説明

シューズのソール組立体の中足部構造

【課題】 走行時のライド感を向上させ、ソール組立体の中足部の安定性を向上させる。
【解決手段】 シューズのソール組立体1の中足部Mにおいて、上方に配設された硬質弾性部材製の上部プレート3と、上部プレート3の下方に配設されるとともに、上部プレート3との間に空隙Sを形成するように下に凸の湾曲形状を有する硬質弾性部材製の下部プレート4と、下部プレート4の下面4aに設けられ、接地面6aを有するとともに、ソール組立体1の踵部H側および前足部F側の各アウトソール5,7から前後方向に分離された中足部アウトソール6と、中足部Mの前端側および後端側に設けられ、上部プレート3および下部プレート4を上下方向に連結する連結部8とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シューズのソール組立体の中足部構造に関し、詳細には、走行時のライド感を向上させかつシューズ中足部の安定性を向上させるための構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
シューズのソール組立体の中足部構造として、たとえば特開2003−19004号公報および特開2006−136715号公報に示すようなものが提案されている。
【0003】
特開2003−19004号公報には、前後方向寸法が上下方向寸法よりも大きい断面円環状またはD字状の樹脂製シャンク部材をシューズの中足部に配設したものが記載されている。この場合には、シャンク部材により中足部の曲げ剛性を高くして中足部の屈曲変形を抑制することによって相対的に前足部の屈曲性を向上させるとともに、シャンク部材に形成された空隙によって中足部のクッション性を向上させている。
【0004】
上記公報には、上下2層のプレート構造を有するシャンク部材をシューズの中足部に配設する点は開示されているものの、この中足部構造は、ソール中足部が接地するようには構成されておらず、走行時のライド感(つまり走行感)を向上させる観点からの記載もない。
【0005】
一方、特開2006−136715号公報には、ミッドソール底面に形成したアーチ状面(上に凸の湾曲形状面)の下方に空隙を隔てて第1のアーチ状強化プレートを配設したものが記載されている。この場合には、第1のアーチ状強化プレートにより中足部の剛性を向上させるとともに、ミッドソールのアーチ状面と第1のアーチ状強化プレートとの間に空隙が形成されていることによって、着地時に着用者の足裏からの荷重がミッドソールに作用してミッドソールが圧縮変形する際に、ミッドソール底面のアーチ状面の下方への沈み込みを第1のアーチ状強化プレートが阻害しないようになっており、これにより、着地時において着用者の足に対する突き上げ感を緩和させている。なお、同公報には、第1のアーチ状強化プレートを強化するために、第1のアーチ状強化プレートの下方にさらに第2のアーチ状(または平坦状)強化プレートを配設したものも示されている。
【0006】
上記公報には、シューズの中足部にプレート状のシャンク部材を配設する点は開示されているものの、この中足部構造は、ソール中足部が接地するようには構成されておらず、走行時のライド感(走行感)を向上させる観点からの記載もない。
【特許文献1】特開2003−19004号公報(図2および図5参照)
【特許文献2】特開2006−136715号公報(図1および図6参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、走行時のライド感(走行感)を向上でき、中足部の安定性を向上できるソール組立体の中足部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係るシューズのソール組立体の中足部構造は、ソール組立体の中足部において上方に配設された硬質弾性部材製の上部プレートと、中足部において上部プレートの下方に配設され、上部プレートとの間に空隙を形成するように下に凸の湾曲形状の上面を有するとともに、中足部の前端側および後端側において上部プレートに当接する軟質弾性部材製の下部ミッドソールと、中足部において下部ミッドソールの下面に設けられ、接地面を有するとともに、ソール組立体の前足部側および踵部側の各アウトソールから前後方向に分離された中足部アウトソールとを備えている。
【0009】
請求項2の発明に係るシューズのソール組立体の中足部構造は、ソール組立体の中足部において上方に配設された硬質弾性部材製の上部プレートと、中足部において上部プレートの下方に配設されるとともに、上部プレートとの間に空隙を形成するように下に凸の湾曲形状を有する硬質弾性部材製の下部プレートと、中足部において下部プレートの下面に設けられ、接地面を有するとともに、ソール組立体の前足部側および踵部側の各アウトソールから前後方向に分離された中足部アウトソールと、中足部の前端側および後端側に設けられ、上部プレートおよび下部プレートを上下方向に連結する連結部とを備えている。
【0010】
請求項3の発明では、請求項1または2において、上部プレートが、中足部において、前後方向に略平坦状にまたは上に凸の湾曲形状で延設されている。
【0011】
請求項4の発明では、請求項1または2において、上部プレートが、前後方向に延びる稜線を有しかつ幅方向に進む波形状を有している。
【0012】
請求項5の発明では、請求項1または2において、上部プレートの上面には、軟質弾性部材製の上部ミッドソールが設けられている。
【0013】
請求項6の発明では、請求項1または2において、ソール組立体の全長をLとするとき、中足部が、ソール組立体の踵後端縁を始点として、0.35L〜0.55L で規定される領域に配置されている。
【0014】
請求項7の発明では、請求項6において、中足部の後端位置が、ソール組立体の踵後端縁を始点として、0.35L〜0.45L で規定される位置に配置されており、中足部の前端位置が、ソール組立体の踵後端縁を始点として、0.45L〜0.55L で規定される位置に配置されている。
【0015】
請求項8の発明では、請求項1において、下部ミッドソールの上面には、上部プレートとの間に空隙を形成するように下に凸の湾曲形状の上面を有する硬質弾性部材製の下部プレートが設けられている。
【0016】
請求項9の発明では、請求項2または8において、上部プレートの硬度が下部プレートの硬度よりも高くなっている。
【0017】
請求項1の発明によれば、ソール組立体の前足部側および踵部側の各アウトソールから前後方向に分離された中足部アウトソールがソール組立体の中足部に設けられているので、ソール組立体の踵部から着地して前足部に荷重が移動していく際に、中足部アウトソールの接地面が接地する。このとき、中足部の下方に(すなわち地面に近い側に)配置された下部ミッドソールが、上部プレートとの間に空隙を形成するように下に凸の湾曲形状の上面を有しているので、下部ミッドソールが上方に変形でき、これにより、中足部のクッション性を確保できる。その結果、踵部から中足部を経て前足部に荷重が移動していく際に、滑らかな荷重移動が可能になって、走行時のライド感を向上できる。
【0018】
しかも、この場合には、中足部の上方に(すなわちシューズ着用者の足に近い側に)配置された上部プレートが硬質弾性部材から構成されているので、中足部への荷重作用時に上部プレートの変形(曲げ変形および捩れ変形)を抑制でき、これにより、着用者の足のアーチ部に対する支持剛性を向上でき、シューズの中足部としての安定性を確保できる。
【0019】
請求項2の発明によれば、ソール組立体の前足部側および踵部側の各アウトソールから前後方向に分離された中足部アウトソールがソール組立体の中足部に設けられているので、ソール組立体の踵部から着地して前足部に荷重が移動していく際に、中足部アウトソールの接地面が接地する。このとき、中足部の下方に(すなわち地面に近い側に)配置された下部プレートが、上部プレートとの間に空隙を形成するように下に凸の湾曲形状を有しているので、下部プレートが上方に変形でき、これにより、中足部のクッション性を確保できる。その結果、踵部から中足部を経て前足部に荷重が移動していく際に、滑らかな荷重移動が可能になって、走行時のライド感を向上できる。
【0020】
しかも、この場合には、中足部の上方に(すなわちシューズ着用者の足に近い側に)配設された上部プレートが硬質弾性部材から構成されており、しかも上部プレートが中足部の前端側および後端側において連結部を介して下部プレートに連結されているので、中足部への荷重作用時には、上部プレートの変形(曲げ変形および捩れ変形)をより確実に抑制でき、これにより、着用者の足のアーチ部に対する支持剛性をさらに向上でき、シューズの中足部としての安定性を一層向上できる。
【0021】
なお、請求項1および2において、上部プレートと下部ミッドソール(または下部プレート)との間に形成される「空隙」とは、何も充填されていない空所のみならず、スポンジなどの軟質クッション材が充填されたものも含む趣旨である。軟質クッション材が充填されている場合には、走行時のライド感を向上できるとともに、空隙内への異物の侵入を防止できる。
【0022】
上部プレートは、請求項3の発明に記載されているように、中足部において、前後方向に略平坦状にまたは上に凸の湾曲形状で延設されているのが好ましい。これにより、中足部への荷重作用時に、上部プレートの下方への沈み込み変形をより効果的に防止できる。また、この場合には、上部プレートを着用者の足のアーチ部に沿った形状にすることができるので、アーチ部に対するフィット性を向上できる。
【0023】
これとは逆に、上部プレートが下に凸の湾曲形状を有している場合には、中足部への荷重作用時に、上部プレートが下方に沈み込み変形しやすくなって、シューズの中足部としての安定性に欠けることになる。
【0024】
上部プレートは、請求項4の発明に記載されているように、前後方向に延びる稜線を有しかつ幅方向に進む波形状を有していてもよい。この場合には、中足部への荷重作用時に、上部プレートの波形状の山または(および)谷の部分がリブとして作用することによって、上部プレートが側面視V字状に折れ曲がりにくくなっており、これにより、シューズの中足部におけるシャンク効果を向上できる。
【0025】
上部プレートの上面には、請求項5の発明に記載されているように、上部ミッドソールが設けられていてもよい。この場合には、着用者の足裏に対する足当たり感を向上できる。
【0026】
ソール組立体における中足部の領域は、請求項6の発明に記載されているように、ソール組立体の全長をLとするとき、ソール組立体の踵後端縁を始点として、0.35L〜0.55L で規定される領域に配置されている。
【0027】
請求項7の発明では、中足部の領域の後端位置が、0.35L〜0.45L で規定される位置に配置されており、中足部の領域の前端位置が、0.45L〜0.55L で規定される位置に配置されている。
【0028】
下部ミッドソールの上面には、請求項8の発明に記載されているように、上部プレートとの間に空隙を形成するように下に凸の湾曲形状を有する板状の下部プレートが設けられていてもよい。この場合には、中足部全体の曲げ剛性および捩れ剛性を向上できる。
【0029】
請求項9の発明に記載されているように、上部プレートの硬度は下部プレートの硬度よりも高くなっているのが好ましい。
【0030】
この場合には、中足部に荷重が作用したとき、下部プレートが相対的に低硬度であることにより、下部プレートの上方への変形が容易になってクッション性を確保できるとともに、上部プレートが相対的に高硬度であることにより、上部プレートの変形を効果的に規制でき、着用者の足のアーチ部に対する支持剛性を向上できる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように本発明に係るソール組立体の中足部構造によれば、ソール組立体の前足部側および踵部側の各アウトソールから前後方向に分離された中足部アウトソールをソール組立体の中足部に設けるようにしたので、ソール組立体の踵部から着地して前足部に荷重が移動していく際に、中足部アウトソールの接地面が接地するようになり、これにより、踵部から中足部を経て前足部に荷重が移動していく際に滑らかな荷重移動が可能になって、走行時のライド感を向上できる。また、中足部の下方に(すなわち地面に近い側に)配置された下部ミッドソール(または下部プレート)が上方に空隙を有していることにより、下部ミッドソール(または下部プレート)が上方に変形でき、これにより、中足部のクッション性を確保できる。しかも、この場合には、中足部の上方に(すなわちシューズ着用者の足に近い側に)配置された上部プレートが硬質弾性部材から構成されているので、中足部への荷重作用時に上部プレートの変形(曲げ変形および捩れ変形)を抑制でき、これにより、着用者の足のアーチ部に対する支持剛性を向上でき、シューズの中足部としての安定性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0033】
図1ないし図7は、本発明の一実施例によるシューズ用ソール組立体の中足部構造を説明するための図であって、図1はソール組立体の底面図、図2はソール組立体の外甲側側面図、図3はソール組立体の内甲側側面図、図4はソール組立体のIV-IV線断面図(ラスト中心線縦断面図)、図5は図1のV-V線断面図、図6は図1のVI-VI線断面図、図7は図1のVII-VII線断面図である。
【0034】
図1ないし図4に示すように、このソール組立体1は、踵部H、中足部Mおよび前足部Fから構成されている。ソール組立体1の全長をLとするとき、中足部Mは、ソール組立体1の踵後端縁(図1下端縁)を始点として、0.35L〜0.55L で規定される領域に配置されている。また、中足部Mの後端位置(つまり踵部Hとの境界位置)は、ソール組立体1の踵後端縁を始点として、0.35L〜0.45L で規定される位置に配置されており、中足部Mの前端位置(前足部Fとの境界位置)は、ソール組立体1の踵後端縁を始点として、0.45L〜0.55L で規定される位置に配置されている。
【0035】
ソール組立体1は、図2および図3に示すように、踵部Hから中足部Mをへて前足部Fまで延設された軟質弾性部材製の上部ミッドソール2と、上部ミッドソール2の底面2aに装着されるとともに、踵部Hから中足部Mをへて前足部Fまで延設された硬質弾性部材製の上部プレート3と、上部プレート2の下方(図2左方、図3右方)において踵部Hから中足部Mをへて前足部Fまで延設されるとともに、上部プレート2との間に空隙Sを形成するように下に凸の湾曲形状を有する硬質弾性部材製の下部プレート4と、下部プレート4の下面4aに設けられたアウトソール5,6,7とから構成されている。
【0036】
上部ミッドソール2は、着用者の足裏の形状に沿うように形成された上面2bを有している。上面2bの左右両側縁部には、上方に立ち上がる巻上げ部2cが形成されている。これらの巻上げ部2cは、シューズの組立時に甲被(図示せず)が上部ミッドソール2に取り付けられる際に、甲被の左右両側下部に固着されるようになっている。上部ミッドソール2の底面2aは、ソール組立体1の踵部Hから前足部Fにかけて、幅方向(図2および図3紙面垂直方向)に延びる稜線を有しかつ前後方向に進む波形状面から形成されている。好ましくは、上部ミッドソール2の底面2aは、中足部Mにおいて、上に凸の湾曲状面または前後方向に略平坦状の面から形成されている。
【0037】
上部ミッドソール2は、着用者の足裏に接近した側に配置される関係上、軟質弾性部材から構成されているのが好ましく、たとえば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂の発泡体やポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂の発泡体、またはブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材の発泡体のような軟質弾性部材から構成されている。
【0038】
上部プレート3は、ソール組立体1の踵部Hから前足部Fにかけて、上部ミッドソール2の底面2aの波形状面に沿う波形状面を有している。上部プレート3の左右両側縁部には、上方に立ち上がる立壁部3aが形成されている。これらの立壁部3aは、上部ミッドソール2の各巻上げ部2cの左右両外側下部に配置されている。
【0039】
上部プレート3は、中足部Mの前後方向略中央部において、図6に示すように、前後方向に延びる稜線を有しかつ幅方向に進む波形状面をさらに備えている。上部プレート3の波形状面に当接する上部ミッドソール2の底面2aには、複数のクッションホール30が形成されている。
【0040】
下部プレート4は、上部プレート3と上下逆向きの波形状を有している。すなわち、上部プレート3が上に凸の湾曲形状を有している部分に対向する個所では、下部プレート4は下に凸の湾曲形状を有しており、上部プレート3が下に凸の湾曲形状を有している部分に対向する個所では、下部プレート4は上に凸の湾曲形状を有している。なお、図2ないし図4では、下部プレート4の上方に形成される空隙Sが、何も充填されていない空所の状態で示されているが、空隙S内には、スポンジなどの軟質クッション材を充填するようにしてもよい。
【0041】
上下部プレート3,4は、繰返し変形による「へたり」を防止して両プレート間の空所Cの形状をある程度維持するためには、硬質樹脂製プレートから構成されているのが好ましく、たとえば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)やポリアミドエラストマー(PAE)、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、またはエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂から構成されている。また、上下部プレート2,3は、カーボン繊維や金属繊維等を混入した繊維強化樹脂から構成されていてもよい。
【0042】
上部プレート3の硬度は、下部プレート4の硬度よりも高くなっているのが好ましく、具体例としては、上部プレート3の硬度はショアーのDスケールで72度に設定され、下部プレート4の硬度はショアーのDスケールで55度に設定されている。
【0043】
下部プレート4の下面4aに設けられた各アウトソールのうち、アウトソール5はソール組立体1の踵部Hに、アウトソール6は中足部Mに、アウトソール7は前足部Fにそれぞれ配置されている。踵部Hおよび前足部Fの各アウトソール5,7はいずれも地面と接地する接地面5a,7aを有しており、中足部Mのアウトソール6も同様に地面と接地する接地面6aを有している。図2に明確に示されているように、アウトソール6の接地面6aは、踵部Hおよび前足部Fの各アウトソール5,7の各接地面5a,7aから前後方向に分離されている。言い換えれば、アウトソール6の接地面6aとこれに前後方向に隣り合うアウトソール5,7の各接地面5a,7aとの間には、隙間が形成されている。なお、図1および図3に示すように、各アウトソール5,6,7は、それぞれのベース部においては、互いに連結されていてもよい。
【0044】
ソール組立体1の中足部Mの前端側および後端側には、上部プレート3および下部プレート4を上下方向に連結する弾性部材製の連結部8が設けられている(図5および図7参照)。同様に、踵部Hには連結部9が、前足部Fには連結部10が設けられている。各連結部8,9,10は、好ましくは、上下部プレート3,4が上下方向に最も接近した位置に配置されている。すなわち、上部プレート3の下に凸の湾曲形状部分と下部プレート4の上に凸の湾曲形状部分とが上下方向に対向する個所に、各連結部8,9,10は設けられている。各連結部8,9,10の上端および下端は、上下部プレート3,4にそれぞれ固着されている。各連結部8,9,10は、たとえばソール組立体1の幅方向両側部(および中央部)に配置されている。
【0045】
また、図3に示す例では、ソール組立体1の内甲側において上下部プレート3,4が上下方向に最も離れた位置に複数の柱状補強部11が設けられているが、これらの補強部11は、ソール組立体1の内甲側部分に荷重が作用した際に当該内甲側部分の過度の沈み込みを防止してソール組立体としての安定性を確保する観点から設けられている。各補強部11の上端は、上部プレート3に固着されているが、下端は下部プレート4に固着されておらず、下部プレート4との間には隙間(図示せず)が形成されている。これは、荷重作用時に上下部プレート3,4の変形を過度に規制することなく或る程度許容するとともに、補強部11の下端を下部プレート4に当接させることで、上下部プレート3,4の過度の沈み込みを防止するためである。なお、ソール組立体としてクッション性を重視する場合には、これらの補強部11は省略する方が好ましい。
【0046】
上述のように構成されるソール組立体においては、踵部H側および前足部F側の各アウトソール5,7から前後方向に分離されたアウトソール6がソール組立体の中足部Mに設けられているので、ソール組立体の踵部Hから着地して前足部Fに荷重が移動していく際に、中足部Mのアウトソール6の接地面6aが接地する。このとき、中足部M内の下方位置に(すなわち地面に近い側に)配置された下部プレート4が、上部プレート3との間に空隙Sを形成するように下に凸の湾曲形状を有しているので、下部プレート4が上方に変形でき、これにより、中足部Mのクッション性を確保できる。その結果、踵部Hから中足部Mを経て前足部Fに荷重が移動していく際に、滑らかな荷重移動が可能になって、走行時のライド感を向上できる。
【0047】
しかも、この場合には、中足部M内の上方位置に(すなわちシューズ着用者の足に近い側に)配設された上部プレート3が硬質弾性部材から構成されており、しかも上部プレート3が中足部Mの前端側および後端側において連結部8を介して下部プレート4に連結されているので、中足部Mへの荷重作用時には、上部プレート3の変形(曲げ変形および捩れ変形)をより確実に抑制でき、これにより、着用者の足のアーチ部に対する支持剛性をさらに向上でき、シューズの中足部としての安定性を一層向上できる。
【0048】
また、この場合には、上部プレート3が、中足部Mにおいて、前後方向に略平坦状にまたは上に凸の湾曲形状で延設されているので、中足部Mへの荷重作用時には、上部プレート3の下方への沈み込み変形をより効果的に防止できる。なお、この場合には、上部プレート3を着用者の足のアーチ部に沿った形状にすることができるので、アーチ部に対するフィット性を向上できる。
【0049】
さらに、上部プレート3が、前後方向に延びる稜線を有しかつ幅方向に進む波形状を有しているので、中足部Mへの荷重作用時には、上部プレート3の波形状の山または(および)谷の部分がリブとして作用することによって、上部プレート3が側面視V字状に折れ曲がりにくくなっており、これにより、シューズの中足部におけるシャンク効果を向上できる。
【0050】
また、上部プレート3の上に上部ミッドソール2を設けたことにより、着用者の足裏に対する足当たり感を向上できる。
【0051】
さらに、上部プレート3の硬度が下部プレート4の硬度よりも高くなっている場合には、中足部Mに荷重が作用したとき、下部プレート4が相対的に低硬度であることにより、下部プレート4の上方への変形が容易になってクッション性を確保できるとともに、上部プレート3が相対的に高硬度であることにより、上部プレート3の変形を効果的に規制でき、着用者の足のアーチ部に対する支持剛性を向上できる。
〔他の実施例〕
前記実施例では、上部プレート3に対向して下部プレート4を配設するとともに、下部プレート4の下面4aにアウトソール5,6,7を設けた例を示したが、本発明の適用はこれには限定されない。
【0052】
図8は、本発明の他の実施例によるソール組立体の側面図である。同図において、前記実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。このソール組立体1’においては、下部プレート4のかわりに、軟質弾性部材製の下部ミッドソール15が設けられている。下部ミッドソール15は、上部プレート3の下方において踵部Hから中足部Mをへて前足部Fまで延設されており、上部プレート3との間に空隙Sを形成するように下に凸の湾曲形状の上面15aを有している。下部ミッドソール15は、中足部Mの前端側および後端側において、上部プレート3に当接している。なお、この例では、下部ミッドソール15は、踵部Hおよび前足部Fにおいても、上部プレート3に当接している。
【0053】
下部ミッドソール15の上面15aは、上部プレート3と上下逆向きの波形状を有している。すなわち、上部プレート3が上に凸の湾曲形状を有している部分に対向する個所では、下部ミッドソール15の上面15aは下に凸の湾曲形状を有しており、上部プレート3が下に凸の湾曲形状を有している部分に対向する個所では、下部ミッドソール15の上面15aは上に凸の湾曲形状を有している。
【0054】
各アウトソール5,6,7は、下部ミッドソール15の下面15bに設けられている。前記実施例と同様に、アウトソール5はソール組立体1の踵部Hに、アウトソール6は中足部Mに、アウトソール7は前足部Fにそれぞれ配置されている。踵部Hおよび前足部Fの各アウトソール5,7はいずれも地面と接地する接地面5a,7aを有しており、中足部Mのアウトソール6も同様に地面と接地する接地面6aを有している。アウトソール6は、踵部Hおよび前足部Fの各アウトソール5,7から前後方向に分離されている。言い換えれば、アウトソール6とこれに前後方向に隣り合う各アウトソール5,7との間には、隙間が形成されている。
【0055】
この場合には、踵部H側および前足部F側の各アウトソール5,7から前後方向に分離されたアウトソール6がソール組立体の中足部Mに設けられているので、ソール組立体の踵部Hから着地して前足部Fに荷重が移動していく際に、アウトソール6の接地面6aが接地する。このとき、中足部M内の下方位置に(すなわち地面に近い側に)配置された下部ミッドソール15が、上部プレート3との間に空隙Sを形成するように下に凸の湾曲形状の上面15aを有しているので、下部ミッドソール15が上方に変形でき、これにより、中足部Mのクッション性を確保できる。その結果、踵部Hから中足部Mを経て前足部Fに荷重が移動していく際に、滑らかな荷重移動が可能になって、走行時のライド感を向上できる。
【0056】
しかも、この場合には、中足部M内の上方位置に(すなわちシューズ着用者の足に近い側に)配置された上部プレート3が硬質弾性部材から構成されているので、中足部Mへの荷重作用時に上部プレート3の変形(曲げ変形および捩れ変形)を抑制でき、これにより、着用者の足のアーチ部に対する支持剛性を向上でき、シューズの中足部としての安定性を確保できる。
【0057】
なお、前記他の実施例においては、上部プレート3との間に空隙Sを形成するように下に凸の湾曲形状を有する硬質弾性部材製の下部プレートを、下部ミッドソール15の上面15aに設けるようにしてもよい。この場合には、中足部全体の曲げ剛性および捩れ剛性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施例によるシューズ用ソール組立体の底面図である。
【図2】ソール構造体(図1)の外甲側側面図である。
【図3】ソール構造体(図1)の内甲側側面図である。
【図4】図1のIV-IV線断面図である。
【図5】図1のV-V線断面図である。
【図6】図1のVI-VI線断面図である。
【図7】図1のVII-VII線断面図である。
【図8】本発明の他の実施例によるシューズ用ソール組立体の側面図である。
【符号の説明】
【0059】
1: ソール組立体

2: 上部ミッドソール

3: 上部プレート

4: 下部プレート
4a: 下面

5,6,7: アウトソール
5a,6a,7a: 接地面

15: 下部ミッドソール
15a: 上面
15b: 下面

S: 空隙

F: 前足部
M: 中足部
H: 踵部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューズのソール組立体の中足部構造であって、
前記ソール組立体の中足部において、上方に配設された硬質弾性部材製の上部プレートと、
前記中足部において、前記上部プレートの下方に配設され、前記上部プレートとの間に空隙を形成するように下に凸の湾曲形状の上面を有するとともに、前記中足部の前端側および後端側において前記上部プレートに当接する軟質弾性部材製の下部ミッドソールと、
前記中足部において、前記下部ミッドソールの下面に設けられ、接地面を有するとともに、前記ソール組立体の前足部側および踵部側の各アウトソールから前後方向に分離された中足部アウトソールと、
を備えたシューズのソール組立体の中足部構造。
【請求項2】
シューズのソール組立体の中足部構造であって、
前記ソール組立体の中足部において、上方に配設された硬質弾性部材製の上部プレートと、
前記中足部において、前記上部プレートの下方に配設されるとともに、前記上部プレートとの間に空隙を形成するように下に凸の湾曲形状を有する硬質弾性部材製の下部プレートと、
前記中足部において、前記下部プレートの下面に設けられ、接地面を有するとともに、前記ソール組立体の前足部側および踵部側の各アウトソールから前後方向に分離された中足部アウトソールと、
前記中足部の前端側および後端側に設けられ、前記上部プレートおよび前記下部プレートを上下方向に連結する連結部と、
を備えたシューズのソール組立体の中足部構造。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記上部プレートが、前記中足部において、前後方向に略平坦状にまたは上に凸の湾曲形状で延設されている、
ことを特徴とするシューズのソール組立体の中足部構造。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記上部プレートが、前後方向に延びる稜線を有しかつ幅方向に進む波形状を有している、
ことを特徴とするシューズのソール組立体の中足部構造。
【請求項5】
請求項1または2において、
前記上部プレートの上面には、軟質弾性部材製の上部ミッドソールが設けられている、
ことを特徴とするシューズのソール組立体の中足部構造。
【請求項6】
請求項1または2において、
前記ソール組立体の全長をLとするとき、前記中足部が、前記ソール組立体の踵後端縁を始点として 0.35L〜0.55L で規定される領域に配置されている、
ことを特徴とするシューズのソール組立体の中足部構造。
【請求項7】
請求項6において、
前記中足部の後端位置が、前記ソール組立体の前記踵後端縁を始点として、0.35L〜0.45L で規定される位置に配置されており、前記中足部の前端位置が、前記ソール組立体の前記踵後端縁を始点として、0.45L〜0.55L で規定される位置に配置されている、
ことを特徴とするシューズのソール組立体の中足部構造。
【請求項8】
請求項1において、
前記下部ミッドソールの上面には、前記上部プレートとの間に空隙を形成するように下に凸の湾曲形状を有する硬質弾性部材製の下部プレートが設けられている、
ことを特徴とするシューズのソール組立体の中足部構造。
【請求項9】
請求項2または8において、
前記上部プレートの硬度が前記下部プレートの硬度よりも高くなっている、
ことを特徴とするシューズのソール組立体の中足部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−54780(P2008−54780A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232920(P2006−232920)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】