スラリーポンプ
【課題】容易かつ安価にケーシングの防水性が高められるスラリーポンプを提供することを目的としている。
【解決手段】本発明のスラリーポンプ10は、スラリーの吸込口22及び吐出口24を備え、前記吸込口22と前記吐出口24が接続する内室26で回転するインペラ30を覆うケーシング20と、前記ケーシング20の外表面に被膜した防水膜60と、を備え、前記防水膜60は、前記ケーシング20の表面を覆う網状の第1膜62と、前記第1膜62の上に被膜した防水性の第2膜64とからなり、前記ケーシング20と前記第1膜62の隙間から前記ケーシング20の漏水を外部へ排出させることを特徴としている。
【解決手段】本発明のスラリーポンプ10は、スラリーの吸込口22及び吐出口24を備え、前記吸込口22と前記吐出口24が接続する内室26で回転するインペラ30を覆うケーシング20と、前記ケーシング20の外表面に被膜した防水膜60と、を備え、前記防水膜60は、前記ケーシング20の表面を覆う網状の第1膜62と、前記第1膜62の上に被膜した防水性の第2膜64とからなり、前記ケーシング20と前記第1膜62の隙間から前記ケーシング20の漏水を外部へ排出させることを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に摩耗性の高い液体を吐出することができるスラリーポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄工程において、高温の溶融スラグが発生し冷却して固化すると鉄鋼スラグとなる。鋼鉄スラグは、炉の違いにより、高炉からの高炉スラグと、転炉又は電気炉からの製鉄スラグに分類される。このうち高炉スラグは、冷却方法によって高炉徐冷スラグと、高炉水砕スラグの2種類に分類されている。高炉水砕スラグは、ガラス質の砂状であり、一般にコンクリート用骨材、土木、セメント、肥料、ガラス原料、道路等の原料として利用されている。
【0003】
図10は高炉水砕スラグの製造工程の説明図である。高炉水砕スラグの製造は、まず、高炉100から排出された溶融スラグに吹製装置110からの高圧水を噴射させている。そうするとスラグが急冷されて砂状となり、スラリー(水とスラグの混合溶液)として後段の撹拌槽120に供給される。撹拌槽120でスラグと水の混合状態とし、スラリーをスラリーポンプ130で脱水槽140に供給する。脱水槽140ではスラグと分離水とに分離される。スラグは搬出装置150により外部へ搬出される。一方、分離水は、沈降槽160に供給されて、排泥と上澄液とに分離される。排泥は再度脱水槽140へ供給される。一方、上澄液は、隣接する温水槽170へオーバーフローする。温水槽170の処理水は冷却塔用ポンプ180により冷却塔190に供給され、所定温度に冷却されて冷水槽200に貯水される。冷水槽200の処理水は、給水ポンプ210により吹製装置110の高圧水に再利用される。
【0004】
ここで撹拌槽120からスラリーを脱水槽140に供給するスラリーポンプ130は、効率的にスラグを供給するため、撹拌槽120の排出口近く(図10では撹拌槽120の下方となる地下)に設置されている。このようなスラリーポンプ130は、スラリーなど摩耗性の高い液体をケーシング内へ吸い込んでいる。このため、原料に硬度の高いスラグの塊が含まれていると、ケーシング内のインペラと接触してケーシングが破損する虞があった。ケーシングは、材質に高クロム鋼を用いて硬度を高めている。前述のケーシングの破損が起こると、硬度が高いが故に破損の成長がもたらされる。そうすると、地下に設置されたスラリーポンプ130は水没して、水砕スラグの製造工程が停止してしまう。稼動中の高炉を急停止することは不可能であり、このようなスラリーポンプ130の故障は望ましくない。
そこでスラリーポンプの故障を防止するために、特許文献1に開示のようなポンプのケーシングを二重構造にすることで、ポンプの強度を高めて故障を回避している。
【0005】
図11は従来のスラリーポンプのケーシングの概略断面図である。図示のように、従来のスラリーポンプ300は、スラリーの吸込口310及び吐出口320を備えたケーシング330を備えている。ケーシング330は、内部に回転自在にインペラ350を収容する第1ケーシング332と、第1ケーシング332を密封した第2ケーシング334から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3148662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらケーシングを二重構造にすると、確かに内側の第1ケーシングが破損した場合でも、外側の第2ケーシングによって内側の第1ケーシングの破壊による漏水が外部に流出することを防止できる。しかし、二重構造のケーシングは、重量物であり製造コストも高く、作業者の点検が難しいという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点を解決するため、容易かつ安価にケーシングの防水性が高められるスラリーポンプを提供することを目的としている。
また、本発明は、ケーシングのひび割れ等の破損を初期段階で検知可能なスラリーポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスラリーポンプは、スラリーの吸込口及び吐出口を備え、前記吸込口と前記吐出口が接続する内室で回転するインペラを覆うケーシングと、前記ケーシングの外表面に被膜した防水膜と、を備え、前記防水膜は、前記ケーシングの表面を覆う網状の第1膜と、前記第1膜の上に被膜した防水性の第2膜とからなり、前記ケーシングと前記第1膜の隙間から前記ケーシングの漏水を外部へ排出させることを特徴としている。
上記構成により、容易かつ安価にケーシングの防水性を高めることができる。またケーシングのひび割れ等の初期段階の破損を検知することができる。よってケーシングが破壊される前にケーシングの異常を検知できる。またケーシングと防水膜との間に均一に隙間を形成することができる。よってケーシングと防水膜が不完全密着した状態を容易に形成することができる。さらに網状の第1膜の上に第2膜を形成するため、防水膜全体の強度を高めることができる。
【0010】
この場合において、前記防水膜は、前記吸込口又は前記吐出口のフランジの根元周りに前記漏水の排出口を設けたことを特徴としている。
上記構成により、前記吸込口又は前記吐出口のフランジの根元から水が徐々に漏洩し、ケーシングのひび割れ等を検知することができる。
【0011】
前記防水膜の下部には、前記漏水を外部に排出するドレーンを設けたことを特徴としている。
上記構成により、ケーシングのひび割れ等で発生した漏水がドレーンを介して外部に排出されるため、ケーシングの異常を初期段階で検知することができる。
【0012】
前記ドレーンには、水漏れ検知手段を設けたことを特徴としている。
上記構成により、漏水がケーシングと防水膜の隙間を流れ落ちドレーンから外部へと排出されるときに、水漏れ検知手段によって水漏れを検知することができる。このため、ケーシングの破損等を初期段階で容易に検知することができる。
【0013】
前記インペラはモーターと接続し、前記モーターは前記ケーシングよりも高所に設置されていることを特徴としている。
上記構成により、ケーシングの破損によって漏洩しても、モーターはケーシングよりも高所にあるため、モーターが水を被ったり、水没したりする虞がない。
【0014】
前記第1膜は、材質に金属材料、プラスチック樹脂、炭素繊維、ゴム材料のうちいずれか1つ又は複数の組合せを用いたことを特徴としている。
上記構成により、防水膜の強度を高めることができる。また防水膜とケーシングの間に所定の隙間を形成することができる。
【0015】
前記第2膜は、材質にウレタン、ゴム皮膜、樹脂皮膜のうちいずれか1つ又は複数の組合せを用いたことを特徴としている。
上記構成により、防水性、可撓性を備えた防水膜を得ることができる。
【0016】
前記第2膜は、膜内に電気的な絶縁又は導通で水漏れを検知する導線を配設したことを特徴としている。
上記構成により、ケーシングの破損によって、例えば、可撓性の防水膜が変形し、膜内に埋設された導線が断線することで、ケーシングの破損を容易に検知することができる。
【発明の効果】
【0017】
上記構成による本発明のスラリーポンプによれば、安価かつ容易にポンプの防水性を高めることができる。また、ケーシングの破損による水漏れをポンプの破損停止前に検知することができる。よって、スラリーポンプの寿命を予測することができ、高炉水砕スラグなどの製造工程を中断する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係るスラリーポンプの構成概略図であり、(a)は斜視図であり、(b)はケーシングの部分断面図である。
【図2】第1実施形態に係るスラリーポンプの分解図である。
【図3】第1実施形態に係るスラリーポンプの正面図である。
【図4】第1実施形態に係るスラリーポンプの側面図である。
【図5】防水膜の説明図である。
【図6】第2実施形態に係るスラリーポンプのケーシングの構成概略図である。
【図7】第3実施形態に係るスラリーポンプのケーシングの構成概略図である。
【図8】第4実施形態に係るスラリーポンプの構成外略図である。
【図9】第5実施形態に係るスラリーポンプの説明図であり、(1)は斜視図であり、(2)はケーシングの側面図である。
【図10】高炉水砕スラグの製造工程の説明図である。
【図11】従来のスラリーポンプのケーシングの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のスラリーポンプの実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。図1は第1実施形態に係るスラリーポンプの構成概略図であり、(a)は斜視図であり、(b)はケーシングの部分断面図である。図2は第1実施形態に係るスラリーポンプの分解図である。図3は第1実施形態に係るスラリーポンプの正面図である。なお図2,図3はモーターを省略している。図4は第1実施形態に係るスラリーポンプの側面図である。図示のように、本発明のスラリーポンプ10は、スラリーの吸込口22と吐出口24を備え、前記吸込口22と前記吐出口24が接続する内室26で回転するインペラ30を覆うケーシング20と、ケーシング20の内室26に回転自在に収容されたインペラ30と、インペラ30を回転支持するシャフト40と、シャフト40に接続するモーター50と、ケーシング20の外表面に不完全密着させた防水膜60と、を主な基本構成としている。
【0020】
ケーシング20は、スラリーの吸込口22及び吐出口24と、吸込口22及び吐出口24が接続する内室26と、から構成された略円筒状の容器である。ケーシング20は、インペラ30を回転自在に収容する内室26が形成されている。ケーシング20は、側面視で中央にスラリーの吸込口22が側面から突出して形成されている。またケーシング20は、スラリーの吐出口24が周壁から上方へ突出して形成されている。吸込口22及び吐出口24の端部は、夫々図示しない吸込管と吐出管が接続可能なフランジが形成されている。ケーシング20は、材質に硬度の高い材料、一例として高クロム鋼を用いている。ケーシング20の外表面には、側面視で吸込口22を中心として凸部28が放射状に形成されてケーシング20を補強している。
【0021】
インペラ30は、内室26で回転自在に収容されている。インペラ30は、図2に示すように、主板32と側板34との間に多数の湾曲した羽根板36を周方向に等間隔に配置してらせん状に形成している。側板34の中央には吸込口22に接続する開口38が形成されている。また主板32の中央には後述するシャフト40の端部を挿入する穴39が形成されている。
【0022】
シャフト40は、一端がインペラ30の穴39に挿入し固定され、他端がプーリーに接続し、シャフトケーシング42に軸支されている。
モーター50は、シャフト40を介してインペラ30を高速回転させる駆動源である。第1実施形態のシャフト40とモーター50の間には、複数のプーリー52とベルト54を用いて水平方向かつ同方位で接続させている。
【0023】
ケーシング20の外表面には、防水機能を備えた防水膜60を形成している。図5は防水膜の説明図である。第1実施形態に係る防水膜60は、下層の第1膜62と上層の第2膜64から構成されている。第1膜62はケーシング20の表面を網状に覆う膜である。第1膜62は、材質に所定の剛性と柔軟性を備えた金属材料又はプラスチック樹脂、炭素繊維、ゴム材料のうちいずれか1つ又は複数の組合せの細い線を格子状に編んで形成されている。第2膜64は、第1膜62の上に被膜した防水性の膜である。第2膜64は、材質にウレタン樹脂を含有する塗料、ゴム被膜、樹脂皮膜のうちいずれか1つ又は複数の組合せを用いることができる。これにより、第2膜64は、所定の可撓性と防水性を有している。
【0024】
上記構成によるスラリーポンプ10の防水膜60の形成方法は、まず、ケーシング20の外表面に防水膜60の第1膜62を形成する。第1膜62は、格子状に編んだ網を吸込口22及び吐出口24のフランジを除くケーシング20の外表面を覆うようにして形成することができる。第1膜62は、ケーシング20の外表面の全領域を覆うように形成できれば良く、網の格子間隔は任意に設定することができる。次に、第1膜62の上に第2膜64を被膜する。第2膜64はウレタン樹脂を含有する塗料やゴム皮膜、樹脂皮膜を塗布することにより形成できる。第2膜64は、ケーシング20の外表面に直接被膜できる箇所と、間に第1膜62の網を介して被膜できる箇所がある。これにより、本実施形態の防水膜60は、ケーシング20の外表面に密着して形成されることがない。また防水膜60は、第1膜62の網によって、ケーシング20の外表面と被膜の間に隙間が形成された不完全密着した状態となる。防水膜60の膜厚は、第2膜64の塗布量で任意に調整することができる。また、本実施形態の防水膜60は、吸込口22及び吐出口24のフランジを除いてケーシング20の全体に形成されている。このため防水膜60は、吸込口22又は吐出口24のフランジの根元部分に漏水の排出口が形成される。
【0025】
このような第1実施形態に係るスラリーポンプ10によれば、網状の第1膜62と防水性の第2膜64からなる防水膜60をケーシング20の外表面に形成することで、容易かつ安価にケーシング20の防水性能を高めることができる。また第1膜で所定の剛性を備えた網でケーシング20の外表面を覆い、その上に防水性の第2膜64を被膜しているので、防水膜60とケーシング20の外表面が不完全密着の状態となり、所定の隙間が形成され、漏水の排水経路となる。これにより、ケーシングの破損等による水漏れを容易に検知することができる。
【0026】
図6は第2実施形態に係るスラリーポンプのケーシングの構成概略図である。図示のように第2実施形態に係るスラリーポンプは、ケーシング20Aの外表面を被膜する防水膜60Aの下部にドレーン66を形成している。その他の構成については、第1実施形態に係るスラリーポンプ10と同一の構成である。
【0027】
図示のようにドレーン66は、ケーシング20Aの外周の下部であって、第1膜62上に形成されている。本実施形態のドレーン66は、一例として、防水膜60Aの一部に形成された孔に配管の端部を挿入して形成することができる。また、ドレーン66は、ケーシング20と防水膜60の隙間の水漏れを外部に排出できれば良く、この他にも、ケーシング20Aの外周の下方の第1膜62上の第2膜64を一部剥して、第1膜62を露出させてできた孔であってもよい。
【0028】
このような第2実施形態に係るスラリーポンプによれば、ケーシング20Aの破損等によって水漏れが発生したとき、漏水がケーシング20Aと防水膜60Aの隙間を流れ落ちドレーン66から外部へと排出される。このため、ケーシング20Aの破損等を初期段階で容易に検知することができる。
【0029】
図7は第3実施形態に係るスラリーポンプのケーシングの構成概略図である。図示のように第3実施形態に係るスラリーポンプは、ケーシング20Bの外周下方に設置されたドレーン66に水漏れ検知手段68を設置している。その他の構成については、第2実施形態に係るスラリーポンプと同一の構成であり、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0030】
図示のように水漏れ検知手段68は、ドレーン66に取り付けて、ドレーン66を流れる漏水を検知している。水漏れ検知手段68はドレーン66を流れる漏水を検知できる構成であれば良く、一例として、2つの電極をドレーン66内に離間して絶縁した状態で取り付けている。そして、ドレーン66内を漏水が流れて、電極間に達すると、電極間の絶縁状態がなくなり、通電して水漏れを検知することができる。なお、水漏れの検知信号は遠隔の管理室に送信する構成としてもよい。
【0031】
このような第3実施形態に係るスラリーポンプによれば、ケーシング20Bの破損等によって水漏れが発生し、漏水がケーシング20Bと防水膜60Bの隙間を流れ落ちドレーン66から外部へと排出されるときに、水漏れ検知手段68によって水漏れを検知することができる。このため、ケーシング20Bの破損等を初期段階で容易に検知することができる。
【0032】
図8は第4実施形態に係るスラリーポンプの構成外略図である。図示のように第4実施形態に係るスラリーポンプ10Aは、モーター50Aをケーシング20よりも高所に設置している。その他の構成については、第1実施形態に係るスラリーポンプ10と同一の構成であり、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0033】
図示のようにモーター50Aは、複数のプーリー52とベルト54をケーシング20の鉛直方向に配置することにより、ケーシング20の上部に設置している。本実施形態では、モーター50Aをケーシング20の垂直方向であって、同方位に形成している。
【0034】
このような第4実施形態に係るスラリーポンプ10Aによれば、インペラの駆動源となるモーター50Aをケーシング20よりも高所に設置している。このため、ケーシング20の破損等により水漏れが発生した場合に、ケーシング20と離れた場所にあるモーター50Aが水を被ったり、水没したりすることがない。よって、スラリーポンプが直ちに急停止する虞がない。
【0035】
図9は第5実施形態に係るスラリーポンプの説明図であり、(1)はケーシングの斜視図であり、(2)はケーシングの側面図である。なお、第1膜62は省略している。図示のように第5実施形態に係るスラリーポンプは、ケーシング20Cを被膜する防水膜60Cの第2膜64Aに導線70を埋め込んでいる。なお、第2膜64A以外の構成は第1実施形態に係るスラリーポンプ10の構成と同一である。
【0036】
第2膜64Aは、材質に防水性と可撓性を備えたウレタン樹脂を含有するやゴム皮膜、樹脂皮膜などを用いている。そして、第2膜64Aの膜中に導線70を埋め込んでいる。図示のように導線70は、1本の電線でケーシング20C上部から外周及び側面を所定間隔で全領域を覆うように蛇行させながら配線している。そしてケーシング20Cの上部で導線70の端部70a,70bを防水膜60Cから外部へ露出させている。端部70a,70bは図示しない水漏れ検出回路に接続させている。
【0037】
このような防水膜60Cは、次のように形成することができる。まず、第1実施形態と同様に第1膜を形成した後、ケーシング20Cの外表面にウレタン樹脂を含有する塗料やゴム皮膜、樹脂皮膜などを塗布して下地を形成する。次ぎに導線70を下地の上に配線する。このとき導線70は、1本の電線でケーシング20C上部から外周及び側面を所定間隔で全領域を覆うように蛇行させながら配線する。そして導線70の上に再度ウレタン樹脂やゴム皮膜、樹脂皮膜などを塗布して、第2膜64Aの中に導線70を埋め込むことができる。なお、導線70は、被膜後の防水膜60Cの変形によって容易に断線する強度の電線を用いている。導線は、常時通電又は定期的に通電させて、ケーシング等の破損で防水膜が変形が発生した場合に断線を検出できるように構成している。
【0038】
このような第5実施形態に係るスラリーポンプによれば、ケーシング20Cの破損によって、破損箇所から漏れる水圧によって可撓性の防水膜60Cが膨れ上がって変形する。そして、変形した防水膜60Cに埋め込まれている導線70が断線することにより、導線70の通電状態が遮断されて、ケーシング20Cの破損を容易に検知することができる。
【0039】
また導線は、ケーシングの上部から外周及び側面を所定間隔で全領域を覆うように蛇行させながら配線した後、導線の上に防水膜を形成せず、予めケーシングの下端部分に位置する配線の一部を切断しておいてもよい。このような構成によれば、ケーシングの破損等によって、水漏れが発生して、防水膜の下端まで漏れたときに、断線した導線が漏水と接触することによって通電して、ケーシングの破損を容易に検知する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10,10A………スラリーポンプ、20,20A,20B,20C………ケーシング、22………吸込口、24………吐出口、26………内室、28………凸部、30………インペラ、32………主板、34………側板、36………羽根板、38………開口、39………穴、40………シャフト、42………シャフトケーシング、50,50A………モーター、52………プーリー、54………ベルト、60,60A,60B,60C………防水膜、62………第1膜、64,64A………第2膜、66………ドレーン、68………水漏れ検知手段、70………導線、100………高炉、110………吹製装置、120………撹拌槽、130………スラリーポンプ、140………脱水槽、150………搬出装置、160………沈降槽、170………温水槽、180………冷却塔用ポンプ、190………冷却塔、200………冷水槽、210………給水ポンプ、300………スラリーポンプ、310………吸込口、320………吐出口、330………ケーシング、332………第1ケーシング、334………第2ケーシング、350………インペラ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に摩耗性の高い液体を吐出することができるスラリーポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄工程において、高温の溶融スラグが発生し冷却して固化すると鉄鋼スラグとなる。鋼鉄スラグは、炉の違いにより、高炉からの高炉スラグと、転炉又は電気炉からの製鉄スラグに分類される。このうち高炉スラグは、冷却方法によって高炉徐冷スラグと、高炉水砕スラグの2種類に分類されている。高炉水砕スラグは、ガラス質の砂状であり、一般にコンクリート用骨材、土木、セメント、肥料、ガラス原料、道路等の原料として利用されている。
【0003】
図10は高炉水砕スラグの製造工程の説明図である。高炉水砕スラグの製造は、まず、高炉100から排出された溶融スラグに吹製装置110からの高圧水を噴射させている。そうするとスラグが急冷されて砂状となり、スラリー(水とスラグの混合溶液)として後段の撹拌槽120に供給される。撹拌槽120でスラグと水の混合状態とし、スラリーをスラリーポンプ130で脱水槽140に供給する。脱水槽140ではスラグと分離水とに分離される。スラグは搬出装置150により外部へ搬出される。一方、分離水は、沈降槽160に供給されて、排泥と上澄液とに分離される。排泥は再度脱水槽140へ供給される。一方、上澄液は、隣接する温水槽170へオーバーフローする。温水槽170の処理水は冷却塔用ポンプ180により冷却塔190に供給され、所定温度に冷却されて冷水槽200に貯水される。冷水槽200の処理水は、給水ポンプ210により吹製装置110の高圧水に再利用される。
【0004】
ここで撹拌槽120からスラリーを脱水槽140に供給するスラリーポンプ130は、効率的にスラグを供給するため、撹拌槽120の排出口近く(図10では撹拌槽120の下方となる地下)に設置されている。このようなスラリーポンプ130は、スラリーなど摩耗性の高い液体をケーシング内へ吸い込んでいる。このため、原料に硬度の高いスラグの塊が含まれていると、ケーシング内のインペラと接触してケーシングが破損する虞があった。ケーシングは、材質に高クロム鋼を用いて硬度を高めている。前述のケーシングの破損が起こると、硬度が高いが故に破損の成長がもたらされる。そうすると、地下に設置されたスラリーポンプ130は水没して、水砕スラグの製造工程が停止してしまう。稼動中の高炉を急停止することは不可能であり、このようなスラリーポンプ130の故障は望ましくない。
そこでスラリーポンプの故障を防止するために、特許文献1に開示のようなポンプのケーシングを二重構造にすることで、ポンプの強度を高めて故障を回避している。
【0005】
図11は従来のスラリーポンプのケーシングの概略断面図である。図示のように、従来のスラリーポンプ300は、スラリーの吸込口310及び吐出口320を備えたケーシング330を備えている。ケーシング330は、内部に回転自在にインペラ350を収容する第1ケーシング332と、第1ケーシング332を密封した第2ケーシング334から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3148662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらケーシングを二重構造にすると、確かに内側の第1ケーシングが破損した場合でも、外側の第2ケーシングによって内側の第1ケーシングの破壊による漏水が外部に流出することを防止できる。しかし、二重構造のケーシングは、重量物であり製造コストも高く、作業者の点検が難しいという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点を解決するため、容易かつ安価にケーシングの防水性が高められるスラリーポンプを提供することを目的としている。
また、本発明は、ケーシングのひび割れ等の破損を初期段階で検知可能なスラリーポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスラリーポンプは、スラリーの吸込口及び吐出口を備え、前記吸込口と前記吐出口が接続する内室で回転するインペラを覆うケーシングと、前記ケーシングの外表面に被膜した防水膜と、を備え、前記防水膜は、前記ケーシングの表面を覆う網状の第1膜と、前記第1膜の上に被膜した防水性の第2膜とからなり、前記ケーシングと前記第1膜の隙間から前記ケーシングの漏水を外部へ排出させることを特徴としている。
上記構成により、容易かつ安価にケーシングの防水性を高めることができる。またケーシングのひび割れ等の初期段階の破損を検知することができる。よってケーシングが破壊される前にケーシングの異常を検知できる。またケーシングと防水膜との間に均一に隙間を形成することができる。よってケーシングと防水膜が不完全密着した状態を容易に形成することができる。さらに網状の第1膜の上に第2膜を形成するため、防水膜全体の強度を高めることができる。
【0010】
この場合において、前記防水膜は、前記吸込口又は前記吐出口のフランジの根元周りに前記漏水の排出口を設けたことを特徴としている。
上記構成により、前記吸込口又は前記吐出口のフランジの根元から水が徐々に漏洩し、ケーシングのひび割れ等を検知することができる。
【0011】
前記防水膜の下部には、前記漏水を外部に排出するドレーンを設けたことを特徴としている。
上記構成により、ケーシングのひび割れ等で発生した漏水がドレーンを介して外部に排出されるため、ケーシングの異常を初期段階で検知することができる。
【0012】
前記ドレーンには、水漏れ検知手段を設けたことを特徴としている。
上記構成により、漏水がケーシングと防水膜の隙間を流れ落ちドレーンから外部へと排出されるときに、水漏れ検知手段によって水漏れを検知することができる。このため、ケーシングの破損等を初期段階で容易に検知することができる。
【0013】
前記インペラはモーターと接続し、前記モーターは前記ケーシングよりも高所に設置されていることを特徴としている。
上記構成により、ケーシングの破損によって漏洩しても、モーターはケーシングよりも高所にあるため、モーターが水を被ったり、水没したりする虞がない。
【0014】
前記第1膜は、材質に金属材料、プラスチック樹脂、炭素繊維、ゴム材料のうちいずれか1つ又は複数の組合せを用いたことを特徴としている。
上記構成により、防水膜の強度を高めることができる。また防水膜とケーシングの間に所定の隙間を形成することができる。
【0015】
前記第2膜は、材質にウレタン、ゴム皮膜、樹脂皮膜のうちいずれか1つ又は複数の組合せを用いたことを特徴としている。
上記構成により、防水性、可撓性を備えた防水膜を得ることができる。
【0016】
前記第2膜は、膜内に電気的な絶縁又は導通で水漏れを検知する導線を配設したことを特徴としている。
上記構成により、ケーシングの破損によって、例えば、可撓性の防水膜が変形し、膜内に埋設された導線が断線することで、ケーシングの破損を容易に検知することができる。
【発明の効果】
【0017】
上記構成による本発明のスラリーポンプによれば、安価かつ容易にポンプの防水性を高めることができる。また、ケーシングの破損による水漏れをポンプの破損停止前に検知することができる。よって、スラリーポンプの寿命を予測することができ、高炉水砕スラグなどの製造工程を中断する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係るスラリーポンプの構成概略図であり、(a)は斜視図であり、(b)はケーシングの部分断面図である。
【図2】第1実施形態に係るスラリーポンプの分解図である。
【図3】第1実施形態に係るスラリーポンプの正面図である。
【図4】第1実施形態に係るスラリーポンプの側面図である。
【図5】防水膜の説明図である。
【図6】第2実施形態に係るスラリーポンプのケーシングの構成概略図である。
【図7】第3実施形態に係るスラリーポンプのケーシングの構成概略図である。
【図8】第4実施形態に係るスラリーポンプの構成外略図である。
【図9】第5実施形態に係るスラリーポンプの説明図であり、(1)は斜視図であり、(2)はケーシングの側面図である。
【図10】高炉水砕スラグの製造工程の説明図である。
【図11】従来のスラリーポンプのケーシングの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のスラリーポンプの実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。図1は第1実施形態に係るスラリーポンプの構成概略図であり、(a)は斜視図であり、(b)はケーシングの部分断面図である。図2は第1実施形態に係るスラリーポンプの分解図である。図3は第1実施形態に係るスラリーポンプの正面図である。なお図2,図3はモーターを省略している。図4は第1実施形態に係るスラリーポンプの側面図である。図示のように、本発明のスラリーポンプ10は、スラリーの吸込口22と吐出口24を備え、前記吸込口22と前記吐出口24が接続する内室26で回転するインペラ30を覆うケーシング20と、ケーシング20の内室26に回転自在に収容されたインペラ30と、インペラ30を回転支持するシャフト40と、シャフト40に接続するモーター50と、ケーシング20の外表面に不完全密着させた防水膜60と、を主な基本構成としている。
【0020】
ケーシング20は、スラリーの吸込口22及び吐出口24と、吸込口22及び吐出口24が接続する内室26と、から構成された略円筒状の容器である。ケーシング20は、インペラ30を回転自在に収容する内室26が形成されている。ケーシング20は、側面視で中央にスラリーの吸込口22が側面から突出して形成されている。またケーシング20は、スラリーの吐出口24が周壁から上方へ突出して形成されている。吸込口22及び吐出口24の端部は、夫々図示しない吸込管と吐出管が接続可能なフランジが形成されている。ケーシング20は、材質に硬度の高い材料、一例として高クロム鋼を用いている。ケーシング20の外表面には、側面視で吸込口22を中心として凸部28が放射状に形成されてケーシング20を補強している。
【0021】
インペラ30は、内室26で回転自在に収容されている。インペラ30は、図2に示すように、主板32と側板34との間に多数の湾曲した羽根板36を周方向に等間隔に配置してらせん状に形成している。側板34の中央には吸込口22に接続する開口38が形成されている。また主板32の中央には後述するシャフト40の端部を挿入する穴39が形成されている。
【0022】
シャフト40は、一端がインペラ30の穴39に挿入し固定され、他端がプーリーに接続し、シャフトケーシング42に軸支されている。
モーター50は、シャフト40を介してインペラ30を高速回転させる駆動源である。第1実施形態のシャフト40とモーター50の間には、複数のプーリー52とベルト54を用いて水平方向かつ同方位で接続させている。
【0023】
ケーシング20の外表面には、防水機能を備えた防水膜60を形成している。図5は防水膜の説明図である。第1実施形態に係る防水膜60は、下層の第1膜62と上層の第2膜64から構成されている。第1膜62はケーシング20の表面を網状に覆う膜である。第1膜62は、材質に所定の剛性と柔軟性を備えた金属材料又はプラスチック樹脂、炭素繊維、ゴム材料のうちいずれか1つ又は複数の組合せの細い線を格子状に編んで形成されている。第2膜64は、第1膜62の上に被膜した防水性の膜である。第2膜64は、材質にウレタン樹脂を含有する塗料、ゴム被膜、樹脂皮膜のうちいずれか1つ又は複数の組合せを用いることができる。これにより、第2膜64は、所定の可撓性と防水性を有している。
【0024】
上記構成によるスラリーポンプ10の防水膜60の形成方法は、まず、ケーシング20の外表面に防水膜60の第1膜62を形成する。第1膜62は、格子状に編んだ網を吸込口22及び吐出口24のフランジを除くケーシング20の外表面を覆うようにして形成することができる。第1膜62は、ケーシング20の外表面の全領域を覆うように形成できれば良く、網の格子間隔は任意に設定することができる。次に、第1膜62の上に第2膜64を被膜する。第2膜64はウレタン樹脂を含有する塗料やゴム皮膜、樹脂皮膜を塗布することにより形成できる。第2膜64は、ケーシング20の外表面に直接被膜できる箇所と、間に第1膜62の網を介して被膜できる箇所がある。これにより、本実施形態の防水膜60は、ケーシング20の外表面に密着して形成されることがない。また防水膜60は、第1膜62の網によって、ケーシング20の外表面と被膜の間に隙間が形成された不完全密着した状態となる。防水膜60の膜厚は、第2膜64の塗布量で任意に調整することができる。また、本実施形態の防水膜60は、吸込口22及び吐出口24のフランジを除いてケーシング20の全体に形成されている。このため防水膜60は、吸込口22又は吐出口24のフランジの根元部分に漏水の排出口が形成される。
【0025】
このような第1実施形態に係るスラリーポンプ10によれば、網状の第1膜62と防水性の第2膜64からなる防水膜60をケーシング20の外表面に形成することで、容易かつ安価にケーシング20の防水性能を高めることができる。また第1膜で所定の剛性を備えた網でケーシング20の外表面を覆い、その上に防水性の第2膜64を被膜しているので、防水膜60とケーシング20の外表面が不完全密着の状態となり、所定の隙間が形成され、漏水の排水経路となる。これにより、ケーシングの破損等による水漏れを容易に検知することができる。
【0026】
図6は第2実施形態に係るスラリーポンプのケーシングの構成概略図である。図示のように第2実施形態に係るスラリーポンプは、ケーシング20Aの外表面を被膜する防水膜60Aの下部にドレーン66を形成している。その他の構成については、第1実施形態に係るスラリーポンプ10と同一の構成である。
【0027】
図示のようにドレーン66は、ケーシング20Aの外周の下部であって、第1膜62上に形成されている。本実施形態のドレーン66は、一例として、防水膜60Aの一部に形成された孔に配管の端部を挿入して形成することができる。また、ドレーン66は、ケーシング20と防水膜60の隙間の水漏れを外部に排出できれば良く、この他にも、ケーシング20Aの外周の下方の第1膜62上の第2膜64を一部剥して、第1膜62を露出させてできた孔であってもよい。
【0028】
このような第2実施形態に係るスラリーポンプによれば、ケーシング20Aの破損等によって水漏れが発生したとき、漏水がケーシング20Aと防水膜60Aの隙間を流れ落ちドレーン66から外部へと排出される。このため、ケーシング20Aの破損等を初期段階で容易に検知することができる。
【0029】
図7は第3実施形態に係るスラリーポンプのケーシングの構成概略図である。図示のように第3実施形態に係るスラリーポンプは、ケーシング20Bの外周下方に設置されたドレーン66に水漏れ検知手段68を設置している。その他の構成については、第2実施形態に係るスラリーポンプと同一の構成であり、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0030】
図示のように水漏れ検知手段68は、ドレーン66に取り付けて、ドレーン66を流れる漏水を検知している。水漏れ検知手段68はドレーン66を流れる漏水を検知できる構成であれば良く、一例として、2つの電極をドレーン66内に離間して絶縁した状態で取り付けている。そして、ドレーン66内を漏水が流れて、電極間に達すると、電極間の絶縁状態がなくなり、通電して水漏れを検知することができる。なお、水漏れの検知信号は遠隔の管理室に送信する構成としてもよい。
【0031】
このような第3実施形態に係るスラリーポンプによれば、ケーシング20Bの破損等によって水漏れが発生し、漏水がケーシング20Bと防水膜60Bの隙間を流れ落ちドレーン66から外部へと排出されるときに、水漏れ検知手段68によって水漏れを検知することができる。このため、ケーシング20Bの破損等を初期段階で容易に検知することができる。
【0032】
図8は第4実施形態に係るスラリーポンプの構成外略図である。図示のように第4実施形態に係るスラリーポンプ10Aは、モーター50Aをケーシング20よりも高所に設置している。その他の構成については、第1実施形態に係るスラリーポンプ10と同一の構成であり、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0033】
図示のようにモーター50Aは、複数のプーリー52とベルト54をケーシング20の鉛直方向に配置することにより、ケーシング20の上部に設置している。本実施形態では、モーター50Aをケーシング20の垂直方向であって、同方位に形成している。
【0034】
このような第4実施形態に係るスラリーポンプ10Aによれば、インペラの駆動源となるモーター50Aをケーシング20よりも高所に設置している。このため、ケーシング20の破損等により水漏れが発生した場合に、ケーシング20と離れた場所にあるモーター50Aが水を被ったり、水没したりすることがない。よって、スラリーポンプが直ちに急停止する虞がない。
【0035】
図9は第5実施形態に係るスラリーポンプの説明図であり、(1)はケーシングの斜視図であり、(2)はケーシングの側面図である。なお、第1膜62は省略している。図示のように第5実施形態に係るスラリーポンプは、ケーシング20Cを被膜する防水膜60Cの第2膜64Aに導線70を埋め込んでいる。なお、第2膜64A以外の構成は第1実施形態に係るスラリーポンプ10の構成と同一である。
【0036】
第2膜64Aは、材質に防水性と可撓性を備えたウレタン樹脂を含有するやゴム皮膜、樹脂皮膜などを用いている。そして、第2膜64Aの膜中に導線70を埋め込んでいる。図示のように導線70は、1本の電線でケーシング20C上部から外周及び側面を所定間隔で全領域を覆うように蛇行させながら配線している。そしてケーシング20Cの上部で導線70の端部70a,70bを防水膜60Cから外部へ露出させている。端部70a,70bは図示しない水漏れ検出回路に接続させている。
【0037】
このような防水膜60Cは、次のように形成することができる。まず、第1実施形態と同様に第1膜を形成した後、ケーシング20Cの外表面にウレタン樹脂を含有する塗料やゴム皮膜、樹脂皮膜などを塗布して下地を形成する。次ぎに導線70を下地の上に配線する。このとき導線70は、1本の電線でケーシング20C上部から外周及び側面を所定間隔で全領域を覆うように蛇行させながら配線する。そして導線70の上に再度ウレタン樹脂やゴム皮膜、樹脂皮膜などを塗布して、第2膜64Aの中に導線70を埋め込むことができる。なお、導線70は、被膜後の防水膜60Cの変形によって容易に断線する強度の電線を用いている。導線は、常時通電又は定期的に通電させて、ケーシング等の破損で防水膜が変形が発生した場合に断線を検出できるように構成している。
【0038】
このような第5実施形態に係るスラリーポンプによれば、ケーシング20Cの破損によって、破損箇所から漏れる水圧によって可撓性の防水膜60Cが膨れ上がって変形する。そして、変形した防水膜60Cに埋め込まれている導線70が断線することにより、導線70の通電状態が遮断されて、ケーシング20Cの破損を容易に検知することができる。
【0039】
また導線は、ケーシングの上部から外周及び側面を所定間隔で全領域を覆うように蛇行させながら配線した後、導線の上に防水膜を形成せず、予めケーシングの下端部分に位置する配線の一部を切断しておいてもよい。このような構成によれば、ケーシングの破損等によって、水漏れが発生して、防水膜の下端まで漏れたときに、断線した導線が漏水と接触することによって通電して、ケーシングの破損を容易に検知する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10,10A………スラリーポンプ、20,20A,20B,20C………ケーシング、22………吸込口、24………吐出口、26………内室、28………凸部、30………インペラ、32………主板、34………側板、36………羽根板、38………開口、39………穴、40………シャフト、42………シャフトケーシング、50,50A………モーター、52………プーリー、54………ベルト、60,60A,60B,60C………防水膜、62………第1膜、64,64A………第2膜、66………ドレーン、68………水漏れ検知手段、70………導線、100………高炉、110………吹製装置、120………撹拌槽、130………スラリーポンプ、140………脱水槽、150………搬出装置、160………沈降槽、170………温水槽、180………冷却塔用ポンプ、190………冷却塔、200………冷水槽、210………給水ポンプ、300………スラリーポンプ、310………吸込口、320………吐出口、330………ケーシング、332………第1ケーシング、334………第2ケーシング、350………インペラ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリーの吸込口及び吐出口を備え、前記吸込口と前記吐出口が接続する内室で回転するインペラを覆うケーシングと、
前記ケーシングの外表面に被膜した防水膜と、
を備え、
前記防水膜は、前記ケーシングの表面を覆う網状の第1膜と、前記第1膜の上に被膜した防水性の第2膜とからなり、
前記ケーシングと前記第1膜の隙間から前記ケーシングの漏水を外部へ排出させることを特徴とするスラリーポンプ。
【請求項2】
前記防水膜は、前記吸込口又は前記吐出口のフランジの根元周りに前記漏水の排出口を設けたことを特徴とする請求項1に記載のスラリーポンプ。
【請求項3】
前記防水膜の下部には、前記漏水を外部へ排出するドレーンを設けたことを特徴とする請求項1ないし2のいずれかに記載のスラリーポンプ。
【請求項4】
前記ドレーンには、水漏れ検知手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスラリーポンプ。
【請求項5】
前記インペラはモーターと接続し、前記モーターは前記ケーシングよりも高所に設置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のスラリーポンプ。
【請求項6】
前記第1膜は、材質に金属材料、プラスチック樹脂、炭素繊維、ゴム材料のうちいずれか1つ又は複数の組合せを用いたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のスラリーポンプ。
【請求項7】
前記第2膜は、材質にウレタン樹脂、ゴム皮膜、樹脂皮膜のうちいずれか1つ又は複数の組合せを用いたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のスラリーポンプ。
【請求項8】
前記第2膜には、膜内に電気的な絶縁又は導通で水漏れを検知する導線を配設したことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のスラリーポンプ。
【請求項1】
スラリーの吸込口及び吐出口を備え、前記吸込口と前記吐出口が接続する内室で回転するインペラを覆うケーシングと、
前記ケーシングの外表面に被膜した防水膜と、
を備え、
前記防水膜は、前記ケーシングの表面を覆う網状の第1膜と、前記第1膜の上に被膜した防水性の第2膜とからなり、
前記ケーシングと前記第1膜の隙間から前記ケーシングの漏水を外部へ排出させることを特徴とするスラリーポンプ。
【請求項2】
前記防水膜は、前記吸込口又は前記吐出口のフランジの根元周りに前記漏水の排出口を設けたことを特徴とする請求項1に記載のスラリーポンプ。
【請求項3】
前記防水膜の下部には、前記漏水を外部へ排出するドレーンを設けたことを特徴とする請求項1ないし2のいずれかに記載のスラリーポンプ。
【請求項4】
前記ドレーンには、水漏れ検知手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスラリーポンプ。
【請求項5】
前記インペラはモーターと接続し、前記モーターは前記ケーシングよりも高所に設置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のスラリーポンプ。
【請求項6】
前記第1膜は、材質に金属材料、プラスチック樹脂、炭素繊維、ゴム材料のうちいずれか1つ又は複数の組合せを用いたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のスラリーポンプ。
【請求項7】
前記第2膜は、材質にウレタン樹脂、ゴム皮膜、樹脂皮膜のうちいずれか1つ又は複数の組合せを用いたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のスラリーポンプ。
【請求項8】
前記第2膜には、膜内に電気的な絶縁又は導通で水漏れを検知する導線を配設したことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のスラリーポンプ。
【図3】
【図4】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図4】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−92049(P2013−92049A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232597(P2011−232597)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(394010193)宇部テクノエンジ株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(394010193)宇部テクノエンジ株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
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