説明

ソーラーセルおよびソーラーセル付き電子時計

【課題】従来のソーラーセル付き電子時計は、文字板の見返し部に沿ってソーラーセルを湾曲させて貼り付けるが、この湾曲歪みに起因して、ソーラーセルに亀裂が発生し、この結果、ソーラーセルの光起電力を得られなくなってしまうという問題があった。
【解決手段】短辺と長辺を有する帯状の樹脂基板の表面から、下部電極と光電変換層と上部電極と保護膜とを順次積層してなり、保護膜に形成されたスルーホールを介して、下部電極と上部電極のそれぞれに電気的に接続する第1、第2の取り出し電極から、光電変換層で発生する光起電力を取り出せるようにしたソーラーセルにおいて、保護膜に形成されたスルーホールを、スルーホール開口端部近傍の短手方向の幅がスルーホール中心に向かって広くなる様に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーセル、およびそのソーラーセルを搭載したソーラーセル付き電子時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年は、電子時計の低消費電力化と、ソーラーセルで発電した電力を効率よく充放電できる電子回路の改良により、小面積のソーラーセルで電子時計を駆動できるソーラーセル付き電子時計が数多く提供されている。
【0003】
従来の、ソーラーセル付き電子時計は、細長い帯状ソーラーセルを、風防ガラスと文字板間の内周壁、すなわち見返し部の外周に、文字板に対して略垂直に湾曲して配置した構造となっている(例えば、特許文献1参照のこと)。
【0004】
以下、特許文献1に記載された従来のソーラーセル付き電子時計を図面に基づいて説明する。図8は、従来のソーラーセル付き電子時計の外観正面図である。図9は、従来のソーラーセル付き電子時計の部分断面図であり、図8におけるB−B’の部分断面を示している。
【0005】
図8、図9に示すように、従来のソーラーセル付き電子時計800は、ケース88内に文字板85と指針84を載せたムーブメント87を収容し、ケース88上面を風防ガラス83で覆っている。そして、見返しリング82の外周、つまり、文字板85と風防ガラス83の間隙の文字板外周に、ソーラーセルブロック80を配置している。このソーラーセルブロック80は、見返しリング82の外周に帯状のソーラーセル91を貼り付けてある。外部からの光は、風防ガラス83と見返しリング82を透過して、ソーラーセル91に到達し、光エネルギーを電気エネルギーに変換して、電子時計を駆動する。
【0006】
上記構成のソーラーセル付き電子時計800とすれば、不透明な文字板を使用することができるようになり、自由な時計のデザイン設計が可能となる。
【0007】
次に、上記ソーラーセル付き電子時計に搭載されるソーラーセルについて、以下、図面に基づいて説明する。図10(a)は、このソーラーセル付き電子時計に搭載されるソーラーセルの平面図であり、図10(b)は、図10(a)における取出し電極付近の拡大図を、図10(c)は、図10(b)におけるC−C’の断面部分を示している。
【0008】
図10(a)〜(c)に示すように、ソーラーセル91は、透明基板91aの表面に、透明導電膜である下部電極91bと、内部にPIN接合(I型真性半導体:Intrinsic semiconductorのシリコン膜をP型、N型のシリコン膜ではさんだ接合)を含む非晶質半導体からなる光電変換層91cと、金属層からなる上部電極91dを積層形成して、最上層を、樹脂ペーストからなる保護膜91fで覆ってある。
【0009】
なお、この保護膜91fは、下部電極91b、光電変換層91c、上部電極91dを外部環境から保護する為、また、外部に電気が漏れないよう絶縁性を保つ為に十分厚く形成されている。
【0010】
また、図10(b)(c)に示すように、最上層に形成した保護膜91fに形成されたスルーホール91j、91kから、下部電極91bと上部電極91dを露出させ、そのスルーホール91j、91kへ、樹脂バインダーに導電粒子が混入された材料からなる導電
性ペーストを充填することにより形成された取り出し電極91h、91iにより、光電変換層91cで発電した光起電力を、外部に取り出せる様になっている。
【0011】
この保護膜91f、および取り出し電極91h、91iは、ともにスクリーン印刷法を用いて、所望の箇所にペースト材を塗布した後に、このペースト材を硬化させて形成している。
【0012】
【特許文献1】特開2003−270366号公報(第3−5頁、第1−5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前述に記載のソーラーセル91を、図9に記載したソーラーセル付き電子時計800に搭載した場合に、比較的大きなサイズの男性向け円形文字板のソーラーセル付き電子時計(26〜30φ)では特に問題を生じないが、文字板サイズが小さい女性向けソーラーセル付き電子時計(16〜20φ)に搭載した場合には、以下の問題が生じていた。図11は、従来のソーラーセル91を湾曲させたときに生じる問題点を示す図面である。
【0014】
図8、図9に示した、円形形状の文字板85のソーラーセル付き電子時計800では、ソーラーセル91を見返しリング82の外周に沿って湾曲させて貼り付けている。従って、文字板外形を小さくした場合は、必然的にこのソーラーセル91の曲率が大きくなり、ソーラーセル91には大きな曲げ応力が掛かり、セルが歪んだ状態となる。
【0015】
ここで、図10(b)(c)に示すように、従来のソーラーセル91は、セルを十分に保護し、かつ十分な絶縁性を保つ様に、保護膜91fを厚く形成した後に、取り出し電極91h、91iを形成している。そのため、保護膜91fの開口部であるスルーホール91j、91kの縁部で、ソーラーセル91の厚み方向において、段差が生じる。
【0016】
ここで、光電変換領域111で、保護膜91fと取り出し電極91hがオーバーラップする箇所の厚み102と、取り出し電極91hの厚み103とを比較すると、保護膜91fの分だけ、スルーホール領域111の部分の厚みが薄くなっているのが判る。この保護膜91fと取り出し電極91hとは、主剤がともに樹脂材料で形成されている。したがって、図11(a)(b)に示す様に、ソーラーセル91を湾曲させたときに、この樹脂材料層の厚い領域と薄い領域とで、光電変換層91c側に掛かる応力の度合いが異なり、これによりこの取り出し電極91h、91i形成領域内で、歪み応力が生じる。
【0017】
ここで、スルーホール領域111の短辺は、帯状のソーラーセル91の短辺と平行にして配置されているので、スルーホール領域111の短辺方向の窪み縁部の形状は、セルを湾曲させたときに掛かる応力方向(図中の点線方向)と一致することとなる。すると、先に示したように、スルーホール領域111の内側と外側とに掛かる応力の度合いが異なるため、この境界部分に応力が集中する。ここで、ソーラーセル91を構成する部材は、脆性材料にて形成されている為、セル内の層に亀裂112が発生してしまう場合がある。
【0018】
そして、このスルーホール領域111に強い歪み応力が加わったままとすると、その亀裂112が拡大して光電変換層91cも破壊し、それにより上部電極91dが下部電極91bと接触してしまう場合がある。そして、この様なセル内での上下電極ショートが起こると、ソーラーセル91で発生する光起電力を出力できなくなってしまう。なお、この様な現象は、ソーラーセル91を単セル構造とした場合に、特に顕著となる。
【0019】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、ソーラーセルを大きく湾曲させて様々な
環境下にあっても、常に安定して所望の光電変換量を得ることができるソーラーセルおよびソーラーセル付き電子時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のソーラーセルおよびソーラーセル付き電子時計は、基本的には下記記載の構成要件を採用するものである。
本発明のソーラーセルは、短辺と長辺を有する帯状の樹脂基板の表面から、下部電極と光電変換層と上部電極と保護膜とを順次積層してなり、保護膜に形成されたスルーホールを介して、下部電極と上部電極のそれぞれに電気的に接続する第1、第2の取り出し電極から、光電変換層で発生する光起電力を取り出せるようにしたセルにおいて、保護膜に形成されたスルーホールが、スルーホール開口端部近傍の短手方向の幅がスルーホール中心に向かって広くなる様に形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
この様に構成することで、本発明のソーラーセルは、ソーラーセルを大きく湾曲させてスルーホール開口端部の短手方向の段差に大きな応力が加わったとしても、スルーホール開口端部近傍の短手方向の幅がスルーホール中心に向かって広くなる様に形成する事で応力が分散し、上部電極の亀裂、光電変換層の破壊が生じることを防ぐことができる。その為、保護膜の開口部であるスルーホール近傍での、ソーラーセルの短手方向の段差による亀裂によってソーラーセルの機能が損なわれることは無い。
【0022】
また、上記スルーホールの形状は、円または楕円形状とするのが望ましい。
【0023】
本発明のソーラーセル付き電子時計は、上記したソーラーセルにおけるセルの長手方向を湾曲させて、文字板の外周部に、当該文字板に対して略垂直に配置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
以上に述べたように、本発明のソーラーセルとすることで、ソーラーセルにおいてスルーホール端部近傍の短手方向の段差部分への応力が分散する。その結果、上部電極の亀裂、光電変換層の破壊が生じることがなくなり、ソーラーセルの機能が損なわれることは無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のソーラーセル付き電子時計の最大の特徴は、大きな曲率で湾曲させて電子時計に装着できる信頼性の高いソーラーセルの構造にあるが、本発明のソーラーセル付き電子時計の基本的な構造および外観は、従来技術の説明で図8、図9に基づいて示した従来のソーラーセル付き電子時計と略同じである。以下に、本発明のソーラーセル付き電子時計の構成およびそれに搭載されるソーラーセルの構成例を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0026】
まず、本発明のソーラーセル付き電子時計の実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明のソーラーセル付き電子時計の部分断面図である。図2は、本発明のソーラーセル付き電子時計の分解斜視図である。ここで、図1の本発明のソーラーセル付き電子時計の部分断面図は、図8に示した従来のソーラーセル付き電子時計の外観正面図におけるB−B’に対応する部分断面を示している。
【0027】
図1および図2に示すように、本発明のソーラーセル付き電子時計100は、ケース18内に、文字板15と指針14を載せたムーブメント17を収容し、ケース18上面を風防ガラス13で覆っている。そして、このソーラーセルブロック10は、見返し部、つまり、文字板15と風防ガラス13の間隙の文字板外周に配置している。
【0028】
また、このソーラーセルブロック10については後に詳述するが、透光性の見返しリング12の外周に細長い帯状のソーラーセル11を貼り付けてあり、文字板15に対して略垂直に配置されている。そして、外部からの光は、風防ガラス13と見返しリング12を透過してソーラーセル11に到達し、光エネルギーを電気エネルギーに変換して、ムーブメント17に内蔵される二次電池(図示せず)にこの電気エネルギーを蓄える。そして、ここで蓄えられた電気エネルギーにより、電子時計を駆動する。
【0029】
この様に、見返し部にソーラーセル11を配置する利点は、表面が褐色のソーラーセル11が目立たず、文字板15の材質やデザインの制約がなくなり、かつ、明るい色の文字板も採用できることである。また、文字板15外周に透光性の見返しリング12を配置して、この見返しリング12の外周に細長い帯状ソーラーセル11を貼り付けることで、表面が褐色のソーラーセル11が直接見え難くなるため、さらに時計デザインの自由度が向上する。
【0030】
次に、図1に示した本発明のソーラーセル付き電子時計100におけるソーラーセルブロック10の詳細を図面に基づいて説明する。図3は、図1に示した本発明に係るソーラーセルブロック10の斜視図である。
【0031】
図3に示すように、31j、31kはソーラーセル11で発生する光起電力を上部電極、下部電極から取り出すために設けられたスルーホールであり、31h、31iはスルーホールを介して、外部に光起電力を取り出すための取り出し電極である。また、見返しリング12は、光透過性の樹脂製材料により成型されてなる。そして、ソーラーセル11は、帯状に形成された樹脂製の透明基板上に、下部電極と、非晶質シリコン層からなる光電変換層と上部電極を順次積層した単セル構造となっている。
【0032】
また、ソーラーセル11は、透明樹脂を基板とする可撓性のフレキシブルソーラーセルであって、見返しリング12の外周の曲率に倣って湾曲させて光学接着することにより、ソーラーセルブロック10を形成している。この様にして光エネルギーを、見返しリング12を透過してソーラーセル11に取り込む。
【0033】
なお、このソーラーセル11は、取り出し電極31h、31iの部分を帯状のソーラーセル11の端部で突出させて、図1に示したムーブメント17の電源供給端子に接続して固定される。
【0034】
また、このソーラーセル11は、帯状のセルの長辺方向の外形幅を、略同じとしてあることから、複数個の帯状のソーラーセル11を同時に製造するにあたって、これら複数個の帯状のソーラーセル11を同一基板上に並べて形成し、個々のソーラーセルを帯状に分割する製法に適している。このソーラーセル11の具体的な形状寸法例を挙げると、長辺L=64mm、巾W=1.85mm、厚みt=150μm程度である。
【0035】
次に、本発明のソーラーセル付き電子時計100におけるソーラーセル11の全体像を図面に基づいて説明する。図4(a)は、本発明のソーラーセルの平面図であり、図4(b)は、図4(a)に示したソーラーセル11のA−A’断面に対応している。
【0036】
図4(a)(b)に示すように、本発明のソーラーセル11は、帯状の透明基板31aの表面に、下部電極31bと、非晶質半導体からなる光電変換層31cとを有する。そして、この光電変換層31cの上層には、アルミニウム層31dとチタン層31eからなる金属層を順に積層形成した上部電極を有し、これら積層部分全体を、樹脂ペーストからなる保護膜31fで覆っている。そして、ソーラーセル11で発生する光起電力を上部電極
、下部電極から取り出すために、スルーホール31j、31kが設けられ、このスルーホール31j、31kに、樹脂バインダーに導電粒子が混入された材料からなる導電性ペーストが充填されて、ソーラーセル11の片方の端部に集約した、四角形状の取り出し電極31h、31iが形成されている。
【0037】
なお、この保護膜31fの開口部であるスルーホール31j、31kの形状は、図4(a)に示す様に、スルーホール開口端部近傍の短手方向(図中Y方向)の幅が、スルーホール中心に向かう方向(図中X方向)に向けて広くなる様に、本図では円形状としている。
【0038】
ここで、図4で示した、本発明のソーラーセル11を湾曲させたときの作用について説明する。図5は、本発明のソーラーセルの作用を説明するための図面である。
【0039】
図5に示すように、本発明のソーラーセル11の光電変換層12を形成した面を外側にしてセルを湾曲させたとき、ソーラーセル11は従来と同様に、保護膜31fと取り出し電極31hとのオーバーラップした厚い樹脂層エリアと、取り出し電極31hのみの薄い樹脂層エリアを有する構成となっている。ところが、本発明のソーラーセル11は、円形状のスルーホール31j、31kがあり、これにより円形状の段差を有する構成となるので、この円形状の段差と、セルの短手方向と水平の応力(図中の点線)との関係において、局所的な歪みを緩和させる。つまり、本発明のソーラーセル11は、スルーホール領域111の保護膜31fと、段差の方向と一致する部分が、従来の構成に比べて極端に少ないので、ソーラーセル11に掛かる歪み応力が分散される。
【0040】
この様に、本発明のソーラーセル11は、スルーホール開口端部近傍の短手方向の幅が、スルーホール中心に向かって広くなる様に形成している為、ソーラーセル11を大きく湾曲させても、スルーホール近傍の短手方向の段差における応力が分散し、金属層からなる上部電極の亀裂、および光電変換層31cの破壊を極力防ぐことができる。
【0041】
次に、本発明のソーラーセル11の製造プロセスを詳述する。図6、図7は、本発明のソーラーセル11の製造工程を示す図面である。
【0042】
まず、図6(a)に示すように、樹脂製の透明基板31a上に透明な下部電極31bを形成する。透明基板31aはこの基板上に光電変換層を含む各層を形成する土台となる基板で、後工程で行う成膜工程やエッチング工程に耐えるように、耐熱性、耐化学薬品、機械的強度に優れた、透光性のPEN(ポリエチレンナフタレート)を使用する。なお、透明基板31a上に形成する下部電極31bは、透明性と導電性に優れたITO(インジュウム錫酸化物)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO(酸化錫)等で形成するが、ここでは、ITO膜をスパッタリング法で形成している。
【0043】
次に、図6(b)に示す様に、透明な下部電極31b上に、PIN接合で構成された非晶質シリコン層からなる光電変換層31cと、上部電極層を順次形成する。この光電変換層31cは、下部基板31b表面に直接プラズマCVD法で形成する。また、上部電極層は、光電変換層側から、アルミニウム層31dとチタン層31eをスパッタリング法で順次積層して形成する。
【0044】
次に、図6(c)に示す様に、図6(b)で得た構造体の表面にレジスト膜をスピンナーで塗布し、写真露光と現像処理によりパターン化されたレジスト膜33を形成する。次いで、エッチングによりこのレジスト膜33で覆われていない部位の光電変換層31cとアルミニウム層31dとチタン層31eを共にエッチング除去し、最後にレジスト膜33を除去して、図6(d)に示す構造体を得る。なお、図6(d)に示す構造体は、図の右
側に示す部位のチタン層31e、アルミニウム層31d、および光電変換層31cが除去されて、下部電極31bが表面に露出した形態となっている。
【0045】
次に、図6(e)に示す様に、図6(c)で示した工程と同様に、レジスト膜をスピンナーで塗布し、写真露光と現像処理によりパターン化されたレジスト膜34を形成する。次いで、エッチングによりこのレジスト膜34から露出する透明電極31bをエッチング除去し、最後にレジスト膜34を除去して、図6(f)に示す構造体を得る。本図面に示す構造体は、下部電極31bにおける図の右端部が除去され、透明基板31aが表面に露出した形態を示している。
【0046】
なお、上述の上部電極を構成するアルミニウム層31dは、透明基板31aを通して光電変換層31cに入射した光の内、光電変換層31cで光電変換されずに通過した光を、高反射率のアルミニウム層31dにより再度光電変換層31cに反射させるために必要な金属層である。ここで、レジスト膜33、あるいはレジスト膜34を除去するエッチャント液が強アルカリであるため、この金属層をアルミニウム層31dでのみで構成すると、このアルミニウム層31dが浸食されてしまう。そこで、本発明においては、アルミニウム層31dを保護するために、チタン層31eをアルミニウム層31dの表面に形成している。
【0047】
次に、図7(g)に示す様に、取り出し電極形成領域31h’および31i’を除く全面に、エポキシ系樹脂からなる保護膜31fをスクリーン印刷する。
【0048】
次に、図7(h)に示す様に、前工程である図7(g)で保護膜31fを形成しなかった取り出し電極形成領域31h’および31i’に、フェノール系樹脂にカーボンやグラファイトを含有する導電ペーストを印刷して、取り出し電極31hおよび31iを形成し、目的のソーラーセル11が完成する。
【0049】
この様にして形成した本発明のソーラーセル11は、保護膜31fに形成されたスルーホールが、スルーホール開口端部近傍の短手方向の幅が、スルーホール中心に向かって広くなる形状に形成されている。この様に構成することで、本発明のソーラーセル付き電子時計は、ソーラーセル11を大きく湾曲させてスルーホール開口端部の短手方向の段差に大きな応力が加わったとしても、スルーホール開口端部近傍の段差における応力が分散する。その結果、ソーラーセル11を構成する積層膜の亀裂を防ぐことができるようになり、ソーラーセル11の機能が保たれて、信頼性の高いソーラーセル付き電子時計100となる。
【0050】
なお、以上の説明では、保護膜31fのスルーホールの形状を、円形状とした場合について説明したが、スルーホール開口端部近傍の短手方向の幅が、スルーホール中心に向かって広くなる形状に形成であれば、これを楕円形状としても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0051】
さらに、保護膜31fのスルーホールの形状を、複数の円を足し合わせた変形円、もしくは変形楕円型とした変形楕円形状とした場合であっても、本発明と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のソーラーセル付き電子時計の構成例を示す部分断面図である。
【図2】本発明のソーラーセル付き電子時計の構成例を示す分解斜視図である。
【図3】本発明に係るソーラーセルブロックの斜視図である。
【図4】本発明のソーラーセルの平面図及び断面図である。
【図5】本発明のソーラーセルの斜視図である。
【図6】本発明のソーラーセルの製造工程を示す図である。
【図7】図6の続きの製造工程を示す図である。
【図8】従来のソーラーセル付き電子時計の外観正面図である。
【図9】従来のソーラーセル付き電子時計の部分断面図である。
【図10】従来のソーラーセルの構成を示す平面図及び断面図である。
【図11】従来のソーラーセル付き電子時計で発生する問題点を説明するための図面である。
【符号の説明】
【0053】
100 ソーラーセル付き電子時計
10 ソーラーセルブロック
11 ソーラーセル
12 見返しリング
13 風防ガラス
14 指針
15 文字板
17 ムーブメント
18 ケース
31a 透明基板
31b 下部電極
31c 光電変換層
31d アルミニウム層
31e チタン層
31f 保護膜
31h、31i 取り出し電極
31j、31k スルーホール
33、34 レジスト膜
31h’、31i’ 取り出し電極形成領域
111 スルーホール領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短辺と長辺を有する帯状の樹脂基板の表面から、下部電極と光電変換層と上部電極と保護膜とを順次積層してなり、前記保護膜に形成されたスルーホールを介して、前記下部電極と前記上部電極のそれぞれに電気的に接続する第1、第2の取り出し電極から、前記光電変換層で発生する光起電力を取り出せるようにしたソーラーセルにおいて、
前記保護膜に形成された前記スルーホールは、スルーホール開口端部近傍の短手方向の幅がスルーホール中心に向かって広くなる様に形成されている
ことを特徴とするソーラーセル。
【請求項2】
前記スルーホールの形状は、円または楕円形状である
ことを特徴とする請求項1に記載のソーラーセル。
【請求項3】
請求項1または2に記載のソーラーセルにおける前記セルの長手方向を湾曲させて、文字板の外周部に、当該文字板に対して略垂直に配置した
ことを特徴とするソーラーセル付き電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−224539(P2009−224539A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67153(P2008−67153)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】