説明

スピーカユニット

【課題】ボイスコイルの振動をロスなくカーボン振動板へ伝えること。
【解決手段】炭素質音響振動板25を備えたスピーカ本体1、ディジタル音源10から供給される多値ビットのディジタル音声信号を所要ビットのディジタル信号に変換するデルタシグマ変調器11及び温度計コード変換部12と、ディジタル信号のビット数に対応して複数設けられ前記炭素質音響振動板25をそれぞれ振動させる複数のボイスコイル24と、ディジタル信号に基づいて各ボイスコイル24を個別に駆動するドライバ回路13とを具備したディジタルスピーカユニットであり、ボイスコイル24は導電性ワイヤーを筒状に巻回してなり一方の開口端部がカーボン振動板25に直接当接された状態で固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声再生用のスピーカユニットに関し、特にディジタルの音声信号により直接駆動されるスピーカユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディジタルの音声信号を、アナログ信号に変換せずに、直接スピーカに供給して再生を行うディジタルスピーカが開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のディジタルスピーカは、ボイスコイルボビンに巻回された複数のボイスコイルのそれぞれを、ディジタル信号の各ビットに対応する駆動力が発生するように重み付けし、各ボイスコイルに印加する一定電圧の極性をディジタル信号の各2ビットの2値に応じて切り替えることにより、ボイスコイルに流れる電流の方向が2値に応じて設定されるようにしたものである。この構成により、ディジタル信号の量子化に対応した比率で駆動力を発生させることができる。
【0003】
また、ディジタル信号から高い品質のアナログ信号を生成するディジタルアナログ変換装置をディジタルスピーカの駆動装置に適用し、再生音声品質の改善、回路規模の縮小を実現したスピーカユニットが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のスピーカユニットは、デルタシグマ変調器のnビット出力をフォーマッターにより温度計コードに変換し、後置フィルタでミスマッチシェーピング処理を行い、その出力をバッファ回路に入力し、バッファ回路から出力されるディジタル信号でコイルを制御して磁場を加算することが記載されている(段落0063、0078参照)。
【0004】
一方、各種音響機器や映像機器、携帯電話等のモバイル機器等に使用されているスピーカの振動板には、広範囲な周波数帯域、特に高音域において明瞭な音を忠実に再生できる性質が要求される。そのため振動板の材質には、振動板に充分な剛性を付与すべく弾性率が高いことと、振動板を軽量化すべく密度が低いこと、という一見相反する性質が求められる。特に、近年注目されているディジタルスピーカ用の振動板には、振動応答性への要請から、これらの性質が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−326291号公報
【特許文献2】国際公開第2007/135928号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の目的は、低密度で軽量でありながら充分な剛性を有する振動板をディジタル音声信号で直接駆動して、良好な音響特性を実現するスピーカユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスピーカユニットは、炭素質音響振動板と、導電性ワイヤーを筒状に巻回してなり一方の開口端部が前記炭素質音響振動板に直接当接された状態で固定されたボイスコイルと、前記筒状のボイスコイルを径方向に貫く磁束を発生させる磁束発生手段と、前記ボイスコイルに音声信号に対応した駆動電流を供給する駆動手段と、を具備したことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、ボイスコイルの一端部が炭素質音響振動板に直接当接する構造であるので、音声信号に対応してボイスコイルに励起された振動がロスなく炭素質音響振動板に伝えられる。ボイスコイルの振動を高効率で炭素質音響振動板に伝えられることから、音声信号を忠実に再生した音を出力可能なスピーカを実現できる。
【0009】
また本発明は、上記スピーカユニットにおいて、前記ボイスコイルは、ディジタル信号のビット数に対応した複数個の単位ボイスコイルで構成され、前記複数個の単位ボイスコイルの径寸法を異ならせて、大径側の単位ボイスコイルに小径側の単位ボイスコイルを順次挿入してなり、前記駆動手段は、前記各単位ボイスコイルをディジタル信号の各ビット値に基づいて個別に駆動することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、炭素質音響振動板を備えたスピーカ本体をディジタル信号で直接駆動するので、低密度で軽量でありながら充分な剛性を有する炭素質音響振動板の特性を利用して良好な音響特性を実現できる。
【0011】
また本発明は、上記スピーカユニットにおいて、前記各単位ボイスコイルは、断面長円状に加工された導電性ワイヤーを、コイル径方向と直交する方向に隣接する隣接ワイヤー間で当該ワイヤー断面の長軸方向が密に接するように筒状に巻回してなることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、複数の単位ボイスコイルを径方向に多層化した場合であってもボイスコイル全体でのコイル径方向のコイル厚さ(1層又は多層)を抑制することができ、ボイスコイルに磁束を通過させるためにボイスコイルを配置するギャップを狭くでき、磁気損失を低減できる。
【0013】
また本発明は、上記スピーカユニットにおいて、前記各単位ボイスコイルは、断面長円状に加工された導電性ワイヤーを、コイル径方向と直交する方向に隣接する隣接ワイヤー間で当該ワイヤー断面の短軸方向が密に接するように筒状に巻回してなることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、単位ボイスコイルを構成する導電性ワイヤーは隣接ワイヤー間で当該ワイヤー断面の短軸方向が密に接するので、ボイスコイルに励起された振動を炭素質音響振動板へ伝える際のロスがさらに抑制される。
【0015】
また本発明は、上記スピーカユニットにおいて、前記炭素質音響振動板は、前記ボイスコイルの開口端部が固定された第1の主面と、該第1の主面とは反対側の第2の主面とを有し、前記ボイスコイルは前記開口端部の最外周位置が振動板外周縁部よりも内側にずれた位置に配置され、前記第2の主面であって前記ボイスコイルの開口端部の固定位置とは重ならない振動板外周縁部に当該炭素質音響振動板を振動自在に支持する支持部材の一端部が固定されたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ボイスコイル固定位置とは重ならない振動板外周縁部に当該炭素質音響振動板を振動自在に支持する支持部材の一端部が固定されるので、ボイスコイルが炭素質音響振動板に与える振動を、支持部材が直接吸収して炭素質音響振動板が撓みづらくなる不具合を回避でき、炭素質音響振動板の振動特性の劣化を最小限に抑えることができる。
【0017】
また本発明は、上記スピーカユニットにおいて、前記磁束発生手段は、前記炭素質音響振動板に固定された前記ボイスコイルの外周面と対向する端部を有するヨークと、前記前記ボイスコイルの他方の開口端部からコイル内部に挿入され前記ヨークの対向する端部との間にギャップを形成するセンターピースと、前記センターピースと前記ヨークとの間に設けられ前記センターピース側を一方の磁極とし前記ヨーク側を他方の磁極とする永久磁石とを備え、前記炭素質音響振動板は、前記ボイスコイルの開口端部が固定された第1の主面と、該第1の主面とは反対側の第2の主面と、前記第1の主面における前記ボイスコイルの開口端部固定箇所に形成された凸部とを有し、前記凸部は前記ボイスコイルの中心部が前記ヨークの端部と前記センターピースの間のギャップ位置となる高さを有することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、ボイスコイルの中心部がギャップ位置に来るように配置することで、ボイスコイルを横切る磁束数が最大になり、ボイスコイルに電流を流すことで最大の応力が生じる。すなわち、最も効率よく炭素質音響振動板を振動させることができる。
【0019】
上記スピーカユニットにおいて、前記各単位ボイスコイルに接続される引き出し線の引き出し位置を、前記炭素質音響振動板外周に均等に分散することが望ましい。単位ボイスコイルから引き出される引き出し線のテンションが炭素質音響振動板の振動特性に大きな影響を与えるところ、引き出し線の引き出し位置を、前記炭素質音響振動板外周に均等に分散することで、炭素質音響振動板の振動特性を劣化させない引き出し構造を実現できる。
【0020】
また本発明のスピーカユニットは、炭素質音響振動板と、前記炭素質音響振動板を保持する可撓性のフィルム体と、導電性ワイヤーを筒状に巻回してなり一方の開口端部が前記可撓性のフィルム体に直接当接された状態で固定されたボイスコイルと、前記筒状のボイスコイルを径方向に貫く磁束を発生させる磁束発生手段と、前記ボイスコイルに音声信号に対応した駆動電流を供給する駆動手段とを具備したことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、ボイスコイルの一端部が炭素質音響振動板を保持するフィルム体に直接当接する構造であるので、音声信号に対応してボイスコイルに励起された振動がロスなくフィルム体及び炭素質音響振動板に伝えられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ボイスコイルの振動をロスなく炭素質音響振動板に伝えることができ、良好な音響特性を実現するスピーカユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態に係るディジタルスピーカユニットにおけるスピーカ本体の断面構造を示す図
【図2】コイル用ワイヤーをドラムから繰り出してローラ間に通す様子を示す図
【図3】ローラ通過前後におけるコイル用ワイヤーは断面形状を示す図
【図4】押しつぶしたコイル用ワイヤーを巻き取り冶具に巻き取る様子を示す図
【図5】押しつぶしたコイル用ワイヤーを巻き取った巻き取り冶具の一部の断面図
【図6】ボイスコイルの引き出し線の引き出し位置を示す図
【図7】ディジタルスピーカユニットにおけるスピーカ本体の駆動系を示す図
【図8】上記一実施の形態においてドライバ回路とボイスコイルとの接続関係を示す図
【図9】上記一実施の形態におけるデルタシグマ変調器の回路構成図
【図10】カーボン振動板に凸部を形成したスピーカ本体の構成図
【図11】カーボン振動板に凸部およびリブ部を形成したスピーカ本体の構成図
【図12】ボイスコイルの変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施の形態は、スピーカ本体の振動板として炭素質音響振動板を備え、ディジタル音源から供給されるディジタル信号でボイスコイルを直接駆動して炭素質音響振動板を振動させるディジタルスピーカユニットである。なお、本発明はディジタルスピーカユニットに好適であるが、アナログ音声信号による駆動方式にも適用可能である。
【0025】
図1は本発明の一実施の形態に係るディジタルスピーカユニットの構成を示す模式図であり、スピーカ本体の断面構造を示している。
【0026】
スピーカ本体1は、鉄片で構成され断面U形状をなすヨーク21、センターピース22、永久磁石23、筒状をなすボイスコイル24及びカーボン振動板25を備えている。ヨーク21は、ボイスコイル24の外径よりも僅かに大きな内径を有する有底筒体をなしている。ヨーク21の底面外周縁部から立ち上がる壁部21a(21b)は、ボイスコイル24の外周面と対向する。ボイスコイル24の内部空間にセンターピース22が配置されている。
【0027】
センターピース22の下面とヨーク21側の対向面(ヨーク上面)との間には永久磁石23が設置されている。永久磁石23は、センターピース22の下面と接する上面が一方の磁極(例えばN極)に着磁され、ヨーク21の上面と接する下面が他方の磁極(例えばS極)に着磁されている。この永久磁石23とヨーク21とセンターピース22とによって磁気回路を構成している。
【0028】
ヨーク21及びセンターピース22の平面視形状については、特に限定されないが、ヨーク21が有底円筒状又は四角筒状をなす場合であれば、センターピース22は同形状(相似形状)の円形又は四角形をなし、かつヨーク端部21a、21bとセンターピース22外周部との間にギャップが形成される程度の寸法に設定される。
【0029】
ヨーク壁部21a(21b)とセンターピース22外周縁部との間に形成されたギャップにボイスコイル24が配置されている。ボイスコイル24は、複数の単位ボイスコイル24-1、24-2、24-3を径方向に重ねて構成されている。複数の単位ボイスコイル24-1、24-2、24-3の数Nは後述する温度計コード変換部の出力ビット数Nに対応させている。ボイスコイル24は、少なくともボイスコイル24の一部がヨーク壁部21a(21b)とセンターピース22外周縁部との間のギャップにかかるように配置される。図1にはボイスコイル24の下部がギャップにかかるように配置した例が示されている。単位ボイスコイル24-1、24-2、24-3は導電性ワイヤーを断面長円状につぶし加工したワイヤーを筒状に巻回して構成されている。
【0030】
ヨーク21及びセンターピース22の上面から上方へ所定距離L1だけ離れた位置に炭素質音響振動板としてカーボン振動板25が配置されている。カーボン振動板25は、ボイスコイル24の外径寸法よりも大きな寸法を有している。カーボン振動板25の下面に対してボイスコイル24の一方の開口端部が直接当接した状態で接着固定されている。すなわち、ボイスコイル24の一端部がカーボン振動板25側に固定され、ボイスコイル24の他方の開口端部が自由端となっている。また、ボイスコイル24は、カーボン振動板25の外周縁部から所定距離L2だけ内側に入り込んだ位置に、径方向の最外周位置が配置されるように取り付けられている。
【0031】
ヨーク21、ボイスコイル24及びカーボン振動板25の外周を囲むようにフレーム26が配置されている。フレーム26は、剛性の高い支持部27を介してヨーク21を保持し、弾性を有するエッジ28を介してカーボン振動板25を振動可能に支持している。エッジ28は、カーボン振動板25を振動自在に支持する機能と、カーボン振動板25の振動が継続するのを抑制するダンパー機能とを有することが望ましい。
【0032】
上記した通り、カーボン振動板25の外周縁部から所定距離L2だけ内側に入り込んだ位置にボイスコイル24の径方向の最外周部が位置している。本実施の形態は、ボイスコイル24の一方の開口端部が直接当接していない領域となるカーボン振動板25の外周縁部から距離L2までの範囲に、エッジ28の振動板側端部を固定する取付け部29を確保している。すなわち、エッジ28は、振動板側端部28aが取付け部29に固定され、フレーム側端部がフレーム26の一部に固定されている。
【0033】
ここで、ボイスコイル24の製造工程について図2〜図5を参照して説明する。
図2に示すように、ドラム41に巻回されたコイル用ワイヤー42を繰り出し、一対のローラ43a,43b間に通して押しつぶしている。その結果、図3に示すように、ローラ通過後のコイル用ワイヤー42aは断面形状が真円から長円形状に変形する。
【0034】
次に、図4に示すように、断面形状が長円形状に変形したコイル用ワイヤー42aを、巻き冶具44を利用して、ボイスコイル24の筒形状となるように巻きつける。図1に示す3チャンネル(24-1、24-2、24-3)構造の場合、最も内側に位置する単位ボイスコイル24-3を最初に巻き冶具44に巻回する。巻き冶具44の巻付け部44aはボイスコイル24の径方向の断面形状と同一形状とすることが望ましい。図4では模式的に長円形を例示しているが、円形状、楕円形状、四角形状等の断面形状を有する巻付け部44aを用いることで任意の形状とすることができる。巻幅は差し込み方式の巻付け部44aを交換することで調整することができる。
【0035】
図5は巻き冶具44を用いて巻回している途中の状態を示す断面図である。長円状に押しつぶされたコイル用ワイヤー42aのつぶし面を巻付け部44aの巻き付け面側にして巻回し、かつ回転軸方向に隣接するコイル用ワイヤー42a間で隙間が空かないように密にして巻回している。これにより、コイル径方向と直交する方向に隣接する隣接ワイヤー間で当該ワイヤー断面の長軸方向が密に接するように筒状に巻回された単位ボイスコイルを得ることができる。
【0036】
巻き冶具44の巻付け部44a外周面に2層分だけ巻回したところで、最も内側に位置する単位ボイスコイル24-3の巻き付け作業を終了する。単位ボイスコイル24-3を構成するコイル用ワイヤー42aの両端部を引き出して、後述するドライバ回路に接続可能にする。コイル用ワイヤー42aの引き出し位置については後述する。
【0037】
次に、最も内側に位置する単位ボイスコイル24-3の外周面に対して、中間に位置する単位ボイスコイル24-2を構成するコイル用ワイヤー42aを、単位ボイスコイル24-3と同様に巻回する。このとき、コイル用ワイヤー42aが断面長円状に押しつぶされており、押しつぶされた平面同士を接触させて積層しているので、ワイヤーが崩れることなく積層することができる。中間に位置する単位ボイスコイル24-2の巻回作業が終了したら、同様にして最も外側に位置する単位ボイスコイル24-1の巻き付け作業を実施する。
【0038】
上記したように、内側に位置する単位ボイスコイルの外周に外側に位置する単位ボイスコイルのコイル用ワイヤー42aを巻回することにより、大径側の単位ボイスコイルに小径側の単位ボイスコイルを順次挿入した構造となる。
【0039】
作製されたボイスコイル24に発生する振動を効率良く(ロス無く)、カーボン振動板25へ伝えるためには、径方向と直交する方向にコイル用ワイヤーを密に配置すると共に、単位ボイスコイルが一体化していることが望ましい。そこで、単位ボイスコイルを一体化するため、コイル用ワイヤーを巻回した後、例えば硬化性樹脂でコイル全体を固めることが望ましい。
【0040】
このようにして、複数チャンネル分の単位ボイスコイル24-1、24-2、24-3が一体化されたボイスコイル24が得られる。このボイスコイル24の一方の開口端部をカーボン振動板25の下面に当接させた状態で接着固定する。
【0041】
なお、単位ボイスコイルを単体で振動させる場合は、個々の単位ボイスコイルの内径に合わせた巻付け部44aを有する巻き冶具44をそれぞれ準備し、内径の異なる個々の単位ボイスコイルを1個ずつ作製する。単位ボイスコイル毎に硬化性樹脂で固める。その後、外径の大きい単位ボイスコイルの内側に、次に内径の小さい単位ボイスコイルを挿入して、内径の異なる複数の単位ボイスコイルを組み合わせて1つのボイスコイル24を作成する。
【0042】
また、携帯電話機等に搭載される小型のスピーカユニットの場合、単位ボイスコイル24-1、24-2、24-3から引き出される引き出し線のテンションがカーボン振動板25の振動特性に大きな影響を与える。カーボン振動板25が小型・軽量化するのにしたがって、引き出し線が振動特性に与える影響は大きくなる。一方、チャンネル数(単位ボイスコイル数N)を1つ増加する毎に引き出し線が2本追加されるので、チャンネル数の増加に応じて引き出し線が増加する。このため、単位ボイスコイル24-1、24-2、24-3から引き出される引き出し線については、カーボン振動板25の振動特性を劣化させない引き出し構造が要求される。
【0043】
図6は6個の単位ボイスコイルを備えたボイスコイル24における引き出し線配置を示す模式的な斜視図である。6つの単位ボイスコイル24-1〜24-6からそれぞれ2本の引き出し線が引き出されている。同図に示すように、長方形のカーボン振動板25の場合、各長辺からは2つの単位ボイスコイル(24-1、24-2)(24-4、24-5)からそれぞれ2本で合計4本の引き出し線が引き出され、各短辺からは1つの単位ボイスコイル24-3、24-6からそれぞれ2本の引き出し線が引き出されている。このように、カーボン振動板25からの引き出し線の引き出し位置を振動板全外周に対して均等に分散させることが望ましい。
【0044】
次に、ボイスコイル24を駆動するための駆動系の構成について説明する。
図7は本実施の形態に係るディジタルスピーカユニットにおけるスピーカ駆動系のブロック図である。図7においてディジタル音源10は、CDプレーや、DVDプレーヤ、その他のディジタル形式の音声再生デバイスで構成することができ、ディジタルスピーカユニットに対してディジタル音声信号を出力する。
【0045】
本実施の形態のディジタルスピーカユニットは、マルチビットのデルタシグマ変調器11と、デルタシグマ変調器11の出力するディジタル信号を重みの無いNビットの温度計コードに変換する温度計コード変換部12と、温度計コードに基づいて駆動制御するドライバ回路13と、上記したスピーカ本体1とを主な構成要素としている。
【0046】
図8に示すように、N個(図1では3個)の単位ボイスコイル(24−1〜24−N)は、それぞれの引き出し線が各々対応するドライバ回路13(1)〜(N)に接続されており、各々対応するドライバ回路13(1)〜(N)から独立して駆動電流が流される。
【0047】
上記スピーカ本体1では、永久磁石23とヨーク21とセンターピース22とによって構成された磁気回路中に置かれたボイスコイル24に電流を流し、ボイスコイル24に対して磁力線と直交方向に生じる力を利用してカーボン振動板25を振動させて音波を発生させる。ボイスコイル24には、温度計コード変換部12から出力されるディジタル信号の各ビット値に応じて電流が流される。
【0048】
図9はデルタシグマ変調器11の回路構成図である。なお、同図に示す回路構成は一例であり、さらに高次のデルタシグマ変調器を用いることもできる。ここでは、多値入力ビットで表現されたディジタル音声信号を16ビットとし、デルタシグマ変調器11からのnビット出力を4ビットとする。
【0049】
デルタシグマ変調器11は、基本的には積分器31、量子化器32、遅延器33、およびフィードバックループを備えて構成されている。τはフィードバックゲインである。デルタシグマ変調器11に入力された多値ビット(例えば16ビット)は積分器31を通り量子化器32でnビット(例えば9値=4ビット)に変換される。量子化の際に発生する量子化誤差は遅延器33を通るフィードバックループで入力端へ戻され差分をとることで、量子化誤差だけが積分される。入力をX、出力をY、量子化誤差をQとすると、関係式はY=X+(1−Z−1)Qで表わされる。量子化誤差Qに乗算されている伝達関数(1−Z−1)は周波数特性を有しており、直流付近で小さくなるので、この特性がノイズシェーピング効果となる。
【0050】
デルタシグマ変調器11では、量子化器32によって多値ビットのディジタル音声信号を出力ビット数nに対応した数に量子化している。量子化器32によって生じる量子化誤差はオーバーサンプリング手法を適用することで解消できる。オーバーサンプリングとは、信号帯域よりも十分に高い周波数でサンプリングを行う手法の一つのことである。また、デルタシグマ変調の場合、ノイズシェーピング効果により原信号精度を改善できる。すなわち、量子化器を使って量子化を行うと、全周波数に均等に量子化ノイズが分布するが、デルタシグマ変調によって、不要なノイズ成分は、オーバーサンプリングした高い周波数領域にシフトすることで、原信号付近のノイズが押さえられ、原信号の精度を改善できる効果がある。
【0051】
温度計コード変換部12は、デルタシグマ変調器11のnビット出力を、ボイスコイル数に対応したNビットの温度計コードに変換する。たとえば、8ビットの温度計コードに変換する場合であれば、デルタシグマ変調器出力(0010)、(0101)、(1000)を、それぞれ温度計コード(00000011)、(00011111)、(11111111)へ変換する。デルタシグマ変調器11から出力される2進数がビット毎に重みのある信号であるため、そのままの信号を使用したのではディジタル直接駆動が困難であるが、各ビットに重みの無い温度計コードに変換することで、スピーカ本体1を直接ディジタル信号で駆動できる。
【0052】
ドライバ回路13は、温度計コード変換部12から出力される温度計コードに基づいて個々の単位ボイスコイル24−1〜24−Nを独立に駆動する。具体的には、各単位ボイスコイル24−1〜24−Nと温度計コードの各ビット値とが1対1で対応しており、温度計コード変換部12から温度計コードのビット毎に、1ビット信号(ON/OFF)が出力される。温度計コード「1」の単位ボイスコイルには電流を流し、温度計コード「0」の単位ボイスコイルには電流が流れないように駆動する。単位ボイスコイルに流れる電流に比例して当該単位ボイスコイルに駆動力が働き、ボイスコイル24に結合したカーボン振動板25が振動して、音声が生成される。
【0053】
本実施の形態のスピーカユニットは、図1に示すように、ボイスコイル24の一端部がカーボン振動板25に直接当接する構造であるので、ディジタル音声信号に対応してボイスコイル24に励起された振動がロスなくカーボン振動板25に伝えられる。すなわち、ディジタル駆動可能なボイスコイル24で励起した振動を高効率でカーボン振動板25に伝えられることから、ディジタル音声信号を忠実に再生した音を出力可能なディジタルスピーカを実現できる。
【0054】
また、ボイスコイル24の一端部がカーボン振動板25に直接当接しているので、ボイスコイル24に発生した熱(ジュール熱)がカーボン振動板25に伝わり効率よく放熱される。すなわち、本実施の形態によれば、熱伝導特性に優れたカーボン振動板25をボイスコイル24の放熱板として作用させることができる。その結果、ボイスコイル24の発熱による特性劣化を防止できると共に、放熱対策を簡素化することによる構成の簡素化を図ることができる。
【0055】
カーボン振動板25がダンパー機能を有するエッジ28を介してフレーム26に支持されているので、ディジタルデータに対応してカーボン振動板25が振動するが、後続の音声データによる振動に悪影響がでないように、当該ディジタルデータに対応した振動は速やかにエッジ28で吸収される。
【0056】
しかも、ダンパー機能を有するエッジ28の振動板側端部はボイスコイル24の当接位置から外側に外れた取付け部29に固定されている。このため、ボイスコイル24がカーボン振動板25に与える振動を、ダンパー機能を有するエッジ28が直接吸収してカーボン振動板25が撓みづらくなるという不具合を回避でき、カーボン振動板25の振動特性の劣化を最小限に抑えることができる。
【0057】
また、ボイスコイル24はコイル用ワイヤー42を断面長円状に押しつぶして平面側を重ねて多重に巻回しているので、複数の単位ボイスコイル24-1〜24-3を多層に重ねた際の、ボイスコイル全体での内径と外径の差を小さい寸法に抑えることができる。ヨーク端部21a,21bとセンターピース22外周縁部との間に形成されるギャップは小さい方が磁気損失を小さく抑えられるところ、当該ギャップに配置されるボイスコイル24の内径と外径の差を小さい寸法にできるので、それに応じてギャップも小さくでき磁気損失を抑制した効率の良い駆動が可能になる。
【0058】
次に、スピーカ本体1の変形例について説明する。
図10はカーボン振動板にボイスコイルの高さ位置を調整する凸部を形成した例を示している。駆動系の回路構成は上述した実施の形態と同じ構成を適用することができる。
【0059】
ヨーク端部21a,21bとセンターピース22外周縁部との間に形成されるギャップに少なくともボイスコイル24の一部が介在していれば、ある程度の磁束がボイスコイル24を横切ることができる。特に、ボイスコイル24の中心部がギャップ位置に来るように配置することで、ボイスコイル24を横切る磁束数が最大になり、ボイスコイル24に電流を流すことで最大の応力が生じる。すなわち、図10に示すように、ボイスコイル24の中心部がギャップ位置に来る配置が、最も効率よくカーボン振動板51を振動させることができる。
【0060】
ここで、カーボン振動板51(下面)とセンターピース22(上面)との間はカーボン振動板51の振動時のストロークを確保するために、最大ストロークに多少の余裕をもった寸法に設定される。そのため、カーボン振動板51(下面)とセンターピース22(上面)との間隔を調整してボイスコイル24とギャップ位置との位置関係を調整するのには限界がある。一方、ボイスコイル24の長さを、振動板とは反対側(図10中の下方側)に延長すれば、ボイスコイル24の中心部をギャップ位置に配置することができる。しかし、ボイスコイル24の長さを拡張すると、ワイヤー距離が伸びるので重量が増大する。上記した通り、ボイスコイル24はカーボン振動板51が直接保持するので、ボイスコイル24の重量が増大する方向の対策は望ましくない。
【0061】
そこで、カーボン振動板51におけるボイスコイル取付け部を突出させた凸部52を形成し、当該凸部52にボイスコイル24の一端部を接着固定する構造とした。凸部52の高さD1は、ボイスコイル24の中心部がギャップ位置となる寸法に調整される。図10ではボイスコイル24の一端部から距離D2の位置が中心部となっている。
【0062】
カーボン振動板51に凸部52を形成したことにより凸部52の分だけ重量が増加する。そこで、凸部52を空洞状にくり抜いて重量増加を抑えることができる。または、凸部52以外の部分のカーボン振動板51の厚さd1を薄くして総重量の増加を抑えても良い。
【0063】
このような変形例によれば、カーボン振動板51におけるボイスコイル取付け部を突出させた凸部52を形成し、ボイスコイル24の中心部がギャップ位置に来るように配置したので、ボイスコイル24を通る磁束数を最大化でき、最も効率よくカーボン振動板51を振動させることができる。
【0064】
なお、図11に示すように、カーボン振動板51に凸部52を形成すると共に、カーボン振動板51の板厚d1を薄くする。これにより、カーボン振動板51の撓み強度が低下するので、強度を上げるために振動板表面に補強用のリブ部53を形成しても良い。同図には、四角形のカーボン振動板51を例示しているが、本発明はその他の形状にも適用可能である。
【0065】
図12(a)(b)はボイスコイルを構成するワイヤーの積層方向を変えたスピーカ本体の変形例を示す図である。同図(a)は図1に示すスピーカ本体1と基本構造が同じであり、同図(b)は図10に示すスピーカ本体1と基本構造が同じである。
【0066】
図12(a)(b)に示すスピーカ本体は、ボイスコイル24を構成している各単位ボイスコイル60-1,60-2,60-3が長円状に押しつぶしたコイル用ワイヤーの互いの平面を重ねるように積層して構成されている。個々の単位ボイスコイルは、押しつぶしたコイル用ワイヤーの平面部を重ねるように巻き冶具44の巻付け部44aに巻回して作製される。これにより、個々の単位ボイスコイルは、コイル用ワイヤーが密に接触して配列されるので、ボイスコイル24に励起された振動をカーボン振動板51へ伝える際のロスがさらに抑制される。
【0067】
なお、図12(a)(b)に示すように、各単位ボイスコイルは径方向への重ね数を減らす(1回)ことで、ヨーク端部21a,21bとセンターピース22外周部との間のギャップが大きくなるのを防止できる。
【0068】
次に、本実施の形態で用いられるカーボン振動板25の構造及び製造方法について詳しく説明する。
本発明のディジタルスピーカユニットでは、アモルファス炭素と該アモルファス炭素中に均一に分散した炭素粉末とを含み、気孔率40%以上の多孔体を有する炭素質音響振動板をカーボン振動板25として用いることができる。このカーボン振動板25は、前記多孔体の板を低密度層として具備し、アモルファス炭素を含み、前記低密度層よりも厚みが薄く、前記低密度層よりも密度が高い高密度層をさらに具備することが好適である。
【0069】
ここで、層の数は、高密度層と低密度層の2層構造、低密度層の両面を高密度層で挾む3層構造、逆に、高密度層の両面を低密度層で挾む3層構造、さらに高密度層だけの1層構造等、様々な構成が可能である。
【0070】
前記多孔体の気孔の形状が球状であり、その数平均気孔径が5μ以上150μm以下であることが望ましい。前記炭素粉末は数平均径が0.2μm以下であり、平均長さが20μm以下であるカーボンナノ繊維を含むことが望ましい。前記高密度層は、前記アモルファス炭素中に均一に分散した黒鉛を含む場合がある。この炭素質音響振動板は、乾燥後、温度25℃、湿度60%の環境に250時間放置したときの質量の増加が5%以下であることが望ましい。
【0071】
また、炭素含有樹脂に炭素粉末を均一に混合し、混合物をフィルム状に成形し加熱して炭素前駆体とし、炭素前駆体を不活性雰囲気中で炭素化する方法を用いて炭素質音響振動板の製造をすることができる。かかる炭素質音響振動板の製造方法において、前記炭素前駆体化の温度においては固体または液体であり、前記炭素化の温度において消失して気孔を残す穴開け材の粒子を前記混合物に予め混合することによって、前記炭素化後においてアモルファス炭素と炭素粉末とを含む多孔体とする。
【0072】
前記炭素化の前において、前記炭素前駆体の板の少なくとも一方の面に炭素含有樹脂の層を形成することによって、前記炭素化後において、前記多孔体からなる低密度層と低密度層よりも密度が高い高密度層を含む炭素質音響振動板とすることをさらに含むことが好適である。なお、高密度層の両面を低密度層で挟む構造は、例えば、穴開け材を含まない炭素前駆体の両面に穴開け材を含む炭素前駆体の層を樹脂で接着して一体化して炭素化することにより得られる。
【0073】
前記穴開け材の粒子は球状であることが望ましい。前記炭素粉末はカーボンナノ繊維を含むことが望ましい。前記炭素含有樹脂の層は、その中に均一に分散した黒鉛を含む場合がある。前記炭素化は、1200℃以上の温度で行なわれることが望ましい。
【0074】
以上のように、炭素含有樹脂と炭素粉末との混合物に、炭素前駆体化するときの温度においては固体または液体であり、炭素化の温度において消失して気孔を残す穴開け材、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)の粒子を混合することにより、炭素化の過程において、この穴開け材はその立体的形状に応じた立体的形状の気孔を残して消失する。したがって、穴開け材の配合比を制御することで気孔率を容易に制御することができ、穴開け材の粒子の立体的形状およびサイズを選択することで気孔の立体的形状およびサイズを容易に制御することができ、気孔率40%以上の多孔体を実現することができる。
【0075】
なお、気孔率とは気孔を含む多孔体全体の体積に対する気孔の体積の百分率であり、炭素の密度を1.5g/cm3として、多孔体全体の体積および質量から計算される気孔率と定義する。
【0076】
前記多孔体からなる低密度層と高密度層との複層構造とすれば、必要な剛性を維持しつつ気孔率を60%以上とすることができ、振動板全体の密度を0.5g/cm3以下とすることができる。
高密度層は総厚の1〜30%程度で効果を発現し、ヤング率100GPa程度の剛性で高音域再生の役割を担う。
【0077】
低密度層のヤング率は2〜3GPa程度であり振動板全体を軽量にして全体の音質を維持し、振動応答性を良くする。
【0078】
これらを一体化して焼成して炭素化し、複数層の炭素質材を形成するので、特性の制御、特に高音域までの可聴音域の音を出力することができる多層平面スピーカ振動板が可能となる。
【0079】
また、ドーム形状にして剛性を付与することも可能であるが、緻密で高剛性の高密度層とコアとなる軽量の低密度層のハリ強度とのバランスで再生限界周波数の高い平面振動板が得られる。気孔率設計によっても再生音域が変動するが、気孔径は大きく影響しない。ハンドリング性が良好となり、耐衝撃性も向上する。また、多孔体の低密度層の片面あるいは両面を高密度層で覆うことでユニットへの組み込みの際の接着剤の吸い込みを防止することができる。
【0080】
音響振動板にさらに要請される特性として、空気中の水分を吸って重くなって音響特性が変わらないように、吸湿性が低いことが挙げられる。炭素化の温度を1200℃以上とすることで、乾燥後、温度25℃、湿度60%の環境に250時間放置したときの質量の増加が5%以下であるものが得られる。
【0081】
以上の説明では、炭素質音響振動板を、エッジを介してフレームで保持する構造について例示したが、可撓性フィルムで炭素質音響振動板を保持する構造とすることも可能である。可撓性フィルムのフィルム平面にカーボン振動板の開口端部を固定し、可撓性フィルムはエッジを介してフレームに振動自在に固定する。可撓性フィルムの中心にカーボン振動板を配置することからセンタープレート方式と呼ぶことができる。
【0082】
センターフレーム方式のスピーカ本体1では、可撓性フィルムに上記ボイスコイル24の一端部を直接当接させて振動させる。
【0083】
以上説明したように、本発明の一実施の形態に係るディジタルスピーカユニットによれば、低密度で軽量でありながら充分な剛性を有するカーボン振動板をディジタル音声信号で直接駆動して、良好な音響特性を実現することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 スピーカ本体
10 ディジタル音源
11 デルタシグマ変調器
12 温度計コード変換部
13 ドライバ回路
21 ヨーク
22 センターピース
23 永久磁石
24 ボイスコイル
24-1〜24-3 単位ボイスコイル
25、51 カーボン振動板
26 フレーム
28 エッジ
52 凸部
53 リブ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質音響振動板と、
導電性ワイヤーを筒状に巻回してなり一方の開口端部が前記炭素質音響振動板に直接当接された状態で固定されたボイスコイルと、
前記筒状のボイスコイルを径方向に貫く磁束を発生させる磁束発生手段と、
前記ボイスコイルに音声信号に対応した駆動電流を供給する駆動手段と、
を具備したことを特徴とするスピーカユニット。
【請求項2】
前記ボイスコイルは、ディジタル信号のビット数に対応した複数個の単位ボイスコイルで構成され、前記複数個の単位ボイスコイルの径寸法を異ならせて、大径側の単位ボイスコイルに小径側の単位ボイスコイルを順次挿入してなり、
前記駆動手段は、前記各単位ボイスコイルをディジタル信号の各ビット値に基づいて個別に駆動することを特徴とする請求項1記載のスピーカユニット。
【請求項3】
前記各単位ボイスコイルは、断面長円状に加工された導電性ワイヤーを、コイル径方向と直交する方向に隣接する隣接ワイヤー間で当該ワイヤー断面の長軸方向が密に接するように筒状に巻回してなることを特徴とする請求項2記載のスピーカユニット。
【請求項4】
前記各単位ボイスコイルは、断面長円状に加工された導電性ワイヤーを、コイル径方向と直交する方向に隣接する隣接ワイヤー間で当該ワイヤー断面の短軸方向が密に接するように筒状に巻回してなることを特徴とする請求項2記載のスピーカユニット。
【請求項5】
前記炭素質音響振動板は、前記ボイスコイルの開口端部が固定された第1の主面と、該第1の主面とは反対側の第2の主面とを有し、前記ボイスコイルは前記開口端部の最外周位置が振動板外周縁部よりも内側にずれた位置に配置され、前記第2の主面であって前記ボイスコイルの開口端部の固定位置とは重ならない振動板外周縁部に当該炭素質音響振動板を振動自在に支持する支持部材の一端部が固定されたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のスピーカユニット。
【請求項6】
前記磁束発生手段は、前記炭素質音響振動板に固定された前記ボイスコイルの外周面と対向する端部を有するヨークと、前記前記ボイスコイルの他方の開口端部からコイル内部に挿入され前記ヨークの対向する端部との間にギャップを形成するセンターピースと、前記センターピースと前記ヨークとの間に設けられ前記センターピース側を一方の磁極とし前記ヨーク側を他方の磁極とする永久磁石と、を備え、
前記炭素質音響振動板は、前記ボイスコイルの開口端部が固定された第1の主面と、該第1の主面とは反対側の第2の主面と、前記第1の主面における前記ボイスコイルの開口端部固定箇所に形成された凸部とを有し、前記凸部は前記ボイスコイルの中心部が前記ヨークの端部と前記センターピースの間のギャップ位置となる高さを有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のスピーカユニット。
【請求項7】
前記各単位ボイスコイルに接続される引き出し線の引き出し位置を、前記炭素質音響振動板外周に均等に分散したことを特徴とする請求項2から請求項6のいずれかに記載のスピーカユニット。
【請求項8】
炭素質音響振動板と、
前記炭素質音響振動板を保持する可撓性のフィルム体と、
導電性ワイヤーを筒状に巻回してなり一方の開口端部が前記可撓性のフィルム体に直接当接された状態で固定されたボイスコイルと、
前記筒状のボイスコイルを径方向に貫く磁束を発生させる磁束発生手段と、
前記ボイスコイルに音声信号に対応した駆動電流を供給する駆動手段と、
を具備したことを特徴とするスピーカユニット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−263332(P2010−263332A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111539(P2009−111539)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】