説明

ゴルフシューズおよびそのアウトソール

【課題】ゴルファに対して芝に対する優れた柔軟性および牽引性ならびにバランスを実現する。
【解決手段】ゴルフシューズは、弧形支持土踏まず部とともにモールドされ結合される前方基部および後方基部を有するアウトソールを具備する。基部は、硬度が75から85ショアAの間である比較的薄い熱可塑性ポリウレタンから製造される。土踏まず部も最小ショアA硬度が95の硬質ポリウレタンから製造される。基部の各々は、複数の開口を具備し、対応する数の比較的硬いポッドがその内部にモールドされ、各ポッドのサイズおよび形状は対応する開口内にフィットするようになされ、基部の底面から少なくとも6.3mm伸びる。シューズは、中足骨領域の横切る方向、ならびに中足骨近辺で長さ方向に沿って屈曲可能であり、これにより、ゴルファに対して改良された芝に対する柔軟性および牽引性ならびにバランスを実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゴルフシューズに関する。より具体的には、この発明は、安定ポッドを採用して芝に対する、より大きな柔軟性、バランス、および牽引をゴルファに与えるゴルフシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
歴史的には、初めに、人々は足を守るために靴を履いた。年月を重ね、履物は、具体的な活動に特有の多くの異なるタイプに進化した。したがって、寒冷地の作業ブーツにより提供される防護は、ランニングシューズにより提供される防護と大きく異なる。足の防護に加えて、競技用履物は固有の競技に依存した特別の機能を実現してきた。例えば、サッカーシューズは滑らないようにスパイクを具備し、他方、サイクリングシューズは非常に堅固なソールを具備し、ペダルと係合するクリート用に取付板を備える。同様に、ゴルフシューズは、芝生を確実にとらえ、歩き心地がよく、ボールを打つときに安定した土台を実現するように進化してきた。典型的なゴルフシューズは金属製スパイクまたはプラスチック製滑り止めを伴う比較的硬いソールを具備する。
【0003】
硬いソールは安定した土台を提供するけれども、どのように足の動きを許容すべきかという点と、どのように足を支持すべきかという点の間のトレードオフがあるので、不快感を伴いがちである。その一例は、歩行時やゴルフスイングの開始時および終了時に足は中足骨関節(ボール)で曲がるという事実である。非常に硬いソールを屈曲させるために要求される肉体的な努力(これは木靴を履いたときのようの不格好な歩き方を引き起こす傾向がある)に加え、ソールが硬いと、足のヒールをヒールカップの中で上下動させる傾向があり、まめを作る原因になる。したがって、ゴルフシューズはボール領域に渡ってこのような動きを可能にし、しかも良好な打撃の土台の横方向の安定性を犠牲にしないソールを具備するように進化してきた。
【0004】
しかしながら、生命工学における比較的最近の研究は、足の26個の骨が人の移動に伴って相互にどのように動くかをより良く定量化する事を探求してきた。特定された1つの動きは、足の長軸の周りのねじれの動きである。実際、前方足部および後方足部はお互いにねじれる。この動きは足と地面との間の接触を円滑にし、地面との衝突を和らげ、地面との接触を確実にすると考えられる。このような観察により、この自然な動きを可能にするゴルフシューズの開発が導き出された。
【0005】
米国特許第3,550,597号(特許文献1)は、前側および後ろ側の主たる立ち上がり部分を、平坦なねじれバネの形態でなじれる弾力性のある中間部分で堅固に結合させた、平坦構造を実現して、移動時に足の自然な転がり動作を容易にする装置を開示している。この装置は、使用中に、立ち上がり部分により足に加えられる屈曲可能なねじれ動作を加え、これにより、足の踵は内側で上方向に力を受け、足の前方は外側で上方向の力を受け、足の自然なねじれ動作と類似したねじれ動作が生じる。
【0006】
靴を履く者により大きなサポートを付与するように意図された他の構造が米国特許第5,926,974号(Friton、特許文献2)に開示されている。Fritonの靴はゴルフ用でなくハイキング用に設計されたソールを具備する。この文献は、牽引要素としてポッドおよびラグ(鞘と突起)を用い、これを組み合わせて、より大きな滑り止め、および不規則な接地環境を実現する。しかしながら、本出願の発明の教示するところは、ゴルフシューズに必要とされる典型的なものは何かということである。「974」特許は、比較的柔らかく、外側に広がることができて圧縮クッションとして働き地面との接触面積を増大させて牽引を向上させる複数のポッドを開示し、これは山羊の蹄が作用するのと同様である。本出願の発明はまったく異なる領域のための比較的硬いポッドを採用する。
【0007】
足の個々の動き、とくに、履く者の足に渡って曲がる、足の前側と後ろ側の間の回動を可能にするゴルフシューズ用の改良されたアウトソールに対する要望、ならびに、足の中足骨領域を横切る方向だけでなくその長さ方向に沿って屈曲が可能になる靴に対する要望が依然としてある。
【特許文献1】米国特許第3,550,597号明細書
【特許文献2】米国特許第5,926,974号明細書
【発明の開示】
【0008】
この発明は、アッパーおよびアウトソールを有してなり、アッパーをアウトソールに結合するミッドソールを具備するゴルフシューズに向けられている。アウトソールは、全体として柔らかく、屈曲可能な前方基部および後方基部を具備し、これら基部の各々は、予め定められた寸法および形状の複数の開口を具備し、対応する同様の数の安定ポッドが、弧形支持土踏まず部とともに、基部にモールドされてアウトソールを形成する。安定ポッドの各々は、芝の把持を確実にする非金属製のクリートを取り外し可能に結合する手段を具備する。この結合手段は、45°の時計方向の回転のみで実装され45°の反時計回りの回転で取り外し可能なクリート受け口を含むソケットを有する。
【0009】
この発明のゴルフシューズは、最小ショアA硬度が95の硬質ポリウレタンから製造された安定ポッドを採用する。これらポッドはアウトソールの底面から少なくとも6.3mm伸びる。多数の比較的硬い突起がアウトソールの底面から外側に伸びて牽引を増強する。
【0010】
前方基部および後方基部は、硬度が75から85ショアAの間である比較的薄い熱可塑性ポリウレタンから製造される。
【0011】
この発明の実施例では、前方基部および後方基部が個別の部品とされ、弧形支持土踏まず部とともにモールドされ、シューズが、中足骨領域の長手方向および横断方向に屈曲でき、これにより、ゴルファに改良された芝に対する柔軟性および牽引性ならびにバランスを実現し、とくにゴルファがゴルフショットを行うときにこの点が顕著となる。
【0012】
この発明の上述の側面および他の側面は特許請求の範囲に記載され以下実施例を用いて詳述される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に示すように、通常のゴルフシューズ10は、普通、アッパー12、アウトソール14、典型的には軽量のクッションのミッドソール16を含み、これがアッパー12をアウトソール14に連結する。ゴルフシューズ10は、クリート(滑り止め)40を具備して良く、これは金属または非金属であってよいけれども、この発明を検討する上では、これは非金属製のクリートのみを採用すると想定する。アッパー12は全体として通常の形状であり、適切なアッパー材料、例えば、革、または同様なものから製造される。開口15は、利用者の足を収容するためにアッパー12の中央近くに形成される。ミッドソール16は、装着者に対してクッションを実現し、エチレンビニルアセテートコポリマー(EVA)のような材料から製造される。ミッドソール16はアウトソール12の上方および周りに形成されてよいけれども、アウトソール12と別体に形成されて例えば接着剤により結合されてよい。ミッドソール16およびアウトソール12が一旦結合されるとアウトソール12はシューズ10の底のかなりの部分を構成する。アッパー12は、中敷き板および慣用的な手法を用いてミッドソール16にセメントまたは他の接着剤で固く取り付けられ、この手法は当業者に周知である。
【0014】
この発明の実施例は改良されたアウトソール14を具備し、これが図2〜6に示すように構築される。アウトソール14は比較的柔らかく屈曲性がある前方および後方基部18および20を含む。基部18、20の双方は予め定められた寸法および周囲形状の開口を具備する。開口22a、22b、22c、22d、22eは前方基部18に配置され、開口22fおよび22gが後方基部20に配置される。安定ポッド24a、24b、24c、24d、および24eは予め定められた寸法および構造を有し、対応する開口22a−22eへとモールドされ、他方、ポッド24fおよび24gは対応する開口22fおよび22gへモールドされる。弧形支持土踏まず部26は前方基部18および後方基部20を相互結合するように成型される。基部18および20は上面28および底面30を有し、底面30は使用中に芝生または地面に接触するように構成される。基部18、20の双方の底面30は複数の比較的硬い把持用耐磨耗突起42を含む。シューズ10の前方部分はトウ21として設計され、後方部分はヒール23として設計される。
【0015】
安定ポッド24の各々はソケット32を具備し、これが芝生把持用クリート40を着脱可能に結合するクリート受け口を収容する。クリート受け口は時計方向に45°回転させるだけで装着でき、反対方向に45°回転させて取り外すことができる。芝生把持クリート40は、とくにゴルファがゴルフショットを行うときにゴルファに大きな牽引および優れたバランスを与える。ポッドおよびクリートの数はシューズのスタイルに左右されるけれども、好ましくはシューズの各々に設けられるポッドの数は7〜9の間であり、さらに好ましくは図に示されるように7個であり、この場合、5個が前方基部18にあり2個が後方基部20にある。ほとんどのゴルフコースは現在ではコースのプレイにそれを要求するので、クリート40は好ましくは非金属製である。
【0016】
好ましい実施例において、前方基部18および後方基部20は屈曲性のプラスチック材料、例えば、台湾のURE−TECH社によりUtechllan UTY−75A−85Aの名称の元で製造されている熱可塑性ポリウレタンから製造して良く、それは、約75から85のショアAのデュロメータ値を有する。安定ポッド24a−gはURE−TECH社により製造されるポリウレタン材料でもあり、その硬度は少なくとも95Aである。弧形支持土踏まず部26は少なくとも95Aの硬度の硬質プラスチックから製造される。
【0017】
安定ポッド24a−gは、硬度が少なくとも95Aである、比較的硬い、耐磨耗材料から製造される。ポッドの外側周囲は、前方基部18方基部20の底面30から最小距離xが6.3mmで伸びる。ポッド24a−gは、図3に最も良く示されるように、外形寸法が異なり、離間されて、それらにより前方基部18が中足骨領域を横切って屈曲できるようにするだけでなくトウ21から土踏まず部26まで長さ方向に屈曲できるようになすようになっている。先に述べたように、各ポッドは取り外し可能に結合されたクリートを具備し、これが牽引手段を実現し、これは、各ポッドの底面から突出する多数の比較的硬い突起42により補完される。安定ポッド24a−gは、各ポッドの周囲がラグ(lug、突起)44を形成するように製造され、これがさらなる把持力および構造強度を実現する。
【0018】
ここに開示された発明は上述の目的を実現するように良好に計算されていることは明らかであるけれども、当業者が変形や実施例を実現できることは容易に理解できる。例えば、先に開示されたアウトソール14および他の特徴は、ゴルフシューズの他のタイプのシューズについて採用してよい。特許請求の範囲は、この発明の精神および範囲内に含まれるこのような変形例および実施例をすべてカバーするものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】アウトソールを具備するゴルフシューズの説明図である。
【図2】この発明のアウトソールの底面斜視図である。
【図3】この発明のアウトソールの底面図である。
【図4】図3のアウトソールの側面図である。
【図5】アウトソールの底面から見た分解図である。
【図6】アウトソールの上方から見た分解図である。
【符号の説明】
【0020】
10 ゴルフシューズ
12 アッパー
14 アウトソール
16 ミッドソール
18 前方基部
2 0後方基部
22a−22g 開口
24a−24g 安定ポッド
40 クリート
42 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーおよびアウトソールと、
上記アッパーを上記アウトソールに結合するミッドソールとを有し、
上記アウトソールは、
全体として柔らかく、屈曲可能な前方基部および後方基部であって、それぞれが複数の開口をその内側に有し、上記開口の各々が予め定められた周囲寸法および形状を有する上記前方基部および後方基部と、
複数の比較的硬い安定ポッドであって、各々の寸法および構造が対応する上記開口にモールドできるようになっている上記安定ポッドと、
上記ポッドの各々の内部においてクリートを取り外し可能に取り付ける手段と、
上記前方基部および後方基部にモールドされて上記前方基部および後方基部を連結する弧形支持土踏まず部とを有し、
芝に対する屈曲可能性および牽引性が大きく、ユーザに対して大きな安定性およびバランスを提供するゴルフシューズ。
【請求項2】
上記ポッドは95の最小ショアA硬度を有する請求項1記載のゴルフシューズ。
【請求項3】
上記ポッドは上記基部の底面から少なくとも6.3mm伸びる請求項1または2記載のゴルフシューズ。
【請求項4】
上記ポッドは、芝との接触のために外側に伸びる比較的硬い突起を多数含む請求項1〜3のいずれかに記載のゴルフシューズ。
【請求項5】
上記前方基部および後方基部は、硬度が75から85ショアAの間である比較的薄い熱可塑性ポリウレタンから製造される請求項1〜4のいずれかに記載のゴルフシューズ。
【請求項6】
上記前方基部および後方基部は、硬度が75ショアA以下の比較的薄い熱可塑性ポリウレタンから製造される請求項1〜4のいずれかに記載のゴルフシューズ。
【請求項7】
上記前方基部に上記ポッドが5個設けられ、上記後方基部に上記ポッドが2個設けられる請求項1〜6のいずれかに記載のゴルフシューズ。
【請求項8】
上記前方基部および上記後方基部は上記弧形支持土踏まず部によりモールドされ一体化される請求項1〜7のいずれかに記載のゴルフシューズ。
【請求項9】
全体として柔らかく、屈曲可能な前方基部および後方基部であって、それぞれが複数の開口をその内側に有し、上記開口の各々が予め定められた周囲寸法および形状を有する上記前方基部および後方基部と、
複数の比較的硬い安定ポッドであって、各々の寸法および構造が対応する開口にモールドできるようになっている上記安定ポッドと、
上記ポッドの各々の内部においてクリートを取り外し可能に取り付ける手段と、
上記前方基部および後方基部にモールドされて上記前方基部および後方基部を連結する弧形支持土踏まず部とを有し、
芝に対する屈曲可能性および牽引性が大きく、ユーザに対して大きな安定性およびバランスを提供するアウトソール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−11841(P2009−11841A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178932(P2008−178932)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY
【Fターム(参考)】