説明

サーボレギュレータ

【課題】サーボレギュレータの制御特性に生じるヒステリシスを低減する。
【解決手段】制御スプール40、50と同軸上に摺動可能に支持されるスプリングホルダ46、56と、このスプリングホルダ46、56と各制御スプール40、50との間に圧縮して介装されるフィードバックスプリングと、この各フィードバックスプリングに抗して各制御スプール40、50を軸方向に駆動する2つの比例ソレノイド2、3と、サーボピストン30が軸方向に移動するのに伴って各スプリングホルダ46、56を軸方向に移動する1つのフィードバックリンク90とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動油圧によってサーボピストンが軸方向に移動するサーボレギュレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば建設機械や作業機械に設けられる可変容量形の斜板式ピストンポンプは、ピストンポンプから吐出される油圧を制御するため、サーボレギュレータを介してピストンポンプの斜板を傾転させるようになっている。
【0003】
この種のサーボレギュレータは、斜板の傾転角を制御する方法として、斜板の動きを機械的にフィードバックするメカニカルフィードバック制御方法と、ポテンショメータ等によって検出される斜板の傾転角を目標値に近づける電気的なフィードバック制御方法とがある。
【0004】
車両の走行モータに作動油を給排する静油圧式無段変速機(HST)に使われるピストンポンプには、信頼性の高いメカニカルフィードバック制御方法が多く用いられている。
【0005】
この種のサーボレギュレータとして、特許文献1には、ピストンポンプの斜板を2方向に傾転させ、ピストンポンプの押しのけ容積と吐出方向が変えられるものが開示されている。
【0006】
このサーボレギュレータは、1本のパイロットスプールの両端部に2つの比例ソレノイドがそれぞれ連結され、1本の制御スプールの両端部(ピストン)によって2つの圧力室が画成され、パイロットスプールを介して各圧力室に導かれるパイロット圧力により、制御スプールを作動させている。メカニカルフィードバック制御を行う機構として、制御スプールの外周から径方向に突出するピンと、このピンに係合する対のリンクと、各リンクの間に介装されるスプリングとを備え、これらを介してサーボピストンの動きが制御スプールに伝えられる。
【0007】
また、他の機構として、制御スプールの両端部に推力を付与する2つの比例ソレノイドが設けられているものもある。
【0008】
いずれの方式にせよ、制御スプールはサーボピストンの軸方向の位置に応じたスプリングの付勢力と比例ソレノイドの励磁力とが釣り合う位置に移動し、サーボピストンの軸方向の位置を制御し、予め設定された斜板の傾転角が得られるようになっている。
【特許文献1】USP4,756,157
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来のサーボレギュレータにあっては、リンクが制御スプールの外周から突出したピンに駆動力を付与する構造のため、制御スプールに曲げ荷重が働き、制御スプールが円滑に摺動することができず、サーボレギュレータの制御特性に生じるヒステリシスが大きくなるという問題点があった。
【0010】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、サーボレギュレータの制御特性に生じるヒステリシスを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、作動油圧によってサーボピストンが軸方向に移動するサーボレギュレータであって、サーボピストンを移動させる油圧が導かれる油圧室と、この油圧室に導かれる油圧をその軸方向の位置に応じて調節する制御スプールと、この制御スプールと同軸上に摺動可能に支持されるスプリングホルダと、このスプリングホルダと制御スプールとの間に圧縮して介装されるフィードバックスプリングと、このフィードバックスプリングに抗して制御スプールを軸方向に駆動する比例ソレノイドと、サーボピストンが軸方向に移動するのに伴ってスプリングホルダを押すことによってフィードバックスプリングを収縮させるフィードバックリンクとを備え、サーボピストンの軸方向の位置に応じてフィードバックスプリングの付勢力と比例ソレノイドの励磁力とが釣り合う位置に制御スプールが移動する構成としたことを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、フィードバックリンクがスプリングホルダを軸方向に押して移動させ、フィードバックスプリングを伸縮させることにより、フィードバックリンクからの力が制御スプールに直接働かないため、制御スプールに曲げ荷重が働くことがなく、制御スプールのフリクションが低減される。これにより、制御スプールの摺動が円滑に行われ、制御スプールによってサーボピストンに導かれる作動油圧の制御が的確に行われ、サーボレギュレータの制御特性に生じるヒステリシスを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に示すポンプ10は、例えば車両の走行モータに作動油を給排する静油圧式無段変速機(HST)に用いられる。
【0015】
図1は、サーボレギュレータ20及びポンプ10の横断面図であり、図2は、サーボレギュレータ20の縦断面図であり、図1は、図2のA−A線に沿う断面図である。
【0016】
可変容量斜板式のポンプ10は、ポンプハウジング11に一対のトラニオン軸13によって傾転可能に支持された斜板12を備え、シリンダブロック14が斜板12に対して回転駆動される。シリンダブロック14には図示しないシャフトを介してエンジンの回転が伝達される。
【0017】
シリンダブロック14には複数のシリンダが周方向に並んで設けられ、各シリンダにピストンが摺動可能に介装される。各ピストンと各シリンダの間に容積室が画成され、シリンダブロック14が回転するのに伴って各容積室が吸込ポートと吐出ポートとに交互に連通する。
【0018】
シリンダブロック14の1回転につき、各ピストンがシリンダを1回往復動する。ピストンとシリンダ間の容積室が拡張する吸込行程では、作動油が吸込ポートを通って容積室に吸込まれる。容積室が収縮する吐出行程では、容積室から作動油が吐出ポートを通って吐出される。
【0019】
シリンダブロック14の回転軸Oに対する斜板12の傾転角度が変えられることによりポンプ10の押しのけ容積が変化する。こうしてポンプ10の作動油吐出量が増減することにより、走行モータの回転速度が変えられる。
【0020】
シリンダブロック14の回転軸Oに対して斜板12が直交する傾転角度が0°となる中立位置にあると、ポンプ10の作動油吐出量が0となり、走行モータの回転が停止される。
【0021】
ポンプ10は、二方向吐出式のものであり、シリンダブロック14の回転軸Oに対する斜板12の傾転方向を切換えることにより作動油の吸込みと吐出が行われるポートが切換えられる。こうしてポンプ10の作動油吐出方向が切換えられることにより、走行モータの回転方向が切換えられ、車両の前進と後進が切換えられる。
【0022】
サーボレギュレータ20は、ポンプ10の作動油吐出量と作動油吐出方向を図示しないコントローラから出力される駆動電流に比例する力を発生させる。
【0023】
図2に示すように、サーボレギュレータ20は、作動油圧により斜板12を傾転駆動するサーボピストン30と、このサーボピストン30に導かれる作動油圧を調節する対の制御スプール40、50と、各制御スプール40、50を駆動電流によって変位させる比例ソレノイド2、3と、サーボピストン30の変位を各制御スプール40、50に伝達するフィードバックリンク90とを備える。
【0024】
サーボピストン30の変位をポンプ10の斜板12に伝える伝達機構として、サーボピストン30に係合するスライドメタル22と、このスライドメタル22の変位によって斜板12を回動する操作アーム23とを備える。
【0025】
操作アーム23は、その基端部が斜板12のトラニオン軸13に固定して連結される。これにより、操作アーム23が斜板12と共に回動する。
【0026】
スライドメタル22は、操作アーム23の先端部にピン24を介して回動可能に連結され、サーボピストン30の中央に形成される環状の凹部31に係合する。これにより、サーボピストン30が移動するのに伴って、スライドメタル22がサーボピストン30と共に移動し、操作アーム23がスライドメタル22と共に回動する。
【0027】
図2はサーボピストン30が中立位置にある状態を示しており、この中立状態において、斜板12は傾転角度が0°となる中立位置にある。これにより、ポンプ10の吐出量が零となり、走行モータは回転駆動されない。
【0028】
サーボピストン30が中立位置から図2において左方向に移動すると、スライドメタル22がサーボピストン30と共に左方向に変位するのに伴って、操作アーム23が左まわり方向に回動し、斜板12が一方に傾転する。これにより、走行モータが正転して車両を前進させる。
【0029】
サーボピストン30が中立位置から図2において右方向に移動すると、スライドメタル22がサーボピストン30と共に右方向に変位するのに伴って、操作アーム23が右まわり方向に回動し、斜板12が他方に傾転する。これにより、走行モータが逆転して車両を後進させる。
【0030】
サーボレギュレータ20のケーシング25は、サーボピストン30が摺動可能に介装されるサーボシリンダ26が形成され、このサーボシリンダ26の両端を閉塞するカバー27、28が締結される。このサーボシリンダ26にはサーボピストン30と各カバー27、28の間に油圧室32、33がそれぞれ画成される。
【0031】
サーボピストン30を中立位置に保持するように付勢する2本のリターンスプリング34、35が設けられる。一方のカバー27にロッド36が締結され、このロッド36に対の第一、第二リテーナ37、38が摺動可能に嵌合し、この第一、第二リテーナ37、38間に各リターンスプリング34、35が圧縮して介装される。
【0032】
図2に示すように、サーボピストン30が中立位置にあるとき、第一リテーナ37はストッパーリング40に当接するとともに、第二リテーナ38はサーボピストン30のストッパー面39に当接する。
【0033】
第一、第二リテーナ37、38の間隔は、ストッパーリング40とストッパー面39の間隔と略等しくなるように調整され、サーボピストン30のガタツキがでないようにする。
【0034】
サーボピストン30の中立位置調整は、カバー27に対するロッド36の締結位置を調整することによって行われる。
【0035】
サーボピストン30が中立位置から図2において左方向に移動すると、第二リテーナ38がロッド36に対して摺動してストッパーリング40から離れることによって、リターンスプリング34、35の付勢力がサーボピストン30に対して右方向のみに働き、サーボピストン30が中立位置に戻される力となる。
【0036】
一方、サーボピストン30が中立位置から図2において右方向に移動すると、第一リテーナ37がロッド36に対して摺動してストッパー面39から離れることによって、リターンスプリング34、35を圧縮してサーボピストン30を図2において左方向のみに付勢し、サーボピストン30が中立位置に戻される力となる。
【0037】
ケーシング25に形成された穴にスリーブ60、70が圧入して介装され、このスリーブ60、70に各制御スプール40、50が摺動可能に挿入される。円筒状のスリーブ60、70は互いに同軸上に配置される。
【0038】
なお、これに限らず、各制御スプール40、50がケーシング25に形成された穴に直接に挿入される構造としてもよい。
【0039】
フィードバックリンク90は、ピン91を介してケーシング25に回動可能に連結される。これにより、フィードバックリンク90は、ピン91の中心点e(図4参照)を中心として回動するように支持される。
【0040】
操作アーム23にはピン29が固定され、フィードバックリンク90の基端部にこのピン29に係合する凹部92が形成される。これにより、操作アーム23が斜板12と共に回動すると、ピン29を介してフィードバックリンク90が同方向に回動するようになっている。
【0041】
フィードバックリンク90の動きを各制御スプール40、50に伝えるため、フィードバックリンク90の回動先端部と各制御スプール40、50との間に、各フィードバックスプリング45、55と各スプリングホルダ46、56とがそれぞれ介装される。
【0042】
ケーシング25に穴47、57が形成され、この各穴47、57にスプリングホルダ46、56が摺動可能に挿入される。
【0043】
各穴47、57は、図4に示すように、同一の中心線c上に形成され、各スプリングホルダ46、56が同一軸上に配置される。
【0044】
各スプリングホルダ46、56は、有底円筒状に形成され、その内側に各フィードバックスプリング45、55の端部が収容される。
【0045】
各スプリングホルダ46、56はフィードバックリンク90に対峙する端面49、59を有し、各端面49、59から膨出した凸面48、58を有する。各端面49、59と各凸面48、58は中心線cと直交する平面状に形成される。
【0046】
フィードバックリンク90の回動先端部に各スプリングホルダ46、56に係合するカム部93が形成される。
【0047】
カム部93は、フィードバックリンク90の回動先端部に円盤状に形成され、各スプリングホルダ46、56の凸面48、58に当接する部位が点dを中心とする円筒面状に形成される。これにより、カム部93は、各スプリングホルダ46、56の凸面48、58に線状に当接し、カム部93及び各凸面48、58の磨耗を抑えられる。
【0048】
なお、これに限らず、カム部93は、各スプリングホルダ46、56の凸面48、58に当接する部位を点dを中心とする球面状に形成してもよい。この場合、カム部93は、各スプリングホルダ46、56の凸面48、58に点状に当接する。
【0049】
図4に示すように、カム部93は点dを中心とする円弧状の断面形を持ち、このカム部93の中心点dはフィードバックリンク90がピン91を中心点eに回動するのに伴って各スプリングホルダ46、56の中心線cと交差するように配置される。
【0050】
図4に実線で示すように、フィードバックリンク90が中立位置にある状態において、カム部93の中心点dは各スプリングホルダ46、56の中心線cより距離aだけ図4において下方に位置する。
【0051】
図4に2点鎖線で示すように、フィードバックリンク90が最大ストロークにて回動する状態(斜板12の最大傾転時)において、カム部93の中心点dは各スプリングホルダ46、56の中心線cより距離bだけ図4において上方に位置する。
【0052】
上記の距離aと距離bとが略等しくなるように各部の寸法を設定し、フィードバックリンク90が各スプリングホルダ46、56を移動させるとき、カム部93は各スプリングホルダ46、56の凸面48、58の中央部に摺接する構成とする。
【0053】
これにより、各スプリングホルダ46、56に働く曲げ荷重を小さくし、各スプリングホルダ46、56がケーシング25の各穴47、57に摺接する際に生じるフリクションを低減することができる。
【0054】
図1に示すように、ケーシング25にはストッパーピン97が固定して取り付けられ、このストッパーピン97は各スプリングホルダ46、56の間に設けられる。このストッパーピン97が各スプリングホルダ46、56の端面49、59に当接することによって、各スプリングホルダ46、56のストロークが規制され、各スプリングホルダ46、56がフィードバックリンク90の中立位置を超えて移動しないようになっている。
【0055】
図4に実線で示すように、フィードバックリンク90が中立位置にある状態において、各スプリングホルダ46、56の端面49、59がストッパーピン97に当接するとともに、各スプリングホルダ46、56の凸面48、58がカム部93に当接する。
【0056】
図4に2点鎖線で示すように、フィードバックリンク90が一方に回動するのに伴って、スプリングホルダ56の端面59がストッパーピン97から離れるとともに、カム部93がスプリングホルダ46の凸面48から離れる。
【0057】
逆に、フィードバックリンク90が他方に回動するのに伴って、スプリングホルダ46の端面49がストッパーピン97から離れるとともに、カム部93がスプリングホルダ56の凸面58から離れる。
【0058】
各制御スプール40、50の基端部は各比例ソレノイド2、3のプランジャ9に当接する。各比例ソレノイド2、3は図示しないコントローラからリード線6、7を介して送られる電流によって生じる励磁力により、プランジャ9が各制御スプール40、50を各フィードバックスプリング45、55に抗して移動させる。
【0059】
サーボピストン30を駆動する油圧源として、油圧源ポンプ4が設けられる。この油圧源ポンプ4の吐出圧が各制御スプール40、50によってサーボピストン30の各油圧室32、33に選択的に導かれることにより、サーボピストン30が各リターンスプリング34、35に抗して移動するようになっている。
【0060】
各制御スプール40、50は、各油圧室32、33に油圧源ポンプ4の吐出圧を導く作動ポジションと、各油圧室32、33にタンク5のドレン圧を導くドレンポジションと、各油圧室32、33を閉塞する閉塞ポジションとに切換えられる。
【0061】
図3に示すように、各スリーブ60、70は、油圧源ポンプ4に連通するポート61、71と、各油圧室32、33に連通するポート62、72と、タンク5に連通するポート63、73とを有する。
【0062】
各制御スプール40、50は、それぞれの外周面に対して環状に窪むグルーブ41、51を有する。
【0063】
各グルーブ41、51は、作動ポジションにて各ポート61、71と各ポート62、72とを連通して油圧源ポンプ4の吐出圧を各油圧室32、33に導き、ドレンポジションにて各ポート61、71と各ポート63、73とを連通してタンク5のドレン圧を各油圧室32、33に導く。
【0064】
以上のように構成されて、サーボレギュレータ20の動作について説明する。
【0065】
車両の走行停止時、各比例ソレノイド2、3が非通電状態にあり、各比例ソレノイド2、3のプランジャ9の推力は零となる。
【0066】
これにより、図2、図3に示すように、各制御スプール40、50がフィードバックスプリング45、55に押され、ドレンポジションに保持される。
【0067】
これにより、各油圧室32、33にタンク5のドレン圧が導かれ、サーボピストン30がリターンスプリング34、35の付勢力によってストッパーピン97に当接する中立位置に保持され、斜板12の傾転角度が0°となる中立位置に保持されるとともに、フィードバックリンク90が各スプリングホルダ46、56の間に挟まれる中立位置に保持される。
【0068】
車両の前進時、一方の比例ソレノイド3が通電され、制御スプール50が比例ソレノイド3のプランジャ9に押されて作動ポジションに切換わる。
【0069】
これにより、油圧室33に油圧源ポンプ4の吐出圧が導かれ、サーボピストン30がリターンスプリング34、35の付勢力に抗して中立位置から図2において左方向に移動し、斜板12が傾転するとともに、フィードバックリンク90が中立位置から図2において左まわり方向に回動し、図4に2点鎖線で示す位置となる。
【0070】
こうして、フィードバックリンク90が回動するのに伴って、カム部93がスプリングホルダ56を図2において右方向に移動してフィードバックスプリング55を圧縮する。やがて、フィードバックスプリング55の付勢力と比例ソレノイド3の励磁力が釣り合うことにより、各制御スプール50が油圧室33を閉塞する閉塞ポジションに切換えられ、サーボピストン30の移動が停止される。
【0071】
車両の後進時、他方の比例ソレノイド2が通電され、制御スプール40が比例ソレノイド2のプランジャ9に押されて作動ポジションに切換わる。
【0072】
これにより、油圧室32に油圧源ポンプ4の吐出圧が導かれ、サーボピストン30がリターンスプリング34、35の付勢力に抗して中立位置から図2において右方向に移動し、斜板12が逆方向に傾転するとともに、フィードバックリンク90が中立位置から図2において右まわり方向に回動する。
【0073】
こうして、フィードバックリンク90が回動するのに伴って、カム部93がスプリングホルダ46を図2において左方向に移動してフィードバックスプリング45を圧縮する。やがて、フィードバックスプリング45の付勢力と比例ソレノイド2の励磁力が釣り合うことにより、制御スプール40が油圧室32を閉塞する閉塞ポジションに切換えられ、サーボピストン30の移動が停止される。
【0074】
このようにして、サーボレギュレータ20は、各比例ソレノイド2、3の駆動電流によってサーボピストン30の移動方向と停止位置とが変えられ、車両の前進、後進を切換えるとともに、車両の走行速度を調節する。
【0075】
以上のように、ポンプ10は2方向吐出タイプのものであり、かつサーボレギュレータ20はサーボピストン30が軸方向について中立位置から両方向に移動するものであるが、これに限らず、ポンプ10を1方向吐出タイプのものとし、かつサーボピストン30が軸方向について中立位置から一方向のみに移動する構成としてもよい。その場合、例えば、サーボレギュレータ20に設けられる油圧室33、制御スプール50、フィードバックスプリング55、スプリングホルダ56等が廃止される。
【0076】
本実施形態では、作動油圧によってサーボピストン30が軸方向に移動するサーボレギュレータ20であって、サーボピストン30を移動させる油圧が導かれる油圧室32と、この油圧室32に導かれる油圧をその軸方向の位置に応じて調節する制御スプール40と、この制御スプール40と同軸上に摺動可能に支持されるスプリングホルダ46と、このスプリングホルダ46と制御スプール40との間に圧縮して介装されるフィードバックスプリング45と、このフィードバックスプリング45に抗して制御スプール40を軸方向に駆動する比例ソレノイド2と、サーボピストン30が軸方向に移動するのに伴ってスプリングホルダ46を押すことによってフィードバックスプリング45を収縮させるフィードバックリンク90とを備え、サーボピストン30の軸方向の位置に応じてフィードバックスプリング45の付勢力と比例ソレノイド2の励磁力とが釣り合う位置に制御スプール40が移動する構成としたため、フィードバックリンク90がスプリングホルダ46を軸方向に移動してフィードバックスプリング45を伸縮させることにより、フィードバックリンク90からの力が制御スプール40に直接働かないため、制御スプール40に働く曲げ荷重が働くことがなく、制御スプール40のフリクションが低減される。こうして、制御スプール40の摺動が円滑に行われることにより、制御スプール40を介して調節される作動油圧によってサーボピストン30の移動が的確に制御され、サーボレギュレータ20の制御特性に生じるヒステリシスを低減することができる。
【0077】
本実施形態では、サーボピストン30が軸方向に移動するのに伴ってフィードバックリンク90が回動する構成とし、フィードバックリンク90の回動先端部にスプリングホルダ46の端面48を押すカム部93を形成したため、フィードバックリンク90が回動して各スプリングホルダ46を移動するとき、カム部93がスプリングホルダ46の端面48に摺接して押し、スプリング45を介して制御スプール40が押されることにより、制御スプール40に働く曲げ荷重を小さくし、制御スプール40のフリクションが低減される。こうして、制御スプール40の摺動が円滑に行われることにより、サーボレギュレータ20の制御特性に生じるヒステリシスを低減することができる。
【0078】
本実施形態では、カム部93は点dを中心とする円弧状の断面形を持ち、フィードバックリンク90が回動するのに伴ってカム部93の中心点dがスプリングホルダ46の中心線cと交差するように配置したため、カム部93がスプリングホルダ46の中心線cに沿ってスプリングホルダ46を押すことにより、偏心量を小さくでき、スプリングホルダ46に働く曲げ荷重を小さくし、スプリングホルダ46のフリクションが低減される。こうして、スプリングホルダ46の摺動が円滑に行われることにより、サーボレギュレータ20の制御特性に生じるヒステリシスを低減することができる。
【0079】
本実施形態では、サーボピストン30を軸方向について中立位置から両方向に移動させる油圧が導かれる2つの油圧室32、33と、各油圧室32、33に導かれる油圧をそれぞれの軸方向の位置に応じて調節する2つの制御スプール40、50と、この各制御スプール40、50と同軸上に摺動可能に支持される2つのスプリングホルダ46、56と、この各スプリングホルダ46、56と各制御スプール40、50との間に圧縮して介装される2つのフィードバックスプリング45、55と、この各フィードバックスプリング45、55に抗して各制御スプール40、50を軸方向に駆動する2つの比例ソレノイド2、3と、サーボピストン30が軸方向に移動するのに伴って各スプリングホルダ46、56を軸方向に移動する1つのフィードバックリンク90とを備えたため、ポンプ10の吐出方向を切換えられる。
【0080】
本実施形態では、中立位置にて各スプリングホルダ46、56を当接させて各スプリングホルダ46、56のストローク範囲を規制するストッパーピン97を備えたため、各スプリングホルダ46、56が互いに干渉することなく、スプリングホルダ46の摺動が円滑に行われる。
【0081】
本実施形態では、各制御スプール40、50がそれぞれ独立して設けられているため、中立位置にて各油圧室32、33にドレン圧を導く構成にすることが可能となる。このため、従来の1本の制御スプールを備える場合に必要であった制御スプール中立位置調整が不要となる。
【0082】
また、上記構成により、各制御スプール40、50と同軸上に配置する精度を低くすることが可能となり、各制御スプール40、50を各スリーブ60、70を介してケーシング25に収容することができる。
【0083】
本実施形態では、各制御スプール40、50を収容するケーシング25を備え、このケーシング25に各制御スプール40、50が摺動可能に挿入される2つのスリーブ60、70を介装し、各スリーブ60、70に各ポート61〜63、71〜73を形成したため、各ポート61〜63、71〜73の加工精度を高めてサーボレギュレータ20の性能を確保することが容易になるとともに、ケーシング25の油通路に対して要求される加工精度が低くなり、製品のコストダウンがはかれる。
【0084】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のサーボレギュレータは、可変容量形斜板式ピストンポンプの斜板を駆動するものに限らず、可変容量形斜板式ピストンモータの斜板をを駆動するものや、他の機械、設備等を駆動するものに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施の形態を示し、図2のA−A線に沿うサーボレギュレータ及びポンプの横断面図。
【図2】同じくサーボレギュレータの断面図。
【図3】同じく制御スプール、スプリングホルダ等の断面図。
【図4】同じくスプリングホルダ等の断面図。
【符号の説明】
【0087】
2、3 比例ソレノイド
10 ポンプ
12 斜板
20 サーボレギュレータ
25 ケーシング
30 サーボピストン
40、50 制御スプール
45、55 フィードバックスプリング
46、56 スプリングホルダ
60、70 スリーブ
90 フィードバックリンク
93 カム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油圧によってサーボピストンが軸方向に移動するサーボレギュレータであって、
前記サーボピストンを移動させる油圧が導かれる油圧室と、
この油圧室に導かれる油圧をその軸方向の位置に応じて調節する制御スプールと、
この制御スプールと同軸上に摺動可能に支持されるスプリングホルダと、
このスプリングホルダと前記制御スプールとの間に圧縮して介装されるフィードバックスプリングと、
このフィードバックスプリングに抗して前記制御スプールを軸方向に駆動する比例ソレノイドと、
前記サーボピストンが軸方向に移動するのに伴って前記スプリングホルダを押すことによって前記フィードバックスプリングを収縮させるフィードバックリンクとを備え、
前記サーボピストンの軸方向の位置に応じて前記フィードバックスプリングの付勢力と前記比例ソレノイドの励磁力とが釣り合う位置に前記制御スプールが移動する構成としたことを特徴とするサーボレギュレータ。
【請求項2】
前記サーボピストンが軸方向に移動するのに伴って前記フィードバックリンクが回動する構成とし、
前記フィードバックリンクの回動先端部に前記スプリングホルダの端面を押すカム部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のサーボレギュレータ。
【請求項3】
前記カム部は円弧状の断面形を持ち、
前記フィードバックリンクが回動するのに伴って前記カム部の中心点が前記スプリングホルダの中心線と交差するように配置したことを特徴とする請求項2に記載のサーボレギュレータ。
【請求項4】
前記サーボピストンを軸方向について中立位置から両方向に移動させる油圧が導かれる2つの前記油圧室と、
前記各油圧室に導かれる油圧をそれぞれの軸方向の位置に応じて調節する2つの前記制御スプールと、
前記各制御スプールと同軸上に摺動可能に支持される2つの前記スプリングホルダと、
前記各スプリングホルダと前記各制御スプールとの間に圧縮して介装される2つの前記フィードバックスプリングと、
この前記各フィードバックスプリングに抗して前記各制御スプールを軸方向に駆動する前記2つの比例ソレノイドと、
前記サーボピストンが軸方向に移動するのに伴って前記各スプリングホルダを軸方向に移動する1つの前記フィードバックリンクとを備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のサーボレギュレータ。
【請求項5】
前記各スプリングホルダを中立位置にて当接させて前記各スプリングホルダのストローク範囲を規制するストッパーピンを備えたことを特徴とする請求項4に記載のサーボレギュレータ。
【請求項6】
前記各制御スプールは中立位置にて前記各油圧室にドレン圧を導く構成としたことを特徴とする請求項4または5に記載のサーボレギュレータ。
【請求項7】
前記各制御スプールを収容するケーシングを備え、
このケーシングに前記各制御スプールが摺動可能に挿入される2つのスリーブを介装したことを特徴とする請求項4から6のいずれか1つに記載のサーボレギュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−52664(P2009−52664A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219919(P2007−219919)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】