説明

コンバイン

【課題】脱穀部駆動用テンションクラッチおよびスプレッダ駆動用テンションクラッチを操作する電動モータのトルク容量を小さくすることができる汎用コンバインを提供する。
【解決手段】
汎用コンバインAにおいて、脱穀部駆動用テンションクラッチ104およびスプレッダ駆動用テンションクラッチ108を同時に操作するのに大きなトルク容量を有する電動モータ90を必要とする。そこで、まず、電動モータ90により、脱穀部駆動用テンションクラッチ104を接続作動して上記脱穀部を駆動した後、上記スプレッダ駆動用テンションクラッチ108を接続作動して上記スプレッダ110を駆動する構成とした。これにより、テンションクラッチを駆動する電動モータ90のトルク容量を小さくすることができ、小型の電動モータ90を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はコンバイン、詳しくはコンバインのクラッチ作動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車としてのコンバインには、原動機部より各種作業装置に動力を伝達するための伝動装置を設けており、その伝動装置の一形態として、入力プーリと出力プーリとの間に巻回した伝動ベルトと、その伝動ベルトを緊張・弛緩させるテンションクラッチと、そのテンションクラッチを伝動ベルト緊張・弛緩動作させるクラッチ作動機構とを具備したものがある。
【0003】
そして、コンバインなどのクラッチ作動機構には、その動力源となる電動モータで2つのテンションクラッチを同時操作するものが採用されている。例えば、特許文献1には、電動モータで2つのテンションクラッチを同時に接続作動するクラッチ作動機構が開示されている。
【0004】
ところで、コンバインにおいて、原動機部の動力を脱穀部に伝達する第1テンションクラッチを接続作動するのには大きな動力が必要である。また、排藁処理部に配設されるスプレッダに動力を伝達する第2テンションクラッチを接続作動するのにも大きな動力を必要とする。
【0005】
【特許文献1】特公平8−22182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように、脱穀部や排藁処理部への動力の接続または切断を行う2つのテンションクラッチを同時に接続作動するには、トルク容量の大きい電動モータが必要である。このため、小型の電動モータを使用するのが困難である。
また、脱穀部駆動用の第1テンションクラッチとスプレッダ駆動用の第2テンションクラッチを電動モータにより同時に接続動作する場合、各テンションクラッチの接続作動時の荷重が電動モータの出力軸に集中し、その電動モータの出力軸に大きな負荷がかかってしまう。
【0007】
この発明は、上記問題を解決するためになされたもので、第1テンションクラッチおよび第2テンションクラッチを接続作動するクラッチ作動機構であって、両テンションクラッチの接続作動時、上記クラッチ作動機構にかかる負荷を軽減することができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、穀稈を脱穀する脱穀部と、同脱穀部から排出された排稈を切断処理する排藁処理部と、これらを駆動する原動機部とを具備するコンバインにおいて、原動機部に、第1伝動機構を介して脱穀部を連動連結すると共に、同第1伝動機構に第2伝動機構を介して排藁処理部を連動連結し、上記第1伝動機構は、第1伝動ベルトと、同第1伝動ベルトを緊張または弛緩させて動力を接続または切断する第1テンションクラッチとを具備し、上記第2伝動機構は、第2伝動ベルトと、同第2伝動ベルトを緊張または弛緩させて動力を接続または切断する第2テンションクラッチとを具備し、第1テンションクラッチ及び第2テンションクラッチには、第1テンションクラッチを接続作動させた後に第2テンションクラッチを接続作動させるクラッチ作動機構を設けたことを特徴とするコンバインである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、第1伝動機構及び第2伝動機構は、それぞれ原動機部の近傍に配設すると共に、クラッチ作動機構の動力源となる電動モータは、第1伝動機構の近傍に配設して、同電動モータと第1テンションクラッチとを第1連動体を介して連動連結し、かつ、同電動モータと第2テンションクラッチとを第2連動体を介して連動連結したことを特徴とする請求項1に記載のコンバインである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、クラッチ作動機構により、第1テンションクラッチを接続作動させた後、第2テンションクラッチを接続作動させる構成としたので、これらを同時に接続作動する場合に比べて、クラッチ作動機構にかかる負荷を軽減することができる。
【0011】
例えば、クラッチ作動機構の動力源となる電動モータを使用する場合、第1テンションクラッチおよび第2テンションクラッチを同時に接続作動する場合に比べて、トルク容量の小さい電動モータを選定することができる。また、第1テンションクラッチ及び第2テンションクラッチを同時に接続作動する場合に比べて、テンションクラッチから電動モータの出力軸にかかる荷重を軽減することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、クラッチ作動機構の動力源となる電動モータを第1伝動機構の近傍に配設しているので、その電動モータで第1伝動機構を瞬時に接続動作することができるとともに、タイムラグを持たせて第2伝動機構を接続動作することができる。また、コンバインの走行機体内のスペースを有効に利用することができる。さらに、電動モータと第1テンションクラッチとを部品スペースを取らない第1連動体(例えば連結ロッドまたはワイヤなど)で連結するとともに、第2テンションクラッチとは部品スペースを取らない第2連動体(例えばワイヤなど)で連結する構成とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の最良の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1〜図3に示すAは、本発明を適用可能なコンバインの一形態としての汎用コンバインである。その汎用コンバインAは、クロ−ラ式の走行部3により機体フレーム4とともに走行可能とする走行機体1上の左側に、穀稈を脱穀する脱穀部5を備えている。また、走行機体1の後方部には、上記脱穀部5から排出された排稈を切断処理する排藁処理部40が配設されている。そして、上記脱穀部5および排藁処理部を駆動する原動機部9が走行機体1の後方に配設されている。
【0015】
また、上記脱穀部5の下方には選別部6が設けられている。さらに、走行機体1の前方に、刈取部2を昇降部(図示せず)を介して昇降可能に取付ける一方、走行機体1上の右側前部に運転部7を設けている。さらに、運転部7の直後方に貯留部8を配設している。さらに、機体フレーム4上の右側上部には、前方から後方に渡って穀粒搬出オーガ10が配設されている。
【0016】
脱穀部5には、扱室22が設けられている。その扱室22内には、軸流式のスクリュ形の扱胴11が、その軸線が前後方向となるように横架されている。脱穀部5では、扱胴11が軸線回りに回動することにより、刈取部2によって刈り取られた穀稈が脱穀されるようになる。
【0017】
上記扱胴11は、図1に示すように、筒状の扱胴本体の周壁に螺旋状の搬送用羽根26を取付け、その搬送用羽根26に多数個の扱歯(図示せず)を取付けており、扱胴11の直下方には図示しないクリンプ網を張設している。扱胴11は、後述する原動機部9のエンジン21と図4に示す動力伝達系を介して連動連結すると共に、扱胴11の所定回転数で回転可能に設けている。
【0018】
排藁処理部40は、図1〜図2に示すように、走行機体1の後端部に左右に全幅に渡ってチョッパー式のスプレッダ110を有している。脱穀部5から排出された排稈は、そのスプレッダ110に設けられた複数の鉈状(図示せず)の刃によって切断され、走行機体1の後端部より圃場に排出される。
【0019】
選別部6には、上記脱穀部5にて脱穀された穀粒を揺動選別する揺動選別体12と、同揺動選別体12により選別された選別物をさらに風選する第1唐箕13及び第2唐箕14と、これらの唐箕13,14により風選された一番穀粒を回収する一番コンベア15及び一番樋36、二番穀粒を回収する二番コンベア16および二番樋37等が設けられている。
【0020】
刈取部2は、図1〜図2に示すように、走行機体1にフィーダハウス25の後端部を上下回動自在に枢支して、そのフィーダハウス25の前端側を昇降機構32により昇降自在とし、そのフィーダハウス25の前端にプラットフォーム28を取付け、そのプラットフォーム28に分草板31と穀稈掻込用リ−ル33と往復駆動型刈刃30と刈取穀稈掻込オ−ガ29とを設けている。41は、フィーダハウス25を支持する支軸である。また、フィーダハウス25内には、搬送用コンベア35が配設されている。フィーダハウス25の前端に開口された搬入口部27には、プラットフォーム28の右側後部が連通連結されている。
【0021】
そして、分草板31と穀稈掻込用リ−ル33とによりプラットフォーム28に植立穀稈を取り込み、その植立穀稈を往復駆動型刈刃30により刈取り、刈取穀稈掻込オ−ガ29によりプラットフォーム28の中央部に掻き寄せ、フィーダハウス25内に設けた穀稈供給チェーンコンベア(図示せず)により脱穀部5に供給するようにしている。
【0022】
運転部7は、図1に示すように、キャビン17内にステアリングなどの操作部19を設け、その操作部19の直後方に運転席20を配置している。その運転席20の横には、バックスイッチ(図示せず)、脱穀スイッチ18、刈取スイッチ(図示せず)などの操作系部品が配設されている。
【0023】
貯留部8には、選別部6に設けられた一番コンベア15により回収された一番穀粒が貯留される。
【0024】
そして、本実施形態では、上記原動機部9に、第1伝動機構51を介して脱穀部5を連動連結しているとともに、その第2伝動機構52を介して排藁処理部40を連結している。
第1伝動機構51は、脱穀部5の扱胴11などに連結される伝動機構として配設される。その第1伝動機構51は、第1伝動ベルトとしての第1伝動ベルト105と、その第1伝動ベルト105を緊張または弛緩させて動力を接続または切断する第1テンションクラッチ104とを具備している。
【0025】
また、第2伝動機構52は、排藁処理部40のスプレッダ110に連結される伝動機構として配設される。第2伝動機構52は、スプレッダ駆動用伝動ベルトとしての第2伝動ベルト109と、その第2伝動ベルト109を緊張または弛緩させて動力を接続または切断する第2テンションクラッチ108とを具備している。
【0026】
また、第1テンションクラッチ104及び第2テンションクラッチ108には、第1テンションクラッチ104を接続作動させた後、第2テンションクラッチ108を接続作動させるクラッチ作動機構50を設けている。そのクラッチ作動機構50は、その動力源となる電動モータ90を備えている。そして、その電動モータ90を第1テンションクラッチ104の近傍に配設する。また、電動モータ90と第1テンションクラッチ104とを第1連動体(例えば連結ロッド95またはワイヤなど)を介して連動連結する。さらに、電動モータ90と第2テンションクラッチ108とを第2連動体(例えばワイヤ120)を介して連動連結するのである。これらの具体的な構造は詳細に後述する。
【0027】
次に、汎用コンバインAの動力伝達系について図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態における動力伝達系を示している。図4に示すように、走行機体1はエンジン21を備え、そのエンジン21の後方には出力軸100が配設され、その出力軸100と平行に第1の入力軸101が配設されている。上記出力軸100には第1のプーリ102が配設され、上記第1の入力軸101には第2のプーリ103が配設され、第1のプーリ102と第2のプーリ103との間には、第1伝動ベルト105が巻回されている。そして、その第1伝動ベルト105を緊張・弛緩させる第1テンションクラッチ104が、上記第1伝動ベルト105に近接させて配置されている。
【0028】
また、HSTポンプ61をエンジンの左右に併置し、エンジン21より後方へ突出させた出力軸62と、HSTポンプ61より後方へ突出させた入力軸63との間に連動ベルト64を、プーリ65,66を介して巻回している。エンジンに取り付けられた60a,60bは、それぞれギヤポンプである。
【0029】
さらに、74はエンジン21の直上方に配置したシロッコファン、75はラジエータであり、シロッコファン74により空気取入部(図示せず)より外気を吸引してラジエータ75を冷却すると共に、脱穀部5側に向かって排風するようにしている。
【0030】
そして、上記第1の入力軸101に伝達された動力の一方は、複数個のカウンタ軸71が配設された複数個の伝動ベルト73などを介して、ロータ軸72に入力される。そして、ロータ軸72周りに扱胴11が回転自在に設けられる。
【0031】
また、上記第1の入力軸101に伝達された動力の他方は、上記第1の入力軸101と平行に配設された選別駆動1軸113に伝達され、かさ歯車114を介して、走行機体1の幅方向に配設された選別駆動2軸111の一端に伝達される。その選別駆動2軸111の他端側には、さらに2系統に分かれて動力が伝達される。すなわち、一方の動力は、上記扱胴11の直下に配設される揺動選別体12を揺動可能にする軸部81に伝達されるとともに、伝動ベルト85を介して、2番コンベア軸82、1番コンベア軸83および唐箕軸84などに伝達される。さらに、2番コンベア軸82から、2番縦コンベア軸86および2番処理胴87などに伝達される。
【0032】
さらに、動力の他方は、走行機体1の後方の下部に配設されたスプレッダ110に動力が伝達される。すなわち、上記選別駆動2軸111の他端には第3のプーリ106が配設され、上記選別駆動2軸111と平行に第4のプーリ107とが配設されおり、第2伝動ベルト109を介して上記第4のプーリ107まで動力が伝達される。さらに、その動力は、図3に示すように、第4のプーリ107から伝動ベルト115を介して第5のプーリ116に伝達される。さらに、その第5のプーリ116の回転軸と同軸にスプレッダ駆動軸112を配設して、動力を伝達するように構成している。
【0033】
次に、本実施形態におけるクラッチ作動機構50について説明する。図5〜図7は、第1テンションクラッチ104と第2テンションクラッチ108との接続作動状態を説明する説明図である。
【0034】
まず、脱穀部5に連動連結して、その脱穀部5を駆動する第1伝動機構51について説明する。図3に示すように、走行機体1の最後部には、小径の第1のプーリ102が、エンジン21からの出力軸100を軸に回転可能に配設されている。また、その第1のプーリ102と平行に、その第1のプーリ102の伝動先である大径の第2のプーリ103が走行機体1の上部に配設されている。その第2のプーリ103は、板状のケース118を用いて脱穀部5に取り付けられている。また、第1のプーリ102と、第2のプーリ103とは連結杆80で連結されている。これにより、脱穀部3と走行機体1とが連結杆80で連結される構成となり、剛性を高めながら以下に示すクラッチに入るタイミングを確実なものとする。
【0035】
そして、第1のプーリ102および第2のプーリ103間には、第1伝動ベルト105が巻回されている。そして、その第1伝動ベルト105上には、第1テンションクラッチ104を設けて、その第1伝動ベルト105を緊張・弛緩可能に構成している。なお、上記第1のプーリ102には、HSTポンプ61を駆動する連動ベルト64が巻回され、その連動ベルトに近接してテンションクラッチ67が配設されている。
【0036】
上記小径の第1のプーリ102側に、テンションアーム支軸99を枢支し、そのテンションアーム支軸99にテンションアーム92の基端を取付け、そのテンションアーム92の先端にテンションローラ93を、ローラ支軸88を介して取付けている。さらに、テンションアーム92の先端には平板94が配設されている。
【0037】
このようにして、テンションアーム92を、テンションアーム支軸99を中心にして、時計または反時計回りに回動動作可能とする。すなわち、テンションアーム92の反時計回りの回動動作によりテンションローラ93を第1伝動ベルト105の右側回動側部に圧接させて、その伝動ベルトを緊張させる伝動ベルト緊張位置と、テンションアーム92の時計回りの回動動作によりテンションローラ93を第1伝動ベルト105の下側回動側部より離隔させて、その伝動ベルトを弛緩させる伝動ベルト弛緩位置との間で位置変更が可能である。
【0038】
アクチュエータとなる電動モータ90は、上記第1伝動ベルト105に近接して配置されている。具体的には、図5〜図7に示すように、連結杆80にアクチュエータ部支持板97を取付け、そのアクチュエータ部支持板97に電動モータ90を配設し、その電動モータ90を第1伝動ベルト105および第1テンションクラッチ104に近接して配置することにより、電動モータ90で第1テンションクラッチ104を瞬時に接続または切断することができる。また、コンバインの走行機体内のスペースを有効に利用することができる。
【0039】
また、図8に示すように、上記アクチュエータ部支持板97の後面から電動モータ90(DCモータ)を取付けるとともに、その電動モータ90からギアケース89を介して、回転軸96を上記アクチュエータ部支持板97に対して前方へ向けて突出する。さらに、その回転軸96に作動アーム98の基端を取付け、その作動アーム98の先端と、テンションアーム92の先端部に配設された平板94とを、連結ロッド95を介して連動連結する。
【0040】
さらに、アクチュエータ部支持板97には、2つのリミットスイッチ91a、91bが所定間隔を有して離間して配設されている。その一方は、テンションクラッチ104、108が切れた状態での作動アーム98の回動を規制するリミットスイッチ91aである。また、その他方は、テンションクラッチ104、108が入った状態での作動アーム98の回動を規制するリミットスイッチ91bである。
【0041】
そして、上記作動アーム98の先端は、図8に示すピン79を介して連結ロッド95の一端に連結されている。また、連結ロッド95の他端は、第1テンションクラッチ104の先端に配設された平板94と連結されている。さらに、上記作動アーム98の先端には、ワイヤ120の一端が連結されている。そのワイヤ120の他端は、ワイヤ挿通孔124を通して、スプレッダ駆動用の第2テンションクラッチ108と連結されている。
【0042】
図5〜図7に示すように、アクチュエータとしての電動モータ90を駆動させることにより、その回転軸96を軸に作動アーム98を反時計周りに90°回転させる。すなわち、作動アーム98の先端を回転軸96の図面視して右側位置より左側位置に回動させることにより、テンションアーム92を反時計周りに回動させて、テンションローラ93を第1伝動ベルト105の緊張位置に位置変更可能に設けている。
【0043】
また、上記とは反対に、回転軸96を90°逆回転させて、作動アーム98の先端部を回転軸96の左側位置より右側位置に回動させることにより、連結ロッド95およびテンションアーム92をテンションアーム支軸99を軸に時計周りに回動させて、テンションローラ93を伝動ベルト弛緩位置に位置変更できるようにしている。
【0044】
さらに、上記作動アーム98の先端には、ワイヤ120の一端が連結されている。そのワイヤ120の他端は、スプレッダ110を駆動する第2テンションクラッチ108と連結されている。
【0045】
次に、スプレッダ110を駆動する第2テンションクラッチ108を備えた第2伝動機構52について説明する。図5〜図7に示すように、スプレッダ110を駆動する一対のプーリ106、107が配設され、その一対のプーリ106、107には、第2の伝動ベルトである第2伝動ベルト109が巻回されている。
【0046】
そして、その第2伝動ベルト109に近接させて、略「く」の字形状を有するテンションアーム121が設けられ、テンションアーム支軸117を第4のプーリ107と同軸に枢支し、そのテンションアーム支軸117に上記テンションアーム121の基端を取付け、そのテンションアーム121の中間部にテンションローラ122を、ローラ支軸125を介して取付けている。
【0047】
このようにして、略「く」の字形状を有するテンションアーム121を、テンションアーム支軸117を中心にして時計または反時計回りに回動動作可能とすると共に、テンションアーム121の上昇回動動作によりテンションローラ122を上記第2伝動ベルト109の右側回動側部に圧接させることにより、その伝動ベルトを緊張させる伝動ベルト緊張位置と、テンションアーム121の下降回動動作によりテンションローラ122を第2伝動ベルト109の下側回動側部より離隔させて、その伝動ベルトを弛緩させる伝動ベルト弛緩位置との間で位置変更可能としている。
【0048】
そして、第2テンションクラッチ108のテンションアーム121の先端には、コイルばね123を介して、上記ワイヤ120の他端が連結されている。すなわち、第2テンションクラッチ108は、上記電動モータ90の回転軸96に回動自在に配設された作動アーム98の先端部に連結されたワイヤ120で引張可能に設けられる。これにより、第1テンションクラッチ104がONした後に、第2テンションクラッチ108がON状態になるように設けられる。
【0049】
次に、第1テンションクラッチ104および第2テンションクラッチ108の接続作動方法について説明する。
通常の状態では、図5に示すように、第1伝動ベルト105および第2伝動ベルト109は、第1テンションクラッチ104および第2テンションクラッチ108による緊張状態ではなく、OFF状態を保持している。電動モータ90の回転軸に連結された作動アーム98は右側に傾倒した状態((イ)の状態)を保持している。
【0050】
次いで、コンバインの運転部7で、運転者がその運転部に設けられた脱穀スイッチ18をONにする。すると、エンジン21に隣接して配設されたバッテリ部(図示せず)から電源が供給され、電動モータ90を駆動することができる。すなわち、バッテリ部から電動モータ90に電源が供給され、その電動モータ90の回転軸に連結された作動アーム98を反時計周りに回動することができる。
【0051】
図6に示すように、上記作動アーム98は、OFF状態から反時計回りに90°((ロ)の状態)まで回動するに伴い、その作動アーム98の先端に連結された連結ロッド95が左方向に引張される。その連結ロッド95は、第1テンションクラッチ104のテンションアーム92の先端部に配設された平板94と連結されている。そのため、その連結ロッド95に連結されたテンションアーム92が図面視して第1伝動ベルト105に向かって引張される。そして、第1テンションクラッチ104が第1伝動ベルト105を緊張させる。これにより、一対のプーリ102、103間で第1伝動ベルト105を駆動することができる。そして、脱穀部の扱胴11などの駆動機構を駆動することができる。
【0052】
さらに、上記作動アーム98が90°反時計周りに回動し、その作動アーム98が左側に傾倒した状態((ハ)の状態)になると、その作動アーム98の先端に連結されたワイヤ120の一端が引っ張られる。そして、そのワイヤ120の他端も第1テンションクラッチ側に引っ張られ、第2テンションクラッチ108のテンションアーム121の先端側も引っ張られる。これにより、第4のプーリ107の回転軸と同じ軸であって、テンションアーム支軸117を軸として、第2テンションクラッチ108のテンションアーム121を時計周りに回動する。これにより、第2伝動ベルト109を緊張状態とすることができ、その第2伝動ベルト109を駆動することができる。
【0053】
脱穀部5の扱胴11などを駆動するのに大きな動力を必要とする。また、排藁処理部40のスプレッダ110を駆動するのに大きな動力を必要とする。そして、第1テンションクラッチ104および第2テンションクラッチ108で接続動作する場合、大きな動力を必要とする。そこで、本実施形態では、第1テンションクラッチ104を接続作動させた後、第2テンションクラッチ108を接続作動させる構成とした。これにより、これらを同時に接続作動する場合に比べて、クラッチ作動機構50に大きな動力を必要としない。特に、初期動作時、クラッチ作動機構50への負担が軽減できるのである。
【0054】
そして、クラッチ作動機構50の動力源となる電動モータ90を使用する場合、第1テンションクラッチ104および第2テンションクラッチ108を同時に接続作動する場合に比べて、トルク容量の小さい電動モータ90を選定することができる。また、第1テンションクラッチ104及び第2テンションクラッチ108を同時に接続作動する場合に比べて、両テンションクラッチから電動モータ90の出力軸96にかかる荷重を軽減することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の実施の形態におけるコンバインの全体構成を示す側面図である。
【図2】この発明の実施の形態におけるコンバインの全体構成を示す平面図である。
【図3】この発明の実施の形態におけるコンバインの全体構成を示す平面図である。
【図4】この発明の実施の形態におけるコンバインの動力伝達を説明する説明図である。
【図5】この発明の実施の形態における第1テンションクラッチと第2テンションクラッチとがOFF状態を示す正面図である。
【図6】この発明の実施の形態における第1テンションクラッチがON状態であり、第2のテンションクラッチがOFF状態を示す正面図である。
【図7】この発明の実施の形態における第1テンションクラッチと第2テンションクラッチとがON状態を示す正面図である。
【図8】この発明の実施の形態における第1テンションクラッチと第2テンションクラッチとを操作する電動モータの構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0056】
A コンバイン、
5 脱穀部、
21 エンジン、
90 電動モータ、
95 連結ロッド、
105 第1伝動ベルト、
109 第2伝動ベルト、
104 第1テンションクラッチ、
108 第2テンションクラッチ、
110 スプレッダ、
120 ワイヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を脱穀する脱穀部と、同脱穀部から排出された排稈を切断処理する排藁処理部と、これらを駆動する原動機部とを具備するコンバインにおいて、
原動機部に、第1伝動機構を介して脱穀部を連動連結すると共に、同第1伝動機構に第2伝動機構を介して排藁処理部を連動連結し、
上記第1伝動機構は、第1伝動ベルトと、同第1伝動ベルトを緊張または弛緩させて動力を接続または切断する第1テンションクラッチとを具備し、
上記第2伝動機構は、第2伝動ベルトと、同第2伝動ベルトを緊張または弛緩させて動力を接続または切断する第2テンションクラッチとを具備し、
第1テンションクラッチ及び第2テンションクラッチには、第1テンションクラッチを接続作動させた後に第2テンションクラッチを接続作動させるクラッチ作動機構を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
第1伝動機構及び第2伝動機構は、それぞれ原動機部の近傍に配設すると共に、クラッチ作動機構の動力源となる電動モータは、第1伝動機構の近傍に配設して、同電動モータと第1テンションクラッチとを第1連動体を介して連動連結し、かつ、同電動モータと第2テンションクラッチとを第2連動体を介して連動連結したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−27994(P2009−27994A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196775(P2007−196775)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】