ズームレンズおよび撮像装置
【課題】ズームレンズにおいて、良好な光学性能を保持して高画質化に対応可能とし、低コスト化および小型化を図る。
【解決手段】ズームレンズは、正の第1レンズ群G1、移動して変倍を行う負の第2レンズ群G2、正の第3レンズ群G3、変倍時に移動する正の第4レンズ群G4を備える。第4レンズ群G4は、物体側から順に、少なくとも1面が非球面で材料がプラスチックの正の第41レンズ、正の第42レンズ、負の第43レンズ、正の第44レンズからなる。条件式(1)、(2)を満たす。
2.1<f41/f4<3.5 … (1)
2.0<f3/f4<4.1 … (2)
ただし、
f41:第41レンズの焦点距離
f4:第4レンズ群G4の焦点距離
f3:第3レンズ群G3の焦点距離
【解決手段】ズームレンズは、正の第1レンズ群G1、移動して変倍を行う負の第2レンズ群G2、正の第3レンズ群G3、変倍時に移動する正の第4レンズ群G4を備える。第4レンズ群G4は、物体側から順に、少なくとも1面が非球面で材料がプラスチックの正の第41レンズ、正の第42レンズ、負の第43レンズ、正の第44レンズからなる。条件式(1)、(2)を満たす。
2.1<f41/f4<3.5 … (1)
2.0<f3/f4<4.1 … (2)
ただし、
f41:第41レンズの焦点距離
f4:第4レンズ群G4の焦点距離
f3:第3レンズ群G3の焦点距離
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズおよび撮像装置に関し、より詳しくは、ビデオカメラや電子スチルカメラ、監視カメラ等に好適に使用可能なズームレンズおよび該ズームレンズを備えた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオカメラ用レンズにおいて、高画質でありながら、コンパクトなズームレンズへの要求が高まっている。例えば、撮影した光を色分解プリズムでR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色に分け、各色に対応する3つのCCD(Charge Coupled Device)で撮像した画像を重ね合わせて高画質を得る3CCD方式に対応可能な小型のズームレンズが求められている。レンズ枚数が少なく、コンパクトでありながら、10倍程度の高変倍比と1.8程度のFナンバーを有するズームレンズとしては、4つのレンズ群からなる下記特許文献1、2に記載のものが挙げられる。特許文献1、2に記載されたズームレンズの第4レンズ群は、像面位置の補正を行うように移動するものであり、良好な収差補正のために非球面を有する正レンズを含んで構成されている。
【特許文献1】特開2004−279726号公報
【特許文献2】特開平6−337353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年では、上記分野のズームレンズにおいて、高画質、小型化の要求に加えて、低コスト化への要求も高まってきている。低コスト化への1つの方法として、非球面レンズをプラスチックで構成することが考えられる。しかしながら、特許文献1、2に記載された構成のようなズームレンズにおいて、第4レンズ群の非球面レンズをプラスチックで構成することは難しい。というのは、プラスチックは温度による屈折率の変化や曲率の変化が大きく、また、上記構成の第4レンズ群の正レンズは強いパワーを有するため、この非球面レンズをプラスチックで構成すると、温度変化による影響が非常に大きくなってしまうからである。したがって、この非球面レンズは一般に、ガラスを材料としてモールド成型により非球面形状が形成されたレンズ(ガラスモールドレンズ)を用いることになり、非常に高価になっていた。
【0004】
また、第4レンズ群は全体で強い正のパワーを有するため、第4レンズ群に含まれる個々のレンズが担うパワーも大きくなり、その曲率も大きくなりやすい。曲率の増大に伴い、必要なコバ(縁肉)を確保するためにレンズ厚も大きくさせる必要があるため、第4レンズ群をコンパクトにまとめながら、良好な収差補正を行うのは困難であった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、良好な光学性能を保持して高画質化に対応可能であるとともに、低コスト化および小型化が図られたズームレンズおよび該ズームレンズを備えた撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有し、変倍時に固定されている第1レンズ群と、負の屈折力を有し、光軸に沿って移動することにより変倍を行う第2レンズ群と、絞りと、正の屈折力を有し、変倍時に固定されている第3レンズ群と、正の屈折力を有し、変倍に伴う像面位置の補正および合焦を行う第4レンズ群とを備え、第4レンズ群が、物体側から順に、少なくとも1面が非球面で材料がプラスチックの正の第41レンズと、正の第42レンズと、負の第43レンズと、正の第44レンズとからなり、第41レンズの焦点距離をf41とし、第4レンズ群の焦点距離をf4とし、第3レンズ群の焦点距離をf3としたとき、下記条件式(1)、(2)を満たすことを特徴とするものである。
2.1<f41/f4<3.5 … (1)
2.0<f3/f4<4.1 … (2)
【0007】
なお、本発明において、各「レンズ群」は、複数のレンズから構成されるものだけでなく、1枚のレンズのみで構成されるものも含むものとする。
【0008】
なお、上記の「正の第41レンズ」とは、第41レンズの光軸近傍におけるパワーが正であることを意味する。
【0009】
本発明のズームレンズでは、第4レンズ群の最も物体側に、非球面を有する正のプラスチックレンズを配置することで、良好な収差補正と低コスト化、および小型化を図っている。そして、この正のプラスチックレンズのパワーを条件式(1)で規定されるような弱いパワーとすることで、温度変化による性能劣化を抑制し、良好な性能を保持するようにしている。また、本発明のズームレンズでは、第4レンズ群において、3枚の正レンズを有することで正パワーの分散を図り、個々のレンズの曲率が大きくなるのを防止し、小型化を図っている。さらに、高画質化のためには3CCD方式で用いられる色分解プリズムを挿入できるだけの長いバックフォーカスが必要であり、本発明のズームレンズでは、条件式(2)を満たすことで、コンパクト化を図りつつ、長いバックフォーカスの確保も図るようにしている。
【0010】
本発明のズームレンズにおいては、第42レンズおよび第44レンズのd線におけるアッベ数の平均をν4pとしたとき、下記条件式(3)を満たすことが好ましい。
62<ν4p<86 … (3)
【0011】
また、本発明のズームレンズにおいては、第42レンズおよび第44レンズのd線における屈折率の平均をN4pとしたとき、下記条件式(4)を満たすことが好ましい。
1.45<N4p<1.66 … (4)
【0012】
また、本発明のズームレンズにおいては、第41レンズが、レンズ中心部からレンズ周辺部にいくに従い、正の屈折力が弱くなる形状の非球面を有していることが好ましい。なおここで、「レンズ中心部からレンズ周辺部にいくに従い、正の屈折力が弱くなる形状」とは、レンズ周辺部が正の屈折力を有するものであってもよいし、レンズ中心部からレンズ周辺部への途中で屈折力の符号が変化してレンズ周辺部では負の屈折力を有するものであってもよい。
【0013】
また、本発明のズームレンズにおいては、第3レンズ群が、少なくとも1面の非球面を有する正レンズの1枚からなることが好ましい。その際に、第3レンズ群のこの正レンズの材料がプラスチックであることが好ましい。
【0014】
なお、本発明において、ガラス球面上に非球面樹脂を形成したような複合型レンズは「1枚のレンズ」とは見なさないものとする。
【0015】
なお、本発明における各条件式の値は、ズームレンズの基準波長におけるものである。
【0016】
本発明の撮像装置は、上記記載の本発明のズームレンズを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1レンズ群と第3レンズ群とを固定群とし、第2レンズ群を光軸に沿って移動させることにより変倍を行い、それによる像面位置の補正および合焦を第4レンズ群の移動により行う方式のズームレンズにおいて、第4レンズ群の構成を好適に設定し、条件式(1)、(2)を満たすように構成しているため、良好な光学性能を保持して高画質化に対応可能で、低コスト化および小型化が図られたズームレンズおよび該ズームレンズを備えた撮像装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態にかかるズームレンズの構成を示す断面図であり、後述の実施例1のズームレンズに対応している。また、図2〜図5はそれぞれ、後述の実施例2〜実施例5のズームレンズの構成を示す断面図である。図1〜図5に示すズームレンズの基本的な構成は同様であり、図示方法も同様であるため、以下では主に図1を例にとって説明する。
【0020】
本発明の実施形態にかかるズームレンズは、光軸Zに沿って、物体側から順に、正の屈折力を有し、変倍時に固定されている第1レンズ群G1と、負の屈折力を有し、光軸Zに沿って移動することにより変倍を行う第2レンズ群G2と、開口絞りStと、正の屈折力を有し、変倍時に固定されている第3レンズ群G3と、正の屈折力を有し、変倍に伴う像面位置の補正および合焦を行う第4レンズ群G4とを備えている。
【0021】
なお、図1に示す開口絞りStは必ずしも大きさや形状を表すものではなく、光軸Z上の位置を示すものである。また、図1では、左側が物体側、右側が像側である。図1では、上段に広角端における無限遠合焦時のレンズ配置を示し、下段に望遠端における無限遠合焦時のレンズ配置を示し、広角端から望遠端へ変倍するときの各レンズ群の概略的な移動軌跡を矢印で示している。
【0022】
また、図1では無限遠物体からの軸上光束の結像位置をPimとして図示している。例えばこのズームレンズを撮像装置に適用する際には、結像位置Pimに撮像素子の撮像面が位置するように配置される。
【0023】
ズームレンズを撮像装置に適用する際には、レンズを装着するカメラ側の構成に応じて、最も像側のレンズと結像面(撮像面)の間にカバーガラスや、プリズム、赤外線カットフィルタ、ローパスフィルタなどの各種フィルタ等を配置することが好ましく、図1に示す例では、これらを想定した平行平板状の光学部材PPが第4レンズ群G4と結像位置Pimとの間に配置されている。
【0024】
このズームレンズは、広角端から望遠端への変倍の際には、第1レンズ群G1および第3レンズ群G3を光軸Z上に固定とし、第2レンズ群G2を光軸Zに沿って像側に移動させることにより変倍を行うとともに、該変倍に伴う像面位置の補正および合焦を第4レンズ群G4を光軸Zに沿って移動させることにより行うように構成されている。つまり、第2レンズ群G2はバリエータ群、第4レンズ群G4はコンペンセータ群およびフォーカス群としての機能を備えている。
【0025】
本実施形態のズームレンズは、主に第4レンズ群G4に特徴を有し、第4レンズ群G4が、物体側から順に、少なくとも1面が非球面で材料がプラスチックの正レンズL41と、正レンズL42と、負レンズL43と、正レンズL44とからなるように構成されている。
【0026】
本実施形態のズームレンズにおいては、プラスチックレンズである正レンズL41には、後述の条件式(1)で表すように強いパワーを持たせないようにし、その他の正レンズには比較的強いパワーを持たせるように構成している。
【0027】
この正レンズL41は、収差を良好に補正するための、いわば「収差補正レンズ」としての役割を担うものである。この正レンズL41を設けることにより、第4レンズ群G4内の正レンズL41以外の正レンズに非球面を設けずに良好に収差補正することが可能になる。
【0028】
仮にこの「収差補正レンズ」の正レンズL41を設けない場合、第4レンズ群G4は正レンズL42、負レンズL43、正レンズL44の3枚構成となり、特許文献1にも見られるように、従来よく採用された構成となる。この従来の構成において、第4レンズ群に非球面を設ける場合は、通常、正レンズに設けることになる。しかし、従来の構成における第4レンズ群中の正レンズは強いパワーを有するため、プラスチックを材料とすると、温度による屈折力変化の影響が非常に大きくなり、温度変化時の性能劣化が無視できないものとなる。そのため、従来では、第4レンズ群の非球面レンズはガラスモールドレンズを用いることになり、高コストになっていた。
【0029】
これに対して、本実施形態のズームレンズは、第4レンズ群の非球面レンズである正レンズL41に強いパワーを持たせないようにしているため、プラスチックを材料としても温度変化の影響を小さくでき、レンズL41をプラスチックで構成することが可能になる。
【0030】
また、第4レンズ群は全体で強い正のパワーを有するため、従来の3枚構成では、第4レンズ群に含まれる各正レンズが担うパワーも大きくなり、その曲率が大きくなりやすい。特に、色収差を良好に補正するため、低分散材料を用いる場合には、低分散材料は一般に低屈折率であることから、レンズの曲率が大きくなりやすい。曲率の増大に伴い、必要なコバ(縁肉)を確保するためにレンズ厚も大きくさせる必要があり、小型化に反するものとなっていた。
【0031】
これに対して、本実施形態のズームレンズは、従来の3枚構成に正レンズL41を追加した構成を採っているため、正レンズL41を設けない場合よりも第4レンズ群G4の正のパワーを分散させることができる。これにより、第4レンズ群G4の正レンズL41以外の正レンズは、レンズ厚を極端に大きくすることなくコバを確保でき、低分散材料を用いることができる。すなわち、正レンズに用いる材料選択の自由度が増加し、色収差補正にも有利である。また、第4レンズ群G4において、第4レンズ群G4の正レンズL41以外の正レンズのレンズ厚が極端に厚くならないこと、および正レンズL41は弱いパワーを有するため薄くできることから、第4レンズ群G4の小型化にも貢献することができる。
【0032】
本実施形態のズームレンズは、第4レンズ群が3枚構成からなる従来のものと比較して、結果として1枚レンズが増えているが、ガラスモールドの非球面レンズと比較して、プラスチック非球面レンズは安価に構成できる場合が多い。また、正レンズL41はプラスチックで構成されているため軽量化でき、移動群である第4レンズ群G4にとって有利である。
【0033】
すなわち、第4レンズ群G4中に、安価で軽量なプラスチックで構成しながらも、温度変化による影響が小さく、良好な収差補正能力を有する薄型のレンズである正レンズL41を配置することにより、ガラスで構成される非球面レンズを削減し、低コスト化を図るとともに、収差が良好に補正されたズームレンズを得ることができる。
【0034】
なお、適用される撮像装置の鏡筒がプラスチック材料からなる場合には、鏡筒の温度変化に伴う伸縮と、プラスチック材料からなる正レンズの温度変化に伴う像位置の移動とが相殺しあって、温度変化による見た目上の像位置の変化を抑制するという効果を得ることもできる。この点において、ガラスレンズよりプラスチックレンズの方が、温度変化に対して有利であるといえる。
【0035】
本実施形態のズームレンズは、一例として、図1に示す例のような構成を採ることができる。すなわち、各レンズ群とも物体側から順に、第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズL11と正レンズL12との貼り合わせによる接合レンズ、メニスカス形状の正レンズL13からなる3枚構成とし、第2レンズ群G2は、負レンズL21、負レンズL22、正レンズL23と負レンズL24との貼り合わせによる接合レンズからなる4枚構成とし、第3レンズ群G3は、正レンズL31からなる1枚構成とし、第4レンズ群G4は、正レンズL41、正レンズL42、負レンズL43と正レンズL44との貼り合わせによる接合レンズからなる4枚構成とすることができる。
【0036】
この正レンズL41の形状としては例えば、レンズ中心部からレンズ周辺部にいくに従い、正の屈折力が弱くなる形状の非球面を有しているように構成することが好ましい。このような形状とすることにより、球面収差の良好な補正が容易となり、変倍時や合焦時の球面収差の変動を抑制することができる。
【0037】
第3レンズ群G3については、図1に示す例のように、正レンズL31の1枚構成とすることが好ましく、これにより、レンズ枚数を低減して小型化を図ることができる。そして、第3レンズ群G3を1枚構成とする場合には、この正レンズL31は、少なくとも1面に非球面を有することが好ましい。正レンズL31を非球面レンズとすることにより、収差補正上有利となり、第3レンズ群G3を1枚構成とすることが容易となる。
【0038】
正レンズL31が非球面レンズの場合は、プラスチックレンズであることが好ましい。材料をプラスチックにすることで、低コスト化および軽量化を実現できる。また、上述したように、撮像装置の鏡筒がプラスチック材料からなる場合には、正のプラスチックレンズを用いることで、温度変化による見た目上の像位置の変化を抑制することができるという利点もある。
【0039】
図1に示す本実施形態のズームレンズは、第3レンズ群G3を1枚構成としているため、特許文献1のような第3レンズ群G3を2枚構成とした従来例に比べて、第3レンズ群G3のレンズ枚数を少なくできる。このことから、第3レンズ群G3を1枚構成とした場合には、第2レンズ群G2を3枚構成にした従来例と異なり、本実施形態のように、第2レンズ群G2を4枚構成とすることが考えられる。
【0040】
以下に第2レンズ群G2を4枚構成にする意味について説明する。レンズ系全長を短くして小型化するためには、変倍時の移動量を小さくする必要があり、そのためには第2レンズ群G2に強い負のパワーを持たせることが好ましい。しかし、レンズのパワーが強くなりすぎると、第2レンズ群G2は移動群であるため、変倍時の収差変動が大きくなってしまう。
【0041】
特許文献1のものでは第2レンズ群が負、負、正の3枚構成となっているが、図1に示す本実施形態のズームレンズでは、これにさらに負レンズを1枚追加した4枚構成とすることで、第2レンズ群G2が強い負のパワーを持つ場合でも、第2レンズ群G2に必要な負のパワーを分散させるようにしている。これにより、第2レンズ群G2の各負レンズが担うパワーの強さが強くなりすぎて変倍時の収差変動が大きくなってしまうことなく、レンズ系全長を小型化することが可能になる。
【0042】
また、本実施形態のズームレンズでは、第2レンズ群G2において、物体側に2枚の負レンズを有している。このように、物体側に負のパワーを多く配分することにより、第2レンズ群の物体側主点の位置を物体側に近づけて第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の主点間隔を短くすることができる。これにより、軸外光束の第1レンズ群G1を通過する高さを低くすることができ、前玉径(最も物体側のレンズの径)の小型化を図ることができる。
【0043】
さらに第2レンズ群G2の好ましい態様としては、少なくとも1面が非球面の負レンズを少なくとも1枚有することである。図1に示す例では、第2レンズ群G2の最も物体側に配置された負レンズL21の両面が非球面である。第2レンズ群G2に非球面レンズを採用することにより、ディストーションを良好に補正することが可能になり、画角ごとやズーム倍率ごとの像面変動を抑えることもできる。
【0044】
さらに、本実施形態のズームレンズは、第4レンズ群G4の最も物体側の正レンズL41の焦点距離をf41とし、第4レンズ群G4の焦点距離をf4としたとき、下記条件式(1)を満たすように構成されている。
2.1<f41/f4<3.5 … (1)
【0045】
条件式(1)は、正レンズL41の焦点距離と第4レンズ群G4の焦点距離の比を規定しており、いわば第4レンズ群G4に対する正レンズL41のパワーの比を規定している。条件式(1)の下限を下回ると、正レンズL41のパワーが強くなり、上記で説明したように、温度変化による影響が大きくなり、好ましくない。条件式(1)の上限を上回ると、正レンズL41のパワーが弱くなり、収差補正の効果が不十分になる。これを解消しようとすると第4レンズ群G4の他の正レンズに負荷が生じることになり、結果として第4レンズ群G4が大型化してしまう。また、変倍時や合焦時の収差変動も大きくなってしまう。
【0046】
また、本実施形態のズームレンズは、第3レンズ群G3の焦点距離をf3とし、第4レンズ群G4の焦点距離をf4としたとき、下記条件式(2)を満たすように構成されている。
2.0<f3/f4<4.1 … (2)
【0047】
条件式(2)は、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の焦点距離の比を規定している。条件式(2)は、良好な光学性能を達成しつつ、第3レンズ群G3以降のレンズ系を小型化するとともに、3CCD方式で用いられる色分解プリズム等を挿入可能な長いバックフォーカスを確保するための、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4のパワー配分の好適な範囲を規定するものである。
【0048】
条件式(2)の下限を下回るほど第3レンズ群G3のパワーを強くしてしまうと、変倍時や合焦時の球面収差の変動が大きくなってしまう。また、必要なバックフォーカスを確保することが非常に困難となる。逆に、条件式(2)の上限を上回ると、レンズ系全長が長くなり、さらに、第4レンズ群G4に入射する光線高が大きくなり、第4レンズ群G4が大型化してしまう。
【0049】
本実施形態のズームレンズは、上記構成に加え、さらに以下の条件式を満たすように構成することが好ましく、これにより、さらに良好な特性を得ることができる。
【0050】
第4レンズ群G4の正レンズL42および正レンズL44のd線におけるアッベ数の平均をν4pとしたとき、下記条件式(3)を満たすことが好ましい。
62<ν4p<86 … (3)
【0051】
条件式(3)は、正レンズL42と正レンズL44のd線におけるアッベ数の平均を規定している。第4レンズ群G4中の正レンズに、条件式(3)で規定される低分散材料を用いることで、変倍時や合焦時の色収差の変動や、第4レンズ群G4で発生する色収差を抑えることができる。
【0052】
条件式(3)を下回る場合、色収差、特に、ズームの中間域から望遠端にかけての色収差を十分に補正できなくなる。条件式(3)を上回るような低分散材料を用いると、色収差の補正には有利であるが、低屈折率材料を用いることになるため、必要なコバを確保するためにレンズが厚くなってしまう。
【0053】
なお、第3レンズ群G3を正レンズL31の1枚で構成する場合、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4を合わせて色消しを行う必要がある。第4レンズ群G4では、変倍や合焦に伴う色収差の変動を抑えるために、正レンズには低分散の材料を用いることが好ましく、正レンズL31には、第4レンズ群G4で生じる色収差を打ち消すような高分散の材料を用いることが好ましい。
【0054】
第4レンズ群G4の正レンズL42レンズおよび正レンズL44のd線における屈折率の平均をN4pとしたとき、下記条件式(4)を満たすことが好ましい。
1.45<N4p<1.66 … (4)
【0055】
条件式(4)は、正レンズL42と正レンズL44のd線における屈折率の平均を規定している。第4レンズ群G4は強い正のパワーを有し、個々のレンズが担うパワーが大きい。そのため、条件式(4)を下回るような材料を第4レンズ群G4の正レンズに使用した場合には、レンズの曲率が大きくなり、変倍時や合焦時の収差変動が大きくなり、収差補正が困難になる。また、必要なコバを確保するために必要なレンズ厚も大きくなり、第4レンズ群G4が大型化してしまう。条件式(4)を上回ると、レンズを薄く作るのに有利ではあるが、高屈折率材料を用いることになり、高屈折率材料は一般に分散が大きいため、良好な色収差補正が困難になる。
【0056】
本実施形態のズームレンズは、上記条件式(1)〜(4)それぞれに代わり、下記条件式(1−1)、(2−1)、(3−1)、(4−1)を満たすことがさらに好ましく、この場合には、各条件式を満たすことにより得られる効果をさらに向上させることができる。
2.2<f41/f4<3.5 … (1−1)
2.15<f3/f4<4.0 … (2−1)
65<ν4p<84 … (3−1)
1.47<N4p<1.64 … (4−1)
【0057】
また、本ズームレンズが例えば屋外等の厳しい環境において使用される場合には、最も物体側に配置されるレンズには、風雨による表面劣化、直射日光による温度変化に強く、さらには油脂・洗剤等の化学薬品に強い材料、すなわち耐水性、耐候性、耐酸性、耐薬品性等が高い材料を用いることが好ましく、さらには堅く、割れにくい材料を用いることが好ましい。以上のことから最も物体側に配置される材料としては、具体的にはガラスを用いることが好ましく、あるいは透明なセラミックスを用いてもよい。
【0058】
非球面形状が形成されるレンズの材料としては、プラスチックを用いることが好ましく、この場合には、非球面形状を精度良く作製することができるとともに、軽量化および低コスト化を図ることが可能となる。
【0059】
本ズームレンズが、広い温度範囲で使用可能なことが要求される場合には、各レンズの材料としては線膨張係数の小さいものを用いることが好ましい。また、本ズームレンズが厳しい環境において使用される場合には、保護用の多層膜コートが施されることが好ましい。さらに、保護用コート以外にも、使用時のゴースト光低減等のための反射防止コート膜を施すようにしてもよい。
【0060】
図1に示す例では、レンズ系と結像面との間に光学部材PPを配置した例を示したが、ローパスフィルタや特定の波長域をカットするような各種フィルタ等を配置する代わりに、各レンズの間にこれらの各種フィルタを配置してもよく、あるいは、いずれかのレンズのレンズ面に、各種フィルタと同様の作用を有するコートを施してもよい。
【0061】
以上説明したように、本実施形態のズームレンズによれば、要求される仕様等に応じて、上記した好ましい構成を適宜採用することで、レンズ枚数を大幅に増やすことなく、小型に構成でき、良好な収差補正と低コスト化を両立させることができる。
【実施例】
【0062】
次に、本発明のズームレンズの数値実施例について説明する。実施例1〜5のズームレンズのレンズ断面図はそれぞれ図1〜図5に示したものである。
【0063】
実施例1にかかるズームレンズの基本レンズデータを表1に、ズーム(変倍)に関するデータを表2に、非球面データを表3に示す。同様に、実施例2〜5にかかるズームレンズの基本データ、ズームに関するデータ、非球面データを表4〜表15に示す。以下では、表中の記号の意味について、実施例1を例にとり説明するが、実施例2〜5のものについても基本的に同様である。
【0064】
表1の基本レンズデータにおいて、Siは最も物体側の構成要素の面を1番目として像側に向かうに従い順次増加するi番目(i=1、2、3、…)の面番号を示し、Riはi番目の面の曲率半径を示し、Diはi番目の面とi+1番目の面との光軸Z上の面間隔を示している。なお、面間隔の最下欄は表中の最終面と結像面との面間隔を示している。また、基本レンズデータにおいて、Ndjは最も物体側のレンズを1番目として像側に向かうに従い順次増加するj番目(j=1、2、3、…)の光学要素のd線(波長587.6nm)に対する屈折率を示し、νdjはj番目の光学要素のd線に対するアッベ数を示している。なお、基本レンズデータには、開口絞りStおよび光学部材PPも含めて示している。開口絞りStに相当する面の曲率半径の欄には(開口絞り)と記載している。基本レンズデータの曲率半径は物体側に凸の場合を正、像側に凸の場合を負としている。
【0065】
表1の基本レンズデータにおいて、変倍時に間隔が変化する、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔、第2レンズ群G2と開口絞りStの間隔、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間隔、第4レンズ群G4と光学部材PPの間隔に相当する面間隔の欄にはそれぞれ、D5(可変)、D12(可変)、D15(可変)、D22(可変)と記載している。
【0066】
表2のズームに関するデータには、広角端、望遠端における、全系の焦点距離f、FナンバーFno.、全画角2ω、変倍に伴い変化する各面間隔D5、D12、D15、D22の値を示す。全画角2ωの単位は度である。
【0067】
表1のRiおよびDiの単位、表2のf、D5、D12、D15、D22の単位としては、「mm」を用いることができるが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、単位は「mm」に限定されることはなく、他の適当な単位を用いることもできる。
【0068】
表1の基本レンズデータでは、非球面の面番号に*印を付しており、非球面の曲率半径として近軸の曲率半径の数値を示している。表3の非球面データには、非球面レンズであるレンズの符号と、非球面の面番号と、これら非球面に関する非球面係数を示す。非球面係数は、以下の式(A)で表される非球面式における各係数KA、RAm(m=3、4、5、…10)の値である。
【0069】
Zd=C・h2/{1+(1−KA・C2・h2)1/2}+ΣRAm・hm … (A)
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に
下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸からのレンズ面までの距離)
C:近軸曲率半径の逆数
KA、RAm:非球面係数(m=3、4、5、…10)
なお、表1のRiおよびDiの単位にmmを用いたときは、上記Zd、hの単位もmmとなる。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【表6】
【0076】
【表7】
【0077】
【表8】
【0078】
【表9】
【0079】
【表10】
【0080】
【表11】
【0081】
【表12】
【0082】
【表13】
【0083】
【表14】
【0084】
【表15】
【0085】
表16に、実施例1〜5における条件式(1)〜(4)に対応する値を示す。表16からわかるように、実施例1〜5のいずれも、条件式(1)〜(4)を満足している。
【0086】
【表16】
【0087】
図6(A)〜図6(H)に実施例1のズームレンズの広角端および望遠端における、球面収差、非点収差、ディストーション(歪曲収差)、倍率色収差の各収差図を示す。各収差図には、d線(波長587.6nm)を基準波長とした収差を示すが、球面収差図および倍率色収差図には波長460.0nm、波長615.0nmについての収差も示す。球面収差図のFno.はFナンバー、その他の収差図のωは半画角を意味する。
【0088】
同様に、図7(A)〜図7(H)、図8(A)〜図8(H)、図9(A)〜図9(H)、図10(A)〜図10(H)に、実施例2〜5のズームレンズの広角端および望遠端における、球面収差、非点収差、ディストーション(歪曲収差)、倍率色収差の各収差図を示す。
【0089】
以上のデータから、実施例1〜5のズームレンズは、約10倍の倍率を有し、小型化を図りつつ、広角端でのFナンバーが1.8程度と小さく、各収差が良好に補正され、広角端および望遠端ともに可視域において高い光学性能を有することがわかる。これらのズームレンズは、監視カメラや、ビデオカメラ、電子スチルカメラ等の撮像装置に好適に使用することができる。
【0090】
図11に、本発明の実施形態の撮像装置の一例として、本発明の実施形態にかかるズームレンズ1を用いて構成したビデオカメラ10の構成図を示す。なお、図11では、ズームレンズ1が備える正の第1レンズ群G1、負の第2レンズ群G2、開口絞りSt、正の第3レンズ群G3、正の第4レンズ群G4を概略的に示している。
【0091】
図11に示すビデオカメラ10は、3つの撮像素子を有するいわゆる3CCD方式の撮像装置であるが、本発明の撮像装置はこれに限定されず、1つの撮像素子で全波長帯域を撮像するものでもよい。ビデオカメラ10は、ズームレンズ1と、ズームレンズ1の像側に配置されたローパスフィルタおよび赤外線カットフィルタ等の機能を有するフィルタ2と、フィルタ2の像側に配置された色分解プリズム3R、3G、3Bと、各色分解プリズムの端面に設けられた撮像素子4R、4G、4Bと、信号処理回路5とを備えている。撮像素子4R、4G、4Bはズームレンズ1により形成される光学像を電気信号に変換するものであり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)を用いることができる。撮像素子4R、4G、4Bは、その撮像面がズームレンズ1の結像面に一致するように配置される。
【0092】
ズームレンズ1を透過した光はフィルタ2により不要光成分が除去され、色分解プリズム3R、3G、3Bにより赤、緑、青の各色光に分解された後、撮像素子4R、4G、4Bの撮像面上に結像する。赤、緑、青の各色光に対応する撮像素子4R、4G、4Bからの出力信号は信号処理回路5にて演算処理されてカラー画像が形成され、表示装置6に表示される。
【0093】
本発明の実施形態にかかるズームレンズは、前述した長所を有するため、本実施形態の撮像装置は、小型で低コストに構成でき、かつ高画質の映像を得ることができる。
【0094】
以上、実施形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズ成分の曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数等の値は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施例1にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図2】本発明の実施例2にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図3】本発明の実施例3にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図4】本発明の実施例4にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図5】本発明の実施例5にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図6】本発明の実施例1にかかるズームレンズの各収差図
【図7】本発明の実施例2にかかるズームレンズの各収差図
【図8】本発明の実施例3にかかるズームレンズの各収差図
【図9】本発明の実施例4にかかるズームレンズの各収差図
【図10】本発明の実施例5にかかるズームレンズの各収差図
【図11】本発明の実施形態にかかる撮像装置の概略構成図
【符号の説明】
【0096】
1 ズームレンズ
2 フィルタ
3B、3G、3R 色分解プリズム
4B、4G、4R 撮像素子
5 信号処理回路
6 表示装置
10 ビデオカメラ
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
PP 光学部材
St 開口絞り
Z 光軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズおよび撮像装置に関し、より詳しくは、ビデオカメラや電子スチルカメラ、監視カメラ等に好適に使用可能なズームレンズおよび該ズームレンズを備えた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオカメラ用レンズにおいて、高画質でありながら、コンパクトなズームレンズへの要求が高まっている。例えば、撮影した光を色分解プリズムでR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色に分け、各色に対応する3つのCCD(Charge Coupled Device)で撮像した画像を重ね合わせて高画質を得る3CCD方式に対応可能な小型のズームレンズが求められている。レンズ枚数が少なく、コンパクトでありながら、10倍程度の高変倍比と1.8程度のFナンバーを有するズームレンズとしては、4つのレンズ群からなる下記特許文献1、2に記載のものが挙げられる。特許文献1、2に記載されたズームレンズの第4レンズ群は、像面位置の補正を行うように移動するものであり、良好な収差補正のために非球面を有する正レンズを含んで構成されている。
【特許文献1】特開2004−279726号公報
【特許文献2】特開平6−337353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年では、上記分野のズームレンズにおいて、高画質、小型化の要求に加えて、低コスト化への要求も高まってきている。低コスト化への1つの方法として、非球面レンズをプラスチックで構成することが考えられる。しかしながら、特許文献1、2に記載された構成のようなズームレンズにおいて、第4レンズ群の非球面レンズをプラスチックで構成することは難しい。というのは、プラスチックは温度による屈折率の変化や曲率の変化が大きく、また、上記構成の第4レンズ群の正レンズは強いパワーを有するため、この非球面レンズをプラスチックで構成すると、温度変化による影響が非常に大きくなってしまうからである。したがって、この非球面レンズは一般に、ガラスを材料としてモールド成型により非球面形状が形成されたレンズ(ガラスモールドレンズ)を用いることになり、非常に高価になっていた。
【0004】
また、第4レンズ群は全体で強い正のパワーを有するため、第4レンズ群に含まれる個々のレンズが担うパワーも大きくなり、その曲率も大きくなりやすい。曲率の増大に伴い、必要なコバ(縁肉)を確保するためにレンズ厚も大きくさせる必要があるため、第4レンズ群をコンパクトにまとめながら、良好な収差補正を行うのは困難であった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、良好な光学性能を保持して高画質化に対応可能であるとともに、低コスト化および小型化が図られたズームレンズおよび該ズームレンズを備えた撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有し、変倍時に固定されている第1レンズ群と、負の屈折力を有し、光軸に沿って移動することにより変倍を行う第2レンズ群と、絞りと、正の屈折力を有し、変倍時に固定されている第3レンズ群と、正の屈折力を有し、変倍に伴う像面位置の補正および合焦を行う第4レンズ群とを備え、第4レンズ群が、物体側から順に、少なくとも1面が非球面で材料がプラスチックの正の第41レンズと、正の第42レンズと、負の第43レンズと、正の第44レンズとからなり、第41レンズの焦点距離をf41とし、第4レンズ群の焦点距離をf4とし、第3レンズ群の焦点距離をf3としたとき、下記条件式(1)、(2)を満たすことを特徴とするものである。
2.1<f41/f4<3.5 … (1)
2.0<f3/f4<4.1 … (2)
【0007】
なお、本発明において、各「レンズ群」は、複数のレンズから構成されるものだけでなく、1枚のレンズのみで構成されるものも含むものとする。
【0008】
なお、上記の「正の第41レンズ」とは、第41レンズの光軸近傍におけるパワーが正であることを意味する。
【0009】
本発明のズームレンズでは、第4レンズ群の最も物体側に、非球面を有する正のプラスチックレンズを配置することで、良好な収差補正と低コスト化、および小型化を図っている。そして、この正のプラスチックレンズのパワーを条件式(1)で規定されるような弱いパワーとすることで、温度変化による性能劣化を抑制し、良好な性能を保持するようにしている。また、本発明のズームレンズでは、第4レンズ群において、3枚の正レンズを有することで正パワーの分散を図り、個々のレンズの曲率が大きくなるのを防止し、小型化を図っている。さらに、高画質化のためには3CCD方式で用いられる色分解プリズムを挿入できるだけの長いバックフォーカスが必要であり、本発明のズームレンズでは、条件式(2)を満たすことで、コンパクト化を図りつつ、長いバックフォーカスの確保も図るようにしている。
【0010】
本発明のズームレンズにおいては、第42レンズおよび第44レンズのd線におけるアッベ数の平均をν4pとしたとき、下記条件式(3)を満たすことが好ましい。
62<ν4p<86 … (3)
【0011】
また、本発明のズームレンズにおいては、第42レンズおよび第44レンズのd線における屈折率の平均をN4pとしたとき、下記条件式(4)を満たすことが好ましい。
1.45<N4p<1.66 … (4)
【0012】
また、本発明のズームレンズにおいては、第41レンズが、レンズ中心部からレンズ周辺部にいくに従い、正の屈折力が弱くなる形状の非球面を有していることが好ましい。なおここで、「レンズ中心部からレンズ周辺部にいくに従い、正の屈折力が弱くなる形状」とは、レンズ周辺部が正の屈折力を有するものであってもよいし、レンズ中心部からレンズ周辺部への途中で屈折力の符号が変化してレンズ周辺部では負の屈折力を有するものであってもよい。
【0013】
また、本発明のズームレンズにおいては、第3レンズ群が、少なくとも1面の非球面を有する正レンズの1枚からなることが好ましい。その際に、第3レンズ群のこの正レンズの材料がプラスチックであることが好ましい。
【0014】
なお、本発明において、ガラス球面上に非球面樹脂を形成したような複合型レンズは「1枚のレンズ」とは見なさないものとする。
【0015】
なお、本発明における各条件式の値は、ズームレンズの基準波長におけるものである。
【0016】
本発明の撮像装置は、上記記載の本発明のズームレンズを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1レンズ群と第3レンズ群とを固定群とし、第2レンズ群を光軸に沿って移動させることにより変倍を行い、それによる像面位置の補正および合焦を第4レンズ群の移動により行う方式のズームレンズにおいて、第4レンズ群の構成を好適に設定し、条件式(1)、(2)を満たすように構成しているため、良好な光学性能を保持して高画質化に対応可能で、低コスト化および小型化が図られたズームレンズおよび該ズームレンズを備えた撮像装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態にかかるズームレンズの構成を示す断面図であり、後述の実施例1のズームレンズに対応している。また、図2〜図5はそれぞれ、後述の実施例2〜実施例5のズームレンズの構成を示す断面図である。図1〜図5に示すズームレンズの基本的な構成は同様であり、図示方法も同様であるため、以下では主に図1を例にとって説明する。
【0020】
本発明の実施形態にかかるズームレンズは、光軸Zに沿って、物体側から順に、正の屈折力を有し、変倍時に固定されている第1レンズ群G1と、負の屈折力を有し、光軸Zに沿って移動することにより変倍を行う第2レンズ群G2と、開口絞りStと、正の屈折力を有し、変倍時に固定されている第3レンズ群G3と、正の屈折力を有し、変倍に伴う像面位置の補正および合焦を行う第4レンズ群G4とを備えている。
【0021】
なお、図1に示す開口絞りStは必ずしも大きさや形状を表すものではなく、光軸Z上の位置を示すものである。また、図1では、左側が物体側、右側が像側である。図1では、上段に広角端における無限遠合焦時のレンズ配置を示し、下段に望遠端における無限遠合焦時のレンズ配置を示し、広角端から望遠端へ変倍するときの各レンズ群の概略的な移動軌跡を矢印で示している。
【0022】
また、図1では無限遠物体からの軸上光束の結像位置をPimとして図示している。例えばこのズームレンズを撮像装置に適用する際には、結像位置Pimに撮像素子の撮像面が位置するように配置される。
【0023】
ズームレンズを撮像装置に適用する際には、レンズを装着するカメラ側の構成に応じて、最も像側のレンズと結像面(撮像面)の間にカバーガラスや、プリズム、赤外線カットフィルタ、ローパスフィルタなどの各種フィルタ等を配置することが好ましく、図1に示す例では、これらを想定した平行平板状の光学部材PPが第4レンズ群G4と結像位置Pimとの間に配置されている。
【0024】
このズームレンズは、広角端から望遠端への変倍の際には、第1レンズ群G1および第3レンズ群G3を光軸Z上に固定とし、第2レンズ群G2を光軸Zに沿って像側に移動させることにより変倍を行うとともに、該変倍に伴う像面位置の補正および合焦を第4レンズ群G4を光軸Zに沿って移動させることにより行うように構成されている。つまり、第2レンズ群G2はバリエータ群、第4レンズ群G4はコンペンセータ群およびフォーカス群としての機能を備えている。
【0025】
本実施形態のズームレンズは、主に第4レンズ群G4に特徴を有し、第4レンズ群G4が、物体側から順に、少なくとも1面が非球面で材料がプラスチックの正レンズL41と、正レンズL42と、負レンズL43と、正レンズL44とからなるように構成されている。
【0026】
本実施形態のズームレンズにおいては、プラスチックレンズである正レンズL41には、後述の条件式(1)で表すように強いパワーを持たせないようにし、その他の正レンズには比較的強いパワーを持たせるように構成している。
【0027】
この正レンズL41は、収差を良好に補正するための、いわば「収差補正レンズ」としての役割を担うものである。この正レンズL41を設けることにより、第4レンズ群G4内の正レンズL41以外の正レンズに非球面を設けずに良好に収差補正することが可能になる。
【0028】
仮にこの「収差補正レンズ」の正レンズL41を設けない場合、第4レンズ群G4は正レンズL42、負レンズL43、正レンズL44の3枚構成となり、特許文献1にも見られるように、従来よく採用された構成となる。この従来の構成において、第4レンズ群に非球面を設ける場合は、通常、正レンズに設けることになる。しかし、従来の構成における第4レンズ群中の正レンズは強いパワーを有するため、プラスチックを材料とすると、温度による屈折力変化の影響が非常に大きくなり、温度変化時の性能劣化が無視できないものとなる。そのため、従来では、第4レンズ群の非球面レンズはガラスモールドレンズを用いることになり、高コストになっていた。
【0029】
これに対して、本実施形態のズームレンズは、第4レンズ群の非球面レンズである正レンズL41に強いパワーを持たせないようにしているため、プラスチックを材料としても温度変化の影響を小さくでき、レンズL41をプラスチックで構成することが可能になる。
【0030】
また、第4レンズ群は全体で強い正のパワーを有するため、従来の3枚構成では、第4レンズ群に含まれる各正レンズが担うパワーも大きくなり、その曲率が大きくなりやすい。特に、色収差を良好に補正するため、低分散材料を用いる場合には、低分散材料は一般に低屈折率であることから、レンズの曲率が大きくなりやすい。曲率の増大に伴い、必要なコバ(縁肉)を確保するためにレンズ厚も大きくさせる必要があり、小型化に反するものとなっていた。
【0031】
これに対して、本実施形態のズームレンズは、従来の3枚構成に正レンズL41を追加した構成を採っているため、正レンズL41を設けない場合よりも第4レンズ群G4の正のパワーを分散させることができる。これにより、第4レンズ群G4の正レンズL41以外の正レンズは、レンズ厚を極端に大きくすることなくコバを確保でき、低分散材料を用いることができる。すなわち、正レンズに用いる材料選択の自由度が増加し、色収差補正にも有利である。また、第4レンズ群G4において、第4レンズ群G4の正レンズL41以外の正レンズのレンズ厚が極端に厚くならないこと、および正レンズL41は弱いパワーを有するため薄くできることから、第4レンズ群G4の小型化にも貢献することができる。
【0032】
本実施形態のズームレンズは、第4レンズ群が3枚構成からなる従来のものと比較して、結果として1枚レンズが増えているが、ガラスモールドの非球面レンズと比較して、プラスチック非球面レンズは安価に構成できる場合が多い。また、正レンズL41はプラスチックで構成されているため軽量化でき、移動群である第4レンズ群G4にとって有利である。
【0033】
すなわち、第4レンズ群G4中に、安価で軽量なプラスチックで構成しながらも、温度変化による影響が小さく、良好な収差補正能力を有する薄型のレンズである正レンズL41を配置することにより、ガラスで構成される非球面レンズを削減し、低コスト化を図るとともに、収差が良好に補正されたズームレンズを得ることができる。
【0034】
なお、適用される撮像装置の鏡筒がプラスチック材料からなる場合には、鏡筒の温度変化に伴う伸縮と、プラスチック材料からなる正レンズの温度変化に伴う像位置の移動とが相殺しあって、温度変化による見た目上の像位置の変化を抑制するという効果を得ることもできる。この点において、ガラスレンズよりプラスチックレンズの方が、温度変化に対して有利であるといえる。
【0035】
本実施形態のズームレンズは、一例として、図1に示す例のような構成を採ることができる。すなわち、各レンズ群とも物体側から順に、第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズL11と正レンズL12との貼り合わせによる接合レンズ、メニスカス形状の正レンズL13からなる3枚構成とし、第2レンズ群G2は、負レンズL21、負レンズL22、正レンズL23と負レンズL24との貼り合わせによる接合レンズからなる4枚構成とし、第3レンズ群G3は、正レンズL31からなる1枚構成とし、第4レンズ群G4は、正レンズL41、正レンズL42、負レンズL43と正レンズL44との貼り合わせによる接合レンズからなる4枚構成とすることができる。
【0036】
この正レンズL41の形状としては例えば、レンズ中心部からレンズ周辺部にいくに従い、正の屈折力が弱くなる形状の非球面を有しているように構成することが好ましい。このような形状とすることにより、球面収差の良好な補正が容易となり、変倍時や合焦時の球面収差の変動を抑制することができる。
【0037】
第3レンズ群G3については、図1に示す例のように、正レンズL31の1枚構成とすることが好ましく、これにより、レンズ枚数を低減して小型化を図ることができる。そして、第3レンズ群G3を1枚構成とする場合には、この正レンズL31は、少なくとも1面に非球面を有することが好ましい。正レンズL31を非球面レンズとすることにより、収差補正上有利となり、第3レンズ群G3を1枚構成とすることが容易となる。
【0038】
正レンズL31が非球面レンズの場合は、プラスチックレンズであることが好ましい。材料をプラスチックにすることで、低コスト化および軽量化を実現できる。また、上述したように、撮像装置の鏡筒がプラスチック材料からなる場合には、正のプラスチックレンズを用いることで、温度変化による見た目上の像位置の変化を抑制することができるという利点もある。
【0039】
図1に示す本実施形態のズームレンズは、第3レンズ群G3を1枚構成としているため、特許文献1のような第3レンズ群G3を2枚構成とした従来例に比べて、第3レンズ群G3のレンズ枚数を少なくできる。このことから、第3レンズ群G3を1枚構成とした場合には、第2レンズ群G2を3枚構成にした従来例と異なり、本実施形態のように、第2レンズ群G2を4枚構成とすることが考えられる。
【0040】
以下に第2レンズ群G2を4枚構成にする意味について説明する。レンズ系全長を短くして小型化するためには、変倍時の移動量を小さくする必要があり、そのためには第2レンズ群G2に強い負のパワーを持たせることが好ましい。しかし、レンズのパワーが強くなりすぎると、第2レンズ群G2は移動群であるため、変倍時の収差変動が大きくなってしまう。
【0041】
特許文献1のものでは第2レンズ群が負、負、正の3枚構成となっているが、図1に示す本実施形態のズームレンズでは、これにさらに負レンズを1枚追加した4枚構成とすることで、第2レンズ群G2が強い負のパワーを持つ場合でも、第2レンズ群G2に必要な負のパワーを分散させるようにしている。これにより、第2レンズ群G2の各負レンズが担うパワーの強さが強くなりすぎて変倍時の収差変動が大きくなってしまうことなく、レンズ系全長を小型化することが可能になる。
【0042】
また、本実施形態のズームレンズでは、第2レンズ群G2において、物体側に2枚の負レンズを有している。このように、物体側に負のパワーを多く配分することにより、第2レンズ群の物体側主点の位置を物体側に近づけて第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の主点間隔を短くすることができる。これにより、軸外光束の第1レンズ群G1を通過する高さを低くすることができ、前玉径(最も物体側のレンズの径)の小型化を図ることができる。
【0043】
さらに第2レンズ群G2の好ましい態様としては、少なくとも1面が非球面の負レンズを少なくとも1枚有することである。図1に示す例では、第2レンズ群G2の最も物体側に配置された負レンズL21の両面が非球面である。第2レンズ群G2に非球面レンズを採用することにより、ディストーションを良好に補正することが可能になり、画角ごとやズーム倍率ごとの像面変動を抑えることもできる。
【0044】
さらに、本実施形態のズームレンズは、第4レンズ群G4の最も物体側の正レンズL41の焦点距離をf41とし、第4レンズ群G4の焦点距離をf4としたとき、下記条件式(1)を満たすように構成されている。
2.1<f41/f4<3.5 … (1)
【0045】
条件式(1)は、正レンズL41の焦点距離と第4レンズ群G4の焦点距離の比を規定しており、いわば第4レンズ群G4に対する正レンズL41のパワーの比を規定している。条件式(1)の下限を下回ると、正レンズL41のパワーが強くなり、上記で説明したように、温度変化による影響が大きくなり、好ましくない。条件式(1)の上限を上回ると、正レンズL41のパワーが弱くなり、収差補正の効果が不十分になる。これを解消しようとすると第4レンズ群G4の他の正レンズに負荷が生じることになり、結果として第4レンズ群G4が大型化してしまう。また、変倍時や合焦時の収差変動も大きくなってしまう。
【0046】
また、本実施形態のズームレンズは、第3レンズ群G3の焦点距離をf3とし、第4レンズ群G4の焦点距離をf4としたとき、下記条件式(2)を満たすように構成されている。
2.0<f3/f4<4.1 … (2)
【0047】
条件式(2)は、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の焦点距離の比を規定している。条件式(2)は、良好な光学性能を達成しつつ、第3レンズ群G3以降のレンズ系を小型化するとともに、3CCD方式で用いられる色分解プリズム等を挿入可能な長いバックフォーカスを確保するための、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4のパワー配分の好適な範囲を規定するものである。
【0048】
条件式(2)の下限を下回るほど第3レンズ群G3のパワーを強くしてしまうと、変倍時や合焦時の球面収差の変動が大きくなってしまう。また、必要なバックフォーカスを確保することが非常に困難となる。逆に、条件式(2)の上限を上回ると、レンズ系全長が長くなり、さらに、第4レンズ群G4に入射する光線高が大きくなり、第4レンズ群G4が大型化してしまう。
【0049】
本実施形態のズームレンズは、上記構成に加え、さらに以下の条件式を満たすように構成することが好ましく、これにより、さらに良好な特性を得ることができる。
【0050】
第4レンズ群G4の正レンズL42および正レンズL44のd線におけるアッベ数の平均をν4pとしたとき、下記条件式(3)を満たすことが好ましい。
62<ν4p<86 … (3)
【0051】
条件式(3)は、正レンズL42と正レンズL44のd線におけるアッベ数の平均を規定している。第4レンズ群G4中の正レンズに、条件式(3)で規定される低分散材料を用いることで、変倍時や合焦時の色収差の変動や、第4レンズ群G4で発生する色収差を抑えることができる。
【0052】
条件式(3)を下回る場合、色収差、特に、ズームの中間域から望遠端にかけての色収差を十分に補正できなくなる。条件式(3)を上回るような低分散材料を用いると、色収差の補正には有利であるが、低屈折率材料を用いることになるため、必要なコバを確保するためにレンズが厚くなってしまう。
【0053】
なお、第3レンズ群G3を正レンズL31の1枚で構成する場合、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4を合わせて色消しを行う必要がある。第4レンズ群G4では、変倍や合焦に伴う色収差の変動を抑えるために、正レンズには低分散の材料を用いることが好ましく、正レンズL31には、第4レンズ群G4で生じる色収差を打ち消すような高分散の材料を用いることが好ましい。
【0054】
第4レンズ群G4の正レンズL42レンズおよび正レンズL44のd線における屈折率の平均をN4pとしたとき、下記条件式(4)を満たすことが好ましい。
1.45<N4p<1.66 … (4)
【0055】
条件式(4)は、正レンズL42と正レンズL44のd線における屈折率の平均を規定している。第4レンズ群G4は強い正のパワーを有し、個々のレンズが担うパワーが大きい。そのため、条件式(4)を下回るような材料を第4レンズ群G4の正レンズに使用した場合には、レンズの曲率が大きくなり、変倍時や合焦時の収差変動が大きくなり、収差補正が困難になる。また、必要なコバを確保するために必要なレンズ厚も大きくなり、第4レンズ群G4が大型化してしまう。条件式(4)を上回ると、レンズを薄く作るのに有利ではあるが、高屈折率材料を用いることになり、高屈折率材料は一般に分散が大きいため、良好な色収差補正が困難になる。
【0056】
本実施形態のズームレンズは、上記条件式(1)〜(4)それぞれに代わり、下記条件式(1−1)、(2−1)、(3−1)、(4−1)を満たすことがさらに好ましく、この場合には、各条件式を満たすことにより得られる効果をさらに向上させることができる。
2.2<f41/f4<3.5 … (1−1)
2.15<f3/f4<4.0 … (2−1)
65<ν4p<84 … (3−1)
1.47<N4p<1.64 … (4−1)
【0057】
また、本ズームレンズが例えば屋外等の厳しい環境において使用される場合には、最も物体側に配置されるレンズには、風雨による表面劣化、直射日光による温度変化に強く、さらには油脂・洗剤等の化学薬品に強い材料、すなわち耐水性、耐候性、耐酸性、耐薬品性等が高い材料を用いることが好ましく、さらには堅く、割れにくい材料を用いることが好ましい。以上のことから最も物体側に配置される材料としては、具体的にはガラスを用いることが好ましく、あるいは透明なセラミックスを用いてもよい。
【0058】
非球面形状が形成されるレンズの材料としては、プラスチックを用いることが好ましく、この場合には、非球面形状を精度良く作製することができるとともに、軽量化および低コスト化を図ることが可能となる。
【0059】
本ズームレンズが、広い温度範囲で使用可能なことが要求される場合には、各レンズの材料としては線膨張係数の小さいものを用いることが好ましい。また、本ズームレンズが厳しい環境において使用される場合には、保護用の多層膜コートが施されることが好ましい。さらに、保護用コート以外にも、使用時のゴースト光低減等のための反射防止コート膜を施すようにしてもよい。
【0060】
図1に示す例では、レンズ系と結像面との間に光学部材PPを配置した例を示したが、ローパスフィルタや特定の波長域をカットするような各種フィルタ等を配置する代わりに、各レンズの間にこれらの各種フィルタを配置してもよく、あるいは、いずれかのレンズのレンズ面に、各種フィルタと同様の作用を有するコートを施してもよい。
【0061】
以上説明したように、本実施形態のズームレンズによれば、要求される仕様等に応じて、上記した好ましい構成を適宜採用することで、レンズ枚数を大幅に増やすことなく、小型に構成でき、良好な収差補正と低コスト化を両立させることができる。
【実施例】
【0062】
次に、本発明のズームレンズの数値実施例について説明する。実施例1〜5のズームレンズのレンズ断面図はそれぞれ図1〜図5に示したものである。
【0063】
実施例1にかかるズームレンズの基本レンズデータを表1に、ズーム(変倍)に関するデータを表2に、非球面データを表3に示す。同様に、実施例2〜5にかかるズームレンズの基本データ、ズームに関するデータ、非球面データを表4〜表15に示す。以下では、表中の記号の意味について、実施例1を例にとり説明するが、実施例2〜5のものについても基本的に同様である。
【0064】
表1の基本レンズデータにおいて、Siは最も物体側の構成要素の面を1番目として像側に向かうに従い順次増加するi番目(i=1、2、3、…)の面番号を示し、Riはi番目の面の曲率半径を示し、Diはi番目の面とi+1番目の面との光軸Z上の面間隔を示している。なお、面間隔の最下欄は表中の最終面と結像面との面間隔を示している。また、基本レンズデータにおいて、Ndjは最も物体側のレンズを1番目として像側に向かうに従い順次増加するj番目(j=1、2、3、…)の光学要素のd線(波長587.6nm)に対する屈折率を示し、νdjはj番目の光学要素のd線に対するアッベ数を示している。なお、基本レンズデータには、開口絞りStおよび光学部材PPも含めて示している。開口絞りStに相当する面の曲率半径の欄には(開口絞り)と記載している。基本レンズデータの曲率半径は物体側に凸の場合を正、像側に凸の場合を負としている。
【0065】
表1の基本レンズデータにおいて、変倍時に間隔が変化する、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔、第2レンズ群G2と開口絞りStの間隔、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間隔、第4レンズ群G4と光学部材PPの間隔に相当する面間隔の欄にはそれぞれ、D5(可変)、D12(可変)、D15(可変)、D22(可変)と記載している。
【0066】
表2のズームに関するデータには、広角端、望遠端における、全系の焦点距離f、FナンバーFno.、全画角2ω、変倍に伴い変化する各面間隔D5、D12、D15、D22の値を示す。全画角2ωの単位は度である。
【0067】
表1のRiおよびDiの単位、表2のf、D5、D12、D15、D22の単位としては、「mm」を用いることができるが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、単位は「mm」に限定されることはなく、他の適当な単位を用いることもできる。
【0068】
表1の基本レンズデータでは、非球面の面番号に*印を付しており、非球面の曲率半径として近軸の曲率半径の数値を示している。表3の非球面データには、非球面レンズであるレンズの符号と、非球面の面番号と、これら非球面に関する非球面係数を示す。非球面係数は、以下の式(A)で表される非球面式における各係数KA、RAm(m=3、4、5、…10)の値である。
【0069】
Zd=C・h2/{1+(1−KA・C2・h2)1/2}+ΣRAm・hm … (A)
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に
下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸からのレンズ面までの距離)
C:近軸曲率半径の逆数
KA、RAm:非球面係数(m=3、4、5、…10)
なお、表1のRiおよびDiの単位にmmを用いたときは、上記Zd、hの単位もmmとなる。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【表6】
【0076】
【表7】
【0077】
【表8】
【0078】
【表9】
【0079】
【表10】
【0080】
【表11】
【0081】
【表12】
【0082】
【表13】
【0083】
【表14】
【0084】
【表15】
【0085】
表16に、実施例1〜5における条件式(1)〜(4)に対応する値を示す。表16からわかるように、実施例1〜5のいずれも、条件式(1)〜(4)を満足している。
【0086】
【表16】
【0087】
図6(A)〜図6(H)に実施例1のズームレンズの広角端および望遠端における、球面収差、非点収差、ディストーション(歪曲収差)、倍率色収差の各収差図を示す。各収差図には、d線(波長587.6nm)を基準波長とした収差を示すが、球面収差図および倍率色収差図には波長460.0nm、波長615.0nmについての収差も示す。球面収差図のFno.はFナンバー、その他の収差図のωは半画角を意味する。
【0088】
同様に、図7(A)〜図7(H)、図8(A)〜図8(H)、図9(A)〜図9(H)、図10(A)〜図10(H)に、実施例2〜5のズームレンズの広角端および望遠端における、球面収差、非点収差、ディストーション(歪曲収差)、倍率色収差の各収差図を示す。
【0089】
以上のデータから、実施例1〜5のズームレンズは、約10倍の倍率を有し、小型化を図りつつ、広角端でのFナンバーが1.8程度と小さく、各収差が良好に補正され、広角端および望遠端ともに可視域において高い光学性能を有することがわかる。これらのズームレンズは、監視カメラや、ビデオカメラ、電子スチルカメラ等の撮像装置に好適に使用することができる。
【0090】
図11に、本発明の実施形態の撮像装置の一例として、本発明の実施形態にかかるズームレンズ1を用いて構成したビデオカメラ10の構成図を示す。なお、図11では、ズームレンズ1が備える正の第1レンズ群G1、負の第2レンズ群G2、開口絞りSt、正の第3レンズ群G3、正の第4レンズ群G4を概略的に示している。
【0091】
図11に示すビデオカメラ10は、3つの撮像素子を有するいわゆる3CCD方式の撮像装置であるが、本発明の撮像装置はこれに限定されず、1つの撮像素子で全波長帯域を撮像するものでもよい。ビデオカメラ10は、ズームレンズ1と、ズームレンズ1の像側に配置されたローパスフィルタおよび赤外線カットフィルタ等の機能を有するフィルタ2と、フィルタ2の像側に配置された色分解プリズム3R、3G、3Bと、各色分解プリズムの端面に設けられた撮像素子4R、4G、4Bと、信号処理回路5とを備えている。撮像素子4R、4G、4Bはズームレンズ1により形成される光学像を電気信号に変換するものであり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)を用いることができる。撮像素子4R、4G、4Bは、その撮像面がズームレンズ1の結像面に一致するように配置される。
【0092】
ズームレンズ1を透過した光はフィルタ2により不要光成分が除去され、色分解プリズム3R、3G、3Bにより赤、緑、青の各色光に分解された後、撮像素子4R、4G、4Bの撮像面上に結像する。赤、緑、青の各色光に対応する撮像素子4R、4G、4Bからの出力信号は信号処理回路5にて演算処理されてカラー画像が形成され、表示装置6に表示される。
【0093】
本発明の実施形態にかかるズームレンズは、前述した長所を有するため、本実施形態の撮像装置は、小型で低コストに構成でき、かつ高画質の映像を得ることができる。
【0094】
以上、実施形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズ成分の曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数等の値は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施例1にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図2】本発明の実施例2にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図3】本発明の実施例3にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図4】本発明の実施例4にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図5】本発明の実施例5にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図6】本発明の実施例1にかかるズームレンズの各収差図
【図7】本発明の実施例2にかかるズームレンズの各収差図
【図8】本発明の実施例3にかかるズームレンズの各収差図
【図9】本発明の実施例4にかかるズームレンズの各収差図
【図10】本発明の実施例5にかかるズームレンズの各収差図
【図11】本発明の実施形態にかかる撮像装置の概略構成図
【符号の説明】
【0096】
1 ズームレンズ
2 フィルタ
3B、3G、3R 色分解プリズム
4B、4G、4R 撮像素子
5 信号処理回路
6 表示装置
10 ビデオカメラ
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
PP 光学部材
St 開口絞り
Z 光軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、正の屈折力を有し、変倍時に固定されている第1レンズ群と、負の屈折力を有し、光軸に沿って移動することにより変倍を行う第2レンズ群と、絞りと、正の屈折力を有し、変倍時に固定されている第3レンズ群と、正の屈折力を有し、変倍に伴う像面位置の補正および合焦を行う第4レンズ群とを備え、
前記第4レンズ群が、物体側から順に、少なくとも1面が非球面で材料がプラスチックの正の第41レンズと、正の第42レンズと、負の第43レンズと、正の第44レンズとからなり、
前記第41レンズの焦点距離をf41とし、前記第4レンズ群の焦点距離をf4とし、前記第3レンズ群の焦点距離をf3としたとき、下記条件式(1)、(2)を満たすことを特徴とするズームレンズ。
2.1<f41/f4<3.5 … (1)
2.0<f3/f4<4.1 … (2)
【請求項2】
前記第42レンズおよび前記第44レンズのd線におけるアッベ数の平均をν4pとしたとき、下記条件式(3)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
62<ν4p<86 … (3)
【請求項3】
前記第42レンズおよび前記第44レンズのd線における屈折率の平均をN4pとしたとき、下記条件式(4)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のズームレンズ。
1.45<N4p<1.66 … (4)
【請求項4】
前記第41レンズが、レンズ中心部からレンズ周辺部にいくに従い、正の屈折力が弱くなる形状の非球面を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記第3レンズ群が、少なくとも1面の非球面を有する正レンズの1枚からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記第3レンズ群の前記正レンズの材料がプラスチックであることを特徴とする請求項5に記載のズームレンズ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のズームレンズを備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項1】
物体側から順に、正の屈折力を有し、変倍時に固定されている第1レンズ群と、負の屈折力を有し、光軸に沿って移動することにより変倍を行う第2レンズ群と、絞りと、正の屈折力を有し、変倍時に固定されている第3レンズ群と、正の屈折力を有し、変倍に伴う像面位置の補正および合焦を行う第4レンズ群とを備え、
前記第4レンズ群が、物体側から順に、少なくとも1面が非球面で材料がプラスチックの正の第41レンズと、正の第42レンズと、負の第43レンズと、正の第44レンズとからなり、
前記第41レンズの焦点距離をf41とし、前記第4レンズ群の焦点距離をf4とし、前記第3レンズ群の焦点距離をf3としたとき、下記条件式(1)、(2)を満たすことを特徴とするズームレンズ。
2.1<f41/f4<3.5 … (1)
2.0<f3/f4<4.1 … (2)
【請求項2】
前記第42レンズおよび前記第44レンズのd線におけるアッベ数の平均をν4pとしたとき、下記条件式(3)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
62<ν4p<86 … (3)
【請求項3】
前記第42レンズおよび前記第44レンズのd線における屈折率の平均をN4pとしたとき、下記条件式(4)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のズームレンズ。
1.45<N4p<1.66 … (4)
【請求項4】
前記第41レンズが、レンズ中心部からレンズ周辺部にいくに従い、正の屈折力が弱くなる形状の非球面を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記第3レンズ群が、少なくとも1面の非球面を有する正レンズの1枚からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記第3レンズ群の前記正レンズの材料がプラスチックであることを特徴とする請求項5に記載のズームレンズ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のズームレンズを備えたことを特徴とする撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−107815(P2010−107815A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280989(P2008−280989)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】
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