説明

コンバイン

【課題】作業効率を必要以上に低下させることなく脱穀精度を向上させることが可能なコンバインを提供する。
【解決手段】刈り取った穀稈を扱胴42の長手方向に搬送しながら当該扱胴42により前記穀稈を脱穀するコンバイン1であって、扱胴42と扱胴42の下方に配置される選別部5との間に配置される受網45と、受網45の終端部から漏下する処理物の量を検出するロスセンサ202(センサ)と、ロスセンサ202の検出量Qdが所定値(Qt)以上になった場合に車速Vを所定値以下となるように制限する制御装置200と、を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車速を制御することが可能なコンバインの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車速を制御することが可能なコンバインの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のコンバインは、刈取部から脱穀部へと供給される穀稈の量に応じて車速を制御するものである。このように構成することで、コンバインを、穀稈の供給量に対して適切な車速に調節することができ、当該穀稈の搬送途中における詰まりを未然に防止することができる。さらに、穀稈の供給量に応じて車速を制御するため、脱穀部に過剰に穀稈が供給されることを防止し、ひいては脱穀精度の向上を図ることができる。
【0004】
しかし、特許文献1に記載のコンバインでは、刈り取りを行う稲の条件(脱穀のし易さ、一株当たりの穂数、一穂当たりの籾数等)にかかわらず、刈り取り後の穀稈の供給量のみに基づいて車速を制御する。
このため、例えば晴れた日が続いて乾燥された脱穀し易い条件の稲を収穫する場合には、穀稈の供給量が増加しても脱穀を精度良く行うことが可能であるにもかかわらず、穀稈の供給量が一定量以上に増えると車速が制限され、作業効率が必要以上に低下する点で不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−168337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、作業効率を必要以上に低下させることなく脱穀精度を向上させることが可能なコンバインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、刈り取った穀稈を扱胴の長手方向に搬送しながら当該扱胴により前記穀稈を脱穀するコンバインであって、前記扱胴と前記扱胴の下方に配置される選別部との間に配置される受網と、前記受網の終端部から漏下する処理物の量を検出するセンサと、前記センサの検出量が所定値以上になった場合に車速を所定値以下となるように制限する制御装置と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記センサとして感圧センサを用い、前記センサを、前記扱胴が配置される扱室の側壁に設けたものである。
【0010】
請求項3においては、扱胴が配置される扱室と送塵口を介して連通される処理室に配置され、前記扱胴により脱穀されなかった未処理物を再処理する処理胴を具備するコンバインであって、前記送塵口を介して前記処理室に搬送された前記未処理物の量を検出するセンサと、前記センサの検出量が所定値以上になった場合に車速を所定値以下となるように制限する制御装置と、を具備するものである。
【0011】
請求項4においては、前記センサとして感圧センサを用い、前記センサを、前記処理室の側壁に設けたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、受網の終端部から漏下する処理物の量に基づいて、稲の条件(脱穀のし易さ)を判断することができる。センサの検出量が所定の値以上になった場合、稲の条件が厳しく、枝梗粒、ササリ粒および扱残し粒が多く発生していると判断し、車速を制限することができる。これによって、作業効率を必要以上に低下させることなく単位時間あたりの稲の刈り取り量を制限し、脱穀精度を上げ、ロスを低減することができる。
【0014】
請求項2においては、センサに処理物が堆積するのを防止し、検出精度の低下を防止することができる。
【0015】
請求項3においては、処理室に投入される藁くず等の未処理物の量に基づいて、稲の条件(脱穀のし易さ)を判断することができる。センサの検出量が所定の値以上になった場合、稲の条件が厳しく枝梗粒、ササリ粒および扱残し粒が多く発生していると判断し、車速を制限することができる。これによって、作業効率を必要以上に低下させることなく単位時間あたりの稲の刈取り量を制限し、脱穀精度を上げ、ロスを低減することができる。
【0016】
請求項4においては、センサに未処理物が堆積するのを防止し、検出精度の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態に係るコンバインの全体的な構成を示す側面図。
【図2】同じく、脱穀部および選別部を示す側面断面図。
【図3】同じく、扱胴および処理胴をより詳細に示す側面断面図。
【図4】同じく、動力の伝達経路を示すスケルトン図。
【図5】同じく、制御に関する構成を示すブロック図。
【図6】同じく、図2におけるX−X断面図。
【図7】同じく、制御態様を示すフローチャート。
【図8】(a)車速制御の様子を示す図。(b)稲の条件が異なる圃場における車速制御の様子を示す図。
【図9】第二実施形態に係るコンバインの脱穀部および選別部を示す側面断面図。
【図10】同じく、図9におけるY−Y断面図。
【図11】その他の実施形態に係るコンバインの脱穀部および選別部を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図中の矢印F方向を前方向、矢印R方向を右方向と定義して説明を行う。
【0019】
以下では、図1から図8までを用いて、本発明に係るコンバインの第一実施形態であるコンバイン1の全体構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、コンバイン1は、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、穀粒貯溜部7、排藁処理部8および操縦部9を備える。コンバイン1は、動力をエンジン11から走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、穀粒貯溜部7および排藁処理部8にトランスミッションを含む動力伝達系を介して伝達し、これらの各部を駆動させる。
【0021】
走行部2は、機体の下部に設けられる。走行部2は、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置21を有する。走行部2は、機体をクローラ式走行装置21により走行させる。
【0022】
刈取部3は、機体の前部に昇降可能に設けられる。刈取部3は、分草具31、引起装置32、搬送装置33および切断装置34を有する。刈取部3は、圃場の穀稈を分草具31により分草し、分草後の穀稈を引起装置32により引き起こし、引起後の穀稈を搬送装置33により後方へ搬送しつつ切断装置34により切断し、切断後の穀稈を搬送装置33により脱穀部4に向けてさらに後方へ搬送する。
【0023】
脱穀部4は、機体の左上側に配置される。脱穀部4は、フィードチェン41および扱胴42を有する(図2参照)。脱穀部4は、刈取部3から搬送されてきた刈取後の穀稈をフィードチェン41により受け継いで後方へ搬送し、その搬送中の穀稈を扱胴42により脱穀し、脱穀後の処理物を選別部5に向けて下方へ漏下させる。
【0024】
選別部5は、機体の左下側に配置される。選別部5は、揺動選別装置50、風選別装置および穀粒搬送装置を有する(図2参照)。選別部5は、脱穀部4から落下してきた処理物を揺動選別装置50により揺動選別し、揺動選別後のものを風選別装置により風選別し、風選別後のもののうち、穀粒を穀粒搬送装置により穀粒貯溜部7に向けて右側方へ搬送し、藁屑や塵埃などを風選別装置により後方へ飛ばして機体の外部へ排出する。
【0025】
穀粒貯溜部7は、機体の右後側に配置される。穀粒貯溜部7は、グレンタンク71および穀粒排出装置72を有する。穀粒貯溜部7は、選別部5から搬送されてきた穀粒をグレンタンク71により貯溜し、その貯溜している穀粒を穀粒排出装置72によりグレンタンク71から機体の外部へ排出する。
【0026】
排藁処理部8は、機体の後側に配置される。排藁処理部8は、排藁搬送装置81および排藁切断装置82を有する。排藁処理部8は、脱穀部4から搬送されてきた脱穀済みの排稈を排藁として排藁搬送装置81により後方へ搬送して機体の外部へ排出し、又は排藁切断装置82へ搬送し、排藁を排藁切断装置82へ搬送した場合には排藁切断装置82により切断した後に機体の外部へ排出する。
【0027】
操縦部9は、機体の右前側に配置される。操縦部9は、操縦席91や、ステアリングハンドル92、キャビン93、操作パネルなどを有して、操縦席91やステアリングハンドル92、操作パネルなどをキャビン93により覆い、操縦席91に操縦者を着座させ、ステアリングハンドル92や操作パネルに配置された操作レバーや操作スイッチ類により操縦者が各部の装置を操作することができるように構成される。
【0028】
こうして、コンバイン1は、操縦部9における操作具類の操作に応じて、動力をエンジン11から操縦部9を除く前記各部に伝達し、機体を走行部2により走行させながら、圃場の穀稈を刈取部3により刈り取って、刈取後の穀稈を脱穀部4により脱穀し、脱穀後の処理物を選別部5により選別して、選別後の穀粒を穀粒貯溜部7に貯溜する一方、脱穀後の排藁を排藁処理部8により任意に処理して機体の外部へ排出することができるようになっている。
【0029】
次に、図2および図3を用いて、脱穀部4および選別部5の構成について説明する。
【0030】
脱穀部4は、フィードチェン41、扱胴42および受網45を備えるとともに、処理胴43、処理胴網47、リターンコンベア48および受樋49を備える。
【0031】
扱胴42は、前端部を面取りした円筒状に形成される。扱胴42は、その軸心方向(長手方向)を前後方向として扱室44に配置されて、扱室44の前壁と後壁との間に回転自在に架設された回転支軸に取り付けられる。扱胴42は、エンジン11からの動力が当該回転支軸に伝達されることによって、この回転支軸と一体的にその前後方向の軸心回りに回転する。受網45は、扱胴42をその周面に沿って下方から覆うように、扱室44に配置される。
【0032】
処理胴43は、円筒状に形成される。処理胴43は、その軸心方向を前後方向として処理室46に配置されて、処理室46の前壁と後壁との間に回転自在に架設された回転支軸に支持される。処理胴43は、エンジン11からの動力が当該回転支軸に伝達されることによって、この回転支軸と一体的にその前後方向の軸心回りに回転する。処理胴網47は、処理胴43をその周面に沿って下方から覆うように、処理室46に配置される。処理室46は、扱室44の右後方に位置し、扱室44と送塵口40を介して連通する。
【0033】
リターンコンベア48は、円筒状の部材の外周にらせん状の羽根を設けて構成される。リターンコンベア48は、その軸心方向を前後方向として処理室46における処理胴網47の下方に配置されて、処理室46の前壁と後壁との間に回転自在に架設される。リターンコンベア48は、エンジン11からの動力が伝達されることによって、その軸心回りに回転する。受樋49は、リターンコンベア48をその周面に沿って下方から覆うように、処理室46に配置される。
【0034】
フィードチェン41は、扱胴42の左側方で刈取部3と排藁処理部8との間にわたって配置されて、複数のスプロケットに巻き掛けられる。フィードチェン41は、エンジン11からの動力が前記スプロケットに伝達されることによって、前後方向に回転する。前記複数のスプロケットは、扱胴42の左側方で前後方向に延設された支持フレームに支持される。
【0035】
上述の如く、本実施形態に係るコンバイン1は、扱胴42に加えて処理胴43を具備する、いわゆる複胴形のコンバインである。
【0036】
図2および図3に示すように、選別部5は、揺動選別装置50、風選別装置および穀粒搬送装置を備える。
【0037】
揺動選別装置50は、揺動選別装置本体、前フィードパン51、後フィードパン52、チャフシーブ53、グレンシーブ54およびストローラック55を有する。
【0038】
揺動選別装置本体は、選別部5の平面視で矩形枠状に形成される。揺動選別装置本体は、その長手方向を前後方向として脱穀部4の扱胴42および受網45並びに処理胴43および処理胴網47の下方に配置されて、下部機枠12に揺動可能かつ着脱可能に支持される。揺動選別装置本体は、揺動機構の揺動軸にエンジン11からの動力が伝達されることによって、下部機枠12に対して揺動する。
【0039】
フィードパンは、前フィードパン51および後フィードパン52から構成される。前フィードパン51は、脱穀部4の扱胴42および受網45の下方に配置されて、揺動選別装置本体の前部に支持される。後フィードパン52は、脱穀部4の扱胴42および受網45の下方で前フィードパン51の後下方に配置されて、揺動選別装置本体の前部に支持される。
【0040】
チャフシーブ53は、脱穀部4の扱胴42および受網45並びに処理胴43および処理胴網47の下方で前フィードパン51の後方に配置されて、揺動選別装置本体の前後中途部に支持される。グレンシーブ54は、チャフシーブ53の下方に配置されて、揺動選別装置本体の前後中途部に支持される。ストローラック55は、チャフシーブ53の後方でグレンシーブ54の後上方に配置されて、揺動選別装置本体の後部に支持される。
【0041】
風選別装置は、唐箕ファン56、プレファン57、セカンドファン58および吸引ファン59を備える。
【0042】
唐箕ファン56は、前フィードパン51の後部および後フィードパン52の下方に配置されて、下部機枠12の前部に左右方向に横設される。プレファン57は、前フィードパン51の前部の下方で唐箕ファン56の前上方に配置されて、下部機枠12の前端部付近に左右方向に横設される。セカンドファン58は、チャフシーブ53の後端部の下方で後述の穀粒搬送装置の一番搬送装置61と二番搬送装置62との間に配置されて、下部機枠12の前後中途部に左右方向に横設される。
【0043】
吸引ファン59は、ストローラック55の上方に配置されて、下部機枠12の後端部の上方で左右方向に横設される。そして、唐箕ファン56、プレファン57、セカンドファン58および吸引ファン59は、エンジン11からの動力がそれぞれの回転軸に伝達されることによって、回転して選別風を発生させる。
【0044】
穀粒搬送装置は、一番搬送装置61、二番搬送装置62、一番揚穀装置63および二番還元装置64を備える。
【0045】
一番搬送装置61は、唐箕ファン56の後方であってチャフシーブ53およびグレンシーブ54の下方に配置され、下部機枠12の前後中途部に左右方向に横設される。二番搬送装置62は、一番搬送装置61およびセカンドファン58の後方でストローラック55の下方に配置されて、下部機枠12の後部に左右方向に横設される。
【0046】
一番揚穀装置63は、一番搬送装置61の右側方に配置されて、下部機枠12の右外側で上下方向に立設される。一番揚穀装置63は、その下端部で一番搬送装置61の右端部と接続されるとともに、その上端部で穀粒貯溜部7のグレンタンク71と接続される。
【0047】
二番還元装置64は、二番搬送装置62の右側方に配置されて、下部機枠12の右外側で前後方向に斜設される。二番還元装置64は、その後下端部で二番搬送装置62の右端部と接続されるとともに、その前上端部で脱穀部4の扱室44または揺動選別装置50の上方の空間と接続される。
【0048】
このような構成において、脱穀および選別作業が行われる際、脱穀部4では、刈取部3から搬送されてきた刈取後の穀稈が、その株元でフィードチェン41により受け継がれ、排藁処理部8に向かって後方へ搬送される。この搬送中に、穀稈の穂先部が扱胴42により脱穀され、その穀粒や藁屑や塵埃を含む処理物が選別部5へ落下する過程で受網45により選別される。扱胴42により脱穀されなかった藁くず等の未処理物は、扱室44から送塵口40を介して処理室46に搬送されたあと、処理胴43により処理され、その処理物が選別部5へ落下する過程で処理胴網47により選別される。処理胴網47から受樋49へと落下した処理物は、リターンコンベア48により前方に搬送され、当該リターンコンベア48の前端に設けられた排塵口から選別部5に投入される。
【0049】
選別部5では、揺動選別装置本体が揺動機構により揺動されている状態で、脱穀部4の受網45から落下した処理物の層が前後フィードパン51・52により均平化されて、処理物が比重選別される。前フィードパン51による選別後のものが、チャフシーブ53により粗選別される。後フィードパン52による選別後のものが、グレンシーブ54により選別される。また、脱穀部4の受網45、処理胴網47およびリターンコンベア48の排塵口から落下した処理物が、チャフシーブ53により粗選別される。チャフシーブ53による選別後のものが、グレンシーブ54と唐箕ファン56、プレファン57およびセカンドファン58からの選別風とにより精選別される。
【0050】
チャフシーブ53およびグレンシーブ54から落下する穀粒や藁屑などが、唐箕ファン56およびプレファン57からの選別風により精選別される。このとき、比重が大きく重い穀粒は、一番物として選別風に逆らって落下し、一番搬送装置61に収容される。これよりも比重が小さく軽いものは、唐箕ファン56およびプレファン57からの選別風により、さらにはセカンドファン58からの選別風により二番搬送装置62の上方へ向けて飛ばされる。
【0051】
この飛ばされたものの中でも比較的重いもの、例えば枝梗付穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置62に収容される。これを除いたものは、唐箕ファン56、プレファン57およびセカンドファン58からの選別風によりストローラック55へ向けてさらに飛ばされる。そのうちの藁屑は、ストローラック55によりほぐされる。この藁屑の中にある穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置62に収容される。他の塵埃などは、吸引ファン59により吸引されて、三番口から外部に排出される。
【0052】
一番物は、一番搬送装置61により一番揚穀装置63に搬送され、つづいて一番揚穀装置63により穀粒貯溜部7のグレンタンク71に搬送されて、グレンタンク71に貯溜される。二番物は、二番搬送装置62により二番還元装置64に搬送され、つづいて二番還元装置64により脱穀部4の扱室44又は揺動選別装置50の上方空間へ搬送されて、脱穀されて、又は脱穀されずに、揺動選別装置および風選別装置により再選別される。
【0053】
次に、図4および図5を用いて、コンバイン1におけるエンジン11から走行部2(クローラ式走行装置21)まで(走行系)の動力の伝達経路について説明する。
【0054】
図4に示すように、コンバイン1の走行系の動力の伝達経路には、走行用の油圧式無段変速装置(以下、走行用HSTという。)110、操向用の油圧式無段変速装置(以下、操向用HSTという。)120および伝動機構140が備えられる。
【0055】
走行用HST110には、可変容量型の走行ポンプ110P、固定容量型の走行モータ110Mが備えられる。走行ポンプ110Pと走行モータ110Mとはそれぞれ油圧ポンプと油圧モータとで構成され、互いに流体接続される。なお、走行ポンプ110Pと走行モータ110Mとは少なくとも一方が可変容量型であればよい。
【0056】
走行ポンプ110Pには、走行ポンプ軸111、プランジャ、シリンダ、走行ポンプ容量調整手段113が備えられる。走行ポンプ軸111はエンジン11の出力軸と連動連結され、シリンダは走行ポンプ軸111に相対回転不能に支持される。シリンダに複数のプランジャが往復摺動可能に収納される。走行ポンプ容量調整手段113は可動斜板と制御軸とを有し、制御軸にて可動斜板を傾転させることによりプランジャの往復摺動するストロークが変更され、走行ポンプ110Pからの吐出量を変更することができるように構成される。
【0057】
走行モータ110Mには、プランジャ、シリンダ、走行モータ軸115、固定斜板が備えられる。シリンダは走行モータ軸115に相対回転不能に支持される。固定斜板は走行モータ本体114に固定され、走行ポンプ110Pから送油される圧油により、プランジャが押されてシリンダおよび走行モータ軸115を回転させる。
【0058】
走行用HST110は変速操作装置によって走行ポンプ容量調整手段113が操作可能とされる。図4または図5に示すように、変速操作装置には、人為操作可能な主変速操作具としての主変速レバー94、第一操作位置検出センサ94a、走行ポンプ110P用の作動装置である変速アクチュエータ116が備えられる。第一操作位置検出センサ94a、変速アクチュエータ116は、コンバイン1に備えられる後述の制御装置200と接続される。
【0059】
主変速レバー94は、操縦部9で操縦席91近傍に配置される。主変速レバー94は、中立位置から前進側または後進側へと回動操作可能とされる。
【0060】
第一操作位置検出センサ94aは、主変速レバー94の回動基部に設けられ、主変速レバー94の回動角を主変速レバー94の操作位置として検出可能とされる。また、変速アクチュエータ116は、本実施の形態においては、油圧シリンダ、電磁弁、この電磁弁を作動させるソレノイド等から構成される。但し、変速アクチュエータ116は、特に限定するものではなく、電動モータや電動シリンダ等で構成することも可能である。
【0061】
主変速レバー94が中立位置から前進側または後進側へ回動操作されると、その操作位置が第一操作位置検出センサ94aにより検出され、変速アクチュエータ116のソレノイドが制御装置200により作動させられて、電磁弁が切り換えられる。この電磁弁の切り換えによって、油圧シリンダが第一操作位置検出センサ94aの検出値に応じた長さに伸縮され、走行ポンプ容量調整手段(可動斜板)113が中立位置から前進側または後進側へ傾転されて、走行ポンプ110Pの容量が変更される。
【0062】
こうして、走行用HST110では、走行ポンプ110Pの駆動時に、走行ポンプ容量調整手段(可動斜板)113の傾転に応じて走行ポンプ110Pの容量が変更されることによって、走行ポンプ110Pから走行モータ110Mへ吐出される作動油の吐出量および吐出方向が変更され、走行モータ軸115の回転方向が正又は逆方向に変更されるとともに、回転数が無段階に変更される。
【0063】
図4に示すように、操向用HST120には、可変容量型の操向ポンプ120P、固定容量型の操向モータ120Mが備えられる。操向ポンプ120Pと操向モータ120Mとはそれぞれ油圧ポンプと油圧モータとで構成され、互いに流体接続される。なお、操向ポンプと操向モータとは少なくとも一方が可変容量型であればよい。
【0064】
操向ポンプ120Pには、操向ポンプ軸121、プランジャ、シリンダ、操向ポンプ容量調整手段123が備えられる。操向ポンプ軸121はエンジン11と連動連結され、シリンダは操向ポンプ軸121に相対回転不能に支持される。シリンダに複数のプランジャが往復摺動可能に収納される。操向ポンプ容量調整手段123は可動斜板と制御軸とを有し、制御軸にて可動斜板を傾転させることによりプランジャの往復摺動するストロークが変更され、操向ポンプ120Pからの吐出量を変更することができるように構成される。
【0065】
操向モータ120Mには、プランジャ、シリンダ、操向モータ軸125、固定斜板が備えられる。シリンダは、操向モータ軸125に相対回転不能に支持される。固定斜板は操向モータ本体124に固定され、操向ポンプ120Pから送油される圧油により、プランジャが押されてシリンダおよび操向モータ軸125を回転させる。
【0066】
操向用HST120は操向操作装置によって操向ポンプ容量調整手段123が操作可能とされる。図4または図5に示すように、操向操作装置には、人為操作可能な操向操作手段としてのステアリングハンドル92と、操向位置検出センサ92a、操向ポンプ120P用の作動装置である操向アクチュエータ126が備えられる。操向位置検出センサ92a、操向アクチュエータ126は、制御装置200と接続される。
【0067】
ステアリングハンドル92は、操縦部9で操縦席91の前方に配置され、左右回りに回動操作可能とされる(図1)。操向位置検出センサ92aは、ステアリングハンドル92の回動基部に設けられ、ステアリングハンドル92の回動角をステアリングハンドル92の操作位置として検出可能とされる。また、操向アクチュエータ126は、本実施の形態においては、油圧シリンダ、電磁弁、この電磁弁を作動させるソレノイド等から構成される。但し、操向アクチュエータ126は、特に限定するものではなく、電動モータや電動シリンダ等で構成することも可能である。
【0068】
ステアリングハンドル92を回動操作されると、その操作位置が操向位置検出センサ92aにより検出され、操向アクチュエータ126のソレノイドが制御装置200により操向位置検出センサ92aの検出値に基づいて作動させられて、電磁弁が切り換えられる。この電磁弁の切り換えによって、油圧シリンダが操向位置検出センサ92aの検出値に応じた長さに伸縮され、操向ポンプ容量調整手段(可動斜板)123が傾転されて、操向ポンプ120Pの容量が変更される。
【0069】
こうして、操向用HST120では、操向ポンプ120Pの駆動時に、操向ポンプ容量調整手段(可動斜板)123の傾転に応じて操向ポンプ120Pの容量が変更されることによって、操向ポンプ120Pから操向モータ120Mへ吐出される作動油の吐出量および吐出方向が変更され、操向ポンプ軸121の回転方向が正又は逆方向に変更されるとともに、回転数が無段階に変更される。
【0070】
図4に示すように、伝動機構140には、一対の遊星ギヤ機構、即ち第一遊星ギヤ機構150aおよび第二遊星ギヤ機構150b、走行用出力伝動機構160および操向用出力伝動機構170が備えられる。
【0071】
第一遊星ギヤ機構150aには、サンギヤ151、インターナルギヤ154、複数の遊星ギヤ152・152・・・・・・、キャリア153が備えられる。サンギヤ151は回転軸156に固定され、インターナルギヤ154はサンギヤ151を同心状に囲繞するように配置される。各遊星ギヤ152はインターナルギヤ154の内歯とサンギヤ151の外歯とに噛合するように両ギヤ間に介装され、キャリア153に回転自在に軸支される。そして、キャリア153が第一出力軸130aと固定される。
【0072】
同様に、第二遊星ギヤ機構150bには、サンギヤ151、インターナルギヤ154、複数の遊星ギヤ152・152・・・・・・、キャリア153が備えられる。サンギヤ151は回転軸156に固定され、インターナルギヤ154はサンギヤ151を同心状に囲繞するように配置される。各遊星ギヤ152はインターナルギヤ154の内歯とサンギヤ151の外歯とに噛合するように両ギヤ間に介装され、キャリア153に回転自在に軸支される。そして、キャリア153が第二出力軸130bと固定される。
【0073】
走行用出力伝動機構160には、出力軸161、分岐軸165、第一走行用出力ギヤ列166a、第二走行用出力ギヤ列166b、歯車噛合式の副変速機構167、駐車用ブレーキ装置162が備えられる。出力軸161は走行用HST110における走行モータ110Mの走行モータ軸115と連動連結され、分岐軸165は出力軸161に副変速機構167を介して連動連結される。
【0074】
副変速機構167は走行用の走行モータ軸115の回転動力を出力軸161と分岐軸165との間で多段変速させることができるように構成される。なお、本実施形態においては、副変速機構を、作業用の低速段と走行用の高速段とに変速可能となるように構成しているが、三段以上に変速可能となるように構成してもよい。
【0075】
副変速機構167には、高速駆動ギヤ167aおよび低速駆動ギヤ167bと、高速従動ギヤ167cおよび低速従動ギヤ167dと、走行系シフタ167eと、伝動軸167fとが備られる。高速駆動ギヤ167aおよび低速駆動ギヤ167bは、それぞれ出力軸161に相対回転不能に支持される。高速駆動ギヤ167aと高速従動ギヤ167cとが噛合され、低速駆動ギヤ167bと低速従動ギヤ167dとが噛合される。高速従動ギヤ167cと低速従動ギヤ167dとが走行系シフタ167eを介して伝動軸167fに選択的に係合可能とされている。
【0076】
副変速機構167は、副変速操作装置によって操作可能とされる。副変速操作装置には、図5に示すように、人為操作可能な副変速操作具としての副変速レバー95と、第二操作位置検出センサ95aとが備えられる。第二操作位置検出センサ95aは制御装置200と接続される。
【0077】
副変速レバー95は、操縦部9で操縦席91近傍に配置され、低速位置または高速位置へ前後に回動操作可能とされる。第二操作位置検出センサ95aは、副変速レバー95の回動基部に設けられ、副変速レバー95の操作位置を検出可能とされる。
【0078】
副変速レバー95が低速位置に回動操作されると、その回動角が副変速レバー95の操作位置として第二操作位置検出センサ95aにより検出される。この変速操作によって、走行系シフタ167eが低速従動ギヤ167d側へ移動され、低速従動ギヤ167dが伝動軸167fに当該走行系シフタ167eを介して係合される。その結果、低速側に変速された回転動力が、出力軸161から伝動軸167fを介して分岐軸165へ伝達される。
【0079】
一方、副変速レバー95が高速位置に回動操作されているときには、その操作位置が第二操作位置検出センサ95aにより検出され、この変速操作により、走行系シフタ167eが高速従動ギヤ167c側へ移動され、高速従動ギヤ167cが伝動軸167fに当該走行系シフタ167eを介して係合される。その結果、高速側に変速された回転動力が、出力軸161から伝動軸167fを介して分岐軸165へ伝達される。
【0080】
なお、走行モータ110Mの走行モータ軸115にはPTOプーリ118が固定され、このPTOプーリ118から走行モータ110Mの回転動力が刈取部3の伝動機構に伝達可能とされる。
【0081】
第一走行用出力ギヤ列166aは分岐軸165の回転動力を第一遊星ギヤ機構150aのインターナルギヤ154に伝達し、第二走行用出力ギヤ列166bは分岐軸165の回転動力を第二遊星ギヤ機構150bのインターナルギヤ154に伝達することができるように構成される。第一走行用出力ギヤ列166aと第二走行用出力ギヤ列166bの各伝動方向および伝動比は、互いに同一に設定される。
【0082】
駐車用ブレーキ装置162は、ブレーキ軸163、ブレーキユニット164を有し、ブレーキ軸163により出力軸161から回転動力を受けて分岐軸165へ出力し、ブレーキユニット164によりブレーキ軸163に対して選択的に制動力を付加することができるように構成される。
【0083】
操向用出力伝動機構170には、出力軸171、共通軸172、第一操向用出力ギヤ列173a、第二操向用出力ギヤ列173b、クラッチ装置175、操向用ブレーキ装置174が設けられる。
【0084】
出力軸171は操向用HST120における操向モータ120Mの操向モータ軸125と連動連結され、共通軸172は出力軸171にクラッチ装置175を介して連動連結される。クラッチ装置175は出力軸171から共通軸172への回転動力を伝動または遮断することができるように構成される。
【0085】
第一操向用出力ギヤ列173aは共通軸172の回転動力を回転軸等を介して第一遊星ギヤ機構150aのサンギヤ151に伝達し、第二操向用出力ギヤ列173bは共通軸172の回転動力を回転軸156等を介して第二遊星ギヤ機構150bのサンギヤ151に伝達するものとされる。第一操向用出力ギヤ列173aと第二操向用出力ギヤ列173bの伝動比は同一に設定され、伝動方向は互いに反対方向に設定される。
【0086】
操向用ブレーキ装置174は出力軸171に対して選択的に制動力を付加することができるように構成される。
【0087】
このような構成において、ステアリングハンドル92が回動操作されずに操向用HST120の操向モータ120Mが停止し、主変速レバー94が中立位置から回動操作されて走行用HST110の走行モータ110Mが駆動する場合、走行モータ110Mの回転動力が、走行モータ軸115から、走行用出力伝動機構160の出力軸161、分岐軸165、第一および第二走行用出力ギヤ列166a・166b、第一および第二遊星ギヤ機構150a・150bのインターナルギヤ154、遊星ギヤ152、キャリア153の順に各部材に伝達され、ついで第一および第二出力軸130a・130bに伝達される。
【0088】
この回転動力の伝達によって、第一出力軸130aと第二出力軸130bとが同一回転数で回転され、ひいては左右の各クローラ式走行装置21に備えられた駆動輪が同一回転方向に同一回転数で回転される。その結果、左右のクローラ式走行装置21が駆動し、機体が直進走行することとなる。
【0089】
主変速レバー94が中立位置に回動操作されて走行用HST110の走行モータ110Mが停止し、ステアリングハンドル92が回動操作されて操向用HST120の操向モータ120Mが駆動する場合、操向モータ120Mの回転動力が、操向モータ軸125から、操向用出力伝動機構170の出力軸171、共通軸172、第一および第二操向用出力ギヤ列173a・173b、第一および第二遊星ギヤ機構150a・150bのサンギヤ151、遊星ギヤ152、キャリア153の順に各部材に伝達され、ついで第一および第二出力軸130a・130bに伝達される。
【0090】
この回転動力の伝達によって、第一出力軸130aと第二出力軸130bとが互いに反対方向に回転され、ひいては左右一方のクローラ式走行装置21の駆動輪が正または逆方向へ回転され、左右他方のクローラ式走行装置21の駆動輪が逆または正方向へ回転される。その結果、左右のクローラ式走行装置21が駆動され、その場で機体のスピンターン旋回が行われる。これにより、例えば圃場や枕地での方向転換が可能とされる。
【0091】
主変速レバー94が中立位置から回動操作されて走行用HST110における走行モータ110Mが駆動するとともに、ステアリングハンドル92が回動操作されて操向用HST120の操向モータ120Mが駆動する場合、走行モータ110Mから走行用出力伝動機構160を介して伝達される回転動力と、操向モータ120Mから走行用出力伝動機構160を介して伝達される回転動力とが、第一および第二遊星ギヤ機構150a・150bでそれぞれ合成された後、第一および第二出力軸130a・130bに伝達される。
【0092】
この回転動力の伝達によって、第一および第二出力軸130a・130bが互いに異なる回転数で回転され、ひいては左右の各クローラ式走行装置21の駆動輪が互いに異なる回転数で回転される。その結果、左右のクローラ式走行装置21が速度差をもって駆動され、機体の走行と左または右方向への旋回とが同時に行われる。旋回方向および旋回半径は左右のクローラ式走行装置21の速度差に応じて決定される。
【0093】
そして、これらの場合、走行方向は、主変速レバー94が前進側へ回動操作されている場合には前進となり、主変速レバー94が後進側へ回動操作されている場合には後進となる。また、機体の走行速度は、主変速レバー94および副変速レバー95の操作位置に応じて変更されることとなる。
【0094】
以下では、図2、図3、図5および図6を用いて、コンバイン1の制御に関する構成について説明する。
【0095】
図5に示すように、コンバイン1は制御装置200を具備する。また、制御装置200には、第一操作位置検出センサ94a、第二操作位置検出センサ95a、操向位置検出センサ92a、閾値調節ダイヤル96の操作位置を検出するダイヤル位置検出センサ96a、走行速度検出センサ201、ロスセンサ202、変速アクチュエータ116および操向アクチュエータ126が接続される。
なお、第一操作位置検出センサ94a、第二操作位置検出センサ95a、操向位置検出センサ92a、変速アクチュエータ116および操向アクチュエータ126については前述したため、以下では説明を省略する。
【0096】
制御装置200は、コンバイン1の任意の位置に設けられる。制御装置200は、中央処理装置、記憶装置等により構成される。
【0097】
閾値調節ダイヤル96は、操縦部9で操縦席91近傍に配置される。閾値調節ダイヤル96は、所定の角度範囲内で回動操作可能とされる。
【0098】
ダイヤル位置検出センサ96aは、閾値調節ダイヤル96の回動基部に設けられ、閾値調節ダイヤル96の回動角を閾値調節ダイヤル96の操作位置として検出可能とされる。
【0099】
走行速度検出センサ201は、コンバイン1の走行速度を検出するものである。走行速度検出センサ201は、コンバイン1の走行系の動力の伝達経路における適宜の軸やギヤの回転速度を走行速度として検出することができるように構成される。
【0100】
ロスセンサ202は、受網45の終端部から漏下する処理物の量を検出するものである。図2、図3および図6に示すように、ロスセンサ202は、平板状の感圧センサにより構成される。ロスセンサ202は、扱室44の側壁に固定される。
より詳細には、ロスセンサ202は、前後方向において受網45の終端部近傍(送塵口40のすぐ前方)に配置される(図2および図3参照)。また、ロスセンサ202は、上下(高さ)方向において受網45の下端部と同じ高さに位置するように、扱室44の右側壁に固定される(図6参照)。当該ロスセンサ202は、検出面を左方(受網45の方向)に向けた状態で配置される。
【0101】
このように、ロスセンサ202を扱室44の側壁に固定することで、当該ロスセンサ202の検出面に処理物等が堆積するのを防止し、検出精度の低下を防止することができる。
【0102】
脱穀作業が行われる場合、扱胴42は正面視(図6参照)において時計回りに回転し、当該扱胴42の下側と受網45との間で搬送中の穀稈の穂先部が脱穀される。当該脱穀された処理物は、受網45から漏下する。この際、受網45の終端部から漏下する処理物は、扱胴42の回転により受網45の右方へと飛ばされてロスセンサ202に接触する。このようにして、ロスセンサ202は、受網45の終端部から漏下する処理物の量を検出することができる。
【0103】
上述の如く、ロスセンサ202により受網45の終端部から漏下する処理物の量を検出することによって、作業中の圃場の稲の条件(脱穀のし易さ)を判断することができる。すなわち、前方から搬送される穀稈が受網45の終端部に到達するまでに扱胴42によって脱穀作業がなされているにもかかわらず、受網45の終端部から漏下する処理物の量が多いということは、(1)当該圃場の稲は脱穀し難く、枝梗粒が多い、(2)いわゆるササリ粒が多い、または(3)いわゆる扱残し粒が多い、と判断することができる。
【0104】
以下では、図7および図8を用いて、コンバイン1の作業(刈取作業、脱穀作業、および選別作業)中における車速制御の態様について説明する。
【0105】
図7のステップS101において、制御装置200は、ロスセンサ202による処理物の量の検出値Qdが、閾値Qt以上であるか否かを判定する。
【0106】
ここで、閾値Qtは、閾値調節ダイヤル96(図5参照)によって設定される値である。制御装置200は、ダイヤル位置検出センサ96aにより検出される閾値調節ダイヤル96の操作位置に基づいて、閾値Qtを設定する。すなわち、作業者は閾値調節ダイヤル96を調節することによって、閾値Qtを任意に設定することができる。
【0107】
検出値Qdが閾値Qt以上である場合、制御装置200はステップS102に移行する。
検出値Qdが閾値Qt未満である場合、制御装置200はステップS101の処理を再度行う。
【0108】
ステップS102において、制御装置200は、コンバイン1の車速Vを、検出値Qdが閾値Qtとなった際の車速V1(図8(a))以下に制限する。
【0109】
以下では、ステップS102における処理について、図8(a)を用いてより詳細に説明する。
【0110】
通常、図8(a)に示すように、コンバイン1の車速Vが増加するにつれて、単位時間あたりに刈り取る稲の量が増加し、ひいては単位時間あたりに脱穀する処理物の量が増加するため、ロスセンサ202による処理物の量の検出値Qdも増加する。
【0111】
制御装置200は、検出値Qdが閾値Qt以下となる範囲においては、通常通り、主変速レバー94(図5参照)の操作位置に応じて車速Vを変更する。すなわち、主変速レバー94を増速側へ回動操作すると、制御装置200は当該主変速レバー94の回動操作に応じてコンバイン1の車速Vを増加させる。
【0112】
しかし、検出値Qdが閾値Qtに達した場合、制御装置200は、コンバイン1の車速Vがその時点での車速V1よりも増加しないように制限する。すなわち、主変速レバー94を増速側へ回動操作しても、制御装置200はコンバイン1の車速Vをそれ以上増加させない。
【0113】
このように、制御装置200は、受網45の終端部から漏下する処理物の量(検出値Qd)が閾値Qt以上になった場合、圃場の稲の条件が厳しく(稲が脱穀し難く)、枝梗粒、ササリ粒および扱残し粒が多く発生していると判断することができる。この場合、上述の如く、制御装置200はコンバイン1の車速Vを車速V1以下に制限することで、単位時間あたりの稲の刈り取り量を制限し、ひいては単位時間あたりに脱穀する処理物の量を制限することで、脱穀部4における脱穀精度を向上させることができる。これによって、収穫しきれずに機外に排出される籾の量(ロス)を低減することができる。
【0114】
例えば、上述のコンバイン1の車速制御を稲の条件が異なる3つの圃場(A、BおよびC)で行った場合、車速Vとロスセンサ202の検出値Qdとの関係は図8(b)に示すようになる。
【0115】
図8(b)においては、圃場Aが最も稲の条件が厳しく(稲が脱穀し難く)、圃場Cが最も稲の条件が易しい(稲が脱穀し易い)。この場合、閾値Qtが同一の値であれば、圃場Aにおける制限された車速Vaが最も小さく、圃場Cにおける制限された車速Vcが最も大きくなる。また、圃場Bにおける制限された車速Vbは車速Vaよりも大きく、車速Vcよりも小さくなる。
【0116】
以上の如く、本実施形態に係るコンバイン1は、刈り取った穀稈を扱胴42の長手方向に搬送しながら当該扱胴42により前記穀稈を脱穀するコンバイン1であって、扱胴42と扱胴42の下方に配置される選別部5との間に配置される受網45と、受網45の終端部から漏下する処理物の量を検出するロスセンサ202(センサ)と、ロスセンサ202の検出量Qdが所定値(Qt)以上になった場合に車速Vを所定値以下となるように制限する制御装置200と、を具備するものである。
このように構成することにより、受網45の終端部から漏下する処理物の量に基づいて、稲の条件(脱穀のし易さ)を判断することができる。ロスセンサ202の検出量Qdが所定の値(Qt)以上になった場合、稲の条件が厳しく、枝梗粒、ササリ粒および扱残し粒が多く発生していると判断し、車速Vを制限することができる。これによって、作業効率を必要以上に低下させることなく単位時間あたりの稲の刈り取り量を制限し、脱穀精度を上げ、ロスを低減することができる。
【0117】
また、コンバイン1は、ロスセンサ202として感圧センサを用い、ロスセンサ202を、扱胴42が配置される扱室44の側壁に設けたものである。
このように構成することにより、ロスセンサ202に処理物が堆積するのを防止し、検出精度の低下を防止することができる。
【0118】
以下では、図9および図10を用いて、第二実施形態に係るコンバイン1について説明する。なお、第一実施形態と第二実施形態との相違点はロスセンサ202の取り付け位置のみである。よって以下では、ロスセンサ202の取り付け位置について詳述し、その他の部材については第一実施形態と同一の符号を付し説明を省略する。
【0119】
ロスセンサ202は、送塵口40を介して処理室46に搬送された藁くず等の未処理物の量を検出するものである。図9および図10に示すように、ロスセンサ202は、平板状の感圧センサにより構成される。ロスセンサ202は、処理室46の側壁に固定される。
より詳細には、ロスセンサ202は、前後方向において送塵口40と同一位置に配置される。また、ロスセンサ202は、上下(高さ)方向において処理胴43の軸心とリターンコンベア48の軸心との間であって、処理胴網47の下方に位置するように、処理室46の右側壁に固定される。このようにしてロスセンサ202は、処理胴43の右下方であって処理胴網47の下方に配置される。当該ロスセンサ202は、検出面を左方(処理胴43の方向)に向けた状態で配置される。
【0120】
このように、ロスセンサ202を処理室46の側壁に固定することで、当該ロスセンサ202の検出面に未処理物等が堆積するのを防止し、検出精度の低下を防止することができる。
【0121】
脱穀作業が行われる場合、処理胴43は正面視(図10参照)において時計回りに回転し、当該処理胴43によって送塵口40を介して処理室46へと搬送された藁くず等の未処理物が処理される。当該処理された処理物は、処理胴網47から漏下する。この際、処理胴網47の前端部(前後方向における送塵口40近傍)から漏下する処理物は、処理胴43の回転により処理胴網47の右方へと飛ばされてロスセンサ202に接触する。このようにして、ロスセンサ202は、処理胴網47の前端部から漏下する処理物の量を検出することができる。また、処理胴網47の前端部から漏下する処理物の量は、送塵口40を介して処理室46に搬送された藁くず等の未処理物の量に比例すると考えられる。このため、ロスセンサ202は、処理胴網47の前端部から漏下する処理物の量を検出することで、ひいては送塵口40を介して処理室46に搬送された藁くず等の未処理物の量を検出することができる。
【0122】
上述の如く、ロスセンサ202により送塵口40を介して処理室46に搬送された藁くず等の未処理物の量を検出することによって、作業中の圃場の稲の条件(脱穀のし易さ)を判断することができる。すなわち、扱胴42による脱穀作業によっても脱穀しきれない未処理物の量が多いということは、(1)当該圃場の稲は脱穀し難く、枝梗粒が多い、(2)いわゆるササリ粒が多い、または(3)いわゆる扱残し粒が多い、と判断することができる。
【0123】
なお、本実施形態においては、ロスセンサ202を処理胴網47の下方に配置するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、ロスセンサ202を処理胴網47の上方(処理胴43の軸心と同一程度の高さ)であって処理室46の右側壁に設けることも可能である。この場合も、当該ロスセンサ202によって、送塵口40を介して処理室46に搬送された藁くず等の未処理物の量を検出することができる。
【0124】
本実施形態(第二実施形態)におけるコンバイン1の車速制御は、第一実施形態における車速制御と同様であるので、説明を省略する。
【0125】
以上の如く、本実施形態に係るコンバイン1は、扱胴42が配置される扱室44と送塵口40を介して連通される処理室46に配置され、扱胴42により脱穀されなかった未処理物を再処理する処理胴43を具備するコンバイン1であって、送塵口40を介して処理室46に搬送された前記未処理物の量を検出するロスセンサ202(センサ)と、ロスセンサ202の検出量Qdが所定値(Qt)以上になった場合に車速Vを所定値以下となるように制限する制御装置200と、を具備するものである。
このように構成することにより、処理室46に投入される藁くず等の未処理物の量に基づいて、稲の条件(脱穀のし易さ)を判断することができる。ロスセンサ202の検出量Qdが所定の値(Qt)以上になった場合、稲の条件が厳しく枝梗粒、ササリ粒および扱残し粒が多く発生していると判断し、車速Vを制限することができる。これによって、作業効率を必要以上に低下させることなく単位時間あたりの稲の刈取り量を制限し、脱穀精度を上げ、ロスを低減することができる。
【0126】
また、コンバイン1は、ロスセンサ202として感圧センサを用い、ロスセンサ202を、処理室46の側壁に設けたものである。
このように構成することにより、ロスセンサ202に未処理物が堆積するのを防止し、検出精度の低下を防止することができる。
【0127】
なお、第一実施形態および第二実施形態に係るコンバイン1は、扱胴42に加えて処理胴43を具備する、いわゆる複胴形のコンバインとして説明したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、本発明に係るコンバインは、図11に示すように、扱胴42以外に処理胴を具備しない、いわゆる単胴形のコンバインであってもよい。詳述すると、図11に示すコンバインが、第一実施形態に係るコンバイン1(図3参照)と異なる点は、処理胴43、処理胴網47、リターンコンベア48および受樋49を具備しない点である。
図11に示すコンバインにおいても、第一実施形態に係るコンバイン1と同様に、ロスセンサ202は受網45の終端部近傍に配置され、受網45の終端部から漏下する処理物の量を検出することができるように構成される。
【符号の説明】
【0128】
1 コンバイン
4 脱穀部
5 選別部
40 送塵口
42 扱胴
43 処理胴
44 扱室
45 受網
46 処理室
200 制御装置
202 ロスセンサ(センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈り取った穀稈を扱胴の長手方向に搬送しながら当該扱胴により前記穀稈を脱穀するコンバインであって、
前記扱胴と前記扱胴の下方に配置される選別部との間に配置される受網と、
前記受網の終端部から漏下する処理物の量を検出するセンサと、
前記センサの検出量が所定値以上になった場合に車速を所定値以下となるように制限する制御装置と、
を具備するコンバイン。
【請求項2】
前記センサとして感圧センサを用い、
前記センサを、
前記扱胴が配置される扱室の側壁に設けた、
請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
扱胴が配置される扱室と送塵口を介して連通される処理室に配置され、前記扱胴により脱穀されなかった未処理物を再処理する処理胴を具備するコンバインであって、
前記送塵口を介して前記処理室に搬送された前記未処理物の量を検出するセンサと、
前記センサの検出量が所定値以上になった場合に車速を所定値以下となるように制限する制御装置と、
を具備するコンバイン。
【請求項4】
前記センサとして感圧センサを用い、
前記センサを、
前記処理室の側壁に設けた、
請求項3に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−200171(P2012−200171A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66248(P2011−66248)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】