説明

スピーカ装置およびその配線構造

【課題】品質および信頼性の向上を図ることができると共に、薄型化にも対応可能なスピーカ装置、並びに、その配線構造を提供すること。
【解決手段】平面状の振動板10と、振動板10に装着される駆動用コイル16と、駆動用コイル16を含み振動板10を駆動する磁気回路14と、を有するスピーカ装置1の配線構造において、振動板1と磁気回路14との間に形成される空間に、駆動用コイル16への入力用リード線17を配置し、駆動用コイル16を保持する駆動用コイル保持部15にて、該入力用リード線17の先端と駆動用コイル16の先端とを電気的に接続することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ装置およびその配線構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筐体によって保持される平面状の振動板の中央にボイスコイルを配置し、該ボイスコイルに信号を送信することにより、振動板の前方より音を放出させるスピーカ装置が存在する。このようなタイプのスピーカ装置としては、特許文献1に開示されているものが知られている。
【0003】
また、近年、スピーカ装置の薄型化が進んでおり、有機エレクトロルミネッセンスパネル(以下、OELパネルと表記する。)や無機エレクトロルミネッセンスパネル(以下、IELパネルと表記する。)等の薄型パネルを振動板として採用したパネル型のスピーカ装置も普及している。OELパネルを振動板として採用したスピーカ装置としては、特許文献2に開示されているものが知られている。
【0004】
ここで、特許文献1および2に開示されているスピーカ装置においては、従来の配線構造が採用されており、当該スピーカ装置の配線構造は、図24および図25に示すような構成を有している。すなわち、ボイスコイル201を有するボビン202の一端側の外周に絶縁材からなるフランジ203が装着され、該フランジ203に陽極側と陰極側のそれぞれの入力用端子ラグ204,205が装着される。そして、陽極側の入力用端子ラグ204の一端および他端のそれぞれに、ボイスコイル201の陽極側の引き出し線206および陽極側のリード線207がそれぞれ接続される。また、陰極側の入力用端子ラグ205の一端および他端のそれぞれに、ボイスコイル201の陰極側の引き出し線208および陰極側のリード線209がそれぞれ接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−205809号公報(発明の詳細な説明)
【特許文献2】特開2009−100223号公報(発明の詳細な説明)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および2に開示されているスピーカ装置の配線構造においては、リード線207,209の一端は、入力用端子ラグ204,205に接続されることから、該リード線207,209の一端には適度なたるみを持たせる必要がある。このため、振動板が大きな振幅で振動した際、入力用リード線207,209が振動板210の裏面211に接触し異常音が発生してしまう。また、スピーカ装置を長時間にわたって使用し続けるとリード線207,209に疲労が生じてしまう。
【0007】
また、従来のスピーカ装置の配線構造においては、ボイスコイル201の引き出し線206,208とリード線207,209との接続は、入力用端子ラグ204,205や配線用金具等を介して行われている。このため、入力用端子ラグ204,205や配線用金具等を配置するためのスペースを要してしまい、スピーカ装置の薄型化を図ることが困難なものとなってしまう。また、配線用金具等の代わりに半田付けにて引き出し線206,208とリード線207,209を接続することも可能であるが、この場合には、リード線207,209の太さ寸法や半田の盛り上がりに起因して、スピーカ装置200の薄型化を図ることが困難なものとなってしまう。
【0008】
さらに、従来のスピーカ装置の配線構造においては、スピーカ装置200の薄型化が進むにつれ、引き出し線206,208やリード線207,209等の配線材を配置するためのスペースも狭いものとなる。その結果、配線作業を行うことが困難となり、さらには、配線接続そのものもできない状況に陥ってしまう。一方、配線材には一定の姿勢を保持するための強度と、振動板の振幅に対応できるだけの追従性とが要求される。しかしながら、強度を持たせるために配線を太くすることはスペースとの関係上困難であり、追従性を持たせるために配線の長さを長くすると、強度に欠け一定の姿勢を保持することができなくなる。
【0009】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、品質および信頼性の向上を図ることができると共に、薄型化にも対応可能なスピーカ装置およびその配線構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一側面は、平面状の振動板と、振動板に装着される駆動用コイルと、駆動用コイルを含み振動板を駆動する磁気回路と、を有するスピーカ装置の配線構造において、振動板と磁気回路との間に形成される空間に、駆動用コイルへの入力用リード線を配置し、駆動用コイルを保持する駆動用コイル保持部の外周にて、該入力用リード線の先端と駆動用コイルの先端とを電気的に接続するものである。
【0011】
また、入力用リード線を、振動板または磁気回路に中継させるのが好ましい。
【0012】
また、入力用リード線を、振動板において磁気回路と対向する面である裏面上に固定するのが好ましい。
【0013】
また、入力用リード線は錦糸線からなるものとするのが好ましい。
【0014】
また、入力用リード線には、該入力用リード線が振動板の振動方向に対して直交方向に沿うように、フォーミング加工が施されているのが好ましい。
【0015】
また、駆動用コイルを保持する駆動用コイル保持部の外周端にフランジを装着し、該フランジに入力用リード線を沿わせて配置するのが好ましい。
【0016】
また、フランジは概ねリング状の形態を有しており、該フランジの平面に、その内周部から外周部にわたって溝を設け、該溝に入力用リード線を沿わせて配置させることが好ましい。
【0017】
また、駆動用コイル保持部の外周面における所望の位置に銅箔を装着し、該銅箔に、溝に配置された入力用リード線の先端を接続するのが好ましい。
【0018】
また、振動板の裏面に薄膜状の導電体を装着し、該導電体を介して入力用リード線を駆動用コイルに接続するのが好ましい。
【0019】
また、振動板の裏面に導電体をメッキ、あるいは、蒸着にて薄膜状に装着し、該導電体を介して入力用リード線を駆動用コイルに接続するのが好ましい。
【0020】
また、磁気回路は筐体に保持されており、入力用リード線もしくは入力用リード線に接続される配線材を筐体の有する面に這わせて配置するのが好ましい。
【0021】
また、筐体の所望の箇所に溝を設け、該溝に入力用リード線もしくは入力用リード線に接続される配線材を配置するのが好ましい。
【0022】
また、筐体は、枠形状を呈する外枠部と、磁気回路が装着される磁気回路装着部と、磁気回路装着部と外枠部とを接続する桟部と、を有し、磁気回路装着部、外枠部および桟部の一部もしくは全部は一体的に形成され、磁気回路装着部、外枠部および桟部の所望の位置に入力用リード線もしくは入力用リード線に接続される配線材を這わせて配置することが好ましい。
【0023】
また、本発明の一側面は、スピーカ装置は、上述のスピーカ装置の配線構造を有するものである。
【0024】
また、空間において磁気回路を構成するトッププレートと対向する位置に、吸音材あるいはクッション材を配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、品質および信頼性の向上を図ることができると共に、薄型化にも対応可能なスピーカ装置およびその配線構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るスピーカ装置の一部を斜め裏側から見た分解斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るスピーカ装置の一部を裏側から見た図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るスピーカ装置の一部を側面視した状態の図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るスピーカ装置の一部の側断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るスピーカ装置の一部を側面視した状態の図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係るスピーカ装置の一部を斜め表側から見た分解斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るスピーカ装置の一部を側面視した状態の図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係るスピーカ装置の一部を側面視した状態の図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態に係るスピーカ装置の一部を斜め裏側から見た斜視図である。
【図10】図9中の一点鎖線Aで囲んだ部分の拡大図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態に係るスピーカ装置の一部を裏側から見た図である。
【図12】本発明の第6の実施の形態に係るスピーカ装置の一部を側面視した状態の図である。
【図13】本発明の第7の実施の形態に係るスピーカ装置を斜め裏側から見た分解斜視図である。
【図14】本発明の第7の実施の形態に係るスピーカ装置を斜め表側から見た斜視図である。
【図15】図14中のスピーカ装置をB−B線で切断した側断面図である。
【図16】図13中の一点鎖線Cで囲んだ部分の拡大図である。
【図17】図15中の一点鎖線Dで囲んだ部分の拡大図である。
【図18】図15中の一点鎖線Eで囲んだ部分の拡大図である。
【図19】本発明の第7の実施の形態に係るスピーカ装置の再生周波数特性のグラフを示す図である。
【図20】本発明の第8の実施の形態に係るスピーカ装置を斜め裏側から見た分解斜視図である。
【図21】図20中の一点鎖線Fで囲んだ部分の拡大図である。
【図22】図20中の一点鎖線Gで囲んだ部分の拡大図である。
【図23】本発明の第8の実施の形態に係るスピーカ装置の再生周波数特性のグラフを示す図である。
【図24】従来のスピーカ装置の一部を斜め裏側から見た分解斜視図である。
【図25】従来のスピーカ装置の一部の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係るスピーカ装置1およびその配線構造について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明(各実施の形態に共通)において、図1〜図9、図11〜図15、図17、図18および図20に示す矢示X方向を表、矢示X方向を裏、矢示Y方向を左、矢示Y方向を右、矢示Z方向を上および矢示Z方向を下とそれぞれ規定する。
【0028】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスピーカ装置1の一部を斜め裏側から見た分解斜視図である。図2は、本発明の第1の実施の形態に係るスピーカ装置1の一部を裏側から見た図である。図3は、本発明の第1の実施の形態に係るスピーカ装置1の一部を側面視した状態の図である。図4は、本発明の第1の実施の形態に係るスピーカ装置1の一部の側断面図である。
示す側面図である。
【0029】
本発明の第1の実施の形態に係るスピーカ装置1は、振動板の一例となる薄肉のパネル10を筐体(マグネットフランジ21のみ図示)によって支持し、該パネル10と筐体との間に形成される空間11(図3参照)にパネル10を振動させるための駆動体12を配置することにより構成される。また、本発明の第1の実施の形態に係るスピーカ装置1の配線構造は、薄型の形態を有するスピーカ装置1の駆動部分に適用される。
【0030】
図1および図4に示すように、駆動体12は、ボイスコイル体13と、磁気回路14とから構成される。このボイスコイル体13は、円筒状の形態を有する駆動用コイル保持部の一例となるボイスコイルボビン15と、ボイスコイルボビン15の外周面に巻回されて接着固定される駆動用コイルの一例となるボイスコイル16とを有する。本実施の形態では、ボイスコイル体13をパネル10の裏面10aに接着にて装着し、ボイスコイルボビン15の外周面の表裏方向(X−X方向)の略中央から径方向外方に向かってリード線17,17を引き出し、該リード線17,17を空間11における表裏方向の略中央部に配置させてある。ボイスコイル体13の表裏方向への動作に伴ってパネル10は表裏方向へ振動する。
【0031】
ボイスコイル16は、図1に示すように、ボイスコイルボビン15において表裏方向の略中央部よりも裏側(X側)の領域に巻回されている。ボイスコイルボビン15の外周面における2箇所の位置には、銅箔18,18が付与されている。該銅箔18,18は、ボイスコイルボビン15の表裏方向(X−X方向)の略中央部に付与されている。また、この銅箔18,18の一方には、ボイスコイル16の巻き始め部に相当する引き出し線16aが接続され、他方にはボイスコイル16の巻き終わり部に相当する引出し線16aが接続される。また、リード線17,17は、ボイスコイル16とは別体として設けられており、その一端が銅箔18に接続されている。すなわち、ボイスコイル16の巻き始め部および巻き終わり部と各リード線17,17とは銅箔18,18を介して接続されている。図3等に示すように、2つのリード線17,17は、銅箔18,18から上下方向に沿って平行に伸びている。また、リード線17,17はボイスコイル体13の上下方向に沿った中心軸線に対して左右対称となる位置にそれぞれ(合計一対)配置されている。
【0032】
本実施の形態では、ボイスコイル16として、エナメル等の絶縁皮膜で覆われた導電性を有する丸線が採用されている。一方、リード線17として、一般的に錦糸線とよばれる、撚糸に銅箔を巻きつけてなる線材を複数本、組紐状、あるいは、撚り線状に編んでなる線材が用いられている。該錦糸線は、フォーミング加工が施されていることから、一定の姿勢を維持することが可能なため、耐振幅性能に優れており、一般的にスピーカの入力用線材として多用されている。
【0033】
なお、本実施の形態では、リード線17として錦糸線を用いたが、薄型のスピーカ装置1は通常の一般的なラウドスピーカより振動板10の振幅が小さいので、使用目的に応じて線材を選定することが可能である。たとえば、ボイスコイル16の巻き始め部および巻き終わり部となる引き出し線をボイスコイルボビン15の外周面上に這わせた後、ボイスコイルボビン15における表裏方向の中央部近傍から引き出し、空間11における表裏方向の中央部近傍に配置させるようにしても良い。また、リード線17として、たとえば、塩ビニル樹脂等の絶縁皮膜で覆われた銅線を採用し、該銅線の先端を銅箔18に接続するようにしても良い。
【0034】
図4に示すように、磁気回路14は、自身の磁気ギャップ25にボイスコイル16が嵌まるように、ボイスコイル体13の裏側に配置される。この磁気回路14は、磁気回路固定リング20を介して筐体の一部となるマグネットフランジ21に固定される。具体的には、マグネットフランジ21内に位置保持された磁気回路14を、該磁気回路14の裏側に配置される磁気回路固定リング20にネジを締結することにより、磁気回路14の表裏方向の位置決めがなされている。なお、マグネットフランジ21の側方には、たとえば、筐体を構成する不図示の板材が配置される。
【0035】
図4に示すように、磁気回路14は、ヨーク22と、マグネット26と、トッププレート24とから構成されている。ヨーク22は、磁気回路14の基盤部材であり、略有底円柱状をなしている。具体的には、ヨーク22は、略円柱状の形態を有するセンターガイド部22aと、このセンターガイド部22aの裏側の端部において周方向外側に向かって全周に亘って延出する載置部22bとを有する。載置部22bには、ドーナツ状のマグネット26が載置される。このマグネット26は、センターガイド部22aの外周側に位置するように載置部22bに載置される。また、マグネット26の表側には磁性材からなるドーナツ状のトッププレート24が配置される。このトッププレート24は、マグネット26と対向する位置に、マグネット26を載置部22bとで表裏方向に向かって狭持せしめるように配置される。なお、センターガイド部22aの外周部とトッププレート24の内周部との間には所定間隔を有する磁気ギャップ25が形成されており、該磁気ギャップ25に、ボイスコイル16が配置される。
【0036】
上述のようなスピーカ装置1の配線構造では、リード線17は、銅箔18から横方向外方に向かって延出するような形態で配置される。すなわち、リード線17は、空間11における表裏方向の略中央部において、パネル10の振動方向と直行する方向となる上下方向に向かって伸びている。このように、リード線17を上下方向に沿って配置させることで、スピーカ装置1の薄型化に対応することが可能となる。また、パネル10の振動に共振が発生すると、リード線17には、共振に起因する引張力が作用することになるが、リード線17を上下方向に向かって配置することで、該引張力を軽減することが可能となる。その結果、リード線17が断線するのを防止できる。
【0037】
また、スピーカ装置1は、パネル10を直立させた状態で使用することが多いため、リード線17は空間11における表裏方向の略中央部に配線姿勢を維持しやすくなる。このため、パネル10を水平方向に寝かせて使用する場合のように、リード線17が自身の自重によって磁気回路14側に傾くことを防止できる。したがって、リード線17がYZ平面に対して傾いた姿勢を維持することがなくなる。その結果、該リード線17が磁気回路14やパネル10等の他の部材に接触して異音が発生するのを防止できる。
【0038】
また、上述のようなスピーカ装置1では、ボイスコイル体13はパネル10の裏面10aに直接装着されており、空間11内にはサスペンション等の支持部材が配置されない構成を有している。このため、実用性を有しながら、空間11内に容易にリード線17を配置することが可能となる。したがって、スピーカ装置1の薄型化に容易に対応することが可能となる。
【0039】
また、上述のようなスピーカ装置1では、リード線17に錦糸線が用いられている。このため、リード線17は上下方向に沿った姿勢を維持しやすくなり、耐振幅性能に優れたものとなる。したがって、リード線17が断線するのを防止でき、その結果、スピーカ装置1の品質および信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0040】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態に係るスピーカ装置30およびその配線構造について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と配線構造のみが相違するため、相違する部分を主に説明する。なお、第2の実施の形態に係るスピーカ装置1およびその配線構造において、第1の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を付すと共にその説明を省略または簡略化する。
【0041】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るスピーカ装置30の一部を側面視した状態の図である。
【0042】
スピーカ装置30は、パネル10と、パネル10の裏面10aに装着される駆動体12と、筐体を構成するマグネットフランジ21を有する。また、ボイスコイルボビン15の外周面には、銅箔18,18が付与されている。また、リード線31,31が、ボイスコイル16とは別体として設けられ、その一端が銅箔18に接続されている。
【0043】
本実施の形態では、図5に示すように、銅箔18から引き出されるような形態で配置されるリード線31,31は、その中途部分において表側に向かって折り曲げられたジャンピング部32を有する。すなわち、リード線31は、銅箔18から引き出されてジャンピング部32が形成される箇所の間まで、空間11の表裏方向の略中央に配置され、ジャンピング部32が形成される位置において表側に向かって折れ曲がりパネル10の裏面10aに接触することとなる。また、第1の実施の形態の場合と同様、2つのリード線31,31は、銅箔18,18から上下方向に沿って平行に伸びている。さらに、リード線31,31はボイスコイル体13の上下方向に沿った中心軸線に対して左右対称となる位置に一対に配置されている。
【0044】
ジャンピング部32において、パネル10の裏面10aと接触する部位は、該裏面10aに接着される。ジャンピング部32を設ける位置は、リード線31の長さを考慮して、該リード線31が所定の姿勢を保てるように適宜設定することが可能である。リード線31は、フォーミング加工が施された錦糸線により形成されているため、該リード線31は、塩ビニル樹脂等の絶縁皮膜で覆われた銅線等と比較して、所定の姿勢を維持しやすくなっている。また、ジャンピング部32の外側は、パネル10との間でショートするのを防止するために、絶縁材で被覆されている。なお、パネル10が導電性を有さない材料から形成されている場合、ジャンピング部32を絶縁材で被覆しないようにしても良い。
【0045】
上述のようなスピーカ装置30では、リード線31はパネル10の裏面10aにジャンピング部32にて固定される。このため、リード線31をより安定した状態に維持することができ、スピーカ装置30の信頼性および品質の向上を図ることが可能となる。
【0046】
また、上述のようなスピーカ装置30では、リード線31はパネル10の裏面10aにジャンピング部32を接着することにより固定される。このため、リード線31をパネル10に対して安定した状態で配置することができ、リード線31とパネル10との間での異常接触音が発生するのを防止できる。
【0047】
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施の形態に係るスピーカ装置40およびその配線構造について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態では、第1および第2の実施の形態と配線構造のみが相違するため、相違する部分を主に説明する。なお、第3の実施の形態に係るスピーカ装置40およびその配線構造において、第1および第2の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を付すと共にその説明を省略または簡略化する。
【0048】
図6は、本発明の第3の実施の形態に係るスピーカ装置40の一部を斜め表側から見た分解斜視図である。図7は、本発明の第3の実施の形態に係るスピーカ装置40の一部を側面視した状態の図である。
【0049】
図6に示すように、スピーカ装置40は、パネル10と、パネル10の裏面10aに装着される駆動体12と、筐体を構成するマグネットフランジ21を有する。また、ボイスコイルボビン15の外周面には、銅箔18,18が付与されている。また、リード線41,41が、ボイスコイル16とは別体として設けられ、その一端が銅箔18に接続されている。
【0050】
本実施の形態では、図6および図7に示すように、銅箔18から引き出されるような形態で配置されるリード線41,41は、その中途部分において裏側に向かって折り曲げられたジャンピング部42を有する。すなわち、リード線41は、銅箔18から引き出されてジャンピング部42が形成される箇所の間まで、空間11の表裏方向の略中央部に位置し、ジャンピング部42が形成される位置において表側に向かって折れ曲がりマグネットフランジ21の表面21aに接触することとなる。また、第1の実施の形態の場合と同様、2つのリード線41,41は、銅箔18,18から上下方向に沿って平行に伸びている。さらに、リード線41,41はボイスコイル体13の上下方向に沿った中心軸線に対して左右対称となる位置に一対に配置されている。
【0051】
ジャンピング部42において、マグネットフランジ21の表面21aと接触する部位は、該表面21aに接着される。ジャンピング部42を設ける位置は、リード線41の長さを考慮して、該リード線41が所定の姿勢を保てるように適宜設定することが可能である。リード線41は、フォーミング加工が施された錦糸線により形成されているため、該リード線41は、塩ビニル樹脂等の絶縁皮膜で覆われた銅線等と比較して、所定の姿勢を維持しやすくなっている。また、ジャンピング部42の外側は、マグネットフランジ21との間でショートするのを防止するために、絶縁材で被覆されている。なお、マグネットフランジ21が導電性を有さない材料から形成されている場合、ジャンピング部42を絶縁材で被覆しないようにしても良い。
【0052】
上述のようなスピーカ装置40では、リード線41は、マグネットフランジ21の表面21aに接着されるジャンピング部42を有している。このため、リード線41をより安定した状態に維持することができ、スピーカ装置40の信頼性および品質の向上を図ることが可能となる。
【0053】
また、上述のようなスピーカ装置40では、リード線41はマグネットフランジ21の表面21aにジャンピング部42を接着することにより固定される。このため、リード線41を空間11内に安定した状態で配置することができ、リード線41とパネル10との間での異常接触音が発生するのを防止できる。
【0054】
(第4の実施の形態)
以下、本発明の第4の実施の形態に係るスピーカ装置50およびその配線構造について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態では、第1から第3の実施の形態と配線構造のみが相違するため、相違する部分を主に説明する。なお、第4の実施の形態に係るスピーカ装置50およびその配線構造において、第1から第3の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を付すと共にその説明を省略または簡略化する。
【0055】
図8は、本発明の第4の実施の形態に係るスピーカ装置50の一部を側面視した状態の図である。
【0056】
図8に示すように、スピーカ装置50は、パネル10と、パネル10の裏面10aに装着される駆動体12と、筐体を構成するマグネットフランジ21と、ボイスコイルボビン15の外周に配置されるボイスコイルフランジ51と、を有する。また、ボイスコイルボビン15の外周面には、銅箔18,18が付与されている。さらに、リード線31,31の一端は銅箔18に接続されている。
【0057】
本実施の形態では、図8に示すように、ボイスコイルボビン15の表側の端部近傍に、該ボイスコイルボビン15の外側を全周に亘って覆うようなリング状の形態を有するフランジの一例となるボイスコイルフランジ51が配設されている。そして、リード線31,31はボイスコイルフランジ51の裏面51a上を這うように配置されている。また、ボイスコイルフランジ51の表側の面は、パネル10の裏面10aに接着等により固定されている。さらに、リード線31は、そのジャンピング部32においてパネル10の裏面10aに接着されている。また、リード線31においてボイスコイルフランジ51の裏面51a上を這う部位は、該裏面51aに接着されている。すなわち、ボイスコイルフランジ51を介してリード線31と、パネル10とが一体化された状態となっている。なお、ボイスコイルフランジ51の形状はリング状に限定されるものではなく、他の形状としても良い。
【0058】
上述のようなスピーカ装置50では、ボイスコイルフランジ51をパネル50の裏面50aに固定することによって、ボイスコイル16をパネル10に対して大きな強度で固定することができ、パネル10を駆動する際に、パネル10が局部的に加震されるのを軽減できる。また、ボイスコイルフランジ51の配置によって、パネル10の強度を補強することができ、ボイスコイルフランジ51とパネル10との接触部分において共振の発生を低減することが可能となる。
【0059】
また、上述のようなスピーカ装置50では、ボイスコイルフランジ51の裏面51a上にリード線31が這わせて配置され、該リード線31が裏面51a上に接着されているため、リード線31を安定した状態で保持することが可能となり、該リード線31が断線するのを防止できる。また、リード線31が裏面51a上に横方向に沿った姿勢で配置されるため、リード線31の一部分の配置態様が決まり、スピーカ装置50の薄型化を図る上で有効なものとなる。
【0060】
また、上述のようなスピーカ装置50では、ボイスコイルフランジ51を介してリード線31と、パネル10とが一体化された状態となる。このため、空間11を有効活用して、スピーカ装置50の薄型化を図ることが可能となる。
【0061】
(第5の実施の形態)
以下、本発明の第5の実施の形態に係るスピーカ装置60およびその配線構造について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態では、第1から第4の実施の形態と配線構造のみが相違するため、相違する部分を主に説明する。なお、第5の実施の形態に係るスピーカ装置60およびその配線構造において、第1から第4の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を付すと共にその説明を省略または簡略化する。
【0062】
図9は、本発明の第5の実施の形態に係るスピーカ装置60の一部を斜め裏側から見た斜視図である。図10は、図9中の一点鎖線Aで囲んだ部分の拡大図である。
【0063】
図9に示すように、スピーカ装置60は、パネル10と、パネル10を駆動させるための駆動体と、ボイスコイルボビン15の外周に配置されるフランジの一例となるボイスコイルフランジ61と、を有する。また、ボイスコイルボビン15の外周面における所望の2箇所の位置には、銅箔18,18が付与されている。さらに、リード線62,62の一端は半田付け等の手段により銅箔18に接続されている。
【0064】
図9に示すように、ボイスコイルボビン15の表側の端部近傍には、該ボイスコイルボビン15の外側を全周に亘って覆うようなリング状の形態を有するボイスコイルフランジ61が配設されている。本実施の形態では、ボイスコイルフランジ61には、リード線62,62を配置させるための溝63,63が形成されている。この溝63,63は、ボイスコイルフランジ61の内周部から外周部にわたって形成されている。また、この溝63,63は、ボイスコイルフランジ61の裏面61aに、周方向外方に向かうにつれて2つの溝63,63の間隔が互いに広くなるような形態で形成されている。また、ボイスコイルフランジ61の内周縁には、裏側に向かうにつれて大径になるように傾斜するテーパ状のテーパ面64が形成されている。このため、ボイスコイルボビン15をボイスコイルフランジ61に装着した状態では、ボイスコイルボビン15の外周面とテーパ面64とにより略V字状の溝が形成される。また、上述したように、リード線62と銅箔18とは半田等を用いて接続され、当該接続部分は、ボイスコイルボビン15とボイスコイルフランジ61とを相互に接着する際に用いられる接着剤によって覆われる。この際、リード線62の接続部分は、ボイスコイルボビン15の外周面とテーパ面64とにより形成される略V字状の溝に納まるように構成されている。なお、ボイスコイルフランジ61の形状はリング状に限定されるものではなく、他の形状としても良い。
【0065】
図10に示すように、リード線62,62は、溝63,63に嵌まり込んだ状態で外側に向かって引き出される。すなわち、リード線62,62は、溝63,63内に嵌まり込んだ状態で空間11内に配置されることになる。また、リード線62,62のボイスコイルフランジ61よりも外側に飛び出た部分は、互いが左右方向外側に向かって略円弧状に撓んだ姿勢を維持している。
【0066】
上述のようなスピーカ装置60では、ボイスコイルフランジ61の裏面61aに溝63を設け、該溝63内にリード線62を挿入配置させている。このため、リード線62が溝63内に嵌まり込んだ寸法だけ、表裏方向のスペースにおいて有利となり、薄型化を図ることが容易となる。また、溝63内にリード線62を挿入配置させる構造により、リード線62と銅箔18との接続部位の位置出しを容易に行うことが可能となり、配線工数を大幅に減少させることが可能となる。
【0067】
また、上述のようなスピーカ装置60の配線構造では、銅箔18とリード線62とを半田付けした接続部分は、ボイスコイルボビン15とボイスコイルフランジ61とを接着するための接着剤で覆われる。このため、該接続部分を接着剤にて密封する構造を有し、接着剤として耐熱性を有するものを用いた場合、信頼性が向上する。
【0068】
また、上述のようなスピーカ装置60では、ボイスコイルボビン15をボイスコイルフランジ61に装着した状態では、ボイスコイルボビン15の外周面とテーパ面64とにより略V字状の溝が形成される。このため、リード線62の銅箔18との接続部分は、当該溝に納まることになる。したがって、当該接続部分は、半田に加え、ボイスコイルボビン15とボイスコイルフランジ61とを接着するための接着剤により完全に密封されることになる。このため、接続部分の強度が向上し、スピーカ装置60の信頼性が向上する。
【0069】
(第6の実施の形態)
以下、本発明の第6の実施の形態に係るスピーカ装置70およびその配線構造について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態では、第1から第5の実施の形態と配線構造のみが相違するため、相違する部分を主に説明する。なお、第6の実施の形態に係るスピーカ装置70およびその配線構造において、第1から第5の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を付すと共にその説明を省略または簡略化する。
【0070】
図11は、本発明の第6の実施の形態に係るスピーカ装置70の一部を裏側から見た図である。図12は、本発明の第6の実施の形態に係るスピーカ装置70の一部を側面視した状態の図である。
【0071】
図11および図12に示すように、スピーカ装置70は、パネル10と、駆動体12と、マグネットフランジ21と、ボイスコイルフランジ61と、を有する。また、ボイスコイルボビン15の外周面における所望の2箇所の位置には、銅箔18,18が付与されている。リード線62,62の一端は半田付け等の手段により銅箔18に接続されている。また、第5の実施の形態の場合と同様、ボイスコイルフランジ61には溝63が形成されており、リード線62,62は溝63,63に嵌まり込んだ状態で外方向に引き出されている。
【0072】
本実施の形態では、銅箔18,18から引き出されたリード線62,62は、中継端子71を介して接続された入力用リード線72によりマグネットフランジ21よりも外側に引き出される。具体的には、リード線62は中継端子71に接続されることによってマグネットフランジ21に保持され、該中継端子71に接続される入力用リード線72によって外側に引き出される。
【0073】
中継端子71は、中継端子基板73と、中継端子ラグ74と、ワッシャ75と、中継端子止めネジ76とから構成されている。図11に示すように、中継端子基板73は、略矩形状の形態を有する板状部材であり、耐熱性樹脂等から形成されている。また、中継端子基板73は、左右方向がその長手方向となるように配置される。中継端子ラグ74,74は、略矩形状の形態を有する金属板であり、上下方向がその長手方向となるように左右に並べで合計2つ配置されている。この中継端子ラグ74,74は、左右方向の側方から見て表側に向かって傾斜するように折り曲げられている傾斜部74aと、平坦な面を有する平坦部74bとを有する(図12参照)。傾斜部74aには、リード線62の先端が半田付けにて接続され、平坦部74bには、かしめ加工が施されたファストン端子77が設けられている。
【0074】
中継端子ラグ74,74は、中継端子基板73に固定された状態で、ネジ76を用いてマグネットフランジ21の表面21aに固定される。この際、中継端子基板73とマグネットフランジ21の表面21aとの間にはワッシャ75が介在される。すなわち、中継端子基板73の左右方向略中央部に設けられる不図示の孔とワッシャ75の内部にネジ76を挿通させ、該ネジ76をマグネットフランジ21に設けられる不図示のネジ穴に螺入させることにより中継端子ラグ74,74がマグネットフランジ21に対して固定される。
【0075】
リード線62,62のボイスコイルフランジ61よりも外側に飛び出た部分は、互いが左右方向外側に向かって円弧状に撓んだ姿勢を維持している。このため、リード線62の先端が傾斜部74aに接続された状態では、該リード線62はボイスコイルフランジ61の外周から左斜め上方に向かって円弧状に撓みながら傾斜部74aに導かれることになる。なお、リード線62としては、たとえば、直径約1mmのフォーミング加工が施された錦糸線が用いられている。また、平坦部74bのファストン端子77には、入力用リード線72の先端が接続される。入力用リード線としては、金属線を塩化ビニル樹脂によって被覆した一般に使用される平行線が用いられている。入力用リード線72は、中継端子ラグ74,74に接続される部位近傍にて2つの線に分岐している。
【0076】
上述のようなスピーカ装置70では、リード線62はマグネットフランジ21の表面21aに中継端子71を介して固定される。すなわち、リード線62を中継端子71にて中継し入力用リード線72にて外側に引き出している。このため、リード線62を空間11内に安定した状態で配置することができ、リード線62とパネル10との間での異常接触音が発生するのを防止できる。
【0077】
(第7の実施の形態)
以下、本発明の第7の実施の形態に係るスピーカ装置80およびその配線構造について、図面を参照しながら説明する。
【0078】
図13は、本発明の第7の実施の形態に係るスピーカ装置80を斜め裏側から見た分解斜視図である。図14は、本発明の第7の実施の形態に係るスピーカ装置80を斜め表側から見た斜視図である。図15は、図14中のスピーカ装置80をB−B線で切断した側断面である。図16は、図13中の一点鎖線Cで囲んだ部分の拡大図である。図17は、図15中の一点鎖線Dで囲んだ部分の拡大図である。図18は、図15中の一点鎖線Eで囲んだ部分の拡大図である。
【0079】
図13から15に示すように、スピーカ装置80は、振動板の一例となるパネル81と、パネル81を支持するための筐体109と、該パネル81を振動させる駆動体84と、から主に構成されている。筐体109は、パネル81の周囲を保護する表フレーム82と、パネル81および表フレーム82を裏側から支持する裏フレーム83と、を有している。本実施の形態では、パネル81としてOELパネルが採用されている。このため、本実施の形態に係るスピーカ装置80は、上述の第1から第6の実施の形態に係るスピーカ装置1,30,40,50,60,70と比較して、より薄型の形態を有するスピーカ装置とされている。スピーカ装置80の寸法例としては、たとえば、各辺の寸法を158mm、および厚さ寸法を8.4mmとすることが可能である。なお、パネル81の材料として、OELパネル以外のパネルを採用するようにしても良い。
【0080】
図15および図17に示すように、パネル81は、各辺が137.5mmの長さ寸法を有する白色発光パネルであり、パネル基板85と、該パネル基板85の裏側に配置されるガラス封止板86と、該ガラス封止板86の裏側に配置されるアルミニウム板からなる放熱板87と、を有する。なお、放熱板87の各辺の長さ寸法は、たとえば、約130mmで、その厚さ寸法は、たとえば、0.9mmに形成されている。また、放熱板87と後述するトッププレート100との間にはリング状の吸音材99が介在されている(図18参照)。また、図14に示すように、パネル81の表面には、たとえば、誘導案内マークの映像が表示される。
【0081】
図13等に示すように、表フレーム82は正方形の枠形状を呈している。この表フレーム82の各辺の長さは、パネル81の外形寸法と一致するように、例えば、137.5mmに形成されている。上述したように、表フレーム82は、パネル81の周囲を保持している。また、表フレーム82の裏側には裏フレーム83が配置される。裏フレーム83の表側には裏側に向かって凹状に窪む開口凹部88が設けられており、該開口凹部88には表フレーム82が嵌め込まれる(図15参照)。裏フレーム83の外形寸法は、スピーカ装置80の外形寸法と同様、たとえば、各辺の寸法を158mm、厚さ寸法を8.4mmに形成することが可能である。なお、裏フレーム83とパネル81との間には空間89が形成される(図18参照)。また、表フレーム82および裏フレーム83の材料としてアルミニウムが採用されている。
【0082】
また、スピーカ装置80の略中央には駆動体84が配設される。図13および図15に示すように、駆動体84は、ボイスコイル体90と、磁気回路91とから構成される。このボイスコイル体90は、円筒状の形態を有するボイスコイルボビン92と、ボイスコイルボビン92の外周面に巻回されて接着固定される駆動用コイルの一例となるボイスコイル93とを有する。本実施の形態では、ボイスコイル体90は、リング状の形態を有するフランジの一例となるボイスコイルフランジ94の内側に装着された状態で、パネル81の裏面81aに接着にて装着される。具体的には、ボイスコイルボビン92の表側の端部近傍に、該ボイスコイルボビン92の外側を全周に亘って覆うような形態でボイスコイルフランジ94が配置される。
【0083】
ボイスコイルボビン92の内径および高さ寸法は、たとえば、それぞれ25.9mmおよび3.2mmに形成されている。また、ボイスコイルボビン92のボビン厚さは、たとえば、0.05mmに形成され、材質としてチタンが用いられている。ボイスコイル93が巻回されるボイスコイルボビン92の外周面は、絶縁材である耐熱樹脂によりコーティングされている。ボイスコイルボビン92には、ボイスコイル93を形成する、たとえば、直径0.14mmの線材が、たとえば、巻き幅約1.96mmで、4層にわたって巻回されている。このような構成により、たとえば、約3.4〜3.9Ωの直流抵抗を有するボイスコイル93を得ることができる。
【0084】
ボイスコイルフランジ94は、リング状の形態を有する板状部材であり、材質としてアルミニウムが用いられている。ボイスコイルフランジ94は、その内径寸法が、たとえば、26.12mm、外形寸法が、たとえば、46.12mm、厚さ寸法が、たとえば、0.5mmに形成されている。図13および図16に示すように、ボイスコイルフランジ94の裏面94aには、該ボイスコイルフランジの内周側から外周側に向かって、直線状の2つの溝95,95が形成されている。この溝95,95は、ボイスコイルフランジ94の上下方向に沿った中心軸線から、たとえば、16mm隔てた位置に互いに平行に設けられている。これら溝95,95は、たとえば、0.4mmの幅寸法を有し、たとえば、0.25mmの深さ寸法を有する。なお、該ボイスコイルフランジ94の表面には、黒色アルマイト処理が施されている。なお、ボイスコイルフランジ94の形状はリング状に限定されるものではなく、他の形状としても良い。
【0085】
ボイスコイルフランジ94の内側にボイスコイル体90を装着した状態で、ボイスコイル93の巻き始め部と巻き終わり部に相当する2つのリード線96,96をボイスコイルボビン92から溝95,95の内部を通過するように這わせ、該リード線96,96を溝95,95内に接着剤にて固定する。その後、ボイスコイル体90が装着されたボイスコイルフランジ94は接着剤を用いてパネル81の裏面81aの略中央に装着される。リード線96,96を溝95,95に接着するための接着剤およびボイスコイルフランジ94をパネル81に接着するための接着剤としては、2液混合型の接着剤が用いられる。
【0086】
また、図15および図18に示すように、磁気回路91は、ヨーク97と、マグネット98と、トッププレート100とから構成されている。ヨーク97は、磁気回路91の基盤部材であり、略有底円柱状をなしている。具体的には、ヨーク97は、略円柱状の形態を有するセンターガイド部97aと、このセンターガイド部97aの裏側の端部において周方向外側に向かって全周に亘って延出する載置部97bとを有する。載置部97bには、ドーナツ状のマグネット98が載置される。このマグネット98は、センターガイド部97aの外周側に位置するように載置部97bに載置される。また、マグネット98の表側には磁性材からなるドーナツ状のトッププレート100が配置される。なお、センターガイド部97aの外周部とトッププレート100の内周部との間には所定間隔を有する磁気ギャップ101が形成されており、該磁気ギャップ101に、ボイスコイル93が配置される
【0087】
磁気回路91は、磁気ギャップ101にボイスコイル93が嵌まるように、ボイスコイル体90の裏側に配置される。この磁気回路91は、磁気回路固定リング103を介して筐体の一部となる裏フレーム83に固定される。具体的には、裏フレーム83内に位置保持された磁気回路91の裏側に、磁気回路固定リング103をネジ止めして配置させることで、磁気回路91の表裏方向の位置決めがなされている。
【0088】
図13および図16に示すように、表フレーム82には、外部からの電圧を供給するためのコネクタ104が配設されている。これにより、パネル81を発光および発音させるための電圧が、該コネクタ104を介してスピーカ装置80に供給される。該コネクタ104のコネクタピン105と発光用電極(不図示)とをパネル発光用リード線106,106を用いて接続すると共に、コネクタピン105とボイスコイル93とを発音用リード線107,107にて接続することで、コネクタ104にてパネル81の発光よび発音に要する配線接続がなされるような構造となっている。
【0089】
ここで、ボイスコイルボビン92から引き出されたリード線96は、ボイスコイルフランジ94の溝95を通過し、ボイスコイルフランジ94から外に引き出される。そして、ボイスコイルフランジ94から外に引き出されたリード線96には、直径が、たとえば、約0.6mmの錦糸線108に接続されている。この錦糸線108もパネル81の裏面81a上を這い、その端部がコネクタ104のコネクタピン105に接続されている。すなわち、発音用リード線107は、リード線96と錦糸線108とから構成される。
【0090】
本実施の形態では、リード線96の部分においては該リード線96を全て覆うように接着剤を付与し、錦糸線108の部分においては該錦糸線108とパネル81の裏面81aとの接触部分、すなわち、錦糸線108の裏側半分の領域に接着剤を付与し、発音用リード線107をパネル81の裏面81aに装着した。なお、錦糸線108を這わせた部分を覆うように、紫外線硬化型の接着剤を付与し、該錦糸線108をパネル81の裏面81aに固着するようにしても良い。このような装着方法により、パネル81の振幅時に発生するビリ音を防ぐことが可能となる。
【0091】
また、錦糸線108の端部は、半田付けにより、コネクタピン105およびリード線96に接続されている。なお、パネル81に装着されている放熱板87はアルミニウムから形成される良好な導電体であるが、本実施の形態では、放熱板87の表面に絶縁処理が施されているので、それぞれのリード線96において絶縁皮膜部分で覆われていない露出部分、および錦糸線108を放熱板87の表面に密着させても、ショートすることはない。
【0092】
図19に、上述のように構成されたスピーカ装置80の再生周波数特性のグラフを示す。
【0093】
図19に示すように、約1000Hzから約10000Hzにおける再生周波数特性は、安定したものとなり、スピーカ装置80は、オーディオ的観点から、安定した音声を充分実用に足り得る発音量にて出力することが可能である。
【0094】
また、上述のようなスピーカ装置80では、ボイスコイル体90はパネル81の裏面81aに直接装着されている。このため、単純な構成で、かつ実用性を有しながら、空間89内に容易に発音用リード線107を配置することが可能となる。したがって、スピーカ装置80の薄型化に容易に対応することが可能となる。
【0095】
また、上述のようなスピーカ装置80では、ボイスコイルフランジ94をパネル81の裏面81aに固定することによって、ボイスコイル93をパネル81に対して大きな強度で固定することができ、パネル81を駆動する際に、パネル81が局部的に加震されるのを軽減できる。また、ボイスコイルフランジ94の配置によって、パネル81の強度を補強することができ、ボイスコイルフランジ94とパネル81との接触部分において共振の発生を低減することが可能となる。
【0096】
また、上述のようなスピーカ装置80では、ボイスコイルフランジ94の裏面94aに溝95を設け、該溝95内にリード線96を挿入配置させている。このため、リード線96の直径寸法分だけスペースにおいて有利となり、薄型化を図ることが容易となる。
【0097】
また、上述のようなスピーカ装置80では、ボイスコイルフランジ94を介して発音用リード線107と、パネル81とが一体化された状態となる。このため、空間89を有効活用して、スピーカ装置80の薄型化を図ることが可能となる。
【0098】
また、上述のようなスピーカ装置80では、トッププレート100とボイスコイルフランジ94との間には吸音材99が配置されている。このため、薄型化された空間89における振幅を均一化することができ、異常音が発生するのを効果的に防止することができる。特に、吸音材99は、リング形状を有するため、振動が不均一になるのを抑制でき、音質の向上を図ることが可能となる。
【0099】
(第8の実施の形態)
以下、本発明の第8の実施の形態に係るスピーカ装置110およびその配線構造について、図面を参照しながら説明する。なお、第8の実施の形態に係るスピーカ装置110およびその配線構造において、第7の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を付すと共にその説明を省略または簡略化する。
【0100】
図20は、本発明の第8の実施の形態に係るスピーカ装置110を斜め裏側から見た分解斜視図である。図21は、図20中の一点鎖線Fで囲んだ部分の拡大図である。図22は、図20中の一点鎖線Gで囲んだ部分の拡大図である。
【0101】
図20に示すように、スピーカ装置110は、振動板の一例となるパネル111と、パネル111を支持する筐体112と、パネル111を振動させる駆動体84と、から主に構成されている。筐体112は、パネル111を支持する表フレーム114と、パネル111および表フレーム114を裏側から支持する裏板115と、を有する。本実施の形態では、パネル111としてIELパネルが採用されている。スピーカ装置110の寸法例としては、たとえば、左右方向の幅寸法を225mm、上下方向の長さ寸法を312mmおよび厚さ寸法を7.4mmとすることが可能である。なお、パネル111の材料として、IELパネル以外のパネルを採用するようにしても良い。
【0102】
パネル111は、たとえば、307.6mmの長さ寸法および0.4mmの厚さ寸法を有するアルマイト処理が施されたアルミニウム板に、たとえば、307.6mmの長さ寸法および0.9mmの厚さ寸法を有するIELパネルを粘着剤にて貼付け装着することにより構成されている。
【0103】
図20に示すように、表フレーム114は、該表フレーム114の外周部に設けられる略四角枠状の外枠部116と、該表フレーム114の略中央において駆動体84を保持する磁気回路装着部の一例となる磁気回路フランジ部117と、外枠部116と磁気回路フランジ部117との間に架け渡される合計8つの桟部118とを有する。このため、表フレーム114は、磁気回路フランジ部117の上下左右、左斜め両側および右斜め両側に、たとえば、合計8個の略矩形状の開口部120を有する。すなわち、表フレーム114は、平面視すると略井桁状の形態を有している。また、表フレーム114は、たとえば、厚さ8mmのアルミニウム板をフライスにて切削加工することにより形成される。表フレーム114の外形寸法は、スピーカ装置110の外形寸法と同様、左右方向の幅寸法を、たとえば、225mm、上下方向の長さ寸法を、たとえば、312mmおよび厚さ寸法を、たとえば、7.4mmに形成することが可能である。
【0104】
さらに、表フレーム114の表側は、外枠部116の外縁に、たとえば、2mmの幅を持たせ、その内側の領域に、たとえば、深さ0.8mmのザグリ加工が施されている。一方、表フレーム114の裏面は、表側の場合と同様、外枠部116の外縁に、たとえば、2mmの幅を持たせ、その内側の領域に、たとえば、深さ1.5mmのザグリ加工が施されている。このため、外枠部116の表側および裏側には四角枠状に沿った段差部121(裏側の段差部121のみ図示)が形成されることになる。なお、外枠部116における段差部121よりも内側の部分、磁気回路フランジ部117および桟部118は、ザグリ加工が施された状態で形成されており、それらの表側および裏側の面は面一となっている。
【0105】
さらに、表フレーム114の表側は、外枠部116の外縁から内周側に向かって、たとえば、14mm隔てた位置に、たとえば、深さ2.9mmのザグリ加工が施されている。このザグリ加工により、表フレーム114の表側の段差部121は、たとえば、幅12mmの略四角枠状の当接面を有することになる。すなわち、表側の段差部121の外周から内側に向かって、たとえば、12mm隔てた位置に、さらに段差が形成された状態となる。そして、パネル111は表側の段差部121嵌まり込むように、表フレーム114の表側に装着される。このため、表フレーム114の表側にパネル111が装着された状態では、該パネル111は、上記当接部よりも内側の領域において表フレーム114と接触していない。
【0106】
なお、本実の形態では、外枠部116、磁気回路フランジ部117および桟部118の全てを一体に設けたが、表フレーム114は当該構成に限定されるものではなく、たとえば、生産工程、あるいはメンテナンス等を考慮して、外枠部116、磁気回路フランジ部117および桟部118の一部もしくは全部を別部品として形成しても良い。たとえば、磁気回路フランジ部117と桟部118とを一体に形成し、外枠部116を別部品としても良いし、外枠部116と桟部118を一体に形成し、磁気回路フランジ部117を別部品としても良い。
【0107】
さらに、磁気回路フランジ部117の裏側には、駆動体84を配置するための穴部122が形成されている。穴部122は、磁気回路フランジ部117の中央、すなわち、表フレーム114を平面視したときの中心部に設けられる。該穴部122は、たとえば、直径56.02mmの貫通穴122aと、磁気回路フランジ部117の裏側において貫通穴122aの外周部に平面視してリング状の形態で形成されるリング段差部122bとを有する。リング段差部122bは、貫通穴122aの外側に、たとえば、直径74.1mm、深さ1.5mmでザグリ加工を施すことによって形成される。また、リング段差部122bにおいて貫通穴122aの中心から、たとえば、33mmの位置には、周方向に沿って45度間隔おきに、たとえば、合計8つのタップ穴123が設けられている。該タップ穴123の直径は、たとえば、2mmに形成されている。
【0108】
また、表フレーム114の上下方向に沿った中心線よりも左側の位置において、上下方向に沿って設けられる2つの桟部118および磁気回路フランジ部117には、上下方向に沿った長溝124が形成されている。この長溝124は、穴部122から上方に向かって形成される上方長溝125と、穴部122から下方に向かって形成される下方長溝126と、上方長溝125と下方長溝126との間において、穴部122の外周に円弧状に形成される円弧長溝127と、を有する。当該長溝124は、たとえば、幅2.6mm、深さ1.6mmの溝として形成されている。また、磁気回路フランジ部117の下方に設けられる開口部120の外周部にも、下方長溝126と連接する形態で略U字状のU字長溝128が形成されている。
【0109】
駆動体84は、ボイスコイル体90と、磁気回路91とから構成される。ボイスコイル体90は、ボイスコイルボビン92と、ボイスコイルボビン92の外周面に巻回されて接着固定されるボイスコイル93とを有する。本実施の形態では、ボイスコイル体90は、ボイスコイルフランジ94の内側に装着された状態で、パネル111の裏面111aに接着にて装着される。なお、本実施の形態で使用されているボイスコイルボビン92は、第7の実施の形態で使用されたボイスコイルボビン92よりも高さ寸法が、たとえば、1mm大きく形成されている。
【0110】
ボイスコイルフランジ94の内側にボイスコイル体90を装着した状態で、ボイスコイル93の巻き始め部と巻き終わり部に相当する2つのリード線96,96をボイスコイルボビン92から溝95,95の内部を通過するように這わせ、該リード線96,96を溝95,95内に接着剤にて固定する。その後、ボイスコイル体90が装着されたボイスコイルフランジ94は接着剤を用いてパネル81の裏面の略中央に装着される。また、磁気回路91は、第7の実施の形態の場合と同様、ヨーク97と、マグネットと、トッププレートとから構成されている。
【0111】
磁気回路91は、第7の実施の形態の場合と同様、磁気ギャップにボイスコイル93が嵌まるように、ボイスコイル体90の裏側に配置される。この磁気回路91は、磁気回路固定リング103を介して筐体の一部となる裏板115に固定される。具体的には、裏板115が表フレーム114の裏側に装着された状態で、磁気回路91を穴部122内に配置させる。その後、磁気回路固定リング103をリング段差部122bの裏側に配置させ、ネジを磁気回路固定リング103に設けられる貫通孔に挿通させると共にタップ穴123に螺入させることで、磁気回路91の表裏方向の位置決めがなされている。
【0112】
一方、図20に示すように、表フレーム114における長溝124およびU字長溝128溝には、ボイスコイルを駆動させるための2本の配線材の一例となる巡回リード線130を這わせて配置してある。巡回リード線130は一般的に多用されている、導電性を有する金属線を塩化ビニル樹脂によって被覆した、たとえば、直径約1mm程度の線材である。
【0113】
表フレーム114の下側には、コネクタ端子131が配設されており、巡回リード線130の一方の端部は該コネクタ端子131のコネクタピン132に接続されている。また、本実施の形態の場合、パネル111の裏面111aの中央部を駆動体84にて駆動させるとともに、他の部分を上下方向に沿った中心線上に、たとえば、合計4つ配置された圧電振動体140にて駆動させている。すなわち、パネル111を2WAYの駆動方式によって駆動させている。
【0114】
圧電振動体140は、ステンレス製の金属製基板141(シム)と、金属製基板141を挟んで配置される2枚のピエゾ素子142を有する、いわゆる、バイモルフ型ピエゾ素子として構成されている。ピエゾ素子142は、たとえば、縦長13.5mm、横長31mmで、厚さ0.8mmの矩形の薄板体を呈している。そして、圧電振動体140は、取付具143を介してパネル111の裏面111aに取り付けられる。
【0115】
取付具143は、一対の支持部材144,144により構成されている。支持部材144は、全体として角柱形状を呈する角柱部145とその両端に設けられる四角柱部146とを有しており、たとえば、アクリル樹脂材により角柱部145と四角柱部146とが一体的に形成されている。圧電振動体140は、その中央部の表裏面を支持部材144(角柱部145)にて挟み込み、該挟み込んだ状態で、接着等の手段にて固定する。さらに、圧電振動体140を狭持している支持部材144が、パネル111の裏面111aに、アクリル系接着剤にて接着装着される。このため、該圧電振動体140の振動は、該支持部材144(取付具143)を介して、パネル111の裏面111aに伝達される構造となっている。
【0116】
圧電振動体140を振動させるためには、電気信号を入力することが必要とされる。図20および図21に示すように、圧電振動体140に対する電気信号の入力は、表裏に配置されるピエゾ素子142同士を配線接続し、入力リード線149をピエゾ素子142の表面および金属製基板141の表面にそれぞれ接続することによりなされる。本実施の形態では、図21に示すように、錦糸線からなる入力リード線149の一方の端部をピエゾ素子142の表面または金属製基板141の表面に半田付けにて接続し、該入力リード線149の他方の端部を上述の長溝124に這わせた巡回リード線130の端部に半田付けにて接続してある。
【0117】
また、本実施の形態では、表フレーム114に配置される4個の圧電振動体140の配線にはパラ配線が用いられているので、図21に示すように、それぞれの巡回リード線130を被覆している塩化ビニル樹脂を所望箇所にて剥離切除し、該剥離部分より露出した金属線の表面に所定長さのジャンパー線147の一端部が半田付けにて接続されている。一方、図21に示すように、ジャンパー線147の他端部は、開口部120の内側に延出しており、該ジャンパー線147の他端部は、ピエゾ素子142および金属製基板141に接続された入力リード線149の端部と半田付けにて接続される。なお、ジャンパー線147と巡回リード線130との接続部分には、両者が配線接続された後、該接続部分に紫外線硬化型接着剤を付与し、紫外線を照射させて効果させてある。このため、ジャンパー線147と巡回リード線130との接続部分は、長溝124内に封止された構造となっている。また、巡回リード線130の所望の箇所や、コネクタ端子131の周辺部分も、上述のように封止するような構造とされている。なお、本実施の形態では、長溝124内においてジャンパー線147や巡回リード線130等を局所的に封止する構造としたが、長溝124,128内のジャンパー線147や巡回リード線130等の全てを封止するようにしても良い。
【0118】
表フレーム114はアルミニウム製であり、良好な導電材であるが、本実施の形態では、その表面にアルマイト処理が施されている。このため、アルマイトが絶縁材となり、上述のジャンパー線147、あるいは巡回リード線130において金属線が露出した部分への半田付け部等が、外部と接触しショートすることが防されている。
【0119】
また、本実施の形態では、図20に示すように、ボイスコイル93から引き出されたリード線96には、たとえば、幅約4mm、たとえば、長さ約30mmで、たとえば、厚さ50μの矩形の薄板体を呈する導電体の一例となる銅箔150が接続されている。リード線96は銅箔150の一端側に接続されている。また、図22に示すように、銅箔150の他端側は、錦糸線151を介して、U字長溝128内に這わせて配置された巡回リード線130に半田付けにより接続されている。すなわち、リード線96は、銅箔150を介して巡回リード線130に接続される。この銅箔150は、パネル111の裏面111aに接着剤にて装着されている。これにより、大面積を有するパネル111が大きな振幅で振動した場合でも、リード線96が金属製の表フレーム114に接触して異音が発生することを防止でき、さらには、リード線96が金属製の表フレーム114と接触してショートすることを防止できる。
【0120】
図23に、上述のように構成されたスピーカ装置110の再生周波数特性のグラフを示す。なお、図23において、本実施の形態のスピーカ装置110の周波数特性を実線で示し、従来のスピーカ装置の周波数特性を破線で示すものとする。
【0121】
図23に示すように、本実施の形態に係るスピーカ装置110は、従来のスピーカ装置と比較して、約2000Hzにおいてディップが生じることがなく、約2000Hzから約10000Hzにおける再生周波数特性が安定したものとなっている。このため、スピーカ装置110は、オーディオ的観点から、安定した音声を充分実用に足り得る発音量にて出力することが可能である。
【0122】
上述のように構成されたスピーカ装置110では、パネル111の裏面111aに銅箔150等の薄膜状の導電体が装着されている。このように、銅箔150を中継用あるいは、ボイスコイル93に対する入力用導体として用いることにより、パネル111と筐体112との間の空間を有効に活用することができ、その結果、スピーカ装置110の薄型化を図る上で有利なものとなる。
【0123】
また、上述のように構成されたスピーカ装置110では、表フレーム114に長溝124,128を設け、該長溝124,128に巡回リード線130等の配線材を配置装着させている。このような構成により、配線作業の工数を減少させることが可能となる。また、巡回リード線130等の各種配線材が、パネル111の裏面111aに接触することがなくなり、各種線材を筐体112内に確実に固定することが可能となる。
【0124】
また、上述のように構成されたスピーカ装置110では、表フレーム114に長溝124,128等を設けることにより、巡回リード線130等の各種配線材を筐体112内に確実に配置させるような構成とされている。このため、各種リード線がパネル111と筐体112との間の空間にて、無造作に配置されることが防止できる。したがって、パネル111の振動時に、該パネル111の裏面111aにリード線96,130等の配線が接触し、異常音が発生するのを防止できると共に、スピーカ装置110の薄型化を図ることができる。
【0125】
また、上述のように構成されたスピーカ装置110では、表フレーム114は外枠部116、磁気回路フランジ部117および桟部118が一体的に設けられるような構成を有する。このため、筐体112の作製工数を大幅に削減することができる。また、このような構成により、スピーカ装置110の強度の向上を図ることができると共に、音質の向上および軽量化を図ることが可能となる。
【0126】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述の形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0127】
上述の第1から第6の各実施の形態では、銅箔18には、錦糸線からなるリード線17,31,41,62が接続されているが、銅箔18に接続されるリード線17,31,41,62として、錦糸線を採用することに限定されるものではなく、たとえば、リード線17,31,41,62を、金属製の線材を塩化ビニル樹脂で被覆した一般的な線材等としても良い。
【0128】
また、上述の第1から第6の各実施の形態では、リード線17,31,41,62は、外側に向かって緩やかな弧状に撓んでいるが、リード線17,31,41,62を緩やかな弧状に撓ませることに限定されず、たとえば、リード線17,31,41,62を他の形状で撓ませるようにしてもよいし、撓ませないようにしても良い。
【0129】
また、上述の第7および第8の実施の形態では、ボイスコイルフランジ94が配置されているが、ボイスコイルフランジ94を配置せず、リード線96をパネル81,111の裏面81a,111aに、直接、接着するようにしても良い。
【0130】
また、上述の第8の実施の形態では、リード線96は、銅箔150を用いて巡回リード線130に接続されているが、銅箔150の替わりに、目的に応じて、導電体によるメッキ、あるいは、蒸着等の手段を採用しても良いし、当該部分の耐振動性を考慮したパターン印刷等を採用することも可能である。このような手法を応用すれば、プリント基板、あるいは、フレキシブルプリント基板等に所望の配線パターンを描き、該配線パターン面にボイスコイル93およびピエゾ素子142等のアクチュエータを装着し、該プリント基板等そのものを直接発音させることも可能となり、スピーカ装置110の配線工数を大幅に低減すことも可能となる。
【0131】
また、上述の第8の実施の形態では、アルミニウム板の上にIELパネルを装着したパネル111を発音させたが、パネル111の材料はこの限りではなく、目的に応じて適したパネル材料を選択するようにしても良い。
【0132】
また、上述の第7および第8の実施の形態では、筐体の材料として、アルミニウムが採用されているが、筐体の材料はアルミニウムに限定されるものではなく、その他の金属、樹脂あるいは金属と樹脂の複合材等を目的に応じて使用しても良い。筐体に用いられるそれぞれの材料を異なるものとして、共振点を異ならせるようにすることで、音質の向上を図るが可能となる。
【0133】
また、上述の第7の実施の形態では、トッププレート100とボイスコイルフランジ94との間には吸音材99が配置されているが、吸音材99を配置しないようにしても良いし、吸音材99の替わりにクッション材等の他の部材を配置するようにしても良い。また、上述の第8の実施の形態においても、トッププレート100とボイスコイルフランジ94との間に吸音材を配置するようにしても良い。
【符号の説明】
【0134】
1,30,40,50,60,70,80,110…スピーカ装置 10,81,111…パネル(振動板) 10a,81a,111a…裏面 11,89…空間 14,91,…磁気回路 15,94…ボイスコイルボビン(駆動用コイル保持部) 16,93…ボイスコイル(駆動用コイル) 17,31,41,62,72,96…リード線(入力用リード線) 18…銅箔 21…マグネットフランジ(筐体の一部) 24,100…トッププレート 51,61,94…ボイスコイルフランジ(フランジ) 63,96…溝 82…表フレーム(筐体の一部) 83…裏フレーム(筐体の一部) 99…吸音材 109,112…筐体 116…外枠部 117…磁気回路フランジ部(磁気回路装着部) 118…桟部 125…上方長溝(溝) 126…下方長溝(溝) 128…U長溝(溝) 130…巡回リード線(配線材) 150…銅箔(導電体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の振動板と、
上記振動板に装着される駆動用コイルと、
上記駆動用コイルを含み上記振動板を駆動する磁気回路と、
を有するスピーカ装置の配線構造において、
上記振動板と上記磁気回路との間に形成される空間に、上記駆動用コイルへの入力用リード線を配置し、上記駆動用コイルを保持する駆動用コイル保持部の外周にて、該入力用リード線の先端と上記駆動用コイルの先端とを電気的に接続することを特徴とするスピーカ装置の配線構造。
【請求項2】
請求項1記載のスピーカ装置の配線構造において、
前記入力用リード線を、前記振動板または前記磁気回路に中継させることを特徴とするスピーカ装置の配線構造。
【請求項3】
請求項1または2記載のスピーカ装置の配線構造において、
前記入力用リード線を、前記振動板において前記磁気回路と対向する面である裏面上に固定することを特徴とするスピーカ装置の配線構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載のスピーカ装置の配線構造において、
前記入力用リード線は錦糸線からなることを特徴とするスピーカ装置の配線構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載のスピーカ装置の配線構造において、
前記入力用リード線には、該入力用リード線が前記振動板の振動方向に対して直交方向に沿うように、フォーミング加工が施されていることを特徴とするスピーカ装置の配線構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載のスピーカ装置の配線構造において、
前記駆動用コイルを保持する前記駆動用コイル保持部の外周端にフランジを装着し、該フランジに入力用リード線を沿わせて配置したことを特徴とするスピーカ装置の配線構造。
【請求項7】
請求項6記載のスピーカ装置の配線構造において、
前記フランジは略リング状の形態を有しており、該フランジの平面に、その内周部から外周部にわたって溝を設け、該溝に入力用リード線を沿わせて配置させることを特徴とするスピーカ装置の配線構造。
【請求項8】
請求項7記載のスピーカ装置の配線構造において、
前記駆動用コイル保持部の外周面における所望の位置に銅箔を装着し、該銅箔に前記溝に配置された前記入力用リード線の先端を接続することを特徴とするスピーカ装置の配線構造。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載のスピーカ装置の配線構造において、
前記振動板の裏面に薄膜状の導電体を装着し、該導電体を介して前記入力用リード線を前記駆動用コイルに接続することを特徴とするスピーカ装置の配線構造。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項記載のスピーカ装置の配線構造において、
前記振動板の裏面に導電体をメッキ、あるいは、蒸着にて薄膜状に装着し、該導電体を介して前記入力用リード線を前記駆動用コイルに接続することを特徴とするスピーカ装置の配線構造。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか1項記載のスピーカ装置の配線構造において、
前記磁気回路は筐体に保持されており、
前記入力用リード線もしくは前記入力用リード線に接続される配線材を上記筐体の有する面に這わせて配置することを特徴とするスピーカ装置の配線構造。
【請求項12】
請求項11項記載のスピーカ装置の配線構造において、
前記筐体の所望の箇所に溝を設け、該溝に前記入力用リード線もしくは前記入力用リード線に接続される配線材を配置することを特徴とするスピーカ装置の配線構造。
【請求項13】
請求項11または12記載のスピーカ装置の配線構造において、
前記筐体は、枠形状を呈する外枠部と、前記磁気回路が装着される磁気回路装着部と、上記磁気回路装着部と上記外枠部とを接続する桟部と、を有し、
上記磁気回路装着部、上記外枠部および上記桟部の一部もしくは全部は一体的に形成され、上記磁気回路装着部、上記外枠部および上記桟部の所望の位置に前記入力用リード線もしくは前記入力用リード線に接続される配線材を這わせて配置することを特徴とするスピーカ装置の配線構造。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項記載のスピーカ装置の配線構造を有することを特徴とするスピーカ装置。
【請求項15】
請求項14記載のスピーカ装置において、
前記空間において前記磁気回路を構成するトッププレートと対向する位置に、吸音材あるいはクッション材を配置することを特徴とするスピーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−135233(P2011−135233A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291484(P2009−291484)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(508209990)J&Kカーエレクトロニクス株式会社 (98)
【Fターム(参考)】