説明

シート状エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置

【課題】半導体素子と配線回路基板および接続用電極に生ずる応力の緩和効果に優れたシート状エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】半導体素子3に設けられた接続用電極部2と配線回路基板1に設けられた回路電極部4とを対向させた状態で上記配線回路基板1上に半導体素子3が搭載された半導体装置における、上記配線回路基板1と半導体素子3との空隙を樹脂封止するためのシート状エポキシ樹脂組成物6であり、下記の(A)〜(C)成分を含有する。(A)エポキシ樹脂。(B)フェノール樹脂。(C)シリコーン変性ポリイミド樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子をフェイスダウン構造で配線回路基板上に実装する方式による半導体装置の、半導体素子と配線回路基板の空隙を樹脂封止する際に用いられるシート状エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
突起電極を設けた半導体素子をフェイスダウン構造で配線回路基板上に実装する方式においては、互いの線膨張係数が異なる半導体素子と配線回路基板とを上記突起電極を介して電気的接続を行っていることから、この接続部分の信頼性が問題となっている。そして、この信頼性向上の対策として、半導体素子と配線回路基板との空隙に液状樹脂材料を毛細管現象を利用して注入し、充填する方式が一般的に採用されている(例えば、特許文献1参照)。一方、上記樹脂充填方式に比べて、より工程の簡略化と狭い空隙の充填を可能にするシート状の熱硬化性樹脂組成物を用いて半導体装置を製造する方法が近年提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
上記シート状の熱硬化性樹脂組成物を用いた半導体装置の製造方法においては、上記シート状熱硬化性樹脂組成物は、予め半導体素子あるいは配線回路基板上に設置され、半導体素子の搭載と同時に樹脂封止がなされるため、極めて狭い空隙(狭ギャップ)を充填することが可能となり、また従来の液状樹脂の注入に比べて短時間で樹脂の充填が行われるため半導体装置の生産性が向上するようになる。
【特許文献1】特開2001−279058号公報
【特許文献2】特開平11−17075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このシート状の熱硬化性樹脂組成物では、一般にエポキシ樹脂組成物をシート状に加工成形する必要があるため、熱可塑性エラストマーが適量加えられており、この熱可塑性エラストマーとしては、従来からアクリロニトリル−ブタジエンゴムやアクリルゴムが知られている。これら熱可塑性エラストマーは各種溶剤に対する溶解性に優れており、また安価であるため広く工業的に使用されている。しかしながら、それ自身の体積抵抗値が低いため電気絶縁性等の問題があった。また、フェノキシ樹脂を用いた場合、体積抵抗値は高いものの、フィルム形成後の可撓性が不充分であるといった問題があった。また、近年、ポリイミド樹脂を添加したエポキシ樹脂製フィルムも提案されているが、このようなエポキシ樹脂製フィルムを用いた場合、低沸点有機溶剤に対する溶解性やフィルム形成後の加工性および流動性に劣るといった欠点があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、半導体素子と配線回路基板および接続用電極に生ずる応力の緩和効果に優れ、半導体素子と配線回路基板との空隙に容易に樹脂充填することが可能であり、しかも電気絶縁性、加工性および流動性に優れたシート状エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、半導体素子に設けられた接続用電極部と配線回路基板に設けられた回路電極部とを対向させた状態で上記配線回路基板上に半導体素子が搭載された半導体装置における、上記配線回路基板と半導体素子との空隙樹脂封止用のシート状エポキシ樹脂組成物であって、下記の(A)〜(C)成分を含有するシート状エポキシ樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)エポキシ樹脂。
(B)フェノール樹脂。
(C)下記の一般式(1)〜(3)で表される繰り返し単位をその分子構造に有するシリコーン変性ポリイミド樹脂。
【0007】
【化1】

【化2】

【化3】

【0008】
また、本発明は、半導体素子に設けられた接続用電極部と配線回路基板に設けられた回路電極部とを対向させた状態で上記配線回路基板上に半導体素子が搭載され、上記配線回路基板と半導体素子との空隙が封止樹脂層によって封止されてなる半導体装置であって、上記封止樹脂層が上記シート状エポキシ樹脂組成物を用いて形成されてなる半導体装置を第2の要旨とする。
【0009】
すなわち、本発明者は、電気絶縁性、加工性および流動性に優れ、配線回路基板と半導体素子との空隙を容易に樹脂充填することが可能な封止材料について研究を重ねた。その結果、上記特殊な構造を備えたシリコーン変性ポリイミド樹脂を用いると、シート状に成形加工することが容易であり、エポキシ樹脂組成物本来の体積抵抗値を維持するとともに、流動性にも優れた封止材料となるエポキシ樹脂組成物が得られることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明は、配線回路基板と半導体素子との空隙を樹脂封止するために用いられる、前記特殊な構造を備えたシリコーン変性ポリイミド樹脂〔(C)成分〕を含有するシート状エポキシ樹脂組成物である。このため、エポキシ樹脂組成物本来の有する体積抵抗値を保持し、しかもシート状に成形・加工することが可能となる。また、本発明のシート状エポキシ樹脂組成物は、低温において高い流動性を有するため、上記のようなフェイスダウン構造の半導体装置における、配線回路基板と半導体素子との空隙を樹脂封止するための封止材料として有用であり、その結果、絶縁信頼性に優れた半導体装置が得られる。
【0011】
そして、特定の粒径分布を有する無機質充填剤を用いると、流動性や接着性、電気接合性の点から好ましいものである。
【0012】
また、後述の一般式(5)で表される化学結合単位を備えた化合物を用いると、流動性や保存安定性が良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のシート状エポキシ樹脂組成物を用いて製造される半導体装置は、図1に示すように、回路電極部4が形成された配線回路基板1面に、複数の接続用電極部2を介して半導体素子3が搭載された構造をとる。そして、上記配線回路基板1と半導体素子3との空隙にはエポキシ樹脂組成物からなる封止樹脂層5が形成され樹脂封止されている。
【0014】
なお、上記配線回路基板1と半導体素子3とを電気的に接続する上記複数の接続用電極部2は、予め配線回路基板1面に配設されていてもよいし、半導体素子3面に配設されていてもよい。さらには、予め配線回路基板1面および半導体素子3面の双方にそれぞれ配設されていてもよい。
【0015】
上記複数の接続用電極部2の材質としては、特に限定するものではないが、例えば、錫−鉛バンプ、錫−銀バンプ、錫−銀−銅バンプ、錫−亜鉛バンプ、錫−亜鉛−ビスマス等の半田バンプや、金バンプ、銅バンプ等があげられる。
【0016】
また、上記配線回路基板1の材質としては、特に限定するものではないが、大別してセラミック基板、プラスチック基板があげられる。上記プラスチック基板としては、例えば、エポキシ基板、ビスマレイミドトリアジン基板、ポリイミド基板等があげられる。
【0017】
そして、上記封止樹脂層5を形成する本発明のシート状エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A成分)と、フェノール樹脂(B成分)と、特定のシリコーン変性ポリイミド樹脂(C成分)を用いて得られるものであり、半導体装置製造の際の使用時においてシート状の形態を示すものである。
【0018】
上記エポキシ樹脂(A成分)としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントインエポキシ樹脂等の含窒素環エポキシ樹脂、水添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、低吸水率硬化体タイプの主流であるビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等があげられる。これらのなかでも、流動性の観点から、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好適に用いられる。これらは単独でもしくは2種以上で併せて用いられる。
【0019】
そして、上記エポキシ樹脂(A成分)は、常温で固形であっても液状であってもよいが、一般にエポキシ当量が90〜1000のものが好ましい。すなわち、エポキシ当量が90未満では、エポキシ樹脂組成物の硬化体が脆くなる傾向がみられる。また、エポキシ当量が1000を超えると、その硬化体のガラス転移温度(Tg)が低くなる傾向がみられる。
【0020】
上記エポキシ樹脂(A成分)の含有量は、耐熱性および耐湿性の観点から、組成物全体の5〜90重量%の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは10〜80重量%である。
【0021】
上記エポキシ樹脂(A成分)とともに用いられるフェノール樹脂(B成分)としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、ナフトール型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂等があげられる。これらのなかでも流動性の観点から、軟化点が100℃以下のものはより好適に用いられる。これらは単独でもしくは2種以上で併せて用いられる。
【0022】
上記フェノール樹脂(B成分)の配合割合は、エポキシ樹脂(A成分)中のエポキシ基1当量に対して、水酸基当量が0.5〜1.5当量となるよう設定することが好ましく、より好ましくは0.7〜1.2当量である。すなわち、水酸基当量が0.5当量未満では、エポキシ樹脂組成物の硬化速度が遅くなるとともに、その硬化体のガラス転移温度(Tg)が低くなる傾向がみられ、一方、1.5当量を超えると、耐湿性が低下する傾向がみられるからである。
【0023】
上記A成分およびB成分とともに用いられる特定のシリコーン変性ポリイミド樹脂(C成分)は、下記の一般式(1)〜(3)で表される繰り返し単位をその分子構造に有するものであって、フィルム成形性が良好で有機溶媒に可溶であればよい。
【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
上記一般式(1)および(2)で表される繰り返し単位である構造部分は、ジアミノシロキサン,芳香族ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させることにより得られる。
【0028】
上記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等があげられる。また、上記テトラカルボン酸二無水物成分の一部として、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、4,4′−(ヘキサフルオロイソピリデン)フタル酸二無水物等を併用することもできる。
【0029】
上記ジアミノシロキサンとしては、下記の一般式(4)で表されるジアミノシロキサンが用いられる。
【0030】
【化7】

【0031】
上記式(4)で表されるジアミノシロキサンの平均n数は、溶解性,流動性,接着性の観点から、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは5〜15の範囲である。そして、上記式(4)中において、R1 ,R2 は好ましくはそれぞれ、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基等の二価のアルキレン基、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基等の二価のアリーレン基である。また、R3 〜R6 は好ましくは、それぞれ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、2−クレシル基、3−クレシル基、4−クレシル基、ベンジル基等のアリール基、または、アラルキル基である。
【0032】
また、上記芳香族ジアミンとしては、具体的には、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノ−p−ターフェニル等があげられるが、有機溶剤に対する可溶性を向上させる目的で、2,2−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、3,3−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、4,4−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、3,3−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、4,4−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン等の3個以上の芳香環を有するジアミンを用いることが好ましい。
【0033】
また、前記一般式(3)で表される繰り返し単位である構造部分は、反応性官能基を有する芳香族ジアミンと上記テトラカルボン酸二無水物とを反応させることにより得られる。上記反応性官能基を有する芳香族ジアミンとしては、2,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、4,4′−(3,3′−ジヒドロキシ)ジアミノビフェニル、4,4′−(2,2′−ジヒドロキシ)ジアミノビフェニル、2,2′−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラアミン、3,3′,4,4′−テトラアミノジフェニルエーテル、4,4′−(3,3′−ジカルボキシ)ジフェニルアミン、3,3′−ジカルボキシ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル等があげられる。なかでも、4,4′−(3,3′−ジヒドロキシ)ジフェニルアミン、4,4′−(2,2′−ジヒドロキシ)ジフェニルアミンがより好ましく用いられる。
【0034】
上記特定のシリコーン変性ポリイミド樹脂(C成分)において、上記一般式(1)〜(3)で表される繰り返し単位の分子構造中における各割合は、前述の各化合物の配合割合に略比例するものである。そして、前述の各化合物の配合割合は、つぎのように設定することが好ましい。すなわち、モル基準において、テトラカルボン酸二無水物/芳香族ジアミン/前記反応性官能基を有する芳香族ジアミン/ジアミノシロキサン=48/41/1/10〜52/23/5/20である。すなわち、このような範囲に設定することにより、シートの成形性、加熱時の流動性に優れたものとなり、エポキシ樹脂組成物本来の体積抵抗率を維持することができる。
【0035】
そして、上記特定のシリコーン変性ポリイミド樹脂(C成分)は、上記各成分を所定の割合で配合し反応させることにより得られる。すなわち、ジアミノ末端ポリオルガノシロキサンを10〜20モル%とすることで、溶剤や樹脂への溶解性に優れ、良好な流動性を発揮することができる。
【0036】
上記特定のシリコーン変性ポリイミド樹脂(C成分)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の3〜30重量%の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは5〜25重量%である。すなわち、3重量%未満では、シート成形が困難になったり、無機質充填剤を加えてシート状にした場合に、脆くなって加工性に問題が生じる傾向がみられる。一方、30重量%を超えると、シートの硬化性が低下し、硬化時間が長くなる傾向がみられるからである。
【0037】
さらに、本発明のシート状エポキシ樹脂組成物には、上記A〜C成分に加えて、無機質充填剤を用いることができる。上記無機質充填剤としては、例えば、合成シリカや溶融シリカ等のシリカ粉末、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、マグネシア、珪酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン等の各種粉末があげられる。上記無機質充填剤のなかでも、特に球状シリカ粉末を用いることがエポキシ樹脂組成物の粘度低減の効果が大きく好ましい。そして、上記無機質充填剤としては、最大粒子径が10μm以下のものを用いることが好ましい。また、上記最大粒子径とともに、平均粒子径が0.2〜5μmのものが好ましく用いられ、さらに粒子径5μm以下の粒子が全体の70容積%以上を占めるものが好適に用いられる。なお、上記最大粒子径および平均粒子径は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0038】
上記無機質充填剤の含有量は、特に限定するものではないが、流動性、接着性、電気接合性の観点から、エポキシ樹脂組成物全体の80重量%以下に設定することが好ましく、特に好ましくは70重量%以下である。通常、無機質充填剤の含有量の下限は10重量%である。
【0039】
また、上記各成分とともに、各種硬化促進剤を配合することもできる。このような硬化促進剤としては、従来からエポキシ樹脂の硬化促進剤として知られている種々の硬化促進剤が使用可能であり、例えば、アミン系,リン系,イミダゾール系,ホウ素系,リン−ホウ素系等の硬化促進剤があげられる。また、上記硬化促進剤をポリウレタンやポリウレア、ビニル重合等によって形成される化合物からなるカプセル中に封入したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤やイミダゾール化合物やジアルキルアミン等のアミン化合物とエポキシ樹脂の付加反応を利用してアミンアダクトしたプレポリマー化したエポキシアミンアダクト等の潜在性硬化促進剤、オニウム塩で反応基をブロックした潜在性硬化促進剤がより好適に用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0040】
上記硬化促進剤の含有量は、好ましくはエポキシ樹脂組成物全体の0.2〜1.0重量%の範囲に設定される。
【0041】
さらに、本発明のシート状エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、半田接合助剤を配合することができる。上記半田接合助剤としては、1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物であれば特に限定するものではなく各種有機カルボン酸化合物を用いることができ、例えば、吉草酸、ラウリン酸、ステアリン酸、アビエチン酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、乳酸、サリチル酸、カルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が用いられる。流動性、保存安定性の観点から、好ましくは、上記有機カルボン酸化合物と各種ビニルエーテル化合物から得られる下記の一般式(5)で表される化学結合部を有するブロックカルボン酸化合物が用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0042】
【化8】

【0043】
上記半田接合助剤の含有割合は、半田接合性、耐熱性の観点から、エポキシ樹脂組成物全体に対して0.1〜10重量%の範囲に設定することが好ましく、特に0.5〜5重量%の範囲に設定することが好ましい。
【0044】
なお、本発明のシート状エポキシ樹脂組成物においては、先に述べた各種成分とともに、必要に応じて他の添加剤を適宜配合することができる。
【0045】
上記他の添加剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、表面調整剤、酸化防止剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂等の有機材料や、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、半田等の金属粒子、顔料、染料等の無機材料があげられる。
【0046】
本発明のシート状エポキシ樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、上記A〜C成分の各成分を所定量配合し、これに無機質充填剤,硬化促進剤,半田接合助剤,さらに必要に応じて他の添加剤を所定量配合する。これをトルエン,メチルエチルケトン,酢酸エチル等の有機溶剤に混合溶解し、この混合溶液を離型処理したポリエステルフィルム等の基材フィルム上に塗布する。つぎに、この混合溶液を塗布した基材フィルムを50〜160℃で乾燥させ、上記トルエン等の有機溶剤を除去することにより、上記基材フィルム上に目的とするシート状エポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0047】
また、他の製法として、トルエン等の有機溶剤を用いることなく、各成分を配合したものを加熱溶融してシート状に押出成形することによっても目的とするシート状エポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0048】
そして、上記シート状エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、上記のようにして得られたシート状エポキシ樹脂組成物を、100〜225℃、より好ましくは120〜200℃で、2〜300分間、より好ましくは3〜180分間加熱硬化することにより、目的とする硬化物を製造することができる。
【0049】
本発明のシート状エポキシ樹脂組成物を用いて得られる半導体装置の製法の態様の一例を図面に基づき順を追って説明する。
【0050】
まず、図2に示すように、回路電極部4が形成された配線回路基板1上に、本発明のシート状エポキシ樹脂組成物6を載置する。ついで、図3に示すように、上記シート状エポキシ樹脂組成物6上の所定位置に、複数の接続用電極部(突起電極)2が設けられた半導体素子3を載置する。つぎに、上記シート状エポキシ樹脂組成物6を加熱溶融して溶融状態とし、加圧することにより上記半導体素子3の接続用電極部2が上記溶融状態のシート状エポキシ樹脂組成物6を押しのけ、配線回路基板1の回路電極部4と接続用電極部2が接触し、かつ上記半導体素子3と配線回路基板1との間の空隙内に上記溶融状態のエポキシ樹脂組成物が充填され樹脂封止される。なお、当接する各電極間の電気的接合は、空隙部の樹脂充填を行った後、半田リフローによる金属接合により電気的導通を確保してもよく、また樹脂充填後、継続して加熱加圧し樹脂成形を行うことにより電気的導通を確保してもよい。その後、必要に応じて、エポキシ樹脂組成物の完全硬化を行うことにより、図1に示すように、半導体素子3に設けられた接続用電極部2と配線回路基板1に設けられた回路電極部4とを対向させた状態で、配線回路基板1上に半導体素子3が搭載され、かつ上記配線回路基板1と半導体素子3との空隙が上記シート状エポキシ樹脂組成物6からなる封止樹脂層4によって樹脂封止された半導体装置を製造することができる。
【0051】
上記シート状エポキシ樹脂組成物6の大きさとしては、上記搭載される半導体素子3の大きさ(面積)に応じて適宜に設定され、通常、半導体素子3の大きさと略同じに設定することが好ましい。
【0052】
また、上記シート状エポキシ樹脂組成物6の厚みおよび重量は、上記と同様、搭載される半導体素子3の大きさおよび半導体素子3に設けられた接続用電極部2の大きさ、すなわち、半導体素子3と配線回路基板1との空隙を充填し封止することにより形成される上記封止樹脂層5の占める容積により適宜に設定される。
【0053】
このようにして得られる半導体装置の、半導体素子3と配線回路基板1との空隙間距離は、一般に、30〜300μm程度である。
【0054】
そして、上記半導体装置の製造方法において、上記シート状エポキシ樹脂組成物6を加熱溶融して溶融状態とする際の加熱温度としては、半導体素子3および配線回路基板1の耐熱性、および接続用電極部2の融点、およびシート状エポキシ樹脂組成物6の軟化点と耐熱性を考慮して適宜に設定される。例えば、200〜280℃程度に設定される。
【0055】
さらに、上記溶融状態としたシート状エポキシ樹脂組成物6を上記半導体素子3と配線回路基板1との間の空隙内に充填する際には、先に述べたように加圧することが好ましく、その加圧条件としては、接続用電極部2の材質および設けられた個数等によって適宜に設定されるが、具体的には、0.98×10-3〜490×10-3N/個の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは1.96×10-3〜196×10-3N/個である。
【実施例】
【0056】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0057】
まず、下記に示す各成分を準備した。
【0058】
〔エポキシ樹脂a1〕
ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量141g/eq)
【0059】
〔エポキシ樹脂a2〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185g/eq)
【0060】
〔フェノール樹脂〕
フェノールノボラック樹脂(水酸基当量104g/eq、軟化点60℃)
【0061】
〔シリコーン変性ポリイミド樹脂の調製〕
まず、下記の化合物を準備した。
ODPA:3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物
BAPP:2,2′−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン
HAB:4,4′−(3,3′−ジヒドロキシ)ジフェニルアミン
PSX−A:平均分子量740のジアミノシロキサン〔前記式(4)中、R1 ,R2 は1,3−プロピレン基、R3 〜R6 はメチル基/フェニル基(=9/1)である。〕
PSX−B:平均分子量2000のジアミノシロキサン〔前記式(4)中、R1 ,R2 は1,3−プロピレン基、R3 〜R6 はメチル基である。〕
【0062】
〔シリコーン変性ポリイミド樹脂c1〕
ODPA/BAPP/HAB/PSX−A=50/31.8/2.3/15.9(モル%)の割合で反応させて得られたシリコーン変性ポリイミド樹脂。
【0063】
〔シリコーン変性ポリイミド樹脂c2〕
ODPA/BAPP/HAB/PSX−B=50/31.8/2.3/15.9(モル%)の割合で反応させて得られたシリコーン変性ポリイミド樹脂。
【0064】
〔硬化促進剤〕
マイクロカプセル化トリフェニルホスフィン〔ポリ尿素シェル部分/トリフェニルホスフィン触媒コア部分=50/50(重量比)〕
【0065】
〔無機質充填剤〕
球状シリカ粉末(平均粒子径0.5μm、最大粒子径5μm)
【0066】
〔半田接合助剤〕
アジピン酸とシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルからなる共重合体(酸当量:269g/mol、数平均分子量(Mn):1100)
【0067】
〔アクリロニトリル−ブタジエンゴム〕
ムーニー粘度:50ML(1+4)(100℃)、結合アクリロニトリル含量:30重量%
【0068】
〔実施例1〜10、比較例1〜5〕
上記準備した各成分を下記の表1〜表2に示す割合で配合しメチルエチルケトンに混合溶解した。そして、この混合溶液を離型処理したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム表面に塗布した。つぎに、この混合溶液を塗布したPTFEフィルムを120℃で乾燥させ、メチルエチルケトンを除去することにより、上記PTFEフィルム面上に目的とする厚み50μmのシート状エポキシ樹脂組成物を作製した。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
このようにして得られた実施例および比較例のシート状エポキシ樹脂組成物を用い、下記の方法に従い各特性(シート成形性、粘度、シート加工性、体積抵抗値)を測定・評価した。その結果を後記の表3〜表5に併せて示した。
【0072】
〔シート成形性〕
エポキシ樹脂組成物をシート化した際に、剥離フィルム(PTFEフィルム)上で表面張力による樹脂のはじき(クレーター)が生じたものを×、クレーターを発生せずシート化できたものを○として判定した。
【0073】
〔粘度〕
得られたシート状エポキシ樹脂組成物1gを、プレート直径20mm,ギャップ100μm,回転速度10(1/S)に設定したE型粘度計(HAAKE社製、RS−1)を用いて130℃にて測定した。
【0074】
〔シート加工性〕
得られた剥離フィルム(PTFEフィルム)付きシート状エポキシ樹脂組成物を1m/minの速度でカッターを用いて切断し、切断後にシート状エポキシ樹脂組成物にヒビ,欠けが発生したものを×、発生しなかったものを○として判定した。
【0075】
〔体積抵抗値〕
得られたシート状エポキシ樹脂組成物を、厚み1mm×直径50mmの円盤に175℃で5分間の条件で成形した後、180℃で2時間の樹脂硬化を行った。そして、この100℃における体積抵抗値を印加電圧500Vで測定した。
【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
【表5】

【0079】
上記の結果、全ての実施例品は、シート成形性およびシート加工性に優れ、適正な粘度範囲を有しており、電気絶縁性にも優れていることがわかる。これに対して、比較例1〜3品は、電気絶縁性には優れているものの、粘度が低過ぎシート成形性およびシート加工性に劣るものであった。また、熱可塑性エラストマーを配合してなる比較例4品は、シート成形性およびシート加工性に優れているものの、電気絶縁性に劣るものであった。そして、熱可塑性エラストマーを少量配合してなる比較例5品は、比較例4品に比べて体積抵抗値は高く、またシート成形性には優れるものの、シート加工性に劣るものであった。
【0080】
つぎに、上記実施例1のシート状エポキシ樹脂組成物を用いて前述の製法にしたがって半導体装置を作製した。すなわち、図2に示すように、回路電極部4(高さ12.5μm)が形成された配線回路基板1〔ビスマレイミド−トリアジン(BT)基板〕上に、上記厚み50μmのシート状エポキシ樹脂組成物6を載置した。ついで、図3に示すように、上記シート状エポキシ樹脂組成物6上の所定位置に、複数の接続用電極部(突起電極)2(鉛フリーハンダ、高さ60μm)が設けられた半導体素子3(大きさ:10mm×10mm×厚み0.4mm)を載置した。つぎに、上記シート状エポキシ樹脂組成物6を、下記に示す条件で加熱溶融して溶融状態とし、加圧することにより、上記半導体素子3の接続用電極部2が上記溶融状態のシート状エポキシ樹脂組成物6を押しのけ、配線回路基板1の回路電極部4と接続用電極部2が接触し、かつ上記半導体素子3と配線回路基板1との間の空隙内に上記溶融状態のエポキシ樹脂組成物が充填され、加熱硬化することにより上記空隙が封止樹脂層5によって樹脂封止されたフェイスダウン構造の半導体装置を作製した。得られたフェイスダウン構造の半導体装置は、何の問題もなく信頼性に優れたものであった。
【0081】
加熱溶融条件:フリップチップボンダー(パナソニックファクトリーソリューションズ社製)FB30T−M
加圧条件:240℃、9.8×10-3N/バンプ、10秒、その後160℃で60分の後加熱
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の半導体装置を示す断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の製造工程を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の半導体装置の製造工程を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1 配線回路基板
2 接続用電極部
3 半導体素子
4 回路電極部
5 封止樹脂層
6 シート状エポキシ樹脂組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子に設けられた接続用電極部と配線回路基板に設けられた回路電極部とを対向させた状態で上記配線回路基板上に半導体素子が搭載された半導体装置における、上記配線回路基板と半導体素子との空隙樹脂封止用のシート状エポキシ樹脂組成物であって、下記の(A)〜(C)成分を含有することを特徴とするシート状エポキシ樹脂組成物。
(A)エポキシ樹脂。
(B)フェノール樹脂。
(C)下記の一般式(1)〜(3)で表される繰り返し単位をその分子構造に有するシリコーン変性ポリイミド樹脂。
【化1】

【化2】

【化3】

【請求項2】
下記の(x)〜(z)を備えた無機質充填剤を含有する請求項1記載のシート状エポキシ樹脂組成物。
(x)最大粒子径10μm以下。
(y)平均粒子径0.2〜5μm。
(z)粒子径5μm以下の粒子の含有割合が無機質充填剤全体の70容積%以上。
【請求項3】
有機カルボン酸とビニルエーテル化合物から得られる下記の一般式(5)で表される化学結合単位を備えた化合物を含有する請求項1または2記載のシート状エポキシ樹脂組成物。
【化4】

【請求項4】
半導体素子に設けられた接続用電極部と配線回路基板に設けられた回路電極部とを対向させた状態で上記配線回路基板上に半導体素子が搭載され、上記配線回路基板と半導体素子との空隙が封止樹脂層によって封止されてなる半導体装置であって、上記封止樹脂層が請求項1〜3のいずれか一項記載のシート状エポキシ樹脂組成物を用いて形成されてなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−13308(P2009−13308A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177586(P2007−177586)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】