説明

スイッチング電源回路

【課題】力率改善機能を有し、電力変換効率の向上、回路構成部品の削減を図るスイッチング電源回路を提供する。
【解決手段】力率を改善するスイッチング電源回路として、漏れインダクタL1と1次側直列共振コンデンサC1で形成される1次側直列共振回路、漏れインダクタンスL1と部分電圧共振コンデンサCpで形成される部分電圧共振回路および漏れインダクタンスL2と2次側直列共振コンデンサC2で形成される2次側直列共振回路を有する多重共振コンバータと、力率を改善する力率改善回路13と、力率改善回路13と交流電源ACとの間のコモンモードフィルタ部とを具備する。そして、力率改善回路13とコモンモードフィルタ部のコンデンサCNLを共用して、少ない部品点数ながらノイズの発生を低減する。また、部品点数の削減によって効率の改善を図った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の電源として備えられるスイッチング電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商用電源を整流して所望の直流電圧を得る電源回路としては、大部分がスイッチング方式の電源回路とされている。スイッチング電源回路はスイッチング周波数を高くすることによりトランスその他のデバイスを小型にすると共に、大電力のDC−DCコンバータとして各種の電子機器の電源として使用されている。
【0003】
ところで、商用電源は正弦波の交流電圧であるが、商用電源を整流素子と平滑コンデンサとを用いる平滑・整流回路において整流および平滑を行う場合には、平滑・整流回路のピークホールド作用のために、商用電源からスイッチング電源回路には、交流電圧のピーク電圧付近の短時間だけ電流が流れ込むこととなり、商用電源から電源回路に流れ込む電流は、正弦波とは大きく異なる歪み波形になってしまう。そして、電源の利用効率を示す力率が損なわれるという問題が生じる。また、このような歪み電流波形となることによって発生する商用電源周期の高調波を抑圧するための対策が必要とされてしまう。これらの問題を解決するために、従来において力率改善を図る技術として、いわゆるアクティブフィルタを用いる手法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
図31にこのようなアクティブフィルタの基本構成を示す。図31においては、商用の交流電源ACにコモンモードノイズを抑圧するためのコモンモードチョークコイルCMC1およびコモンモードチョークコイルCMC2の2個コモンモードチョークコイルと、3個のアクロスコンデンサCLとからなるコモンモードフィルタを介して、交流電源ACにブリッジ整流器として構成される1次側整流素子Diの入力側を接続している。この1次側整流素子Diの出力側の正極/負極ラインに対しては、ノーマルモードノイズを防止するためのインダクタLNと2個のコンデンサCNとで構成されるノーマルモードフィルタを介してステップアップ型のコンバータが接続され、その出力には並列に2次側平滑コンデンサCoutが接続され、その両端電圧として直流電圧Voutが得られる。この直流電圧Voutは、DC−DCコンバータ110の入力電圧として供給される。そして、DC−DCコンバータ110の2次側には出力直流電圧Eoutが得られる。
【0005】
そして、力率改善のための構成としては、インダクタL100、高速リカバリ型の高速スイッチングダイオードD100、スイッチング素子Q100からなるステップアップ型のコンバータ、および乗算器111を主なる構成要素とするステップアップ型のコンバータの制御部と、を備える。インダクタL100、高速スイッチングダイオードD100は、1次側整流素子Diの正極出力端子と、2次側平滑コンデンサCoutの正極端子との間に、直列に接続されて挿入される。抵抗Riは、1次側整流素子Diの負極出力端子(1次側アース)と2次側平滑コンデンサCoutの負極端子との間に挿入される。また、スイッチング素子Q100は、例えば、MOS−FETとされ、インダクタL100と高速スイッチングダイオードD100の接続点と、1次側アース間に挿入される。また、高速スイッチングダイオードD100の空乏層容量と漏れインダクタンスとで生じる共振を吸収するための抵抗RsnとコンデンサCsnとから成るスナバ回路が設けられている。
【0006】
乗算器111に対しては、電流検出ラインLiおよび波形入力ラインLwが接続され、さらに電圧検出ラインLvが接続される。そして、乗算器111は、電流検出ラインLiから入力される1次側整流素子Diの負極出力端子に流れる整流電流Iinに応じた信号を抵抗Riの両端から検出する。また、波形入力ラインLwから入力される1次側整流素子Diの正極出力端子の整流電圧Vinに応じた信号を検出する。この整流電圧Vinは、商用の交流電源ACからの交流入力電圧の波形を絶対値化したものである。さらに、電圧検出ラインLvから入力される2次側平滑コンデンサCoutの直流電圧Voutと所定の基準電圧との差分である誤差電圧を検出する。そして、乗算器111からは、スイッチング素子Q100を駆動するためのドライブ信号が出力される。
【0007】
乗算器111によって制御部されるステップアップ型のコンバータでは、電流検出ラインLiから検出した整流電流Iinに応じた信号と、上記電圧検出ラインLvから検出した誤差電圧とを乗算し、この乗算結果と、波形入力ラインLwから検出した整流電圧Vinに応じた信号との誤差を検出する。そしてこの誤差信号を増幅した後に、PWM(Pulse Width Modulation)変換を行い、ハイレベルとローレベルとの2値信号によって、スイッチング素子Q100を制御する。このようにして、2入力フィードバック系が構成され、直流電圧Voutの値が所定の値とされるとともに、整流電圧Vinに対して整流電流Iinを相似形の波形とする。この結果、商用の交流電源ACから1次側整流素子Diに印加される交流入力電圧VACと、1次側整流素子Diに流れ込む交流入力電流IACの波形も相似形となって、力率がほぼ1に近付くようにして力率改善が図られることになる。
【0008】
しかしながら、図31に示した構成による電源回路では、次のような問題を有している。図31に示す電源回路における電力変換効率としては、前段のアクティブフィルタに対応するAC電力からDC電力への変換効率と、後段のDC−DCコンバータ110におけるDC電力からDC電力への変換効率とを総合したものとなる。つまり、図31に示される回路の総合的な電力変換効率(総合効率)としては、これらの電力変換効率の値を乗算した値となるものであり、各々1以下となる数の積であるので、総合効率は低下してしまう。
【0009】
また、アクティブフィルタ回路はハードスイッチング動作であることから、ノイズの発生が大きいため、厳重なノイズ抑制対策が必要となる。このため、図31に示した回路では、商用の交流電源ACのラインに対して、コモンモードノイズに対応するためにコモンモードチョークコイルCMC1とコモンモードチョークコイルCMC2、アクロスコンデンサCLによるコモンノイズフィルタを設けている。また、ノーマルモードノイズに対応するために、1個のインダクタLNと2個のコンデンサCNから成るノーマルモードノイズフィルタを設けている。さらに、整流用の高速リカバリ型の高速スイッチングダイオードD100に対しては、抵抗RsnとコンデンサCsnとから成るスナバ回路を設けている。このようにして、多くの部品点数によるノイズ対策が必要であり、コストアップおよび電源回路基板の実装面積の大型化を招いている。
【0010】
さらに、スイッチング素子Q100のスイッチング周波数は、例えば、60kHzの固定の周波数であるのに対して、後段のDC/DCコンバータ110においては、例えば、電流共振コンバータのようなスイッチング周波数を変化させて出力直流電圧Eoutを一定に保つ定電圧制御方式とするコンバータを採用する場合には、そのスイッチング周波数は80kHz〜200kHzの範囲で可変となる。このようにして両者のスイッチングタイミング(クロック)は別個独立であるので、各々のクロックを基準に働く両者のスイッチング動作により、アース電位は干渉しあって不安定になり、例えば異常発振が生じやすくなる。これにより、例えば回路設計が難しいものとなったり、信頼性を劣化させたりするなどの問題も招くことになる。
【0011】
スイッチング素子Q100のスイッチング周波数が固定の周波数であるのに対応して、電流共振コンバータの周波数が変化することによって生じる上述した欠点を改善する別のスイッチング電源回路として一個のDC/DCコンバータによって力率改善機能と定電圧機能とを有するスイッチング電源回路が知られている(特許文献2を参照)。
【0012】
特許文献2に開示された図32に示すスイッチング電源回路は、1次側が電流共振回路と部分電圧共振回路を備える複合共振コンバータとして構成され、1次側の入力電圧平滑用電界コンデンサに共振パルス電圧を帰還する電圧帰還方式の力率改善回路を備えるものである。
【0013】
この図32に示すスイッチング電源回路においては、商用の交流電源ACからの交流電力は、力率改善整流回路210内に設けられている4個の高速リカバリ型ダイオード(高速スイッチングダイオード)によって形成される1次側整流素子Diによって全波整流される。そして、整流出力は、インダクタL210、3次巻線N203を介して1次側平滑コンデンサCiに充電され、整流平滑電圧Eiが得られることになる。
【0014】
この図32に示すスイッチング電源回路には、力率改善整流回路210の後段として、上述したDC/DCコンバータ110と同様な構成を有するDC/DCコンバータが接続されている。
【0015】
このDC/DCコンバータは、1次側平滑コンデンサCiの両端電圧である整流平滑電圧Eiを動作電源とし、自励方式で動作する2つのバイポーラトランジスタであるスイッチング素子Q201、スイッチング素子Q202をハーフブリッジ結合している。また、スイッチング素子Q201、スイッチング素子Q202の各ベース−エミッタ間には各々、ボディダイオードDD1とボディダイオードDD2とが挿入される。
【0016】
ここで、1次側直列共振コンデンサC1と1次巻線N201とは直列に接続されているが、この1次側直列共振コンデンサC1のキャパシタンス及び1次巻線N201によって形成される漏洩インダクタ(リーケージインダク)L201の生じるインダクタンスとにより、スイッチングコンバータの動作を電流共振形とするための1次側電流共振回路を形成している。さらに、スイッチング素子Q202のコレクタ−エミッタ間に対して並列に部分電圧共振コンデンサCpが接続され、この部分電圧共振コンデンサCpと1次巻線N201によって発生するリーケージインダクタンスをインダクタンス成分とするインダクタL201によってスイッチング素子Q201、スイッチング素子Q202のターンオフ時にのみ電圧共振動作が得られる部分電圧共振回路が形成される。
【0017】
この力率改善整流回路210は、交流入力電力の整流作用を有するとともに、交流電力の入力側からみたDC/DCコンバータの力率を1にちかづける作用、すなわち、力率改善作用を有するものとされる。力率改善整流回路210においては、交流ラインに対して、コンデンサCNとインダクタLNによるノーマルモードノイズ抑圧用のフィルタが形成される。
【0018】
3次巻線N203に誘起する電圧は、1次側電流共振コンバータのスイッチング動作に基づいて誘起する電圧であり、1次巻線N201の両端に発生する電圧に3次巻線N203と1次巻線N201の巻数比(N203/N201)を掛けた電圧に相応したパルス電圧である。このパルス電圧が、交流入力電圧VACの正負の絶対値が1/2以上の期間にブリッジ整流回路に電圧帰還される。
【0019】
このように交流入力電圧VACの正負の絶対値が1/2以上の期間に、電流I1によって1次側整流素子Diをスイッチング動作させることにより、整流出力電圧レベルが1次側平滑コンデンサCiの両端電圧よりも低い期間にも1次側平滑コンデンサCiへの充電電流が流れるようにされる。この結果、交流入力電流の平均的な波形が交流入力電圧の波形に近付くようにされて交流入力電流の導通角が拡大され、力率改善が図られることになる。
【0020】
コンバータトランスPITの2次側に発生する電圧は、高速スイッチングダイオードDo201ないし高速スイッチングダイオードDo204によって整流されて、2次側平滑コンデンサCo201および2次側平滑コンデンサCo202によって平滑されて、出力直流電圧Eout1および出力直流電圧Eout2を得るようになされている。また、ドライブトランスPRTはスイッチング素子Q201およびスイッチング素子Q202を駆動するとともに、制御回路201によってスイッチング素子周波数を可変制御することにより定電圧制御をおこなうために設けられるものである。
【0021】
また、上述した図31に示すコモンモードフィルタは、コモンモードノイズを抑圧するためのフィルタであり、上述した図31および図32に示すノーマルモードフィルタはノーマルモードを抑圧するためのフィルタであるが、電子機器において発生するノイズであって電源ラインに悪影響を与える成分としては、ノーマルモードノイズとコモンモードノイズとがあることが広く知られている。ここで、ノーマルモードノイズとは、2本の電源ラインを互いに逆向きに流れるノイズ電流によって生じるノイズであり、コモンモードノイズは、2本の2本の電源ラインを同じ向きに流れるノイズ電流によって生じるノイズである。スイッチング電源回路においては、この両方のノイズ成分は、スイッチング素子がスイッチングして交流電力を回路において取り扱うことから生じるものであるが、いずれのノイズ成分も電源を経由して、他の電子機器に妨害を与えることとなるので、十分に抑圧すべきであることも知られている。
【特許文献1】特開平6−327246号公報
【特許文献2】特開2003−189616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
これまでの説明から分かるように、図32に示した電源回路は、従来から知られている図31に示したアクティブフィルタを実装して構成されるスイッチング電源回路に較べて、構成部品の点数も少なく、ソフトスイッチング動作であるので、ノイズの発生はより少ないものである。しかしながら、スイッチング電源回路は、現在では、商用交流電源からの電力で動作するあらゆる電子機器に採用され、それらの機器の中には、装置全体のコストを安価なものとする必要があるものも多く、この観点よりスイッチング電源回路の低価格化が望まれている。
【0023】
また、図32に示すスイッチング電源回路においては、負荷電力の減少に伴って力率が低下する。例えば、交流入力電圧VACの値が230Vのときにおいて、入力電力が75Wの時の力率は、0.75程度である。このときの最大負荷時の150Wのときの力率は0.9である。また、交流入力電圧VACの値が100Vのときにおいて、最大負荷時の150Wのときの力率は0.95以上となる。しかしながら、力率の改善に伴い電力損失が増加して電力効率は低減する。しかしながら、装置の小型化、環境問題に対する省電力化の要望の観点から電力損失をさらに小さなものとすることに対して、より一層の要求がなされている現状を鑑みる場合には、図31に示す回路および図32に示す回路におけるよりも電源効率をより良好なものとすることが望ましい。
【0024】
さらに、スイッチング電源回路の用途は従来になく拡大しており、例えば、通信機、医療機器等にかかるスイッチング電源が採用されるような傾向があるところから、上述したコモンモードノイズ、ノーマルモードノイズのいずれについても、より、その発生のレベルを抑圧することが望まれている。
【0025】
本発明は、上述した課題を解決し、従来に較べて、ノイズの発生をより少なくし、より効率の向上を図り、部品点数をより少なくした力率改善機能を有するスイッチング電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明のスイッチング電源回路は、交流電源からの入力交流電力を1次側直流電力に変換する1次側整流平滑部と、前記1次側直流電力を交流電力に変換しさらに2次側直流電力に変換するコンバータ部と、力率を改善する力率改善部と、前記力率改善部と前記交流電源との間に介在されるコモンモードフィルタ部と、を備えるスイッチング電源回路であって、前記1次側整流平滑部は、交流電源からの入力交流電力を入力して整流する1次側整流素子と、1次側平滑コンデンサと、を具備し、前記コンバータ部は、1次巻線と、前記1次巻線と磁気的に疎結合とされる2次巻線と、前記1次巻線と磁気的に結合される3次巻線と、を有するコンバータトランスと、前記1次側整流平滑部から供給される前記1次側直流電力を、前記交流電力に変換して前記1次巻線に供給するスイッチング素子と、前記スイッチング素子をオン・オフ駆動する発振・ドライブ回路と、前記1次巻線に生じる漏れインダクタと1次側直列共振コンデンサとによって形成され、前記スイッチング素子から電力が供給される1次側直列共振回路と、前記1次巻線に生じる漏れインダクタと部分電圧共振コンデンサとによって形成され、前記スイッチング素子と並列に接続される部分電圧共振回路と、前記2次巻線に生じる漏れインダクタと2次側直列共振コンデンサとによって形成される2次側直列共振回路と、前記2次側直列共振回路に接続される整流素子と、前記整流素子に接続され前記出力直流電圧を得るようにされた2次側平滑コンデンサと、前記出力直流電圧の値を所定の値とするような制御信号を前記発振・ドライブ回路に供給する制御回路と、を具備し、前記力率改善部は、前記3次巻線に発生する共振パルスを整流できるスイッチング速度を有する前記1次側整流素子の入力側に接続された力率改善用インダクタとコンデンサとの直列回路を具備し、前記コモンモードフィルタ部は、コモンモードチョークコイルとアクロスコンデンサとして機能する前記力率改善部の前記コンデンサと、を具備する。
【0027】
このスイッチング電源回路は、コンバータ部として、1次側に1次側直列共振回路と部分電圧共振回路を有し、2次側に2次側直列共振回路を有する多重共振コンバータとして構成され、発振・ドライブ回路と、制御回路とによって2次側平滑コンデンサの両端から得られる出力直流電圧の値を所定の値とする。また、力率改善部は、3次巻線に発生する共振パルスを整流できるスイッチング速度を有する1次側整流素子の入力側に接続された力率改善用インダクタとコンデンサとの直列回路を具備することによって、共振パルスを整流して1次側整流素子の導通角を拡大して力率改善を図る。また、コモンモードフィルタ部は、コモンモードチョークコイルとアクロスコンデンサとして機能する力率改善部の前記コンデンサと、を具備して、コモンモードフィルタとして機能する。
【0028】
本発明の別のスイッチング電源回路は、交流電源からの入力交流電力を1次側直流電力に変換する1次側整流平滑部と、前記1次側直流電力を交流電力に変換しさらに2次側直流電力に変換するコンバータ部と、力率を改善する力率改善部と、前記力率改善部と前記交流電源との間に介在されるコモンモードフィルタ部と、を備えるスイッチング電源回路であって、前記1次側整流平滑部は、交流電源からの入力交流電力を入力して整流する1次側整流素子と、1次側平滑コンデンサと、を具備し、前記コンバータ部は、1次巻線および前記1次巻線と磁気的に疎結合とされる2次巻線を有するコンバータトランスと、前記1次側整流平滑部から供給される前記1次側直流電力を、前記交流電力に変換して前記1次巻線に供給するスイッチング素子と、前記スイッチング素子をオン・オフ駆動する発振・ドライブ回路と、前記1次巻線に生じる漏れインダクタと1次側直列共振コンデンサとによって形成され、前記スイッチング素子から電力が供給される1次側直列共振回路と、前記1次巻線に生じる漏れインダクタと部分電圧共振コンデンサとによって形成され、前記スイッチング素子と並列に接続される部分電圧共振回路と、前記2次巻線に生じる漏れインダクタと2次側直列共振コンデンサとによって形成される2次側直列共振回路と、前記2次側直列共振回路に接続される整流素子と、前記整流素子に接続され前記出力直流電圧を得るようにされた2次側平滑コンデンサと、前記出力直流電圧の値を所定の値とするような制御信号を前記発振・ドライブ回路に供給する制御回路と、を具備し、前記力率改善部は、第1巻線と第2巻線とが磁気的結合を有して形成される電圧帰還トランスと、前記1次側整流素子の入力側の各々の端子の間に接続されたコンデンサと、を具備し、前記1次側整流素子の出力側の各々の極性端子に前記電圧帰還トランスの前記第1巻線の一方の端子と前記電圧帰還トランスの前記第2巻線の一方の端子とが各々接続され、前記1次側整流素子の出力側のいずれかの極性端子に前記直列共振コンデンサが接続され、前記電圧帰還トランスの前記第1巻線の他方の端子と前記第2巻線の他方の端子との間に前記1次側平滑コンデンサが接続されて形成され、前記コモンモードフィルタ部は、コモンモードチョークコイルとアクロスコンデンサとして機能する前記力率改善部の前記コンデンサと、を具備する。
【0029】
このスイッチング電源回路は、コンバータ部として、1次側に1次側直列共振回路と部分電圧共振回路を有し、2次側に2次側直列共振回路を有する多重共振コンバータとして構成され、発振・ドライブ回路と、制御回路とによって2次側平滑コンデンサの両端から得られる出力直流電圧の値を所定の値とする。また、力率改善部は、第1巻線と第2巻線とが磁気的結合を有して形成される電圧帰還トランスと、1次側整流素子の入力側の各々の端子の間に接続されたコンデンサと、を具備し、1次側整流素子の出力側の各々の極性端子に電圧帰還トランスの第1巻線の一方の端子と電圧帰還トランスの第2巻線の一方の端子とが各々接続され、1次側整流素子の出力側のいずれかの極性端子に直列共振コンデンサが接続され、電圧帰還トランスの第1巻線の他方の端子と第2巻線の他方の端子との間に1次側平滑コンデンサが接続されて形成されている。そして、共振パルス電圧を第1巻線と第2巻線とに誘起して、1次側平滑コンデンサに帰還し、1次側整流素子の導通角を拡大して力率改善を図る。また、コモンモードフィルタ部は、コモンモードチョークコイルとアクロスコンデンサとして機能する力率改善部のコンデンサと、を具備して、コモンモードフィルタとして機能する。
【0030】
本発明のさらに別のスイッチング電源回路は、交流電源からの入力交流電力を1次側直流電力に変換する1次側整流平滑部と、前記1次側直流電力を交流電力に変換しさらに2次側直流電力に変換するコンバータ部と、力率を改善する力率改善部と、前記力率改善部と前記交流電源との間に介在されるコモンモードフィルタ部と、を備えるスイッチング電源回路であって、前記1次側整流平滑部は、交流電源からの入力交流電力を入力して整流する1次側整流素子と、1次側平滑コンデンサと、を具備し、前記コンバータ部は、1次巻線および前記1次巻線と磁気的に疎結合とされる2次巻線を有するコンバータトランスと、前記1次側整流平滑部から供給される前記1次側直流電力を、前記交流電力に変換して前記1次巻線に供給するスイッチング素子と、前記スイッチング素子をオン・オフ駆動する発振・ドライブ回路と、前記1次巻線に生じる漏れインダクタと1次側直列共振コンデンサとによって形成され、前記スイッチング素子から電力が供給される1次側直列共振回路と、前記1次巻線に生じる漏れインダクタと部分電圧共振コンデンサとによって形成され、前記スイッチング素子と並列に接続される部分電圧共振回路と、前記2次巻線に生じる漏れインダクタと2次側直列共振コンデンサとによって形成される2次側直列共振回路と、前記2次側直列共振回路に接続される整流素子と、前記整流素子に接続され前記出力直流電圧を得るようにされた2次側平滑コンデンサと、前記出力直流電圧の値を所定の値とするような制御信号を前記発振・ドライブ回路に供給する制御回路と、を具備し、前記力率改善部は、前記直列共振コンデンサが前記1次側整流素子の入力側の一の入力端に接続され、前記1次側整流素子の入力側の各々の端子には磁気的に結合される第1巻線と第2巻線とを有する電圧帰還トランスの各々の巻線の出力端が接続され、前記電圧帰還トランスの各々の巻線の入力端にコンデンサが接続され、前記1次側整流素子は前記直列共振コンデンサに流れる共振電流を整流できるスイッチング速度を有するものとされて構成されており、前記コモンモードフィルタ部は、コモンモードチョークコイルと前記コモンモードチョークコイルのアクロスコンデンサとして機能する前記力率改善部の前記コンデンサと、を具備する。
【0031】
このスイッチング電源回路は、コンバータ部として、1次側に1次側直列共振回路と部分電圧共振回路を有し、2次側に2次側直列共振回路を有する多重共振コンバータとして構成され、発振・ドライブ回路と、制御回路とによって2次側平滑コンデンサの両端から得られる出力直流電圧の値を所定の値とする。また、力率改善部は、直列共振コンデンサが1次側整流素子の入力側の一の入力端に接続され、1次側整流素子の入力側の各々の端子には磁気的に結合される第1巻線と第2巻線とを有する電圧帰還トランスの各々の巻線の出力端が接続され、電圧帰還トランスの各々の巻線の入力端にコンデンサが接続され、1次側整流素子は直列共振コンデンサに流れる共振電流を整流できるスイッチング速度を有するものとされて構成されており、直列共振電流を1次側整流素子を介して1次側平滑コンデンサに帰還し、1次側整流素子の導通角を拡大して力率改善を図る。また、コモンモードフィルタ部は、コモンモードチョークコイルとアクロスコンデンサとして機能する力率改善部のコンデンサと、を具備して、コモンモードフィルタとして機能する。
【発明の効果】
【0032】
本発明のスイッチング電源回路によれば、従来に較べて、部品点数をより少なくし、ノイズの発生もより少なくし、より効率の改善を図る力率改善機能を有するスイッチング電源回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
まず、力率改善機能と、定電圧機能とをDC/DCコンバータに持たせたワンコンバータ方式の電源について説明する。
【0034】
図1にワンコンバータ方式のスイッチング電源回路の一実施形態を示す。図1に示すワンコンバータ方式の電源回路は、1次側電流共振回路と1次側部分電圧共振回路とを組み合わせ、1次巻線N1と2次巻線N2とが磁気的に疎結合とされるコンバータトランスPITの2次巻線N2に接続された全波整流回路から出力直流電圧Eoを得るようにされたDC/DCコンバータである。そしてこのDC/DCコンバータは、いわゆる、複合共振形コンバータとして形成され、定電圧機能を有する。さらに、力率改善回路10を組み合わせて力率改善機能を有するものである。ここで、疎結合とは、1次巻線N1と2次巻線N2との磁気的な結合係数の値が、1以下であることを言うものであり、例えば、結合係数の値が0.8である場合を言うものである。すなわち、結合係数が1以下であるということは、1次巻線N1には鎖交し2次巻線N2には鎖交しない磁束が存在し、また、2次巻線N2には鎖交し1次巻線N1には鎖交しない磁束が存在するということである。
【0035】
なお、図1においては、2次側回路としては全波整流を備えるものであるが、これに替えて、2次側回路としては両波整流回路または倍圧整流回路を備えるものとしても良いものである。
【0036】
図1に示すワンコンバータ方式のスイッチング電源回路におけるDC/DCコンバータ部の説明を簡単にする。
【0037】
コンバータトランスPITは、1次側と2次側とを絶縁するとともに電圧の変換を行う機能を有するが、さらに、複合共振スイッチングコンバータとして機能させるための共振回路の一部を構成するインダクタL1としても機能する。ここで、インダクタL1は、コンバータトランスPITのコアに巻回される1次巻線N1の両端に発生する漏れインダクタンスをそのインダクタンスの値として有するものである。
【0038】
コンバータトランスPITは、フェライト材によるコアと1次巻線N1と2次巻線N2とによって構成されている。このコンバータトランスPITにおいては1次巻線N1と2次巻線N2との磁気的な結合は疎結合とされている。このようにして、大きなインダクタンスの値を漏れインダクタンス成分として得るようにしている。
【0039】
また、スイッチング素子Q1は、MOS−FETが選定され、ソース−ドレイン間に並列にボディダイオードDD1を内蔵する。また、スイッチング素子Q2は、MOS−FETが選定され、ソース−ドレイン間に並列にボディダイオードDD2を内蔵する。このような、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とが、相補的にスイッチング動作をすることによって、1次側直列共振コンデンサC1とインダクタL1とによって形成される1次側直列共振回路に直列共振電流を流し、部分電圧共振コンデンサCpとインダクタL1とによって形成される1次側部分電圧共振回路に部分共振電流を流す。
【0040】
コンバータトランスPITの2次側では、1次巻線N1により誘起された交番電圧に相似した電圧波形が2次巻線N2に発生する。この2次巻線N2に対して2次側整流素子Doを接続している。2次側整流素子Doの出力側には2次側平滑コンデンサCoが接続されている。これにより、2次側平滑コンデンサCoの両端から出力直流電圧Eoを得ている。
【0041】
制御回路1は、入力された出力直流電圧Eoと所定の値の基準電圧値との差に応じた検出出力(誤差電圧)を発振・ドライブ・OCP回路2に供給する。発振・ドライブ・OCP回路2では、入力された制御回路1の検出出力に応じて主としてはスイッチング周波数を可変するようにして、スイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2を駆動する。また、スイッチング周波数とともに一周期におけるスイッチング素子Q1のオンまたはスイッチング素子Q2のオンとなる時間の比率である時比率を変化させるようにしても良い。
【0042】
このようにしてスイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2のスイッチング周波数が可変制御されることにより、この可変制御の周波数に対して1次側直列共振回路のインピーダンスが変化し、コンバータトランスPITの1次巻線N1から2次巻線N2側に伝送される電力量、また、2次側整流回路から負荷に供給すべき電力量が変化することになる。これにより、出力直流電圧Eoの大きさを基準電圧と一致させる動作が得られることになる。つまり、出力直流電圧Eoの安定化が図られる。ここで、1次側部分電圧共振回路は、スイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2のオンとオフの切り替えのタイミングにおける損失を低減するように作用する。
【0043】
図1に示すワンコンバータ方式のスイッチング電源回路における力率改善回路10では、コンバータトランスPITに設けられた3次巻線N3の一方の巻端に高速スイッチングダイオードD1と力率改善用インダクタLoとの直列回路を接続し、3次巻線N3の他方の巻端と力率改善用インダクタLoに接続されない側の高速スイッチングダイオードD1の端子との間にノーマルモードのノイズを抑制するためのコンデンサCNを接続している。
【0044】
力率改善回路10のこのような接続態様によって、3次巻線N3に発生する共振パルス電圧を1次側平滑コンデンサCiに帰還して力率の改善を図っている。このように共振動作に応じて発生する電圧を1次側平滑コンデンサCiに帰還して力率を改善する方式を電圧帰還方式の力率改善回路と総称する。
【0045】
また、図2に示すのは別の方式の力率改善回路11である。1次側整流素子Diの交流入力側については、記載を省略したが、図1に示すものと同様な構成を有するものとされている。力率改善回路11では、1次側直列共振コンデンサC1と1次巻線N1の一端とに対して直列に電圧帰還トランスVFTの第2巻線Lo’を接続して、電圧帰還トランスVFTの第2巻線Lo’に1次側直列共振電流を流している。そして、電圧帰還トランスVFTの第2巻線Lo’に誘起する共振パルス電圧を1次側平滑コンデンサCiに帰還して、第1巻線Loによって1次側整流素子Diにおける流通角を拡大して力率を改善する電圧帰還方式の力率改善回路である。
【0046】
また、図3に示すのはさらに別の方式の力率改善回路12である。力率改善回路12では、1次側直列共振コンデンサC1と1次巻線N1の一端とが接続される直列回路の一方の側に対して、スイッチング素子Q1とボディダイオードDD1との並列回路とスイッチング素子Q2とボディダイオードDD2との並列回路の接続点を接続し、1次側直列共振コンデンサC1と1次巻線N1の一端とが接続される直列回路の他方の側に対して、力率改善用インダクタLoを接続している。そして、力率改善用インダクタLoを介して1次側平滑コンデンサCiに直列共振電流を流して、力率改善用インダクタLoに誘起する共振パルス電圧を1次側平滑コンデンサCiに帰還して力率改善を図っている。このようにして、誘起する共振パルス電圧を1次側平滑コンデンサCiに帰還して、このときに高速スイッチングダイオードD1に流れる電流に対応する電流を交流電源AC側から流して力率を改善する電力帰還方式の力率改善回路である。
【0047】
上述した、図1および図3に示すスイッチング電源回路では、力率改善回路10および力率改善回路13を構成するための部品は、力率改善用インダクタLo、高速スイッチングダイオードD1およびコンデンサCNの3点である。また、図2に示すスイッチング電源回路では、力率改善回路11を構成するための部品は、電圧帰還トランスVFT、高速スイッチングダイオードD1およびコンデンサCNの3点である。
【0048】
図1ないし図3のいずれの回路においても、1次巻線N1の一端に抵抗Rが接続され、抵抗Rの両端から1次巻線N1に流れる電流に応じた信号VOPが検出されるようになされている。この信号VOPは、発振・ドライブ・OCP回路2に入力されて、過負荷が生じた場合には1次巻線に流れる電流の値が所定値よりも大きくなることを検出し、これによって過負荷を検出して、スイッチング電源回路の発熱を防止するものである。発振・ドライブ・OCP回路2における発熱の防止回路については、後述する。
【0049】
図1ないし図3のスイッチング電源回路を代表するものとして、図3に示す力率改善回路12を備えるスイッチング電源回路について、その特性を説明する。
【0050】
図4は、交流入力電圧VACの値が100Vまたは230Vの入力電圧条件下において負荷電力Poの値が、0W(無負荷)から150Wの範囲での負荷変動に対する力率PF、および交流入力電力に対する直流出力電力の電力変換効率ηAC→DCを示している。実線は交流入力電圧VACの値が100Vのときの特性、破線は交流入力電圧VACの値が230Vのときの特性を各々示すものである。
【0051】
ここで、高調波歪規制値のクラスA規格では交流入力電力が75W以上の場合が規制の対象となるものである。したがって、負荷電力Poの値として、いくぶん余裕をみて、負荷電力Poが70Wにおいて、力率PFの値を0.75以上に設定するのが規制をクリアする観点からは望ましいこととなる。このために、図3に示す回路において、交流入力電圧VACの値が230V、負荷電力Poが70Wのとき力率PFの値を0.75となるように力率改善用インダクタLoの値を設定している。
【0052】
図4から明らかなように、負荷電力Poが大きくなる程、力率PFの値は1にちかづき良好なるものになる。このようにして、負荷電力Poが70Wにおいて、力率PFの値を0.75以上となるように力率改善用インダクタLoの値を設定することによって、交流入力電圧VACの値が100Vのときも含めて、高調波歪規制値のクラスA規格を満たすこととなる。
【0053】
上述した条件を満たすように力率改善用インダクタLoの値を設定する場合においては、図4から見て取れるように、例えば、交流入力電圧VACの値が230Vにおいて、負荷電力Poの値が150Wである場合には、力率PFの値は0.89となり、交流入力電圧VACの値が100Vにおいて、負荷電力Poの値が150Wである場合には、力率PFの値は0.96となる。
【0054】
ここで、交流入力電力に対する直流出力電力の電力変換効率ηAC→DCの値に注目すると、高速スイッチングダイオードD1と1次側整流素子DiとDC/DCコンバータとの損失によって効率は1以下となり、交流入力電圧VACの値が100Vにおいて、負荷電力Poの値が150Wである場合には、電力変換効率ηAC→DCの値は90%となり、交流入力電圧VACの値が230Vにおいて、負荷電力Poの値が150Wである場合には、電力変換効率ηAC→DCの値は92%となる。
【0055】
以上述べたように、図1ないし図3に示すスイッチング電源回路では、高調波歪規制値のクラスA規格を満たし、部品点数も背景技術に示すものに較べて大幅に少なくすることができ、電力変換効率ηAC→DCの値も良好なものとできる。しかしながら、上述した図1ないし図3に示すスイッチング電源回路を医療機器に用いる場合には、交流電源ACのラインに対する電源妨害である雑音端子電圧の規格は、家庭用の電機機器(家電機器)の規格よりも低レベルであり、さらに、ノイズの発生のレベルを低下させることが望ましい。
【0056】
上述した、電源妨害、電力変換効率、力率改善について、より良好なる特性を有するのが図5に示す回路および図5の変形例としての図10ないし図13に示す回路、図14に示す回路および図14の変形例としての図15ないし図21に示す回路、図22に示す回路および図22の変形例としての図26ないし図32に示す回路である。各々のスイッチング電源回路の細部の説明をする前に、それらに、共通する技術的特徴を以下に簡単に説明する。
【0057】
上述のスイッチング電源回路は、いずれも、1次側に1次側直列共振回路と部分電圧共振回路を有し、2次側に2次側直列共振回路を有する、多重共振コンバータとして構成されている。また、この多重共振コンバータは、力率を改善する力率改善部(力率改善回路)と、力率改善部と交流電源との間に介在して、コモンモードノイズを抑圧するコモンモードフィルタ部と、を備えるものである。そして、力率改善部の構成部分のコンデンサとコモンモードフィルタ部の構成部分のコンデンサとを共用して用い、部品点数を減らすものである。また、実施形態によってはノーマルモードノイズを抑圧するためのインダクタとコモンモードチョークコイルとを共用するものである。このように重複した機能を有する共用部品を採用することによって部品点数の削減を図り効率を向上するとともに、これらの部品の高周波特性を良好なるものとして、電源妨害(ノイズ)を抑圧する。
【0058】
まず、図5に示す回路および図5の変形例としての図10ないし図13に示すスイッチング電源回路について説明する。まず、図5に示すスイッチング電源回路の説明をする。その後、図5に示すスイッチング電源回路の変形例である図10ないし図13に示すスイッチング電源回路について説明する。
【0059】
図5に示すスイッチング電源回路は、交流電源ACからの入力交流電力を1次側直流電力に変換する1次側整流平滑部と、前記1次側直流電力を交流電力に変換しさらに2次側直流電力に変換するコンバータ部と、力率を改善する力率改善部(力率改善回路)と、前記力率改善部と前記交流電源との間に介在されるコモンモードフィルタ部と、を備えるものである。
【0060】
この1次側整流平滑部は、交流電源ACからの入力交流電力を入力して整流する1次側整流素子Diと、1次側平滑コンデンサCiと、を具備する。このスイッチング電源回路では、1次側整流素子Diは後述する力率改善回路の一部として機能し、1次側整流素子Diと1次側平滑コンデンサCiとは後述する3次巻線N3を介して接続されている。
【0061】
また、コンバータ部は、1次巻線N1と、1次巻線N1と磁気的に疎結合とされる2次巻線N2と、1次巻線N1と磁気的に結合される3次巻線N3と、を有するコンバータトランスPITと、1次側整流平滑部から供給される1次側直流電力を、商用周波数よりも高い周波数の交流電力に変換して1次巻線N1に供給するスイッチング素子であるスイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2と、これらのスイッチング素子をオン・オフ駆動する発振・ドライブ・OCP回路2に含まれる発振・ドライブ回路と、1次巻線N1に生じる漏れインダクタL1と1次側直列共振コンデンサC1とによって形成され、スイッチング素子から電力が供給される1次側直列共振回路と、1次巻線に生じる漏れインダクタと部分電圧共振コンデンサCpとによって形成され、スイッチング素子Q2と並列に接続される部分電圧共振回路と、2次巻線N2に生じる漏れインダクタL2と2次側直列共振コンデンサC2とによって形成される2次側直列共振回路と、2次側直列共振回路に接続される2次側整流素子Doと、2次側整流素子Doに接続され出力直流電圧Eoを得るようにされた2次側平滑コンデンサCoと、出力直流電圧Eoの値を所定の値とするような制御信号を発振・ドライブ回路に供給する制御回路1と、を具備する。
【0062】
ここで、2次側整流回路の2次側整流素子Doは、高速スイッチングダイオードDo1ないし高速スイッチングダイオードDo4で形成されるブリッジ接続を採用して全波整流をおこなう。
【0063】
また、力率改善部は、3次巻線N3に発生する共振パルスを整流できるスイッチング速度を有するように1次側整流素子Diを高速スイッチングダイオードDi1ないし高速スイッチングダイオードDi4のブリッジ接続によって形成する。そして、ブリッジ接続とされた1次側整流素子Diの入力側に接続された力率改善用インダクタLoとコンデンサCNLとの直列回路を具備する。この力率改善用インダクタLoとコンデンサCNLとは、1次側整流素子Diの入力側からみるとローパスフィルタとして機能し、ノーマルモードノイズを抑圧するノーマルモードノイズフィルタとして機能する。
【0064】
また、コモンモードフィルタ部は、コモンモードチョークコイルCMCとアクロスコンデンサとして機能するコンデンサCNLと、を具備する。ここで、コンデンサCNLは上述したようにローパスフィルタの一部として作用するとともに、コモンモードフィルタのアクロスコンデンサとしても機能する。すなわち、コンデンサCNLが接続されることによって、コモンモードチョークコイルCMCの両端の電位が同一電位とされ、コモンモードノイズの抑圧の作用が効果的とされる。また、コンデンサCNLの両端に交流電源ACからの交流電圧が印加され1次側整流素子Diの入力側に交流電力が供給される。
【0065】
図5に示すスイッチング電源回路の主要部について、より詳細に説明を加える。
【0066】
交流電力は、1次側整流素子Diによって全波整流された後、1次側平滑コンデンサCiによって、1次側直流電力に変換された電力はコンバータ部に供給されるが、コンバータ部は、いわゆる、DC/DCコンバータの中でも、多重共振形コンバータとして構成されており、1次巻線N1の両端に生じると漏れインダクタL1と1次側直列共振コンデンサC1とによって1次側直列共振回路が形成されており、この1次側直列共振回路には、スイッチング素子Q1のソースとスイッチング素子Q2のドレインとの接続点が接続されており、これによって交流電力が1次側直列共振回路に印加される。また、スイッチング素子Q2に並列に接続された部分電圧共振コンデンサCpと漏れインダクタL1とによって部分電圧共振回路を構成する。さらに、2次巻線N2の両端に生じると漏れインダクタL2と2次側直列共振コンデンサC2とによって2次側直列共振回路が形成されている。
【0067】
このようにして、多重共振形コンバータが構成され、交流電力の周波数に応じて2次巻線N2に1次巻線N1から伝送される電力量が変化する。ここで、1次側直列共振回路の共振周波数は、漏れインダクタL1のインダクタンスの値と1次側直列共振コンデンサC1のキャパシタンスの値とによって定められるものであり、1次側直列共振コンデンサC1の値は、0.056μF(マイクロ・ファラッド)とした。また、2次側直列共振回路の共振周波数は、漏れインダクタL2のインダクタンスの値と2次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスの値とによって定められるものであり、2次側直列共振コンデンサC2の値は、1μFとした。このようにして、2つの直列共振回路の共振周波数は、1次側直列共振コンデンサC1と2次側直列共振コンデンサC2との値を選択することによって、各々、独立に定め得るものであるので、多重共振コンバータとしての所望の動作、例えば、スイッチング周波数の可変範囲を狭くする等に合わせて、1次側直列共振周波数と2次側直列共振周波数は自由に設定が可能とされている。また、部分電圧共振回路は、スイッチング素子のオン・オフの切り替えによって生じる電力損失を低減する。部分電圧共振コンデンサCpのキャパシタンスの値は680pF(ピコ・ファラッド)とした。このような、多重共振コンバータの技術自体は公知の技術である。
【0068】
漏れインダクタL1を発生させるコンバータトランスPITの構造を以下に説明する。コンバータトランスPITは、1次側と2次側とを絶縁するとともに電圧の変換を行う機能を有するが、さらに、インダクタL1としても機能する。ここで、インダクタL1のインダクタンスは、コンバータトランスPITによって形成される漏れインダクタンスである。このような漏れインダクタンスをどのようにして生じさせるかについて、図6に示すコンバータトランスPITの断面図を示して具体的に説明する。
【0069】
コンバータトランスPITは、フェライト材によるE型コアCR1とE型コアCR2とを互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE型コア(EE字形コア)を備える。そして、1次側と2次側の巻装部については、相互に独立するようにして分割し、例えば樹脂などによって形成されるボビンBが備えられる。そして、1次側の巻装部として1次巻線N1および3次巻線N3、2次側の巻装部として2次巻線N2が巻装されたボビンBをEE字形コアに取り付けることで、1次巻線N1および3次巻線N3が一の領域に巻装され、2次巻線N2がこの一の領域とは異なる巻装領域に分離され、EE字形コアの中央磁脚に巻装される状態となる。このようにしてコンバータトランスPIT全体としての構造が得られる。
【0070】
このEE字形コアの中央磁脚に対しては、1.0mmのギャップGを形成する。これによって、1次側と2次側との結合係数kの値としては、0.79を得ている。このようにして、結合係数kの値を1よりも小さくする、すなわち、疎結合とすることによって、1次巻線N1に発生する磁束の一部は2次巻線N2と鎖交しなくなり、この鎖交しない磁束の効果によってインダクタL1を形成して大きなインダクタンスの値を得るようにしている。なお、ギャップGは、E型コアCR1およびE型コアCR2の中央磁脚を、2本の外磁脚よりも短くすることで形成している。また、1次巻線N1の巻数は35T(ターン)、2次巻線N2の巻数は8T、3次巻線N3の巻数は15T、コア材は、EER―35(コア材名称)とした。
【0071】
このようにして形成された1次側直列共振回路に印加される交流電力の周波数を変化させて、上述したように2次側に伝送される電力量を可変として、よって、出力直流電圧Eoの値を負荷が消費する電力量にかかわらずに一定とできる多重共振コンバータが構成される。
【0072】
スイッチング素子Q1は、MOS−FETが選定され、ソース−ドレイン間に並列にボディダイオードDD1を内蔵する。また、スイッチング素子Q2は、MOS−FETが選定され、ソース−ドレイン間に並列にボディダイオードDD2を内蔵する。このような、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とが相補的にスイッチング動作をすることによって、部分電圧共振コンデンサCpとインダクタL1とによって形成される部分電圧共振回路に部分共振電流を流し、1次側直列共振コンデンサC1とインダクタL1とによって形成される1次側直列共振回路に直列共振電流を流す。
【0073】
図5に示す力率改善回路13の構成について説明する。力率改善回路13は、1次側整流素子Diとして、図32に背景技術として示すと同様にして高速スイッチングダイオードDi1ないし高速スイッチングダイオードDi4を用いるものであり、図1ないし図3においては、1次側整流素子Diとして、低速度の整流ダイオードを用いるものである点において異なる。
【0074】
また、図5に示す力率改善回路13では力率改善用インダクタLoを交流のライン側、すなわち、1次側整流素子Diの入力側に接続しており、図1ないし図3においては、力率改善用インダクタLoを1次側整流素子Diの出力側に接続している点において異なる。
【0075】
また、コンデンサCNLは、1次側整流素子Diの入力側の一端に接続された力率改善用インダクタLoの他端と1次側整流素子Diの入力側の他端(力率改善用インダクタLoの接続されない側の端子)に接続されている。ここで、コンデンサCNLのキャパシタンスの値は1μFとし、力率改善用インダクタLoのインダクタンスの値は170μHとした。
【0076】
上述した構成を有する力率改善回路では、共振電流である電流I1の一方向の電流は、コンデンサCNL、力率改善用インダクタLo、高速スイッチングダイオードDi1、3次巻線N3、1次側平滑コンデンサCi、高速スイッチングダイオードDi4、コンデンサCNLの順に流れ、電流I1の他方向の電流は、コンデンサCNL、高速スイッチングダイオードDi3、3次巻線N3、1次側平滑コンデンサCi、高速スイッチングダイオードDi2、力率改善用インダクタLo、コンデンサCNLの順に流れる。すなわち、電流I1の高周波成分はコンデンサCNLに流される。コンデンサCNLは高周波特性が良好なるコンデンサであるので、電流I1の高周波成分はコンデンサCNLによって短絡されてコンデンサCNLの両端の電圧(ノーマルモードノイズ)は非常に小さいものとなる。また、上述したようにして、1次側平滑コンデンサCiに3次巻線に発生する共振パルスに応じた電圧が帰還されることとなる。
【0077】
ここで、コンデンサCNLは、図1ないし図3に示すアクロスコンデンサCL2と同じ位置、すなわち、コモンモードチョークコイルCMCの両端の間に配置されたアクロスコンデンサとしても機能してコモンモードノイズを抑圧する作用も同時におこなう。このような構成を採用することによって、図1ないし図3に示すコモンモードノイズの発生を抑圧するアクロスコンデンサCL1およびアクロスコンデンサCL2と、図1ないし図3に示すノーマルモードノイズの発生を抑圧するコンデンサCNとの2個のコンデンサの各々が奏する作用を1個のコンデンサであるコンデンサCNLによって奏することができる。
【0078】
すなわち、図5に示す力率改善回路13を有するスイッチング電源回路では、交流ライン側、すなわち、1次側整流素子Diの入力側に力率改善用インダクタLoとコンデンサCNとを備えることによって、少ない部品の点数で、コモンモードノイズを抑圧するコモンモードフィルタとノーマルモードノイズを抑圧するノーマルモードフィルタとの両方の特性を呈する回路構成を実現することができる。これによって、回路の簡略化、部品の低減によるコストの低価格化が可能となる。
【0079】
コストの低価格化が可能となる大きな理由は以下に述べるものである。まず、コモンモードチョークコイルCMCの両端の間に配置されたアクロスコンデンサに対しては、耐圧に対する要求が厳格であり、また、このようなアクロスコンデンサの高周波特性が良好でない場合には、コモンモードノイズを抑圧する作用が十分得られないところから、高周波特性が良好であるコンデンサがアクロスコンデンサとしの特性として要求されるので、価格も高価なものになりがちであった。一方、高速スイッチングダイオードDi1ないし高速スイッチングダイオードDi4の4つの高速スイッチングダイオードの中の2つ高速スイッチングダイオードと力率改善用インダクタLoに流れる電流I1の高周波成分を抑圧するノーマルモードフィルタに用いるコンデンサの高周波特性は良好なるものでなければならず、同様に高価なものになりがちであった。図5に示す力率改善回路13では、このような高価なコンデンサを一つにすることができるので装置の低価格化が実現できる。
【0080】
制御回路1は、入力された出力直流電圧Eoと所定の値の基準電圧値との差に応じた検出出力を発振・ドライブ・OCP回路2に供給する。発振・ドライブ・OCP回路2では、入力された制御回路1の検出出力に応じて主としてはスイッチング周波数を可変するようにして、スイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2を駆動する。また、スイッチング周波数とともに一周期におけるスイッチング素子Q1のオンまたはスイッチング素子Q2のオンとなる時間の比率である時比率を変化させるようにしても良い。
【0081】
このようにしてスイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2のスイッチング周波数が可変制御されることにより、スイッチング周波数に応じて1次側直列共振回路および2次側直列共振回路のインピーダンスが変化し、コンバータトランスPITの1次巻線N1から2次巻線N2側に伝送される電力量、また、2次側整流回路から負荷に供給すべき電力量が変化することになる。これにより、出力直流電圧Eoの大きさを基準電圧と一致させる動作が得られることになる。つまり、出力直流電圧Eoの安定化が図られる。
【0082】
力率改善回路13の具体的な定数について以下にまとめる。上述したように、力率改善用インダクタLoのインダクタンスの値は170μHとし、1次側整流素子Diはいずれも高速スイッチングダイオードを4個用い、コンデンサCNLのキャパシタンスの値は1μFとした。
【0083】
図5に示すスイッチング電源回路の要部の動作波形を図7および図8に示し、図5に示すスイッチング電源回路によって得られる特性の測定データを図9に示す。
【0084】
図7は、交流入力電圧100V、最大負荷電力である負荷電力Poが150Wにおける主要部の動作波形を商用の交流電源周期により示している。上段より下段に向かって、交流入力電圧VAC(図5を参照)、交流入力電流IAC(図5を参照)、電圧V1(図5を参照)、電流I1(図5を参照)、電圧V2(図5を参照)、電流I2(図5を参照)の各々を示す。図7の電圧V1、電流I1、電圧V2、および電流I2の縦線を施した部分の各々は、スイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2のスイッチング周期と同じ周期でスイッチングしていることを示すものである。
【0085】
図7の交流入力電圧VACと交流入力電流IACとの関係を見ると、交流入力電流IACの流れる期間である流通角は、力率改善回路13を設けることがない場合に較べて拡大している。すなわち、図5において、力率改善用インダクタLoおよび3次巻線N3を備えることがない場合、すなわち、図示しないが、1次側整流素子Diの出力側の端子に1次側平滑コンデンサCiを直接に接続する場合には、図7の交流入力電圧VACのピーク電圧付近でのみパルス状に交流入力電流IACが流れることとなる。一方、図5に示す力率改善回路13を設ける場合においてはこのようなことはなく、交流入力電圧VACと交流入力電流IACとの関係は略相似形となっている。
【0086】
また、図8は、交流入力電圧230V、最大負荷電力である負荷電力Poが150Wにおける主要部の動作波形を商用の交流電源周期により示している。上段より下段に向かって、交流入力電圧VAC(図5を参照)、交流入力電流IAC(図5を参照)、電圧V1(図5を参照)、電流I1(図5を参照)、電圧V2(図5を参照)、電流I2(図5を参照)の各々を示す。図7の電圧V1、電流I1、電圧V2、および電流I2の縦線を施した部分の各々は、スイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2のスイッチング周期と同じ周期でスイッチングしていることを示すものである。図8に示す交流入力電圧VACと交流入力電流IACとの関係から明らかなように、交流入力電圧230Vにおいても、交流入力電流IACの流通角は拡大して、交流入力電圧VACと交流入力電流IACとの関係は略相似形となっている。
【0087】
図9は、交流入力電圧VACの値が100Vまたは230Vの入力電圧の条件下において負荷電力Poの値が、0W(無負荷)から150Wの範囲での負荷変動に対する整流平滑電圧Ei、力率PF、および交流入力電力に対する直流出力電力の電力変換効率ηAC→DCを示している。実線は交流入力電圧VACの値が100Vの特性、破線は交流入力電圧VACの値が230Vの特性を示すものである。
【0088】
図9から読み取れる代表特性の一部を紹介する。3次巻線N3と力率改善用インダクタLoとの値を適切に設定することによって、広範囲な負荷変動の範囲で良好なる力率PFの特性を有することができるものとなる。例えば、図9に示すように、負荷電力Poの値については、無負荷から最大負荷である150Wの範囲の中間点で最良となるように設定する場合に広範囲な負荷変動に対して良好なる力率PFの値を有することができる。例えば、交流入力電圧VACの値が100Vの場合には、負荷電力Poの値として60W付近における力率PFを最良値とし、交流入力電圧VACの値が230Vの場合には、負荷電力Poの値として100W付近における力率PFを最良値とした。
【0089】
また、図9においては、電力変換効率ηAC→DCの値としては、交流入力電圧VACの値が100Vの場合で、出力直流電圧Eoの値が48V、負荷電力Poの値が最大負荷の150Wのときに91.7%であり、交流入力電圧VACの値が230Vの場合で、出力直流電圧Eoの値が48V、負荷電力Poの値が最大負荷の150Wのときに94.0%であった。この値は、図1ないし図3に示すスイッチング電源回路よりも、電力変換効率ηAC→DCの値が向上している。これは、ダイオードに流れる電流が通過する経路に存在するダイオードの個数を減らし、高周波電流が流れるコンデンサの個数を減らす等によって部品点数を減らしたことによって得られる効果、すなわち、力率改善回路13の構成態様として、力率改善用インダクタLoをACライン側に挿入することによって得られる効果である。
【0090】
また、図5のスイッチング電源回路では、アクティブフィルタを不要としたことで、回路構成部品の点数削減が図られる。つまり、図31に示すアクティブフィルタは、スイッチング素子Q100と、これらを駆動するための乗算器111等を始め、多くの部品により構成される。これに対し、実施形態のスイッチング電源回路においては、力率改善のために必要な追加部品として、コンデンサCNL、力率改善用インダクタLoおよび1次側整流素子Diとして高速整流素子を備えればよく、アクティブフィルタと比較すれば部品点数を少ないものとすることができる。
【0091】
また、図32に示すスイッチング回路と比較した場合には、ノイズの低減効果は極めて良好であり、さらに、図1ないし図3に示すスイッチングに較べてもノイズの低減効果を極めて良好とするとともに、部品点数を少なくして低コストなものとすることができる。
【0092】
また、図5のスイッチング電源回路では、多重共振形のコンバータ部および力率改善部の動作はいわゆるソフトスイッチング動作であるから、図31に示したアクティブフィルタを用いる回路と比較すればスイッチングノイズのレベルは大幅に低減される。
【0093】
また、2次側の高速スイッチングダイオードである高速スイッチングダイオードDo1および高速スイッチングダイオードDo2、高速スイッチングダイオードDi1ないし高速スイッチングダイオードDi4などもスイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2に同期してスイッチングの動作をするものである。したがって、アース電位としては、図31のスイッチング電源回路のように、アクティブフィルタ側と、その後段のスイッチングコンバータとの間で干渉することが無く、スイッチング周波数の変化に関わらず安定させることができる。
【0094】
また、図1ないし図3に示すスイッチング電源回路では、1次側整流素子Diの中の2個の整流ダイオードおよび高速スイッチングダイオードD1を合わせた3個のダイオードに高周波の電流および整流電流が流れ、これによって生じる順方向電力損失およびスイッチング損失が電力損失となったが、図5に示すスイッチング電源回路では、高周波の電流および整流電流が流れるダイオードの数を2個としてダイオードにおける電力損失を減らしている。さらに、図1ないし図3においては、交流電流が、アクロスコンデンサCL1、アクロスコンデンサCL2、コンデンサCNの3個に流れるのに対して、図5では、アクロスコンデンサCLとコンデンサCNLとの2個に流れるようにして、高周波電流が流れるコンデンサの数を減らし、結果としてコンデンサにおける電力損失を減らしている。
【0095】
また、図5に示すスイッチング電源回路では、高周波の電流および整流電流が流れるダイオードの数を2個として、低速用のダイオードに加えて高速スイッチングダイオードを用いる背景技術と比較する場合には、負荷電力Poの値が150Wにおいて、ダイオードにおける電力損失を0.8W程度減らしている。
【0096】
このようにして、ダイオードとコンデンサにおける電力損失を低減することによって、図1ないし図3に示すスイッチング電源回路に較べて図5に示すスイッチング電源回路では、最大負荷である負荷電力Poの値が150Wにおいて、交流入力電圧VACの値が100Vの場合で、2.2%程度、交流入力電圧VACの値が230Vの場合で、2.6%程度の電力変換効率ηAC→DCの値の改善がなされた。
【0097】
また、力率改善用インダクタLoの値と3次巻線N3の巻数の選定によって、中間負荷時(負荷電力Poの値が無負荷と最大負荷との間の値を言う)における力率PFの値を最良のものとして、力率PFを広範囲に良好なるものとすることができ、交流入力電圧VACの値が100Vの場合および交流入力電圧VACの値が230Vの場合のいずれにおいても最大負荷時の力率PFを同程度にすることができる。
【0098】
図32、図1ないし図3に示すスイッチング電源回路との比較においては、力率改善用インダクタLoを交流電源ライン側(1次側整流素子Diの入力側)に挿入してノーマルモードノイズが大幅に低減できた。
【0099】
さらに、DC/DCコンバータに追加する力率改善のための追加の部品の点数は、図5に示す力率改善回路13においては、力率改善用インダクタLoの1点であり、部品点数を削減することができる。
【0100】
図5に示すスイッチング電源回路の力率改善回路13の変形例を図10に示す。図10においては、力率改善回路13とは異なる力率改善回路14を採用し、全波整流回路に替えて倍圧整流回路を採用する点で図5に示すスイッチング電源回路と異なる。図10においては、図5と同様にして、3次巻線N3および1次側平滑コンデンサCiの接続点にはスイッチング素子Q1のドレイン側が接続され、1次巻線N1には1次側直列共振コンデンサC1が接続されているが、その記載が省略されている。また、発振・ドライブ・OCP回路2および制御回路1が省略され、発振・ドライブ・OCP回路2および制御回路1については、図5に示すと同様の接続態様となされている。
【0101】
図10に示す力率改善回路14においては、コンデンサCNLに替えてコンデンサCNL1およびコンデンサCNL2の直列接続回路を採用している。ここで、コンデンサCNL1およびコンデンサCNL2は、図1ないし図3に示すアクロスコンデンサCL2と同じ位置、すなわち、コモンモードチョークコイルCMCの両端の間に配置されたアクロスコンデンサとしても機能してコモンモードノイズを抑圧する作用も同時におこなう。そして、コンデンサCNL1およびコンデンサCNL2の接続点は1次側の基準電位となる1次側接地点に接続されているので、図5に示すような力率改善回路13で採用する回路構成と較べた場合にコモンモードノイズの低減効果はさらに良好となる。
【0102】
すなわち、コンデンサCNL1およびコンデンサCNL2の接続点は高周波的には接地電位とされ、この接続点を接地しない場合に較べて、コモンモードノイズの発生のレベルが低いものとされている。それに加えて、コンデンサCNLのみを設ける場合と同様に、コモンモードチョークコイルCMCの出力側の2本のライン間の高周波の電位を同一として、コモンモードチョークコイルCMCの作用を効果的にしている。
【0103】
図10に示す2次側の回路は、漏れインダクタL2と2次側直列共振コンデンサC2で第1の2次側直列共振回路を形成し、漏れインダクタL2’と2次側直列共振コンデンサC2’で第2の2次側直列共振回路を形成している。ここで、2次巻線N2の巻数と2次巻線N2’の巻数は同一とされており、センタータップを基準として逆位相の電圧が発生している。また、漏れインダクタL2と漏れインダクタL2’のインダクタンスの値は巻数が等しいので略同様の値であり、2次側直列共振コンデンサC2と次側2次側直列共振コンデンサC2’の値も等しいものに選ばれ、第1の2次側直列共振回路の共振周波数と第2の2次側直列共振回路の共振周波数は等しいものとされている。
【0104】
2次側直列共振コンデンサC2は高速スイッチングダイオードDo6に流れる電流によって充電される。また、2次側直列共振コンデンサC2を通過した交流電圧は高速スイッチングダイオードDo6に印加されて2次側平滑コンデンサCoに充電電流を整流して供給する。この場合に、2次側直列共振コンデンサC2の充電電圧は高速スイッチングダイオードDo6に直列に加算方向に加えられているので、2次側平滑コンデンサCoに発生する電圧は2次巻線N2に発生する電圧の2倍となる。以上の動作は交流の半周期の動作である。他の半周期では、2次側直列共振コンデンサC2’は高速スイッチングダイオードDo8に流れる電流によって充電される。また、2次側直列共振コンデンサC2’を通過した交流電圧は高速スイッチングダイオードDo7に印加されて2次側平滑コンデンサCoに充電電流を整流して供給する。この場合に、2次側直列共振コンデンサC2’の充電電圧は高速スイッチングダイオードDo8に直列に加算方向に加えられているので、2次側平滑コンデンサCoに発生する電圧は2次巻線N2に発生する電圧の2倍となる。このようにして倍電圧全波整流回路が構成される。
【0105】
図11に示す2次側の回路は、図5に示すと同様な1次側の構成において、2次側のみに変更を加えた構成例である。図11の回路構成は図10の回路構成の半周期が動作する部分のみを回路として構成した倍電圧半波整流回路である。
【0106】
図12に示す回路は、図5に示すと同様な1次側の構成において、力率改善回路15と2次側のみに変更を加えた構成例である。
【0107】
2次側整流回路は、漏れインダクタL2と2次側直列共振コンデンサC2とで2次側直列共振回路を構成する。2次巻線N2の一方の端子に接続される第1の2次側整流素子である高速スイッチングダイオードDo5と、2次巻線N2の他方の端子に接続される第2の2次側整流素子である高速スイッチングダイオードDo6と、高速スイッチングダイオードDo5を介して磁気エネルギーを蓄え、高速スイッチングダイオードDo6を介してこの磁気エネルギーを放出する第1の2次側インダクタであるインダクタLs1と、高速スイッチングダイオードDo6を介して磁気エネルギーを蓄え、高速スイッチングダイオードDo5を介してこの磁気エネルギーを放出する第2の2次側インダクタであるインダクタLs2と、高速スイッチングダイオードDo5に流れる電流および高速スイッチングダイオードDo6に流れる電流を充電するように接続されて出力直流電圧Eoを得るようにされた2次側平滑コンデンサCoと、を有するものである。
【0108】
このような2次側整流回路の接続態様では、2次巻線N2からの電圧の極性が高速スイッチングダイオードDo5をオンとする極性である場合には、2次巻線N2からの電流とインダクタLs2からの電流が加算されて高速スイッチングダイオードDo5を流れ、同一の電力を負荷に供給する場合には、高速スイッチングダイオードDo5に流れるピーク電流の大きさは、インダクタLs2が無い場合に較べて低減する。また、2次巻線N2からの電圧の極性が高速スイッチングダイオードDo6をオンとする極性である場合には、2次巻線N2からの電流とインダクタLs1からの電流が加算されて高速スイッチングダイオードDo6を流れ、同一の電力を負荷に供給する場合には、高速スイッチングダイオードDo6に流れるピーク電流の大きさは、インダクタLs1が無い場合に較べて低減する。このような、2次側整流回路の構成態様を倍電流整流回路と称する。
【0109】
図12に示す力率改善回路15においては、コンデンサCNL1およびコンデンサCNL2に加えてコンデンサCNL3を有するので、コンデンサCNL3がない場合に較べてノーマルモードノイズの発生はさらに少ないものとなる。さらに、コンデンサCNL1およびコンデンサCNL2の接続点を高周波的に接地電位とすることによって上述したようにコモンモードノイズの抑圧の効果は良好なるものとなる。また、コンデンサCNL3はコモンモードチョークコイルCMCの出力側の両方の極性の端子間の電圧を同一として、コモンモードチョークコイルCMCのコモンモード抑圧の作用をより効果的なものとする。
【0110】
図13に示すスイッチング電源回路においては、図5と同様の構成を有する、発振・ドライブ・OCP回路2および制御回路1の記載が省略され、図5に示すと同様の接続態様となされている2次側回路の記載も省略されている。図12に示すスイッチング電源回路と図5に示すスイッチング電源回路とは、1次側整流平滑部から3次巻線N3を介して1次側直流電力をスイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2に供給する点については、異なる点はないが、図13に示すスイッチング電源回路では、1次側整流素子Diの負極性側を3次巻線N3に接続し、正極側を1次側平滑コンデンサCiに接続するのに対して、図5に示すスイッチング電源回路は、1次側整流素子Diの正極側が3次巻線N3を介して1次側平滑コンデンサCiに接続されている点で異なるものである。このような違いがあるものの、3次巻線N3に発生する共振パルスに応じた電圧を1次側平滑コンデンサCiに帰還する点において同様な作用を奏するものである。
【0111】
また、図13に示すスイッチング電源回路においては、インダクタLoに替えて、インダクタLo1とインダクタLo2の2個のインダクタを用いるが、インダクタLo1とインダクタLo2とは各々ノーマルモードを抑圧するインダクタとして、直列に接続されている。
【0112】
別の実施形態のスイッチング電源回路である図14および図18ないし図21に示すスイッチング電源回路について説明する。まず、図14に示すスイッチング電源回路の説明後、図14に示すスイッチング電源回路の変形例である図18ないし図21に示すスイッチング電源回路について説明する。
【0113】
図14に示すスイッチング電源回路は、交流電源ACからの入力交流電力を1次側直流電力に変換する1次側整流平滑部と、この1次側直流電力を交流電力に変換しさらに2次側直流電力に変換するコンバータ部と、力率を改善する力率改善部(力率改善回路)と、この力率改善部と交流電源ACとの間に介在されるコモンモードフィルタ部と、を備えるスイッチング電源回路である。
【0114】
1次側整流平滑部は、交流電源ACからの入力交流電力を入力して整流する1次側整流素子Diと、1次側平滑コンデンサCiと、を具備している。
【0115】
また、コンバータ部は、1次巻線N1と、1次巻線N1と磁気的に疎結合とされる2次巻線N2とを有するコンバータトランスPITと、1次側整流平滑部から供給される1次側直流電力を、商用周波数よりも高い周波数の交流電力に変換して1次巻線N1に供給するスイッチング素子であるスイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2と、これらのスイッチング素子をオン・オフ駆動する発振・ドライブ・OCP回路2に含まれる発振・ドライブ回路と、1次巻線N1に生じる漏れインダクタL1と1次側直列共振コンデンサC1とによって形成され、スイッチング素子から電力が供給される1次側直列共振回路と、1次巻線に生じる漏れインダクタと部分電圧共振コンデンサCpとによって形成され、スイッチング素子Q2と並列に接続される部分電圧共振回路と、2次巻線N2に生じる漏れインダクタL2と2次側直列共振コンデンサC2とによって形成される2次側直列共振回路と、2次側直列共振回路に接続される2次側整流素子Doと、2次側整流素子Doに接続され出力直流電圧Eoを得るようにされた2次側平滑コンデンサCoと、出力直流電圧Eoの値を所定の値とするような制御信号を発振・ドライブ回路に供給する制御回路1と、を具備する。
【0116】
ここで、2次側整流回路は、2次側整流素子Doは、高速スイッチングダイオードDo1ないし高速スイッチングダイオードDo4で形成されるブリッジ接続を採用して全波整流をおこなう。
【0117】
また、力率改善回路17は、第1巻線Loと第2巻線Lo’とが磁気的結合を有して形成される電圧帰還トランスVFTを具備する。また、1次側整流素子Diの入力側である、高速スイッチングダイオードDi1のアノードと高速スイッチングダイオードDi2のカソードとの接続点および高速スイッチングダイオードDi3のアノードと高速スイッチングダイオードDi4のカソードとの接続点の、各々の端子の間に接続されたコンデンサCNLを具備する。そして、1次側整流素子Diの出力側である、高速スイッチングダイオードDi1のカソードと高速スイッチングダイオードDi3のカソードとの接続点である正極性端子および高速スイッチングダイオードDi2のアノードと高速スイッチングダイオードDi4のアノードとの接続点である負極性端子の各々の極性端子に電圧帰還トランスVFTの第1巻線Loの一方の端子と第2巻線Lo’の一方の端子とが各々接続されている。また、1次側整流素子Diの出力側の正極性端子または負極性端子のいずれかの極性端子である負極性端子に1次側直列共振コンデンサC1が接続され、電圧帰還トランスVFTの第1巻線Loの他方の端子と第2巻線Lo’の他方の端子との間に1次側平滑コンデンサCiが接続されている。
【0118】
コモンモードフィルタ部は、コモンモードチョークコイルCMCとアクロスコンデンサとして機能する力率改善部のコンデンサCNLと、を具備する。このコモンモードフィルタ部については、図5において説明したものと変わるところがないものである。
【0119】
図14に示すスイッチング電源回路において、図5に示すスイッチング電源回路におけると、その構成および作用が共通する部分には同一の符号を付して説明を省略し、図14に示すスイッチング電源回路の特徴部分である力率改善回路を中心として以下に説明をする。
【0120】
電圧帰還トランスVFTについて説明する。電圧帰還トランスVFTの第1巻線Loと第2巻線Lo’とは結合係数kを有して磁気的結合されている。第1巻線Loと第2巻線Lo’との磁気結合の結合係数の値をkとする場合で、第1巻線Loによって構成されるインダクタLoのインダクタンスの値をLoとし、第2巻線Lo’によって構成されるインダクタLo’のインダクタンスの値をLo’とし、減極性の場合には、その合成のインダクタンスLNkの値は、(式1)で表されるものとなる。なお、第1巻線Loの生じるインダクタンスの測定においては第2巻線Lo’の両端を解放とし、第2巻線Lo’の生じるインダクタンスの測定においては第1巻線Loの両端を解放とする。また、(式1)では第1巻線Loと第2巻線Lo’の巻数とを等しくして、インダクタンスLoとインダクタンスLo’との値は等しいものとされている。
【0121】
LNk=2×Lo×(1−k)・・・・(式1)
【0122】
ここで、k=1であれば、インダクタンスLNkの値は0となる。kの値が1にちかい密結合として電圧帰還トランスVFTを構成する場合の構成例としては、例えば、コアにギャップを設けることなく、第1巻線Loと第2巻線Lo’とを近接して配置することによって磁気的結合度を1にちかづけることができる。また、疎結合とする場合の構成例は、第1巻線Loと第2巻線Lo’との両方に共通に鎖交する磁束の量を減らすために、両方の巻線コイルを離間させるようにしても良く、または、両方の巻線の間にギャップを設けて、そのギャップから磁束を漏らして、両者の鎖交磁束の量を減らす構造としても良いものである。
【0123】
また、加極性の場合には、その合成のインダクタンスLNkの値は、(式2)で表されるものとなる。
【0124】
LNk=2×Lo×(1+k)・・・・(式2)
【0125】
図14、図18および図20に示すスイッチング電源回路おいては、電圧帰還トランスVFTは加極性となるように接続され、図21に示すスイッチング電源回路においては、電圧帰還トランスVFTは減極性となるように接続されている。
【0126】
ここで、力率改善回路における電圧帰還トランスVFTの第1巻線Loと第2巻線Lo’との巻線方向の関係と流れる電流の方向とによって加極性となるか減極性となるかは決定される。図14、図18、図20および図21に示すスイッチング電源回路おいては、電圧帰還トランスVFTに黒丸(●)を付した巻線端が巻線の巻始めを表すものとされ、この場合の巻線方向は同一方向である。すなわち、第1巻線Loと第2巻線Lo’とのいずれの巻線に対しても、黒丸を付した巻線端から電流が流入する場合に磁束が加算される加極性となるものである。
【0127】
図14に示すスイッチング電源の各部の具体的な定数について以下に説明する。コンバータトランスPITのフェライト材はEER−35とし、1次巻線N1は31Tとし、2次巻線N2は8Tとした。また1次巻線N1と2次巻線N2との結合係数kの値は0.79とした。また、1次側直列共振コンデンサC1のキャパシタンスの値は0.056μF、1次側直列共振コンデンサC1のキャパシタンスの値は1μF、部分電圧共振コンデンサCpのキャパシタンスの値は680pFとした。
【0128】
また、電圧帰還トランスVFTの第1巻線Loのインダクタンスの値、および電圧帰還トランスVFTの第2巻線Lo’のインダクタンスの値は各々35μHとした。なお、第1巻線Loの有するインダクタンスの値を測定するに際しては、第2巻線Lo’は解放状態とし、第2巻線Lo’の有するインダクタンスの値を測定するに際しては、第1巻線Loは解放状態とした。1次側整流素子Diは高速スイッチングダイオードである。コンデンサCNLの値は1μFとした。
【0129】
力率改善回路17の作用を説明する。1次側整流素子Diの出力側の負極性端子に電圧帰還トランスVFTの第1巻線Loの巻き終わりが接続され、1次側整流素子Diの出力側の正極性端子に電圧帰還トランスVFTの第2巻線Lo’の巻始めが接続されている。ここで、巻始め、巻き終わりの用語は、単に、第1巻線Loと第2巻線Lo’とが加極性となるように接続されているか、第1巻線Loと第2巻線Lo’とが減極性となるように接続されているかを示すものであって、巻始めの用語を巻き終わりの用語に変えて用い、巻終わりの用語を巻始めの用語に変えて用いても何ら意味するところは変わらないものである。
【0130】
また、1次側直列共振コンデンサC1は第1巻線Loと1次側整流素子Diの出力側の負極性端子とに接続されている。ここで、1次側平滑コンデンサCiのキャパンスは大きく、共振電流の流れる経路にローインピーダンスとして挿入されているので、共振電流に対しては、加極性のインダクタンスとして作用する。すなわち、電圧帰還トランスVFTの有するこのインダクタンスとコンデンサCNLでローパスフィルタを構成して、ノーマルモードノイズを抑圧する効果を生じる。
【0131】
コンデンサCNL、高速スイッチングダイオードDi1、第2巻線Lo’、1次側平滑コンデンサCi、第1巻線Lo、高速スイッチングダイオードDi4、コンデンサCNLの経路およびコンデンサCNL、高速スイッチングダイオードDi3、第2巻線Lo’、1次側平滑コンデンサCi、第1巻線Lo、高速スイッチングダイオードDi2、コンデンサCNLの経路を流れるスイッチングによって生じた電流I1で発生するノーマルモードノイズの発生レベルが低下する。
【0132】
ここで、コンデンサCNLは、図1ないし図3に示すアクロスコンデンサCL2と同じ位置、すなわち、コモンモードチョークコイルCMCの両端の間に配置されたアクロスコンデンサとしても機能してコモンモードノイズを抑圧する作用も同時におこなう。すなわち、図1ないし図3に示すコンデンサCNはノーマルモードフィルタの一部として機能するのに対して、図14に示すコンデンサCNLはノーマルモードフィルタおよびコモンモードフィルタの両者の一部として機能する。このような構成を採用することによって、図1ないし図3に示すコモンモードノイズの発生を抑圧するアクロスコンデンサCL1と、ノーマルモードノイズの発生を抑圧するコンデンサCNとの2個のコンデンサの各々が奏する作用を1個のコンデンサであるコンデンサCNLによって奏することができる。
【0133】
すなわち、図14に示す力率改善回路17を有するスイッチング電源回路では、交流ライン側、1次側整流素子Diの入力側にコンデンサCNLを備え、1次側整流素子Diの出力側に電圧帰還トランスVFTを備えることによって、少ない部品の点数で、コモンモードノイズを抑圧するコモンモードフィルタとノーマルモードノイズを抑圧するノーマルモードフィルタとの両方を実現することができる。これによって、回路の簡略化、部品の低減によるコストの低価格化を可能とすることができる。
【0134】
また、このような高周波電流が流れるコンデンサにおいては誘電体損失が大きな損失の要素となり、高周波電流が流れるコンデンサの数が多くなる程スイッチング電源回路における損失は増加する傾向となる。したがって、上述したように、コンデンサの高周波特性を良好となし、さらに、スイッチング電源回路で採用するコンデンサの数を少なくすることによって、効率の改善を図ることができる。
【0135】
図14に示すスイッチング電源回路の要部の動作波形を図15および図16に示し、図14に示すスイッチング電源回路によって得られる特性の測定データを図17に示す。
【0136】
図15は、交流入力電圧100V、負荷電力Poが最大負荷電力である150Wにおける主要部の動作波形を商用の交流電源周期により示している。上段より下段に向かって、交流入力電圧VAC(図14を参照)、交流入力電流IAC(図14を参照)、電圧V1(図14を参照)、電流I1(図14を参照)、電圧V2(図14を参照)、電流I2(図14を参照)の各々を示す。図15の電圧V1、電流I1、電圧V2、および電流I2の縦線を施した部分の各々は、スイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2のスイッチング周期と同じ周期でスイッチングしていることを示すものである。
【0137】
図15の交流入力電圧VACと交流入力電流IACとの関係を見ると、交流入力電流IACの流れる期間である流通角は、力率改善回路17を設けることがない場合に較べて拡大している。すなわち、図15において、電圧帰還トランスVFTを備えることがない場合、すなわち、図示しないが、1次側整流素子Diの出力側の端子に1次側平滑コンデンサCiを直接に接続する場合には、図15の交流入力電圧VACのピーク電圧付近でのみパルス状に交流入力電流IACが流れることとなる。一方、図14に示す力率改善回路17を設ける場合においてはこのようなことはなく、交流入力電圧VACと交流入力電流IACとの関係は図15に示すごとく略相似形となっている。
【0138】
また、図16は、交流入力電圧230V、負荷電力Poが最大負荷電力である150Wにおける主要部の動作波形を商用の交流電源周期により示している。上段より下段に向かって、交流入力電圧VAC(図14を参照)、交流入力電流IAC(図14を参照)、電圧V1(図14を参照)、電流I1(図14を参照)、電圧V2(図14を参照)、電流I2(図14を参照)の各々を示す。図16の電圧V1、電流I1、電圧V2、および電流I2の縦線を施した部分の各々は、スイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2のスイッチング周期と同じ周期でスイッチングしていることを示すものである。図16に示す交流入力電圧VACと交流入力電流IACとの関係から明らかなように、交流入力電圧230Vにおいても、交流入力電流IACの流通角は拡大して、交流入力電圧VACと交流入力電流IACとの関係は略相似形となっている。
【0139】
図17は、交流入力電圧VACの値が100Vまたは230Vの入力電圧条件下において負荷電力Poの値が、0W(無負荷)から150Wの範囲での負荷変動に対する整流平滑電圧Ei、力率PF、および交流入力電力に対する直流出力電力の電力変換効率ηAC→DCを示している。実線は交流入力電圧VACの値が100Vの特性、破線は交流入力電圧VACの値が230Vの特性を示すものである。
【0140】
図17から読み取れる代表特性の一部を紹介する。電圧帰還トランスVFTの第1巻線Loと第2巻線Lo’の巻線比を適切に設定することによって、広範囲な負荷変動の範囲で良好なる力率PFの特性を有することができるものとなる。例えば、図17に示すように、負荷電力Poの値については、無負荷から最大負荷である150Wの範囲の中間点で最良となるように設定する場合に広範囲な負荷変動に対して良好なる力率PFの値を有することができる。例えば、交流入力電圧VACの値が100Vの場合には、負荷電力Poの値として60W付近における力率PFを最良値とし、交流入力電圧VACの値が230Vの場合には、負荷電力Poの値として100W付近における力率PFを最良値とした。
【0141】
このように電圧帰還トランスVFTの第1巻線Loと第2巻線Lo’の巻線比を適切に設定して、交流入力電圧VACの値として85Vから264Vの範囲で測定したときに、図16に示すように、電力変換効率ηAC→DCの値としては、交流入力電圧VACの値が100Vの場合で、負荷電力Poの値が最大負荷の150Wのときに91.9%とし、交流入力電圧VACの値が230Vの場合で、負荷電力Poの値が最大負荷の150Wのときに93.3%とすることができた。このように、図1ないし図3に示すスイッチング電源回路よりも、電力変換効率ηAC→DCの値が向上している。これは、ダイオードに流れる電流が通過する経路に存在するダイオードの個数を減らし、高周波電流が流れるコンデンサの個数を減らし、電力損失を減らしたことによっている。それに加えて、さらに、図1ないし図3に示すスイッチング電源回路では、1次側整流素子Diの中の2個の整流ダイオードおよび高速スイッチングダイオードD1を合わせた3個のダイオードに高周波の電流および整流電流が流れ、これによって生じる順方向電力損失およびスイッチング損失が電力損失となったが、図14に示すスイッチング電源回路では、高周波の電流および整流電流が流れるダイオードの数を2個として、負荷電力Poの値が150Wにおいて、ダイオードにおける電力損失を0.8W程度減らしている。
【0142】
このようにして、ダイオードとコンデンサにおける電力損失を低減することによって、図1ないし図3に示すスイッチング電源回路に較べて図6に示すスイッチング電源回路では、負荷電力Poの値が最大負荷である150Wにおいて、交流入力電圧VACの値が100Vの場合で、2.4%程度の電力変換効率ηAC→DCの値の改善がなされ、交流入力電圧VACの値が230Vの場合で、2.3%程度の電力変換効率ηAC→DCの値の改善がなされた。
【0143】
また、図14のスイッチング電源回路では、アクティブフィルタを不要としたことで、回路構成部品の点数削減が図られる。つまり、図31に示すアクティブフィルタは、スイッチング素子Q100と、これらを駆動するための乗算器111等を始め、多くの部品により構成される。これに対し、実施形態のスイッチング電源回路においては、力率改善のために必要な追加部品として、コンデンサCNL、力率改善用インダクタLoおよび1次側整流素子Diとして高速整流素子を備えればよく、アクティブフィルタと比較すれば非常に少ない部品点数とすることができる。
【0144】
また、図32に示すスイッチング回路と比較した場合には、ノイズの低減効果は極めて良好であり、さらに、図1ないし図3に示すスイッチングに較べてもノイズの低減効果を極めて良好とするとともに、部品点数を少なくして低コストなものとすることができる。
【0145】
また、図14のスイッチング電源回路では、多重共振形のコンバータ部および力率改善部の動作はいわゆるソフトスイッチング動作であるから、図31に示したアクティブフィルタを用いる回路と比較すればスイッチングノイズのレベルは大幅に低減される。
【0146】
また、2次側の高速スイッチングダイオードである高速スイッチングダイオードDo1および高速スイッチングダイオードDo2、1次側の高速スイッチングダイオードDi1ないし高速スイッチングダイオードDi4などもスイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2に同期してスイッチングの動作をするものである。したがって、アース電位としては、図31のスイッチング電源回路のように、アクティブフィルタ側と、その後段のスイッチングコンバータとの間で干渉することが無く、スイッチング周波数の変化に関わらず安定させることができる。
【0147】
また、電圧帰還トランスVFTの第1巻線Loと第2巻線Lo’の巻線比を適切に設定して、中間負荷時(負荷電力Poの値が無負荷と最大負荷との間の値を言う)における力率PFの値を最良のものとして、力率PFを広範囲に良好なるものとすることができ、交流入力電圧VACの値が100Vの場合および交流入力電圧VACの値が230Vの場合のいずれにおいても良好なるものとすることができた。
【0148】
図1ないし図3に示すスイッチング電源回路との比較においては、電圧帰還トランスVFTの第1巻線Loと第2巻線Lo’とを1次側整流素子Diの出力側に接続し、コンデンサCNLを交流電源ライン側(1次側整流素子Diの入力側)に挿入して、少ない個数の部品によってノーマルモードノイズが大幅に低減できた。すなわち、DC/DCコンバータに追加する力率改善のための追加の部品の点数は、図14に示す力率改善回路17においては、電圧帰還トランスVFTの1点であり、部品点数を削減することができる。
【0149】
また、図14および、後述する図18ないし図21に示すいずれの回路においても、電圧帰還トランスVFTの第1巻線Loの両端から抵抗R1と抵抗R2とで分圧されて1次側の共振回路に流れる電流に応じた信号VOPが検出されるようになされている。この信号VOPは、発振・ドライブ・OCP回路2に入力されて、過負荷が生じた場合には共振電流の値が所定値よりも大きくなるので、この場合の信号VOPを検出し、これによって過負荷を検出して、スイッチング電源回路の発熱を防止するものである。発振・ドライブ・OCP回路2における発熱の防止回路については、後述する。なお、信号VOPは抵抗R1および抵抗R2で分圧することなく、発振・ドライブ・OCP回路2に供給されるようにしても良く、また、第2巻線Lo’の両端から検出するようにしても良いものである。ここで、抵抗R1、抵抗R2を有する場合であっても、これらの抵抗は大電流が流れる経路に挿入されることがないので、各々の抵抗における電力損失を小さなものとできる。
【0150】
図18に示す力率改善回路18においては、コンデンサCNLに替えて、コンデンサCNL1およびコンデンサCNL2を有するので、コモンモードノイズに対してさらに良好なる抑圧特性を有することとなる。
【0151】
図20に示す力率改善回路19においては、コンデンサCNL1およびコンデンサCNL2に加えてコンデンサCNL3を有するので、コンデンサCNL3がない場合に較べてノーマルモードノイズおよびコモンモードノイズのいずれに対してもさらに良好なる抑圧特性を有することとなる。また、上述したようにして、1次側平滑コンデンサCiに共振電流に応じた電力が帰還される点は、上述したと同様である。
【0152】
図21に示す力率改善回路20においては、1次側直列共振コンデンサC1が図14に示す力率改善回路17においては第1巻線Loに接続されているのに対して、1次側直列共振コンデンサC1が第2巻線Lo’に接続されている。これによって電圧帰還トランスVFTの第2巻線Lo’を介して、1次側平滑コンデンサCiに共振電流に応じた電力が帰還されることとなる。そして、1次側整流素子Diの出力側の負極性端子に電圧帰還トランスVFTの第1巻線Loの巻き終わりが接続され、1次側整流素子Diの出力側の正極性端子に電圧帰還トランスVFTの第2巻線Lo’の巻終わりが接続されている。ここで、巻始め、巻き終わりの用語は、単に、第1巻線Loと第2巻線Lo’とが加極性となるように接続されているか、第1巻線Loと第2巻線Lo’とが減極性となるように接続されているかを示すものであって、巻始めの用語を巻き終わりの用語に変えて用い、巻終わりの用語を巻始めの用語に変えて用いても何ら意味するところは変わらないものである。
【0153】
このような接続態様によって、電圧帰還トランスVFTの第1巻線Loと第2巻線Lo’とは減極性とされ、通常のインダクタとしての機能は、磁気結合の結合係数kの値を1以下とすることによって発揮されるものとなる。すなわち、ノーマルモードノイズは、第1巻線Loと磁気的に疎結合された第2巻線Lo’に生じる漏れインダクタンススとコンデンサCNLのキャパシタンスとによってフィルタリングされる。これによってコンデンサCNLの両端の電圧(ノーマルモードノイズ)は非常に小さいものとなる。また、コモンモードノイズは、電圧帰還トランスVFTがコモンモードチョークコイルとしても作用することによって、コモンモードノイズは電圧帰還トランスVFTによっても抑圧されることとなる。
【0154】
また、2次側の回路については、図18においては、倍電圧全波整流回路とされ、図19においては倍電圧半波整流回路とされ、図20においては倍電流整流回路とされている。
【0155】
さらに別の実施形態のスイッチング電源回路を図22に示し、その変形例を図26ないし図29に示す。まず、図22に示すスイッチング電源回路の説明後、図22に示すスイッチング電源回路の変形例である図26ないし図29に示すスイッチング電源回路について説明する。
【0156】
図22に示すスイッチング電源回路は、交流電源ACからの入力交流電力を1次側直流電力に変換する1次側整流平滑部と、1次側直流電力を交流電力に変換しさらに2次側直流電力に変換するコンバータ部と、力率を改善する力率改善部と、力率改善部と交流電源との間に介在されるコモンモードフィルタ部と、を備えるスイッチング電源回路である。
【0157】
1次側整流平滑部は、交流電源ACからの入力交流電力を入力して整流する1次側整流素子Diと、1次側平滑コンデンサCiと、を具備する。
【0158】
また、コンバータ部は、1次巻線N1と、1次巻線N1と磁気的に疎結合とされる2次巻線N2と、1次巻線N1と磁気的に結合される3次巻線N3と、を有するコンバータトランスPITと、1次側整流平滑部から供給される1次側直流電力を、商用周波数よりも高い周波数の交流電力に変換して1次巻線N1に供給するスイッチング素子であるスイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2と、これらのスイッチング素子をオン・オフ駆動する発振・ドライブ・OCP回路2に含まれる発振・ドライブ回路と、1次巻線N1に生じる漏れインダクタL1と1次側直列共振コンデンサC1とによって形成され、スイッチング素子から電力が供給される1次側直列共振回路と、1次巻線に生じる漏れインダクタと部分電圧共振コンデンサCpとによって形成され、スイッチング素子Q2と並列に接続される部分電圧共振回路と、2次巻線N2に生じる漏れインダクタL2と2次側直列共振コンデンサC2とによって形成される2次側直列共振回路と、2次側直列共振回路に接続される2次側整流素子Doと、2次側整流素子Doに接続され出力直流電圧Eoを得るようにされた2次側平滑コンデンサCoと、出力直流電圧Eoの値を所定の値とするような制御信号を発振・ドライブ回路に供給する制御回路1と、を具備する。
【0159】
ここで、2次側整流回路は、2次側整流素子Doは、高速スイッチングダイオードDo1ないし高速スイッチングダイオードDo4で形成されるブリッジ接続を採用して全波整流をおこなう。
【0160】
また、力率改善部(力率改善回路)は、1次側直列共振コンデンサC1が1次側整流素子Diの入力側の一の入力端に接続され、1次側整流素子Diの入力側には磁気的に疎結合とされる第1巻線と第2巻線とを有する電圧帰還トランスVFTの出力側が接続され、この電圧帰還トランスVFTの入力側にコンデンサが接続され、1次側整流素子Diは1次側直列共振コンデンサC1に流れる共振電流を整流できるスイッチング速度を有するものとされて構成されている。
【0161】
また、コモンモードフィルタ部は、コモンモードチョークコイルCMCとこのコモンモードチョークコイルCMCのアクロスコンデンサとして機能する力率改善部のコンデンサと、を具備する。
【0162】
図22および図26ないし図29に示すスイッチング電源回路において、図5、図10ないし図14、図18ないし図21に示すスイッチング電源回路におけると、その構成および作用が共通する構成部分には同一の符号を付して説明を省略し、図22および図26ないし図29に示すスイッチング電源回路の特徴部分である力率改善回路を中心として以下に説明をする。
【0163】
図22に示すスイッチング電源回路おいては、電圧帰還トランスVFTは減極性となるように接続されている。
【0164】
図22に示すスイッチング電源回路の説明を以下におこなう。まず、図22に示すスイッチング電源の各部の具体的な定数について以下に説明する。コンバータトランスPITのフェライト材はEER−35とし、そのギャップGの値は1mmとした。1次巻線N1は32Tとし、2次巻線N2は8Tとした。また1次巻線N1と2次巻線N2との結合係数kの値は0.79とした。また、1次側直列共振コンデンサC1のキャパシタンスの値は0.056μF、2次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスの値は1μF、部分電圧共振コンデンサCpのキャパシタンスの値は680pFとした。出力直流電圧Eoの値は48Vに設定した。
【0165】
力率改善回路20の具体的な定数は以下のように設定した。電圧帰還トランスVFTの第1巻線Loの有するインダクタンスの値は35μHとした。1次側整流素子Diはいずれも高速スイッチングダイオードである。コンデンサCNLの値は1μFとした。
【0166】
力率改善回路21の作用を説明する。1次側整流素子Diの入力側の一端に電圧帰還トランスVFTの第1巻線Loが接続され、1次側整流素子Diの入力側の他端に電圧帰還トランスVFTの第2巻線Lo’が接続されている。電圧帰還トランスVFTの結合係数kの値が1以下(疎結合)に設定される場合には、(式1)で示すように電圧帰還トランスVFTはインダクタとして機能して、このインダクタとコンデンサCNLとでローパスフィルタを構成して、ノーマルモードノイズを抑圧する効果を生じる。すなわち、1次側整流素子Diの入力側の一の端子に第1巻線Loの巻終わりが接続され、1次側整流素子Diの入力側の他の端子に第2巻線Lo’の巻き終わり接続されて減極性接続とされている。ここで、第1巻線Loと第2巻線Lo’とが磁気的に疎結合とされているので、電圧帰還トランスVFTはコモンモードチョークコイルとして機能するのみならず、インダクタとしても機能することとなる。ここで、巻始め、巻き終わりの用語は、第1巻線Loと第2巻線Lo’との相対関係を意味するものであるので、巻始めを巻き終わりに変え、巻き終わりを巻始めに変えて用いても、その用語の意味するところは同じものである。
【0167】
コンデンサCNLは、図1ないし図3に示すアクロスコンデンサCL2と同じ位置、すなわち、コモンモードチョークコイルCMCの両端の間に配置されたアクロスコンデンサとしても機能してコモンモードノイズを抑圧する作用も同時におこなう。すなわち、図1ないし図3に示すコンデンサCNはノーマルモードフィルタの一部として機能するのに対して、図22に示すコンデンサCNLはノーマルモードフィルタおよびコモンモードフィルタの両者の一部として機能する。このような構成を採用することによって、図1ないし図3に示すコモンモードノイズの発生を抑圧するアクロスコンデンサCL1と、ノーマルモードノイズの発生を抑圧するコンデンサCNとの2個のコンデンサの各々が奏する作用を1個のコンデンサであるコンデンサCNLによって奏することができる。
【0168】
すなわち、図22に示す力率改善回路21を有するスイッチング電源回路では、交流ライン側、1次側整流素子Diの入力側にコンデンサCNLを備え、1次側整流素子Diの出力側に電圧帰還トランスVFTを備えることによって、少ない部品の点数で、コモンモードノイズを抑圧するコモンモードフィルタとノーマルモードノイズを抑圧するノーマルモードフィルタとの両方を実現することができる。これによって、回路の簡略化、部品の低減によるコストの低価格化を可能とすることができる。
【0169】
また、このような高周波電流が流れるコンデンサにおいては誘電体損失が大きな損失の要素となる。したがって、高周波電流が流れるコンデンサの数が多くなる程スイッチング電源回路における損失は増加する傾向となる。したがって、上述したように、コンデンサの高周波特性を良好となし、さらに、スイッチング電源回路で採用するコンデンサの数を少なくすることによって、効率の改善を図ることができる。
【0170】
図22に示すスイッチング電源回路の要部の動作波形を図23および図24に示し、図22に示すスイッチング電源回路によって得られる特性の測定データを図25に示す。
【0171】
図23は、交流入力電圧100V、負荷電力Poが最大負荷電力である150Wにおける主要部の動作波形を商用の交流電源周期により示している。上段より下段に向かって、交流入力電圧VAC(図22を参照)、交流入力電流IAC(図22を参照)、電圧V1(図22を参照)、電流I1(図22を参照)、電圧V2(図22を参照)、電流I2(図22を参照)の各々を示す。図23の電圧V1、電流I1、電圧V2、および電流I2の縦線を施した部分の各々は、スイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2のスイッチング周期と同じ周期でスイッチングしていることを示すものである。
【0172】
図23の交流入力電圧VACと交流入力電流IACとの関係を見ると、交流入力電流IACの流れる期間である流通角は、力率改善回路21を設けることがない場合に較べて拡大している。すなわち、図23において、電圧帰還トランスVFTを備えることがない場合、すなわち、図示しないが、電圧帰還トランスVFTを設けることなくコモンモードチョークコイルの出力側に1次側整流素子Diの入力側の端子を直接に接続する場合には、交流入力電圧VACのピーク電圧付近でのみパルス状に交流入力電流IACが流れることとなる。一方、図23に示す力率改善回路21を設ける場合においてはこのようなことはなく、交流入力電圧VACと交流入力電流IACとの関係は図23に示すごとく略相似形となっている。
【0173】
また、図24は、交流入力電圧230V、負荷電力Poが最大負荷電力である150Wにおける主要部の動作波形を商用の交流電源周期により示している。上段より下段に向かって、交流入力電圧VAC(図22を参照)、交流入力電流IAC(図22を参照)、電圧V1(図22を参照)、電流I1(図22を参照)、電圧V2(図22を参照)、電流I2(図22を参照)の各々を示す。図23の電圧V1、電流I1、電圧V2、および電流I2の縦線を施した部分の各々は、スイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2のスイッチング周期と同じ周期でスイッチングしていることを示すものである。図24に示す交流入力電圧VACと交流入力電流IACとの関係から明らかなように、交流入力電圧230Vにおいても、交流入力電流IACの流通角は拡大して、交流入力電圧VACと交流入力電流IACとの関係は略相似形となっている。
【0174】
図25は、交流入力電圧VACの値が100Vまたは230Vの入力電圧条件下において負荷電力Poの値が、0W(無負荷)から150Wの範囲での負荷変動に対する整流平滑電圧Ei、力率PF、および交流入力電力に対する直流出力電力の電力変換効率ηAC→DCを示している。実線は交流入力電圧VACの値が100Vの特性、破線は交流入力電圧VACの値が230Vの特性を示すものである。
【0175】
図25に示すように、図1ないし図3に示すスイッチング電源回路よりも、電力変換効率ηAC→DCの値が向上している。これは、ダイオードに流れる電流が通過する経路に存在するダイオードの個数を減らし、高周波電流が流れるコンデンサの個数を減らし、また、2次側の整流回路として倍電流整流回路を採用して2次側整流素子における電力損失を減らしたことによっている。それに加えて、さらに、図1ないし図3に示すスイッチング電源回路では、1次側整流素子Diの中の2個の整流ダイオードおよび高速スイッチングダイオードD1を合わせた3個のダイオードに高周波の電流および整流電流が流れ、これによって生じる順方向電力損失およびスイッチング損失が電力損失となったが、図20に示すスイッチング電源回路では、高周波の電流および整流電流が流れるダイオードの数を2個として、負荷電力Poの値が150Wにおいて、ダイオードにおける電力損失を0.8W程度減らしている。
【0176】
このようにして、ダイオードとコンデンサにおける電力損失を低減することによって、図1ないし図3に示すスイッチング電源回路に較べて図22に示すスイッチング電源回路では、負荷電力Poの値が最大負荷である150Wにおいて、交流入力電圧VACの値が100Vの場合で、2.3%程度の電力変換効率ηAC→DCの値の改善がなされ、交流入力電圧VACの値が230Vの場合で、2.4%程度の電力変換効率ηAC→DCの値の改善がなされた。
【0177】
また、図22のスイッチング電源回路では、アクティブフィルタを不要としたことで、回路構成部品の点数削減が図られる。つまり、図31に示すアクティブフィルタは、スイッチング素子Q100と、これらを駆動するための乗算器111等を始め、多くの部品により構成される。これに対し、実施形態のスイッチング電源回路においては、力率改善のために必要な追加部品として、コンデンサCNL、力率改善用インダクタLoおよび1次側整流素子Diとして高速整流素子を備えればよく、アクティブフィルタと比較すれば非常に少ない部品点数とすることができる。
【0178】
また、図32に示すスイッチング回路と比較した場合には、ノイズの低減効果は極めて良好であり、さらに、図1ないし図3に示すスイッチングに較べてもノイズの低減効果を極めて良好とするとともに、部品点数を少なくして低コストなものとすることができる。
【0179】
また、図22のスイッチング電源回路では、多重共振形のコンバータ部および力率改善部の動作はいわゆるソフトスイッチング動作であるから、図31に示したアクティブフィルタを用いる回路と比較すればスイッチングノイズのレベルは大幅に低減される。
【0180】
また、2次側の高速スイッチングダイオードである高速スイッチングダイオードDo1および高速スイッチングダイオードDo2、1次側の高速スイッチングダイオードDi1ないし高速スイッチングダイオードDi4などもスイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2に同期してスイッチングの動作をするものである。したがって、アース電位としては、図31のスイッチング電源回路のように、アクティブフィルタ側と、その後段のスイッチングコンバータとの間で干渉することが無く、スイッチング周波数の変化に関わらず安定させることができる。
【0181】
図1ないし図3に示すスイッチング電源回路との比較においては、少ない個数の部品によって、ノーマルモードノイズおよびノーマルモードノイズが大幅に低減できた。すなわち、DC/DCコンバータに追加する力率改善のための追加の部品の点数は、図22に示す力率改善回路21においては、電圧帰還トランスVFTの1点であり、部品点数を削減することができる。
【0182】
図26に示す力率改善回路22においては、コンデンサCNLに替えて、コンデンサCNL1およびコンデンサCNL2を有するので、コモンモードノイズに対してさらに良好なる抑圧特性を有することとなる。また、図26に示す回路においては、2次側は倍電圧全波整流回路を採用している。
【0183】
図27に示すように2次側回路は倍電圧半波整流回路として構成することもできる。
【0184】
図28に示す力率改善回路23においては、コンデンサCNL1およびコンデンサCNL2に加えてコンデンサCNL3を有するので、コンデンサCNLがない場合に較べてノーマルモードノイズおよびコモンモードノイズのいずれに対してもさらに良好なる抑圧特性を有することとなる。また、上述したようにして、1次側平滑コンデンサCiに共振電流に応じた電力が帰還される点は、上述したと同様である。また、2次側回路は倍電流整流回路としている。
【0185】
図29に示す力率改善回路24においては、1次側整流素子Diの入力側の一の端子に電圧帰還トランスVFTの第1巻線Loの巻き終わりが接続され、1次側整流素子Diの入力側の他の端子に第2巻線Lo’の始めが接続されて加極性接続とされている。このように加極性とされ、インダクタとしての機能は大きなものである。ここで、巻始め、巻き終わりの用語は、第1巻線Loと第2巻線Lo’との相対関係を意味するものであるので、巻始めを巻き終わりに変え、巻き終わりを巻始めに変えて用いても、その用語の意味するところは同じものである。ノーマルモードノイズは、第1巻線Loと磁気的に疎結合された第2巻線Lo’に生じるインダクタンススとコンデンサCNLのキャパシタンスとによってフィルタリングされる。これによってコンデンサCNLの両端の電圧(ノーマルモードノイズ)は非常に小さいものとなる。
【0186】
図30に発振・ドライブ・OCP回路2の一部である過負荷制限部の構成の一例を示す。過負荷制限部は絶対値検出(ABS)部51、平均値検出(ABS)部52、コンパレータ(COMP)部53、第1アンド(AND1)部54、第2アンド(AND2)部55、第1ドライバ(DRIVE1)部56、第2ドライバ(DRIVE2)部57の各部を有している。絶対値検出部51は高速のスイッチングダイオードとオペアンプとから構成されている。また、平均値検出部52は抵抗とコンデンサのローパスフィルタとから構成されている。また、第1アンド部54および第2アンド部55はトランジスタの組み合わせで構成されたアンドロジックであり、2つの入力のいずれもがハイレベルの場合に出力がハイレベルとなるようになされている。第1ドライバ部56はスイッチング素子Q1のゲートをドライブするようにレベルシフトと電力増幅とをおこなう部分であり、第2ドライバ部57はスイッチング素子Q2のゲートをドライブするようにレベルシフトと電力増幅とをおこなう部分である。
【0187】
発振・ドライブ・OCP回路2に入力された信号VOPは、絶対値検出部51で絶対値に変換される。すなわち、図1および図2に示すスイッチング電源回路では、信号VOPは正負の両極性の電圧であるが、絶対値検出部51を経ることによって正極性のみの電圧となる。この場合において負極性の電圧は極性が反転されることとなる。また、図3に示すスイッチング電源回路では、信号VOPは負極性の電圧であるが絶対値検出部51を経ることによって正極性の電圧となる。
【0188】
絶対値検出部51からの電圧は脈流電圧であるが、平均値検出部52は所定時定数でこれを平均化する部分である。これによって、平均値検出部52からの所定時定数で変化する直流電圧とされる。ここで、所定時定数の大きさは、必要以上に頻繁に過負荷制限部が動作することなく、スイッチング電源回路が破壊に至る前に過負荷を検出できるように選択されている。
【0189】
コンパレータ部53は、平均値検出部52からの所定時定数で変化する直流電圧の値と予め定めた基準電圧VTHの値とを比較する。そして、平均値検出部52からの直流電圧の値が基準電圧VTHよりも小さい場合には、コンパレータ部53からの電圧はハイレベルであり、平均値検出部52からの直流電圧の値が基準電圧VTHよりも大きい場合には、コンパレータ部53からの電圧はローレベルである。ここで、基準電圧VTHの定め方によって、どの程度の過負荷でこの過負荷制限部を機能させるかが定められることとなる。例えば、最大負荷電力である150Wの2割を越える180W以上の負荷電力に対応する過電流によって過負荷制限部がその動作を開始するようにしている。
【0190】
つまり、負荷に供給される電力の大きさが180Wに相応する以上の電流が抵抗Rに流れる場合には、第1アンド部54および第2アンド部55の各々の一方の入力端子に入力される信号がローレベルとなって、第1アンド部54に入力されるスイッチング素子Q1を制御する信号である信号PWM1および第2アンド部55に入力されるスイッチング素子Q2を制御する信号である信号PWM2のハイレベルまたはローレベルの如何にかかわらず、第1アンド部54の出力および第2アンド部55の出力の各々がローレベルとされる。この結果として、第1ドライバ部56および第2ドライバ部57からのスイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2の各々のゲートをドライブするための信号がローレベルとされる。そして、過負荷からスイッチング電源回路を保護する機能を生ずるようになる。
【0191】
なお、このような、1次側の過電流を検出する過負荷の検出方式では、過負荷のみならずスイッチング電源回路の他の部分の動作の異常によって抵抗Rに過電流が流れた場合においても過電流を検出することができる。そして、スイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2のゲートを制御できる限りは、過電流に対する保護特性を有するものであり、このような過電流検出方式によって、過電流が流れる原因の如何にかかわらずスイッチング電源回路の異常発熱等を防止することができる。
【0192】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて変更することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】実施形態のスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図2】実施形態のスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図3】実施形態のスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図4】実施形態の電源回路の負荷電力に対する力率および電源効率の特性を示す図である。
【図5】実施形態のスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図6】実施形態のコンバータトランスの構成例を示す回路図である。
【図7】実施形態のスイッチング電源回路の要部の波形を示す図である。
【図8】実施形態のスイッチング電源回路の要部の波形を示す図である。
【図9】実施形態の電源回路の負荷電力に対する力率および電源効率の特性を示す図である。
【図10】実施形態のスイッチング電源回路の構成例の一部を示す回路図である。
【図11】実施形態のスイッチング電源回路の構成例の一部を示す回路図である。
【図12】実施形態のスイッチング電源回路の構成例の一部を示す回路図である。
【図13】実施形態のスイッチング電源回路の構成例の一部を示す回路図である。
【図14】実施形態のスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図15】実施形態のスイッチング電源回路の要部の波形を示す図である。
【図16】実施形態のスイッチング電源回路の要部の波形を示す図である。
【図17】実施形態の電源回路の負荷電力に対する力率および電源効率の特性を示す図である。
【図18】実施形態のスイッチング電源回路の構成例の一部を示す回路図である。
【図19】実施形態のスイッチング電源回路の構成例の一部を示す回路図である。
【図20】実施形態のスイッチング電源回路の構成例の一部を示す回路図である。
【図21】実施形態のスイッチング電源回路の構成例の一部を示す回路図である。
【図22】実施形態のスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図23】実施形態のスイッチング電源回路の要部の波形を示す図である。
【図24】実施形態のスイッチング電源回路の要部の波形を示す図である。
【図25】実施形態の電源回路の負荷電力に対する力率および電源効率の特性を示す図である。
【図26】実施形態のスイッチング電源回路の構成例の一部を示す回路図である。
【図27】実施形態のスイッチング電源回路の構成例の一部を示す回路図である。
【図28】実施形態のスイッチング電源回路の構成例の一部を示す回路図である。
【図29】実施形態のスイッチング電源回路の構成例の一部を示す回路図である。
【図30】実施形態の過負荷制限部の構成の一例を示す図である。
【図31】背景技術に示すスイッチング電源回路の構成例を示す図である。
【図32】背景技術に示すスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0194】
1 制御回路、2 発振・ドライブ・OCP回路、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24 力率改善回路、51 絶対値検出部、52 平均値検出部、53 コンパレータ部、54、55 アンド部、56、57 ドライバ部、AC 交流電源、B ボビン、C1 直列共振コンデンサ、Ci 1次側平滑コンデンサ、CL、CL1、Cl2 アクロスコンデンサ、CMC コモンモードチョークコイル、CNL、CNL1、CNL2、CNL3 コンデンサ、Co 2次側平滑コンデンサ、Cp 部分電圧共振コンデンサ、DD1、DD2 ボディダイオード、Di 1次側整流素子、Do 2次側整流素子、Di1、Di2、Di3、Di4、Do1、Do2、Do3、Do4 高速スイッチングダイオード、Ei 整流平滑電圧、Eo 出力直流電圧、G ギャップ、I1、I2 電流、IAC 交流入力電流、L1、L2、Ls1、Ls2 インダクタ、Lo 第1巻線(力率改善用インダクタ、インダクタ)N1 1次巻線、N2 2次巻線、N3 3次巻線、PIT コンバータトランス、Q1、Q2 スイッチング素子、R、R1、R2 抵抗、V1、V2 電圧、VAC 交流入力電圧、VFT 電圧帰還トランス、VOP 信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの入力交流電力を1次側直流電力に変換する1次側整流平滑部と、前記1次側直流電力を交流電力に変換しさらに2次側直流電力に変換するコンバータ部と、力率を改善する力率改善部と、前記力率改善部と前記交流電源との間に介在されるコモンモードフィルタ部と、を備えるスイッチング電源回路であって、
前記1次側整流平滑部は、
交流電源からの入力交流電力を入力して整流する1次側整流素子と、
1次側平滑コンデンサと、を具備し、
前記コンバータ部は、
1次巻線と、前記1次巻線と磁気的に疎結合とされる2次巻線と、前記1次巻線と磁気的に結合される3次巻線と、を有するコンバータトランスと、
前記1次側整流平滑部から供給される前記1次側直流電力を、前記交流電力に変換して前記1次巻線に供給するスイッチング素子と、
前記スイッチング素子をオン・オフ駆動する発振・ドライブ回路と、
前記1次巻線に生じる漏れインダクタと1次側直列共振コンデンサとによって形成され、前記スイッチング素子から電力が供給される1次側直列共振回路と、
前記1次巻線に生じる漏れインダクタと部分電圧共振コンデンサとによって形成され、前記スイッチング素子と並列に接続される部分電圧共振回路と、
前記2次巻線に生じる漏れインダクタと2次側直列共振コンデンサとによって形成される2次側直列共振回路と、
前記2次側直列共振回路に接続される整流素子と、
前記整流素子に接続され前記出力直流電圧を得るようにされた2次側平滑コンデンサと、
前記出力直流電圧の値を所定の値とするような制御信号を前記発振・ドライブ回路に供給する制御回路と、を具備し、
前記力率改善部は、
前記3次巻線に発生する共振パルスを整流できるスイッチング速度を有する前記1次側整流素子の入力側に接続された力率改善用インダクタとコンデンサとの直列回路を具備し、
前記コモンモードフィルタ部は、
コモンモードチョークコイルとアクロスコンデンサとして機能する前記力率改善部の前記コンデンサと、を具備する、
スイッチング電源回路。
【請求項2】
前記3次巻線は、前記1次側整流素子の正極性端子と前記1次側平滑コンデンサの正極性端子との間に接続されることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項3】
前記3次巻線は、前記1次側整流素子の負極性端子と前記1次側平滑コンデンサの負極性端子との間に接続されることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項4】
交流電源からの入力交流電力を1次側直流電力に変換する1次側整流平滑部と、前記1次側直流電力を交流電力に変換しさらに2次側直流電力に変換するコンバータ部と、力率を改善する力率改善部と、前記力率改善部と前記交流電源との間に介在されるコモンモードフィルタ部と、を備えるスイッチング電源回路であって、
前記1次側整流平滑部は、
交流電源からの入力交流電力を入力して整流する1次側整流素子と、
1次側平滑コンデンサと、を具備し、
前記コンバータ部は、
1次巻線および前記1次巻線と磁気的に疎結合とされる2次巻線を有するコンバータトランスと、
前記1次側整流平滑部から供給される前記1次側直流電力を、前記交流電力に変換して前記1次巻線に供給するスイッチング素子と、
前記スイッチング素子をオン・オフ駆動する発振・ドライブ回路と、
前記1次巻線に生じる漏れインダクタと1次側直列共振コンデンサとによって形成され、前記スイッチング素子から電力が供給される1次側直列共振回路と、
前記1次巻線に生じる漏れインダクタと部分電圧共振コンデンサとによって形成され、前記スイッチング素子と並列に接続される部分電圧共振回路と、
前記2次巻線に生じる漏れインダクタと2次側直列共振コンデンサとによって形成される2次側直列共振回路と、
前記2次側直列共振回路に接続される整流素子と、
前記整流素子に接続され前記出力直流電圧を得るようにされた2次側平滑コンデンサと、
前記出力直流電圧の値を所定の値とするような制御信号を前記発振・ドライブ回路に供給する制御回路と、を具備し、
前記力率改善部は、
第1巻線と第2巻線とが磁気的結合を有して形成される電圧帰還トランスと、前記1次側整流素子の入力側の各々の端子の間に接続されたコンデンサと、を具備し、
前記1次側整流素子の出力側の各々の極性端子に前記電圧帰還トランスの前記第1巻線の一方の端子と前記電圧帰還トランスの前記第2巻線の一方の端子とが各々接続され、
前記1次側整流素子の出力側のいずれかの極性端子に前記直列共振コンデンサが接続され、
前記電圧帰還トランスの前記第1巻線の他方の端子と前記第2巻線の他方の端子との間に前記1次側平滑コンデンサが接続されて形成され、
前記コモンモードフィルタ部は、
コモンモードチョークコイルとアクロスコンデンサとして機能する前記力率改善部の前記コンデンサと、を具備する、
スイッチング電源回路。
【請求項5】
前記1次側整流素子の出力側の正極性端子に前記電圧帰還トランスの前記第2巻線の巻始めが接続され、前記1次側整流素子の出力側の負極性端子に前記電圧帰還トランスの前記第1巻線の巻き終わりが接続されて加極性接続とされることを特徴とする請求項4に記載のスイッチング電源回路。
【請求項6】
前記1次側整流素子の出力側の正極性端子に前記電圧帰還トランスの前記第1巻線の巻き終わりが接続され、前記1次側整流素子の出力側の負極性端子に前記電圧帰還トランスの前記第2巻線の巻き終わりが接続されて減極性接続とされ、前記第1巻線と前記第2巻線とが磁気的に疎結合とされることを特徴とする請求項4に記載のスイッチング電源回路。
【請求項7】
交流電源からの入力交流電力を1次側直流電力に変換する1次側整流平滑部と、前記1次側直流電力を交流電力に変換しさらに2次側直流電力に変換するコンバータ部と、力率を改善する力率改善部と、前記力率改善部と前記交流電源との間に介在されるコモンモードフィルタ部と、を備えるスイッチング電源回路であって、
前記1次側整流平滑部は、
交流電源からの入力交流電力を入力して整流する1次側整流素子と、
1次側平滑コンデンサと、を具備し、
前記コンバータ部は、
1次巻線および前記1次巻線と磁気的に疎結合とされる2次巻線を有するコンバータトランスと、
前記1次側整流平滑部から供給される前記1次側直流電力を、前記交流電力に変換して前記1次巻線に供給するスイッチング素子と、
前記スイッチング素子をオン・オフ駆動する発振・ドライブ回路と、
前記1次巻線に生じる漏れインダクタと1次側直列共振コンデンサとによって形成され、前記スイッチング素子から電力が供給される1次側直列共振回路と、
前記1次巻線に生じる漏れインダクタと部分電圧共振コンデンサとによって形成され、前記スイッチング素子と並列に接続される部分電圧共振回路と、
前記2次巻線に生じる漏れインダクタと2次側直列共振コンデンサとによって形成される2次側直列共振回路と、
前記2次側直列共振回路に接続される整流素子と、
前記整流素子に接続され前記出力直流電圧を得るようにされた2次側平滑コンデンサと、
前記出力直流電圧の値を所定の値とするような制御信号を前記発振・ドライブ回路に供給する制御回路と、を具備し、
前記力率改善部は、
前記直列共振コンデンサが前記1次側整流素子の入力側の一の入力端に接続され、
前記1次側整流素子の入力側の各々の端子には磁気的に結合される第1巻線と第2巻線とを有する電圧帰還トランスの各々の巻線の出力端が接続され、
前記電圧帰還トランスの各々の巻線の入力端にコンデンサが接続され、
前記1次側整流素子は前記直列共振コンデンサに流れる共振電流を整流できるスイッチング速度を有するものとされて構成されており、
前記コモンモードフィルタ部は、
コモンモードチョークコイルと前記コモンモードチョークコイルのアクロスコンデンサとして機能する前記力率改善部の前記コンデンサと、を具備する、
スイッチング電源回路。
【請求項8】
前記1次側整流素子の入力側の一の端子に前記電圧帰還トランスの前記第1巻線の巻き終わりが接続され、前記1次側整流素子の入力側の他の端子に前記電圧帰還トランスの前記第2巻線の巻始めが接続されて加極性接続とされることを特徴とする請求項7に記載のスイッチング電源回路。
【請求項9】
前記1次側整流素子の入力側の一の端子に前記電圧帰還トランスの前記第1巻線の巻終わりが接続され、前記1次側整流素子の入力側の他の端子に前記電圧帰還トランスの前記第2巻線の巻き終わり接続されて減極性接続とされ、前記第1巻線と前記第2巻線とが磁気的に疎結合とされることを特徴とする請求項7に記載のスイッチング電源回路。
【請求項10】
前記力率改善部のコンデンサは、
第1コンデンサと第2コンデンサとの直列接続回路によって形成され、
前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの接続点が前記1次側整流素子の出力側の基準電位点に接続されることを特徴とする請求項1、請求項4または請求項7のいずれかの1項に記載のスイッチング電源回路。
【請求項11】
前記力率改善部のコンデンサは、
第1コンデンサと第2コンデンサとの直列接続回路および前記直列接続回路に並列に接続された第3のコンデンサによって形成され、
前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの接続点が前記1次側整流素子の出力側の基準電位点に接続されることを特徴とする請求項1、請求項4または請求項7のいずれかの1項に記載のスイッチング電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2008−17599(P2008−17599A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185323(P2006−185323)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】