説明

コンバイン

【課題】 エンジンボンネット等を揺動開放できるものでありながら、走行用ブレーキ、走行用ブレーキ操作具、及び、ブレーキ連係機構の構造を複雑にならない構成とすることができるコンバインを提供する。
【解決手段】 エンジンボンネット21及び運転座席9を、機体上下向きの運転部開放軸芯Xまわりに回動し、エンジン28を開放した開き状態とに切り換わる。走行用ブレーキ操作具41を運転操縦室内に位置させ、走行用ブレーキ44を運転操縦室外に配置する。走行用ブレーキ操作具41をブレーキ入り位置に切り換えた状態で、エンジンボンネット21及び運転操縦室が開き状態に回動することを許容する開口25Aを、横前壁板25に設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンボンネットを、機体上下向きの運転部開放軸芯まわりに、エンジンボンネットがエンジンを覆った閉じ状態と、エンジンボンネットがエンジンを開放した開き状態とに回動切り換え自在に構成してあるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のコンバインは、次ぎのような特徴を有する。つまり、ハンドル塔、ステップ、エンジンカバー、側板を一体化したカバー体が支点金具の縦向き支点を中心にして少し横外方に揺動されるとともに支点金具の横向き支点を中心にして上方に揺動されることにより、エンジンカバー及び運転座席が機体フレームに対して上昇回動し、エンジンが開放される構成のもの(特開2001−136823号公報)に比べて、エンジンボンネットや運転座席などを閉じ状態から高所まで上昇させる必要がなく、開閉操作を軽快に行える特徴を有する。
【0003】
また、上記構成のものでは、運転座席がエンジンボンネットに支持されている。エンジンボンネットがボンネット支持部に起伏開閉自在に支持され、ボンネット支持部が、運転部の床板前端側の下方で機体上下向きの旋回軸芯まわりで回動自在に機体フレームに連結されている。エンジンボンネットが倒伏開放されるとともにボンネット支持部が旋回軸芯まわりで回動されることにより、エンジンボンネットと運転座席が旋回軸芯まわりで機体フレームに対して機体横外側に旋回移動し、エンジンが開放される構成のもの(特開2004−34780号公報)に比べて、エンジンを開放した際、エンジンボンネット及び運転座席が機体から横外側に大きくはみ出ない状態になる特徴を有している。
【0004】
このような特徴構成を有するものとして、例えば、下記に記載したものが本出願人らによって提案されている。
このものにおいては、運転操縦室の横側方に形成した操作盤を備えた操作空間において、ブレーキ操作具の基端部を揺動自在に支持して、エンジンボンネットに取付け、ブレーキ操作具をエンジンボンネットと一体的に機体上下向きの運転部開放軸芯まわりに回動自在に構成していた。一方、ブレーキ操作具への操作を受けて走行用ブレーキを入り操作すべく、ブレーキ操作具と走行用ブレーキとを連係する操作ケーブルを走行用ブレーキとともに、前記エンジンボンネットと非連動状態にある前記機体の固定側フレームに取り付け固定していた。
そして、ブレーキ操作具のブレーキアームと操作ケーブルのアウタレースを支持するフレームとを連係離脱自在に構成していた。つまり、エンジンボンネットの機体横外側方への縦軸回りの回動によって、ブレーキ操作具のブレーキアームと操作ケーブルのアウタレースを支持するフレームとが離脱し、エンジンボンネットのエンジンを覆う所定位置への復帰回動によって、ブレーキ操作具のブレーキアームと操作ケーブルのアウタレースを支持するフレームとが連結される構成を取っていた(非特許文献1)。
【0005】
【非特許文献1】特願2006−252810号(段落〔0025〕−〔0028〕、図11,12,13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した非特許文献1に示される技術においては、固定側フレームに属する操作ケーブルのアウタレースを支持するフレームと、エンジンボンネットとともに回動するブレーキ操作具とを連係解除自在なものに形成する必要があり、部品点数が多く、かつ、構造の複雑化を招来するものであった。
【0007】
本発明の目的は、エンジンボンネット等を揺動開放できるものでありながら、走行用ブレーキ、走行用ブレーキ操作具、及び、前記ブレーキ連係機構の構造を複雑にならない構成とすることができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、走行用ブレーキと走行用ブレーキ操作具とをブレーキ連係機構で連係し、前記エンジンボンネットが前記開き状態に回動する場合にも前記エンジンボンネットと非連動状態にある前記機体の固定側フレームに、前記走行用ブレーキ、前記走行用ブレーキ操作具、及び、前記ブレーキ連係機構を取付けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0009】
〔作用〕
走行ブレーキ及びその操作に拘わる走行用ブレーキ操作具とブレーキ連係機構を、エンジンボンネットと非連動状態にある機体の固定側フレームに取付けてあるので、エンジンボンネットを開き状態に回動しても、走行用ブレーキ操作具とブレーキ連係機構とが、機体の固定側にフレームに残る。これにより、走行用ブレーキ操作具を揺動開閉作動するエンジンボンネット側に取付ける必要がなく、かつ、ブレーキ連係機構等に連係離脱自在な構成を採用する必要がない。
【0010】
〔効果〕
これにより、エンジンの上方にエンジンボンネットなどの障害物がなくて点検作業などが行いやすい状態にエンジンを開放することができるものでありながら、走行用ブレーキの入り切り操作に拘わるブレーキ連係機構に連係離脱自在な構成を採用する必要がなく、ブレーキ連係機構の簡素化を図ることができる。
【0011】
〔構成〕
請求項2に係る発明の特徴構成は、請求項1に係る発明の特徴構成において、前記走行用ブレーキ操作具を運転操縦室内に位置させ、前記走行用ブレーキを前記運転操縦室外に配置し、前記走行用ブレーキ操作具をブレーキ入り位置に切り換えた状態で、前記エンジンボンネットが前記開き状態に回動することを許容する機構を備えてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用〕
走行用ブレーキ操作具をブレーキ入り位置に操作せずに、走行用ブレーキが解除された状態では、エンジンボンネットを開き状態に回動操作することができず、走行用ブレーキ操作具をブレーキ入り位置に操作し、走行用ブレーキが作動した状態において、エンジンボンネットを開き状態に回動操作することができる。
【0013】
〔効果〕
エンジンボンネットの回動操作に際して、走行用ブレーキを入り状態に切り換える必要があるので、走行用ブレーキを解除した状態でエンジンボンネットを回動操作するといった不測の事態を回避でき、エンジンボンネットを開き状態にしてメインテナンス作業を安定して行えるものである。
【0014】
〔構成〕
請求項3に係る発明の特徴構成は、請求項2に係る発明の特徴構成において、前記許容する機構が、前記運転操縦室を区画する隔壁に形成され、前記ブレーキ入り位置に位置する前記走行用ブレーキ操作具の通過を許容する開口である点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0015】
〔作用効果〕
走行用ブレーキ操作具をブレーキ入り位置に操作していないと、エンジンボンネットを開き状態に回動操作しようとしても、走行用ブレーキ操作具が隔壁の開口を通過することができず、エンジンボンネットを開き状態に回動操作することができない。走行用ブレーキ操作具をブレーキ入り位置に操作していると、エンジンボンネットを開き状態に回動操作する際に、走行用ブレーキ操作具が隔壁の開口を通過し、エンジンボンネットを開き状態に回動操作することができる。
【0016】
〔構成〕
請求項4に係る発明の特徴構成は、請求項3に係る発明の特徴構成において、前記隔壁に前記開口を閉塞する蓋部材を着脱自在に取付け、前記蓋部材に前記走行用ブレーキ操作具のブレーキ作動を許容するスリット機構を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0017】
〔作用効果〕
隔壁にスリット機構を構成することによって、走行用ブレーキ操作具のブレーキ操作が、隔壁を取り外すことなく行え、隔壁や蓋部材を無くして塵埃の運転操縦部内への侵入を許す構成を敢えて採る必要がない。
【0018】
〔構成〕
請求項5に係る発明の特徴構成は、請求項1から4のうちいずれか一つに係る発明の特徴構成において、運転操縦室の足置き用床フレームの下方に、前記エンジンボンネット及び前記運転操縦室を前記閉じ状態に固定する取付け具を設け、前記足置き用床フレームを、前記取付け具を覆い足置き姿勢に維持する作業姿勢と、前記取付け具を表出するとともに前記エンジンボンネット及び前記運転操縦室の開き状態への切り換わりを許容する非作業姿勢とに切換え可能に構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0019】
〔作用効果〕
エンジンボンネット及び前記運転操縦室が開き状態へ切り換わる際には、前記エンジンボンネット及び前記運転操縦室を前記閉じ状態に固定する取付け具を解除操作するには、足置き用床フレームを非作業姿勢に切り換える必要がある。
したがって、足置き用床フレームを非作業姿勢に切り換えることを忘れすることがなく、エンジンボンネット及び前記運転操縦室が開き操作を円滑に行えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係るコンバインの全体側面図である。図2は、本発明の実施例に係るコンバインの全体平面図である。これらの図に示すように、本発明の実施例に係るコンバインは、クローラ走行装置1を有した機体と、この機体の機体フレーム2の前部に連結された刈取り部10と、前記機体フレーム2の後部に機体横方向に並べて搭載された脱穀装置3と穀粒タンク4を備えている。
【0021】
このコンバインは、稲,麦などの穀粒を収穫するものである。すなわち、刈取り部10は、この刈取り部10の主フレーム(図示せず)が油圧シリンダ(図示せず)によって機体フレーム2に対して上下に揺動操作されることにより、刈取り部10の前端部に刈取り部横方向に並んで位置する分草具12が地面近くに位置した下降作業状態と、前記分草具12が地面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降操作される。刈取り部10を下降作業状態にして機体を走行させると、刈取り部10は、前記各分草具12によって刈り取り対象の植立穀稈を分草具12の後方に位置する引起し経路13に導入し、各引起し経路13に導入された植立穀稈を引起し経路13の横側に位置する引起し装置14によって引起し処理するとともに引起し経路13の終端部に位置するバリカン型の刈取り装置15によって刈取り処理し、刈取り装置15からの刈取り穀稈を供給装置16によって機体後方向きに搬送して脱穀装置3に供給する。脱穀装置3は、脱穀フィードチェーン(図示せず)によって刈取り穀稈の株元側を挟持して機体後方向きに搬送しながら刈取り穀稈の穂先側を扱室(図示せず)に供給し、その穂先側を脱穀処理する。穀粒タンク4は、脱穀装置3から搬送された脱穀粒を回収して貯留する。この穀粒タンク4は、タンク内の底部に位置する排出スクリュー(図示せず)と、穀粒タンク4の後部に位置する縦スクリューコンベヤ6と、この縦スクリューコンベヤ6の上端部に連結した横スクリューコンベヤ7とによってタンク内の脱穀粒を排出する。横スクリューコンベヤ7は、縦スクリューコンベヤ6に対して旋回および起伏操作できる。
【0022】
機体は、前記クローラ走行装置1と前記機体フレーム2とを備える他、前記穀粒タンク4の前方近くに位置したエンジンボンネット21を有した原動部20と、前記エンジンボンネット21の上方に位置した運転座席9を有した運転部8とを備えている。
【0023】
図2は、運転部8の平面視での構造を示している。図4は、運転部8の側面視での構造を示している。これらの図に示すように、運転部8は、前記運転座席9を備える他、運転座席9の前方に配置した運転部床フレーム18及び操縦塔19と、運転部床フレーム18の乗降口側とは反対側の端部に位置した横側壁23と、運転座席9の乗降口側とは反対側の横側方に配置した操作盤26とを備えている。前記横側壁23は、運転部内のエンジンボンネット21と前記操縦塔19との間の運転操縦室を刈取り部側の外部と仕切り、刈取り部10から運転操縦室内に塵埃が入り込むことを防止している。操縦塔19は、機体の操向操作と刈取り部10の昇降操作とを行う昇降操作レバー17と、エンジン28に関する稼動時間などの情報などを示す計器盤62とを備えている。前記操作盤26は、変速レバー40と、脱穀クラッチレバー63と、変速レバー40及び脱穀クラッチレバー63よりも機体前方側に配置したスイッチ盤64とを備えている。変速レバー40は、機体前後方向に揺動操作されることにより、静油圧式無段変速装置43を変速操作し、走行装置1の駆動、停止、変速操作を行う。詳細については後述する。脱穀クラッチレバー63は、機体前後方向に揺動操作されることにより、脱穀クラッチ(図示せず)を切換え操作し、脱穀装置3を駆動、停止操作する。スイッチ盤64は、前記横スクリューコンベヤ7を旋回、起伏操作するスイッチ(図示せず)と、横スクリューコンベヤ7の自動運転を入り状態と切り状態とに切換え操作するスイッチ(図示せず)と、横スクリューコンベヤ7が自動運転によって停止される排出位置を選択して設定する操作手段(図示せず)とを備えている。図10に示すように、前記スイッチ盤64は、運転座席9に着座した操縦者から見やすいよう機体前後方向視で運転座席側ほど低くなった傾斜状態になっている。
【0024】
図4及び図5に示すように、原動部20は、前記エンジンボンネット21を備える他、このエンジンボンネット21の機体横外側端部の内部に配置したエンジン冷却ラジエータ27と、前記エンジンボンネット21の内部の前記エンジン冷却ラジエータ27よりも機体の横方向での内側に配置したエンジン28と、エンジンボンネット21の後端側の上部に連設された吸気ケース29と、この吸気ケース29の内部に設けたエヤクリーナ30とを備えている。
【0025】
図3〜図5に示すように、エンジン28は、エンジン28の一端側に連結された冷却ファン31と、エンジン28の他端側に連結された出力プーリ32とを備え、冷却ファン31が機体横外側に位置し、出力プーリ32が機体横内側に位置した搭載姿勢で機体フレーム2に支持されている。
【0026】
図5及び図6に示すように、エンジンボンネット21は、エンジン28およびエンジン冷却ラジエータ27の上方を覆う前記天板22と、エンジン28およびエンジン冷却ラジエータ27の機体横外側方を覆う前記横側壁23とを備える他、エンジン28の前方を覆う前側壁板24を備えて構成してある。
【0027】
図6に示すように、エンジンボンネット21は、エンジンボンネット前端側の機体横外側に位置する角部に設けた三角形状の面取り板部21aを備えている。この面取り板部21aは、エンジンボンネット21の乗降口に望む角部の外向き面を上端側ほど機体内側に位置した傾斜面に形成し、エンジンボンネット21を運転部8に対する乗り降りの障害になりにくくしている。
【0028】
図5,8に示すように、エンジンボンネット21の後側の外部に連結部材34を介して取り付けた筒体で成る連結部34aが機体フレーム2に立設された前記機体側支柱35の上端部に回転自在に連結されている。これにより、エンジンボンネット21は、前記機体側支柱35が有する機体上下向きの運転部開放軸芯Xまわりで回動自在に支持される。前記運転部開放軸芯Xは、エンジン28よりも機体後方側で、かつ、エンジン28のクランク軸端で成る機体横方向での機体外側端よりも機体内方側に配置してある。
【0029】
つまり、エンジンボンネット21は、図2,3,6に示す如く、運転座席9の左側後方に立設された機体側支柱35の運転部軸芯X回りで機体横側方に向けて回動切換え自在になっている。図2は、エンジンボンネット21の閉じ状態で平面視状態を示し、図3は、エンジンボンネット21の開き状態での平面視状態を示す。これらの図に示すように、エンジンボンネット21は、運転部開放軸芯Xのまわりで回動操作されることにより、運転部開放軸芯Xよりも機体前方側に位置してエンジン28を覆った閉じ状態と、エンジン28よりも機体後方側に位置してエンジン28を開放した開き状態とに切り換わる。
【0030】
図5〜図8に示すように、エンジンボンネット21と一体で開放揺動する運転座席9の支持フレームの構造は、前後向きに延出された左主フレーム66、左主フレーム66の後端から右側に延出された後横向きフレーム67、後横向きフレーム67の右端から前方に延出した右主フレーム(図示せず)、左右の主フレーム66を連結する前横向きフレーム(図示せず)とで、枠組み構造を構成している。
【0031】
運転座席9に着座した運転者の足元部位を構成するフレームが配置してある。つまり、図7に示すように、左前後向きフレーム69から右横側方に向けて支持フレーム87が左右向き姿勢で設けてある。この支持フレーム87は、前後向きフレーム69から一定長さのみ左右方向に沿って延出された短直部分87Aと、その短直部分87Aの延出端より右後方向きに長斜部分87Bを有して、所定位置に配置構成してある。
【0032】
図6〜10に示すように、支持フレーム87の上面には、板状の運転部床88が張設されている。板状の運転部床88は、支持フレーム87より前方に位置する前床板88Aと支持フレーム87より後方に位置する足置きフレームとしての後床板88Bとに分割構成されており、前床板88Aは支持フレーム87等に支持固定されている。
【0033】
前床板88Aの中間大部分88aは台形状を呈しており、この中間大部分88aは取り外すことができ、運転部8の下方の点検を容易に行えるようになっている。一方、後床板88Bは、支持フレーム87に左右二つの蝶番89を介して揺動開閉自在に取付けてあり、開き操作して立ち姿勢に保持することができる。
図6(a)(b)に示すように、後床板88Bの後端と左横側端とには、板状ブラケット88bが立設してあり、板状ブラケット88bに前記した横側板23と前側壁板24の下端部を取り付けるべく構成してある。
【0034】
図6〜10に示すように、支持フレーム87の下方にはこの支持フレーム87に沿った状態で受止支持する機体側受フレーム92を設けてある。この機体側受フレーム92には、取付ブラケット92Aが設けてあり、運転部床88に形成したブラケット91と取付ブラケット92Aとをボルト連結することができる。これによって、後記するように、機体横側方に揺動開放されるエンジンボンネット21等を含む運転操縦室を所定の運転作業位置に固定できる。
【0035】
運転部床88に形成したブラケット91は、後床板88Bを持上げることによって、視認できる。これによって、後床板88Bを持上げて、エンジンボンネット21等を含む運転操縦室を機体横側方に揺動開放する場合にしか、ボルト連結を解除できないこととなる。
ここに、取付ブラケット92A及び取付用のボルトを、エンジンボンネット21及び運転操縦室を閉じ状態に固定する取付け具と称する。
【0036】
図6(a)(b)に示すように、横側壁23は、後床板88Bの左横側端に立ち上げた板状ブラケット88bにボルトaを介して着脱自在に取り付けてある。図6(a)(b)に示すように、後床板88Bの後端に立ち上げた板状ブラケット88bにボルトaを介して着脱自在に取り付けてある。これによって、横側壁23と前側壁板24及び面取り板部21aとを、取り外すことが可能である。
横側壁23と前側壁板24及び面取り板部21aとは、後記するように、エンジンボンネット21を揺動開放する際に取り外され、後床板88Bは、図6(b)、図7、及び、図8に示すように、開き操作して立ち姿勢に保持される。エンジン28及びラジエータ27との干渉を回避するためである。
【0037】
次ぎに、走行用ブレーキ操作具41と横前壁板25との関係を説明する。図4、6、8〜10に示すように、横前壁板25は横側壁23の更に前方側に位置し、中間部分に略菱形をした開口25Aが形成してあり、その開口25Aを覆う蓋部材90が装備してある。蓋部材90には、図4及び図11に示すように、後記する走行用ブレーキ操作具41を支持するブレーキアーム41Aの上端部41cを挿通させるとともに走行用ブレーキ操作具41の踏み込み操作を許容する円弧状の長孔90aが形成されている。
このように、蓋部材90に円弧状の長孔90aが設けてあるので、通常の作業走行時においては、蓋部材90を取り外すことなく、ブレーキ操作が可能である。
ここに、長孔90aを、蓋部材90に設けた、走行用ブレーキ操作具41のブレーキ作動を許容するスリット機構と称する。
【0038】
図6(a)、図8、図10に示すように、横前壁板25に開口25Aが形成してあるので、走行用ブレーキ操作具41がブレーキ入り位置に踏み込み操作された状態で、開口25Aが走行用ブレーキ操作具41のペダル部分が擦り抜けることのできる大きさに形成されている。これによって、蓋部材90のみを取り外すだけで、横前壁板25は取り外すことなく、走行用ブレーキ操作具41と横前側板25との干渉を回避する。
走行用ブレーキ操作具41の下方には、図14に示すように、走行用ブレーキ操作具41が踏み込み操作されてブレーキ入り位置に至ったことを接触感知するスイッチ98を設けてある。このスイッチ98によって、走行用ブレーキ操作具41がブレーキ入り位置に至ったことを検出できる。
ここに、横前壁板25、及び、横側壁23を、運転操縦空間と操作盤26の下方空間とを区画する隔壁と称する。また、開口25Aを、走行用ブレーキ操作具41をブレーキ入り位置に切り換えた状態で、前記エンジンボンネット21及び前記運転操縦室が前記開き状態に回動することを許容する機構と称する。
【0039】
図1,2に示すように、運転部8は、前記操作盤26に設けた操作具としての変速レバー40と、前記運転部床88の前端側に設けた操作具としての走行用ブレーキ操作具41とを備えている。図8に示すように、変速レバー40は、前記機体フレーム2の前端部に支持されたミッションケース42に装備された操作対象装置としての静油圧式無段変速装置43を変速操作し、これによってクローラ走行装置1を駆動、停止、変速操作する。図14に示すように、走行用ブレーキ操作具41は、前記ミッションケース42に装備された操作対象装置としての摩擦式の走行用ブレーキ44(以下、ブレーキ44と略称する。)を操作し、これによって走行装置1を制動操作する。
【0040】
変速レバー40による変速構造について説明する。図11に示すように、変速レバー40による変速構造においては、アシストモータ45による変速構造を採用しており、アシストモータ45を駆動制御する為に、変速レバー40への操作を検出する検出手段36を設けている。検出手段36としては、種々のものが使用できるが、ここでは、変速レバー40の正逆方向への移動を検出するリミットスイッチ36aを採用する。リミットスイッチ36aは、後記する駆動ギヤ48に取付けられる。駆動ギヤ48に設けた抜き孔48aより変速レバー40から延出された駆動ピン40bを臨ませ、その駆動ピン40bによってリミットスイッチ36aを操作する。
【0041】
アシストモータ45によって、変速レバー40を駆動する構成について説明する。図11に示すように、アシストモータ45の出力軸45aに出力ギヤ46を装着し、出力ギヤ46と大小二つの中継ギヤ47を介して、変速レバー40のレバー軸40aに装着された駆動ギヤ48に動力伝達可能に構成してある。
【0042】
図12に示すように、駆動ギヤ48は、レバー軸40aに遊転外嵌されており、二つの摩擦板49、49に挟まれて、受け止めディスク39によってレバー軸40aに取り付けられている。受け止めディスク39とともにレバー軸40aに押圧ディスク38を外嵌し、受け止めディスク39と押圧ディスク38との間に板バネ37を介在させて、駆動ギヤ48及び変速レバー40を摩擦保持している。
一方の摩擦板49とレバー軸40aに変速レバー40の基端ボス部40Aが外嵌装着されており、変速レバー40の基端ボス部40Aに摩擦力によって駆動ギヤ48と変速レバー40とが一体的に回動させる摩擦板49が装着されている。このように、摩擦板49を使用した構成を摩擦保持機構33と称する。
【0043】
以上のような構成によって、アシストモータ45によって回転停止状態にある駆動ギヤ48に作用している摩擦保持機構33の摩擦保持力に抗して、中立位置より変速レバー40を前後進の一方に操作すると、駆動ギヤ48に対して変速レバー40が僅かに回転し、変速レバー40の駆動ピン40bが一方のリミットスイッチ36aに当接してリミットが作動する。この検出作動を受けて、図示していない、制御手段によってアシストモータ45が駆動され、駆動ギヤ48によって変速レバー40が駆動される。駆動ギヤ48の回転作動によって駆動ピン40bがリミットスイッチ36aより離れ、その時点で駆動ギヤ48の回転は停止する。
【0044】
変速レバー40を所望の変速操作位置に設定するには、変速レバー40でリミットスイッチ36aへの操作を維持しながら、変速レバー40を駆動ギヤ48と一体で回動させ、所望の変速操作位置に至った状態で変速レバー40への操作を停止すれば、駆動ギヤ48が少し回転するので、リミットスイッチ36aへの操作が停止されて変速レバー40が所望の変速操作位置で停止する。
そして、その変速操作位置においては、変速レバー40は摩擦保持機構33によって保持される。
【0045】
次ぎに、変速レバー40によって、静油圧式無段変速装置43を操作する形態について説明する。図8は、変速レバー40を無段変速装置43の操作部43aに連動させる機械式連動機構50の機体側面視での構造を示す。図9〜図12に示すように、前記変速用の機械式連動機構50は、無段変速装置43の操作部43aに連結された第1連動ロッド51と、この第1連動ロッド51の上端を連結している天秤揺動式の中継アーム31と、中継アーム31の揺動支点Pを挟んで反対側の端部にユニバーサルジョイント32Aを介して連結されている第2連動ロッド32と、第2連動ロッド32の上端側遊端部が連結された天秤揺動式の変速装置側連動部材52と、変速レバー40の回転支軸40aに後記する摩擦保持機構33を介して回転自在に連結された揺動アーム53と、この揺動アーム53に上端側の連結軸54aが連結された連動ロッド54と、この連動ロッド54の下端側の折り曲げ端部54bに遊端部が連結されたレバー側連動部材55と、このレバー側連動部材55と前記変速装置側連動部材52とにわたって設けた係合手段56とを備えている。
【0046】
前記レバー側連動部材55は、操作盤26の上壁から立ち下げられた支持部材57と、この支持部材57とレバー側連動部材55の基部とを連結している連結軸58とを介して支持されている。これにより、レバー側連動部材55は、前記連結軸58の機体横向きの軸芯まわりで機体上下方向に揺動する。前記変速装置側連動部材52は、操作盤26の底面を形成する底壁26Aを支持する支持部材59を横側方に延出し、その延出端において立設されたブラケット部59Aに連結軸60を介して支持されている。これにより、変速装置側連動部材52は、前記連結軸60の軸芯まわりで機体上下方向に揺動する。
【0047】
図12,13に示すように、前記係合手段56は、前記レバー側連動部材55に設けた連結ピン56aと、前記変速装置側連動部材52に前記連結ピン56aの係脱を可能にして設けたピン孔56bとを備えて構成してある。連結ピン56aは、連動ロッド54の前記折り曲げ端部54bによって構成してある。
【0048】
図13(a)は、前記係合手段56の係合状態を示し、図13(b)は、前記係合手段56の離脱状態を示す。これらの図に示すように、係合手段56は、運転部8が開閉されることにより、係合状態と離脱状態とに切り換わる。
【0049】
すなわち、エンジンボンネット21とともに運転部8が開き状態に操作されると、図13(b)に示すように、レバー側連動部材55が、揺動する運転部8と共に移動し、レバー側連動部材55と変速装置側連動部材52とが相対離間して連結ピン56aがピン孔56bから抜け外れる。これにより、係合手段56は、レバー側連動部材55と変速装置側連動部材52とを分離させた離脱状態になり、変速レバー40と無段変速装置43の操作部43aとの連動を絶つこととなる。
【0050】
運転部8が閉じ状態に操作されると、図13(a)に示すように、レバー側連動部材55が揺動する運転部8と共に移動し、レバー側連動部材55と変速装置側連動部材52とが相対接近して連結ピン56aがピン孔56bに係入する。これにより、係合手段56は、レバー側連動部材55と変速装置側連動部材52とを連動させた係合状態になり、変速レバー40を無段変速装置43の操作部43aに連動させる。また、係合手段56は、レバー側連動部材55と変速装置側連動部材52とをそれぞれの揺動のための軸芯58a,60aが同一軸芯Yになって一体揺動するよう連動させる。このとき、図13に示す如くレバー側連動部材55に連結されている前記連結軸58の端部に設けた凹形ガイド61aと、変速装置側連動部材52に連結されている前記連結軸60の端部に設けた凸形ガイド61bとで成る位置決め手段61が、図13(b)の如く凹形ガイド61aと凸形ガイド61bとが外れた解除状態から、図13(a)の如く凹形ガイド61aと凸形ガイド61bとが係合した作用状態に切り換わって両連結軸58,60を一直線状に並ぶよう位置決めし、連結ピン56aとピン孔56bとが係合しやすくなる。
【0051】
走行用ブレーキ操作具としての走行用ブレーキ操作具41の取付け構造について説明する。図9〜図11に示すように、操作盤26を備えた空間の底壁26Aの下方に設けられている支持部材59より下向きに支持ロッド99を延出してある。この支持ロッド99の途中に、図15に示すように、チャンネル状のブラケット99Bを設け、ブラケット99Bに支軸99bを横向きに突設して設けてある。
ここに、支持ロッド99を機体の固定側フレームと称する。
【0052】
図11、図14、及び、図15に示すように、支軸99bに走行用ブレーキ操作具41の取り付け筒41bを外嵌して、走行用ブレーキ操作具41を支軸99bの軸芯回りで上下揺動可能に支持してある。取り付け筒41bにはブレーキアーム41Aの基端部41aが取り付け固定してあり、この基端部41aより斜め上方に向けて中間部41bを延出し、中間部41bの上端部より運転操縦部内に向けて横向きに上端部41cを延出し、上端部41cの先端に踏み込み部41dを取り付けて、走行用ブレーキ操作具41を構成する。
【0053】
ブレーキアーム41Aの上端部41cは、後記するように、横前側壁25の抜き孔25Aを貫通して、運転操縦空間内に突出している。したがって、踏み込み部41dは運転操縦空間内に位置し、ブレーキアーム41Aの基端部41a等は、運転操縦空間に隣接する操作盤26の下方空間内において支持されている。
【0054】
図14は、ブレーキ44の操作部44aに連動させる機械式連動機構70の側面図である。この図に示すように、前記走行用ブレーキ用の機械式連動機構70は、走行用ブレーキ44の操作部44aに一端側が連結された操作ケーブル71と、この操作ケーブル71の他端側にアウタ受部72aが連結されたブレーキ側連動部材72と、走行用ブレーキ操作具41のブレーキアーム41Aが備える取り付けボス筒41bとを設け、ボス部41bをペダル支軸99bに外嵌装着して、走行用ブレーキ操作具41をペダル支軸99bの軸芯回りで上下揺動自在に構成してある。
ここに、操作ケーブル71を走行用ブレーキ操作具41と走行用ブレーキ44とを連係する、ブレーキ連係機構と称する。
【0055】
走行用ブレーキ操作具41は、前記取り付け筒41bが備えるアーム75に連結されたリターンバネ76によって上昇切り位置に揺動付勢されている。操作ケーブル71は、アウターケーブル71aとインナーケーブル71bとを備えている。アウターケーブル71aの一端側は、走行用ブレーキ側連動部材72のケーブル支持部に連結され、インナーケーブル71bの一端側は、スプリング82を介してケーブルホルダー83に連結されている。
【0056】
走行用ブレーキ操作具41への踏み込み操作によって、無段変速装置43を中立状態に切り換える構成について説明する。図11から図14に示すように、ブレーキアーム41Aから立設されたブラケット41Bに一対の長孔41aを設け、その長孔41aに各別に連結された一対の連動ロッド85を連設して備えている。一方、一対の連動ロッド85、85の他端部は、図11に示すように、変速用の機械式連動機構50の一部を構成する変速装置側連動部材52に連係してある。変速装置側連動部材52においては、天秤揺動するその変速装置側連動部材52の揺動中心Yを挟んで反対側に一対の連動ロッド85、85を連係してある。
【0057】
以上のような構成によって、走行用ブレーキ操作具41を踏み込み操作して走行用ブレーキを入り状態に切り換えると、一対の連動ロッド85、85に引っ張り力が加えられ、一対の連動ロッド85、85は、次ぎのような作動を行う。
無段変速装置43が中立位置以外の操作位置にある場合は、図14(a)に示すように、一対の連動ロッド85、85のうちの一方の連動ロッド85が、ブレーキアーム41Aのブラケット41Bにおける長孔41aの上端部近くにあり、他方の連動ロッド85が、長孔41aの上下端部の中間部分に位置することとなる。この状態より図示してはいないが、ブレーキ操作を継続すると、ブレーキ踏み込み操作の途中で一方の連動ロッド85が上端部に至る。そうすると、変速装置側連動部材52を中立位置側に回転駆動すべく、引っ張り力を作用する。
【0058】
一方、一対の連動ロッド85、85のうちの他方の連動ロッド85の一端は、長孔41aの中途位置にあるので、引張力は作用させない。その状態から更に走行用ブレーキ操作具41を踏み込み操作を継続すると、図14(b)に示すように、他方の連動ロッド85の一端も長孔41aの上端部に至る。
そうすると、両連動ロッド85が長孔41a、41aの上端に至った状態となるので変速装置側連動部材52が揺動中心Yの両側から連動ロッド85の引っ張り力を受けて回転が停止する。この停止位置が無段変速装置43の中立位置に該当する。
したがって、ブレーキ操作を行うと自動的に無段変速装置43が中立位置に復帰され、変速状態が解除される。
【0059】
走行用ブレーキ操作具41に対するロック構造について説明する。図11及び図14に示すように、アウタ受部72aが連結されたブレーキ側連動部材72の側面からロック用第1部材73Aをブレーキ側連動部材72に沿って延出するとともに、ロック用第1部材73Aの先端部に屈折揺動自在にロック用第2部材73Bを連結する。ロック用第1部材73Aとロック用第2部材73Bとの連結部位に、ロック用第1部材73Aとロック用第2部材73Bとを屈折する方向に付勢するトーションスプリング74を設けて、ロック用第1部材73Aとロック用第2部材73Bとを、両者のなす角度が鈍角に拡大する方向に付勢している。更に、ロック用第2部材73Bの先端部とペダル支軸99bから延出されたブラケット78とを引張コイルバネ79で連結してある。
【0060】
図11及び図14に示すように、ブレーキ側連動部材72の下方に、ロック用カム部材80が設置してあり、ロック用カム部材80は、略卵形をした外周面の下向き面に、上向きに凹入するカム面80Aを備えている。ロック用第2部材73Bにおける引張コイルバネ79を係止する支軸73bには、転動用ローラ(図示せず)が遊転支承してある。これによって、支軸73bはカムフォロアとして機能する。
【0061】
図14(a)の状態から図14(b)に示すように、走行用ブレーキ操作具41を踏み込み操作すると、ロック位置近くで、ロック用第2部材73Bの支軸73bはロック用カム部材80に当接し、そのロック用カム部材80の卵形外周面に沿って移動する。その際に、卵形外周面は下方ほど、ペダル支軸99bより離れる形状に形成してあるので、引張コイルバネ79が伸長状態になるとともに、ロック用第1部材73Aとロック用第2部材73Bとが鈍角方向に相対回転する。
【0062】
上記した状態を継続しながら、ロック用第2部材73Bの支軸73bがカム面80Aの端部に至ると、引張コイルバネ79とコイルバネ74の付勢力で、支軸73bがカム面80Aの端部を乗り越え、カム面80Aに収まる。この状態で走行用ブレーキ操作具41はブレーキ入り位置にロックされる。
このロック状態よりさらに走行用ブレーキ操作具41を踏み込むと、カム面80Aより支軸73bが下方に移動するので、カム面80Aの係止作用を受けなくなる。そうすると、引張コイルバネ79の付勢力によって、ロック用第2部材73Bが揺動して、支軸73bがカム面80Aより離間し、走行用ブレーキ操作具41は待機位置に戻る。
【0063】
図12及び図15に示すように、操作盤26を備えた操作空間の底壁26Aの下方に設けられている支持部材59より下向きに支持ロッド99を延出し、その支持ロッド99の中間部分にブラケット99Aを設け、そのブラケット99Aにエンジン始動牽制手段としてのポテンショメータ93を備えている。このポテンショメータ93は、回転操作軸93aに一体回転自在に連結された揺動アーム94と、この揺動アーム94の長孔94aに係入した状態で前記中継アーム31と一体揺動する出力アーム31Aに設けた連動ピン95とを介して中継アーム31に連動されている。ポテンショメータ93は、中継アーム31の中立位置Nを無段変速装置43の中立状態として検出し、この検出結果を基にエンジン始動装置(図示せず)にエンジン始動許可の指令を出力し、無段変速装置43が中立状態にある場合にエンジン28が始動されることを可能にしている。
【0064】
すなわち、運転部8が開き状態にされ、変速レバー40と無段変速装置43との連動が絶たれた場合、変速レバー40がたとえ中立位置以外の操作位置に操作されても、エンジン28を始動できるようになっている。
つまり、無段変速装置43との連動を絶たれた変速レバー40が前進側や後進側の操作位置に操作されると、その操作位置に摩擦機構96(図12参照)によって保持される。この場合でも、変速装置側連動部材52は、位置決めバネ84によって中立位置Nに位置決めされる。すると、ポテンショメータ93は、無段変速装置43が中立状態にあると検出し、エンジン始動許可の指令が出力される。
【0065】
以上のような構成において、エンジンボンネット21等を機体横側方に回動退避させる際には、次ぎのような作業形態が取られる。
エンジンボンネット21等を開き状態にするには、図6(a)(b)に示すように、運転操縦空間を囲む、横側壁23、前側壁板24、面取り板部21aを取り外し、運転部床88の後床板88Bを持上げて立て姿勢に維持する。そして、横前壁板25は取り外さずに、その横前壁板25に取り付けてある蓋部材90を取り外す。
【0066】
後床板88Bを持ち上げると、運転部床側ブラケット91と機体側受けフレーム92のブラケット92Aとの連結部位が視認でき、両ブラケット91、92Aを連結しているボルトを外して、運転部床と機体側受けフレーム92との連係を解除する。
そして、図7に示すように、操縦搭19、及び、操作盤26等、エンジンボンネット21のみならず運転座席9、さらには、これらを支持する支持構造を一体で機体横側方に向けて開放軸芯Xを中心に揺動開放する。
この場合に、図示していないが、開放作動を円滑に行う為に、エンジンボンネット21の裏面と機体側受フレーム92等とにおいて、いずれか一方に誘導ローラを取り付けてある。
【0067】
〔別実施形態〕
(1)走行用ブレーキ操作具41をブレーキ入り位置に切り換えた状態で、前記エンジンボンネット21及び前記運転操縦室が前記開き状態に回動することを許容する機構としては、単なる開口だけではなく、切り欠きであってもよい。
(2)走行用ブレーキ操作具41としては、ペダル式のものではなく、手で操作するレバー式のものであってもよい。
(3)蓋部材90に設ける走行用ブレーキ操作具41の作動を許容するスリット機構としては、軸線が直線状の長孔90aであってもよく、その長孔90aと走行用ブレーキ操作具41との間に蛇腹状のカバーを設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】コンバインのエンジンボンネット開き状態での平面図
【図4】運転部の側面図
【図5】エンジンボンネット内構造を示す後面図
【図6】エンジンボンネットを示す斜視図であり、(a)は横側壁、前側壁板、面取り板部を所定位置に取り付けた状態を示し、(b)は横側壁、前側壁板、面取り板部を取り外し、後床板を持ち上げた状態を示す
【図7】エンジンボンネットを横側方に開き操作した状態を示す平面図
【図8】横側壁、前側壁板、面取り板部を取り外し、後部床板を持ち上げた状態を示すエンジンボンネットの側面図
【図9】走行用ブレーキ、ブレーキ連動機構、ロック機構、変速レバー、変速レバーと静油圧式無段変速装置とを連係する機構を示す縦断正面図
【図10】エンジンボンネットが開き状態に切り換わる途中の状態を示す縦断正面図
【図11】静油圧式無段変速装置の操作系と走行ブレーキ用操作系とを示す側面図
【図12】変速レバーと静油圧式無段変速装置とを連係する機構が連係した状態を示す正面図
【図13】(a)係合手段の係合状態を示す正面図、(b)係合手段が離脱した状態を示す正面図
【図14】走行用ブレーキ操作具とロック機構とを示す側面図であり、(a)走行用ブレーキ操作具をブレーキ切り位置に位置させた状態を示し、(b)走行用ブレーキ操作具をブレーキ入り位置にロックした状態を示す
【図15】走行用ブレーキ操作具を示す正面図
【符号の説明】
【0069】
21 エンジンボンネット
25 横前壁板(隔壁)
25A 開口
28 エンジン
41 走行用ブレーキ操作具
28c エンジンの最上端
35 機体側支柱
44 走行用ブレーキ
71 操作ケーブル(ブレーキ連係機構)
88B 後床板(足置きフレーム)
90 蓋部材
90a 長孔(スリット機構)
X 縦軸芯(運転部開放軸芯)
P 支持フレームの揺動軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンボンネットを、機体上下向きの運転部開放軸芯まわりに、エンジンボンネットがエンジンを覆った閉じ状態と、エンジンボンネットがエンジンを開放した開き状態とに回動切り換え自在に構成してあるコンバインであって、
走行用ブレーキと走行用ブレーキ操作具とをブレーキ連係機構で連係し、前記エンジンボンネットが前記開き状態に回動する場合にも前記エンジンボンネットと非連動状態にある前記機体の固定側フレームに、前記走行用ブレーキ、前記走行用ブレーキ操作具、及び、前記ブレーキ連係機構を取付けてあるコンバイン。
【請求項2】
前記走行用ブレーキ操作具を運転操縦室内に位置させ、前記走行用ブレーキを前記運転操縦室外に配置し、前記走行用ブレーキ操作具をブレーキ入り位置に切り換えた状態で、前記エンジンボンネットが前記開き状態に回動することを許容する機構を備えてある請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記許容する機構が、前記運転操縦室を区画する隔壁に形成され、前記ブレーキ入り位置に位置する前記走行用ブレーキ操作具の通過を許容する開口である請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記隔壁に前記開口を閉塞する蓋部材を着脱自在に取付け、前記蓋部材に前記走行用ブレーキ操作具のブレーキ作動を許容するスリット機構を設けてある請求項3記載のコンバイン。
【請求項5】
運転操縦室の足置き用床フレームの下方に、前記エンジンボンネット及び前記運転操縦室を前記閉じ状態に固定する取付け具を設け、前記足置き用床フレームを、前記取付け具を覆い足置き姿勢に維持する作業姿勢と、前記取付け具を表出するとともに前記エンジンボンネット及び前記運転操縦室の開き状態への切り換わりを許容する非作業姿勢とに切換え可能に構成してある請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−201375(P2009−201375A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44579(P2008−44579)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】