説明

スイッチング電源装置

【課題】一対の整流素子を有し、二次巻線に電圧が発生しない期間も整流素子をオンさせることができ、低損失に整流素子を駆動可能なスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】出力トランス12は、前記二次巻線12aと補助巻き線12bを有する。一対の整流素子20,22、一対の整流素子20,22の駆動端子・グランド端子間に個々に設けられた第一及び第二の入力コンデンサ20b,22bを有した同期整流回路16と、平滑回路18を備える。補助巻線12bの発生電圧によって充電され、その電荷を保持する電荷保持コンデンサ34,38を備える。二次巻線12aより電圧が出力されない期間に、第一の入力コンデンサ20b又は第二の入力コンデンサ22bと、電荷保持コンデンサ34又は電荷保持コンデンサ38が保持している電荷が、補助巻線12bを介して移動し、第一及び第二の整流素子20,22を同時にオンする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プッシュプル回路、ハーフブリッジ回路、若しくはこれらと同様の電圧を出力トランスの二次巻線に発生させるインバータ回路を有したスイッチング電源装置に関し、特に当該二次巻線の電圧を整流する同期整流回路を備えたスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プッシュプル回路などのインバータ回路は、直流入力電源と出力トランスの一次巻線との導通状態を切り替えることにより、出力トランスの二次巻線に、正電圧が出力される第一の期間、電圧が出力されない第二の期間、負電圧が出力される第三の期間、及び再度電圧が出力されない第四の期間を1周期とする矩形状の交流電圧を発生させる。そして、この二次巻線の交流電圧は、一般に、カレントダブラ型や全波整流型の整流回路によって整流される。そして、近年、MOS型FET等を整流素子とする同期整流回路を構成し、整流素子の損失低減を図ったスイッチング電源装置が提案されている。
【0003】
この種のインバータ回路は、上記第二及び第四の期間に出力トランスの二次巻線及び同期整流素子駆動用の補助巻線に電圧が出力されない期間があるが、この第二及び第四の期間にも一対の整流素子がオンできるように、各整流素子の駆動端子の正電圧を確保することが課題であった。
【0004】
この課題を解決する方法として、例えば、特許文献1に開示されているように、カレントダブラ型の同期整流回路を備えたスイッチング電源装置であって、N−chのMOS型FETである一対の整流素子の駆動回路として、グランド端子同士が共通電位に配置された接続された整流素子の駆動端子の間に接続された補助巻線と、各整流素子のグランド端子から駆動端子の方向に各々接続された一対のダイオードで成る基本駆動回路を備えたスイッチング電源装置がある。このスイッチング電源装置は、第一又は第三の期間に一方の整流素子の入力コンデンサに電荷を蓄積し、その蓄積電荷を第二又は第四の期間に双方の入力コンデンサに分配することによって、第二及び第四の期間に双方の整流素子をオンさせることができる。
【0005】
さらに、上記の基本駆動回路の構成に加え、整流素子の駆動端子に一定値以上の電圧が印加されないようにする電圧制限回路が付加された構成や、第一及び第三の期間中に一対の整流素子が同時オンする危険動作を回避するため、整流素子の駆動端子電圧を所定のタイミングでローレベルに低下させる放電回路が付加された構成も示されている。
【0006】
また、特許文献2に開示されているように、カレントダブラ型又は全波整流型の同期整流回路を備えたスイッチング電源装置であって、N−chのMOS型FETを用いた一対の整流素子の駆動回路として、特許文献1の基本駆動回路の構成に加え、電荷保持用の一対のコンデンサと、所定のタイミングで整流素子の駆動端子と補助巻線との間を各々オン・オフするトランジスタと、当該トランジスタの出力の電圧を制限することによって整流素子の駆動端子に一定値以上の電圧が印加されないようにする電圧制限回路などで構成された駆動回路を備えたスイッチング電源装置がある。このスイッチング電源装置は、第一又は第三の期間に一方の電荷保持用のコンデンサに蓄積された電荷を、第二又は第四の期間に双方の整流素子の入力コンデンサに分配することによって、第二及び第四の期間に一対の整流素子をオンさせることができる。さらに、このスイッチング電源装置には、第一及び第三の期間中に一対の整流素子が同時オンする危険動作を回避するため、整流素子の駆動端子電圧を所定のタイミングでローレベルに低下させる第一及び第二の駆動手段も付加されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−189608号公報
【特許文献2】特開2007−20389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1のスイッチング電源装置は、一対の整流素子をオン・オフさせるために、一定の駆動損失が生じるという問題があった。以下、このスイッチング電源装置の基本駆動回路の動作について、図16(a),(b)に基づいて説明する。図16(b)のタイムチャートでは、出力トランスTの二次巻線2に、正電圧(図中の巻き線において、ドットが付された側が高電位の電圧)が出力される第一の期間を期間A、電圧が出力されない第二の期間を期間B、負電圧が出力される第三の期間を期間C、及び再度電圧が出力されない第四の期間を期間Dと定義し、ダイオードD1,D2のオン電圧はゼロボルトとして無視した。また、入力コンデンサC1,C2の容量値は等しくCiであると仮定する。
【0009】
期間Aのとき、入力コンデンサC2は、サブ巻線電圧Vsubのピーク値であるV1に充電され、入力コンデンサC1は、ゼロ電圧になっている。従って、このとき入力コンデンサC1,C2に蓄積されている総エネルギーEaは、式(1)で表すことができる。
【数1】

【0010】
期間Bになると、入力コンデンサC2の蓄積電荷は、サブ巻線4を介して入力コンデンサC1に分配され、入力コンデンサC1,C2の電圧は、共に、V1の2分の1の値になる。従って、このとき入力コンデンサC1,C2に蓄積されている総エネルギーEbは、式(2)で表すことができる。
【数2】

【0011】
期間Cになると、入力コンデンサC1は、サブ巻線電圧Vsubのピーク値である電圧V1に充電され、入力コンデンサC2は、ゼロ電圧になる。従って、このとき入力コンデンサC1,C2に蓄積されている総エネルギーEcは、式(3)で表すことができる。
【数3】

【0012】
期間Dになると、入力コンデンサC1の蓄積電荷は、サブ巻線を介して入力コンデンサC2に分配され、入力コンデンサC1,C2の電圧は、共に電圧V1の2分の1になる。従って、このとき入力コンデンサC1,C2に蓄積されている総エネルギーEdは、式(4)で表すことができる。
【数4】

【0013】
このように、期間Aから期間Bに移行するとき、エネルギーEaとEbの差分を損失し、期間Cに移行したときに、サブ巻線4からのエネルギー供給によって当該損失分が補充される。同様に、期間Cから期間Dに移行するとき、エネルギーEcとEdの差分を損失し、期間Aに移行したときに、サブ巻線4からのエネルギー供給によって当該損失分が補充される。すなわち、一対の整流素子Q1,Q2をオン・オフするとき生じる駆動損失Pは、式(5)で表すことができる。
【数5】

【0014】
整流回路に流れるドレイン電流によって発生する導通損失を小さく抑えるためには、オン抵抗の小さな整流素子を選択しなければならないが、一般に、オン抵抗が小さいMOS型FETほど入力コンデンサ(寄生コンデンサ)の容量Ciが大きいため、上記の駆動損失Pを無視することができなくなり、整流回路の低損失化を妨げる要因になっていた。
【0015】
また、特許文献1のスイッチング電源装置の基本駆動回路は、期間Bから期間Cに移行したときと、期間Dから期間Aに移行したときに、ごく短時間ではあるが、整流素子Q1とQ2が同時にオンしてしまう場合が考えられる。期間Aと期間Cに整流素子Q1,Q2が同時にオンすると、電圧が発生しようとする二次巻線の両端を低インピーダンスに短絡することになり、整流素子Q1,Q2に大きな電流が流れ、電源回路が破損するおそれがある。
【0016】
この問題を回避する方法として、例えば、整流素子Q1,Q2の駆動端子・グランド端子間に、個々に放電回路を付加する方法が考えられる。すなわち、一方の放電回路によって期間Aが開始する直前に整流素子Q1の入力コンデンサを放電してほぼゼロ電圧まで低下させ、整流素子Q1がオフの状態から期間Aが開始するようにする。同様に、もう一方の放電回路によって期間Cが開始する直前に整流素子Q2の入力コンデンサを放電してほぼゼロ電圧まで低下させ、整流素子Q2がオフの状態から期間Cが開始するようする方法である。しかし、この方法を特許文献1のスイッチング電源装置の基本駆動回路に適用すると、式(5)で表されるよりも大きな駆動損失が生じてしまう。
【0017】
この方法を適用した場合、期間A〜Dの各期間において、入力コンデンサC1,C2に蓄積されている総エネルギーEa〜Edは、各々、式(1)〜(4)と同様の値である。しかし、放電回路が動作すると、期間Aと期間Cの直前に入力コンデンサC1,C2の電圧が共にゼロ電圧になるため、期間Aと期間Cに移行するとき、エネルギーEa,Ecの全てをサブ巻線4から新たに供給しなければならない。従って、一対の整流素子Q1,Q2をオン・オフさせるために生じる駆動損失Pは、式(6)で表すことができる。
【数6】

【0018】
このように、装置の安全性を高めるために放電回路を設けると、上述した駆動損失Pが増加し、整流回路の低損失化を妨げていた。
【0019】
さらに、特許文献1のスイッチング電源装置は、サブ巻線に発生する電圧V1が変動する範囲が広いとき、整流素子Q1,Q2の駆動端子・グランド端子間に印加されるハイ・レベルの電圧値を適正化するため、電圧制限回路を付加する必要があり、回路構成が複雑になるという問題もあった。
【0020】
一方、特許文献2のスイッチング電源装置においても、一対の整流素子をオン・オフさせるときに、大きな駆動損失が生じるという問題がある。このスイッチング電源装置の理想的な動作を考えると、特許文献2の第一及び第二のコンデンサC11,C21の容量Crが、整流素子M1,M2の駆動端子・グランド端子間の入力コンデンサの容量Ciよりも十分大きな値であることが好ましい。すると、第一及び第二のコンデンサC11,C21の電圧は、図16(b)の電圧Vg1,Vg2とほぼ相似形の波形になる。従って、第一及び第二のコンデンサC11,C21に生じる電荷の移動によって、少なくとも、式(7)で表される損失が生じ、それは、式(5)で表される損失よりも大きな損失であることが分かる。
【数7】

【0021】
また、特許文献2のスイッチング電源装置は、整流素子M1,M2が同時にオンする問題を回避するため、整流素子M1,M2の駆動端子に、第一及び第二の駆動手段が設けられている。すなわち、この駆動手段は、期間Aが開始する直前に整流素子M1の入力コンデンサの電荷を放電してほぼゼロ電圧まで低下させ、整流素子M1がオフの状態から期間Aが開始するようにし、同様に、期間Cが開始する直前に整流素子M2の入力コンデンサを放電させ、整流素子M2がオフの状態から期間Cが開始する動作を行う。従って、この駆動手段の放電動作により、式(7)で表される値よりも駆動損失が増加することになる。
【0022】
さらに、特許文献2のスイッチング電源装置の場合も、サブ巻線(AW)に発生する電圧V1の変動範囲が広いとき、整流素子M1,M2の駆動端子・グランド端子間に印加されるハイ・レベルの電圧値を適正化するため、電圧制限回路に相当する回路が付加されており、回路構成が複雑になるという問題もあった。
【0023】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたもので、一対の整流素子から成るカレントダブラ型や全波整流型などの同期整流回路を有し、二次巻線に電圧が発生しない期間も一対の整流素子をオンさせることができ、低損失に整流素子を駆動することが可能なスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この発明は、一次巻線、二次巻線及び補助巻線を備えた出力トランスと、直流入力電源と前記一次巻線の導通状態を切り替え、正電圧が出力される第一の期間、電圧が出力されない第二の期間、負電圧が出力される第三の期間、及び再度電圧が出力されない第四の期間を1周期とする矩形状の交流電圧を前記二次巻線に出力させるインバータ回路と、自己の駆動端子・グランド端子間にオンの閾値以上の正電圧が印加されたときにオンする素子であって、第一の期間にオンし第三の期間にオフする第一の整流素子と、第三の期間にオンし第一の期間にオフする第二の整流素子と、前記一対の整流素子の駆動端子・グランド端子間に個々に設けられた第一及び第二の入力コンデンサとで構成され、前記二次巻線から出力される交流電圧を整流して出力する同期整流回路と、前記同期整流回路の出力を平滑して直流の出力電圧を生成する平滑回路とを備えたスイッチング電源装置であって、
前記第一及び第二の整流素子はグランド端子同士が互いに接続され、前記補助巻線の両端子のうち、第一の期間に高電位となる第一の端子が前記第一の整流素子の駆動端子に接続され、前記補助巻線の第二の端子が前記第二の整流素子の駆動端子に接続され、前記第一の整流素子のグランド端子と前記補助巻線の第一の端子との間に、前記グランド端子側をアノード端子とする第一のダイオードが接続され、前記第二の整流素子のグランド端子と前記補助巻線の第二の端子との間に、前記グランド端子側をアノード端子とする第二のダイオードが接続され、第一の期間若しくは第三の期間、又はその両方の期間に、前記補助巻線の発生電圧によって充電され、その電荷を保持する電荷保持コンデンサが設けられ、
第二の期間になると、その直前の期間に前記第一の入力コンデンサ及び前記電荷保持コンデンサが保持している電荷が前記補助巻線を介して移動し、前記第一の入力コンデンサ、前記第二の入力コンデンサ及び前記電荷保持コンデンサで分配されることにより、前記第一及び第二の整流素子が同時にオンし、
第四の期間になると、その直前の期間に前記第二の入力コンデンサ及び前記電荷保持コンデンサが保持している電荷が前記補助巻線を介して移動し、前記第一の入力コンデンサ、第二の入力コンデンサ及び前記電荷保持コンデンサで分配されることにより、前記第一及び第二の整流素子が同時にオンするスイッチング電源装置である。
【0025】
また、前記整流回路及び前記平滑回路がカレントダブラ型に構成され、前記出力トランスの前記補助巻線を、前記二次巻線で兼用したスイッチング電源装置である。
【0026】
また、前記第一の整流素子の駆動端子・グランド端子間に、双方向に導通可能な第一のスイッチ回路と前記電荷保持コンデンサである第一の電荷保持コンデンサの直列回路が接続され、前記第二の整流素子の駆動端子・グランド端子間に、双方向に導通可能な第二のスイッチ回路と前記電荷保持コンデンサである第二の電荷保持コンデンサの直列回路が接続され、
前記第一のスイッチ回路は、第一の期間に導通し、前記補助巻線の発生電圧が前記第一の電荷保持コンデンサを充電する経路になり、さらに第四の期間に導通し、第一の期間に蓄積した当該電荷を前記第一の整流素子又は前記第二の整流素子の入力コンデンサに分配する経路になるようオン・オフ動作し、
前記第二のスイッチ回路は、第三の期間に導通し、前記補助巻線の発生電圧が前記第二の電荷保持コンデンサを充電する経路になり、さらに第二の期間に導通し、第三の期間に蓄積した当該電荷を前記第一の整流素子又は前記第二の整流素子の入力コンデンサに分配する経路になるようオン・オフ動作するスイッチング電源装置である。
【0027】
また、前記第一の電荷保持コンデンサは、一端が前記第一の整流素子のグランド端子に接続され、前記第一のスイッチ回路は、前記第一のダイオードのカソード端子と前記第一の整流素子の駆動端子の接続点に挿入された第一の抵抗と、ゲート端子が前記第一の抵抗の前記第一のダイオード側の一端に接続され、ソース端子が前記第一の抵抗の他の一端に接続され、ドレイン端子が前記第一の電荷保持コンデンサの他の一端に接続されたN−chのMOS型FETである第一のトランジスタとで構成され、
前記第二の電荷保持コンデンサは、一端が前記第二の整流素子のグランド端子に接続され、前記第二のスイッチ回路は、前記第二のダイオードのカソード端子と前記第二の整流素子の駆動端子の接続点に挿入された第二の抵抗と、ゲート端子が前記第二の抵抗の前記第二のダイオード側の一端に接続され、ソース端子が前記第二の抵抗の他の一端に接続され、ドレイン端子が前記第二の電荷保持コンデンサの他の一端に接続されたN−chのMOS型FETである第二のトランジスタとで構成され、
前記第一及び前記第二のトランジスタは、前記第一及び第二の抵抗の両端に発生する電圧によって個々にオン・オフするスイッチング電源装置である。
【0028】
また、前記第一の整流素子の駆動端子・グランド端子間に、双方向に導通可能な第一のスイッチ回路と前記電荷保持コンデンサである第一の電荷保持コンデンサと直列回路が接続され、前記第二の整流素子の駆動端子・グランド端子間に、双方向に導通可能な第二のスイッチ回路と前記電荷保持コンデンサである第二の電荷保持コンデンサの直列回路が接続され、
前記第一のスイッチ回路は、第一の期間に導通し、前記補助巻線の発生電圧が前記第一の電荷保持コンデンサを充電する経路になり、さらに第二の期間に導通し、第一の期間に蓄積した当該電荷を前記第一の整流素子又は前記第二の整流素子の入力コンデンサに分配する経路になるようオン・オフ動作し、
前記第二のスイッチ回路は、第三の期間に導通し、前記補助巻線の発生電圧が前記第二の電荷保持コンデンサを充電する経路になり、さらに第四の期間に導通し、第三の期間に蓄積した当該電荷を前記第一の整流素子又は前記第二の整流素子の入力コンデンサに分配する経路になるようオン・オフ動作するスイッチング電源装置である。
【0029】
また、前記第一の整流素子の駆動端子・グランド端子間に、双方向に導通可能な第一のスイッチ回路と前記電荷保持コンデンサである第一の電荷保持コンデンサの直列回路が接続され、前記第二の整流素子の駆動端子・グランド端子間に、双方向に導通可能な第二のスイッチ回路と前記電荷保持コンデンサである第二の電荷保持コンデンサの直列回路が接続され、
前記第一のスイッチ回路は、第一の期間に導通し、前記補助巻線の発生電圧が前記第一のコンデンサを充電する経路になるようオン・オフ動作し、前記第二のスイッチ回路は、第三の期間に導通し、前記補助巻線の発生電圧が前記第二のコンデンサを充電する経路になるようオン・オフ動作し、さらに、第一及び第二のスイッチ回路は、第二及び第四の期間に導通し、その直前の期間に第一及び第二の電荷保持コンデンサに蓄積した電荷を、前記第一の整流素子又は前記第二の整流素子の入力コンデンサに分配する経路になるようオン・オフ動作するスイッチング電源装置である。
【0030】
また、前記第一のスイッチ回路と前記第一の電荷保持コンデンサとの直列回路は、第一の電荷保持コンデンサが前記第一の整流素子のグランド端子側に接続され、前記第二のスイッチ回路と前記第二の電荷保持コンデンサとの直列回路は、第二の電荷保持コンデンサが前記第二の整流素子のグランド端子側に接続され、
前記第二の電荷保持コンデンサと前記第二のスイッチ回路との接続点と、前記第一の整流素子の駆動端子との間に、前記第一の整流素子側をアノード端子とする第三のダイオードが接続され、前記第一の電荷保持コンデンサと前記第一のスイッチ回路との接続点と、前記第二の整流素子の駆動端子との間に、前記第二の整流素子側をアノード端子とする第四のダイオードが接続され、
前記第一の電荷保持コンデンサは、第三の期間に、前記第四のダイオードを通じて前記補助巻線から充電され、前記第二の電荷保持コンデンサは、第一の期間に、前記第三のダイオードを通じて前記補助巻線から充電されるスイッチング電源装置である。
【0031】
また、前記第一のダイオードのカソード端子と前記補助巻線の第一の端子との接続点と、前記第一の整流素子の駆動端子との間に、双方向に導通可能な第三のスイッチ回路が挿入され、前記第二のダイオードのカソード端子と前記補助巻線の第二の端子との接続点と、前記第二の整流素子の駆動端子との間に、双方向に導通可能な第四のスイッチ回路が挿入され、前記第一の整流素子の駆動端子・グランド端子間に第五のスイッチ回路が接続され、前記第二の整流素子の駆動端子・グランド端子間に第六のスイッチ回路が接続され、
前記第五のスイッチ回路は、前記第三の期間に入る前にオンして前記第一の整流素子の駆動端子電圧をオンの閾値未満に低下させ、さらに、前記第三のスイッチ回路又は第四のスイッチ回路は、前記第五のスイッチ回路がオンするのと同時又はその前にオフする動作を行い、前記第六のスイッチ回路は、前記第一の期間に入る前にオンして前記第二の整流素子の駆動端子電圧をオンの閾値未満に低下させ、さらに、第三のスイッチ回路又は前記第四のスイッチ回路は、前記第六のスイッチ回路がオンするのと同時又はその前にオフする動作を行うスイッチング電源装置である。
【0032】
また、前記第一の電荷保持コンデンサは、一端が前記第一の整流素子のグランド端子に接続され、前記第一のスイッチ回路は、ソース端子が前記第一の整流素子の駆動端子に接続され、ドレイン端子が前記第一の電荷保持コンデンサの他の一端に接続されたN−chのMOS型FETである第一のトランジスタで構成され、前記第二の電荷保持コンデンサは、一端が前記第二の整流素子のグランド端子に接続され、前記第二のスイッチ回路は、ソース端子が前記第二の整流素子の駆動端子に接続され、ドレイン端子が前記第二の電荷保持コンデンサの他の一端に接続されたN−chのMOS型FETである第二のトランジスタで構成され、
前記第三のスイッチ回路は、ソース端子が前記第一の整流素子の駆動端子に接続され、ドレイン端子が前記第一のダイオードのカソード端子に接続され、ゲート端子が前記第一のトランジスタのゲート端子に接続されたN−chのMOS型FETである第三のトランジスタと、前記第三のトランジスタのドレイン端子・ゲート端子間に接続された第三の抵抗と、両端が前記第一の整流素子のグランド端子と前記第三のトランジスタのゲート端子の間に接続され、所定の駆動信号によってオン・オフ駆動される第一の補助トランジスタとで構成され、前記第四のスイッチ回路は、ソース端子が前記第二の整流素子の駆動端子に接続され、ドレイン端子が前記第二のダイオードのカソード端子に接続され、ゲート端子が前記第二のトランジスタのゲート端子に接続されたN−chのMOS型FETである第四のトランジスタと、前記第四のトランジスタのドレイン端子・ゲート端子間に接続された第四の抵抗と、両端が前記第二の整流素子のグランド端子と前記第四のトランジスタのゲート端子の間に接続され、所定の駆動信号によってオン・オフ駆動される第二の補助トランジスタとで構成され、
前記第五のスイッチ回路は、両端が前記第一の整流素子の駆動端子・グランド端子間に接続され、駆動端子が前記第一の補助トランジスタの駆動端子に接続され、所定の駆動信号によってオン・オフ駆動される第五のトランジスタで構成され、前記第六のスイッチ回路は、両端が前記第二の整流素子の駆動端子・グランド端子間に接続され、駆動端子が前記第二の補助トランジスタの駆動端子に接続され、所定の駆動信号によってオン・オフ駆動される第六のトランジスタで構成され、
前記第一から第六のスイッチ回路は、互いに接続された前記第一の補助トランジスタ及び第五のトランジスタのゲート端子と、互いに接続された前記第二の補助トランジスタ及び第六のトランジスタのゲート端子とに向けて、所定の駆動信号を個々に出力するトランジスタ駆動回路を備え、前記第五、第六のトランジスタ、及び、前記第一、第二の補助トランジスタは、前記トランジスタ駆動回路が出力する駆動信号によってオンに反転するタイミングが制御されるスイッチング電源装置である。
【0033】
また、前記第一の補助トランジスタの駆動端子のオンの閾値は、前記第五のトランジスタの駆動端子のオンの閾値よりも低く、前記第二の補助トランジスタの駆動端子のオンの閾値は、前記第六のトランジスタの駆動端子のオンの閾値よりも低いことが好ましい。
【0034】
前記第一のダイオードのカソード端子と前記補助巻線の第一の端子との接続点と、前記第一の整流素子の駆動端子との間に、双方向に導通可能な第三のスイッチ回路が挿入され、前記第二のダイオードのカソード端子と前記補助巻線の第二の端子との接続点と、前記第一の整流素子の駆動端子との間に、双方向に導通可能な第四のスイッチ回路が挿入され、前記第一の整流素子の駆動端子・グランド端子間に第五のスイッチ回路が接続され、前記第二の整流素子の駆動端子・グランド端子間に第六のスイッチ回路が接続され、
前記第五のスイッチ回路は、前記第三の期間に入る前にオンして前記第一の整流素子の駆動端子電圧をオンの閾値未満に低下させ、さらに、前記第三又は第四のスイッチ回路、及び第一のスイッチ回路は、前記第五のスイッチ回路がオンするのと同時又はその前にオフする動作を行い、前記第六のスイッチ回路は、前記第一の期間に入る前にオンして前記第二の整流素子の駆動端子電圧をオンの閾値未満に低下させ、さらに、前記第三又は第四のスイッチ回路、及び第二のスイッチ回路は、前記第六のスイッチ回路がオンするのと同時又はその前にオフする動作を行うスイッチング電源装置である。
【発明の効果】
【0035】
この発明のスイッチング電源装置は、電荷保持コンデンサをスイッチ回路によって所定の接続状態に適宜切り替えることによって、電荷保持コンデンサの電圧の変動が小さく抑えられるので、電荷の移動によって生じる整流素子の駆動損失を低減することができる。また、第一の整流素子をオンさせる第四〜第二の期間の駆動端子電圧と、第二の整流素子をオンさせる第二〜第四の期間の駆動端子電圧は、各期間を通じて変動幅が小さくなるので、駆動端子のハイ・レベルの電圧値を容易に適正化することができ、従来のように電圧制限回路のような複雑な構成を設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明のスイッチング電源装置の第一の実施形態を示す回路図である。
【図2】図1の各スイッチ回路を具体的な回路素子で示した回路図である。
【図3】第一の実施形態の動作を説明するタイムチャートである。
【図4】第一の実施形態の期間A1,A2の動作を説明する等価回路図(a)と、期間A3の動作を説明する等価回路図(b)である。
【図5】第一の実施形態の期間B1の動作を説明する等価回路図(a)と、期間B2の動作を説明する等価回路図(b)である。
【図6】第一の実施形態の期間C1,C2の動作を説明する等価回路図(a)と、期間C3の動作を説明する等価回路図(b)である。
【図7】第一の実施形態の期間D1の動作を説明する等価回路図(a)と、期間D2の動作を説明する等価回路図(b)である。
【図8】この発明のスイッチング電源装置の第二の実施形態の動作を説明するタイムチャートである。
【図9】第二の実施形態の期間B1の動作を説明する等価回路図(a)と、期間D1の動作を説明する等価回路図(b)である。
【図10】この発明のスイッチング電源装置の第三の実施形態の期間B1の動作を説明する等価回路図(a)と、期間D1の動作を説明する等価回路図(b)である。
【図11】この発明のスイッチング電源装置の第四の実施形態を示す回路図である。
【図12】この発明のスイッチング電源装置の第五の実施形態を示す回路図である。
【図13】第五の実施形態の各スイッチ回路を具体的な回路素子で示した回路図である。
【図14】第五の実施形態の動作を説明するタイムチャートである。
【図15】第五の実施形態を全波整流型の整流回路及び平滑回路に変形した構成を示す回路図である。
【図16】従来のカレントダブラ型の整流回路及び平滑回路を備えたスイッチング電源装置の回路図(a)と、その動作を説明するタイムチャート(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、この発明のスイッチング電源装置の第一の実施形態について、図1〜図7に基づいて説明する。第一の実施形態のスイッチング電源装置10は、所定の直流電圧を出力する直流安定化電源であって、図示しない一次巻線、二次巻線12a及び補助巻線12bを備えた出力トランス12を備える。さらに、直流入力電源と一次巻線の導通状態を切り替え、二次巻線12aに、図3に示すように正電圧(ドットを付した側が高電位の電圧)が出力される第一の期間である期間A、電圧が出力されない第二の期間である期間B、負電圧が出力される第三の期間である期間C、及び再度電圧が出力されない第四の期間である期間Dを1周期とする、矩形状の交流電圧を出力させる図示しないインバータ回路を備えている。また、二次巻線12aから負荷14までの構成は、図1に示すように、カレントダブラ型の同期整流回路16及び平滑回路18を備え、平滑回路18の出力に負荷14が接続されている。
【0038】
同期整流回路16は、共にN−chのMOS型FETであって、二次巻線12aのドットが付されていない側の一端にドレイン端子が接続され、ソース端子が負荷14のグランド電位に接続された第一の整流素子20と、二次巻線のドットが付された側の一端にドレイン端子が接続され、ソース端子が負荷14のグランド電位に接続された第二の整流素子22を備えている(MOS型FETのゲート端子及びソース端子は、いわゆる駆動端子とグランド端子に相当する)。一対の整流素子20,22の内部には、ソース端子からドレイン端子の向きの寄生ダイオード20a,22aと、ゲート端子・ソース端子間に寄生する入力コンデンサ20b,22bが個々に存在している。なお、この寄生ダイオード20a,22aに相当するダイオード素子や、入力コンデンサ20b,22bに相当するコンデンサ素子を整流素子20,22の外部に接続して設けても構わない。
【0039】
また、第一の整流素子20のゲート端子には、補助巻線12bのドットが付された側の一端であって、第一の期間に高電位となる第一の端子24が接続され、第二の整流素子22のゲート端子には、補助巻線12bのドットが付されていない第二の端子26が接続されている。
【0040】
また、第一の整流素子20のソース端子と補助巻線12bの第一の端子24との間に、当該ソース端子側をアノード端子とした第一のダイオード28が接続され、第二の整流素子22aのソース端子と補助巻線12bの第二の端子26との間に、当該ソース端子側をアノード端子とした第二のダイオード30が接続されている。
【0041】
さらに、第一の整流素子20のゲート端子・ソース端子間に、双方向に導通可能な第一のスイッチ回路32と第一の電荷保持コンデンサ34との直列回路が接続され、第二の整流素子22のゲート端子・ソース端子間に、双方向に導通可能な第二のスイッチ回路36と第二の電荷保持コンデンサ38との直列回路が接続されている。この一対の電荷保持コンデンサ34,38の容量は互いに等しく、一対の入力コンデンサ20b,22bの容量の2〜10倍程度の大きな容量が選択されている。
【0042】
平滑回路18は、一対の整流素子20,22のドレイン端子同士の間に直列に接続されたインダクタ39,40と、このインダクタ39,40の接続点と一対の整流素子20,22のソース端子と間に接続されたコンデンサ42を備えている。平滑回路18は、同期整流回路16で整流された電圧を平滑し、コンデンサ42の両端に直流電圧を生成して負荷14に電力を供給する。
【0043】
スイッチング電源装置10における一対のスイッチ回路32,36と一対の電荷保持コンデンサ34,38は、例えば、図2に示すように具体的な回路素子で構成することができる。すなわち、第一のスイッチ回路32は、第一のダイオード28のカソード端子と第一の整流素子20のゲート端子の接続点に挿入された第一の抵抗44と、自己のゲート端子が第一の抵抗44の第一のダイオード28側の一端に接続され、自己のソース端子が第一の抵抗44の他の一端に接続され、自己のドレイン端子が第一の電荷保持コンデンサ34の一端に接続されたN−chのMOS型FETである第一のトランジスタ46とで構成され、さらに、第一の電荷保持コンデンサ34の他の一端が第一の整流素子20のソース端子に接続されている。また、第二のスイッチ回路36は、第二のダイオード30のカソード端子と第二の整流素子22のゲート端子の接続点に挿入された第二の抵抗48と、自己のゲート端子が第二の抵抗48の第二のダイオード30側の一端に接続され、自己のソース端子が第二の抵抗48の他の一端に接続され、自己のドレイン端子が第二の電荷保持コンデンサ38の一端に接続されたN−chのMOS型FETである第二のトランジスタ50とで構成され、さらに、第二の電荷保持コンデンサ38の他の一端が第二の整流素子22のソース端子に接続されている。
【0044】
なお、一対のトランジスタ46,50のソース端子からドレイン端子の向きに存在する寄生ダイオード46a,50aは、回路動作に影響しないが、当該寄生ダイオードが反対の向きに配置されると本発明に係る回路動作を行うことができない。従って、そのようなトランジスタ素子を選択することはできない。
【0045】
次に、図1に示すスイッチング電源装置10の動作について、図3のタイムチャートに基づいて説明する。ここで、図3のタイムチャートでは、出力トランス12の二次巻線12aに、正電圧(ドットが付された側が高電位の電圧)が出力される第一の期間を期間A、電圧が出力されない第二の期間を期間B、負電圧が出力される第三の期間を期間C、及び再度電圧が出力されない第四の期間を期間Dと定義し、第一及び第二のダイオード28,30のオン電圧はゼロボルトとして無視した。また、補助巻線12bの電圧をVsと表記し、第一及び第二の整流素子20,22の駆動端子・グランド端子間電圧をVg20,Vg22と表記し、第一及び第二の電荷保持コンデンサ34,38の電圧をV34,V38と表記し、第一及び第二のスイッチ回路32,36の開閉状態をSW32,SW36と表記した。また、入力コンデンサ20b,22bの容量値は等しく容量Ciであり、第一及び第二の電荷保持コンデンサ34,38の容量値は等しく容量Crであると仮定する。
【0046】
スイッチング電源装置10の動作は、期間A(A1,A2,A3)、期間B(B1,B2)、期間C(C1,C2,C3)、期間D(D1,D2)を繰り返す。以下、期間A1の動作から順に説明する。
【0047】
期間A1が開始する直前において、一対の整流素子20,22の電圧Vg20,Vg22は、等しい電圧V2となっている。この電圧V2は、一対の整流素子20,22のオンの閾値よりも高い電圧であり、一対の整流素子は共にオンしている。また、第一の電荷保持コンデンサ34の電圧V34は、第二の電荷保持コンデンサ38の電圧V38である電圧V1よりもやや低い電圧のV2である。なお、この電圧V2の値については後で詳しく述べる。
【0048】
期間A1になると、第一のスイッチ回路32がオンに反転し、第二のスイッチ回路36はオフを継続する。そして、出力トランス12の二次巻線12aに正電圧が出力され、補助巻線12bの電圧Vsにも正電圧のV1(ドットが付された側が高電位の電圧)が出力される。
【0049】
補助巻線12bに正電圧のV1が出力されると、図4(a)に示すように、補助巻線12bから、第一の電荷保持コンデンサ34及び第一の入力コンデンサ20b、第二の入力コンデンサ22bの経路に電流が出力される。この電流によって、第二の入力コンデンサ22bの蓄積電荷が放電され、電圧Vg22がほぼゼロ電圧まで低下する。そして、第二の整流素子22は、電圧Vg22が自己のオンの閾値以下になった時点でオフに転じる。また、第一の電荷保持コンデンサ34と第一の入力コンデンサ20bは、この電流によって充電され、電圧V34と電圧Vg20が上昇する。従って、第一の整流素子20はオンを継続する。一方、第二のスイッチ回路36はオフしているので、第二の電荷保持コンデンサ38の電圧V38の値は、電圧V1のまま保持される。
【0050】
なお、電圧Vg22が第二の整流素子22のオンの閾値以下に低下するまでの時間が長いと、一対の整流素子20,22が同時にオンするおそれがあるが、スイッチング電源装置10では、当該時間が十分短くなるように調整されているので、特に問題は生じない。
【0051】
期間A2になっても、第一のスイッチ回路32はオンを継続し、第二のスイッチ回路36はオフを継続する。期間A2の直前で電圧Vg22がほぼゼロ電圧まで低下しているので、期間A2になると、図4(a)に示すように、第二の入力コンデンサ22bに流れていた電流が第二のダイオード30に流れ始める。すなわち、補助巻線12bから出力される電流の経路が、第一の電荷保持コンデンサ34及び第一の入力コンデンサ20b、第二のダイオード30の経路に切り替わる。従って、図3に示すように、電圧Vg22は第二のダイオード30のオン電圧に保持され、ほぼゼロ電圧で一定になる。また、第一の電荷保持コンデンサ34と第一の入力コンデンサ20bは、この電流によって充電が継続され、電圧V34と電圧Vg20が、補助巻線12bが出力する電圧V1に達すると充電が止まり、期間A2が終了する。一方、第二のスイッチ回路36はオフしているので、第二の電荷保持コンデンサ38の電圧V38の値は、電圧V1のまま保持される。
【0052】
期間A3になると、図3に示すように、第一のスイッチ回路32が所定のタイミングでオフに反転し、第二のスイッチ回路36はオフを継続する。期間A3では、図4(b)に示すように、補助巻線12bからの電流が停止し、オン状態の第一のスイッチ回路32にも電流が流れないので、第一のスイッチ回路32がどのタイミングでオフに反転しても、電流や電圧に変化が生じない。従って、第一のスイッチ回路32がオフするタイミングは、期間A3が開始してから期間Aが終了するまでの間の任意のタイミングに設定することができる。
【0053】
例えば、図2に示した第一の抵抗44と第一のトランジスタ46で構成された第一のスイッチ回路32の場合、補助巻線12bからの電流が停止した時点で第一の抵抗44に電圧降下が生じなくなり、第一のトランジスタ46がオンを継続することができなくなる。すなわち、この第一のスイッチ回路32は、期間A3が開始するタイミングでオフする動作を行う。また、第二の抵抗48と第二のトランジスタ50で構成された第二のスイッチ回路36も、補助巻線12bからの電流が停止している期間A3は、オフを継続する。
【0054】
期間B1になると、図3に示すように、第一のスイッチ回路32はオフを継続し、第二のスイッチ回路36はオンに反転する。そして、出力トランス12の二次巻線12aには電圧が出力されず、補助巻線12bの電圧Vsもほぼゼロ電圧になる。
【0055】
補助巻線12bの電圧がほぼゼロ電圧になると、補助巻線12bは回路的に短絡されているのと等価な状態になる。すると、図5(a)に示すように、第一の入力コンデンサ20bに蓄えられた電荷が、補助巻線12bを介して第二の入力コンデンサ22bに移動して分配される電流が流れる。それと同時に、第二の電荷保持コンデンサ38に蓄えられた電荷が、第二のスイッチ回路36を介して第二の入力コンデンサ22bに移動して分配される電流が流れる。そして、電荷の分配が終了したところで期間B1が終了する。
【0056】
電荷を分配する動作は、一対の入力コンデンサ20b,22b及び第二の電荷保持コンデンサ38の電圧が等しくなるように行われるので、電荷の分配が終了すると、電圧Vg20,Vg22,V38は、等しくV2になる。一方、第一のスイッチ回路32はオフしているので、第一の電荷保持コンデンサ34の電圧V34は、V1のまま保持される。
【0057】
電荷が分配された後の電圧V2は次のように決定される。すなわち、電荷が分配される前は、第一の入力コンデンサ20bに容量Ciと電圧V1の積で求められる電荷が蓄積され、第二の電荷保持コンデンサ38に容量Crと電圧V1の積で求められる電荷が蓄積されているので、電荷分配後のV2は、式(8)で表すことができる。
【数8】

【0058】
また、式(8)から分かるように、容量Crの値を調整することによって、V2は、式(9)の範囲で変化する。
【数9】

【0059】
このように、期間B1が終了する時点で、電圧Vg20及び電圧Vg22は、第一及び第二の整流素子20,22のオンの閾値以上の高い電圧V2になるので、第一の整流素子20は期間A3からのオンを継続し、第二の整流素子22は電圧Vg22が自己のオンの閾値を超えた時点でオンに反転する。
【0060】
期間B2になると、図3に示すように、第一のスイッチ回路32はオフを継続し、第二のスイッチ回路36は所定のタイミングでオフに反転する。期間B2では、図5(b)に示すように、電荷を分配する電流が停止し、オン状態の第二のスイッチ回路36にも電流が流れないので、第二のスイッチ回路36がどのタイミングでオフに反転しても、電流や電圧に変化が生じない。従って、第二のスイッチ回路36が反転するタイミングは、期間B2が開始してから期間Bが終了するまでの間の任意のタイミングに設定することができる。
【0061】
例えば、図2に示した第二の抵抗48と第二のトランジスタ50で構成された第二のスイッチ回路36の場合、電荷を分配する電流が停止した時点で第二の抵抗48に電圧降下が生じなくなり、第二のトランジスタ50がオンを継続することができなくなる。すなわち、この第二のスイッチ回路36は、期間B2が開始するタイミングでオフする動作を行う。また、第一の抵抗44と第一のトランジスタ46で構成された第一のスイッチ回路32も、電荷を分配する電流が停止している期間B2は、オフを継続する。
【0062】
期間C1になると、第一のスイッチ回路32はオフを継続し、第二のスイッチ回路36はオンに反転する。そして、出力トランス12の二次巻線12aに負電圧が出力され、補助巻線12bの電圧Vsにも負の電圧V1(ドットが付されていない側が高電位の電圧)が出力される。
【0063】
補助巻線12bに負電圧のV1が出力されると、図6(a)に示すように、補助巻線12bから、第二の電荷保持コンデンサ38及び第二の入力コンデンサ22b、第一の入力コンデンサ20bの経路に電流が出力される。この電流によって、第一の入力コンデンサ20bの蓄積電荷が放電され、電圧Vg20がほぼゼロ電圧まで低下する。そして、第一の整流素子20は、電圧Vg20が自己のオンの閾値以下になった時点でオフに転じる。また、第二の電荷保持コンデンサ38と第二の入力コンデンサ22bは、この電流によって充電され、電圧V38と電圧Vg22が上昇する。従って、第二の整流素子22はオンを継続する。一方、第一のスイッチ回路32はオフしているので、第一の電荷保持コンデンサ34の電圧V34の値は、電圧V1のまま保持される。
【0064】
期間C2になっても、第一のスイッチ回路32はオフを継続し、第二のスイッチ回路36はオンを継続する。期間C2の直前で電圧Vg20がほぼゼロ電圧まで低下しているので、期間C2になると、図6(a)に示すように、第一の入力コンデンサ20bに流れていた電流が第一のダイオード28に流れ始める。すなわち、補助巻線12bから出力される電流の経路が、第二の電荷保持コンデンサ38及び第二の入力コンデンサ22b、第一のダイオード28の経路に切り替わる。従って、図3に示すように、電圧Vg20は第一のダイオード28のオン電圧に保持され、ほぼゼロ電圧で一定になる。また、第二の電荷保持コンデンサ38と第二の入力コンデンサ22bは、この電流によって充電が継続され、電圧V38と電圧Vg22が補助巻線12bの出力電圧V1に達すると充電が止まり、期間C2が終了する。一方、第一のスイッチ回路32はオフしているので、第一の電荷保持コンデンサ34の電圧V34の値は、電圧V1のまま保持される。
【0065】
期間C3になると、図3に示すように、第一のスイッチ回路32はオフを継続し、第二のスイッチ回路36が所定のタイミングでオフに反転する。期間C3では、図6(b)に示すように、補助巻線12bからの電流が停止し、オン状態の第二のスイッチ回路36にも電流が流れないので、第二のスイッチ回路36がどのタイミングでオフに反転しても、電流や電圧に変化が生じない。従って、第二のスイッチ回路36が反転するタイミングは、期間C3が開始してから期間Cが終了するまでの間の任意のタイミングに設定することができる。
【0066】
例えば、図2に示した第二の抵抗48と第二のトランジスタ50で構成された第二のスイッチ回路36の場合、補助巻線12bからの電流が停止した時点で第二の抵抗48に電圧降下が生じなくなり、第二のトランジスタ50がオンを継続することができなくなる。すなわち、この第二のスイッチ回路36は、期間C3が開始するタイミングでオフする動作を行う。また、第一の抵抗44と第一のトランジスタ46で構成された第一のスイッチ回路32も、補助巻線12bからの電流が停止している期間C3は、オフを継続する。
【0067】
期間D1になると、図3に示すように、第一のスイッチ回路32はオンに反転し、第二のスイッチ回路36はオフを継続する。そして、出力トランス12の二次巻線12aには電圧が出力されず、補助巻線12bの電圧Vsもほぼゼロ電圧になる。
【0068】
補助巻線12bの電圧がほぼゼロ電圧になると、補助巻線12bは回路的に短絡されているのと等価な状態になる。すると、図7(a)に示すように、第二の入力コンデンサ22bに蓄えられた電荷が、補助巻線12bを介して第一の入力コンデンサ20bに移動して分配される電流が流れる。それと同時に、第一の電荷保持コンデンサ34に蓄えられた電荷が、第一のスイッチ回路32を介して第一の入力コンデンサ20bに移動して分配される電流が流れる。そして、電荷の分配が終了したところで期間D1が終了する。
【0069】
電荷を分配する動作は、一対の入力コンデンサ20b,22b及び第一の電荷保持コンデンサ34の電圧が等しくなるように行われるので、電荷の分配が終了すると、電圧Vg20,Vg22,V34の値は、等しく電圧V2になる。一方、第二のスイッチ回路36はオフしているので、第二の電荷保持コンデンサ38の電圧V38の値は、V1のまま保持される。
【0070】
電荷が分配された後の電圧V2は、期間Bのときの電圧V2と同様に決定される。すなわち、電荷が分配される前は、第二の入力コンデンサ22bには容量Ciと電圧V1の積で求められる電荷が蓄積され、第一の電荷保持コンデンサ34には容量Crと電圧V1の積で求められる電荷が蓄積されているので、電荷分配後のV2は、上記の式(8)で表すことができる。
【0071】
このように、期間D1が終了する時点で、電圧Vg20及び電圧Vg22は、第一及び第二の整流素子20,22のオンの閾値以上の高い電圧であるV2になるので、第二の整流素子22は期間C3からのオンを継続し、第一の整流素子20は電圧Vg20が自己のオンの閾値を超えた時点でオンに反転する。
【0072】
期間D2になると、図3に示すように、第一のスイッチ回路32は所定のタイミングでオフに反転し、第二のスイッチ回路36はオフを継続する。期間D2では、図7(b)に示すように、電荷を分配する電流が停止し、オン状態の第一のスイッチ回路32にも電流が流れないので、第一のスイッチ回路32がどのタイミングでオフに反転しても、電流や電圧に変化が生じない。従って、第一のスイッチ回路32が反転するタイミングは、期間D2が開始してから期間Dが終了するまでの間の任意のタイミングに設定することができる。
【0073】
例えば、図2に示した第一の抵抗44と第一のトランジスタ46で構成された第一のスイッチ回路32の場合、電荷を分配する電流が停止した時点で第一の抵抗44に電圧降下が生じなくなり、第一のトランジスタ46がオンを継続することができなくなる。すなわち、この第一のスイッチ回路32は、期間D2が開始するタイミングでオフする動作を行う。また、第二の抵抗48と第二のトランジスタ50で構成された第二のスイッチ回路36も、電荷を分配する電流が停止している期間D2は、オフを継続する。
【0074】
上述した期間A1〜期間D2の動作を繰り返すことによって、第一の整流素子20は、補助巻線12bに正電圧が発生する期間Aだけでなく、補助巻線12bに電圧が発生しない期間B,Dにもオンすることができる。同様に、第二の整流素子22も、補助巻線12bに負電圧が発生する期間Cだけでなく、補助巻線12bに電圧が発生しない期間B,Dにもオンすることができる。
【0075】
次に、一対の入力コンデンサ20b,22b及び一対の電荷保持コンデンサ34,38に蓄積される総エネルギーの変化と、電荷の移動によって生じる損失について説明する。ここでは、説明の便宜のため、電荷保持コンデンサ34,38の容量Crは入力コンデンサ20a,20bの容量Ciよりも十分大きな値に設定されているとする。
【0076】
期間Aの終了時点で、電荷が蓄積されているコンデンサは、第一の入力コンデンサ20bと一対の電荷保持コンデンサ34,38であり、その総エネルギーEaは、式(10)で表すことができる。
【数10】

【0077】
期間Bの終了時点で、電荷が蓄積されているコンデンサは、一対の入力コンデンサ20a,20bと一対の電荷保持コンデンサ34,38で、総エネルギーEbは、式(11)で表すことができる。
【数11】

なお、式(8)から分かるように、容量Crが容量Ciよりも十分大きいときは、V1とV2がほぼ等しい値になる。従って、式(11)では、V2をV1に置き換えている。
【0078】
期間Cの終了時点で、電荷が蓄積されているコンデンサは、第二の入力コンデンサ22bと一対の電荷保持コンデンサ34,38であり、その総エネルギーEcは、期間Aと同様の考え方により、式(12)で表すことができる。
【数12】

【0079】
期間Dの終了時点で、電荷が蓄積されているコンデンサは、一対の入力コンデンサ20a,20bと一対の電荷保持コンデンサ34,38で、総エネルギーEdは、期間Bと同様の考え方により、式(13)で表すことができる。
【数13】

【0080】
式(10)〜式(13)から分かるように、容量Crが容量Ciよりも十分大きな値に設定されていれば、期間Aから期間Dまで移行する中で、各期間の総エネルギーEa,Eb,Ec,Edは変化せず、消費や補充も行われないため、理想的には損失が生じないことが分かる。
【0081】
ただし、電荷保持コンデンサ34,38は、スイッチング電源装置10に入力電圧投入直後の不安定動作を回避する等の目的で、容量Crをある程度小さめに抑える必要がある。従って、容量Crは、容量Ciの2倍〜10倍程度の値に設定することが好ましく、実際には、V1とV2の間に式(9)に示す範囲で電圧差が生じ、その電圧差に基づいて若干の損失が生じることになる。
【0082】
以上説明したように、スイッチング電源装置10は、一対の電荷保持コンデンサ34,38を一対のスイッチ回路32,36によって所定の接続状態に適宜切り替えることによって、電荷保持コンデンサ34,38の電圧の変動が小さく抑えられるので、電荷の移動によって生じる整流素子20,22の駆動損失を大きく低減することができる。また、第一の整流素子20をオンさせる期間D,A,Bの電圧Vg20、及び第二の整流素子22をオンさせる期間B,C,Dの電圧Vg22は、各期間を通じて変動幅が小さいので、その電圧値をオンの閾値より十分高く、且つ整流素子が安全に動作可能な低い所定の電圧に設定することが容易であり、従来技術の電圧制限回路のような複雑な構成を設ける必要がない。
【0083】
次に、この発明のスイッチング電源装置の第二の実施形態について、図8及び図9に基づいて説明する。ここで、上記のスイッチング電源装置10と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。第二の実施形態のスイッチング電源装置60は、図1に示す回路図と外観的には同様の構成であるが、第一の実施形態における第一及び第二のスイッチ回路32,36が、第一及び第二のスイッチ回路62,64に各々置き換えられている。
【0084】
スイッチング電源装置60の第一及び第二のスイッチ回路62,64は、オン・オフするタイミングがスイッチング電源装置10と異なり、期間Bと期間Dの動作に違いが生じる。以下、スイッチング電源装置60の期間B(B1,B2)及び期間D(D1,D2)の動作について説明する。なお、図8のタイムチャートでは、第一及び第二のスイッチ回路62,64の開閉状態をSW62,SW64と表記した。
【0085】
期間A3の経過後、期間B1になると、図8に示すように、第一のスイッチ回路62はオンに反転し、第二のスイッチ回路64はオフを継続する。そして、出力トランス12の二次巻線12aには電圧が出力されず、補助巻線12bの電圧Vsもほぼゼロ電圧になる。
【0086】
補助巻線12bの電圧がほぼゼロ電圧になると、補助巻線12bは回路的に短絡されているのと等価な状態になる。すると、図9(a)に示すように、第一の入力コンデンサ20bに蓄えられた電荷が、補助巻線12bを介して第二の入力コンデンサ22bに移動して分配される電流が流れる。それと同時に、第一の電荷保持コンデンサ34に蓄えられた電荷が、第一のスイッチ回路62を介して第二の入力コンデンサ22bに移動して分配される電流が流れる。そして、電荷の分配が終了したところで期間B1が終了する。すなわち、スイッチング電源装置60は、期間B1において、第二の電荷保持コンデンサ38に蓄積された電荷ではなく、第一の電荷保持コンデンサ34に蓄積された電荷を第二の入力コンデンサ22bに分配する、という点でスイッチング電源装置10と動作が異なる。
【0087】
電荷を分配する動作は、一対の入力コンデンサ20b,22b及び第一の電荷保持コンデンサ34の電圧が等しくなるように行われるので、電荷の分配が終了すると、電圧Vg20,Vg22,V34の値は、等しく電圧V2になる。一方、第二のスイッチ回路64はオフしているので、第二の電荷保持コンデンサ38の電圧V38の値は、後述する期間D2に設定された電圧V2のまま保持される。
【0088】
電荷が分配された後の電圧V2は、スイッチング電源装置10の場合と同様に、式(8)で表すことができる。また、式(8)から分かるように、電荷保持コンデンサ34,38の容量Crの値を調整することによって、V2は、式(9)の範囲で変化する点も同様である。
【0089】
このように、期間B1が終了する時点で、電圧Vg20及び電圧Vg22は、第一及び第二の整流素子20,22のオンの閾値以上の高い電圧であるV2になるので、第一の整流素子20は期間A3からのオンを継続し、第二の整流素子22は電圧Vg22が自己のオンの閾値を超えた時点でオンに反転する。
【0090】
期間B2になると、図8に示すように、第一のスイッチ回路62は所定のタイミングでオフに反転し、第二のスイッチ回路64はオフを継続する。期間B2では、電荷を分配する電流が停止し、オン状態の第一のスイッチ回路62にも電流が流れないので、第一のスイッチ回路62がどのタイミングでオフに反転しても、電流や電圧に変化が生じない。従って、第一のスイッチ回路62が反転するタイミングは、期間B2が開始してから期間Bが終了するまでの間の任意のタイミングに設定することができる。
【0091】
また、期間C3の経過後、期間D1になると、図8に示すように、第一のスイッチ回路62はオフを継続し、第二のスイッチ回路64はオンに反転する。そして、出力トランス12の二次巻線12aには電圧が出力されず、補助巻線12bの電圧Vsもほぼゼロ電圧になる。
【0092】
補助巻線12bの電圧がほぼゼロ電圧になると、補助巻線12bは回路的に短絡されているのと等価な状態になる。すると、図9(b)に示すように、第二の入力コンデンサ22bに蓄えられた電荷が、補助巻線12bを介して第一の入力コンデンサ20bに移動して分配される電流が流れる。それと同時に、第二の電荷保持コンデンサ38に蓄えられた電荷が、第二のスイッチ回路64を介して第一の入力コンデンサ20bに移動して分配される電流が流れる。そして、電荷の分配が終了したところで期間D1が終了する。すなわち、スイッチング電源装置60は、期間D1において、第一の電荷保持コンデンサ34に蓄積された電荷ではなく、第二の電荷保持コンデンサ38に蓄積された電荷を第一の入力コンデンサ20bに分配する、という点でスイッチング電源装置10と動作が異なる。
【0093】
電荷を分配する動作は、一対の入力コンデンサ20b,22b及び第二の電荷保持コンデンサ38の電圧が等しくなるように行われるので、電荷の分配が終了すると、電圧Vg20,Vg22,V38の値は、等しく電圧V2になる。一方、第一のスイッチ回路62はオフしているので、第一の電荷保持コンデンサ34の電圧V34は、上記の期間B2に設定された電圧V2のまま保持される。
【0094】
電荷が分配された後の電圧V2は、期間Bのときの電圧V2と同様に決定される。すなわち、電荷が分配される前は、第二の入力コンデンサ22bに容量Ciと電圧V1の積で求められる電荷が蓄積され、第二の電荷保持コンデンサ38に容量Crと電圧V1の積で求められる電荷が蓄積されているので、電荷分配後の電圧V2は、上記の式(8)で表すことができる。
【0095】
このように、期間D1が終了する時点で、電圧Vg20及び電圧Vg22は、第一及び第二の整流素子20,22のオンの閾値以上の高い電圧であるV2になるので、第二の整流素子22は期間C3からのオンを継続し、第一の整流素子20は電圧Vg20が自己のオンの閾値を超えた時点でオンに反転する。
【0096】
期間D2になると、図8に示すように、第一のスイッチ回路62はオフを継続し、第二のスイッチ回路64は所定のタイミングでオンに反転する。期間D2では、電荷を分配する電流が停止し、オン状態の第二のスイッチ回路64にも電流が流れないので、第二のスイッチ回路64がどのタイミングでオフに反転しても、電流や電圧に変化が生じない。従って、第二のスイッチ回路64が反転するタイミングは、期間D2が開始してから期間Dが終了するまでの間の任意のタイミングに設定することができる。
【0097】
期間A(A1,A2,A3)及び期間C(C1,C2,C3)の動作については、スイッチング電源装置10と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0098】
スイッチング電源装置60は、上述した期間A1〜期間D32の動作を繰り返すことによって、第一の整流素子20は、補助巻線12bに正電圧が発生する期間Aだけでなく、補助巻線に電圧が発生しない期間B,Dにもオンすることができる。同様に、第二の整流素子22も、補助巻線12bに負電圧が発生する期間Cだけでなく、補助巻線に電圧が発生しない期間B,Dにもオンすることができる。また、一対の入力コンデンサ20b,22b及び一対の電荷保持コンデンサ34,38に蓄積されている総エネルギーEa〜Edは、スイッチング電源装置10と同様に、式(10)〜(13)で表される。従って、スイッチング電源装置60においても、スイッチング電源装置10と同様に、駆動損失を大幅に低減することができる。
【0099】
次に、この発明のスイッチング電源装置の第三の実施形態について、図10に基づいて説明する。ここで、上記のスイッチング電源装置10,60と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。第三の実施形態のスイッチング電源装置70は、図1に示す回路図と外観的には同様の構成であるが、第一の実施形態における第一及び第二のスイッチ回路32,36が、第一及び第二のスイッチ回路72,74に各々置き換えられている。
【0100】
スイッチング電源装置70の第一及び第二のスイッチ回路72,74は、オン・オフするタイミングがスイッチング電源装置10,60のものと異なり、期間Bと期間Dの動作に違いが生じる。
【0101】
期間A3の経過後、期間B1になると、図10(a)に示すように、第一のスイッチ回路72と第二のスイッチ回路74は、共にオンに反転する。また、期間C3の経過後、期間D1になったときも、図10(b)に示すように、第一のスイッチ回路72と第二のスイッチ回路74は、共にオンに反転する。すなわち、スイッチング電源装置70は、期間B1及び期間D1において、一対の電荷保持コンデンサ34,38の両方に蓄積された電荷を第二の入力コンデンサ22bに分配する点で、スイッチング電源装置10,60と動作が異なる。
【0102】
電荷を分配する動作は、一対の入力コンデンサ20b,22b及び一対の電荷保持コンデンサ34,38電圧が等しくなるように行われるので、電荷の分配が終了すると、電圧Vg20,Vg22,V34,V38は等しくなる。そして、その等しくなる電圧をV3とすれば、電荷保持コンデンサ34,38の容量Crを、スイッチング電源装置10,60における容量Crの約2分の1の小さな容量に設定するだけで、スイッチング電源装置10,60における電圧V2と同程度の高い電圧V3を得ることができる。従って、スイッチング電源装置70は、スイッチング電源装置10,60の作用効果を実現しつつ、さらに、電荷保持コンデンサ34,38を小容量化することによって、装置のコスト低減や小型化を図ることができる。
【0103】
次に、この発明のスイッチング電源装置の第四の実施形態について、図11に基づいて説明する。ここで、上記のスイッチング電源装置70と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。第四の実施形態のスイッチング電源装置80は、図11に示すように、スイッチング電源装置70の構成に加え、第三のダイオード82と第四のダイオード84が付加されている。第三のダイオード82は、アノード端子が補助巻線12bの第一の端子24に接続され、カソード端子が第二のコンデンサ38と第二のスイッチ回路74との接続点に接続されている。また、第四のダイオード84は、アノード端子が補助巻線12bの第二の端子26に接続され、カソード端子が第一のコンデンサ34と第一のスイッチ回路72との接続点に接続されている。その他の構成は、スイッチング電源装置70と同様である。
【0104】
第三のダイオード82は、期間Aの間に第二の電荷保持コンデンサ38をV1まで充電し、第四のダイオード84は、期間Cの間に第一の電荷保持コンデンサ34をV1まで充電する働きをする。この動作により、期間A及びDの間に電荷保持コンデンサ34,38の電荷が補充され、期間B及びDの間に一対の入力コンデンサ20b,22bに電荷を分配しても、分配後の各コンデンサの電圧V3をより高くすることができる。
【0105】
従って、スイッチング電源装置80は、スイッチング電源装置70の作用効果を実現しつつ、さらに電荷保持コンデンサ34,38を小容量化することによって、一層の装置のコスト低減や小型化を図ることができる。
【0106】
また、スイッチング電源装置80の動作から分かるように、第三及び第四のダイオード82,84を付加する構成を、上記のスイッチング電源装置60に適用してもよい。それによって、スイッチング電源装置80と同様に、電荷保持コンデンサ34,38をさらに小容量化することができる。
【0107】
また、上記のスイッチング電源装置10,60,70,80に基づいて説明したように、この発明のスイッチング電源装置では、電荷保持コンデンサ34,38を断続する各スイッチ回路のオン・オフのタイミング設定を、様々なパターンに変更することが可能である。従って、具体的な回路素子でスイッチ回路を構成するとき、図2に例示したスイッチ回路32,36の以外の構成でも自由に設定することができ、非常に汎用性が高いという特徴を有している。
【0108】
次に、この発明のスイッチング電源装置の第五の実施形態について、図12〜図14に基づいて説明する。第五の実施形態のスイッチング電源装置90は、期間Bから期間Cに移行したときと、期間Dから期間Aに移行したときに、一対の整流素子20,22が同時にオンすることを防止するための構成を備えたスイッチング電源装置である。
【0109】
先にスイッチング電源装置10の動作を説明したとき、スイッチング電源装置10は期間A1及び期間C1が非常に短時間になるように調整されているので、この期間に一対の整流素子20,22が同時にオンして問題を生じさせることはないとした。しかし、スイッチング周波数の設定やその他の設計上の制約により、この問題を無視できない場合がある。そこで、スイッチング電源90は、期間A及び期間Cに移行した後で一対の整流素子20,22が同時にオンすることを確実に防止する動作が行われる構成を備えている。
【0110】
まず、スイッチング電源装置90の回路構成を説明する。ここで、上記のスイッチング電源装置10と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。スイッチング電源装置90は、図12に示すように、スイッチング電源装置10の構成に加え、双方向に導通可能な第三及び第四のスイッチ回路92,94と、第五及び第六のスイッチ96,98が付加されている。
【0111】
第三のスイッチ回路92は、第一のダイオード28のカソード端子と補助巻線12bの第一の端子24の接続点と、第一の整流素子20のゲート端子との間に挿入されている。また、第四のスイッチ回路94は、第二のダイオード30のカソード端子と補助巻線12bの第二の端子26の接続点と、第二の整流素子のゲート端子との間に挿入されている。さらに、第五のスイッチ回路96は、第一の整流素子20のゲート端子・ソース端子間に接続され、第六のスイッチ回路98は、第二の整流素子22のゲート端子・ソース端子間に接続されている。
【0112】
そして、第五のスイッチ回路96は、期間Cに入る前にオンして第一の整流素子20のゲート端子の電圧Vg20をオンの閾値未満に低下させ、さらに、第三のスイッチ回路92又は第四のスイッチ回路94は、第五のスイッチ回路96がオンするのと同時又はその前にオフする動作を行う。また、第六のスイッチ回路98は、期間Aに入る前にオンして第二の整流素子22のゲート端子の電圧Vg22をオンの閾値未満に低下させ、さらに、第三のスイッチ回路92又は第四のスイッチ回路94は、第六のスイッチ回路98がオンするのと同時又はその前にオフする動作を行う。その他の構成は、スイッチング電源装置10と同様である。
【0113】
スイッチング電源装置90における6つのスイッチ回路32,36,92,94,96,98は、例えば、図13に示す具体的な回路素子で構成することができる。詳細に述べると、第一のスイッチ回路32は、ソース端子が第一の整流素子20のゲート端子に接続され、ドレイン端子が第一の電荷保持コンデンサ34の一端に接続されたN−chのMOS型FETである第一のトランジスタ46で構成されている。
【0114】
第二のスイッチ回路36は、ソース端子が第二の整流素子22のゲート端子に接続され、ドレイン端子が第二の電荷保持コンデンサ38の一端に接続されたN−chのMOS型FETである第二のトランジスタ50で構成されている。
【0115】
第三のスイッチ回路92は、ソース端子が第一の整流素子20のゲート端子に接続され、ドレイン端子が第一のダイオード28のカソード端子に接続され、ゲート端子が第一のトランジスタ46のゲート端子に接続されたN−chのMOS型FETである第三のトランジスタ100を備えている。また、第三のトランジスタ100のドレイン端子・ゲート端子間に接続された第三の抵抗102を備えている。さらに、ドレイン端子が第三のトランジスタ100のゲート端子に接続され、ソース端子が第一の整流素子20のソース端子に接続され、所定の駆動信号によってオン・オフ駆動されるN−chのMOS型FETである第一の補助トランジスタ104を備えている。
【0116】
第四のスイッチ回路94は、ソース端子が第二の整流素子22のゲート端子に接続され、ドレイン端子が第一のダイオード30のカソード端子に接続され、ゲート端子が第二のトランジスタ50のゲート端子に接続されたN−chのMOS型FETである第四のトランジスタ106を備えている。また、第四のトランジスタ106のドレイン端子・ゲート端子間に接続された第四の抵抗108を備えている。さらに、ドレイン端子が第四のトランジスタ106のゲート端子に接続され、ソース端子が第二の整流素子22のソース端子に接続され、所定の駆動信号によってオン・オフ駆動されるN−chのMOS型FETである第二の補助トランジスタ110を備えている。
【0117】
第五のスイッチ回路96は、ドレイン端子が第一の整流素子20のゲート端子に接続され、ソース端子が第一の整流素子20のソース端子に接続され、ゲート端子が第一の補助トランジスタ104のゲート端子に接続され、所定の駆動信号によってオン・オフ駆動されるN−chのMOS型FETである第五のトランジスタ112で構成されている。
【0118】
第六のスイッチ回路98は、ドレイン端子が第二の整流素子22のゲート端子に接続され、ソース端子が第二の整流素子22のソース端子に接続され、ゲート端子が第二の補助トランジスタ110のゲート端子に接続され、所定の駆動信号によってオン・オフ駆動されるN−chのMOS型FETである第六のトランジスタ114で構成されている。
【0119】
さらに、第一から第六の各スイッチ回路は、互いに接続された第一の補助トランジスタ104及び第五のトランジスタ112のゲート端子と、互いに接続された前記第二の補助トランジスタ及び第六のトランジスタのゲート端子とに向けて、所定の駆動信号を個々に出力するトランジスタ駆動回路116を備えている。そして、トランジスタ駆動回路116が出力する駆動信号は、第一及び第二の補助トランジスタ104,110と、第五及び第六のトランジスタ112,114とがオンに反転するタイミングを制御する。
【0120】
このとき、第一の補助トランジスタ104として、駆動端子のオンの閾値が第五のトランジスタ112よりも低い素子を選定する等の方法により、第一の補助トランジスタ104の方を先にオンさせることができ、その結果、第三のトランジスタ100と第五のトランジスタ112が同時にオンすることを防止することができる。同様に、第二の補助トランジスタ110として、駆動端子のオンの閾値が第六のトランジスタ114よりも低い請求項素子を選定する等の方法により、第二の補助トランジスタ110の方を先にオンさせることができ、その結果、第四のトランジスタ106と第六のトランジスタ114が同時にオンすることを防止することができる。
【0121】
次に、図12に示すスイッチング電源装置90の動作について、図14に基づいて説明する。なお、図14のタイムチャートでは、第三、第四、第五及び第六のスイッチ回路92,94,96,98の開閉状態を、各々SW92,SW94,SW96,SW98と表記した。
【0122】
スイッチング電源装置90の第一及び第二のスイッチ回路32,36は、図3で説明したタイミングでオン・オフし、第一の整流素子20が期間D,A,Bの間はオンし、第二の整流素子22が期間B,C,Dの間はオンするという、スイッチング電源装置10と同様の基本動作が行われる。
【0123】
第三、第四、第五及び第六のスイッチ回路92,94,96,98は、図14に示すように、この基本動作を妨げないようにオン・オフする。そして、特に、期間C及び期間Aに移行する直前の期間B3及び期間D3に特徴的な働きをする。
【0124】
期間B2が開始した後、二次巻線12bに負電圧V1が発生する期間Cの開始が近くなると、トランジスタ駆動回路116に制御された所定のタイミングで第五のスイッチ回路96がオンし、期間B3に移行する。第五のスイッチ回路96がオンすると、第一の整流素子20の電圧Vg20がオンの閾値未満の電圧値に低下し、期間Cに入る前に第一の整流素子20がオフする。従って、期間Cに一対の整流素子20,22が同時にオンすることはない。
【0125】
このとき、第一及び第三のスイッチ回路32,92は、第五のスイッチ回路96がオンすると同時又はその前にすでにオフしている。従って、第五のスイッチ回路96がオンすることによって蓄積電荷が放電されるコンデンサは、第一の入力コンデンサ20bのみである。
【0126】
また、期間D2が開始した後、二次巻線12bに正電圧V1が発生する期間Aの開始が近くなると、トランジスタ駆動回路116に制御された所定のタイミングで第六のスイッチ回路98がオンし、期間D3に移行する。第六のスイッチ回路98がオンすると、第二の整流素子22の電圧Vg22がオンの閾値未満の電圧値に低下し、期間Cに入る前に第二の整流素子22がオフする。従って、期間Aに一対の整流素子20,22が同時にオンすることはない。
【0127】
このとき、第二及び第四のスイッチ回路36,94は、第六のスイッチ回路98がオンすると同時又はその前にすでにオフしている。従って、第六のスイッチ回路98がオンすることによって蓄積電荷が放電されるコンデンサは、第二の入力コンデンサ22bのみである。
【0128】
次に、一対の入力コンデンサ20b,22b及び一対の電荷保持コンデンサ34,38に蓄積される総エネルギーの変化と、電荷の移動によって生じる損失について説明する。第一の実施形態のスイッチング電源装置10の場合、一対の電荷保持コンデンサ34,38の容量Crを一対の入力コンデンサ20,22bの容量Ciよりも十分大きく設定することによって、損失が非常に小さくなる、ということは上述した通りである。しかし、スイッチング電源装置90の場合は、期間B3及び期間D3において第五及び第六のスイッチ回路96,98を介して放電するエネルギーが新たな駆動損失が生じる。その駆動損失Pは、式(14)で表すことができる。
【数14】

【0129】
しかし、容量Ciは容量Crよりも十分小さいため、スイッチング電源装置90の駆動損失Pは、特許文献2のスイッチング電源装置の駆動損失P(式(7)を参照)に比べ、非常に小さく抑えられる。
【0130】
また、スイッチング電源装置90の駆動損失Pは、特許文献1のスイッチング電源装置を改良したものの駆動損失P(式(6)を参照)と同等である。しかしながら、第一の整流素子20をオンさせる期間D,A,Bの電圧Vg20、及び第二の整流素子22をオンさせる期間B,C,Dの電圧Vg22が、各期間を通じて変動幅が小さいので、その電圧値をオンの閾値より十分高く、且つ整流素子が安全に動作可能な低い電圧に設定することが容易であり、電圧制限回路のような複雑な構成を設ける必要がないという優れた効果を得ることができる。
【0131】
なお、この発明のスイッチング電源装置は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第四の実施形態のスイッチング電源装置80で説明した第三のダイオード82及び第四のダイオード84は、第三〜第六のスイッチ回路92,94,96,98を備えたスイッチング電源装置90に付加しても、同様の作用効果を奏する。
【0132】
また、トランス12の補助巻線12bは、二次巻線12aとの巻数比を調整することによって、期間A及び期間Bに発生する電圧値であるV1を適正化すること等を目的として設けられている。従って、整流回路と平滑回路がカレントダブラ型に構成され、且つ、巻数比の調整が不要な場合は、補助巻線12bを二次巻線12aで兼用することができる。
【0133】
さらに、整流回路及び平滑回路は、上記実施形態のカレントダブラ型の構成の他、図15に示すような全波整流型の構成であってもよい。
【符号の説明】
【0134】
10,60,70,80,90 スイッチング電源装置
12 出力トランス
12a 二次巻線
12b 補助巻線
16 同期整流回路
18 平滑回路
20 第一の整流素子
20b 第一の入力コンデンサ
22 第二の整流素子
22b 第二の入力コンデンサ
28 第一のダイオード
30 第二のダイオード
32,62,72 第一のスイッチ回路
34 第一の電荷保持コンデンサ
36,64,74 第二のスイッチ回路
38 第二の電荷保持コンデンサ
44 第一の抵抗
46 第一のトランジスタ
48 第二の抵抗
50 第二のトランジスタ
82 第三のダイオード
84 第四のダイオード
92 第三のスイッチ回路
94 第四のスイッチ回路
96 第五のスイッチ回路
98 第六のスイッチ回路
100 第三のトランジスタ
102 第三の抵抗
104 第一の補助トランジスタ
106 第四のトランジスタ
108 第四の抵抗
110 第二の補助トランジスタ
112 第五のトランジスタ
114 第六のトランジスタ
116 トランジスタ駆動回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻線、二次巻線及び補助巻線を備えた出力トランスと、
直流入力電源と前記一次巻線の導通状態を切り替え、正電圧が出力される第一の期間、電圧が出力されない第二の期間、負電圧が出力される第三の期間、及び再度電圧が出力されない第四の期間を1周期とする矩形状の交流電圧を前記二次巻線に出力させるインバータ回路と、
自己の駆動端子・グランド端子間にオンの閾値以上の正電圧が印加されたときにオンする素子であって、第一の期間にオンし第三の期間にオフする第一の整流素子と、第第三の期間にオンし第一の期間にオフする第二の整流素子と、前記一対の整流素子の駆動端子・グランド端子間に個々に設けられた第一及び第二の入力コンデンサとで構成され、前記二次巻線から出力される交流電圧を整流して出力する同期整流回路と、
前記同期整流回路の出力を平滑して直流の出力電圧を生成する平滑回路とを備えたスイッチング電源装置において、
前記第一及び第二の整流素子は、グランド端子同士が互いに接続され、
前記補助巻線の両端子のうち、第一の期間に高電位となる第一の端子が、前記第一の整流素子の駆動端子に接続され、前記補助巻線の第二の端子が、前記第二の整流素子の駆動端子に接続され、
前記第一の整流素子のグランド端子と前記補助巻線の第一の端子との間に、前記グランド端子側をアノード端子とする第一のダイオードが接続され、
前記第二の整流素子のグランド端子と前記補助巻線の第二の端子との間に、前記グランド端子側をアノード端子とする第二のダイオードが接続され、
第一の期間若しくは第三の期間、又はその両方の期間に、前記補助巻線の発生電圧によって充電され、その電荷を保持する電荷保持コンデンサが設けられ、
第二の期間になると、その直前の期間に前記第一の入力コンデンサ及び前記電荷保持コンデンサが保持している電荷が前記補助巻線を介して移動し、前記第一の入力コンデンサ、前記第二の入力コンデンサ及び前記電荷保持コンデンサで分配されることにより、前記第一及び第二の整流素子が同時にオンし、
第四の期間になると、その直前の期間に前記第二の入力コンデンサ及び前記電荷保持コンデンサが保持している電荷が前記補助巻線を介して移動し、前記第一の入力コンデンサ、前記第二の入力コンデンサ及び前記電荷保持コンデンサで分配されることにより、前記第一及び第二の整流素子が同時にオンすることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記整流回路及び前記平滑回路がカレントダブラ型に構成され、前記出力トランスの前記補助巻線を、前記二次巻線で兼用した請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記第一の整流素子の駆動端子・グランド端子間に、双方向に導通可能な第一のスイッチ回路と前記電荷保持コンデンサである第一の電荷保持コンデンサの直列回路が接続され、
前記第二の整流素子の駆動端子・グランド端子間に、双方向に導通可能な第二のスイッチ回路と前記電荷保持コンデンサである第二の電荷保持コンデンサの直列回路が接続され、
前記第一のスイッチ回路は、第一の期間に導通し、前記補助巻線の発生電圧が前記第一の電荷保持コンデンサを充電する経路になり、さらに第四の期間に導通し、第一の期間に蓄積した当該電荷を前記第一の整流素子又は前記第二の整流素子の入力コンデンサに分配する経路になるようオン・オフ動作し、
前記第二のスイッチ回路は、第三の期間に導通し、前記補助巻線の発生電圧が前記第二の電荷保持コンデンサを充電する経路になり、さらに第二の期間に導通し、第三の期間に蓄積した当該電荷を前記第一の整流素子又は前記第二の整流素子の入力コンデンサに分配する経路になるようオン・オフ動作する請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記第一の電荷保持コンデンサは、一端が前記第一の整流素子のグランド端子に接続され、
前記第一のスイッチ回路は、前記第一のダイオードのカソード端子と前記第一の整流素子の駆動端子の接続点に挿入された第一の抵抗と、ゲート端子が前記第一の抵抗の前記第一のダイオード側の一端に接続され、ソース端子が前記第一の抵抗の他の一端に接続され、ドレイン端子が前記第一の電荷保持コンデンサの他の一端に接続されたN−chのMOS型FETである第一のトランジスタとで構成され、
前記第二の電荷保持コンデンサは、一端が前記第二の整流素子のグランド端子に接続され、
前記第二のスイッチ回路は、前記第二のダイオードのカソード端子と前記第二の整流素子の駆動端子の接続点に挿入された第二の抵抗と、ゲート端子が前記第二の抵抗の前記第二のダイオード側の一端に接続され、ソース端子が前記第二の抵抗の他の一端に接続され、ドレイン端子が前記第二の電荷保持コンデンサの他の一端に接続されたN−chのMOS型FETである第二のトランジスタとで構成され、
前記第一及び前記第二のトランジスタは、前記第一及び第二の抵抗の両端に発生する電圧によって個々にオン・オフする請求項3記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記第一の整流素子の駆動端子・グランド端子間に、双方向に導通可能な第一のスイッチ回路と前記電荷保持コンデンサである第一の電荷保持コンデンサと直列回路が接続され、
前記第二の整流素子の駆動端子・グランド端子間に、双方向に導通可能な第二のスイッチ回路と前記電荷保持コンデンサである第二の電荷保持コンデンサの直列回路が接続され、
前記第一のスイッチ回路は、第一の期間に導通し、前記補助巻線の発生電圧が前記第一の電荷保持コンデンサを充電する経路になり、さらに第二の期間に導通し、第一の期間に蓄積した当該電荷を前記第一の整流素子又は前記第二の整流素子の入力コンデンサに分配する経路になるようオン・オフ動作し、
前記第二のスイッチ回路は、第三の期間に導通し、前記補助巻線の発生電圧が前記第二の電荷保持コンデンサを充電する経路になり、さらに第四の期間に導通し、第三の期間に蓄積した当該電荷を前記第一の整流素子又は前記第二の整流素子の入力コンデンサに分配する経路になるようオン・オフ動作する請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記第一の整流素子の駆動端子・グランド端子間に、双方向に導通可能な第一のスイッチ回路と前記電荷保持コンデンサである第一の電荷保持コンデンサの直列回路が接続され、
前記第二の整流素子の駆動端子・グランド端子間に、双方向に導通可能な第二のスイッチ回路と前記電荷保持コンデンサである第二の電荷保持コンデンサの直列回路が接続され、
前記第一のスイッチ回路は、第一の期間に導通し、前記補助巻線の発生電圧が前記第一のコンデンサを充電する経路になるようオン・オフ動作し、
前記第二のスイッチ回路は、第三の期間に導通し、前記補助巻線の発生電圧が前記第二のコンデンサを充電する経路になるようオン・オフ動作し、
第一及び第二のスイッチ回路は、第二及び第四の期間に導通し、その直前の期間に第一及び第二の電荷保持コンデンサに蓄積した電荷を、前記第一の整流素子又は前記第二の整流素子の入力コンデンサに分配する経路になるようオン・オフ動作する請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
前記第一のスイッチ回路と前記第一の電荷保持コンデンサとの直列回路は、第一の電荷保持コンデンサが前記第一の整流素子のグランド端子側に接続され、
前記第二のスイッチ回路と前記第二の電荷保持コンデンサとの直列回路は、第二の電荷保持コンデンサが前記第二の整流素子のグランド端子側に接続され、
前記第二の電荷保持コンデンサと前記第二のスイッチ回路との接続点と、前記第一の整流素子の駆動端子との間に、前記第一の整流素子側をアノード端子とする第三のダイオードが接続され、
前記第一の電荷保持コンデンサと前記第一のスイッチ回路との接続点と、前記第二の整流素子の駆動端子との間に、前記第二の整流素子側をアノード端子とする第四のダイオードが接続され、
前記第一の電荷保持コンデンサは、第三の期間に、前記第四のダイオードを通じて前記補助巻線から充電され、
前記第二の電荷保持コンデンサは、第一の期間に、前記第三のダイオードを通じて前記補助巻線から充電される請求項5又は6記載のスイッチング電源装置。
【請求項8】
前記第一のダイオードのカソード端子と前記補助巻線の第一の端子との接続点と、前記第一の整流素子の駆動端子との間に、双方向に導通可能な第三のスイッチ回路が挿入され、
前記第二のダイオードのカソード端子と前記補助巻線の第二の端子との接続点と、前記第二の整流素子の駆動端子との間に、双方向に導通可能な第四のスイッチ回路が挿入され、
前記第一の整流素子の駆動端子・グランド端子間に第五のスイッチ回路が接続され、
前記第二の整流素子の駆動端子・グランド端子間に第六のスイッチ回路が接続され、
前記第五のスイッチ回路は、前記第三の期間に入る前にオンして前記第一の整流素子の駆動端子電圧をオンの閾値未満に低下させ、さらに、前記第三のスイッチ回路又は第四のスイッチ回路は、前記第五のスイッチ回路がオンするのと同時又はその前にオフする動作を行い、
前記第六のスイッチ回路は、前記第一の期間に入る前にオンして前記第二の整流素子の駆動端子電圧をオンの閾値未満に低下させ、さらに、第三のスイッチ回路又は前記第四のスイッチ回路は、前記第六のスイッチ回路がオンするのと同時又はその前にオフする動作を行う請求項3又は4記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
前記第一の電荷保持コンデンサは、一端が前記第一の整流素子のグランド端子に接続され、
前記第一のスイッチ回路は、ソース端子が前記第一の整流素子の駆動端子に接続され、ドレイン端子が前記第一の電荷保持コンデンサの他の一端に接続されたN−chのMOS型FETである第一のトランジスタで構成され、
前記第二の電荷保持コンデンサは、一端が前記第二の整流素子のグランド端子に接続され、
前記第二のスイッチ回路は、ソース端子が前記第二の整流素子の駆動端子に接続され、ドレイン端子が前記第二の電荷保持コンデンサの他の一端に接続されたN−chのMOS型FETである第二のトランジスタで構成され、
前記第三のスイッチ回路は、ソース端子が前記第一の整流素子の駆動端子に接続され、ドレイン端子が前記第一のダイオードのカソード端子に接続され、ゲート端子が前記第一のトランジスタのゲート端子に接続されたN−chのMOS型FETである第三のトランジスタと、前記第三のトランジスタのドレイン端子・ゲート端子間に接続された第三の抵抗と、両端が前記第一の整流素子のグランド端子と前記第三のトランジスタのゲート端子の間に接続され、所定の駆動信号によってオン・オフ駆動される第一の補助トランジスタとで構成され、
前記第四のスイッチ回路は、ソース端子が前記第二の整流素子の駆動端子に接続され、ドレイン端子が前記第二のダイオードのカソード端子に接続され、ゲート端子が前記第二のトランジスタのゲート端子に接続されたN−chのMOS型FETである第四のトランジスタと、前記第四のトランジスタのドレイン端子・ゲート端子間に接続された第四の抵抗と、両端が前記第二の整流素子のグランド端子と前記第四のトランジスタのゲート端子の間に接続され、所定の駆動信号によってオン・オフ駆動される第二の補助トランジスタとで構成され、
前記第五のスイッチ回路は、両端が前記第一の整流素子の駆動端子・グランド端子間に接続され、駆動端子が前記第一の補助トランジスタの駆動端子に接続され、所定の駆動信号によってオン・オフ駆動される第五のトランジスタで構成され、
前記第六のスイッチ回路は、両端が前記第二の整流素子の駆動端子・グランド端子間に接続され、駆動端子が前記第二の補助トランジスタの駆動端子に接続され、所定の駆動信号によってオン・オフ駆動される第六のトランジスタで構成され、
前記第一から第六のスイッチ回路は、互いに接続された前記第一の補助トランジスタ及び第五のトランジスタのゲート端子と、互いに接続された前記第二の補助トランジスタ及び第六のトランジスタのゲート端子とに向けて、所定の駆動信号を個々に出力するトランジスタ駆動回路を備え、
前記第五、第六のトランジスタ、及び、第一、第二の補助トランジスタは、前記トランジスタ駆動回路が出力する駆動信号によってオンに反転するタイミングが制御される請求項8記載のスイッチング電源装置。
【請求項10】
前記第一の補助トランジスタの駆動端子のオンの閾値は、前記第五のトランジスタの駆動端子のオンの閾値よりも低く、前記第二の補助トランジスタの駆動端子のオンの閾値は、前記第六のトランジスタの駆動端子のオンの閾値よりも低い請求項9記載のスイッチング電源装置。
【請求項11】
前記第一のダイオードのカソード端子と前記補助巻線の第一の端子との接続点と、前記第一の整流素子の駆動端子との間に、双方向に導通可能な第三のスイッチ回路が挿入され、
前記第二のダイオードのカソード端子と前記補助巻線の第二の端子との接続点と、前記第一の整流素子の駆動端子との間に、双方向に導通可能な第四のスイッチ回路が挿入され、
前記第一の整流素子の駆動端子・グランド端子間に第五のスイッチ回路が接続され、
前記第二の整流素子の駆動端子・グランド端子間に第六のスイッチ回路が接続され、
前記第五のスイッチ回路は、前記第三の期間に入る前にオンして前記第一の整流素子の駆動端子電圧をオンの閾値未満に低下させ、さらに、前記第三又は第四のスイッチ回路、及び第一のスイッチ回路は、前記第五のスイッチ回路がオンするのと同時又はその前にオフする動作を行い、
前記第六のスイッチ回路は、前記第一の期間に入る前にオンして前記第二の整流素子の駆動端子電圧をオンの閾値未満に低下させ、さらに、前記第三又は第四のスイッチ回路、及び第一のスイッチ回路は、前記第六のスイッチ回路がオンするのと同時又はその前にオフする動作を行う請求項5乃至7のいずれか記載のスイッチング電源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−61987(P2011−61987A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209507(P2009−209507)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【Fターム(参考)】