説明

サイドアンダーミラー装置

【課題】第2の反射鏡を見た際に、第3のミラーのちらつきによる目障り感を低減したサイドアンダーミラー装置を提供する。
【解決手段】サイドアンダーミラー装置12は、左前ドア28に設けられたドアミラー機構33のドアミラー本体を収納しているミラーハウジング68に車両11前方へ向けて設けられた第1のミラー72と、車両11の車室13内に設けられ、第1対象物Snからの入射光75を第1のミラー72で反射させた反射光76を運転手Dへ向けて反射(反射光77)させる第2のミラー56と、第2のミラー56の近傍、且つ車室13内に設けられ、第1のミラー72よりも車両11後方、且つ車両11側方下部にある第2対象物Stからの光(入射光78)を運転手Dへ向け反射(反射光81)させる第3のミラー57と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の死角にある対象物を視認するサイドアンダーミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サイドアンダーミラー装置には、ドアミラーのハウジングに設けられた第1の反射鏡とフロントピラーに設けられた第2の反射鏡によって、車両前側方の対象物を映し出す技術がある(例えば、特許文献1参照)。
また、車両の前ガラスとドアガラスとの間に配置されているウインド近傍に、且つ車室内に複数のミラーを配置して、これらの複数のミラーの曲率を略同一にすることによって、乗員が車両の側面下方の像を違和感なく把握することができるというものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)は、ドアミラーの下方前方を視認できるが、逆に、ドアミラーの下方や左前ドアの近くを視認することはできない。ドアミラーの下方や左前ドアの近くに形成される死角をより小さくすることが望まれていた。
【0004】
そこで、特許文献1の技術に特許文献2の技術を組み合わせることで、特許文献1で解消できない死角を小さくすることが考えられる。特許文献1の第2の反射鏡とは別のミラー(第3の反射鏡)を第2の反射鏡の近傍に配置することによって、第2の反射鏡では見難いドアミラー近傍の側方下部を映し出すことが考えられる。
【0005】
特許文献2は、乗員が車両の側面下方の像を把握することができるが、3個のミラーに映る像がほぼ同じ大きさになることから、複数のミラーが同時に視界に入った時に、本当に見たいミラー以外の別のミラーの像が目障りとなる。特に、車両が低速で移動している時は、別のミラーの像がちらついてみえるため、目障りがより顕著になる。
【0006】
すなわち、特許文献1のミラー(第2の反射鏡)は、ドアミラーよりも前方、例えば、左前輪の近くを見る場合に使用され、車両を縦列駐車させる際や障害物をよける際など、車両を車幅方向に寄せていく際に使用されることが多い。つまり、車両が低速で移動している時に使用され、そのときの像を映している。
【0007】
それに対し、第3の反射鏡は、ドアミラーよりも後方、かつドアミラー近傍の側方下部の対象部を映し、車両の停車時(駐車時)にドアウインドウよりも低い高さで、かつ車両側部の近くに置かれた対象物を視認するために使用されることが多い。つまり、第3の反射鏡は車両が停止している時に使用され、そのときの像を映している。
このように、特許文献1に特許文献2のミラー(第3の反射鏡)を採用すると、車両が低速で移動している時は、第2の反射鏡を見た際に、第3の反射鏡(第3のミラー)に映る像がちらついて見えるため、目障りになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−173246号公報
【特許文献2】特開2007−55316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ドアミラー(ドアミラー機構)の下方や下方より後方でかつドアミラー機構を取付けたドアの近くの視認を損なうことなく、第2の反射鏡を見た際に、第3のミラーのちらつきによる目障り感を低減したサイドアンダーミラー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両の側部に設けられたドアミラー機構のドアミラー本体を収納しているミラーハウジングに車両前方へ向けて設けられ、ドアミラー機構よりも車両前方、且つ車両側方下部にある対象物を映す第1のミラーと、第1のミラーよりも車両前方、且つ車両の車室内に設けられ、対象物からの入射光を第1のミラーで反射させた反射光を乗員へ向けて反射させる第2のミラーと、第2のミラーの近傍、且つ車室内に設けられ、第1のミラーよりも車両後方、且つ車両側方下部にある対象物からの光を乗員へ向け反射させる第3のミラーと、を備えたサイドアンダーミラー装置において、第3のミラーの曲率は、第2のミラーの曲率より大きいことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、車両の側部に設けられたドアミラー機構のドアミラー本体を収納しているミラーハウジングに車両前方へ向けて設けられ、ドアミラー機構よりも車両前方、且つ車両側方下部にある対象物を映す第1のミラーと、第1のミラーよりも車両前方、且つ車両の車室内に設けられ、対象物からの入射光を第1のミラーで反射させた反射光を乗員へ向けて反射させる第2のミラーと、第2のミラーの近傍、且つ車室内に設けられ、第1のミラーよりも車両後方、且つ車両側方下部にある対象物からの光を乗員へ向け反射させる第3のミラーと、を備えたサイドアンダーミラー装置において、第3のミラーの面積は、第2のミラーの面積より小さいことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、車両の車幅方向の長さを第2のミラーの幅、第3のミラーの幅とし、車両の上下方向の長さを第2のミラーの長さ、第3のミラーの長さとしたときに、第2のミラーの幅と第3のミラーの幅をほぼ同一とし、第3のミラーの長さは、第2のミラーの長さよりも短く設定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明では、第3のミラーは、第2のミラーよりも下向きに配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明では、第3のミラーは、第2のミラーよりも上方に配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明では、車両は、前ガラスと前ドアウインドガラスの間に配置されたサブウインドガラスの前縁に沿って、車両後方へ傾斜している傾斜柱部を備え、第2のミラーは、傾斜柱部の下端に設けられ、第3のミラーは、傾斜柱部に、且つ第2のミラーよりも上方に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、ドアミラー本体を収納しているミラーハウジングに車両前方へ向けて設けられた第1のミラーと、車両の車室内に設けられ、対象物からの入射光を第1のミラーで反射させた反射光を乗員へ向けて反射させる第2のミラーと、第2のミラーの近傍、且つ車室内に設けられ、第1のミラーよりも車両後方、且つ車両側方下部にある対象物からの光を乗員へ向け反射させる第3のミラーと、を備えたサイドアンダーミラー装置において、第3のミラーの曲率は、第2のミラーの曲率より大きいので、車両を低速で走行させているときに、第2のミラーを見た際に、第2のミラーに映る対象物の像に比べ、第3のミラーに映る像が小さくなる。従って、第3のミラーのちらつきによる目障り感を低減することができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、ドアミラー本体を収納しているミラーハウジングに車両前方へ向けて設けられた第1のミラーと、車両の車室内に設けられ、対象物からの入射光を第1のミラーで反射させた反射光を乗員へ向けて反射させる第2のミラーと、第2のミラーの近傍、且つ車室内に設けられ、第1のミラーよりも車両後方、且つ車両側方下部にある対象物からの光を乗員へ向け反射させる第3のミラーと、を備えたサイドアンダーミラー装置において、第3のミラーの面積は、第2のミラーの面積より小さいので、車両を低速で走行させているときに、第2のミラーを見た際に、運転者の視界を占める面積が第2のミラーよりも第3のミラーが小さくなり、第3のミラーのちらつきによる目障り感を低減することができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、第2のミラーの幅と第3のミラーの幅をほぼ同一とし、第3のミラーの長さは、第2のミラーの長さよりも短く設定されているので、第2のミラーによって見える車両から側方の長さ(範囲)と第3のミラーによって見える車両から側方の長さ(範囲)をほぼ同じにすることができ、窓から直接視認できない側方の範囲のうち、見られる距離(車両からの距離)をほぼ同じにすることができる。
【0019】
第3のミラーは、第1のミラーよりも車両後方、且つドアミラー本体によって見える範囲より車両前方の限られた範囲だけが見えればよいので、必要最低限の上下方向の長さに設定することが可能であり、長さを短くして第3のミラーの面積を第2のミラーの面積よりも小さくすることができる。
【0020】
請求項4に係る発明では、第3のミラーは、第2のミラーよりも下向きに配置されているので、第2のミラーよりも第3のミラーを視認し難くなり、目障り感を低減することができる。
【0021】
請求項5に係る発明では、第3のミラーは、第2のミラーよりも上方に配置されているので、車両の外側の下方近傍を見る第3のミラーは下向きになり、第3のミラーの目障り感を低減することができる。
車室内に配置した鏡を用いて車両の外側の下方近傍を見るために鏡を上方に配置するほど鏡の面が下を向くようになる。
すなわち、第2のミラーよりも第3のミラーを上方に配置することによって、第2のミラーのミラー面よりも第3のミラーのミラー面がより下向きになることから、第2のミラーを見ているときに第3のミラーのミラー面を視認し難くなり、目障り感を低減することができる。
【0022】
第3のミラーは、車両側方下部にある対象物を運転者に直接反射する鏡であり、車両を低速で前進させているときに映る景色は上から下に進む。
また、第2のミラーは、第1のミラーの反射光を反射することによって映し出す2回反射ミラーであるため、車両を低速で前進させているときに映る景色は下から上に進む。
よって、第2のミラーの上方に第3のミラーを配置すると、第2のミラーの上端(第2のミラーと第3のミラーとの境界)に向かって上からと下から景色が集まるように見えることから、運転者の視点を第2のミラーの上端側に誘導することができる。
これにより、低速前進時における車両前側方(例えば、右ハンドル車の左前輪近傍)の障害物をより早く発見することができ、障害物を巻き込む巻き込みを防止する効果が高まる。
【0023】
請求項6に係る発明では、サブウインドガラスの前縁に沿って、車両後方へ傾斜している傾斜柱部を備え、第2のミラーは、傾斜柱部の下端に設けられ、第3のミラーは、傾斜柱部に、且つ第2のミラーよりも上方に設けられているので、第2のミラーのミラー面をほぼ垂直に配置しても、外観上の違和感が少ないという利点がある。
また、第3のミラーが第2のミラーよりも上方の傾斜柱部に設けられるので、第3のミラーのミラー面を傾斜柱部の傾きに沿わせて自然と下向きにすることができ、外観上の違和感を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例に係るサイドアンダーミラー装置およびそれを採用した車両の側面図である。
【図2】実施例に係るサイドアンダーミラー装置およびそれを採用した車両の正面図である。
【図3】図1の3矢視図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】実施例に係るサイドアンダーミラー装置の視認可能範囲を示す側面図である。
【図6】サイドアンダーミラー装置を採用した車両の死角を示す平面図である。
【図7】サイドアンダーミラー装置の視認する機構を説明する図である。
【図8】図7の続きを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0026】
車両11は、図1、図2に示すように、実施例に係るサイドアンダーミラー装置12を採用している。
車両11は、図1〜図3に示すように、車室13と、車体14を有し、車体14は、車室13の前に設けたフロントボデー16と、車室13の側壁をなすサイドボデー17と、ルーフ18と、を備える。
【0027】
車両11は、右ハンドル車で、右に設けた運転席21と、前輪22と、後輪23と、フロントボデー16に開閉自在に組み付けられてエンジンルームをカバーしているフード24と、フロントグリル25と、前ガラス26と、サブウインドガラス27と、前ドア28と、前ドアガラス31と、前ドア28に取付けたドアミラー機構33、34と、を備える。
【0028】
フロントボデー16は、フェンダ36を有する。
サイドボデー17は、前ガラス26の一端(左端)38、他端(右端)41を支持している左右のフロントピラー42、43と、フロントピラー42、43に連なるルーフサイドレール44と、フロントピラー42、43の中央部45からルーフサイドレール44まで延ばしたサブピラー46と、を備える。
【0029】
フロントピラー42、43は、図1〜図4に示す通り、外面の意匠を形成している鋼製のフロントピラーアウタパネル48と、フロントピラーアウタパネル48に接合している鋼製のフロントピラーインナパネル51と、フロントピラーインナパネル51に接合している樹脂製のフロントピラー内装部材52と、を備える。
【0030】
フロントピラー内装部材52の車室内下端53には、ミラー取付け部54を形成し、ミラー取付け部54に第2のミラー56および第3のミラー57を取付けている。
フロントピラー42には、前ドア28を取付けている。
【0031】
前ドア28は、フロントピラー42に支持された前ドア本体部61と、前ドア本体部61に立設しているサッシュ部62と、前ドアガラス31と、を備える。
サッシュ部62の前サッシュ部63に近接させ、かつ、前ドア本体部61の上端64にドアミラー機構33を設けている。
【0032】
ドアミラー機構33は、前ドア本体部61に固定したハウジング支持部67と、ハウジング支持部67に取付けたミラーハウジング68と、ミラーハウジング68に取付けたドアミラー本体71と、第1のミラー72と、を備えている。なお、ドアミラー機構33はサイドアンダーミラー装置12に含まれる。
【0033】
サイドアンダーミラー装置12は、ドアミラー機構33による視認に加え、図5〜図7に示すように、フロントボデー16によって発生する横の死角B1にある第1対象物Snを視認し、さらに、前ドア(左前ドア)28によって発生する死角B2にある第2対象物Stを視認するものである。
【0034】
車両11では、図6に示す通り、車体14および前ドア(左前ドア)28によって死角B1、B2が点模様で示した範囲に形成される。この死角B1、B2のうち、ドアミラー機構33のドアミラー本体71で視認できる領域がドアミラー視認領域W1である。第2のミラー56で視認できる領域が視認領域W2、第3のミラー57で視認できる領域が視認領域W3である。
【0035】
次に、サイドアンダーミラー装置12の主要構成を図1〜図4で説明する。
サイドアンダーミラー装置12は、車両11の側部(前ドア(左前ドア)28)に設けられたドアミラー機構33のドアミラー本体71を収納しているミラーハウジング68に車両11前方(図1の矢印a1の方向)へ向けて設けられ、ドアミラー機構33よりも車両11前方、且つ車両11側方下部(後で説明する)にある対象物(第1対象物Sn、図7参照)を映す第1のミラー72を備える。
【0036】
「車両11側方」とは、車両11の左に設けたフェンダ36の側面が向いている方向(図2の矢印a2の方向)とする。言い換えると、フェンダ36の側面が向いている方向に死角が形成されているところ。
「車両11側方下部」とは、車両11の左に設けたフェンダ36の側面が向いている方向(矢印a2の方向)で、且つ、フェンダ36の側面の下方や左前輪22の近傍とする。
【0037】
また、サイドアンダーミラー装置12は、図7に示す通り、第1のミラー72よりも車両11前方、且つ車両11の車室13内に設けられ、対象物(第1対象物Sn)からの入射光75を第1のミラー72で反射させた反射光76を乗員(運転手D)へ向けて反射(反射光77)させる第2のミラー56と、第2のミラー56の近傍、且つ車室13内に設けられ、第1のミラー72よりも車両11後方、且つ車両11側方下部にある対象物(第2対象物St)からの光(入射光78)を乗員(運転手D)へ向け反射(反射光81)させる第3のミラー57と、を備える。
【0038】
第3のミラー57の曲率k2は、第2のミラー56の曲率k1より大きい。
第2のミラー56は、ほぼ平坦な凸面鏡であり、図4に示す縦断面の曲線の半径がr1である。半径r1は一定としたが、半径を滑らかに変化させてもよい。一方、図に示していないが横断面の曲線の半径はr1としたが、半径を滑らかに変化させてもよい。
第2のミラー56の曲率k1は、k1=1/r1とする。
【0039】
第3のミラー57は、凸面鏡であり、図4に示す縦断面の曲線の半径がr2である。半径r2は一定としたが、半径を滑らかに変化させてもよい。一方、図に示していないが横断面の曲線の半径はr2としたが、半径を滑らかに変化させてもよい。
第3のミラー57の曲率k2は、k2=1/r2とする。
【0040】
第3のミラー57の面積A2は、第2のミラー56の面積A1より小さい。
第2のミラー56の面積A1は、A1=H1×M1である(図4、図8参照)。
第3のミラー57の面積A2は、A2=H2×M2である(図4、図8参照)。
【0041】
車両11の車幅方向(図2のX軸方向)の長さを第2のミラー56の幅M1(図8)、第3のミラー57の幅M2とし、車両11の上下方向(図2のZ軸方向)の長さを第2のミラー56の長さH1(図8)、第3のミラー57の長さH2としたときに、第2のミラー56の幅M1と第3のミラー57の幅M2をほぼ同一とし、第3のミラー57の長さH2は、第2のミラー56の長さH1よりも短く設定されている。
【0042】
第3のミラー57は、第2のミラー56よりも下向きに配置されている(図4)。下向きの角度はαである。
また、第3のミラー57は、第2のミラー56よりも上方に配置されている。
【0043】
車両11は、前ガラス26と前ドアウインドガラス(前ドアガラス31)の間に配置されたサブウインドガラス27の前縁83に沿って、車両11後方へ傾斜している傾斜柱部(フロントピラー42)を備える。
なお、傾斜柱部は、サブウインドガラス27が車体14に取付けられている場合はフロントピラー42であり、サブウインドガラス27が前ドア28に取付けられている場合は前サッシュ部63または前サッシュ部63に沿って延びるフロントピラー42である。
【0044】
第2のミラー56は、傾斜柱部(フロントピラー)42の下端(車室内下端53)に設けられている。
第3のミラー57は、傾斜柱部(フロントピラー)42に、且つ第2のミラー56よりも上方に設けられている。
【0045】
次に、サイドアンダーミラー装置12を詳しく説明していく。
サイドアンダーミラー装置12は、既に説明した第1のミラー72と、第2のミラー56と、第3のミラー57と、これらの第2のミラー56および第3のミラー57を支持している車内ミラーベース部85と、を備えている。
【0046】
またサイドアンダーミラー装置12は、前ドア28に設けたドアミラー機構33を含み、ミラーハウジング68を有する。
ミラーハウジング68は、車両11の前方へ面を向けた前面曲面部88を所望の半径で滑らかに形成し、前面曲面部88に連ねて前ドア28へ面を向けたドア側曲面部91が形成されている。また、前面曲面部88に連ねて外方へ面を向けた外方曲面部92が形成されている。
そして、前面曲面部88に凹部が形成され、凹部に第1のミラー72が嵌って、例えば、接着剤で固定されている。
【0047】
第1のミラー72は、ガラス製の凸面鏡であり、第1対象物Snからの光(入射光75)を第2のミラー56へ向け反射させる。つまり第2のミラー56へ向かう反射光を形成する。
なお、第1のミラー72は、ガラスを用いたものであるが、ガラス以外でもよく、第2のミラー56へ向かう反射光76を形成するものであれば、例えば、凹部の底面を鏡面に形成したものでもよい。
【0048】
第2のミラー56は、図3、図4に示す通り、ガラス製でほぼ平坦な凸面鏡であり、第1のミラー72からの光(入射光)76を乗員(運転手)Dへ向け反射させる。つまり乗員(運転手)Dへ向かう反射光77を形成する。
そして、地面から第2のミラー56の下縁までの高さをサブウインドガラス27の下縁までの高さとほぼ一致させている(図3)。
一方、第2のミラー56の上縁には第3のミラー57の下縁が近接している。
【0049】
第3のミラー57は、ガラス製の凸面鏡であり、左前ドア28の外側にある第2対象物Stを見るもので、左前ドア28の外側へ向け、且つ左前ドア28近傍の地面へ向いている。そして、図4に示す通り、第2のミラー56より車両11後方へ距離Eだけ離して配置され、車両11側面視(図4の視点)、ほぼ垂直な第2のミラー56に対し、角度αだけ倒れて下を向いて車内ミラーベース部85で固定されている。
【0050】
第3のミラー57の高さH2は、第2のミラー56の高さH1より低く、高さH1の40%程度である。
なお、第3のミラー57は、固定されているが、第3のミラー57の向きを調節する向き調節機構を用いて回動自在に車内ミラーベース部85に取付けてもよい。
【0051】
車内ミラーベース部85は、フロントピラー42のミラー取付け部54に取付けられるミラーベース本体94と、ミラーベース本体94をフロントピラー42の内方(矢印a3の方向)へ押し込んだ第2のミラー取付け凹部95および第3のミラー取付け凹部96と、第2のミラー取付け凹部95の第1奥壁部97にボルト98で取付けられた第1ミラー接合部材101と、第3のミラー取付け凹部96の第2奥壁部102にボルト98で取付けられた第2ミラー接合部材103と、を備える。
【0052】
第1奥壁部97は、第2のミラー56と平行に、平坦に形成されている。
第2奥壁部102は、下方の第2のミラー56の延長と平行に、平坦に形成されている。
【0053】
第1ミラー接合部材101は、第2のミラー56の裏面に密着して接合するミラー接合部105が形成され、ミラー接合部105に締結ボス部106が複数形成されている。そして、ボルト98に対応しためねじを形成した締結ボス部106の先端面107を第1奥壁部97にボルト98の締め付け力によって密着させている。
【0054】
第2ミラー接合部材103は、第3のミラー57の裏面に密着して接合するミラー接合部115が形成され、ミラー接合部115に締結ボス部116が複数形成されている。そして、ボルト98に対応しためねじを形成した締結ボス部116の先端面117を第2奥壁部102にボルト98の締め付け力によって密着させている。
また、第2奥壁部102をフロントピラー42のフロントピラー内装部材52のミラー取付け部54に密着させ、ミラー取付け部54および第2奥壁部102にボルト98を貫通させて締結ボス部116にねじ込んでいる。
【0055】
次に、サイドアンダーミラー装置12の作用を説明する。
サイドアンダーミラー装置12では、ドアミラー機構33のドアミラー本体71は、車両11の後方を視認するものである。
【0056】
また、サイドアンダーミラー装置12は、既に説明したように、左前輪22に近接した第1対象物Snを視認できるようにするものである(図8)。
具体的には、図7に示す通り、第1のミラー72が、第1対象物Snからの光(入射光75)を第2のミラー56へ向け反射(反射光76)させると、その光(反射光76)を第2のミラー56が運転手Dへ向け反射(反射光77)させるので、運転手Dが第2のミラー56を見ると(図8参照)、運転手Dは、左前輪22の近くにいる第1対象物Snを視認することができる。
【0057】
なお、第1対象物Snは、死角B1にいる人(子供)や物である。
図8に示している第2のミラー56に映る像は、図6、図7に示した位置にいる第1対象物Snである。第2のミラー56は視認領域W2内にあるものを映す。
【0058】
さらに、サイドアンダーミラー装置12は、既に説明したように、前ドア(左前ドア)28に近接した第2対象物Stを視認できるようにするものである(図8)。
具体的には、図7に示す通り、第3のミラー57は、第2対象物Stからの光(入射光78)を運転手Dへ向け反射(反射光81)させるので、運転手Dが第3のミラー57を矢印a4のように見ると(図8参照)、左前ドア28の近くにある第2対象物Stを視認することができる。
【0059】
なお、第2対象物Stは、死角にいる人(子供)や物である。
図8に示している第3のミラー57に映る像は、図6、図7に示した位置にいる第2対象物Stである。第3のミラー57は視認領域W3内にあるものを映す。
【0060】
加えて、サイドアンダーミラー装置12では、車両11を低速で走行させているときに、第2のミラー56を見た際に、第2のミラー56に映る第1対象物Snの像に比べ、第3のミラー57に映る像が小さくなる。従って、第3のミラー57のちらつきによる目障り感を低減することができる。
【0061】
より詳しくは、車両11を低速で走行させていると、まず、視認領域W2内の第1対象物Snが第2のミラー56に映り、引き続いて、視認領域W3内に入る視認領域W2が第3のミラー57に映る。そのとき、第3のミラー57に映る第1対象物Snの像は、第2のミラー56に映っていた第1対象物Snの像に比べ、小さくなる。
【0062】
その上、サイドアンダーミラー装置12では、図6に示す通り、第2のミラー56によって見える車両11から側方の長さG1(範囲)と第3のミラー57によって見える車両11から側方の長さG2(範囲)をほぼ同じにすることができ、前ドア(左前ドア)28の窓から直接視認できない側方の範囲(死角B1、B2)のうち、見られる距離(長さG1、G2)をほぼ同じにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のサイドアンダーミラー装置は、自動車に好適である。
【符号の説明】
【0064】
11…車両、12…サイドアンダーミラー装置、13…車室、26…前ガラス、27…サブウインドガラス、28…側部(左前ドア)、31…前ドアウインドガラス(前ドアガラス)、33…ドアミラー機構、42…傾斜柱部(フロントピラー)、53…傾斜柱部の下端(車室内下端)、56…第2のミラー、57…第3のミラー、68…ミラーハウジング、71…ドアミラー本体、72…第1のミラー、75…対象物(第1対象物)からの入射光、76…反射光、83…サブウインドガラスの前縁、A1…第2のミラーの面積、A2…第3のミラーの面積、D…乗員(運転手)、H1…第2のミラーの長さ、H2…第3のミラーの長さ、k1…第2のミラーの曲率、k2…第3のミラーの曲率、M1…第2のミラーの幅、M2…第3のミラーの幅、Sn…車両側方下部にある対象物(第1対象物)、St…第1のミラーよりも車両後方にある対象物(第2対象物)、α…第3のミラーの下向きの角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側部に設けられたドアミラー機構のドアミラー本体を収納しているミラーハウジングに車両前方へ向けて設けられ、前記ドアミラー機構よりも前記車両前方、且つ車両側方下部にある対象物を映す第1のミラーと、
前記第1のミラーよりも前記車両前方、且つ前記車両の車室内に設けられ、前記対象物からの入射光を前記第1のミラーで反射させた反射光を乗員へ向けて反射させる第2のミラーと、
前記第2のミラーの近傍、且つ前記車室内に設けられ、前記第1のミラーよりも車両後方、且つ車両側方下部にある対象物からの光を前記乗員へ向け反射させる第3のミラーと、を備えたサイドアンダーミラー装置において、
前記第3のミラーの曲率は、前記第2のミラーの曲率より大きいことを特徴とするサイドアンダーミラー装置。
【請求項2】
車両の側部に設けられたドアミラー機構のドアミラー本体を収納しているミラーハウジングに車両前方へ向けて設けられ、前記ドアミラー機構よりも前記車両前方、且つ車両側方下部にある対象物を映す第1のミラーと、
前記第1のミラーよりも前記車両前方、且つ前記車両の車室内に設けられ、前記対象物からの入射光を前記第1のミラーで反射させた反射光を乗員へ向けて反射させる第2のミラーと、
前記第2のミラーの近傍、且つ前記車室内に設けられ、前記第1のミラーよりも車両後方、且つ車両側方下部にある対象物からの光を前記乗員へ向け反射させる第3のミラーと、を備えたサイドアンダーミラー装置において、
前記第3のミラーの面積は、前記第2のミラーの面積より小さいことを特徴とするサイドアンダーミラー装置。
【請求項3】
前記車両の車幅方向の長さを前記第2のミラーの幅、前記第3のミラーの幅とし、前記車両の上下方向の長さを前記第2のミラーの長さ、前記第3のミラーの長さとしたときに、
前記第2のミラーの幅と前記第3のミラーの幅をほぼ同一とし、
前記第3のミラーの長さは、前記第2のミラーの長さよりも短く設定されていることを特徴とする請求項2記載のサイドアンダーミラー装置。
【請求項4】
前記第3のミラーは、前記第2のミラーよりも下向きに配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のサイドアンダーミラー装置。
【請求項5】
前記第3のミラーは、前記第2のミラーよりも上方に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のサイドアンダーミラー装置。
【請求項6】
前記車両は、前ガラスと前ドアウインドガラスの間に配置されたサブウインドガラスの前縁に沿って、車両後方へ傾斜している傾斜柱部を備え、
前記第2のミラーは、前記傾斜柱部の下端に設けられ、
前記第3のミラーは、前記傾斜柱部に、且つ前記第2のミラーよりも上方に設けられていることを特徴とする請求項4又は請求項5記載のサイドアンダーミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−47050(P2013−47050A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185998(P2011−185998)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】