説明

ステージ装置

【課題】ワーク載置部を支持する石定盤を不要にしてステージに位置検出精度を確保する。
【解決手段】スライダ32A、32Bは、ガイド部14の左右側面及び上面に対向するように逆U字状に形成されており、ガイド部14A,14Bの左右側面に対向するヨーパッド34,35と、Z方向で対向するリフトパッド36とを有する。また、ガイド部の左右側面には、一対のリニアスケール22A、22Bが設けられている。第1のリニアスケールは、ガイド部14Aの左側面に対するYステージ18の移動位置を測定する。また、第2のリニアスケールは、第1のリニアスケールが配されたガイド部の左側面と平行な反対側の右側面に対するYステージの移動位置を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステージ装置に係り、特にワークの大型化に伴うスライダの間隔及び移動距離の増大に対応するように構成されたステージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ステージ装置においては、ステージの移動をガイドするステージガイド機構は、上記定盤上に固定された石材からなる一対のガイドレールを有すると共に、ガイドレールに沿って移動するステージのスライダには、ガイドレールのガイド面に対して数μ〜十数μの隙間を介して対向する静圧軸受けパッドが設けられており、静圧軸受けパッドからガイド面に吹き付けられる空気圧によってスライダが浮上した状態で移動するように構成されている。
【0003】
このような、ステージ装置では、ワークとして供給される基板の大型化に伴って装置全体が大型化しており、その分ステージの移動距離も延長されつつある。
【0004】
既存の機械加工技術では、例えば、全長が従前通り1m程度のガイドレールであれば、数μの加工精度で加工することが可能である。しかしながら、ステージの移動距離が延長されるのに伴って、ガイドレールの全長が2m以上に長くなると、精密に計測することが難しくなり、ガイドレールを全長に亘り真直度を計測する際の計測誤差も大きくなるので、要求される精度をクリアするように真直度を有するガイドレールの製造が難しくなっており、さらに熱膨張による寸法変化がガイドレールの歪みや捩れに影響している。
【0005】
一対のガイドレールには、ステージの移動位置を検出するためのリニアスケールが設けられており、ステージ側に取り付けられたセンサ(例えば、フォトインタラプタ)がリニアスケールに沿って移動しなら検出信号(パルス信号)を出力する。そして、リニアスケールのセンサからの信号をカウントすることで移動した距離を演算して位置を求めている。
【0006】
また、ステージの直進精度及びリニアスケールによる位置検出精度を保つには、ガイドレールの全長が長くなるほど一対のガイドレールの平行度をより高精度に管理する必要がある。
【0007】
このような、一対のガイドレールの真直度や平行度のばらつきによる影響を小さくするため、例えば、一対のガイドレールに沿って移動する一対のスライダと、一対のスライダ間を連結するビームとの間を板バネを介在させて連結することにより、ガイドレールにかかる負担を低減する構造のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−214280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1により開示されたステージ装置では、ガイドレールにかかる負担を低減することができるものの限界があり、例えば、ステージの移動距離が2m〜3mに延長される構成ものでは、上記板バネの弾性変形量だけではステージの静的及び動的安定性を確保することが難しい。
【0009】
さらに、ステージ装置の大型化により定盤の上面精度を確保できないときや、ガイドレールが定盤上ではなく別フレーム上に支持される構成になってしまうときには、一対のガイドレールの平行度を得ることが難しい。
【0010】
そのため、一対のガイドレールの平高度が高精度に管理できないと、ステージの移動位置を検出する一対のリニアスケールの検出精度が低下してステージの移動制御の精度低下を招くおそれがある。
【0011】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決したステージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
【0013】
本発明は、床面に固定された架台に支持されて平行に配された一対のガイド部と、該一対のガイド部の延在方向に移動するステージと、前記ステージを駆動する一対のリニアモータと、前記一対のガイド部のうち何れか一方の側面に対する前記ステージの移動位置を測定する第1のリニアスケールと、該第1のリニアスケールが配された前記ガイド部の側面と平行な反対側の側面に対する前記ステージの移動位置を測定する第2のリニアスケールと、前記第1のリニアスケールの測定値及び前記第2のリニアスケールの測定値に基づいて前記一対のリニアモータの制御値を演算する演算手段と、を備えており、上記課題を解決するものである。
【0014】
前記ステージは、前記一対のガイド部にガイドされる一対のスライダと、該一対のスライダ間に横架された横架部材とを有することが望ましい。
【0015】
前記第1、第2のリニアスケールが配された一方のガイド部を移動する一方のスライダは、前記ガイド部の両側面に対向する第1、第2のヨーパッドと当該ガイド部の上面に対向するリフトパッドを有し、前記他方のガイド部を移動する他方のスライダは、前記他方のガイド部の上面に対向するリフトパッドを有することが望ましい。
【0016】
前記第1、第2のヨーパッドは、夫々前記第1、第2のリニアスケールの近傍に配されたことが望ましい。
【0017】
前記一対のガイド部のうち前記第1、第2のリニアスケールが配されたガイド部を前記他方のガイド部よりも幅広とすることが望ましい。
【0018】
前記演算手段は、前記第1のリニアスケールの測定値と前記第2のリニアスケールの測定値との差に基づいて前記一対のスライダのヨー方向のずれ角を演算し、前記ヨー方向のずれ角がゼロとなるように前記一対のリニアモータの制御値を演算することが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、一対のガイド部のうち一方のガイド部の一側に第1のリニアスケールを設け、同じガイド部の他側に第2のリニアスケールを設けたため、一対のガイド部の平高度の精度が低下した場合でも一対のリニアスケールの検出精度が影響されることなく、ステージの移動位置を正確に検出することが可能になる。
【0020】
また、本発明によれば、一方のスライダは、ガイド部の両側面に対向する第1、第2のヨーパッドと当該ガイド部の上面に対向するリフトパッドを有し、他方のガイド部を移動する他方のスライダは、他方のガイド部の上面に対向するリフトパッドを有するため、一対のガイド部の平行度の精度が低下した場合でも一対のスライダが平行度のばらつきの影響を受けずに移動することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は本発明によるステージ装置の一実施例を示す斜視図である。図2は図1に示すステージ装置の正面図である。図3は図1に示すステージ装置の側面図である。図4は図1に示すステージ装置の平面図である。
【0023】
図1乃至図4に示されるように、ステージ装置10は、ガントリ部を移動させるガントリ移動型ステージであり、コンクリート製の床面に固定された架台12と、架台12上に支持された一対のガイド部14A,14Bと、一対のガイド部14A,14B間に横架されて両端を架台12上に支持された複数の梁16と、一対のガイド部14A,14B間の上方に横架されたYステージ18と、Yステージ18の両端部をY方向に駆動する一対のリニアモータ20A,20Bとを有する。また、左側のガイド部14Aの上部左右側面には、Yステージ18の位置を検出する一対のリニアスケール22A,22Bが設けられている。
【0024】
また、梁16には、平板状のワーク(被加工物)が載置される吸着板(図示せず)が載置される。一対のガイド部14A,14Bは、石材を加工したもの、あるいは鉄等の金属材を加工したものである。そのため、ワークの面積が大型化されてYステージ18の移動距離が延長された場合でも、ガイド部14A,14Bの全長を延長することにより対応することが可能であり、例えば、従来のようにワーク面積よりも大きい面積を有する石定盤を移動距離に応じて製作する場合よりも容易であり、且つ安価に製作することができる。
【0025】
一対のリニアモータ20A,20Bは、Yステージ18の移動位置を検出する一対のリニアスケール22A,22Bからの位置検出信号に基づいて並進駆動させるように制御される。
【0026】
図2に示されるように、Yステージ18は、ガイド部14A,14Bの上方をX方向に横架された横架部(ビーム)30と、横架部30の両端に結合されガイド部14A,14Bに沿って移動する一対のスライダ32A,32Bとを有する。
【0027】
ガイド部14A,14Bのうち左側のガイド部14Aは、スライダ32Aの移動をガイドしており、また、右側のガイド部14Bは、スライダ32Bの移動をガイドする。スライダ32A,32Bは、ガイド部14の左右側面及び上面に対向するように逆U字状に形成されており、ガイド部14A,14Bの左右側面に対向するヨーパッド(Y方向静圧空気軸受)34,35と、Z方向で対向するリフトパッド(Z方向静圧空気軸受)36とを有する。従って、スライダ32A,32Bは、X方向及びZ方向を規制されながらY方向にガイドされる。
【0028】
また、スライダ32Aの移動をガイドするガイド部14の上部左右側面には、片側のスライダ32Aの位置を検出する一対のリニアスケール22A,22Bが設けられている。第1のリニアスケール22Aは、ガイド部14Aの左側面に対するスライダ32Aの移動位置を測定する。また、第2のリニアスケール22Bは、第1のリニアスケール22Aが配されたガイド部14Aの左側面と平行な反対側の右側面に対するスライダ32Aの移動位置を測定する。
【0029】
第1、第2のヨーパッド34,35は、夫々第1、第2のリニアスケール22A,22Bの近傍に配されており、第1、第2のリニアスケール22A,22Bの検出精度のばらつきを抑制している。
【0030】
一対のリニアスケール22A,22Bは、例えば、光電方式ものが用いられており、発光素子と受光素子とを有するセンサと、一定のピッチのスリットを有するスケールと有する。本実施例では、センサがスライダ32Aの左右内壁に設けられ、スケールがガイド部14の左右側面に取り付けられている。
【0031】
また、横架部30には、ワーク載置台に吸着されたワーク(基板)に対して所定の加工を施す加工用治具(図示せず)などが装着される。そして、横架部30及びスライダ32A,32Bは、リフトパッド36からの空気圧によりガイド部14A,14Bに対して浮上して非接触で移動する。そのため、Yステージ18は、殆ど摩擦のない状態でY方向に移動することができる。
【0032】
リニアモータ20A,20Bは、コ字状に形成された固定子(永久磁石を有する)40と、固定子40に側方から挿入された可動子(コイルを有する)42とから構成されており、微小な隙間を介して非接触状態で可動子42をY方向に移動させるようにコイル印加電圧を制御される。可動子42は、スライダ32A,32Bの側面に結合されており、コイルに電圧が印加されることにより固定子40との間で発生した推力をスライダ32A,32Bに伝達し、スライダ32A,32BをY方向に駆動する。
【0033】
さらに、リニアモータ20A,20Bの固定子40は、リニアモータ支持部46により支持されている。従って、リニアモータ20A,20Bの駆動力によりYステージ18をY方向に移動させる際に発生する反力は、リニアモータ支持部46を介してコンクリート床面に伝達される。
【0034】
これにより、リニアモータ20A,20Bが受ける反力は、コンクリート床面で減衰される。よって、架台12に伝播されるリニアモータ20A,20Bの反力は、極めて小さくなっている。
【0035】
図5はリニアスケール22A,22Bによる位置検出を説明するための平面図である。図5に示されるように、リニアスケール22A,22Bは、Yステージ18の移動に伴うセンサとスケールとの相対変位により位置を検出する。また、リニアスケール22A,22Bは、夫々X方向の中間点Oから距離L,Lの位置に設けられ、ガイド部14AのX方向の幅寸法の離間距離L(=L−L)でスライダ32A,32Bの各移動位置を検出する。従って、リニアスケール22A,22Bによって検出された位置の差からYステージ18のヨー角を演算することが可能になり、スライダ32A,32Bの並進動作のY方向のずれを求めることができる。尚、リニアスケール22A,22Bは、上記光電方式以外の方式(例えば、レーザ方式、磁気方式等)のものでも良い。
【0036】
例えば、外側に配されたリニアスケール22Aの検出位置yは、y=L・sinθで求まり、内側に配されたリニアスケール22Bの検出位置yは、y=L・sinθで求まる。そして、スライダ32A,32BのY方向の実際のずれ量Δyは、Δy=y+(L/L)yとなる。
【0037】
従って、ステージ装置10の制御部は、Yステージ18のリニアモータ20A,20Bの駆動力による傾きをΔθがゼロとなるようにリニアモータ20A,20Bへ出力される制御値を演算してスライダ32A,32BのY方向のずれΔyがゼロとなるように制御する。
【0038】
このように、ステージ装置10では、石定盤を用いない構成としても片側のガイド部14Aの左右側面に設けられたリニアスケール22A,22BのY方向位置の検出精度が低下せず、例えガイド部14A,14Bの平行度の低下や反りがあっても一方のガイド部14Aの左右側面の平行度がかなりの高精度であるので、リニアスケール22A,22Bによる位置検出精度が維持される。
【0039】
ここで、変形例について説明する。図6は変形例1を示す正面図である。図6に示されるように、ガイド部14A,14Bのうち左側のガイド部14Aは、右ガイド部14BよりもX方向の幅寸法Lが上記実施例よりも大きく幅広になっている。そのため、リニアスケール22Aの検出位置yとリニアスケール22Bの検出位置yとの差が拡大して検出するように構成されている。
【0040】
そのため、X方向の中間点Oからの距離L,Lとの差が拡大されるため、Yステージ18のヨー角θを検出しやすくなる。
【0041】
図7は変形例2を示す正面図である。図7に示されるように、横架部30の右端に設けられた貫通孔30aには、スライダ32Bより起立した連結軸50が挿通されている。そのため、横架部30の右端とスライダ32Bとの間は、ヨー方向への旋回動作が可能となるように垂直な連結軸50を介して連結されている。
【0042】
さらに、右側のスライダ32Bには、ヨーパッド34,35が設けられておらず、Z方向で対向するリフトパッド36のみが設けられている。そのため、スライダ32Bは、ガイド部14BのZ方向の浮上位置のみが規制された状態でY方向にガイドされる。
【0043】
例えば、ガイド部14A,14Bの平行度のずれや、ガイド部14A,14Bの一方がX方向の反りを有する場合に、あるいは一対のスライダ32A,32Bの並進動作にずれが生じた場合に、スライダ32Bが連結軸50を中心としてZ軸周りに回動して移動方向をY方向に修正することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
上記実施例では、液晶基板などからなるワークを加工するステージ装置を例に挙げて説明したが、ステージ装置の用途としては、これに限らず、他のワークを加工また検査を行なう場合にも適用できるのは勿論である。
【0045】
また、上記実施例のステージ装置は、加工用治具が装着されたYステージを移動させる構成を用いて説明したが、これに限らず、例えば、ワーク載置台が搭載されたステージを移動させる構成のものにも本発明を適用できるのは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明によるステージ装置の一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1に示すステージ装置の正面図である。
【図3】図1に示すステージ装置の側面図である。
【図4】図1に示すステージ装置の平面図である。
【図5】リニアスケール22A,22Bによる位置検出を説明するための平面図である。
【図6】変形例1を示す正面図である。
【図7】変形例2を示す正面図である。
【符号の説明】
【0047】
10 ステージ装置
12 架台
14A,14B ガイド部
18 Yステージ
20A,20B リニアモータ
22A,22B リニアスケール
32A,32B スライダ
34,35 ヨーパッド
36 リフトパッド
46 リニアモータ支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に固定された架台に支持されて平行に配された一対のガイド部と、
該一対のガイド部の延在方向に移動するステージと、
前記ステージを駆動する一対のリニアモータと、
前記一対のガイド部のうち何れか一方の側面に対する前記ステージの移動位置を測定する第1のリニアスケールと、
該第1のリニアスケールが配された前記ガイド部の側面と平行な反対側の側面に対する前記ステージの移動位置を測定する第2のリニアスケールと、
前記第1のリニアスケールの測定値及び前記第2のリニアスケールの測定値に基づいて前記一対のリニアモータの制御値を演算する演算手段と、
を備えたことを特徴とするステージ装置。
【請求項2】
前記ステージは、前記一対のガイド部にガイドされる一対のスライダと、
該一対のスライダ間に横架された横架部材と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
【請求項3】
前記第1、第2のリニアスケールが配された一方のガイド部を移動する一方のスライダは、前記ガイド部の両側面に対向する第1、第2のヨーパッドと当該ガイド部の上面に対向するリフトパッドを有し、
前記他方のガイド部を移動する他方のスライダは、前記他方のガイド部の上面に対向するリフトパッドを有することを特徴とする請求項2に記載のステージ装置。
【請求項4】
前記第1、第2のヨーパッドは、夫々前記第1、第2のリニアスケールの近傍に配されたことを特徴とする請求項3に記載のステージ装置。
【請求項5】
前記一対のガイド部のうち前記第1、第2のリニアスケールが配されたガイド部を前記他方のガイド部よりも幅広としたことを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
【請求項6】
前記演算手段は、前記第1のリニアスケールの測定値と前記第2のリニアスケールの測定値との差に基づいて前記一対のスライダのヨー方向のずれ角を演算し、前記ヨー方向のずれ角がゼロとなるように前記一対のリニアモータの制御値を演算することを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−331086(P2007−331086A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169421(P2006−169421)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】