説明

ステレオカメラの調整装置

【課題】カメラの位置ズレの検出処理に要する時間を短縮可能なステレオカメラの調整装置を提供する。
【解決手段】算出部21bは、カメラ12によって調整用画像50を撮像して得られた画像をリファレンス画像とし、カメラ13によって調整用画像50を撮像して得られた対象画像をリファレンス画像に対して移動させながら、対照画像の位置毎に、2つの重なり合う調整用パターン51a,52aの外形の面積を算出する。位置検出部21bは、各位置の面積値を比較することによって、面積値が最も小さくなる最小位置を検出する。制御部21は、駆動装置23を制御して、前記最小位置に、カメラ13を最小位置に移動させて位置ズレの調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステレオカメラによって調整用パターンを撮像し、この撮像によって得られた2つの画像に基づいて、カメラの取り付け位置のズレを調整するステレオカメラの調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像による三次元計測技術として、2台のカメラ(ステレオカメラ)で対象物を異なる位置から撮像した1対の画像の相関を求め、同一物体に対する視差からステレオカメラの取り付け位置や焦点距離等のカメラパラメータを用いて、三角測量の原理によって物体までの距離を求める技術が知られている。
【0003】
また、ステレオカメラによって画像を撮像する場合、ステレオカメラには機械的な位置ズレ要素があり、撮像された1対の画像にズレとなって現れる。ステレオカメラでは、撮像された画像間に視差以外のズレがないことが好ましく、視差以外のズレがあると正確な距離を求めることができないという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために、調整用パターンをステレオカメラで撮像し、この撮像によって得られた1対の画像に基づいてカメラの位置ズレ量を算出して、位置ズレを調整するステレオカメラの調整装置が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−115506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のステレオカメラの調整装置では、シティブロック距離を算出することによって位置ズレを検出しているため、位置ズレの検出処理が複雑となって検出処理に時間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、位置ズレの検出時間を短縮可能なステレオカメラの調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のステレオカメラの調整装置は、ステレオカメラによって調整用パターンを撮像させ、この撮像によって得られた2つの画像に基づいて、前記ステレオカメラの取り付け位置のズレを調整するステレオカメラの調整装置であり、一方のカメラによって前記調整用パターンを撮像して得られた画像をリファレンス画像とし、他方のカメラによって前記調整用パターンを撮像して得られた対象画像を前記リファレンス画像に対して移動させながら、前記対照画像の位置毎に、2つの重なり合う前記調整用パターンの外形の面積を算出する算出手段と、前記算出手段によって算出された前記面積が最も小さくなる最小位置を検出する位置検出手段と、前記位置検出手段によって検出された前記最小位置に、前記他方のカメラを移動させる移動手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記移動手段によって、前記他方のカメラを前記一方のカメラに対して移動させながら、前記算出手段が前記他方のカメラから前記対象画像を逐次取得することによって、前記対象画像を前記リファレンス画像に対して移動させても良い。
【0009】
さらに、前記移動手段は、前記他方のカメラの光軸と垂直な平面内で互いに直交する2つの軸に沿って、前記他方のカメラを直進移動させる直進移動手段と、前記光軸を中心として前記他方のカメラを回転させる回転移動手段とを備えていることが好ましい。
【0010】
また、前記直進移動手段によって、前記2つの軸と平行な並進ズレを調整した後、前記回転移動手段によって、前記光軸を中心とする回転方向の回転ズレを調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のステレオカメラの調整装置によれば、一方のカメラによって調整用パターンを撮像して得られた画像をリファレンス画像とし、他方のカメラによって調整用パターンを撮像して得られた対象画像をリファレンス画像に対して移動させながら、対照画像の位置毎に、2つの重なり合う調整用パターンの外形の面積を算出し、これらの面積が最も小さくなる最小位置に他方のカメラを移動させることによって、ステレオカメラの位置ズレを調整するので、シティブロック距離等を算出して位置ズレを検出する場合に比べて、位置ズレの検出処理に要する時間を短縮できる。このため、ステレオカメラの調整処理を迅速に行うことが可能である。
【0012】
また、移動手段によって、他方のカメラを前記一方のカメラに対して移動させながら、算出手段が前記他方のカメラから前記対象画像を逐次取得することによって、対象画像を前記リファレンス画像に対して移動させるので、ステレオカメラの調整処理に要する時間をさらに短縮することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に示すステレオカメラの調整装置(以下、単に調整装置と称する)10は、ステレオカメラユニット11の機械的な取り付け位置のズレを調整するものである。ステレオカメラユニット11は、左右1対のカメラ12,13を備えている。また、各カメラ12,13は、CCDイメージセンサ等の固体撮像装置を備えて構成されており、これらのカメラ12,13は、互いの光軸L1,L2が略平行となるように所定間隔で配設されている。以下に、カメラ12,13の機械的な位置ズレについて説明する。
【0014】
カメラ12,13には、6つの位置ズレ要素がある。図2に示すように、カメラ12,13の光軸L1,L2方向をZ軸、カメラ12,13の上下方向をY軸、カメラ12,13の横方向をX軸とする。すなわち、X軸及びY軸は、光軸L1,L2に対して垂直な平面内で互いに直交するように設定される。このXYZ直交座標系において、カメラ12,13が、設定値X0の間隔で取り付けられている場合、カメラ12を基準とすると、図2(A)に示すように、各座標軸X,Y,Zに平行な並進ズレΔX,ΔY,ΔZと、図2(B)に示すように、各座標軸X,Y,Zに対する回転ズレΔα,Δβ,Δγとの6つの機械的な位置ズレが存在する。
【0015】
次に、調整装置10の構成について説明する。調整装置10は、図1に示すように、画像変換部20と、制御部21と、駆動装置22,23とを備えて構成されている。画像変換部20は、A/D変換器31,32と、メモリ33,34とで構成されている。
【0016】
A/D変換器31は、カメラ12と接続されており、カメラ12によって撮像されたアナログの撮像信号を所定の輝度階調(例えば、256階調のグレースケール)を有するデジタル信号の画像データに変換する。また、A/D変換器32は、カメラ13と接続されており、A/D変換器31と同様に、カメラ13によって撮像された撮像信号をデジタル信号の画像データに変換する。
【0017】
また、A/D変換器31は、メモリ33に接続されており、画像データをメモリ33に出力する。A/D変換器32も同様に、メモリ34に接続されており、画像データをメモリ34に出力する。
【0018】
制御部21は、メモリ33,34に記憶された画像データを取得し、これらの画像データに基づいて、後述するように、カメラ12,13の位置ズレを検出する。また、駆動装置22は、カメラ12を並進方向(XYの各方向)に移動させる直進駆動部22aと、光軸L1を中心としてγ方向に、カメラ12を回転させる回転駆動部22bとを備えている。
【0019】
さらに、駆動装置23は、駆動装置22と同様に、直進駆動部23aと、回転駆動部23bとを備えている。これらの直進駆動部22a,22b及び回転駆動部23a,23bは、例えば、アクチュエータによって、スクリューを回転させることによってカメラ12,13の各々を各方向に移動させる。制御部21は、カメラ12,13の位置ズレに基づいて、駆動装置22,23を制御することによって、カメラ12,13の機械的な位置ズレを調整する。
【0020】
また、前述の制御部21は、算出部21aと、位置検出部21bとを備えている。算出部21aは、カメラ12,13の一方によって調整用パターンを撮像して得られた画像をリファレンス画像とし、他方によって調整用パターンを撮像して得られた対象画像をリファレンス画像に対して移動させながら、対照画像の位置毎に、2つの重なり合う調整用パターンの外形の面積を算出する。なお、この面積の算出方法としては、外形の各頂点の座標に基づいて算出しても良いし、外形内に含まれる画素をカウントしても良い。また、位置検出部21bは、算出部によって算出された面積が最も小さくなる最小位置を検出する。制御部21は、この最小位置に対応するカメラ12,13の移動方向及び移動量を決定し、この移動方向及び移動量に基づいて駆動装置22,23を制御して、カメラ12,13を移動させて位置ズレの調整を行う。
【0021】
次に、このカメラ12,13の機械的な位置ズレの調整処理について、カメラ12を固定し、カメラ12に対してカメラ13を移動させて機械的な位置ズレを調整する場合を例に、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0022】
最初に、カメラ12,13によって、図4(A)に示すように、調整用パターン50aを含む調整用画像50を撮像する。なお、この調整用パターン50aは、円形や、正三角形等の点対象のパターンでは回転ズレを検出することが困難なため、回転ズレを検出し易いように、矩形を組み合わせ、点対象とならない形状にされている。この時、カメラ12によって撮像された画像データがメモリ33に記憶され、カメラ13によって撮像された画像データがメモリ34に記憶される。
【0023】
メモリ33には、例えば、図4(B)に示す画像51が記憶され、メモリ34には、例えば、図4(C)に示す画像52が記憶される。制御部21は、メモリ33,34から画像51,52を取得する。その後、これらの画像51,52に基づいて、並進ズレΔX,ΔY、及び回転ズレΔγの補正を行う。
【0024】
最初に、並進ズレΔXの補正について説明する。算出部21aは、画像51をリファレンス画像とし、対象画像である画像52を画像51に対して左右方向(X軸方向)に1画素単位で移動させながら、X軸方向の各位置にて、2つの重なり合う調整用パターン51a,52aの外形の面積、つまり、図5にて斜線で示す部分の面積を算出し、各位置の面積値が制御部21の内蔵メモリに記憶される。なお、画像52の移動範囲は、カメラ13のX軸方向の並進ズレΔXとして想定される範囲よりも大きくされている。
【0025】
その後、位置検出部21bは、各位置の面積値を比較することによって、面積値が最も小さくなる最小位置を検出する。つまり、図6に示すように、X軸方向の位置を横軸、面積値を縦軸とすると、面積値が最小となる最小位置X1を検出する。
【0026】
制御部21は、この最小位置X1に基づいて、並進ズレΔXを補正するためのカメラ13の移動量と移動方向を決定する。その後、制御部21は、この移動量及び移動方向に基づいて、駆動装置23を制御して、カメラ13を移動させて並進ズレΔXを補正する。
【0027】
次に、並進ズレΔYの補正について説明する。この場合、算出部21aは、画像52を画像51に対して上下方向(Y軸方向)に1画素単位で移動させながら、並進ズレΔXの場合と同様に、Y軸方向の各位置にて面積値を算出して記憶する。さらに、位置検出部21bは、並進ズレΔXの場合と同様に、面積値が最も小さくなる最小位置Y1を検出する。制御部21は、この最小位置Y1に基づいて、並進ズレΔYを補正するためのカメラ13の移動量と移動方向を決定し、この移動量及び移動方向に基づいて駆動装置23を制御して、カメラ13を移動させて並進ズレΔYを調整する。なお、この場合も、画像52の移動範囲は、カメラ13の並進ズレΔYとして想定される範囲よりも大きくされている。
【0028】
並進ズレΔX,ΔYの調整を行った後、回転ズレΔγの調整を行う。以下に、回転ズレΔγの調整について説明する。制御部21は、駆動装置23を制御して、カメラ13をγ方向に回転させながら、画像52を逐次取得する。算出部21aは、γ方向の各回転位置にて、2つの重なり合う調整用パターン51a,52aの外形の面積、つまり、図7にて斜線で示す部分の面積を算出し、各位置の面積値が制御部21の内蔵メモリに記憶される。なお、カメラ13の回転範囲は、カメラ13の回転ズレΔγとして想定される範囲よりも大きくされている。
【0029】
その後、位置検出部21bは、γ方向の各回転位置の面積値を比較することによって、面積値が最も小さくなる回転位置を検出する。つまり、つまり、図8に示すように、γ方向の回転位置を横軸、面積値を縦軸とすると、面積値が最小となる回転位置γ1を検出する。その後、制御部21は、この回転位置γ1に基づいて、駆動装置23を制御することによって、この回転位置γ1にカメラ13を固定して、回転ズレΔγを調整する。なお、カメラ12,13には視差があるため、調整パターン51a,52aを完全に一致することはないが、視差以外の機械的な位置ズレが調整される。
【0030】
また、上記調整処理の説明にて、カメラ12に対するカメラ13の位置ズレを調整する場合を例に説明したが、カメラ13に対するカメラ12の位置ズレも同様に調整できる。この場合も、全く同様の処理で行うことができるので詳しい説明を省略する。
【0031】
前述したように、調整用パターンを撮像して得られた2つの画像のうち一方の画像をリファレンス画像として、他方の対象画像をリファレンス画像に対して移動させながら、これらの重なり合う2つの調整用パターンの外形の面積を算出し、この面積値が最小となる位置にカメラを移動させるので、シティブロック距離等を算出して位置ズレを検出する場合と比較して、位置ズレの検出処理が簡略化される。このため、カメラの機械的な位置ズレの調整処理を迅速に行うことができる。
【0032】
なお、上記実施形態において、2つのカメラの各々に移動手段を設ける場合を例に説明したが、これに限るものではなく、一方のカメラに対する他方のカメラの位置ズレの調整のみを行う場合、他方のカメラにのみ移動手段を設ければ良い。
【0033】
また、上記実施形態において、並進ズレΔX,ΔYのみを調整する場合を例に説明したが、並進ズレΔZを同様に調整しても良い。また、回転ズレΔγのみを調整する場合を例に説明したが、回転ズレΔα,Δβを同様に調整しても良い。これらの場合、並進ズレΔZ、及び回転ズレΔα,Δβに対応するアクチュエータを駆動装置に設ければ良い。
【0034】
さらに、上記実施形態において、並進ズレを調整する際に、カメラを移動させずに、リファレンス画像に対して対象画像を移動させながら、各位置における面積値を算出して、この面積値が最小となる位置にカメラの位置を調整する場合を例に説明を行ったが、これに限るものではなく、回転ズレの調整時と同様に、カメラを移動させることによってリファレンス画像に対して対象画像を移動させても良い。また、逆に、回転ズレの調整時に、カメラを回転させずに、リファレンス画像に対して対象画像を回転させながら面積値に基づいて、カメラの回転ズレを調整するための回転位置を決定しても良い。
【0035】
また、上記実施形態において、並進ズレを調整した後、回転ズレを調整する場合を例に説明を行ったが、これに限るものではなく、回転ズレを調整した後、並進ズレを調整しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ステレオカメラの調整装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】ステレオカメラの機械的な位置ズレを示す斜視図である。
【図3】位置ズレの調整処理を説明するフローチャートである。
【図4】調整用画像、及びこの調整用パターンをステレオカメラで撮像した2つの画像を示す説明図である。
【図5】並進方向の画像の移動、及び調整用パターンの外形面積を示す説明図である。
【図6】X軸方向の位置と面積値との関係を示すグラフである。
【図7】γ方向の画像の回転、及び外形の面積を示す説明図である。
【図8】γ方向の回転位置と面積値との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0037】
10 ステレオカメラの調整装置
11 ステレオカメラ
12,13 カメラ
21 制御部
21a 算出部
21b 位置検出部
22,23 駆動装置
22a,23a 直進駆動部
22b,23b 回転駆動部
50 調整用画像
50a 調整用パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステレオカメラによって調整用パターンを撮像させ、この撮像によって得られた2つの画像に基づいて、前記ステレオカメラの取り付け位置のズレを調整するステレオカメラの調整装置において、
一方のカメラによって前記調整用パターンを撮像して得られた画像をリファレンス画像とし、他方のカメラによって前記調整用パターンを撮像して得られた対象画像を前記リファレンス画像に対して移動させながら、前記対照画像の位置毎に、2つの重なり合う前記調整用パターンの外形の面積を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された前記面積が最も小さくなる最小位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段によって検出された前記最小位置に、前記他方のカメラを移動させる移動手段とを備えていることを特徴とするステレオカメラの調整装置。
【請求項2】
前記移動手段によって、前記他方のカメラを前記一方のカメラに対して移動させながら、前記算出手段が前記他方のカメラから前記対象画像を逐次取得することによって、前記対象画像を前記リファレンス画像に対して移動させることを特徴とする請求項1記載のステレオカメラの調整装置。
【請求項3】
前記移動手段は、前記他方のカメラの光軸と垂直な平面内で互いに直交する2つの軸に沿って、前記他方のカメラを直進移動させる直進移動手段と、前記光軸を中心として前記他方のカメラを回転させる回転移動手段とを備えていることを特徴とする請求項1または2記載のステレオカメラの調整装置。
【請求項4】
前記直進移動手段によって、前記2つの軸と平行な並進ズレを調整した後、前記回転移動手段によって、前記光軸を中心とする回転方向の回転ズレを調整することを特徴とする請求項3記載のステレオカメラの調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−45983(P2008−45983A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221463(P2006−221463)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】