説明

スイッチ素子駆動回路

【課題】小型化及びコストダウンを図ることができ、且つ、スイッチ素子のオン状態が不十分な状態となるのを抑制できるスイッチ素子駆動回路を提供する。
【解決手段】スイッチ素子駆動回路10は、スイッチ素子1のゲートが二次巻線n2の両端間に接続されたトランス11と、トランス11の一次巻線n1に電流が流れるオン期間と一次巻線n1に電流が流れないオフ期間を交互に設けて、スイッチ素子1をオン/オフさせる第1制御回路12と、スイッチ素子1に流れる電流が、二次巻線n2の両端電圧に対応する設定値に等しくなるように、ゲートに印加する印加電圧を制御する第2制御回路13を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ素子駆動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、入力電源の両端間にトランスの一次巻線を介してスイッチング素子を接続し、トランスの二次巻線にダイオードを介して平滑コンデンサを接続してなるフライバックコンバータが提供されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献に開示されたフライバックコンバータでは、二次側の出力電圧変動を誤差検出回路で検出し、フォトカプラーにより制御回路へ伝達し、制御回路でスイッチング素子のオン/オフを制御することで、出力電圧を制御している。
【0004】
ところで、負荷への電力供給をオン/オフするためのスイッチ素子を駆動するスイッチ素子駆動回路として、スイッチ素子の制御電極に二次巻線が接続されたトランスと、トランスの一次巻線に流れる電流を制御する制御回路を備えたものが従来提案されている。スイッチ素子の両端間には負荷と電源が直列に接続されており、スイッチ素子がオン/オフすることで、負荷への給電がオン/オフされている。このスイッチ素子駆動回路では、二次側の電圧又は電流を一次側の制御回路にフィードバックし、制御回路が、二次側の電圧又は電流に基づいて、トランスの一次巻線に流れる電流を制御することによって、スイッチ素子のオン/オフを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−190262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したスイッチ素子駆動回路では、トランスの二次巻線に発生する電圧や二次巻線に流れる電流をモニタし、一次側にフィードバックすることで、制御回路が、トランスの一次巻線に流れる電流を制御していた。そのため、二次側と電気的に絶縁された一次側に、二次側の電圧や電流をフィードバックするための回路構成が複雑になり、小型化やコストダウンが図りにくいという問題があった。
【0007】
また、後者のスイッチ素子駆動回路では、二次巻線の両端電圧が同じ値であっても、負荷が大きくなって負荷電流が増加すると、スイッチ素子の内部に加わる電圧が実効的に低下し、スイッチ素子のオン状態が不十分になる可能性があった。そして、スイッチ素子のオン状態が不十分になると、負荷に電流が流れにくくなり、効率の低下や発熱などの損失が発生するという問題があった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、小型化及びコストダウンを図ることができ、且つ、スイッチ素子のオン状態が不十分な状態となるのを抑制できるスイッチ素子駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のスイッチ素子駆動回路は、スイッチ素子と、トランスと、第1制御回路と、第2制御回路を備えることを特徴とする。スイッチ素子は、負荷への電力供給をオン/オフする。スイッチ素子の制御端子は、トランスの二次巻線の両端間に接続される。第1制御回路は、トランスの一次巻線に電流が流れるオン期間と一次巻線に電流が流れないオフ期間を交互に設けて、スイッチ素子をオン/オフさせる。第2制御回路は、スイッチ素子に流れる電流が、二次巻線の両端電圧に対応する設定値に等しくなるように、制御端子の駆動条件を制御する。
【0010】
このスイッチ素子駆動回路において、第2制御回路は、スイッチ素子を駆動する前の順方向電圧と、スイッチ素子をオンさせた時の順方向電圧との変化分から、スイッチ素子に流れる電流を検出することも好ましい。
【0011】
このスイッチ素子駆動回路において、第2制御回路は、スイッチ素子の表面温度を検出する温度検出手段を備え、スイッチ素子を駆動する前の表面温度とスイッチ素子をオンさせた時の表面温度の変化分から、オン抵抗によって生じるジュール熱を求め、このジュール熱からスイッチ素子に流れる電流を検出することも好ましい。
【0012】
このスイッチ素子駆動回路において、スイッチ素子は、双方向の電流をオン/オフできるように逆向きに直列接続された複数個のトランジスタからなり、複数個のトランジスタのそれぞれに二次巻線と第2制御回路が設けられ、第2制御回路は、対応するトランジスタに流れる電流が、二次巻線の両端電圧に対応して予め設定された設定値に等しくなるように、対応するトランジスタの駆動条件を制御することも好ましい。
【0013】
このスイッチ素子駆動回路において、スイッチ素子は、ドレイン電極とソース電極の間に複数個のゲート電極を有する双方向素子からなることも好ましい。
【0014】
このスイッチ素子駆動回路において、スイッチ素子は、ワイドバンドギャップ半導体のヘテロ接合構造を有する電界効果トランジスタからなることも好ましい。
【0015】
このスイッチ素子駆動回路において、スイッチ素子は、ゲート電極が接合型のゲート構造を有する電界効果トランジスタからなることも好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第2制御回路は、スイッチ素子に流れる電流が、二次巻線の両端電圧に対応する設定値に等しくなるように、制御端子の駆動条件を制御している。したがって、負荷が大きくなって負荷電流が増加し、それによってスイッチ素子の内部に加わる電圧が実効的に低下した場合であっても、スイッチ素子に流れる電流を、二次巻線の両端電圧に対応する設定値に制御できる。よって、スイッチ素子のオン状態が不十分な状態となるのを抑制でき、スイッチ素子の効率が低下したり、発熱などの損失が発生するのを抑制することができる。また、二次側の電流、電圧を一次側へフィードバックしなくても、二次側に設けた第2制御回路が二次側だけで制御端子の駆動条件を制御できるから、スイッチ素子駆動回路の回路構成を簡単にでき、小型化及びコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1のスイッチ素子駆動回路の回路図である。
【図2】(a)は同上に用いられるスイッチ素子のドレイン−ソース間電圧とドレイン電流の関係を説明する説明図、(b)はドレイン−ソース間電圧とゲート電流の関係を説明する説明図である。
【図3】(a)(b)は実施形態2のスイッチ素子駆動回路の回路図である。
【図4】(a)は同上に用いられるスイッチ素子のドレイン−ソース間電圧とドレイン電流との関係を説明する説明図、(b)はゲート電圧とゲート電流の関係を説明する説明図である。
【図5】実施形態3のスイッチ素子駆動回路の回路図である。
【図6】同上に用いられるスイッチ素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
(実施形態1)
本発明の実施形態1を図1及び図2に基づいて説明する。図1に本実施形態のスイッチ素子駆動回路10の回路図を示す。このスイッチ素子駆動回路10は、ドレイン−ソース間に負荷21と直流電源22が直列に接続されたスイッチ素子1のオン/オフを制御するものである。
【0020】
このスイッチ素子駆動回路10は、スイッチ素子1と、トランス11と、第1制御回路12と、第2制御回路13とを主要な構成として備える。
【0021】
スイッチ素子1は例えば電界効果トランジスタ(FET)からなる。このスイッチ素子1のドレイン−ソース間には、負荷21と直流電源22の直列回路が接続されており、スイッチ素子駆動回路10がスイッチ素子1のオン/オフを制御することによって、負荷21に供給される電力が制御される。
【0022】
トランス11の二次巻線n2の一端側はスイッチ素子1のソースに接続され、二次巻線n2の他端側は第2制御回路13を介してスイッチ素子1のゲート(制御電極)に接続されている。尚、トランス11の二次巻線n2は、一次巻線n1と逆巻きに巻かれている。
【0023】
第1制御回路12は、トランス11の一次巻線n1に電流が流れるオン期間と、一次巻線n1に電流が流れないオフ期間とを交互に設けており、オフ期間に二次巻線n2に発生する電流によってスイッチ素子1がオンされて、負荷21に電力が供給される。
【0024】
第2制御回路13は、トランス11の二次側に設けられて、スイッチ素子1の制御電極(ゲート)の駆動条件(例えば印加電圧)を制御する回路である。この第2制御回路13は、スイッチ素子1のゲート電流を検出する電流検出回路14と、電流検出回路14の検出結果に基づいてトランス11のゲートに印加する電圧を調整する電圧発生回路15とを備える。尚、電流検出回路14及び電圧発生回路15は、トランス11の二次側から電源を得て動作する。また電圧発生回路15には、二次巻線の両端電圧とスイッチ素子1に流れる電流(設定値)との対応関係が予め設定されている。
【0025】
ここで、スイッチ素子駆動回路10が、スイッチ素子1のゲートに印加する印加電圧を制御する動作について以下に説明する。
【0026】
トランス11の一次電流のオフ期間に、二次巻線n2に電流が流れると、スイッチ素子1がオンになり、スイッチ素子1には負荷電流が流れる。電流検出回路14は、トランスの二次巻線に流れる電流、すなわちスイッチ素子1のゲートに流れるゲート電流I2を検出する。このゲート電流I2の大きさは、スイッチ素子1に流れる負荷電流I1に応じて変化する。図2(a)はスイッチ素子1のドレイン−ソース間電圧V1とドレイン−ソース間電流I1の関係を、図2(b)はドレイン電圧V1とゲート電流I2の関係をそれぞれ示している。スイッチ素子1が非飽和領域で動作していれば、あるゲート電圧V2において、負荷電流I1が増加するにつれてゲート電流I2が低下しており、電圧発生回路15では、ゲート電流I2及びゲート電圧V2から負荷電流I1を推定することができる。
【0027】
ところで、図1の回路では、グランドを基準にしてスイッチ素子1のゲートに制御信号が印加されるため、トランス1の二次巻線n2に発生する電圧が同じであっても、負荷が大きくなって、負荷電流I1が増加すると、スイッチ素子1の内部にかかる電圧が低下し、それに伴ってドレイン−ソース間に流せる電流I1が制限されてしまう。
【0028】
そこで、電圧発生回路15は、電流検出回路14が検出したゲート電流I2から負荷電流I1を推定し、この負荷電流I1が、二次巻線n2の両端電圧に対応する設定値に一致するように、スイッチ素子1のゲート駆動条件(ゲート電圧V2)を制御する。これにより、負荷の大小に関係無く、負荷電流I1を、二次巻線n2の両端電圧に対応した設定値に制御することができる。したがって、スイッチ素子1のオン状態が不十分な状態となるのを抑制でき、負荷に十分な電流を供給できるとともに、効率の低下や発熱などの損失が発生するのを抑制することができる。
【0029】
しかも、スイッチ素子駆動回路10は、二次巻線n2に流れる電流から負荷状態を推定しており、二次側と電気的に絶縁された一次側に二次側の電流、電圧をフィードバックすることなく、二次側だけでゲート印加電圧を決定している。したがって、二次側の電流、電圧を一次側にフィードバックする回路を備える必要が無く、スイッチ素子駆動回路10の回路構成を簡単にできるから、小型化及びコストダウンを図ることができる。尚、本実施形態では二次巻線n2に流れる電流から負荷状態を検出しているが、スイッチ素子駆動回路10が、二次巻線n2に印加される電圧から負荷状態を検出してもよい。またスイッチ素子駆動回路10が、二次巻線n2に流れる電流と二次巻線n2に印加される電圧の両方に基づいて負荷状態を検出してもよい。
【0030】
また本実施形態では、第2制御回路が、二次巻線n2に流れる電流(=ゲート電流I2)から負荷電流I1を求めているが、スイッチ素子1の順方向電圧Vfから負荷電流I1を検出してもよい。ここで、スイッチ素子1の順方向電圧Vfはスイッチ素子1の素子温度によって変化する。またスイッチ素子1の素子温度は、環境温度t1と、スイッチ素子1のオン抵抗R1及びスイッチ素子1に流れる電流I1から求まるジュール熱(I1×R1)とで決定される。ジュール熱を除いた環境温度t1は、スイッチ素子1をオンさせた時点での順方向電圧Vfをモニタすることで、環境温度分による順方向電圧を見積もることができる。尚、環境温度の影響は、サーミスタや熱電対などの温度センサで、スイッチ素子1を構成するトランジスタの表面温度を直接検出すればよいが、パッケージなどで時間遅れが発生するため、素子の表面温度を検出するのは難しく、順方向電圧Vfから素子温度を推定する方が実用的である。
【0031】
第2制御回路13では、先ずスイッチ素子1をオンさせた時点での順方向電圧Vfをモニタする。その後、スイッチ素子1に電流が流れ始めると、負荷電流に応じたジュール熱が発生して順方向電圧Vfが上昇するので、第2制御回路13では、順方向電圧Vfの上昇分からスイッチ素子1に流れる電流(負荷電流)を検出することができる。そして、第2制御回路13では、上述のようにして求めた負荷電流をもとに、二次巻線n2の両端電圧に対応する設定値に負荷電流が一致するように、ゲートに印加する印加電圧を制御する。
【0032】
尚、スイッチ素子1の表面温度を、温度センサにより時間遅れが少ない状態で検出できるのであれば、素子温度の測定結果から負荷電流を検出してもよい。すなわち、第2制御回路13では、スイッチ素子1を駆動する前に温度センサが検出した素子温度と、スイッチ素子1をオンさせた時の検出温度(素子温度)との変化分から、オン抵抗によって生じるジュール熱を求め、このジュール熱からスイッチ素子1に流れる負荷電流を検出する。これにより、スイッチ素子1に流れる負荷電流を測定できるから、第2制御回路13では、二次巻線n2の両端電圧に対応する設定値に負荷電流が一致するように、ゲートに印加する印加電圧を制御することができる。
【0033】
(実施形態2)
本発明の実施形態2を図3及び図4に基づいて説明する。
【0034】
図3(a)はスイッチ素子駆動回路10の概略構成を示すブロック図であり、実施形態1で説明した駆動回路と共通する構成要素には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0035】
実施形態1のスイッチ素子1は1方向の電流をオン/オフする素子であるが、本実施形態のスイッチ素子1Aは、双方向の電流をオン/オフできるように逆向きに直列接続された2個の電界効果トランジスタ(以下、トランジスタと略称す。)2,3で構成されている。このスイッチ素子1の出力端子間には、例えば負荷21と交流電源23の直列回路が接続されており、スイッチ素子1のオン/オフに応じて、負荷21に電力が供給されるようになっている。
【0036】
スイッチ素子駆動回路10のトランス11は、一端側がトランジスタ2,3のソースにそれぞれ接続される二次巻線n21,n22を備え、二次巻線n21,n22の他端はそれぞれ第2制御回路13a,13bを介してトランジスタ2,3のゲートに接続されている。
【0037】
またトランス11は、二次巻線n21,n22にそれぞれ磁気結合された一次巻線n11,n12を備え、一次巻線n11,n12はそれぞれ個別の第1制御回路12a,12bによって電流が供給されるようになっている。
【0038】
ここで、第1制御回路12a,12bは、実施形態1の第1制御回路12と同様、一次巻線n11,n12に電流が流れるオン期間と、電流が流れないオフ期間を交互に設けている。また第2制御回路13a,13bは、実施形態1と同様に、電流検出回路14及び電圧発生回路15を備え、電流検出回路14が検出したゲート電流I2から負荷電流I1を推定し、この負荷電流I1が、二次巻線n2の両端電圧に対応する設定値に一致するように、スイッチ素子1のゲート駆動条件(ゲート電圧V2)を制御する。尚、第2制御回路13a,13bでは、実施形態1で説明したように、トランジスタ2,3の順方向電圧や素子の表面温度から負荷電流を推定してもよい。
【0039】
ところで、2個のトランジスタ2,3が逆向きに直列接続されたスイッチ素子1Aでは、図3(b)に示すようにオン抵抗に由来するゲート−ソース間抵抗R1,R2が各トランジスタ2,3に存在する。そのため、ゲート−ソース間抵抗R1,R2で発生する電圧降下によって、トランス11の二次巻線n21,n22に発生する電圧V21,V22と、実際にトランジスタ2,3の動作を決定する電圧Vg1,Vg2の電圧値は異なる値となる。ここで、スイッチ素子1Aの出力電流をI1とすると、電圧Vg1,Vg2は次式のように表される。
【0040】
Vg1=V21+I1×R1
Vg2=V22−I1×R2
ここで、交流印加の場合はスイッチング素子2,3のハイ/ローが交番するが、例えばトランジスタ2をハイ側、トランジスタ3をロー側とすると、ハイ側のトランジスタ2では、第2制御回路13aによってハイ側基準でゲート電圧が印加される。したがって、二次巻線n21,n22に発生する電圧V21,V22が同じであっても、負荷が大きくなると(すなわち電流I1が増加すると)、トランジスタ2の内部にかかる電圧Vg1は実効的に大きくなり、流れる電流が初期設定値よりも増加する(図4(a)参照)。一方、ロー側のトランジスタ3では、第2制御回路13bによってロー側基準でゲート電圧が印加される。したがって、二次巻線n21,n22に発生する電圧V21,V22が同じであっても、負荷が大きくなると(すなわち電流I1が増加すると)、トランジスタ3の内部にかかる電圧Vg2は実効的に小さくなり、流れる電流が初期設定値よりも低下する(図4(a)参照)。その結果、2個のトランジスタ2,3の動作状態が異なり、ハイ側のトランジスタ2では、制御回路12aから印加される電圧で、十分にオンさせることができる。一方、ロー側のトランジスタ3では、制御回路12bから印加される電圧で想定されるオン状態に比べて、十分にオンさせることができない可能性があり、ロー側のトランジスタ3によって負荷に流せる電流が制限されることになる。
【0041】
なお図3(a)の回路では、二次巻線n21,n22に発生する電圧を個別に制御できるように、二次巻線n21,n22毎に第1制御回路12a,12bと一次巻線n11,n12が設けられている。したがって、第1制御回路12a,12bが、対応する二次巻線n21,n22に発生する電圧を個別に制御することで、トランジスタ2,3の半オン状態を回避することもできる。例えばハイ側の第1制御回路12aでは一次巻線n11への入力電圧を小さく、ロー側の第1制御回路11bでは一次巻線n12への入力電圧を高くすることで、ロー側のトランジスタ3の半オン状態を回避することもできる。また、ロー側の第1制御回路11bのみで、一次巻線n12への入力電圧を高くして、トランジスタ3に流れる電流を増加させることで、ロー側のトランジスタ3の半オン状態を回避することもできる。尚、第1制御回路11a,11b側で制御を行う場合は、二次側の電流或いは電圧を第1制御回路11a,11b側にフィードバックする必要がある。
【0042】
また図3に示す回路において、回路の小型化やコストダウンを図るため、2つの二次巻線n21,n22に磁気的に結合される一次巻線を1つだけにし、1つの第1制御回路で複数のトランジスタ2,3をオン/オフさせてもよい。この場合は1つの第1制御回路で一次巻線に流れる電流をオン/オフして、二次巻線n21,n22に電圧を発生させている。ここで、半オン状態となる可能性があるロー側の第2制御回路のみが、トランジスタに流れる電流を増加させるために出力電圧を増加させてもよい。但し、一次側の入力電力が一定の場合は、ロー側のトランジスタ3に流れる電流を増加させるために、第2制御回路13bのみ電圧を上げると、相対的にハイ側のトランジスタ2への電力供給が不足する可能性がある。このため、第2制御回路13a、13bでは、それぞれ、対応するトランジスタ2,3に流れる電流が、二次巻線の両端電圧に対応する設定値に等しくなるように、トランジスタ2,3のゲート印加電圧を制御するのが好ましい。
【0043】
また、ゲート電極が接合型のゲート構造を有する電界効果トランジスタでスイッチ素子1Aが構成され、ゲート電圧が所定のしきい値以下ではスイッチ素子1AがJFETのように動作する場合、図4(b)に示すようにハイ側のトランジスタ2に印加されるゲート−ソース間電圧Vg1が、ロー側のトランジスタ3に印加されるゲート−ソース間電圧Vg2よりも大きいと、トランジスタ2のゲート電流Ig1に比べて、ロー側のトランジスタ3のゲート電流Ig2は小さくなる。そのため、ハイ側のトランジスタ2に十分なゲート電流Ig1を供給できなかったり、ハイ側のトランジスタ2の電流駆動能力にひきずられて、ロー側のトランジスタ3のゲート電流Ig1が不足したりするという問題があった。
【0044】
このように、二次巻線n21,n22に同じ電圧を発生させた場合、オン抵抗の影響でハイ側のトランジスタ2とロー側のトランジスタ3の動作状態が異なってしまうのであるが、図3(a)の回路では、トランジスタ2,3のゲート電圧を個別に調整する第2制御回路13a,13bが設けられている。ここで、トランジスタ2をハイ側、トランジスタ3をロー側とすると(尚、交流印加の場合ハイ/ローは周期的に交番する)、ハイ側基準でゲートを制御する第2制御回路13aは、ハイ側のトランジスタ2に流れる電流が、二次巻線n21の両端電圧に対応する設定値に一致するように、ゲート電圧を制御する。或いは、ロー側基準でゲートを制御する第2制御回路13bは、ロー側のトランジスタ3に流れる電流が、二次巻線n22の両端電圧に対応する設定値に一致するように、ゲート電圧を制御する。このように、第2制御回路13a,13bでは、対応するトランジスタ2,3に流れる電流が、二次巻線n21,n22の両端電圧に対応する設定値に一致するように、ゲート駆動条件を制御しているので、オン抵抗に起因したトランジスタ2,3のオン状態の差を低減でき、ロー側のトランジスタによって負荷電流が制限されるのを抑制できる。なお、トランジスタ2,3が片側だけ半オン状態となっている場合、半オン状態となっているトランジスタ2,3に対応した第2制御回路13a,13bだけで、トランジスタに流れる電流が、二次巻線の両端電圧に対応する設定値に一致するように、ゲート駆動条件を制御してもよい。また、片方のトランジスタが不完全なオン状態であると、効率が悪くなり、発熱などの損失が発生するが、トランジスタ2,3のオン状態の差を低減することで、このような損失を低減できる。
【0045】
ところで、本実施形態においてトランジスタ2,3の両端の電圧(スイッチ素子1Aの両端電圧)を比較する比較回路を設け、両端電圧の電圧差に応じて第2制御回路13a,13bがゲート駆動条件を決定してもよい。ここで、両端電圧の電圧差がトランジスタの飽和領域となる場合、すなわち負荷が大きく、スイッチ素子1で電流を流しきれない場合、第2制御回路13a,13bではゲート電圧を上げて半オン状態を抑制する。なお、ゲート電圧を上げた場合、第2制御回路13a,13bでは、上述と同様、対応するトランジスタ2,3に流れる電流が、二次巻線n21,n22の両端電圧に対応する設定値に一致するように、ゲート駆動条件を制御すればよい。
【0046】
(実施形態3)
本発明の実施形態3を図5及び図6に基づいて説明する。
【0047】
図5は本実施形態のスイッチ素子駆動回路10の概略的な回路図であり、実施形態1又は2で説明した回路と共通する構成要素には、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0048】
本実施形態では、実施形態2で説明したスイッチ素子1Aに代えて、ドレイン電極とソース電極の間に複数個のゲート電極を有する双方向素子からなるスイッチ素子1Bを用いている。
【0049】
図6はこのようなスイッチ素子1Bの断面図である。このスイッチ素子1Bは、サファイア基板101と、サファイア基板101の表面に形成されたバッファ層102と、バッファ層102上に形成されたアンドープGaN層103と、アンドープGaN層103上に形成されたアンドープAlGaN層104を備える。また、アンドープAlGaN層104の表面にはドレイン電極105とソース電極106とが設けられるとともに、両電極105,106の間には2個のゲート電極107,108が設けられている。ここで、ゲート電極107,108とチャネル層(アンドープGaN層103の上面)との間にはそれぞれp型半導体領域が形成されており、ノーマリオフ型の接合型電界効果トランジスタ(JFET)となっている。
【0050】
AlGaNやGaNのバンドギャップはSiなどに比べて大きいため、絶縁破壊電界が大きく、高耐圧で低オン抵抗のスイッチ素子を実現できる。第1及び第2の半導体層としてのアンドープAlGaN層104とアンドープGaN層103のヘテロ界面にはピエゾ効果や自発分極効果によって高い濃度の二次元電子ガスが発生する。そして、両半導体層の界面に沿って電子が移動することで、スイッチ素子1Bの出力端子間に電流が流れるようになっている。
【0051】
このスイッチ素子1Bは、ゲート電圧が閾値レベル(例えば2.5V)以下ではゲートに電流が流れず、JFETのような動作を行う。一方、ゲート電圧が閾値レベルを超えると、ゲート電極107,108とチャネル層の間に設けられたp型半導体領域からアンドープGaN層103の上面部に正孔が注入されることで、ゲート電圧の増加に応じてドレイン電流が増加する。
【0052】
このように、ゲート電圧が閾値レベルを超えると、ゲート電極107,108に電流が流れるため、GaNやAlGaNのようなワイドバンドギャップ型半導体では、安定な絶縁型ゲートを実現する点で課題がある。そこで、制御回路12a,12bでは、ゲート電圧が閾値レベルを超えない範囲でスイッチ素子1Bを駆動しており、この場合にはJFETのような動作を行うので、絶縁型ゲートの課題を解消できる。ここで、ワイドバンドギャップとは、Siのバンドギャップ(1.1eV)の2倍以上のバンドギャップ(2.2eV以上)をいう。またワイドバンドギャップ半導体は、例えば周期律表第2周期の軽元素(B,C,N,O)を構成要素とする半導体である。
【0053】
上述のようにスイッチ素子1Bは、ドレイン電極とソース電極の間に複数個のゲート電極を具備して双方向に電流を流す双方向素子からなり、トランス11が備える複数の二次巻線n11,n12がそれぞれ対応するゲート電極に接続されている。
【0054】
これにより、スイッチ素子を1素子で実現でき、回路のさらなる小型化、低コスト化を実現することができる。
【0055】
また、双方向素子よりなるスイッチ素子1Bは、ワイドバンドギャップ半導体のヘテロ接合構造を有する電界効果トランジスタで構成されており、ワイドバンドギャップ半導体を用いることによって、高耐圧でオン抵抗の小さい素子を実現できる。
【0056】
また、本実施形態では2つのゲートにそれぞれ駆動信号を入力する2つの第1制御回路12a,12bを設けているが、トランス11の一次巻線を1つにして、1つの第1制御回路で2つのゲートのオン/オフを制御してもよい。この場合、1つの第1制御回路では、二次巻線n21,n22に発生する電圧を個別に制御することができないので、2つのゲートに対応して設けられた第2制御回路13a,13bで、対応するゲートの印加電圧を制御すればよい。このように、1つの第1制御回路で2つのゲートをオン/オフさせるようにすれば、第1制御回路の数を減らして、コストダウンを図ることができる。
【0057】
尚、上述の各実施形態では、スイッチ素子に流れる電流が、二次巻線の両端電圧に対応する設定値に等しくなるように、第2制御回路がスイッチ素子のゲートに印加される印加電圧を制御しているが、ゲートの駆動条件として、ゲートに印加される印加電圧を制御するかわりに、例えばゲートに印加する電圧の周期やデューティ比(一次側のオン期間とオフ期間の比率)を制御することで、スイッチ素子に流れる電流が、二次巻線の両端電圧に対応する設定値に等しくなるように制御してもよい。
【0058】
また、上述の各実施形態において、スイッチ素子としては、ワイドバンドギャップ半導体のヘテロ接合構造を有する電界効果トランジスタを用いてもよいし、ゲート電極が接合型のゲート構造を有する電界効果トランジスタを用いてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 スイッチ素子
10 スイッチ素子駆動回路
11 トランス
12 第1制御回路
13 第2制御回路
n1 一次巻線
n2 二次巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷への電力供給をオン/オフするスイッチ素子と、
前記スイッチ素子の制御端子が二次巻線の両端間に接続されたトランスと、
前記トランスの一次巻線に電流が流れるオン期間と前記一次巻線に電流が流れないオフ期間を交互に設けて、前記スイッチ素子をオン/オフさせる第1制御回路と、
前記スイッチ素子に流れる電流が、前記二次巻線の両端電圧に対応する設定値に等しくなるように、前記制御端子の駆動条件を制御する第2制御回路とを備えたことを特徴とするスイッチ素子駆動回路。
【請求項2】
前記第2制御回路は、前記スイッチ素子を駆動する前の順方向電圧と、前記スイッチ素子をオンさせた時の順方向電圧との変化分から、前記スイッチ素子に流れる電流を検出することを特徴とする請求項1記載のスイッチ素子駆動回路。
【請求項3】
前記第2制御回路は、前記スイッチ素子の表面温度を検出する温度検出手段を備え、前記スイッチ素子を駆動する前の表面温度と前記スイッチ素子をオンさせた時の表面温度の変化分から、オン抵抗によって生じるジュール熱を求め、このジュール熱から前記スイッチ素子に流れる電流を検出することを特徴とする請求項1記載のスイッチ素子駆動回路。
【請求項4】
前記スイッチ素子は、双方向の電流をオン/オフできるように逆向きに直列接続された複数個のトランジスタからなり、複数個の前記トランジスタのそれぞれに前記二次巻線と前記第2制御回路が設けられ、
前記第2制御回路は、対応する前記トランジスタに流れる電流が、前記二次巻線の両端電圧に対応する設定値に等しくなるように、対応する前記トランジスタの駆動条件を制御することを特徴とする請求項1記載のスイッチ素子駆動回路。
【請求項5】
前記スイッチ素子は、ドレイン電極とソース電極の間に複数個のゲート電極を有する双方向素子からなることを特徴とする請求項1記載のスイッチ素子駆動回路。
【請求項6】
前記スイッチ素子は、ワイドバンドギャップ半導体のヘテロ接合構造を有する電界効果トランジスタからなることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のスイッチ素子駆動回路。
【請求項7】
前記スイッチ素子は、ゲート電極が接合型のゲート構造を有する電界効果トランジスタからなることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のスイッチ素子駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−54708(P2012−54708A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194717(P2010−194717)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】