刺さり粒回収部S内に前記扱胴11の後部を延長して臨ませると共に、回転体50は、排塵連通部Hおよび刺さり粒回収部Sの両者に跨って設けているので、排塵連通部Hでは回転体50により被処理物の共回りを抑制して排塵処理装置30への移行を促進させ、刺さり粒回収部Sでは脱穀済みの穀稈に穀粒が入り込む刺さり粒の発生を抑制すると共に刺さり粒の回収効率を向上させる。
そして、前記刺さり粒回収部Sの排塵処理装置30の排塵処理胴31の上方には、案内板60を設けているから、前記刺さり粒回収部Sの排塵処理胴31の上方はケーシング61により包囲し、排塵処理装置30の処理物が脱穀室12側の搬送穀稈に刺さり込まないようにしている。
【0027】
このケーシング61の上方には案内板60を設けているから、案内板60はケーシング61上に処理物が溜まるのを防止する。
しかして、回転体50の回転伝達経路は、排藁搬送装置68への回転伝達経路を前方に分岐させて構成しているから、回転体50の回転伝達経路を、簡素に構成できる。
具体的には、扱胴11の扱胴軸51の回転を、中間伝動プーリ62と中間出力プーリ63とベルト71により中間出力軸64に伝達し、中間出力軸64の前後の夫々の回転を回転体50と排藁搬送装置68とに伝達させているから、扱胴11の扱胴軸51の後端側の回転を回転体50と排藁搬送装置68とに分岐伝動させられ、扱胴11の後側側方に回転体50を設置するのが容易になり、レイアウト容易になる。
また、回転体50の回転軸66は、カップリング65を介して中間出力軸64に着脱自在に連結しているので、扱胴軸51の中間伝動プーリ62はカップリング65の部分で取り外し可能となって、中間伝動プーリ62と中間出力プーリ63との間のベルト71の交換を容易にする。
また、回転体50の回転軸66と、中間出力軸64との間の伝動は、ベルト71により行うので、詰まり時等のメカロック等の原因により回転体50に高負荷が掛かってもベルト71を安全装置として、負荷を逃がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】脱穀装置の側面図。
【図3】同平面図。
【図4】回転体付近の平面図。
【図5】脱穀装置の正面図。
【図6】A−A断面図。
【図7】B−B断面図。
【図8】脱穀室の背面図。
【図9】回転体の断面図。
【図10】同正面図。
【符号の説明】
【0029】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…脱穀装置、4…刈取部、5…グレンタンク、6…操縦部、11…扱胴、12…脱穀室、13…穀稈供給搬送装置、14…供給搬送チェン、16…前板、17…脱穀室後板、18…扱網、19…唐箕、20…唐箕ケーシング、21…風選室、22…揺動選別棚、23…揺動選別装置、24…移送棚部、25…グレンシーブ、26…ストローラック、27…一番コンベア、28…二番コンベア、30…排塵処理装置、31…排塵処理胴、33…排塵連通口、35…脱穀物排出口、37…排出孔、36…縦桟、38…開放落下口、42…二番処理装置、44…二番処理胴、50…回転体、51…扱胴軸、52…側板、53…回転胴、55…板状体、56…開口部、57…突起、60…案内板、61…ケーシング、62…中間出力プーリ、63…中間出力プーリ、64…中間出力軸、65…カップリング、66…回転軸、67…排藁入力ギヤケース、68…排藁搬送装置、68A…穂先側排藁搬送装置、68B…株元側排藁搬送装置、69…排藁入力軸、70…排藁株元搬送チェン、71…ベルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈供給搬送装置(13)による搬送穀稈を脱穀する扱胴(11)の下側に扱網(18)を設けて脱穀室(12)を形成し、前記穀稈供給搬送装置(13)の反対側の脱穀室(12)の後部側方には、該脱穀室(12)と排塵連通口(33)により連通する排塵処理胴(31)を有する排塵処理装置(30)を設け、前記脱穀室(12)の後部側方に、軸心が前記扱胴(11)と平行の回転体(50)を設け、該回転体(50)の回転伝達経路は、扱胴(11)の扱胴軸(51)の後部から前記穀稈供給搬送装置(13)に続いて脱穀済みの穀稈を搬送する排藁搬送装置(68)への回転伝達経路を前方に分岐させて伝達するように構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
請求項1において、前記扱胴(11)の扱胴軸(51)の回転が伝達される中間出力軸(64)を設け、該中間出力軸(64)の前後両端側の夫々の回転を回転体(50)と排藁搬送装置(68)とに分岐伝達するように構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
請求項2において、前記中間出力軸(64)は、前記回転体(50)の回転軸(66)にカップリング(65)を介して着脱自在に連結して構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項4】
請求項3において、前記扱胴(11)の扱胴軸(51)の回転は、中間伝動プーリ(62)と中間出力プーリ(63)とベルト(71)により中間出力軸(64)に伝達するように構成したことを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−125060(P2009−125060A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307067(P2007−307067)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】