説明

セル用包装材およびその製造方法

本発明の態様のセル包装材は、ベースフィルム層;および該ベースフィルム層の下または上に与えられ、かつバインダー樹脂およびカーボンブラックを含む印刷層を含んでいる。該セル包装の該ベースフィルム層または印刷層は、レーザー照射によって部分的に除去されて、その下の層を露出させる。従って、本発明のセル包装材によれば、広範囲の形状またはロゴなどが、レーザー照射によって識別可能になり、外側に容易に表示される。セル包装に、このように識別性および外観を与えることによって、セル包装に、別途のラベルを付けるためのラベル付け工程を排除することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池または可搬型蓄電池用のセル包装材、およびその製造方法に関する。特には、本発明は、レーザー照射によって部分的に取り除かれたベースフィルム層または印刷層を含むセル包装材、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般には、金属、特にはアルミニウムの圧縮成形、およびそれを円筒形もしくは平行六面体の形状に成形することによって得られた包装材が、リチウム二次電池、可搬型蓄電池など用のセル包装材として用いられてきた。しかしながら、そのような金属缶包装材は、硬い外壁を有しており、そして従って包装されるセルの形状が金属缶包装材の形状によって決められるという制約がある。
【0003】
このような制約を克服するために、積層セル包装材が開発されてきた。例えば、韓国特許出願第2003−7002427号明細書には、ベース層、接着層、バリヤ層、ドライラミネート層およびシーラント層を含むセル包装材を開示されている。更に、韓国特許出願公開第2002−0030737号明細書には、ベースフィルムおよび、二軸延伸ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)もしくはポリオレフィン樹脂を用いた表面保護層の積層構造を含む、セル包装材が開示されている。
【0004】
しかしながら、このような慣用のセル包装材は、別途のラベル付け操作を通して仕上げられ、そこでは、セルを包装した後に、識別性または外観デザインを与えるために、セル包装材にラベルが付けられる。このような別途のラベル付け操作は、遅延した生産および増大した製造費用の問題を有している。更に、日付を入れるために用いられているラベルは、ドット印刷プロセスを通して、バーコードを印刷することによって得られるものであり、種々のロゴ、形状などを付けるのに制約があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、セルを安全に保護することができ、そしていずれかの別途のラベル付け操作を要せずにレーザー照射によって容易に識別性と外観デザインを与えることができ、そして種々の色を実現することによって外観デザインを向上させることができる、セル包装材およびセル包装材の製造方法を提供することに向けられている。
【0006】
また、本発明は、短い製造時間で得られ、軽い質量を有し、形状の制約がない、そして優れた耐熱性、電気絶縁性、防湿およびガスバリヤ性、安定性、耐化学薬品性、ヒートシール強度ならびに成形性を与える、セル包装材およびセル包装材の製造方法を提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様では、ベースフィルム層ならびに、ベースフィルム層の下部または上部に与えられ、そしてバインダー樹脂とカーボンブラックを含む印刷層を含むセル包装材が提供され、ベースフィルム層または印刷層は、レーザー照射によって部分的に取り除かれて下にある層を露出させる。
【0008】
本発明の態様では、ベースフィルムの下部または上部に、バインダー樹脂およびカーボンブラックを含む印刷層を与えること;ならびにベースフィルムまたは印刷層をレーザー照射に付して、ベースフィルムまたは印刷層を部分的に取り除いて、それによりベースフィルムまたは印刷層の下の層が露出されることを含む、セル包装材の製造方法を提供する。
【0009】
本発明の1つの態様によれば、ベースフィルム層および印刷層は、互いに異なる色を有することができる。
【0010】
本発明の1つの態様によれば、レーザーは、COレーザーであることができる。
【0011】
本発明の1つの態様によれば、カーボンブラックは、1〜4μmの粒子直径を有することができる。
【0012】
本発明の1つの態様によれば、印刷層は、バインダー樹脂として、エポキシ、ビニル、フェノール、メラミン、ポリイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、またはポリエーテルウレタン樹脂を含むことができる。
【0013】
本発明の1つの態様によれば、バインダー樹脂は、印刷層を形成する全体の組成物を基準として5質量%以上および20質量%未満の量で含まれていることができる。
【0014】
本発明の1つの態様では、ベースフィルム層は、5〜30μmの厚さを有することができる。
【0015】
本発明の1つの態様によれば、セル包装材は、ベースフィルム層または印刷層の最外層の上に形成され、そしてウレタンアクリレートオリゴマーを含む、硬質コーティング層を更に含むことができる。
【0016】
本発明の1つの態様によれば、セル包装材は、ベースフィルム層または印刷層の下部に形成されたバリヤ層;バリヤ層の下部に形成された溶融押出樹脂層;ならびに溶融押出樹脂層の下部に形成されたシーラント層、を更に含むことができる。
【発明の効果】
【0017】
ここに開示したセル包装材によれば、ベースフィルム層または印刷層は、レーザー照射によって一部が取り除かれ、それによって下の層が露出され、そしてその結果、識別または外観デザインを実現させる。この方法では、それを通して包装材に識別性や外観デザインが与えられる別途のラベル付け操作を回避すること、および生産性を向上させることが可能となる。更に、顧客に特有なロゴ、不規則な形状、通し番号、品質表示、または他の異なったパターンを、セル包装材の外側表面上に付けることができる。その結果、セル保護機能のみならず、種々の付加的な機能をも与えられたセル包装材を提供することが可能である。
【0018】
更に、本セル包装材は、種々の色を実現して、向上した外観デザインを与えることができる。特には、セル包装材の色を、セルの色またはそのセルが用いられる電子装置の色に調和させることができる。
【0019】
更に、本発明の1つの態様によれば、短い製造時間で得ることができ、軽い質量を有し、形状の制約がない、そして優れた耐熱性、防湿およびガスバリヤ性、安定性、耐化学薬品性、ヒートシール強度ならびに成形性を得ることがきる、セル包装材を与えることが可能である。また、良好な印刷性を備え、それによって印刷層は、成形の後でさえも色差をほとんど示さないセル包装材を与えることができる。更に、本セル包装材は、層間剥離を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、1つの態様によるセル包装材の層構造を示す概略図である。
【図2】図2は、他の態様によるセル包装材の層構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の態様によるリチウム二次電池または可搬型蓄電池用のセル包装材ならびにその製造方法を詳細に説明する。
【0022】
図1および図2は、それぞれが、本発明の態様によるセル包装材の層構造を示す概要図である。
【0023】
一般に、セルは、正極、負極、セパレータ、電解質などを含み、そしてセルの外側部分は、包装材で包装されていることができる。この包装材は、セル包装材と称される。
【0024】
本発明の1つの態様によるセル包装材は、連続的に積層された、ベースフィルム層10、印刷層20、接着層30、バリヤ層40、およびシーラント層50を含んでいる(図1を参照)。ここで、印刷層20およびベースフィルム層10の位置は、逆にすることができる(図2を参照)。更に、印刷層は、接着剤がその中に混合されている接着性印刷層であることができる。
【0025】
態様によれば、ベースフィルム層10または印刷層20は、部分的に取り除かれ、それによって下にある印刷層20またはベースフィルム層10が露出される。この方法で、いずれかの別途のラベル付け操作なしに、セル包装材に識別性または外観デザインを与えることが可能である。
【0026】
ベースフィルム層10または印刷層20は、レーザー照射によって容易に取り除くことができる。ベースフィルム層10および印刷層20がレーザー照射を受ける場合には、レーザー光線で照射された部分は燃焼し、そして容易に取り除かれる。レーザーの具体的な例としては、ガスレーザー、エキシマレーザー、半導体レーザーなどが挙げられ、そして、マーク付け性の点から、二酸化炭素(CO)レーザーを好ましく用いることができる。二酸化炭素レーザーは、他の種類のレーザーに比べて、より少ない反射または散乱を示し、そして従ってレーザー光線が照射される標的へのエネルギー集中を可能とさせる。二酸化炭素レーザーパルスを短くすると、標的以外の部分への熱的損傷を最小化することができ、その結果マーク付け性を向上させる。
【0027】
特に、1604nmの波長のCOレーザーを用いることができる。レーザー照射のエネルギー線量に特に制約はないけれども、レーザー照射のエネルギーの大きさは、下にある層の破壊の可能性および、エネルギー照射を受ける層(ベースフィルム層または印刷層)の具体的な種類を考慮して決めることができる。
【0028】
本発明の1つの態様によるセル包装材では、ベースフィルム層10がレーザー照射によって部分的に取り除かれた場合には、ベースフィルム層10の下に与えられた印刷層20が部分的に露出される。従って、露出された部分を通して種々の形状または文字を表現することができる。形状などを露出された部分を通して表現するには、ベースフィルム層10は印刷層20とは色が異なることが好ましい。更に、ベースフィルム層10が印刷層20と同じ色を有する場合でさえも、それらは互いに輝度が異なっていることができる。
【0029】
これ以降、セル包装材を形成するそれぞれの層が詳細に説明される。
【0030】
ベースフィルム層10は、ポリエステルフィルムまたはポリアミドフィルムを単独で、あるいはポリエステルフィルムとポリアミドフィルムの積層品(積層の順序は変えることができる)を含むことができる。
【0031】
ポリエステルフィルムは、優れた電解質耐性を有しており、ポリエステルフィルムの具体的な例としては、ポリエチレンテレフタレート(Polyethyleneterephthalate;PET)、ポリブチレンテレフタレート(Polybutyleneterephthalate;PBT)、ポリエチレンナフタレート(Polyethylenenaphthalate;PEN)、ポリブチレンナフタレート(Polybutylenenaphthalate;PBN)、コポリエステルおよびポリカーボネート(Polycarbonate;PC)などからなる群から選ばれた少なくとも1種を含んでいる。
【0032】
ポリアミドフィルムは、成形性を高めるように作用し、成形性は、成形型の包装材用に特に必要とされる。成形型包装材の場合には、成形可能な二軸延伸ポリアミドフィルムを、セルの容量および寸法を考慮して用いることができる。二軸延伸ポリアミド樹脂の具体的な例としては、ナイロン6、ナイロン6.6、ナイロン6とナイロン6.6との共重合体、ナイロン6.10、ポリメタキシリレンアジポアミド(MXD6)などからなる群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0033】
本発明の態様によれば、レーザー照射が熱の発生をもたらすので、上記のフィルムの間では、好ましくは耐熱性フィルムを用いることができる。特に、優れた耐熱性、寸法安定性および加工性を有する、PETフィルムまたは二軸延伸ポリアミドフィルムが、ベースフィルム層10として用いられることが好ましい可能性がある。
【0034】
ベースフィルム層10は、15〜25μmの厚さを有することができる。ベースフィルム層10が15μm未満の厚さを有する場合には、ガスバリヤ性は、低下する可能性があり、そしてアルミニウム箔が酸化および腐食する可能性がある。ベースフィルム層10が25μm超の厚さを有している場合には、成形の間にセル包装材の端部を成形するのは容易でない可能性があり、そして結果として得られるセル包装材料は不十分な可撓性を示す可能性がある。
【0035】
一方、ポリエステルフィルムおよびポリアミドフィルムは、接着剤を用いることによって、互いに積層することができる。ここで用いられる接着剤は、優れた耐熱性を有するポリウレタン接着性であることができる。特に、ウレタン系の2液型(2成分)接着剤を用いることができる。セルが包装材中に包装された後で動く場合には、熱の発生によって温度が上がる可能性があり、そしてこのために、低い耐熱性を有する接着剤は、ポリエステルフィルムとポリアミドフィルムの間で層間剥離を起こす可能性がある。従って、優れた耐熱性を有する接着剤を使用することが必要である。
【0036】
本発明の1つの態様によれば、種々の機能を有するセル包装材を与えるために、難燃剤、スリップ剤、顔料および導電性インクからなる群から選ばれた少なくとも1種を、ベースフィルム層10に加えることができる。
【0037】
当業者に通常知られているいずれかの難燃剤を、特別な制約なしに用いることができる。ここで用いられる難燃剤は、ベースフィルム層10中に用いられる樹脂と相溶性を有し、そしてこれらの層の積層性の低下を起こさないことが有利である。更に、難燃剤は、最終製品の機械的性質に影響せず、そして燃焼に際して、発煙と毒性ガスの発生が低度であることが有利である。
【0038】
難燃剤の限定するものではない例としては、有機系難燃剤、例えば、リン系、ハロゲン系、メラミン系難燃剤など、または無機系難燃剤、例えば水酸化アルミニウム、アンチモン系難燃剤、水酸化マンガンなどが挙げられる。環境問題を考慮すると、非ハロゲン難燃剤を用いることが有利である。
【0039】
スリップ剤は、1つのフィルム層と他のフィルム層との間の接着を防ぎ、そしてフィルムまたはシートに表面滑性を与えるように機能する。ここではいずれかのスリップ剤を用いることができ、そしてそれらの具体的な例としては、スリップ性を与えるポリマー、例えばシリコーン、シロキサン、シラン、ワックスなどが挙げられる。更に、スリップ剤の限定するものではない例としては、脂肪酸アミド、例えばオレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。
【0040】
顔料の具体的な例としては、種々の色を有する、通常の無機顔料または有機顔料が挙げられる。無機顔料の具体的な例としては、白色酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)、塩基性炭酸鉛、リトポン、ZnSとBaSOの混合物、2PbCO.Pb(OH)、黒色酸化鉄(FeO.FeO)、カーボンブラック、黄色クロム酸鉛(PbCrO)、黄色酸化鉄(FeO(OH)もしくは Fe.HO)、カドミウムイエロー(CdSもしくはCdSとZnSとの混合物)、チタニウム・イエロー(TiO.NiO.Sb)、橙色クロムオレンジ(PbCrO.PbO)、モリブデンオレンジ(PbCrO.PbMoO.PbSO)、赤色の赤色酸化鉄、赤色酸化鉛、カドミウムレッド、紫色のマンガンバイオレット、青色のプルシアンブルー(Fe(NH)Fe(CN).xHO)、ウルトラマリン(Na6−8 AlSi242−4)、コバルトブルー(CoO.Al)、緑色のクロム緑(クロム酸鉛とプルシアンブルーの混合物)、エメラルドグリーン(Cu(CHCO.3Cu(AsO)など、が挙げられる。
【0041】
有機顔料の具体的な例としては、黄色、橙色または赤色のアゾ型顔料、青色、紫色または緑色のフタロシアニン顔料、あるいは縮合多環式顔料、例えばアントラキノン、チオインジゴ、ぺリノン(perinone)、ペリレン、キナクリドン顔料などが挙げられる。
【0042】
顔料のベースフィルム層10への混合は、セル包装材に種々の色を実現させることを可能にする。一方、ベースフィルム10中に含まれる顔料は、印刷層20の色を考慮して、上記の顔料から適切に選択することができる。
【0043】
当業者に通常知られているいずれかの導電性インクを用いることができる。導電性インクのベースフィルム層10中への混合は、セル包装材に電磁波遮蔽効果を与える。導電性インクは、導電性充填剤をバインダー樹脂に加えることによって作られる。導電性充填剤の具体的な例としては、金属、例えば、銀、金、白金、銅またはニッケル、金属酸化物、例えば酸化ルテニウム、無定形炭素粉末、グラファイト、カーボンファイバーなどが挙げられる。
【0044】
印刷層20は、バインダー樹脂およびカーボンブラックを含むことができる。カーボンブラックの印刷層20中への混合は、印刷層が、ベースフィルム層10の色と対照となす色を有することを可能にする。その結果として、レーザー照射によって取り除かれたベースフィルム層10(図1参照)または印刷層(図2参照)の一部を通して露出された印刷層20またはベースフィルム10を、はっきりと見ることができる。従って、ベースフィルム層10または印刷層20が取り除かれた部分を通して、露出された形状またはパターンの識別性を向上させることが可能である。
【0045】
バインダー樹脂の具体的な例としては、優れた耐熱性、耐酸性、耐溶剤性、耐アルカリ性、耐引掻き性などを有する硬化性樹脂が挙げられる。そのような硬化性樹脂の具体的な例としては、エポキシ、ビニル、フェノール、ユリア、アルキッド、メラミン、ポリイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルウレタン樹脂などが挙げられる。特に、優れた印刷転写性および耐熱性を有するビニル樹脂およびポリウレタン樹脂を、バインダー樹脂として用いることができる。
【0046】
印刷層20は、バインダー樹脂として硬化性樹脂を用いるので、優れた耐熱性、耐酸性、耐溶媒性、耐アルカリ性などを示すだけでなく、良好な印刷性をも有し、成形の後でさえも色の偏差を生じさせない。
【0047】
バインダー樹脂は、印刷層20を形成する組成物の総質量を基準として、5質量%以上および20質量%未満の量で用いることができる。バインダー樹脂が、20質量%以上の量で用いられた場合には、印刷層は、低い印刷転写性を有する可能性がある。バインダー樹脂が5質量%未満の量で用いられた場合には、印刷欠陥、例えば、しわまたは櫛歯文様が発生する可能性がある。
【0048】
カーボンブラックは、印刷転写性の低下、インクの詰まりによって引き起こされる印刷欠陥などを低減または防止するために、1〜4μmの粒子直径を有することができる。カーボンブラックは、印刷層20を形成する組成物の総質量を基準として、5〜15質量%、好ましくは10質量%の量で用いることができる。
【0049】
印刷層20は、種々の色を実現するために、カーボンブラックに加えて、通常の無機顔料または有機顔料を更に含むことができる。
【0050】
印刷層20を形成するために、グラビア、マイクログラビア、反転グラビア、コンマ印刷法などを用いることができる。特には、グラビア印刷を用いることができる。一方、印刷の均質性を向上させるため、およびグラビア印刷の間のレーザーマーキング効率を高めるため、ならびに高品質の色を実現するために、印刷用に用いられるシリンダとして、100〜200ラインのシリンダを用いることができる。
【0051】
更に、芳香放出マイクロカプセルを印刷層20に混合して、それによってセル包装材に種々の芳香を発生させることができる。その中に混合された芳香放出マイクロカプセルを有する印刷層は、そのようなマイクロカプセルをバインダー樹脂と混合して、バインダー樹脂中にマイクロカプセルを分散させることによって得ることができ、結果として生じた混合物を、更に顔料と混合して、印刷層20を形成するための組成物を形成し、そしてこの組成物で印刷を実施する。
【0052】
芳香放出マイクロカプセルは、例えば、花または果物から誘導されたオイル系芳香剤を、有機溶媒中に溶解することによって得られる。カプセル化剤の具体的な例としては、天然ポリマー、例えばゼラチン、アラビアゴム、カゼインなど、または合成ポリマー、例えばエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンなどが挙げられる。
【0053】
更に、印刷層20は、更に温度指示インクを含むことができる。用語「温度指示インク」は、温度に応じて色の変化を受けるインクを意味している。そのような温度指示インクは、エネルギーを吸収することによって色の変化(または退色)を受け、そしてエネルギー吸収を遮断すると、その当初の色を回復するか、または他の色へ変化する。種々の種類の温度指示インクが、その色、色変化温度(色変化温度は、−30℃〜120℃の広い範囲であることができる)、色変化機構などに応じて、当業者に知られている。
【0054】
温度指示インクを用いることによって印刷層20を形成する場合には、セルの温度挙動を、セル包装材を通して確認することができる。従って、セルの安定性および信頼性を確実にすることが可能である。また、セル包装材が適切な温度でシールされているか否かを直接に確認することができる。
【0055】
印刷層20およびバリヤ層40、あるいはベースフィルム層10およびバリヤ層40は、それらの間に挿入された接着層30によって接着することができる。
【0056】
接着層30を形成する接着剤は、印刷性、接着安定性(熱的安定性)、耐化学薬品性および耐油性を有している接着剤でよく、それによって接着剤は、レーザー照射の間にその接着性を維持する。接着剤の具体的な例としては、アクリル系、エポキシ系、フェノール系、メラミン、ポリイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルウレタン接着剤などを含む1液型(1成分)接着剤、または基剤部と硬化剤部を含む2液型(2成分)接着剤を挙げることができる。特に、優れた耐熱性を有するアクリル系またはウレタン系接着剤を、レーザー照射の間に発生する可能性がある浮き上がり現象を防止するために用いることができる。低粘度接着剤または高粘度接着剤を、アクリル系接着剤として用いることができる。
【0057】
更に、難燃剤を含む接着剤を、セル包装材の難燃性を向上させるために用いることができる。しかしながら、難燃剤を接着層に加える場合には、過剰の難燃剤は、接着性の低下を引き起こし、層間剥離または白化をもたらす可能性がある。従って、難燃剤の接着層への添加は、接着剤の質量を基準にして、0質量%超または30質量%未満の量で行うことができる。
【0058】
1つの態様によれば、接着剤は、印刷層に混合することができ、接着性印刷層を形成して、印刷操作を簡略化することができる。
【0059】
バリヤ層40は、水分およびガスを遮蔽することが意図されており、そしてその具体的な例としてはアルミニウム箔が挙げられる。更に、アルミニウム箔は、鉄を含んでいてもよい。このような鉄を含むアルミニウムは、優れた遮蔽性を有しており、そして層化したラミネートを曲げることによって発生するピンホールの生成を低減させる。特に、エンボス加工した被覆を形成する場合には、このような鉄を含むアルミニウムは、側壁の形成を容易にさせる。ここでは、鉄の含有量が0.6質量%未満である場合には、ピンホールの生成を防ぐこと、およびエンボス加工の成形性を向上させるのは、困難である可能性がある。一方で、鉄の含有量が2.0質量%超である場合には、アルミニウムの可撓性が低下する可能性があり、そして積層体での袋の成形の間の加工性を低下させる可能性がある。更に、アルミニウム箔は、ケイ素を含むことができる。ケイ素含有量が0.9質量%を超える場合には、アルミニウム箔は、向上した磁気特性を示すものの、袋に成形する間に貧弱な加工性を示す。一方で、ケイ素含有量が0.05質量%未満である場合には、結果として得られる製品は、貧弱な強度および伸びを有しており、袋に成形する間の加工性の低下をもたらす。
【0060】
従って、アルミニウム箔は、成形性および加工性の点から、好ましくは0.05〜0.9質量%のケイ素および0.6〜2.0質量%の鉄を含むことができる。
【0061】
一方、アルミニウム箔は、腐食を防ぎ、そして接着強度を向上させるために、そのいずれかの表面または両方の表面上を、非クロム酸塩処理を受けさせることができる。そのような非クロム酸処理としては、有機化合物、例えば、チタン含有樹脂、ジルコニウム、リン酸塩など、および無機/有機複合材、からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を用いることによって耐酸性のコーティングを形成することが挙げられる。ここで、非クロム酸処理は、塩に対する耐性を増大させるために、アルミニウム箔の両方の表面上に行うことができる。上記の処理に加えて、アルミニウム箔は、ポリマー樹脂、例えばアクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などでコーティングすることができる。
【0062】
以下に、最内層、すなわち、シーラント層50を説明する。シーラント層は、5〜120μmの厚さで形成することができる。接着性樹脂層および溶融押出樹脂層を、バリヤ層40およびシーラント層50の間に更に形成することができる。特に、接着性樹脂層(または溶融樹脂層)は、バリヤ層40とシーラント層50の間に形成することができ、そしてポリオレフィン(改質ポリプロピレン)フィルムまたは押出シーラント層を、シーラント層50として用いることができる。
【0063】
以下に、接着性樹脂層、溶融押出樹脂層およびシーラント層の形成を説明する。接着性樹脂層は、バリヤ層40上の金属(例えば、アルミニウム)に容易に接着する接着剤をコーティングすることによって形成される。耐熱性を要するセルの場合には、ポロプロピレン樹脂が、通常シーラント層50に用いられる。しかしながら、このようなプロピレン樹脂は、アルミニウムには直接には接着しない。従って、アルミニウムへの接着を促進するために、アルミニウムに容易に接着する接着性樹脂がコーティングに用いられる。接着性樹脂は、改質ポリエチレン、改質ポリプロピレンおよび改質アクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種を溶媒中に溶解することによって得ることができる。
【0064】
従って、溶融押出樹脂層は、接着性樹脂層およびシーラント層の間に形成することができる。溶融押出樹脂層は、溶融押出コーティングフィルムを通して、接着力を与えることによって、上側層と下側層を積層するように作用する。溶融押出樹脂層は、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂の溶融押出を行うことにより、そしてポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂をバリヤ層上に適用し、そして次いでシーラント層と積層することによって形成することができる。
【0065】
溶融押出コーティングを行う場合には、オゾン放射ができるオゾン発生システムを用いて、溶融押出コーティング樹脂の表面の過酸化物化を実施して、それによって接着性を向上させ、ならびにオゾンコーティングフィルムを形成させ、それによってバリヤ性、シール性および接着性樹脂層と溶融押出樹脂層の間の接着力を向上させることができる。
【0066】
溶融押出コーティングの間に押し出される樹脂がオゾン照射された場合には、接着性をより高い程度に向上させることができる。いずれかの既知のオゾン発生システムを用いることができる。例えば、大気を、空気圧縮機を用いて圧縮することができ、そして空気を、酸素発生器中で窒素と酸素に分離して、それによって、ラジオ波および高電圧を用いた無声プラズマ放電システムを通して高濃度オゾンを生成するために、純粋な酸素をもっぱら用いることができる。このようなオゾン化した空気を、エアノズルを通して樹脂排出口に噴霧して、樹脂コーティングフィルムの強力な酸化を行ない、それによってフィルムの接着力を向上させることができる。溶融押出樹脂層のコーティングフィルムの厚さは、10〜80μm、好ましくは10〜40μmであることができる。
【0067】
シーラント層50は、包装材のヒートシールを行うために、ヒートシール可能な樹脂層を用いる。ここで用いられる樹脂が成形型の樹脂である場合には、これは、成形機中の型の表面上でのスライド性、およびヒートシール強度を与え、そして成形条件によって引き起こされるヒートシール層の割れ、白化またはピンホールの発生を防止する。この目的のために、シーラント層としては、エチレン、ブタジエンおよびエチレンプロピレンゴムから選ばれる少なくとも1種を、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン共重合体、プロピレン共重合体などから選ばれる少なくとも1種に加えることによって形成されるプラスチックフィルムが挙げられる。
【0068】
本発明の1つの態様によれば、ベースフィルム層10または印刷層20の最外層は、ノングレア(マット)処理、ホログラム処理またはグレア(光沢)処理を目的として、更なるコーティング層を更に与えることができる。セル包装材が更にノングレアコーティング層を与えられる場合には、光の散乱を防ぐことが可能であり、そして従って、レーザー照射のマーキング効率を最大化し、光の散乱によって引き起こされるセル包装材の表面上の損傷を最小化し、そしてその取扱い性を向上させることが可能である。例えば、ノングレアコーティング層は、不透明顔料とウレタンアクリル樹脂の混合物を、ベースフィルム層10上に、グラビア印刷プロセスによってコーティングすることによって形成することができる。
【0069】
本発明の1つの態様によれば、ベースフィルム層10および印刷層20の最外層は、硬質コーティング層を更に与えることができる。硬質コーティング層は、ベースフィルム層10または印刷層20が、外部応力によって引掻かれること、または溶媒によって膨潤することを防止するように作用する。硬質コーティング層は、UV硬化性硬質コーティング剤を印刷層に適用し、次いでUV硬化することによって形成することができる。好ましくは、低官能価の高分子量樹脂を含む硬質コーティング剤を、セル包装材の可撓性を向上させ、そして耐溶剤性、耐引掻き性および硬度を増大させるために、UV硬化性硬質コーティング剤として用いることができる。低官能価の高分子量樹脂としては、2〜3価の官能価および10000〜30000の分子量を有するウレタンアクリレートオリゴマーを挙げることができる。
【0070】
硬質コーティング剤は、種々の印刷プロセス、例えば、グラビア、マイクログラビア、反転グラビア、コンマ印刷法などによって適用することができる。硬質コーティング剤は、乾燥状態で、4〜12μmの厚さに適用することができる。厚さが4μm未満である場合には、硬質コーティング層は、低い表面硬度および貧弱なUV硬化性を有する可能性がある。厚さが12μm超である場合には、印刷層は、レーザー照射で、重篤なバリを示す可能性があり、それによって貧弱なマーキング性を与える。硬質コーティング層は、約5H以上の表面硬度を有することができる。
【実施例】
【0071】
例および実験をここで説明する。以下の例は、説明を目的とするものであり、そして本発明の範囲を限定することを意図するものではない。更に、以下の比較例は、単に例との比較を目的としてなされたものである。
【0072】
実験1:カーボンブラックの粒子直径に応じたセル包装材の特徴の評価
【0073】
例1
印刷層/ベースフィルム層/接着層/バリヤ層(アルミニウム箔)/溶融押出樹脂層/シーラント層の構造を有するセル包装材を準備した。
【0074】
印刷層は、10質量%のポリウレタン樹脂および、3μmの粒子直径を有していた、10質量%のカーボンブラックを含んでいた。ベースフィルム層は、ナイロン樹脂からなり、そして接着層は、ポリエステル樹脂からなっていた。溶融押出樹脂層は、ポリプロピレン樹脂からなっていた。シーラント層は、エチレン、プロピレンおよびブタジエンの三元共重合体からなっていた。
【0075】
比較例
印刷層中に、7μm(比較例1)または11μm(比較例2)の粒子直径を有するカーボンブラックを用いた以外は、例1と同じ方法でセル包装材を準備した。
【0076】
<印刷転写性>
セル包装材を、1m×1mの大きさに切断し、試料を準備した。次いで、それぞれの試料の印刷層中の印刷されていない部分の数を裸眼で測定した。いずれの印刷されていない部分もない場合には、試料は「○」と表した。2個および3個の印刷されていない部分がある場合には、試料は、それぞれ「△」および「X」と表した。
【0077】
<インクの詰まり>
1m×1mの大きさに切断された、それぞれの試料の印刷層を、斑点、例えば円筒形斑点が発生しているか否かを調べた。印刷層面積に対する斑点発生面積の比率が10%以下である場合には、試料は「○」と表した。この比率が11%以上および20%未満である場合には、試料は「△」と表した。この比率が20%以上である場合には、試料は「X」と表した。
【0078】
<マーキング性>
1m×1mの大きさに切断されたそれぞれの試料の印刷層が、レーザー照射を受けた後で、印刷層の斑点発生面積を測定した。印刷層面積に対する斑点発生面積の比率が10%以下である場合には、試料は「○」と表した。この比率が11%以上および20%未満である場合には、試料は「△」と表した。この比率が20%以上である場合には、試料は「X」と表した。
【0079】
下記の表1に、カーボンブラックの粒子直径に応じた、印刷転写性、インクの詰まりおよびマーキング性を測定した実験の結果を示した。
【0080】
【表1】

【0081】
実験2:印刷層中のバインダー樹脂含有量に応じたセル包装材の特徴の評価
比較例
印刷層/ベースフィルム層/接着層/バリヤ層(アルミニウム箔)/溶融押出樹脂層/シーラント層の構造を有するセル包装材を準備した。
【0082】
印刷層が、3質量%(比較例3)および20質量%(比較例4)の量でポリウレタン樹脂を含む以外は、セル包装材を、例1と同じ方法で得た。
【0083】
<印刷転写性>
セル包装材料を1m×1mの大きさに切断して試料を準備した。次いで、それぞれの印刷層中の印刷されていない部分の数を裸眼で測定した。いずれの印刷されていない部分もない場合には、試料は「○」と表した。2個および3個の印刷されていない部分がある場合には、試料は、それぞれ「△」および「X」と表した。
【0084】
<加工性>
試料の印刷層が、印刷操作の開始から、セル包装作業の時点までの間に、長手方向に沿ってコーティングラインを示さない場合には、試料は「○」と表した。印刷操作の開始の2時間後の時点までに、試料が長手方向に沿って1本のコーティングラインを示した場合には、試料は「△」と表した。印刷操作の開始の30分間後の時点までに、試料が長手方向に沿って1本のコーティングラインを示した場合には、試料は「X」と表した。
【0085】
下記の表2に、印刷層中に含まれたバインダー樹脂含有量に応じた、印刷転写性および加工性を測定するための実験の結果を示した。
【0086】
【表2】

【符号の説明】
【0087】
10 ベースフィルム層
20 印刷層
30 接着層
40 バリヤ層
50 シーラント層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルム層;ならびに該ベースフィルム層の下部または上部に与えられ、かつバインダー樹脂およびカーボンブラックを含む印刷層を含むセル包装材であって、ここで該ベースフィルム層または該印刷層が、レーザー照射によって部分的に取り除かれて下にある層が露出される、セル包装材。
【請求項2】
前記ベースフィルム層および前記印刷層が、互いに異なる色を有する、請求項1記載のセル包装材。
【請求項3】
前記カーボンブラックが、1〜4μmの粒子直径を有している、請求項1記載のセル包装材。
【請求項4】
前記レーザーが、COレーザーである、請求項1記載のセル包装材。
【請求項5】
前記印刷層が、バインダー樹脂として、エポキシ、ビニル、フェノール、メラミン、ポリイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエーテルウレタン樹脂を含む、請求項1記載のセル包装材。
【請求項6】
前記バインダー樹脂が、5質量%以上かつ20質量%未満の量で含まれる、請求項1記載のセル包装材。
【請求項7】
前記印刷層が、顔料、スリップ剤、芳香放出マイクロカプセルおよび温度指示インクからなる群から選ばれた少なくとも1種を更に含む、請求項1記載のセル包装材。
【請求項8】
前記ベースフィルム層が、5〜30μmの厚さを有する、請求項1記載のセル包装材。
【請求項9】
前記ベースフィルム層が、顔料、難燃剤、スリップ剤および導電性インクからなる群から選ばれた少なくとも1種を更に含む、請求項1記載のセル包装材。
【請求項10】
前記ベースフィルム層または前記印刷層の最外層が、ノングレア処理、ホログラム処理またはグレア処理を受ける、請求項1記載のセル包装材。
【請求項11】
前記ベースフィルム層または前記印刷層の最外層上に形成され、かつウレタンアクリレートオリゴマーを含む硬質コーティング層を更に含む、請求項1記載のセル包装材。
【請求項12】
前記印刷層または前記ベースフィルム層の下部に形成されたバリヤ層;
前記バリヤ層の下部に形成された溶融押出樹脂層;ならびに
前記溶融押出樹脂層の下部に形成されたシーラント層、
を更に含む、請求項1記載のセル包装材。
【請求項13】
バインダー樹脂およびカーボンブラックを含む印刷層を、ベースフィルム層の下部もしくは上部に与えること;ならびに
前記ベースフィルム層または前記印刷層にレーザー照射を行ない、前記ベースフィルム層または前記印刷層を部分的に取り除いて、前記ベースフィルム層または前記印刷層の下にある層を露出させること、
を含む、セル包装材の製造方法。
【請求項14】
前記レーザーが、COレーザーである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記カーボンブラックが、1〜4μmの粒子直径を有する、請求項13記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−505536(P2013−505536A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529670(P2012−529670)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【国際出願番号】PCT/KR2010/006294
【国際公開番号】WO2011/034337
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(504466616)ヨウル チョン ケミカル カンパニー, リミテッド (16)
【Fターム(参考)】