説明

コンバイン

【課題】分草杆の支持構造を簡易な構造としながら、分草杆が畦等と接触した場合に、分草杆を特別な操作を行わずに畦等との接触前の位置に復帰させることができるコンバインの提供を目的とする。
【解決手段】機体フレーム(機体)の前部に設けられる刈取部と、刈取部の横外側に機体フレームの前後方向に沿って配置される分草杆43と、弾性部材で構成され、分草杆43を刈取部に対して左右方向に揺動自在に軸支する支持杆42と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取部の横外側に分草杆を有するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインを用いて刈取作業を行う際、刈取部による未刈穀稈の巻き込みや、機体側の走行部のクローラ式走行装置による未刈穀稈の踏み付けを防止する必要があった。そのため、刈取部の左側方にある未刈穀稈を刈取部や機体から離間する方向に押し出すことができるように、分草杆が刈取部、または刈取部および機体の横外側に設けられていた。そして、この分草杆は、機体に設けられた位置調整装置によって、左右方向(機体の横方向)に水平移動させられて、刈取部や機体に近接する格納位置と、刈取部や機体から離間する張出位置とに変更可能に構成されていた。
【0003】
このようなコンバインにおいて、例えば、特許文献1のように、分草杆の位置を変更する位置調整装置である駆動装置と分草杆とを連係する駆動連係機構を連係解除自在に構成したものがある。これでは、張出位置にある分草杆が畦や水路壁等の畦と接触して所定値以上の外力が加わると、分草杆が駆動装置との連係を解除されて、格納位置側へ移動するようになっている。
【0004】
しかし、駆動連係機構を連係解除自在に構成することによって、構造が複雑になり、製造コストが増大するという問題があった。また、駆動連係機構の連係が解除されて分草杆の位置が変更された場合、操縦者が分草杆を所定の位置に復帰させる操作を行う必要があり、操縦者の作業が煩雑になる点で不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3633861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は係る課題を鑑みてなされたものであり、分草杆の支持構造を簡易な構造としながら、分草杆が畦等と接触した場合に、分草杆を特別な操作を行わずに畦等との接触前の位置に復帰させることができるコンバインの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1の発明は、機体の前部に設けられる刈取部と、前記刈取部の横外側に前記機体の前後方向に沿って配置される分草杆と、弾性部材で構成され、前記分草杆を前記刈取部に対して左右方向に揺動自在に軸支する支持杆と、を具備するものである。
【0009】
請求項2の発明は、前記支持杆は、途中部で曲折され、前記分草杆と前記刈取部との間に配置されることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の発明は、前記支持杆は、途中部で前記分草杆に向かって突出するように曲折され、前記分草杆と前記刈取部との間に配置されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、分草杆は、支持構造を簡易な構造としながら、畦等と接触して機体に近接する方向に押されると、弾性部材である支持杆が弾性変形することによって、その押された方向に移動される。そして、畦等から離れて機体に近接する方向に押されなくなると、弾性部材である支持杆が弾性変形前の形状に戻ることによって、畦等との接触前の元の位置に復帰する。その結果、畦等との接触により分草杆の位置が変更されても、操縦者が分草杆を所定の位置に復帰させる操作を行う必要がない。また、分草杆の支持構造を簡易な構造とすることで製造コストを低減することができる。
【0013】
請求項2においては、請求項1に記載の発明の効果に加えて、支持杆は、剛性の高い材料で構成しても弾性変形しやすくすることができる。その結果、分草杆は、支持杆を簡易、かつ強固な構造としながら、畦等との接触により分草杆の位置が変更されても、弾性部材である支持杆が弾性変形前の形状に戻るので、操縦者が分草杆を所定の位置に復帰させる操作を行う必要がない。
【0014】
請求項3においては、請求項1または請求項2に記載の発明の効果に加えて、支持杆は、機体から離間する方向に曲折して弾性変形しやすくすることができる。その結果、分草杆は、弾性変形されても曲折部分が機体と接触することがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの全体構成を示す左側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るコンバインの刈取フレームを示す左側面図。
【図4】本発明の第一実施形態に係るコンバインの分草装置の全体平面図。
【図5】同じく拡大平面図。
【図6】本発明の第一実施形態に係るコンバインの位置調整装置の構成を示す一部分解斜視図。
【図7】本発明の第一実施形態に係るコンバインの位置調整装置の構成を示す一部分解斜視図。
【図8】(a)本発明の第一実施形態に係るコンバインの位置調整装置と支持杆との組み付け構成を示す斜視図。(b)本発明の第一実施形態に係るコンバインの支持杆と分草杆との組み付け構成を示す斜視図。
【図9】本発明の第一実施形態に係るコンバインの位置調整装置による分草杆の左右位置を離間位置に変更した場合の状態を示す平面図。
【図10】本発明の第一実施形態に係るコンバインの位置調整装置による分草杆の左右位置を格納位置に変更した場合の状態を示す平面図。
【図11】本発明の第一実施形態に係るコンバインの位置調整装置による分草杆の上下位置の調整の様子を示す正面図。
【図12】本発明の第一実施形態に係るコンバインの分草装置に外力が加わった場合の支持杆が変形する様子を示す平面図。
【図13】本発明の第二実施形態に係るコンバインの分草装置の拡大平面図。
【図14】本発明の第二実施形態に係るコンバインの分草装置に外力が加わった場合の支持杆が変形する様子を示す平面図。
【図15】本発明の別実施形態に係るコンバインの分草装置のアーム形状を示す斜視図。
【図16】(a)本発明の第三実施形態に係るコンバインの位置調整装置と支持杆との組み付け構成を示す斜視図。(b)本発明の第三実施形態に係るコンバインの支持杆と分草杆との組み付け構成を示す斜視図。
【図17】本発明の第三実施形態に係るコンバインの分草装置の拡大平面図。
【図18】本発明の第三実施形態に係るコンバインの分草装置に外力が加わった場合の支持杆が変形する様子を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
先ず、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の全体構成について、図1および図2を用いて説明する。
【0017】
図1および図2に示すように、コンバイン1には、機体フレーム9に対して、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、穀粒貯溜部6と、排藁処理部7と、操縦部8等とが備えられる。
【0018】
走行部2は、機体フレーム9の下部に設けられる。走行部2は、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置21などを有して、機体をクローラ式走行装置21により前進または後進方向に走行させることができるように構成される。
【0019】
刈取部3は、機体フレーム9の前端部(機体の前部)に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部3は、刈取フレーム30と、分草板31と、引起装置32と、切断装置33と、搬送装置34と、サイドカバー35等と有して、圃場の穀稈を分草板31により分草し、分草後の穀稈を引起装置32により引き起こし、引起後の穀稈の株元を切断装置33により切断し、切断後の穀稈を搬送装置34により脱穀部4側へ搬送することができるように構成される。
【0020】
なお、刈取部3および機体の左横外側には、分草装置40が設けられる。この分草装置40は、詳しくは後述するように、刈取作業時に刈取部3による未刈穀稈の巻き込みを防止したり、機体側の走行部2のクローラ式走行装置21による未刈穀稈の踏み付けを防止したりすることができるように構成される。
【0021】
脱穀部4は、機体フレーム9の左側前部であって、刈取部3の後方に設けられる。脱穀部4は、図示せぬ扱胴等とから構成される。脱穀部4は、刈取部3から搬送される穀稈を受け継いで、搬送中の穀稈を前記扱胴等により脱穀し、その脱穀処理物を選別部5へ落下させ、排藁処理部7側へ搬送するように構成される。
【0022】
選別部5は、機体フレーム9の左側部であって、脱穀部4の下方に設けられる。選別部5は、脱穀部4から落下した処理物を揺動選別装置により揺動選別および風選別により、穀粒と、穂付粒や未脱粒と、排藁と、塵埃等とに選別する。そして、選別部5は、選別した穀粒を穀粒貯溜部6へ搬送し、穂付粒および未脱粒を脱穀部4へ搬送し、排藁および塵埃等を外部へ排出するように構成される。
【0023】
穀粒貯溜部6は、機体フレーム9の右側後部であって、脱穀部4および選別部5の右側方に設けられる。穀粒貯溜部6は、グレンタンク61と、穀粒排出装置62等とから構成される。穀粒貯溜部6は、選別部5から搬送されてくる穀粒をグレンタンク61に貯溜するとともに、グレンタンク61に貯溜される穀粒を穀粒排出装置62により機体の外部へ排出するように構成される。
【0024】
排藁処理部7は、機体フレーム9の後部であって、脱穀部4の後方に設けられる。排藁処理部7は、排藁搬送装置71や、排藁切断装置72等から構成される。排藁処理部7は、脱穀部4からの脱穀済みの穀稈を、排藁として排藁搬送装置71により受け継いで廃藁として外部へ排出し、又は排藁切断装置72に搬送して切断した後に機体の外部へ排出するように構成される。
【0025】
操縦部8は、機体フレーム9の右側前部であって、刈取部3の右側方に設けられる。操縦部8は、操縦席81と、ステアリングハンドル82と、キャビン83等とから構成される。操縦部8は、キャビン83により操縦席81や操作具類が覆われるように構成される。
【0026】
このようにして、コンバイン1は、操縦部8での操作具類の操作によって、図示しないエンジンの動力を各部の装置に伝達して、走行部2にて機体を走行させながら、刈取部3で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部4で刈取部3からの穀稈を脱穀し、選別部5で脱穀部4からの処理物を選別して、穀粒貯溜部6で選別部5からの穀粒を貯溜すると同時に、排藁処理部7で脱穀部4からの排藁を外部へ排出することができるように構成される。
【0027】
次に、図3を用いて、刈取部3の刈取フレーム30の構成について説明する。
【0028】
図3に示すように、刈取フレーム30は、刈取入力パイプ301、縦伝動パイプ302、横伝動パイプ303、分草フレーム304、駆動パイプ305、引起縦伝動パイプ306、引起横伝動パイプ307、引起駆動パイプ308、連結フレーム309、支持パイプ310を具備する。
【0029】
刈取入力パイプ301は、機体フレーム9の前端部に、その軸線方向が左右方向と一致するように配置される。縦伝動パイプ302は、刈取入力パイプ301の前方に配置され、刈取入力パイプ301の左右中途部から前斜下方へ向けて延設される。横伝動パイプ303は、縦伝動パイプ302の前方に配置され、縦伝動パイプ302の先端部から左右方向へ延設される。
【0030】
複数の分草フレーム304・304・・・は、横伝動パイプ303の前方に配置され、左右方向に適宜の間隔をとって互いに平行に並設される。駆動パイプ305は、横伝動パイプ303の前斜下方に配置され、最外側に位置する左右の分草フレーム304・304の間に左右方向に水平に横設される。つまり、駆動パイプ305は、横伝動パイプ303と前後方向に所定間隔をとって互いに平行に並設される。
【0031】
引起縦伝動パイプ306は、横伝動パイプ303の上方に配置され、横伝動パイプ303の左端部から前斜上方へ向けて立設される。引起横伝動パイプ307は、横伝動パイプ303の前上方に配置され、引起縦伝動パイプ306の上端部に右方向に水平に横設される。
【0032】
複数の引起駆動パイプ308・308・・・は、引起横伝動パイプ307の下方に配置され、引起横伝動パイプ307の左右中途部から左右方向に所定間隔ごとに下方へ向けて延設される。また、連結フレーム309は、引起横伝動パイプ307の後方に配置され、引起横伝動パイプ307の左右中途部から縦伝動パイプ302の後部まで後方へ向けて延設される。
【0033】
支持パイプ310は、引起横伝動パイプ307の下方に配置され、引起横伝動パイプ307の左右中途部から下方へ向けて延設される。支持パイプ310の下端は、左右中央の分草フレーム304に連結される。
【0034】
こうして、刈取フレーム30は、刈取入力パイプ301と、縦伝動パイプ302と、横伝動パイプ303と、複数の分草フレーム304と、駆動パイプ305と、引起縦伝動パイプ306と、引起横伝動パイプ307と、複数の引起駆動パイプ308と、連結フレーム309と、支持パイプ310とを一体的に連結して構成される。
【0035】
次に、図4から図8を用いて、分草装置40の構成について説明する。
【0036】
分草装置40は、コンバイン1による刈取作業時に、刈取部3の一側方、即ち左側方にある未刈穀稈を刈取部3や走行部2のクローラ式走行装置21から離間する方向に押し出して、刈取部3による未刈穀稈の巻き込みや、機体側の走行部2のクローラ式走行装置21による未刈穀稈の踏み付けを防止するためのものである。図4に示すように、分草装置40は、刈取部3と機体フレーム9との左横外側に設けられる。分草装置40は、位置調整装置41、支持杆42、分草杆43を具備する。
【0037】
位置調整装置41は、分草杆43の位置を調整するものである。位置調整装置41は、引起縦伝動パイプ306の左側方であってサイドカバー35の右側方、つまり引起縦伝動パイプ306とサイドカバー35との間に配置される。図5に示すように、位置調整装置41は、支持プレート411、支持アーム412、ベースプレート413、ネジユニット414、駆動モータ415、ガイドローラ416を具備する。
【0038】
図6に示すように、支持プレート411は、一つの角部を切り欠いた略矩形状の板材から形成される部材である。支持プレート411は、その一側の板面が引起縦伝動パイプ306の外周面と対向するように、引起縦伝動パイプ306の後方に配置される。支持プレート411の左側には、揺動用貫通孔411aが支持プレート411を前後方向に貫通するように形成される。また、支持プレート411の揺動用貫通孔411aよりも上側には、調整用長孔411bが支持プレート411を前後方向に貫通するように形成される。調整用長孔411bは、その長手方向が左右方向となるように形成され、かつ長手部分が揺動用貫通孔411aを中心とする同心円の円弧と一致するように湾曲した形状に形成される。
【0039】
支持アーム412は、丸棒状部材を略L字状に屈曲して形成される部材である。支持アーム412は、引起縦伝動パイプ306を前後に挟んで支持プレート411と対向するように、引起縦伝動パイプ306の前方に配置される。支持アーム412の一側、即ち後側端部には、二つの貫通孔が前後方向に形成された略矩形状の板材412bが左右方向に延伸した状態で固設される。支持アーム412の他側、即ち前側端部には、揺動用貫通孔412aが前後方向に形成された略矩形状の板材412cが左右方向に延伸した状態で固設される。ここで、板材412bと板材412cとは、互いの板面が略平行となるように配置される。
【0040】
ベースプレート413は、略矩形状の板材を略U字状に折り曲げて形成される部材である。ベースプレート413は、左側部と当該左側部に連続する左前後両側部とを有し、右側に開放するように引起縦伝動パイプ306の左側方に配置される。ベースプレート413の後側部では、その下側に揺動用貫通孔413aが前後方向に貫通するように形成され、その上下方向略中央部よりも右側に貫通孔413bが前後方向に貫通するように形成される。ベースプレート413の前側部には、その揺動用貫通孔413aと対向する位置に、揺動用貫通孔413cが前後方向に貫通するように形成される。ベースプレート413の左側部では、その前後両端側に上下一対の貫通孔413dがそれぞれ形成され、その略中央部に矩形状の貫通孔413eが左右方向に貫通するように形成される。
【0041】
ベースプレート413の後側部の左側端には、略五角形状の板材から形成されるモータブラケット413fが板面をベースプレート413の後側部と平行にして左側へ突出するように固設されている。モータブラケット413fの左側端部と上下両端部とには、貫通孔413gがそれぞれ前後方向に貫通するように形成される。モータブラケット413fの略中央部には、中空円筒状のボス部材413hが当該モータブラケット413fを貫通した状態で固設される。
【0042】
ベースプレート413の左側部の引起縦伝動パイプ306側には、略矩形状の板材を略L字状に折り曲げて形成される上下一対のガイド413jが、それぞれ一の折り曲げ面をベースプレート413の左側部に当接させ、他の折り曲げ面を引起縦伝動パイプ306側へ突出させた状態で固設される。上下一対のガイド413jは、長手方向を前後方向として、それぞれ貫通孔413eの上外縁部と下外縁部とに沿って配置される。つまり、上下一対のガイド413jは、他の折り曲げ面同士が対向するように、貫通孔413eを挟んで上下に並置される。
【0043】
図7に示すように、ネジユニット414は、ネジ軸414aと螺合される移動ナット414cをネジ軸414aの回動によりネジ軸414aの軸方向に移動させるものである。ネジユニット414は、ネジ軸414a、移動ナット414c、前後一対の軸受部材414eを具備する。ネジユニット414では、移動ナット414cが螺合されたネジ軸414aは、軸方向を前後方向として、その前後両端で前後一対の軸受部材414eによって回動自在、かつ前後方向移動不能に軸支される。ネジユニット414は、ベースプレート413の左側部の左側方に、ネジ軸414aの一側端がベースプレート413の後側部に近接し、ネジ軸414aの他側端がベースプレート413の前側部に近接するように配置される。
【0044】
ネジ軸414aは、外周部にネジ溝が形成される丸棒状部材である。ネジ軸414aの後端部には、スリット414bが形成される。
【0045】
移動ナット414cは、軸心部にネジ孔を貫通して形成される略円筒状の部材である。移動ナット414cの前後略中央部で左右両側には、一対のネジ孔414dが左右方向に貫通するように形成される。一対のネジ孔414dは、ネジ軸414aを挟んで左右に並置される。
【0046】
各軸受部材414eは、略直方体のブロック材の上下中途部に形成した突出部にベアリング等の軸受をそれぞれ具備して構成される部材である。各軸受部材414eの突出部を挟んだ上下両側のつば部には、貫通孔414fがそれぞれ左右方向に貫通するように形成される。
【0047】
駆動モータ415は、ネジ軸414aを回動させるものである。駆動モータ415は、駆動モータ415の本体に加え、連結軸415c、軸受415fを具備する。駆動モータ415は、モータブラケット413fの後方に、駆動モータ415の出力軸がネジ軸414aと平行になるように配置される。駆動モータ415の本体には、四つの取付ネジ孔415aが形成されている。駆動モータ415の出力軸の端部に歯車415bが固設されて、この出力軸が歯車415bを介して一側端部に歯車415dが形成される連結軸415cと連動連結される。連結軸415cの他側端部には、ネジ軸414aのスリット414bと係合可能な係合面415eが形成される。連結軸415cは、軸心がネジ軸414aの軸心と一致するように、モータブラケット413fの後方に配置され、軸受415fにより回動自在に支持される。
【0048】
ガイドローラ416は、移動ナット414cがネジ軸414a回りに回動することを防止するものである。ガイドローラ416では、支持軸416aにローラ416bが回動自在に支持される。ガイドローラ416は、支持軸416aの軸方向を移動ナット414cの螺進方向に対して直交するように左右方向として、移動ナット414cの右側方に配置される。
【0049】
図5に示すように、支持杆42は、分草杆43を支持するものである。支持杆42は、アーム421、第一支持部材422、第二支持部材423を具備する。支持杆42は、引起縦伝動パイプ306の左側方、つまり刈取部3の左側方に配置される。
【0050】
アーム421は、板ばねで構成され、左側方(分草杆43側方)に向かって膨出するように湾曲して形成される弾性部材である。アーム421は、膨出側である一側を左側方に向け、移動ナット414cの左側方に配置される。図8(a)に示すように、アーム421の他側端部には、その一部が屈曲されて、軸支可能な軸支部421aが一体的に成形される。図8(b)に示すように、アーム421の一側端部には、二つの貫通孔421bがアーム421の延伸方向に並んで略左右方向に貫通するように形成される。なお、アーム421を構成する部材は、本実施形態においては板ばねとしているが、これに特に限定するものではなく、分草杆43を支持可能な弾性部材であればよい。
【0051】
第一支持部材422は、略矩形状の板材を略U字状に折り曲げて形成される支持ブラケット422aと、支持軸422b等とから構成される。支持ブラケット422aは、右側部と当該右側部に連続する上下両側部を有し、左側を開放するように移動ナット414cの左側方に配置される。支持ブラケット422aの上下両側部の略中央部には貫通孔422c・422dがそれぞれ上下方向に貫通するように形成される。支持ブラケット422aの右側部の略中央部には、貫通孔422eが左右方向に貫通するように形成される。支持軸422bの一側端部につば部が貫通孔422c・422dの内径より大きい外径を有するように形成され、他側端部に止め輪用溝が形成される。
【0052】
第二支持部材423は、略直方体のブロック材の一部を略U字状に加工して形成され、上側部423d、横側部423e、下側部423fを有する。横側部423eは、アーム421の一側端部と対向して配置される。横側部423eの略中央部には、二つのネジ孔423cがアーム421の延伸方向に並んで左右方向に貫通するように形成される。上側部423dが横側部423eの上部から左側方に延設され、その略中央部に貫通孔423aが上下方向に貫通するように形成される。下側部423fが横側部423eの下部から左側方に延設され、その略中央部に貫通孔423bが貫通孔423aと対向して上下方向に貫通するように形成される。
【0053】
分草杆43は、未刈穀稈を刈取部3および機体から離間する方向に押し出すためのものである。図4に示すように、分草杆43は、前分草杆431、後分草杆432を具備する。分草杆43は、刈取部3および機体の左側方であって、これらに対して支持杆42よりも左側方に配置される。なお、本実施形態において、分草杆43は、前分草杆431と後分草杆432とから構成されるものに限定されるものではなく、前分草杆431のみから構成されるものであってもよい。
【0054】
前分草杆431は、パイプ状部材から形成される部材である。前分草杆431は、主に刈取部3の左横外側で、支持杆42の左側方を通って分草板31の近傍から後方に向かって延伸するように配置される。前分草杆431の一側端(前端)は、刈取部3の分草板31の近傍に水平回動自在、かつ軸方向を前後方向とする軸周りに回動自在に軸支される。前分草杆431の他側端(後端)には、上下方向の貫通孔431aが形成された略矩形状の板部が前分草杆431の延伸方向に沿って形成される(図8(b)参照)。
【0055】
後分草杆432は、パイプ状部材から形成される部材である。後分草杆432は、前分草杆431の他側端から後方に向かって延伸するように配置される。後分草杆432の一側端(前端)には、上下方向の貫通孔432aが形成された略矩形状の板材が後分草杆432の延伸方向に沿って固設される(図8(b)参照)。後分草杆432の他側端には、リング状部材432cが形成される。後分草杆432の他側端(後端)は、機体フレーム9の左側部で前後方向に延設される分草杆ガイド432dに、リング状部材432cを介して前後方向摺動自在に掛止される。
【0056】
以下では、図6から図8を用いて、分草装置40の組み付け方法について説明する。
【0057】
図6に示すように、支持プレート411は、板面を前方に向けて引起縦伝動パイプ306の後側にスペーサー411cを介してボルト等により取り付けられる。支持アーム412は、揺動用貫通穴412aの中心が支持プレート411の揺動用貫通孔411aの中心と一致するように、引起縦伝動パイプ306の前側にボルト等により取り付けられる。
【0058】
支持プレート411とベースプレート413の後側部とが前後に一部重複した状態で配置されて、ボルト441がベースプレート413の後側方から平座金442、スペーサー443、揺動用貫通孔413a、および揺動用貫通孔411aに、順に挿通されたあと、締結具であるナット444と螺合される。また、支持アーム412の板材412cとベースプレート413の前側部とが後前に一部重複した状態で配置されて、ボルト441が支持アーム412の前側方から平座金442、スペーサー443、揺動用貫通孔413c、および揺動用貫通孔412aに、順に挿通されたあと、締結具であるナット444と螺合される。こうして、ベースプレート413が支持プレート411および支持アーム412に締結される。
【0059】
ここで、スペーサー443の外径は、揺動用貫通孔413aおよび揺動用貫通孔413cの内径より小さく、揺動用貫通孔411aおよび揺動用貫通孔412aの内径より大きく設定される。また、スペーサー443の軸方向長さは、ベースプレート413の板厚より大きく設定される。よって、スペーサー443は、ボルト441と揺動用貫通孔413aとの間に配置された状態でナット444の締結力を受けるため、ベースプレート413にナット444の締結力が加わることがない。
【0060】
そして、ボルト445が支持プレート411の前側方から調整用長孔411b、貫通孔413b、平座金446、圧縮バネ447、および平座金446に、順に挿通されたあと、締結具であるナット448と螺合される。
【0061】
このような構成において、ベースプレート413は、ボルト441をそれぞれ揺動軸として、支持プレート411と支持アーム412とに当該揺動軸回りに揺動自在に支持される。また、ベースプレート413は、圧縮バネ447によって常時支持プレート411に向かって付勢される。そのため、ベースプレート413の後側部が支持プレート411の他側板面に圧接されて、摩擦による抗力が発生する。これにより、ベースプレート413は、その揺動角度を保持することができるとともに、摩擦による抗力以上の外力が加わることによって、調整用長孔411bの長手方向幅内で任意に調整することができるようになっている。
【0062】
図7に示すように、ネジユニット414の各軸受部材414eとベースプレート413の左側部とが左右に重複した状態で配置されて、ボルト449がベースプレート413の左側方から平座金450、貫通孔414f、および貫通孔413dに、それぞれ順に挿通されたあと、締結具であるナット451により締結される。また、ネジユニット414のガイドローラ416のローラ416bが、ベースプレート413に固設された上下一対のガイド413j・413jのうち上方のガイド413jに案内されながら転動するように、これらのガイド413j・413jの間に配置される。ガイドローラ416の支持軸416aは、ベースプレート413の右側から貫通孔413eに挿通され、移動ナット414cに形成されたネジ孔414dと締結される。
【0063】
モータブラケット413fと駆動モータ415の本体とが前後に重複した状態に配置されて、ボルト460(図8参照)が平座金461(図8参照)、各貫通孔413g、および各スペーサー452に、それぞれ順に挿通されたあと、取付ネジ孔415aと締結される。また、軸受415fは、モータブラケット413fのボス部材413hに挿通される。連結軸415cは、モータブラケット413fの後側方から軸受415fに挿通される。つまり、連結軸415cは、軸受415fを介してモータブラケット413fに回動自在に支持される。連結軸415cの歯車415dは、駆動モータ415の出力軸に固設した歯車415bと噛合される。連結軸415cの係合面415eは、ネジ軸414aのスリット414bと係合される。
【0064】
このような構成において、ネジユニット414は、ベースプレート413に固定される。また、駆動モータ415は、操縦部8のキャビン83に具備される操作具類と配線される。よって、駆動モータ415は、キャビン83内の当該操作具類を介して操作可能に構成されている。駆動モータ415の回動力は、連結軸415cを介してネジユニット414のネジ軸414aに伝動され、このネジ軸414aが回動可能とされる。そして、ネジ軸414aが駆動モータ415によって回動されることによって、移動ナット414cが移動し、その位置がネジ軸414a上の可動範囲内で任意に変更されるようになっている。ネジユニット414において、移動ナット414cに取り付けたアーム421または分草杆43に上下方向の外力が付加されても、ガイドローラ416がガイド413jによって案内されているため、移動ナット414cがネジ軸414a回りに回動しなくなる。また、移動ナット414cの前後方向への移動時には、ガイドローラ416が上下一対のガイド413j・413jのうち上方のガイド413jに案内されながら転動するので摩擦抵抗が小さく、安定してアーム421を移動させることができる。
【0065】
図8に示すように、第一支持部材422における支持ブラケット422aの右側部と移動ナット414cとが左右に重複した状態で配置されて、ボルト453が左側方から平座金454、貫通孔422eに、順に挿通されたあと、移動ナット414cのネジ孔414dと螺合される。こうして、支持ブラケット422aと移動ナット414cとが締結される。
【0066】
アーム421の他側端部が第一支持部材422における支持ブラケット422aの上下両側部の間に配置されて、支持軸422bが支持ブラケット422aの貫通孔422d、軸支部421a、および支持ブラケット422aの貫通孔422cに、順に挿通される。この支持軸422bの他側端部に、とめ輪455が装着される。アーム421の一側端部が第二支持部材423の右側部に当接されて、ボルト456が右側方から平座金457、貫通孔421bに、それぞれ順に挿通されたあと、第二支持部材423のネジ孔423cと螺合される。こうして、アーム421の他側端部が第一支持部材422と、アーム421の一側端部が第二支持部材423とそれぞれ締結される。
【0067】
前分草杆431の後端および後分草杆432の前端が第二支持部材423の上下両側部の間に配置されて、ボルト458が上方から貫通孔423a、前分草杆431の貫通孔431a、後分草杆432の貫通孔432a、および貫通孔423bに、順に挿通されたあと、締結具であるナット459と螺合される。この際、第二支持部材423は、第一支持部材422よりも後方に配置される。
【0068】
このような構成において、アーム421は、支持軸422bを揺動軸として第一支持部材422に揺動自在に支持される。分草杆43は、ボルト458を揺動軸として前分草杆431の後端と後分草杆432の前端が第二支持部材423に揺動自在に支持される。すなわち、支持杆42は、後端が分草杆43に揺動自在に接続され、前端が位置調整装置41に揺動自在に接続されて、前後方向に移動可能、かつ前後方向に揺動可能とされる。そして、位置調整装置41により支持杆42の他側端が前後方向に移動したとき、支持杆42が前後方向に移動、かつ前後方向に揺動し、その移動量および揺動量に応じて分草杆43が左右方向に移動するようになっている。
【0069】
以下では、図9から図11までを用いて、分草装置40の位置調節の様子について説明する。
【0070】
図9に示すように、分草杆43の左右位置を引起縦伝動パイプ306、すなわち刈取部3、および機体フレーム9から離間する位置に変更する場合、操縦部8の操縦者が操作具類を用いて遠隔操作によって駆動モータ415を駆動させ、移動ナット414cをネジユニット414の前側から後側に向かって移動させる。これに伴い、支持杆42は、前端が後方に向かって移動されることによって、図9における矢印のように、支持軸422bを中心として時計回りに揺動される。すなわち、支持杆42の後端は、位置調整装置41により引起縦伝動パイプ306から離間する位置に移動される。
【0071】
前分草杆431は、支持杆42の後端が引起縦伝動パイプ306から離間する位置に移動されることで、水平回動自在に軸支される一側端(前端)を揺動中心として時計回りに揺動される。すなわち、前分草杆431の後端は、位置調整装置41により引起縦伝動パイプ306から離間する位置に移動される。後分草杆432は、前分草杆431の後端の移動に伴って、一側端(前端)が引起縦伝動パイプ306から離間する位置に移動され、他側端(前端)が分草杆ガイド432d上を前側方に向かって移動される。従って、支持杆42に支持される分草杆43の左右位置は、引起縦伝動パイプ306から離間する位置、すなわち刈取部3、および機体フレーム9(機体)から離間する位置となる張出位置に変更される。
【0072】
図10に示すように、分草杆43の左右位置を引起縦伝動パイプ306、すなわち刈取部3、および機体フレーム9に近接する位置に変更する場合、操縦部8の操縦者が操作具類を用いて遠隔操作によって駆動モータ415を駆動させ、移動ナット414cをネジユニット414の後側から前側に向かって移動させる。これに伴い、支持杆42は、前端が前方に向かって移動されることによって、図10における矢印のように、支持軸422bを中心として反時計回りに揺動される。すなわち、支持杆42の後端は、位置調整装置41により引起縦伝動パイプ306に近接する位置に移動される。
【0073】
前分草杆431は、支持杆42の後端が引起縦伝動パイプ306から近接する位置に移動されることで、水平回動自在に軸支される一側端(前端)を揺動中心として反時計回りに揺動される。すなわち、前分草杆431の後端は、位置調整装置41により引起縦伝動パイプ306から近接する位置に移動される。後分草杆432は、前分草杆431の後端の移動に伴って、一側端(前端)が引起縦伝動パイプ306から近接する位置に移動され、他側端(前端)が分草杆ガイド432d上を後側方に向かって移動される。従って、支持杆42に支持される分草杆43の左右位置は、引起縦伝動パイプ306に近接する位置、すなわち刈取部3、および機体フレーム9(機体)に近接する位置となる格納位置に変更される。
【0074】
上記の如く、分草杆43の左右位置を、位置調整装置41によって任意に調整することができる。具体的には、分草杆43の左右位置を、非刈取作業時には格納位置に、刈取作業時には任意の張出量となる張出位置に変更することができる。この際、支持杆42の前端の前後方向移動量に対する支持杆42の後端の左右方向移動量は、支持杆42の揺動半径である支持杆長さLの1/2乗に略比例する。よって、支持杆長さLを十分大きく構成することで支持杆42の後端の左右方向移動量を支持杆42の前端の前後方向移動量と比べて大きくすることができる。ここで、支持杆42はその長手方向をどちらかといえば機体の左右方向ではなく前後方向として、刈取部3および機体に沿うように設置されるため、支持杆長さLを十分大きくした場合でも、支持杆42の左右方向の設置幅を抑制することができる。これにより、位置調整装置41を大型化することなく、かつ機体フレーム9の左右内方向に設置空間を設ける必要がなく、分草杆43の左右方向移動量を十分に確保することができる。
【0075】
図11に示すように、分草杆43の上下位置を調整する場合、分草杆43、もしくは支持杆42に上方向、もしくは下方向に外力を加える。この際、支持プレート411とベースプレート413との間に発生している摩擦による抗力よりも大きい外力を加えることで支持プレート411に対してベースプレート413を揺動させる。これにより、支持プレート411に対するベースプレート413の揺動位置を調整用長孔411bの長手方向幅内で任意に調整することができる。例えば、ベースプレート413のボルト445が、調整用長孔411bの左側端部に挿通されている位置にすることにより、分草杆43の上下位置を最下位置に調整することができる。
【0076】
上記の如く、分草杆43、もしくは支持杆42に上方向、もしくは下方向に外力を加えてベースプレート413の揺動位置を任意の位置に変更することで、未刈穀稈の長さが変わった場合など必要に応じて、分草杆43の左右位置をほとんど変更することなく、分草杆43の上下位置を任意に調整することができる。すなわち、分草杆43の上下位置に関係なく、分草杆43の左右位置を任意の位置に変更することができる。
【0077】
図12に示すように、このように構成される分草装置40においては、分草杆43が引起縦伝動パイプ306から離間する位置、すなわち刈取部3、および機体フレーム9から離間する張出位置にある場合に、分草杆43は、畦や水路壁等に接触して引起縦伝動パイプ306のある右方向に押されると、支持杆42のアーム421が弾性変形することによって、引起縦伝動パイプ306のある右方向(格納位置側)に移動する。この際、分草杆43は、支持杆42のアーム421の膨出部分と接触することによって機体に近接し難くなる。この結果、分草杆43の移動量は、所定の範囲内に規制される。よって、分草杆43は、アーム421の一部と分草杆43とが接触した状態で、機体がさらに左方向に移動した場合には、サイドカバー35や機体フレーム9等が畦に接触することを防止するバンパーとしての役目を果たすことになる。また、支持杆42は、分草杆側に向けて膨出するように位置調整装置41の左側方に配置されるので、アーム421の膨出部分が弾性変形して機体に接触することがない。分草杆43が畦等から離間して押されなくなると、分草杆43は、支持杆42のアーム421が弾性変形前の形状に戻ることによって、元の左右位置に復帰する。これにより、分草装置40は、別途緩衝機構や復帰機構を設けることなく分草杆43や位置調整装置41の破損を防止することができる。
【0078】
次に、図13、および図14を用いて、第二実施形態に係るコンバインにおける分草装置40の構成について説明する。なお、以下の実施形態において、前述の実施形態と同様の点に関しては同一符号を付してその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0079】
支持杆42は、分草杆43を支持するものである。支持杆42は、主としてアーム521、第一支持部材422、第二支持部材423を具備する。
【0080】
アーム521は、板ばねで構成され、左側方(分草杆43側方)に向かって突出するように屈曲して形成される弾性部材である。図13に示すように、アーム521は、屈曲部分の突出側を左側に向け、位置調整装置41の移動ナット414cの左側方に配置される。なお、本実施形態において、アームを構成する部材は板ばねに限定するものではなく、分草杆43を支持可能な弾性部材であればよい。
【0081】
図14に示すように、このように構成される分草装置40においては、分草杆43が引起縦伝動パイプ306から離間する位置、すなわち刈取部3、および機体フレーム9から離間する張出位置にある場合に、分草杆43は、畦等に接触して引起縦伝動パイプ306のある右方向に押されると、支持杆42のアーム521が弾性変形することによって、引起縦伝動パイプ306のある右方向(格納位置側)に移動する。この際、分草杆43は、支持杆42のアーム521の突出部分と接触することによって機体に近接し難くなる。この結果、分草杆43の移動量は、所定の範囲内に規制される。よって、分草杆43は、アーム521の突出部分と分草杆43とが接触した状態で、機体がさらに左方向に移動した場合には、サイドカバー35や機体フレーム9等が畦に接触することを防止するバンパーとしての役目を果たすことになる。また、支持杆42は、分草杆側に向けて膨出するように位置調整装置41の左側方に配置されるので、アーム521の突出部分が弾性変形して機体に接触することがない。分草杆43が畦等から離間して押されなくなると、分草杆43は、支持杆42のアーム521が弾性変形前の形状に戻ることによって、元の左右位置に復帰する。これにより、分草装置40は、別途緩衝機構や復帰機構をもうけることなく分草杆43や位置調整装置41の破損を防止することができる。
【0082】
以下では、図15から図18を用いて、第三実施形態に係るコンバインにおける分草装置40の構成について説明する。なお、以下の実施形態において、前述の実施形態と同様の点に関しては同一符号を付してその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0083】
支持杆42は、分草杆43を支持するものである。支持杆42は、主としてアーム621、第一支持部材422、第二支持部材623を具備する。
【0084】
図15に示すように、アーム621は、パイプ状部材で構成される弾性部材である。アーム621は、一側端部が略直角に屈曲されて形成される揺動軸部621aを有する。また、アーム621は、他側端部が揺動軸部621aと平行、かつ同一の方向にむけて略直角に屈曲されて形成される揺動軸部621bを有する。アーム621は、略中央部分が揺動軸部621a、および揺動軸部621bの軸方向(下方向)と直交する方向(左右方向)に膨出して湾曲されている。アーム621は、揺動軸部621a、および揺動軸部621bに係止ピン孔621cが所定の間隔で2箇所、それぞれ形成される。
【0085】
図16に示すように、第二支持部材623は、略直方体のブロック材の一部を略U字状に加工して形成され、上側部623d、横側部623e、下側部623fを有する。第二支持部材623は、上側部623dが横側部623eの上部から左側方に延設され、その略中央部に貫通孔623aが上下方向に貫通するように形成される。下側部623fが横側部623eの下部から左側方に延設され、その略中央部に貫通孔623bが貫通孔623aと対向して上下方向に貫通するように形成される。
【0086】
次に、図16、および図17を用いて、分草装置40の組み付け方法について説明する。
【0087】
図16に示すように、アーム621は、揺動軸部621aが第一支持部材422における支持ブラケット422aの貫通孔422c、および貫通孔422dに、揺動自在に挿通される。アーム621は、各係止ピン孔621cに挿着される図示しない係止ピンによって、第一支持部材422に軸方向摺動不能に軸支される。この際、図17に示すように、アーム621は、湾曲部分の膨出側を左側(分草杆側)に向け、位置調整装置41の移動ナット414cの左側方に配置される。
【0088】
また、アーム621は、前分草杆431の後端および後分草杆432の前端が第二支持部材623の上下両側部の間に配置された状態で、揺動軸部621bが上方から第二支持部材623における上側部623dの貫通孔623a、前分草杆431の貫通孔431a、後分草杆432の貫通孔432a、および第二支持部材623における下側部623fの貫通孔623bに、揺動自在に挿通される。アーム621は、各係止ピン孔621cに挿着される図示しない係止ピンによって、第二支持部材623に軸方向摺動不能に軸支される。この際、第二支持部材623は、第一支持部材422よりも後方に配置される。
【0089】
このような構成において、アーム621は、揺動軸部621aを揺動軸として第一支持部材422に揺動自在に支持される。分草杆43は、アーム621の揺動軸部621bを揺動軸として前分草杆431の後端と後分草杆432の前端とが第二支持部材623に揺動自在に支持される。すなわち、支持杆42は、後端が分草杆43に揺動自在に接続され、前端が位置調整装置41に揺動自在に接続されて、前後方向に移動可能、かつ前後方向に揺動可能とされる。そして、位置調整装置41により支持杆42の前端が前後方向に移動したとき、支持杆42は、前後方向に移動、かつ前後方向に揺動し、その移動量および揺動量に応じて分草杆43が左右方向に移動するようになっている。
【0090】
図18に示すように、このように構成される分草装置40においては、分草杆43が引起縦伝動パイプ306から離間する位置、すなわち刈取部3、および機体フレーム9から離間する張出位置にある場合に、分草杆43は、畦等に接触して引起縦伝動パイプ306のある右方向に押されると、支持杆42のアーム621が弾性変形することによって、引起縦伝動パイプ306のある右方向(格納位置側)に移動する。この際、分草杆43は、支持杆42のアーム521の弾性力によって機体に近接し難くなる。この結果、分草杆43の移動量は、所定の範囲内に規制される。また、支持杆42は、分草杆側に向けて膨出するように位置調整装置41の左側方に配置されるので、アーム621の膨出部分が弾性変形して機体に接触することがない。分草杆43が畦等から離間して押されなくなると、分草杆43は、支持杆42のアーム621が弾性変形前の形状に戻ることによって、元の左右位置に復帰する。これにより、分草装置40は、別途緩衝機構や復帰機構をもうけることなく分草杆43や位置調整装置41の破損を防止することができる。
【0091】
以上のごとく、本実施形態に係るコンバイン1は、機体フレーム9(機体)の前部に設けられる刈取部3と、刈取部3の横外側に機体フレーム9の前後方向に沿って配置される分草杆43と、弾性部材で構成され、分草杆43を刈取部3に対して左右方向に揺動自在に軸支する支持杆42と、を具備するものである。
【0092】
このように構成することにより、分草杆43は、支持構造を簡易な構造としながら、畦等と接触して機体に近接する方向に押されると、弾性部材である支持杆42が弾性変形することによって、その押された方向に移動する。そして、畦等から離れて機体に近接する方向に押されなくなると、弾性部材である支持杆42が弾性変形前の形状に戻ることによって、畦等との接触前の元の位置に復帰する。その結果、畦等との接触により分草杆43の位置が変更されても、操縦者が分草杆43を所定の位置に復帰させる操作を行う必要がない。また、分草杆43の支持構造を簡易な構造とすることで製造コストを低減することができる。
【0093】
また、支持杆42は、途中部で曲折され、分草杆43と刈取部3との間に配置されることを特徴とするものである。
【0094】
このように構成することにより、前述の効果に加えて、支持杆42は、剛性の高い材料で構成しても弾性変形しやすくすることができる。その結果、分草杆43は、支持杆42を簡易、かつ強固な構造としながら、畦等との接触により分草杆43の位置が変更されても、弾性部材である支持杆42が弾性変形前の形状に戻るので、操縦者が分草杆43を所定の位置に復帰させる操作を行う必要がない。
【0095】
また、支持杆42は、途中部で分草杆43に向かって突出するように曲折され、分草杆43と刈取部3との間に配置されることを特徴とするものである。
【0096】
このように構成することにより、前述の効果に加えて、支持杆42は、機体から離間する方向に湾曲、または屈曲して弾性変形しやすくすることができる。その結果、分草杆43は、弾性変形されても曲折部分が機体と接触することがない。
【符号の説明】
【0097】
1 コンバイン
3 刈取部
9 機体フレーム
42 支持杆
43 分草杆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前部に設けられる刈取部と、
前記刈取部の横外側に前記機体の前後方向に沿って配置される分草杆と、
弾性部材で構成され、前記分草杆を前記刈取部に対して左右方向に揺動自在に軸支する支持杆と、
を具備するコンバイン。
【請求項2】
前記支持杆は、
途中部で曲折され、前記分草杆と前記刈取部との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記支持杆は、
途中部で前記分草杆に向かって突出するように曲折され、前記分草杆と前記刈取部との間に配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−120490(P2011−120490A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278751(P2009−278751)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】