説明

ダイエット飲食品

【課題】本発明は酵母由来マンナンの有する生体調節機能を利用したダイエット飲食品を提供する。
【解決手段】サッカロミセス酵母の菌体あるいは培養液より得られるマンナンを含有することを特徴とするダイエット飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッカロミセス酵母の菌体あるいは培養液より得られるマンナンを含有するダイエット飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食事成分の高脂肪・高カロリー化および不規則な食生活により、国民の肥満傾向が徐々に進んでいる。内臓脂肪型肥満、耐糖能異常、高脂血症、高血圧は「死の四重奏」といわれ、動脈硬化や心血管疾患、脳卒中などのリスクを高め、生命をおびやかすとされている。これら異常の発現には、遺伝因子とともに食生活をはじめとする環境因子が大きく関与する。これら異常の予防・改善には時として持続困難な自己犠牲を強いられることがあることから、簡便な肥満予防・改善手段が望まれる。
【0003】
パン酵母やビール酵母は「サッカロミセス属」に含まれ、古くから食品の製造や酒類の醸造に用いられてきた。サッカロミセス酵母は、食品・酒類の発酵・醸造に使用されて後も有効活用されている。それら酵母の乾燥末は医薬品・食品原料、賦型剤、飼料、細胞壁は食品原料、賦型剤、飼料、酵母抽出エキスは調味料、ビタミン・ミネラル・アミノ酸、核酸成分の原料、培地、飼料等に広く用いられている。また、食事成分の高脂肪・高カロリー化および不規則な食生活により食物繊維の摂取が減少していることから、食物繊維成分の摂取が推奨されている。酵母はマンノースやグルコースから構成される難消化性多糖類を含有しており、特に、細胞壁中に含有量が高い。酵母の細胞壁は内層をグルカンを主とする不溶性多糖類が、外層をマンナンを主とする多糖類が占めており、水や溶媒抽出等により酵母菌体からマンナンを抽出することが可能である(特許文献1、特許文献2)。酵母マンナンは水溶性であり、不溶性の酵母菌体、細胞壁、細胞壁中のグルカン画分に比較して食品等の製造に利用しやすい特長を有する。

【特許文献1】特開平2−286057号公報
【特許文献2】特開平4−58893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今後、国民の健康を脅かすであろう肥満を予防・改善するにあたり、食品または食品に準ずるものから有効成分を見出すことは有意義なことである。本発明は酵母由来マンナンの有する生体調節機能を利用したダイエット飲食品を通して簡便な肥満予防・改善手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、サッカロミセス酵母の菌体あるいは培養液より得られるマンナンの体重減少効果をヒト試験により確認し本発明に至った。すなわち本発明は、下記を要旨とするものである。

(1)サッカロミセス酵母の菌体あるいは培養液より得られるマンナンを含有することを特徴とするダイエット飲食品。
(2)さらに糖代謝改善素材、脂質改善素材および食物繊維素材からなる群より選ばれる1種または2種以上を配合したことを特徴とする(1)に記載のダイエット飲食品。
(3)さらに栄養素強化成分として、ビタミン、ミネラル、蛋白質およびアミノ酸からなる群より選ばれる1種または2種以上を配合したことを特徴とする(1)または(2)に記載のダイエット飲食品。
(4)さらに呈味改善剤または風味改善剤を配合したことを特徴とする(1)ないし(3)のいずれか1項に記載のダイエット飲食品。
(5)呈味改善剤または風味改善剤が、果物、野菜の乾燥末もしくは抽出末であることを特徴とする(4)に記載のダイエット飲食品。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、肥満の予防・改善に有用なサッカロミセス酵母のマンナンを配合したダイエット飲食品を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
サッカロミセス酵母のマンナンはサッカロミセス酵母菌体からの抽出物でも培養上清から回収したものでも良い。酵母菌体から抽出する場合は、サッカロミセス酵母を原料として使用し、生菌か死菌か、水分を含んでいるか乾燥されているかは問わない。また酵母から調製した酵母エキスや細胞壁からマンナンを調製しても良い。この場合、酵母エキスや細胞壁には市販品を使用してもかまわない。サッカロミセス酵母の代表的な酵母としてはパン酵母やビール酵母があげられるが、使用される酵母はこれらに限定されない。
【0008】
サッカロミセス酵母菌体からマンナンを抽出する際には、水または有機溶媒等が使用され、これらを混合したものを用いてもかまわない。好ましくは酸性あるいはアルカリ性の水で抽出する方法である。抽出は、室温抽出、加熱抽出さらには加圧抽出等により行なわれる。一般的には室温〜121℃にて実施される。抽出処理後、遠心分離等により固形分と液体を分離して液体部分のみを得る。この溶液から塩類を始めとする不要な低分子を除くために、膜処理により低分子画分を除いたり、エタノール等を添加して可溶性糖質を沈殿させて回収しても良い。得られたマンナン画分液は、必要に応じて減圧濃縮等で濃縮するか、さらに、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等により乾燥させ粉末化することもできる。粉末化に際して適当な賦形剤を添加しても差し支えない。
【0009】
得られたマンナン抽出物自体をダイエット飲食品として錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末飲料、液体飲料とすることができる。また、マンナン抽出物を調理工程時に加え食事に配合することもできる。更に、マンナン抽出物と他の食品素材や糖代謝改善剤や脂質代謝改善剤や食物繊維、ビタミン、ミネラル、アミノ酸等の栄養成分を混合した飲食品とすることができる。更に、飲食品の呈味や風味を改善する成分を配合することができる。この場合、混合する食品素材は固形物(粉状、薄片状、塊状等)、半固形物(ゼリー状、水飴状)抽出物を、もしくは液状物等のいずれであっても良い。飲食品1gあたり、0.1%から100%の酵母マンナン抽出物を含む。また、摂取量は1回あたり1〜1000mg(乾燥重量)/kg体重の量、好ましくは1〜300mg(乾燥重量)/kg体重の量を1日に1ないし数回摂取する。
【0010】
更に、酵母由来マンナンの効果を高める目的で、酵母由来マンナンに、糖代謝改善素材、脂質改善素材および食物繊維素材からなる群より選ばれる1種または2種以上を配合してもよい。
【0011】
本発明のダイエット飲食品に配合される代謝改善素材は、糖代謝改善作用を有する食品素材または脂質代謝改善作用を有する食品素材また食物繊維素材であり、各々単独もしくは複数の組み合わせで配合される。
【0012】
糖代謝改善素材としては、α−リポ酸、バナバ抽出物、サラシア抽出物、桑葉抽出物、ギムネマシルベスタ、コエンザイムQ10等があげられる。脂質代謝改善素材としては、L-カルニチンもしくはその塩類、りんごポリフェノール、ブドウ種子抽出物等のプロアントシアニジン類、ホップ抽出物、カテキン類、分岐鎖アミノ酸、コエンザイムQ10、大豆ペプチド、紅麹抽出物、サトウキビ抽出物、カフェイン等があげられる。食物繊維素材としては、酵母、酵母細胞壁、β―グルカン類、難消化性デキストリン、オリゴ糖、ポリデキストロース、寒天抽出物、コンニャク抽出物、アルギン酸ナトリウム、グアーガム等の多糖類等があげられる。
また、ダイエット時に不足しがちな栄養素を補給する目的で、栄養素強化素材を配合してもよい。
【0013】
本発明のダイエット飲食品に配合される栄養素強化素材として、ビタミン、ミネラル、たんぱく質またはアミノ酸があげられ、各々単独もしくは複数の組み合わせで配合される。これら食品素材は、ビタミン、ミネラル、たんぱく質またはアミノ酸そのものでも、これらの栄養素を含む天然素材で差し支えない。
【0014】
本発明のダイエット飲食品に飲食品の呈味または風味を改善するために配合される成分として、りんご、イチゴ、パイナップル等の果実の乾燥粉末、凍結乾燥粉末、シクロデキストリン、天然香料、香料等があげられる。また、果実の凍結乾燥粉末を得る際に賦形剤を添加することも可能である。
【実施例1】
【0015】
(サッカロミセス酵母からのマンナン調製)
約10%のビール酵母細胞壁を含む溶液に水酸化ナトリウムを添加しpH9.0に調整した後、97℃の4時間抽出した。冷却後、遠心分離を行い上清を回収し、塩酸を添加してpH6.0に調整後、膜処理を行い低分子画分(分子量1万以下)を除去した。低分子画分を除去したマンナン抽出液を濃縮後、噴霧乾燥した。得られた酵母マンナン粉末を硫酸加水分解・高速液体クロマトグラフ法により分析した結果、マンナン含量(マンノース量より換算)は65%であった。
【実施例2】
【0016】
実施例1で調製した酵母マンナン抽出物3gを分包して、粉末食品とした。本粉末食品は、水またはお湯でそのままのむか、飲食品に混合して摂取するか、調理時に混合して調理品として摂取する。
【実施例3】
【0017】
酵母マンナン抽出物 3g
乾燥酵母 0.5g
りんご凍結粉末 0.49g
(りんごエキス48.8%、乳糖35.2%、デキストリン9.4%、砂糖6.6%)
賦形剤 0.012g
上記配合にて混合後、造粒し分包した。
【実施例4】
【0018】
酵母マンナン抽出物 3g
乾燥酵母 0.5g
賦形剤 0.012g
上記配合にて混合後、造粒し分包した。
【実施例5】
【0019】
実施例3と4で風味改善効果を検討した。
【0020】
ヨーグルト50gに1包分を混ぜ、酵母味が軽減するか11名で官能試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
実施例3の方が酵母の味が軽減されており、風味改善効果が得られた。
【実施例6】
【0023】
実施例3にて製造した分包品2包をヨーグルトに混合し、軽度肥満の女性7名に夕食代替として2週間摂取した。体重、BMI、体脂肪率、筋肉量をインピーダンス法にて測定した。更に、ウエスト周、ヒップ周、空腹時の血糖及び血清GLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)濃度を測定した。本試験結果を表2に示す。体重、BMI、体脂肪率、体脂肪量、ウエスト周は、2週間の摂取により有意に低下した。ヒップ周は、低下傾向を示した。更に、血糖値は2週間の摂取により有意に低下した。また、血清GLP−1濃度は2週間の摂取により増加傾向を示した。
【0024】
【表2】

【0025】
以上より、酵母マンナン配合食品には1.体重減少作用、2.体脂肪減少作用、3.血糖低下作用があることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0026】
酵母由来マンナンを含有する飲食品は、酵母由来マンナンの有する生体調節機能により肥満予防・改善効果が得られ、ダイエット飲食品として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サッカロミセス酵母の菌体あるいは培養液より得られるマンナンを含有することを特徴とするダイエット飲食品。
【請求項2】
さらに糖代謝改善素材、脂質改善素材および食物繊維素材からなる群より選ばれる1種または2種以上を配合したことを特徴とする請求項1に記載のダイエット飲食品。
【請求項3】
さらに栄養素強化成分として、ビタミン、ミネラル、蛋白質およびアミノ酸からなる群より選ばれる1種または2種以上を配合したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のダイエット飲食品。
【請求項4】
さらに呈味改善剤または風味改善剤を配合したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のダイエット飲食品。
【請求項5】
呈味改善剤または風味改善剤が、果物、野菜の乾燥末もしくは抽出末であることを特徴とする請求項4に記載のダイエット飲食品。

【公開番号】特開2007−195444(P2007−195444A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17023(P2006−17023)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(397009004)アサヒフードアンドヘルスケア株式会社 (14)
【Fターム(参考)】