説明

スピーカ

【課題】耐入力の向上を図ると共に、作業性に優れた小型の細長形スピーカを提供することを目的とする。
【解決手段】振動板2に接合しボイスコイルボビン4に接合する結合部材13と、一端が結合部材13に接合し他端がダンパー支持体23に接合する可動部22aとからなるダンパー構造体21を備え、結合部材13は振動板2に接合する前段部13aとボイスコイルボビン4に接合する後段部13bとを備え、前段部13aは細長形状で短径側の長さは振動板2の短径側の長さと同じ、または小さく形成されると共に孔14cが形成された架橋部14を備え、後段部13bの内径は振動板2の短径側の長さよりも大きい形状を有している。結合部材13を介してボイスコイルボビン4を振動板2に接合するためボイスコイル径を大きくでき、架橋部14によって振動板2との接合強度を向上できるため耐入力の向上が図れると共に作業効率を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスピーカに関し、特に楕円形状やトラック形状などの細長形のスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカは家庭用音響機器、車載用音響機器だけでなく、パーソナルコンピュータ、携帯電話、ゲーム機器やさまざまな電子機器に広く使用されている。電子機器は小型化、薄型化が進んでおり、これらの小型化や薄型化に際してはスピーカも同様に小型化、薄型化が必要になるため、スピーカに対してもより一層の小型化、薄型化および高性能化が求められている。高性能化としては、音質が優れている他に、高耐入力が求められている。電子機器の小型化、薄型化に伴い、スピーカも限られた空間に設置する必要性があり、細長い空間の場合にはスピーカも細長い形状とする必要がある。高耐入力とするためには、ボイスコイル径を大きくする必要があるが、細長形のスピーカは短径寸法が限られるため、ボイスコイル径を大きくできず、高耐入力とすることが難しい。細長形のスピーカは短径寸法を変えずにボイスコイル径を大きくすると、振動板のエッジ幅が小さくなり、振動板の振幅が制限される結果、再生帯域が狭くなるという問題がある。
【0003】
このような細長形のスピーカにおいて、ボイスコイルの上端を切り欠いて振動板の短径側に非結合部を設けることにより振動板のエッジ幅を確保して再生帯域を広くできると共に、ボイスコイルの大径を図り、耐入力を向上させたスピーカが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のスピーカは、トラック形の振動板の短径側において、ボイスコイルの上端を切り欠くことによって非結合部を設けた構成である。この結果、ボイスコイル径を大きくしても非結合部によってボイスコイル駆動時にボイスコイルとエッジとの衝突が防止できるため、スピーカの耐入力を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3956485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のスピーカは、ボイスコイルの上端を切り欠く作業が必要であると共に、ボイスコイルと振動板との接合に際し、ボイスコイルの上端面を振動板に接合するため、接合強度が必ずしも十分ではない。このため、高入力信号がボイスコイルに入力された場合、ボイスコイルの上端面と振動板との接合箇所での剥離や破損が生じる虞がある。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑み、耐入力の向上及びボイスコイルボビンと振動板との接合強度の向上を図った細長形スピーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係るスピーカは、フレームと、細長形状の振動板と、内周部が前記振動板に接合し、外周部が前記フレームに接合するエッジと、ボイスコイルボビンに巻回され、前記振動板を振動させるボイスコイルと、磁気回路と、を備えたスピーカにおいて、
前記振動板に接合し前記ボイスコイルを巻回した前記ボイスコイルボビンに接合する結合部材と、一端が前記結合部材に接合し他端がダンパー支持体に接合してなる可動部とからなるダンパー構造体を備え、
前記結合部材は前記振動板に接合する前段部と、該前段部に接合し前記ボイスコイルを巻回した前記ボイスコイルボビンに接合する後段部とを備え、前記結合部材の前記前段部は細長形状であって、前記前段部の短径側の長さは前記振動板の短径側の長さと同じ、または小さく形成されると共に孔が形成された架橋部を備え、前記後段部の内径は前記振動板の短径側の長さよりも大きい形状を有し、前記可動部はダンパーとして機能し、前記可動部は前記可動部に連接する直線部を介して前記後段部と接合し、前記直線部と前記後段部との接合箇所に曲面部を形成してなることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、結合部材を介してボイスコイルを巻回したボイスコイルボビンを振動板に接合できるため、ボイスコイル径を大きくできると共に、架橋部によって結合部材と振動板とを強固に接合できるため耐入力の向上を図ることができ、かつボイスコイルボビンの接合が容易にできるため作業性に優れた小型の細長形スピーカが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐入力の向上及びボイスコイルボビンと振動板との接合強度の向上を図った細長形スピーカを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のスピーカの分解斜視図である。
【図2】図1に示すスピーカの短径方向での断面図である。
【図3】図1に示すダンパー構造体を示す斜視図である。
【図4】振動板にダンパー構造体を接合した状態を説明するための図である。
【図5】図4に示すダンパー構造体にボイスコイルを巻回したボイスコイルボビンを装着した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1は本発明の実施例1の形態に係るスピーカの分解斜視図、図2は本発明の実施例1の形態に係るスピーカの短径方向での断面図、図3は図1に示すダンパー構造体を示す斜視図、図4は振動板にダンパー構造体を接合した状態を説明するための図、図5は図4に示すダンパー構造体にボイスコイルを巻回したボイスコイルボビンを装着した状態を示す図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るスピーカ1は細長形スピーカで、ボイスコイル4aを2個備えた構成である。2は細長形状の振動板で、振動板2の外周部にはエッジ3が形成されている。6はフレーム、21はダンパー構造体、4はボイスコイルボビンで、ボイスコイルボビン4にはボイスコイル4aが巻回されている。磁気回路7はポールピース9、マグネット10、ポットヨーク12から構成されている。そして、ボイスコイル4aが巻回されたボイスコイルボビン4と磁気回路7がダンパー構造体21に取り付けられ、振動板2とダンパー構造体21がフレーム6に装着されてスピーカ1が構成されている。
【0015】
図2は本発明の実施形態に係るスピーカの短径方向断面図で、結合部材13の前段部13aに振動板2を接合した状態を示した図である。図に示すように、架橋部14の接合面14aには裏面14b側に貫通する孔14cが複数個形成されている。接着剤を接合面14aに塗布した後、振動板2を接合面14aに接合した際に余分な接着剤が孔14cから裏面14b側に廻り込む。このため、振動板2と接合面14aの間には過剰な接着剤が滞留することなく、適切な量の接着剤が介在できる結果、良好なる接着状態とすることができる。この孔14cは接合面14a側から裏面14b側に向かうに従って径が漸減した形状を有している。このため、接着剤は裏面14b側に廻り込む量が制御され、裏面14b側の出口周辺で滞留する。このため、接着剤は接合面14aと裏面14b側で連通した状態で固化することにより、振動板2と接合面14aを強固に固着することができる。
【0016】
図3は図1に示すダンパー構造体21を示す図である。ダンパー構造体21は樹脂を用いた射出成型にて形成され、振動板2の裏面に接合する前段部13aとボイスコイルボビン4に接合する後段部13bからなる結合部材13と、後段部13bに接合したダンパー部22と、ダンパー支持体23からなっている。振動板2に接合する前段部13aは細長形状(例えば、トラック形状、長円形状など)の振動板2に合わせて細長形状にて形成され、前段部13aに接合した後段部13bはボイスコイル4aが巻回された円筒状のボイスコイルボビン4を接合するため、円環形状に形成されている。
【0017】
また、振動板2に接合する前段部13aには短径方向において、架橋部14が形成されている。前段部13aの端面13dと架橋部14の接合面14aは振動板2と接合されるため、これらの面は振動板2と同じ曲面形状に形成されている。また、架橋部14の接合面14aには裏面14b側に貫通する孔14cが複数個形成されている(図では3個の孔14cが形成されている)。この孔14cは接合面14a側から裏面14b側に向かうに従って径が漸減した形状で、例えば円錐状に形成されている。
【0018】
なお、本実施形態における架橋部14は前段部13aの短径方向に形成しているが、これに限定されるものではなく、前段部13aの長径方向に形成したものであってもよい。
【0019】
また、孔14cの形状及び個数は実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて形状、個数が設定される。
【0020】
ダンパー部22は後段部13bに接合する直線部22bと、直線部22bに連接する可動部22aから構成され、可動部22aがダンパーとして機能する。直線部22bは板状にて形成され、後段部13bの端面13cと接合しており、直線部22bに連接する可動部22aは板状の部材が波型にて形成され、この波型の箇所が可動してダンパーとして機能する。可動部22aの一端は直線部22bに連接し、他方端はダンパー支持体23に接合している。前段部13a、後段部13b、直線部22b、可動部22a及びダンパー支持体23は樹脂の射出成型にて一体に形成されている。
【0021】
図4は振動板2の裏面にダンパー構造体21を接合した状態を説明するための図で、便宜上、ダンパー構造体21の内、結合部材13のみを示している。図4に示すように、振動板2に接合する前段部13aは細長形状で、細長形状の前段部13aの短径側の寸法は振動板2の短径側の寸法と同じ、または小さい寸法に設定されて接合される。前段部13aと振動板2との接合は前段部13aの端面13dに塗布された接着剤にて接合する。そして、前段部13aに接合した後段部13bは円環形状で、後段部13bの内径は振動板2の短径側寸法の制約を受けることなく、振動板2の短径側寸法より大径にすることができる。
【0022】
図5は図4に示す振動板2に結合部材13を示した状態にボイスコイル4aが巻回されたボイスコイルボビン4を接合した状態を示した図である。ボイスコイル4aが巻回されたボイスコイルボビン4は円筒形状で、円筒形状のボイスコイルボビン4の一方側を円環形状の後段部13bに嵌入させ、後段部13bの内周に装着させる。このとき、ボイスコイルボビン4の端面は前段部13aに当接して位置決めがなされる。ボイスコイルボビン4と後段部13bとの接合は接着剤などによって接合される。
【0023】
したがって、ボイスコイル4aの径は振動板2の短径側寸法の制約を受けることなく振動板2の短径側寸法より大径にすることができる結果、高耐入力とすることができる。
【0024】
なお、本実施形態の説明では、ボイスコイルを2個備えたスピーカ構造について説明したが、これに限定されるものではなく、ボイスコイルを1個備えた細長形スピーカであっても勿論よい。
【符号の説明】
【0025】
1 スピーカ
2 振動板
3 エッジ
4 ボイスコイルボビン
4a ボイスコイル
6 フレーム
7 磁気回路
9 ポールピース
10 マグネット
12 ポットヨーク
13 結合部材
13a 前段部
13b 後段部
13c 端面
13d 端面
14 架橋部
14a 接合面
14b 裏面
14c 孔
21 ダンパー構造体
22 ダンパー部
22a 可動部
22b 直線部
23 ダンパー支持体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、細長形状の振動板と、内周部が前記振動板に接合し、外周部が前記フレームに接合するエッジと、ボイスコイルボビンに巻回され、前記振動板を振動させるボイスコイルと、磁気回路と、を備えたスピーカにおいて、
前記振動板に接合し前記ボイスコイルを巻回した前記ボイスコイルボビンに接合する結合部材と、一端が前記結合部材に接合し他端がダンパー支持体に接合してなる可動部とからなるダンパー構造体を備え、
前記結合部材は前記振動板に接合する前段部と、該前段部に接合し前記ボイスコイルを巻回した前記ボイスコイルボビンに接合する後段部とを備え、
前記結合部材の前記前段部は細長形状であって、前記前段部の短径側の長さは前記振動板の短径側の長さと同じ、または小さく形成されると共に孔が形成された架橋部を備え、
前記後段部の内径は前記振動板の短径側の長さよりも大きい形状を有し、
前記可動部はダンパーとして機能し、前記可動部は前記可動部に連接する直線部を介して前記後段部と接合してなることを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
前記架橋部は前記前段部の短径方向に架橋して形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記架橋部は前記前段部の長径方向に架橋して形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記架橋部は前記振動板と接合する接合面に備え、前記孔が前記接合面に形成され、前記孔は貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ。
【請求項5】
前記孔は前記架橋部の接合面側から裏面側に向かうに従って孔径が漸減してなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスピーカ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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