説明

テトラヒメナから得られるΔ−6−デサチュラーゼをコードする核酸、その産生と使用

【課題】テトラヒメナから得られ、商業的に価値ある多不飽和脂肪酸(いわゆるPUFA:多不飽和脂肪酸)の生合成に関与する繊毛虫特異的Δ−6−デサチュラーゼをコードする、核酸(群)の提供。
【解決手段】Δ−6−不飽和脂肪酸、特に、γ−リノレン酸(GLA)の産生増加を目的とした、繊毛虫、好ましくはテトラヒメナ、特にテトラヒメナ・サーモフィラでの過度に発現するための核酸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラヒメナΔ−6−デサチュラーゼ、それをコードする核酸およびその調製および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、真核生物において商業的に価値のある多不飽和脂肪酸(これは、PUFA、すなわちポリ不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acids)と称する)の生合成に関与する、繊毛虫特異のΔ−6−デサチュラーゼをコードするテトラヒメナからの核酸に関する。これに関して、本発明による核酸、および、それから得ることのできるポリペプチドは、他の既知の天然デサチュラーゼと驚くべき程ほとんど配列同一性を示さない。本発明はさらに、脂肪酸構成(スペクトル)を特異的に修飾する目的で、特にPUFAの形成を増加する目的で、真核生物、特に繊毛虫、好ましくはテトラヒメナ、特に好ましくはテトラヒメナ・サーモフィラにおいて過度に発現するための核酸の使用に関する。
【0003】
本発明による核酸は、繊毛虫から、好ましくはテトラヒメナから、特に好ましくはテトラヒメナ・サーモフィラ、非常に高含量のGLAを有するGLA産生生物、から得ることができる。
【0004】
図1は、真核生物における、PUFA生合成の一般的なスキーム、および関与する酵素を示す(Gill&Valivety、Trends Biotechnol.1997、15:401〜409(非特許文献1)に従って作成)。
ステアリン酸(18:0)からオレイン酸(18:1Δ9)への変換は、Δ−9−デサチュラーゼにより触媒される。オレイン酸は、Δ−12−デサチュラーゼによりリノール酸(18:2Δ9、12;LAと略称)に変換され、これは、次いで、Δ−6−デサチュラーゼにより、γ−リノレン酸(18:3、Δ6、9、12;GLAと略称)に、または、Δ−15−デサチュラーゼによりα−リノレン酸(18:3Δ9、12、15;ALAと略称)に変換される。
【0005】
脂肪酸は、エロンガーゼの作用により伸長され、その結果、例えば、ジホモ−γ−リノレン酸(20:3Δ8、11、15;DGLAと略称)が、γ−リノレン酸から形成され、ジホモ−γ−リノレン酸は、次いで、Δ−5−デサチュラーゼによりアラキドン酸(20:4Δ5、8、11、15;ARAと略称)に変換される。これは、プロスタグランジン、プロスタサイクリン、トロンボキサンおよびロイコトリエンなどの生理活性エイコサノイドの直接的な前駆体である。
【0006】
LAからGLAへのΔ−6−デサチュラーゼによる変換は、GLAから得られるPUFA(以下ではΔ−6−不飽和脂肪酸と称する)形成の律速段階であることが判明した(Huang YS&Mills DE(1996)γ−リノレン酸、代謝および栄養および医薬におけるその役割。イリノイ州シャンペイン所在AOCS Press、1996(非特許文献2))。
【0007】
Δ−6−デサチュラーゼ活性を有する酵素は、テトラヒメナ・セトサおよびT.ピリフォルミスに存在することが知られているが(Peng,Y.M.およびElson,C.E.(1971)J.Nutr.101、1177〜1184(非特許文献3))、繊毛虫から得られ、このような活性を有する均一タンパク質はこれまで入手できなかった(例えば、Koll,MおよびErwin,J.A.(1990)J.Protozool.37(3)229〜237(非特許文献4))。
【0008】
脊椎動物は、脂肪酸に9位より後に二重結合を挿入できないので、LAおよびALAなどの不飽和脂肪酸は、脊椎動物が合成できない必須栄養分であり、食事では、基本的に植物源から得られる(図1参照)。
【0009】
哺乳類では、Δ−6−デサチュラーゼによってLAをGLAに変換できる。このGLAはARAの前駆体であり、この前駆体は大半のプロスタグランジンの必須前駆体である。EPAの前駆体のステアリドン酸(18:4Δ6、9、12、15)のALAからの形成は、同様に、Δ−6−デサチュラーゼにより触媒される。従って、Δ−6−デサチュラーゼは、エイコサノイド生合成の最初の必須段階である(図1参照)。
【0010】
哺乳類では、Δ−6−デサチュラーゼの活性は、アルコール消費、ストレス、栄養不足および加齢プロセスなどの因子により損なわれ得ることが分かった(Huang&Mills、1996;Horrobin(1990)Rev.Contemp.Pharmacother.1:1〜45;Bolton−Smith C et al.(1997)Eur.J.Clin.Nutr.51:619〜624;Leventhal LJ et al.(1993)Ann.Intern.Med.119:867〜873(非特許文献5〜7))。そのため、GLAの供給が不十分となり、従って、すでに前記したように、LAからのGLAの形成はPUFA合成の律速段階であるので、最終的にGLAから得られる分子、例えば、ARAおよびそれから形成される生理的に重要なエイコサノイドが欠乏する(Brenner RR(1976)Adv.Exp.Med.Biol.83:85〜101;Nakahara T et al.(1993)J.Jpn.Oil Chem.Soc.42:242〜253;Chapkin,RS(1998)必須脂肪酸の再評価、食物中の脂肪酸およびその健康との関連性、第2版(Chow CK編)NY州ニューヨーク所在Marcel Dekker(非特許文献8〜10))。
【0011】
GLAの供給は、Δ−6−デサチュラーゼ脂肪酸の細胞内レベルの減少を補充し、かつ、これらの脂肪酸の要求の増加にも対応する(Horrobin(1990))。それ故、食事を介してGLAを取込むことは、GLAから得られる分子の生合成に有利である(Fan,YY&Chapkin,RS(1998)J.Nutr.128:1411〜1414(非特許文献11))。
【0012】
GLAがヒトの生体に多くの異なるプラスの影響を奏効するという知見は、これまで、多くの科学的研究により支持されている。従って、臨床試験により、例えばアトピー性湿疹(Shimasaki,H:PUFA含量およびアトピー性湿疹に罹患した小児の血漿中のn−6、n−3代謝物のプロフィルに対するγ−リノレン酸の豊富な油の食事による摂取の効果、J.Clin.Biochem.Nutr(1995)19(3)、183〜192)、慢性関節リウマチ(Zurier RB、Rossetti RG、Jacobson EW、DeMarco DM、Liu NY、Temming JE、White BM、Laposata M(1996)慢性関節リウマチのγ−リノレン酸による処置:無作為プラセボ対照試験 Arthritis Rheum.39(11)1808〜1817)、アテローム性動脈硬化症(Leng GC、Lee AJ、Fowkes FGR、Jepson RG、Lowe GDO、Skinner ER、Mowat BF、末梢動脈疾患におけるγ−リノレン酸およびエイコサペンタエン酸の無作為対照試験、Clinical Nutrition(1998)17/6 265〜271)、糖尿病性神経障害(Pfeifer MA、Schumer MP(1995)糖尿病性神経障害の臨床試験:過去、現在および未来、Diabetis 44(12)1355〜61)、偏頭痛(Wagner W、Nootbaar−Wagner U(1997)γ−リノレン酸およびα−リノレン酸による偏頭痛の予防的処置、Cephalalgia 17/2 127〜130)、精神分裂病(Vaddadi,KS(1982)精神分裂病の処置におけるプロスタグランジンE1前駆体の使用に関する観察、Biol.Aspects Schizophr.Addict.183〜91.刊行者:英国チェスター所在Wiley)および癌(Kairemo KJA、Jekunen AP、Korppi−Tommola ET、Pyrhonen SO(1997)肝臓灌流および膵臓癌の組織に対するγ−リノレン酸リチウムの効果、Anticancer Research 17/5 B 3729〜3736(非特許文献12〜18))に対するGLAのプラスの効果が実証された。これらの研究は、病気像において統計的にも臨床的にも有意な改善を達成した。これに関連して、GLAの効果は、特に、生合成においてGLAが前駆分子となっているエイコサノイド(プロスタグランジン、プロスタサイクリン、トロンボキサンおよびロイコトリエン)を形成することによる(図1)。
【0013】
これらの正の特性のために、医薬産業、化粧品産業、動物食餌産業および食品産業において、GLAは広く応用される(Horrobin(1990)、Horrobin(1992)Prog.Lipid.Res.31:163〜194;Chapkin(1998)、Fan&Chapkin(1998)(非特許文献19))。
【0014】
ヒトおよび動物に見出される大半のPUFAは、食事から直接得られるか、または、食事をとおして供給される必須脂肪酸のデサチュラーゼおよびエロンガーゼによる変換により形成される。この理由から、これらのPUFAが天然に存在する生物から得られるPUFA生合成遺伝子は、商業的関心が高い。PUFAの商業的製造は、生物または細胞で、特異的かつ機能的に系の中でこれらの遺伝子を発現することにより達成できる。この理由から、PUFA生合成に関与するデサチュラーゼおよびエロンガーゼをコードする遺伝子が求められ、そして、PUFAおよびPUFA油を商業的に確実かつ経済的方法により得る上でこれらの遺伝子の使用が必要となる。
【0015】
どの商業的に使用される油料種子もGLAを産生しない。これに対し、GLAは、一般のオオマツヨイグサ(Oenothera biennis、約10%のGLA)、ルリヂサ(Borago officinalis、約23%)およびクロクサスグリの実(Ribes nigrum、約18%)などの種々の植物の種子から得られた油にしか存在しない。
【0016】
これに加えて、真菌MucorおよびMortierella(約25%まで)、藍藻Spirulina(約12〜18%)、およびその他の種々の微生物が、GLA源であることが知られている。テトラヒメナ(47%まで;Hill,DL(1972)テトラヒメナの生化学および生理、第3章、46〜73、Academic Press、ニューヨーク、ロンドン;Erwin,J&Bloch,K(1963)J.Biol.Chem.238:1618〜1624(非特許文献20〜21))などの繊毛虫は、特に豊富なGLA源であると報告されている。Phillips&Huangは、GLAの天然源に関する良好な総説を提供している(Phillips JC、Huang YS(1996)γ−リノレン酸の天然源および生合成:総説、1〜13:γ−リノレン酸、代謝および栄養および医薬におけるその役割、Huang YS、Mills DE(編)イリノイ州シャンペイン所在AOCS Press、1996(非特許文献22))。
【0017】
しかし、これらの天然源からのGLAの商業的単離は、いくつかの欠点を伴う。これらの生物から得られる油の品質および量の両方が変化し、場合によっては、油の組成は非常に不均一である。よって、GLAを濃縮するために面倒で費用のかかる精製段階の使用が必要となる。これに加えて、GLA含有植物の栽培は、あまり経済的なプロセスではない(Hansen CEら(1991)J.Sci.Food Agric.54:309〜312(非特許文献23))。
【0018】
GLA含有油を得る空間的/時間的収量は、高等植物よりも、GLA産生微生物の方が顕著に良好であることが判明した。この理由から、微生物を使用したGLAの発酵による生産は、他のGLA源に向けての見込みある別法を提供する。多くの微生物の脂肪酸構成(スペクトル)は、しばしば、高等生物のそれよりもかなり単純である。これは、精製において大きな利点を提供する特徴である。また、発酵による生産は、気候、栄養分の供給等の外的因子に依存しない。さらに、このように調製したPUFAは、例えば、環境汚染の源となり得る汚染物質をあまり含まない。さらなる利点は、天然源から得られたGLAとは対照的に、発酵プロセスにより単離したGLAは、入手の点で変動を受けない。
【0019】
発酵によりGLAを単離するシステムを開発する試みがすでになされている(Ratledge C(1993)Trends Biochem.11:278〜284;Ratledge C(1989)Biochem.Soc.Trans.17:1139〜1141;Gosselin Y et al.(1989)Biotechnol.Lett.11:423〜426(非特許文献24〜26);(WO86/03518(特許文献1))。しかし、発酵によりGLAを製造するのに微生物を商業的に使用する場合、PUFA産生微生物の発酵は、比較的面倒で費用がかかり、結果としてあまり経済的ではないために、GLAの含量を高くすることが望ましい(上記のRatledge1993参照)。テトラヒメナ・サーモフィラは、GLAが比較的高い含量であるため(上記参照)、発酵によりGLAを得るのに特に適している。テトラヒメナは、発酵槽で容易に培養でき、高い細胞密度が達成できる(Kiy,T.&Tiedtke(1992)Appl.Microbiol.Biotechnol.37、576〜579;Kiy,T.&Tiedtke,A(1992)Appl.Microbiol.Biotechnol.38、141〜146(非特許文献27〜28))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第86/03518号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Gill&Valivety、Trends Biotechnol.1997、15:401〜409
【非特許文献2】Huang YS&Mills DE(1996)γ−リノレン酸、代謝および栄養および医薬におけるその役割。イリノイ州シャンペイン所在AOCS Press、1996
【非特許文献3】Peng,Y.M.およびElson,C.E.(1971)J.Nutr.101、1177〜1184
【非特許文献4】Koll,MおよびErwin,J.A.(1990)J.Protozool.37(3)229〜237
【非特許文献5】Huang&Mills、1996;Horrobin(1990)Rev.Contemp.Pharmacother.1:1〜45
【非特許文献6】Bolton−Smith C et al.(1997)Eur.J.Clin.Nutr.51:619〜624
【非特許文献7】Leventhal LJ et al.(1993)Ann.Intern.Med.119:867〜873
【非特許文献8】Brenner RR(1976)Adv.Exp.Med.Biol.83:85〜101
【非特許文献9】Nakahara T et al.(1993)J.Jpn.Oil Chem.Soc.42:242〜253
【非特許文献10】Chapkin,RS(1998)必須脂肪酸の再評価、食物中の脂肪酸およびその健康との関連性、第2版(Chow CK編)NY州ニューヨーク所在Marcel Dekker
【非特許文献11】Fan,YY&Chapkin,RS(1998)J.Nutr.128:1411〜1414
【非特許文献12】Shimasaki,H:PUFA含量およびアトピー性湿疹に罹患した小児の血漿中のn−6、n−3代謝物のプロフィルに対するγ−リノレン酸の豊富な油の食事による摂取の効果、J.Clin.Biochem.Nutr(1995)19(3)、183〜192
【非特許文献13】Zurier RB、Rossetti RG、Jacobson EW、DeMarco DM、Liu NY、Temming JE、White BM、Laposata M(1996)慢性関節リウマチのγ−リノレン酸による処置:無作為プラセボ対照試験 Arthritis Rheum.39(11)1808〜1817
【非特許文献14】Leng GC、Lee AJ、Fowkes FGR、Jepson RG、Lowe GDO、Skinner ER、Mowat BF、末梢動脈疾患におけるγ−リノレン酸およびエイコサペンタエン酸の無作為対照試験、Clinical Nutrition(1998)17/6 265〜271
【非特許文献15】Pfeifer MA、Schumer MP(1995)糖尿病性神経障害の臨床試験:過去、現在および未来、Diabetis 44(12)1355〜61
【非特許文献16】Wagner W、Nootbaar−Wagner U(1997)γ−リノレン酸およびα−リノレン酸による偏頭痛の予防的処置、Cephalalgia 17/2 127〜130
【非特許文献17】Vaddadi,KS(1982)精神分裂病の処置におけるプロスタグランジンE1前駆体の使用に関する観察、Biol.Aspects Schizophr.Addict.183〜91.刊行者:英国チェスター所在Wiley
【非特許文献18】Kairemo KJA、Jekunen AP、Korppi−Tommola ET、Pyrhonen SO(1997)肝臓灌流および膵臓癌の組織に対するγ−リノレン酸リチウムの効果、Anticancer Research 17/5 B 3729〜3736
【0022】
【非特許文献19】Horrobin(1990)、Horrobin(1992)Prog.Lipid.Res.31:163〜194;Chapkin(1998)、Fan&Chapkin(1998)
【非特許文献20】Hill,DL(1972)テトラヒメナの生化学および生理、第3章、46〜73、Academic Press、ニューヨーク、ロンドン
【非特許文献21】Erwin,J&Bloch,K(1963)J.Biol.Chem.238:1618〜1624
【非特許文献22】Phillips JC、Huang YS(1996)γ−リノレン酸の天然源および生合成:総説、1〜13:γ−リノレン酸、代謝および栄養および医薬におけるその役割、Huang YS、Mills DE(編)イリノイ州シャンペイン所在AOCS Press、1996
【非特許文献23】Hansen CEら(1991)J.Sci.Food Agric.54:309〜312
【非特許文献24】Ratledge C(1993)Trends Biochem.11:278〜284
【非特許文献25】Ratledge C(1989)Biochem.Soc.Trans.17:1139〜1141
【非特許文献26】Gosselin Y et al.(1989)Biotechnol.Lett.11:423〜426
【非特許文献27】Kiy,T.&Tiedtke(1992)Appl.Microbiol.Biotechnol.37、576〜579
【非特許文献28】Kiy,T.&Tiedtke,A(1992)Appl.Microbiol.Biotechnol.38、141〜146
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
それ故、本発明の目的は、Δ−6−デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし、GLAおよび/またはΔ−6−不飽和脂肪酸の増大のために、宿主生物、好ましくはテトラヒメナに機能的に発現および過度に発現されるテトラヒメナからの核酸を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、それ故、配列番号1に示し、そして配列番号2に示したアミノ酸配列を有するΔ−6−デサチュラーゼをコードする核酸、またはその機能的変異体、および少なくとも8個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも15または20個のヌクレオチドを含み、特に少なくとも100個のヌクレオチド、特に少なくとも300個のヌクレオチドを含む、その一部に関する(以下で「本発明による核酸(群)」と称する)。本発明はさらに、同様に、配列番号3に示し、ゲノム配列を含み、Δ−6−デサチュラーゼをコードする配列に加えて、イントロン、プロモーターおよびフランキング配列などの非コード核酸配列も含む核酸に関する。
【0025】
配列番号1に示した完全核酸は、352個のアミノ酸を含み、41.8kDaの理論的分子量を有するタンパク質をコードする。本発明による配列解析により、この核酸は、テトラヒメナΔ−6−デサチュラーゼをコードする核酸であることが確認される。
【0026】
相同性比較を使用して、核酸配列(配列番号1)から得られ、配列番号2に示した、タンパク質配列を、Δ−6−デサチュラーゼと同定した。BLASTP機能(Altschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389〜3402)を、相同性比較に使用した。デサチュラーゼ、特にΔ−6−デサチュラーゼ(E.C.1.14.99.25;リノレオイル−CoAデサチュラーゼ)を、データベースから相同タンパク質であると同定した(図2及び図3参照)。
【0027】
これに関連して、既知のΔ−6−デサチュラーゼは、本発明によるポリペプチド配列と最大25%の同一性を示す(図4〜8参照)。
本発明によるポリペプチド配列を用いた種々の既知のΔ−6−デサチュラーゼのマルチプルアラインメントを図9に示す。
【0028】
相同性は、特に、ヒスチジンボックスなどの保存ドメインに見出される(Los&Murata、1998、Biochem.Biophys.Acta 1394:3〜15;Shanklin,J et al.、1997、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92、6743〜6747)。これに加えて、チトクロムb5ドメインを他の真核Δ−6−デサチュラーゼのものと同じと同定することができた(Lederer,F.(1994)Biochimie 76、674〜692;Choら、J.Biol.Chem.1999、274(1):471〜477)。
【0029】
本発明によるポリペプチド配列は、Δ−6−デサチュラーゼと同定できるが、他のΔ−6−デサチュラーゼとはかなり異なる。352アミノ酸がある配列が、他の真核Δ−6−デサチュラーゼよりも約20%短いことは特に驚きである。これに加えて、配列は、強く保存された領域で多くの独特の差異を示す。かくて、他のΔ−6−デサチュラーゼでは100%保存されているHHLFPモチーフは、HHFFPに変換している(図9参照)。これらの理由から、既知のデサチュラーゼと本発明によるポリペプチド配列の同一度は、驚くべき程に低い。
【0030】
脂肪酸構成(スペクトル)は、例えば、テトラヒメナでデサチュラーゼを特に過度に発現することにより有意に修飾できる(表1および2参照)。これらの環境下で、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の比は、有意により多くの不飽和脂肪酸の方向に転換する。ここで特に興味深いのは、このようにして達成できるGLAの生産性の増加である。
【0031】
好ましい実施形態において、本発明による核酸は、DNAまたはRNA、好ましくは二本鎖DNA、特に核酸配列を有するDNA、または33位から1091位までの配列番号1に示したような核酸配列の機能的変異体である。本発明によると、2つの位置が、コード領域の開始および終結を決定する。
【0032】
本発明によると、「機能的変異体」なる語は、テトラヒメナΔ−6−デサチュラーゼに機能的に関連した核酸を意味すると理解される。関連核酸の例は、例えば、他の繊毛虫細胞由来の核酸、または対立遺伝子の変異体または同義性の変異体である。本発明は、同様に、本発明による核酸の機能的変異体を包含し、これは、異常なコドン使用度のために(Wuitschick JD、Karrer KM(1999)テトラヒメナ・サーモフィラにおけるゲノムG+C含量、コドン使用度、開始コドン内容および翻訳終結部位の解析、J.Eukaryot.Microbiol.1999 46(3):239〜47)、選択した発現系において本発明による核酸が適合することを必要とする。
【0033】
一方、これは、繊毛虫でグルタミンをコードし、大半の他の発現系では終結コドンであるコドンTAAおよびTAGを、CAAおよびCAGで置換することに関する。これに加えて、当業者は、本発明による核酸を、異なる発現系の、ある特定のコドン優先度(これをコドン使用度と称する)に最適に適合させることには慣れている。
核酸は、特異的に塩基を置換することにより既知の方法で修飾できるか、または必要な核酸を、人工的に調製したオリゴヌクレオチドから得ることができる。好ましい発現系における配列の適合は、例えば、既知のコドン使用度の表(例えば、インターネット:GenBankから作表したコドン使用度:http://www.dna.affrc.go.jp./〜nakamura/CUTG.html)に基づいて、実施できる。本発明は、核酸の一部しか含まない核酸の変異体も包含する。
【0034】
本発明によると、「変異体」なる語は、広義の意味において、相同性、特に約60%、好ましくは約75%、特に約90%および特に約95%の配列同一性を示す核酸を意味すると理解される。
【0035】
本発明による核酸の断片部分は、例えば、他の機能的変異体の同定のためのプローブとして、またはアンチセンス核酸として個々のエピトープの調製に使用できる。例えば、少なくとも約8個のヌクレオチドを含む核酸は、アンチセンス核酸として使用するのに適し、一方、少なくとも約15個のヌクレオチドを含む核酸は、PCR法でプライマーとして使用するのに適し、少なくとも約20個のヌクレオチドを含む核酸は、他の変異体の同定に適し、そして少なくとも約100個のヌクレオチドを含む核酸は、プローブとしての使用に適する。
【0036】
別の好ましい実施形態において、本発明による核酸は、1つ以上の非コード配列(とりわけUTR)を含む。非コード配列は、例えば、Δ−6−デサチュラーゼコード遺伝子の制御発現のためのイントロン配列または、プロモーターまたはエンハンサー配列などの調節配列である。それ故、本発明は、配列番号3に示した本発明による核酸に関し、この核酸は、テトラヒメナ・サーモフィラから単離でき、イントロン、プロモーターおよびUTRを含むΔ−6−デサチュラーゼのゲノム配列を示す。
【0037】
さらなる実施形態において、本発明による核酸は、それ故、ベクター、好ましくは発現ベクターに含まれる。
【0038】
発現ベクターは、例えば、原核または真核発現ベクターであり得る。大腸菌での発現用の原核発現ベクターの例は、T7発現ベクターpGM10(Martin、1996)であり、これは、N−末端Met−Ala−His6タグをコードし、また、その発現タンパク質が、Ni2+−NTAカラムにより有利に精製されることを可能にするものである。
【0039】
サッカロミセス・セレビジアエでの発現に適した真核発現ベクターの例は、ベクターp426Met25またはp426GAL1(Mumberg et al.(1994)Nucl.Acids Res.22、5767)であるが、昆虫細胞での発現に適した前記ベクターの例は、EP−B1−0127839またはEP−B1−0549721に開示されたようなバキュロウイルスベクターであり、哺乳類細胞での発現に適したベクターの例は、一般に入手できるSV40ベクターである。
【0040】
一般に、発現ベクターはまた、大腸菌での発現用のtrpプロモーター(例えば、EP−B1−0154133)、酵母での発現用のADH−2プロモーター(Russel et al.(1983)、J.Biol.Chem.258、2674)、昆虫細胞での発現用のバキュロウイルスポリヘドリンプロモーター(例えば、EP−B1−0127839参照)、および、例えばMMTV(マウス哺乳類腫瘍ウイルス;Lee et al.(1981)Nature、214、228)から得られた初期SV40プロモーターまたはLTRプロモーターなどの、宿主細胞に適した調節配列を含む。
【0041】
例えば、Gaertig et al.((1999)Nature Biotech 17:462〜465)またはGaertig&Kapler((1999)Methods in Cell Biol 62:485〜500)によって記載されたベクターは、テトラヒメナの形質転換およびテトラヒメナにおける発現に適する。
【0042】
本発明による核酸は、例えば、化学的に、例えばホスホトリエステル法に従って、配列番号1および3に開示した配列を使用して、または、配列番号2に開示したペプチド配列及び列挙した遺伝子コード(例えば、Uhlman,E&Peyman,A(1990)Chemical Reviews、90、543、No.4)を使用して合成できる。本発明による核酸を得る別の可能性は、適切なプローブを使用して、Δ−6−デサチュラーゼ活性を有する生物から調製した適切な遺伝子ライブラリーから前記核酸を単離することである(例えば、Sambrook,J et al.(1989)分子クローニング:実験マニュアル第2版、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク)。適切なプローブの例は、約100から1000ヌクレオチド長を有する、好ましくは約200から500ヌクレオチド長を有する、特に約300から400ヌクレオチド長を有する、一本鎖DNA断片であり、その配列は、配列番号1または3に示した核酸配列から得ることができる。
【0043】
この理由から、本発明は、また本発明による核酸を調製するプロセスに関し、前記核酸は、化学合成されるか、またはプローブを使用して遺伝子ライブラリーから単離される。
【0044】
本発明はさらにまた、配列番号2に示したアミノ酸配列を有するポリペプチド自体、またはその機能的変異体、および、少なくとも6個のアミノ酸を含む、好ましくは少なくとも12個のアミノ酸を含む、特に少なくとも65個のアミノ酸を含む、特に少なくとも150個のアミノ酸を含む、その一部に関する(以下において「本発明によるポリペプチド」と称する)。例えば、約6〜12アミノ酸長、好ましくは約8アミノ酸長のポリペプチドは、担体に結合した後に、特定のポリクローナルまたはモノクローナル抗体の調製に使用できる、エピトープを含むことができる(これに関しては、例えば、米国特許第5,656,435号参照)。少なくとも約65個のアミノ酸長を有するポリペプチドは、担体を全く用いずに、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体の調製に直接使用できる。
【0045】
本発明の意味内で、「機能的変異体」なる語は、本発明によるペプチドに機能的に関連した、すなわちΔ−6−デサチュラーゼ活性を示すポリペプチドを意味すると理解される。
【0046】
広義の意味において、配列番号2に示したアミノ酸配列を有するポリペプチドと、配列相同性、特に約70%、好ましくは約80%、特に約90%、特に約95%の配列同一性を有するポリペプチドを意味するとも理解される。
【0047】
好ましいのは、保存されたヒスチジンボックス領域およびチトクロムb5ドメインを有するポリペプチドである。特に好ましいのは、HHFFPモチーフを含む本発明によるポリペプチドである。
【0048】
「機能的変異体」なる語は、さらにまた、ポリペプチドにおける約1〜60、好ましくは約1〜30、特に約1〜15、特に約1〜5個の範囲のアミノ酸の欠失を含む。例えば、最初のアミノ酸メチオニンを、ポリペプチドの機能を有意に変化させることなく欠失することができる。
「機能的変異体」なる語はまた、本発明による上記のポリペプチドを含む融合タンパク質を含み、融合タンパク質それ自体は、すでに、Δ−6−デサチュラーゼの機能を有しているか、または融合部分をとり除いた後にはじめて特異的機能を獲得できる。これらの融合タンパク質は、特に、約1〜200、好ましくは約1〜150、特に約1〜100、特に約1〜50個のアミノ酸の非繊毛虫配列の構成部分を含む融合タンパク質を含む。
【0049】
非繊毛虫ペプチド配列の例は、例えば大腸菌ガラクトシダーゼから得られる、または、ヒスチジンタグ、例えばMet−Ala−His6タグと称される、原核ペプチド配列である。ヒスチジンタグと称されるものを含む融合タンパク質は、金属イオン含有カラム、例えば、Ni2+−NTAカラムを用いて、発現タンパク質を精製するのに特に適切である。「NTA」は、キレート剤のニトリロトリ酢酸(キアゲンGmbH、Hilden)を意味する。
【0050】
本発明によるポリペプチドの一部はエピトープを表し、例えば、このエピトープは、抗体により特異的に認識可能である。
本発明によるポリペプチドは、例えば、当業者に既知の方法に従って、本発明の核酸を、すでに上記したような適切な発現系で発現することにより調製できる。
適切な宿主細胞の例は、大腸菌株DH5、HB101またはBL21、酵母株サッカロミセス・セレビジアエ、昆虫細胞系、例えばスポドプテラ・フルジペルダから得られるレピドプテラン、または、COS、Vero、293およびHeLaなどの動物細胞であり、その全てが一般的に入手できる。
【0051】
特に、ポリペプチドの前記部分はまた、古典的ペプチド合成(メリーフィールド技術)により合成できる。それらは、特に、このようにして、本発明によるポリペプチドのさらなる機能的変異体を得るために、適切な遺伝子発現ライブラリーをスクリーニングすることに使用できる抗血清を得ることに適する。
本発明は、それ故また、本発明の核酸を適切な宿主細胞で発現し、適切な場合には単離する、本発明によるポリペプチドの調製法に関する。
【0052】
本発明はまた、本発明によるポリペプチドに特異的に反応する抗体に関し、ここで上記のポリペプチド部分それ自体は免疫原性であるか、またはウシ血清アルブミンなどの適切な担体に結合させることにより、免疫原性となることができる、またはその免疫原性を増加させることができる。
【0053】
抗体はポリクローナルまたはモノクローナルである。同様に、本発明に関する調製は、例えば、哺乳動物、例えばウサギを、本発明によるポリペプチドまたは前記のその一部を用いて、適切な場合には例えばフロイントアジュバントおよび/水酸化アルミニウムゲルの存在下で免疫化することによる既知の方法に従って行なう(例えば、Diamond,B.A.et al.(1981)The New England Journal of Medicine、1344)。次いで、既知の方法を使用して、免疫反応の結果として動物に形成されたポリクローナル抗体をすぐに血液から単離し、それらを、例えば、カラムクロマトグラフィーにより精製できる。C末端デサチュラーゼ断片が、例えば、NHS活性化されたHiTrapカラムに結合している、抗体のアフィニティ精製が好ましい。
【0054】
モノクローナル抗体は、例えば、Winter&Milstein(Winter,G.&Milstein,C.(1991)Nature、349、293)の既知の方法に従って調製できる。
【0055】
Δ−6−デサチュラーゼは、すでに他の生物で記載されているが、テトラヒメナは組換え法により生産性の高い商業的に重要な株を作成する出発点として、および、PUFA生合成の遺伝子源としての両方の使用に適している。なぜなら、GLAを産生する場合に空間的/時間的収量が特に高いからである。従って、GLA産生繊毛虫テトラヒメナ・サーモフィラから得られるΔ−6−デサチュラーゼおよびその使用を本発明に記載する。
【0056】
脂肪酸構成(スペクトル)の組成を特異的に修飾するために組換え法を使用することは、Napier J et al.(Curr.Opin.Plant Biol.(1999)123〜127)、Murphy&Piffanelli(Soc.Exp.Biol.Semin.Ser.67(植物脂質生合成)、(1998)95〜130)およびFacciotti&Knauf(Adv.Photosynth.6:光合成における脂質:構造、機能および遺伝子学、Siegenthaler&Murata(編)Kluwer Academic Publishers、オランダ(1998)225〜248)に記載されている。
【0057】
WO98/46763、WO98/46764およびWO98/46765の文書は、真菌Mortierellaから得られたデサチュラーゼおよびPUFA産生における遺伝子の使用、およびまたデサチュラーゼのいくつかの部分的配列を記載する。第WO93/06712および第WO96/21022は、シアノバクテリウムからおよびルリヂサから得られたΔ6−デサチュラーゼ、および、シアノバクテリアおよび植物でのPUFAの産生におけるこれらの配列の使用をも記載する。第WO99/27111は、線虫から得られたデサチュラーゼおよびPUFAの産生におけるその使用を記載する。
【0058】
Δ−6−デサチュラーゼは文献にも開示されている。しかし、これらのΔ−6−デサチュラーゼは、特に、植物(ルリヂサ(Sayanova et al.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1997、94:4211〜4216)、ヒメツリガネゴケ(Girke et al.、(1998)Plant−J.1998 15(1):39〜48)、ヒマワリ(Sperling et al.(1995)Eur.J.Biochem.1995、232:798〜805))、真菌(モルチェレラ)、動物(マウス、ラット、カエノラブディティス(Napier et al.(1998)Biochem.J.330(2)、611〜614))、およびシアノバクテリウム(Reddy et al.(1993)Plant Mol Biol.1993、293〜300)から得られたΔ−6−デサチュラーゼである。
【0059】
一般に、目的は、栽培植物、特にセイヨウアブラナ、ヒマワリおよびその他などの油料種子における、これらの遺伝子の機能的で異種的な発現である。しかし、これまで刊行された全ての場合において、GLA収量は非常に低い、および/またはΔ−6−デサチュラーゼ活性を有し、遺伝子工学により生産されたGLA産生生物は、商業的な重要性がない(Knutzon&Knauf(1998)Soc.Exp.Biol.Semin.Ser.67:287〜304)。
【0060】
Murphy(Current Opinion in Biotechnology(1999)10:175〜180)およびKnutzon&Knauf(1998)は、例えば、トランスジェニック植物において脂肪酸スペクトルを特異的に修飾する上での問題および困難を記載している。
【0061】
前述のテトラヒメナのGLAの含量が高いということから、組換え法により、高度に生産的で商業的に重要な株を開発するために、この生物由来のPUFA生合成遺伝子を使用することが有利である。テトラヒメナは大量培養で良好に、高い細胞密度で培養できる可能性があるということから、このように高度に生産的で商業的に興味ある株を、組換え法により作製するために、テトラヒメナそれ自体を使用することはさらに有利である。さらに、本発明の核酸を用いて、テトラヒメナ以外の他の生物を、GLAおよび他のΔ−6−不飽和脂肪酸の産生に使用することもできる。
【0062】
テトラヒメナを発酵することによるGLAの調製は、高等生物に比べて、脂肪酸構成(スペクトル)がかなり単純であるため、特に有利である。これに加えて、発酵的産生は、気候、栄養分供給等の外的因子に影響されない。さらに、このように得られた産物は、例えば、天然から得られる産物の場合にみられる環境汚染により生じ得る不純物をあまり含まない。
【0063】
繊毛虫特異的テトラヒメナΔ−6−デサチュラーゼをコードする本発明による核酸を使用して、GLAおよびΔ−6−不飽和脂肪酸を産生するか、または、前記脂肪酸の含量が実質的に野生型細胞(この場合、テトラヒメナ・サーモフィラ)と比べて増加している、トランスジェニック生物を産生できる(表1および2参照)。これらのトランスジェニック生物は、本発明による核酸配列を有するか、または、機能的にそれを発現する、好ましくは繊毛虫、特に好ましくはテトラヒメナである。このようなデサチュラーゼの発現により、Δ−6−不飽和脂肪酸またはそれから得られる二次産物が比較的増加する。この増加は、PUFA合成に関与する酵素および基質の濃度の変化に基づく。
【0064】
本発明は、PUFA、特にGLAおよびそれから得られるPUFA、またはGLAから得られる他の二次産物、またはΔ−6−不飽和脂肪酸の商業的生産に使用できる(図1参照:PUFA生合成)。GLAに加えて、このように、ALAを不飽和化することにより、例えば、産業で頻繁に使用される原材料であるステアリドン酸(18:4Δ6、9、12、15)を調製できる。
【0065】
特殊な実施形態では、本発明によるΔ−6−デサチュラーゼをコードする核酸を、適切な調節配列と機能的に組合せて使用することにより、酵素の発現を増加し、よってGLA産生生物でのGLA含量を増加するか、またはLA産生生物でGLAを産生できる。これに関連して、ヒマワリ、セイヨウアブラナおよび大豆などの油を産生する生物、および他の生物も同様に、特に関心をひく。これに加えて、例えばΔ−12−デサチュラーゼ(例えば、Sakuradani E et al.(1999)Eur.J.Biochem.261:812〜820、Okuley et al.、Plant Cell(1994)6(1)147〜58)を同時に使用することにより、LAを全く含まないか、LAをほとんど含まない生物または細胞で、前記PUFAを産生できる。同様に、GLAおよびΔ−6−不飽和脂肪酸の産生のために、GLAの生成に関与する3つのデサチュラーゼ、すなわちΔ6、Δ9およびΔ12の組合せを使用できる。さらに、PUFA生合成(図1参照)に関与する他の遺伝子と合わせることは、本発明の別の好ましい実施形態を構成し、GLAおよびΔ−6−不飽和脂肪酸は、GLAが基質として作用する他の酵素により転換され、それにより、例えば、ARA(20:4)およびGLAから得られる他の分子を調製することが可能である。
【0066】
さらに、本発明は、新規GLA含有栄養源、または、GLAまたは他のΔ6−不飽和脂肪酸から得ることのできる分子(特にPUFA、例えばARA)の豊富な栄養源の調製に使用できる。
【0067】
さらに、本発明は、Δ−6−デサチュラーゼ遺伝子またはその一部を含む発現生成体、および異種調節配列とΔ−6−デサチュラーゼをコードする配列の機能的組合せも記載する。
【0068】
本発明はさらに、記載のΔ−6−デサチュラーゼをコードするDNA配列および上記のΔ−6−デサチュラーゼ遺伝子の機能的生成体を使用することにより、GLA含量の増加した(表1および2参照)、トランスジェニック生物の調製に関する。
【0069】
ゲノムDNAおよびmRNAを単離するための、および、ゲノムライブラリーおよびcDNAライブラリーを調製するための、多くの十分に確立された方法が知られている(例えば、Sambrook et al.(1989)分子クローニング:実験マニュアル、コールドスプリングハーバー、NY)。
本発明に記載のデサチュラーゼまたはその一部を含む適切なベクターは、例えばAusubel et al.(Ausubel et al.(1995)分子生物学の現在のプロトコル、Green Publishing Assiciates、ニューヨーク)およびSambrook et al.(1989)に記載されているような、当業者に既知の方法を使用して調製できる。
【0070】
Δ−6−デサチュラーゼをコードする配列を含むベクターを、感染、トランスフェクション、電気穿孔法、粒子による撃ち込みおよび他の方法により細胞に導入できる。その場合、形質転換は、一般に、外来DNAの細胞への導入を意味すると理解される。その実施法は十分に確立され、当業者に既知の方法で実施できる(例えばSambrook et al.(1989)、Potrykus I(1991)Annu.Rev.Plant.Biol.Plant Mol.Biol.42:205〜225、Christou P(1993)Curr.Opp.Biotech.4:135〜141)。
【0071】
ベクターも記載され、これらのベクターは、本発明のDNA配列または配列の一部を、宿主細胞の中で活性であるプロモーターまたは他の調節エレメントとの機能的組合せで含む。好ましい実施形態において、これらの調節エレメントは、繊毛虫、特にテトラヒメナで機能的に活性である核酸配列、例えばヒストンH4およびαおよびβ−チューブリンおよびその他のプロモーターである。
【0072】
記載のΔ−6−デサチュラーゼをコードする配列を組換え発現する生物も、本発明に記載されている。それによって、これらの生物でΔ6−PUFAを産生する可能性に加えて、例えば、組換えΔ6−デサチュラーゼまたはその一部を、標準的なタンパク質精製法(例えばAusubel et al.(1995))を使用して単離する可能性もある。種々の生物でΔ−6−デサチュラーゼをコードする配列の発現に使用できるベクターは、当業者に既知の方法で調製できる。適切なベクターに関する詳細な情報は、例えば、Sambrook et al.(1989)、Goeddel編(1990)Methods in Enzymology 185 Academic PressおよびPerbal(1988)分子クローニングの実践的なガイド、John Wiley and Sons社に見出し得る。
これらのベクターは、好ましくは、プロモーター、エンハンサーエレメント、上流活性化配列等の、発現に影響を及ぼす配列エレメント含む。誘導性および構成性プロモーター、または、例えば、組織特異的プロモーターは、発現の奏効に適する。カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター(Restrepo et al.(1990)Plant Cell 2 987)、または、例えば、種子発達に関連して活性化されるプロモーターが、植物細胞での発現に適している。
【0073】
使用するベクターは、好ましくはシャトルベクターである(Wolk et al.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1561〜1565、Bustos et al.(1991)J.Bacteriol.174:7525〜7533)。
【0074】
好ましい実施形態において、本発明による核酸は、強力なプロモーター制御下でテトラヒメナにおいて発現する(例えばテトラヒメナβ−チューブリンプロモーター、Gaertig et al.(1999)Nature Biotech.)。形質転換は、好ましくは、Gaertigら(1999)Nature Biotech.17:462〜465(または例えば、Gaertig&Gorovsky(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9196〜9200)に記載の方法に従って行なうことができる。例えば、テトラヒメナ・サーモフィラα−またはβ−チューブリンプロモーターを、発現の調節エレメントとして使用できる。形質転換したテトラヒメナ細胞を選択培地で同定し、次いで、強化し培養する。細胞から脂質(リポイド)を単離するために標準的な方法を使用できる(例えば、Dahmer et al.(1989)Journal of American Oil Chemical Society 66、543)。脂肪酸のメチルエステルは、ガスクロマトグラフィーにより解析できる。
【0075】
本発明による単離した核酸またはその一部はまた、他の生物から、特に例えば他の原生生物から、特に繊毛虫から関連遺伝子を単離するのに使用できる。本発明による核酸またはその一部は、相同遺伝子を単離するための、標識プローブとして使用できる。他の生物から単離しておいた核酸にプローブをハイブリダイズすることにより相同核酸配列を同定および単離できる。プローブは、当業者に既知の方法で標識できる(Ausubel、Sambrook(上記参照))。
放射性ヌクレオチド、または蛍光分子、ジゴキシゲニン、ビオチン、磁性分子または酵素などの検出可能な分子に連結したヌクレオチドが、例えば、プローブの標識に適する。相同DNA配列は、異種DNAにプローブをハイブリダイズさせた後に標識を検出することにより、同定および単離する。cDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーは、相同配列の探索に適している。これに加えて、サザンおよびノザンブロットが、相同配列の検出に適する。別に、標識プローブを選択的に保持すること(例えば磁気を使用して)により、標識プローブとハイブリダイズする相同DNAを単離できる。
【0076】
交差ハイブリダイゼーションを使用した相同遺伝子の単離およびクローニングは、当業者に既知であり、例えばAusubelら(1995、分子生物学の現在のプロトコル、Green Publishing Associates、ニューヨーク)またはSambrook et al.(1989、分子クローニング)に記載された方法により行なうことができる。
【0077】
さらに、単離DNA配列およびそれがコードするタンパク質配列に基づいて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による相同核酸配列の増幅に使用できる、オリゴヌクレオチドを設計できる。
【0078】
相同タンパク質を単離する別の可能性は、それらを、本発明の配列によりコードされる、タンパク質またはその一部に対して指向された特定の抗体(例えばペプチド抗体)を使用して検出することにある。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】PUFA生合成の図である。
【図2】タンパク質データベースと、配列番号2に示したタンパク質配列を、BLASTPのデータベースで比較した結果を示す図である。
【図3】タンパク質データベースと、配列番号2に示したタンパク質配列を、BLASTPのデータベースで比較した結果を示す図である。
【図4】既知のデサチュラーゼと、配列番号2に示したタンパク質配列のアラインメントの図である。
【図5】既知のデサチュラーゼと、配列番号2に示したタンパク質配列のアラインメントの図である。
【図6】既知のデサチュラーゼと、配列番号2に示したタンパク質配列のアラインメントの図である。
【図7】既知のデサチュラーゼと、配列番号2に示したタンパク質配列のアラインメントの図である。
【図8】既知のデサチュラーゼと、配列番号2に示したタンパク質配列のアラインメントの図である。
【図9】既知のデサチュラーゼと、配列番号2に示したテトラヒメナ ポリペプチド配列のマルチプルアラインメント。チトクロムb5ドメイン由来のヒスチジンボックスおよび保存HPGGモチーフに下線を付してある。
【図10】既知のデサチュラーゼと、配列番号2に示したテトラヒメナ ポリペプチド配列のマルチプルアラインメント。チトクロムb5ドメイン由来のヒスチジンボックスおよび保存HPGGモチーフに下線を付してある。
【図11】配列番号1および3に示したテトラヒメナΔ−6−デサチュラーゼ遺伝子の構造図である。
【図12】pBDES6Δ−6−デサチュラーゼ発現生成体の調製を示す図である。
【図13】pgDES6::neoノックアウト生成体の調製を示す図である。
【図14】テトラヒメナ野生型株(CU522)の脂肪酸構成(スペクトル)(主脂肪酸)と、テトラヒメナpBDES6形質転換体(AX601およびAX604)の脂肪酸のスペクトルの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
最も重要な配列の説明
配列番号1:テトラヒメナ・サーモフィラΔ−6−デサチュラーゼのΔ−6−デサチュラーゼをコードするcDNAのヌクレオチド配列。
開始および終結コドンを強調している。
【0081】
配列番号2:特殊な繊毛虫コドン使用度を考慮して、配列番号1から推定したテトラヒメナΔ−6−デサチュラーゼのタンパク質配列(Wuitschick JD、Karrer KM(1999)またはCUTG(GenBankから作表したコドン使用度):http://www.dna.affrc.go.jp./〜nakamura/CUTG.html)。
【0082】
配列番号3:テトラヒメナ・サーモフィラΔ−6−デサチュラーゼのゲノムヌクレオチド配列。
【実施例】
【0083】
以下の実施例は、本発明をこれらの実施例に制限されることなく説明するものである。
実施例1
生物および培養条件
テトラヒメナ・サーモフィラ(B1868VII、B2086 II、B*VI、CU427、CU428およびCU522株、米国ジョージア州アーセンズ所在ジョージア大学のJ.Gaertig博士より親切にも提供された)を、修飾SPP培地(2%プロテオースペプトン、0.1%酵母抽出物、0.2%グルコース、0.003%Fe−EDTA(Gaertig et al.(1994)PNAS 91:4549〜4553))またはスキムミルク培地(2%スキムミルク粉末、0.5%酵母抽出物、1%グルコース、0.003%Fe−EDTA)またはMYG培地(2%スキムミルク粉末、0.1%酵母抽出物、0.2%グルコース、0.003%Fe−EDTA)中、抗生物質溶液(100Uのペニシリン/ml、100μgのストレプトマイシン/mlおよび0.25μgのアムホテリシンB/ml(SPPA培地))を加えた存在下で、30℃で、250mlの三角フラスコ中50mlの容量で振盪(150rpm)しながら培養した。
プラスミドおよびファージを、大腸菌XL1−BlueMRF’、TOP10F’、またはJM109で複製し、選び出した。細菌を、標準的な濃度の抗生物質を含む、LBまたはNZY培地中で標準的な条件下で培養した(Sambrookら(1989)分子クローニング:実験マニュアル、コールドスプリングハーバー研究所、コールドスプリング、ニューヨーク)。
【0084】
実施例2
テトラヒメナ・サーモフィラcDNAライブラリーの調製
テトラヒメナ・サーモフィラ全RNAを、グアニジンチオシアネート/フェノール/クロロホルム法を使用して単離した(Chomzynski&Sacchi(1987)Anal.Biochem.161:156〜159)。mRNAを、オリゴテックス−dTビーズ(キアゲン)を使用して全RNAから単離した。cDNAを、ストラタジーンZAP発現cDNA合成法およびクローニングキットを使用して合成した。EcoRIアダプターをライゲートし、XhoIで消化した後、DNAを、アガロースゲル上で分離し、サイズ分画した(S:500〜1500bp、B:1500bpより大きい)。DNAを、ゲル(クイアクイックゲル抽出キット、キアゲン)から単離し、EcoRIおよびXhoIで切断しておいた、ZAP 発現ベクターにライゲートした。ライゲートしたDNAを、インビトロでファージにパッケージングし(ストラタジーン ギガパックIIIゴールド)、ファージを、大腸菌 XL1−Blue MRF’中で複製した。ScDNAライブラリーは、平均挿入サイズが1.1kbの約5×105個のクローンを含むが、BcDNAライブラリーは、平均挿入サイズが2kbの約6×104個のクローンを含んでいる。
【0085】
実施例3
Δ−6−デサチュラーゼ特異的プライマーを使用したRT−PCR
既知のデサチュラーゼの配列と比較することにより、保存領域を同定できた。特殊な繊毛虫コドン使用度ないしテトラヒメナコドン使用度を考慮に入れ、特に強く保存されたアミノ酸領域WWKWNHNAHH(配列番号4)およびGGLQFQIEHHLFP(配列番号5)のPCRプライマーを設計することができた(Wuitschick,JD、Karrer KM(1999)テトラヒメナ・サーモフィラにおけるゲノムG+C含量、コドン使用度、開始コドン内容および翻訳終結部位の解析、J.Eukaryot.Microbiol.46(3)239〜47;Martindale(1989)J.Protozool.36、1:29〜34、CUTG、(GenBankから作表したコドン使用度):http://www.dna.affrc.go.jp./〜nakamura/CUTG.html)。
【0086】
プライマー1(センス):5’−TGGTGGAARTGGAMNCAYAA−3’(配列番号6)
プライマー2(アンチセンス):5’−CGDGGRAANARRTGRTGTTC−3’(配列番号7)
100ngの単離mRNAを、AMV逆転写酵素(ベーリンガーマンハイム)を使用する第一鎖合成に使用した。反応は、50mMトリス−HCl(pH8.5)、8mM MgCl2、30mM KCl、1mM DTT、1mM dNTP、2pmolのオリゴ−DTアンカープライマー(5’−GACCACGCGTATCGATGTCGACT(16)V−3’;配列番号8)、2単位のAMV逆転写酵素、20μlの容量中60分間55℃、続いて10分間65℃で、製造業者のプロトコルに従って実施した。
この第一鎖反応の1/10を、PCRに使用した。PCRは、1×キアゲンHotStarTaqPCR緩衝液(キアゲン)、pH8.7(20℃)、10pmolの各Δ−6−デサチュラーゼ特異的プライマー、各場合とも200μMのdNTP、1.5mM MgCl2、1単位のHotStarTaqポリメラーゼ(キアゲン)を含む、25μlの容量中で実施した。
PCRは、以下の条件下で実施した:最初に95℃で15分間で変性、これに次いで、各場合とも94℃で30秒間、45℃で30秒間、72℃で1分間からなる35サイクル、最後に72℃で10分間。
PCR断片をベクターpCR2.1に、T/Aクローニング(インビトロゲン)によりライゲートし、大腸菌 TOP10F’(インビトロゲン)で複製した。プラスミドDNAを、陽性クローンから単離し(Qiaprep Spin、キアゲン)配列決定した。
【0087】
実施例4
完全Δ−6−デサチュラーゼをコードするcDNAの単離
このように決定した配列に基づいて、新規オリゴヌクレオチドを、PCR用に設計した:
プライマーd6/1−F(センス):5’−GGAATCACAATCAACATCATATGTTCAC−3’(配列番号9)および
プライマーd6/1−R(アンチセンス):5’−CTTCGTCCTTTAGAATGTTGTTTGTGAAC−3’(配列番号10)
完全Δ−6−デサチュラーゼをコードするcDNAを、PCRにより、cDNAライブラリーから、これらのプライマーをベクター特異的プライマー(T3およびT7)と組合せて使用して単離した。2μl(105pfu/μl)のcDNAライブラリーを、PCRに使用した(上記参照)。
上記の条件とは別に、PCRを、以下のプロトコルに従って実施した:95℃で15分間変性し、これに次いで、94℃で20秒間、57℃で20秒間および72℃で1分間からなる35サイクル、最後に72℃で10分間。
PCR産生物を、PCRにも使用したプライマーを使用して配列決定した。このように得られた配列情報に基づいて、cDNA配列の5’末端に位置する新規プライマーを設計した:
プライマーd6−5’−F:AGTAAGCAAACTAAATTTAAAAAACAAGC(配列番号11)
このプライマーを、ベクター特異的プライマーと組合せて使用して、PCR(PCR条件については上記参照)により完全cDNAを増幅および単離することができた。プラスミドpDES6は、このPCR産生物をベクターpCR2.1にクローニングすることにより得た。
【0088】
実施例5
テトラヒメナ・サーモフィラゲノムDNAライブラリーの調製
ゲノムDNAを、尿素法(Gaertigら、1994)により、テトラヒメナから単離し、EcoRIで切断した。切断DNAを、EcoRIで同様に切断しておいた、λベクター(Zap Express、ストラタジーン)にライゲートした。さらなる処理は、cDNAライブラリーの場合に記載した手順に応じて行った。
【0089】
実施例6
Δ−6−デサチュラーゼゲノム配列の単離
Δ−6−デサチュラーゼのゲノム配列を、PCRを用いて調べた。最初に、全コード配列およびイントロンを含む、約2200bpのサイズのPCR産生物を、ゲノムDNAから、cDNAの5’および3’末端からのプライマーを使用して作製した:
d6−5’−F:AGTAAGCAAACTAAATTTAAAAAACAAGC(配列番号12)
d6−3’−R:GGTCCTTCATGAATCTTAAGGTTCCACTTC(配列番号13)
ゲノムウォーカーシステム(クロンテック)を使用して、Δ−6−デサチュラーゼ遺伝子のフランキング配列を単離した。このシステムからの普遍的なプライマーおよび決定しておいたΔ−6−デサチュラーゼ配列に基づいた特異的プライマー、すなわち、
d6−5’−R:CTTAAGTCTTATCAACTCCCATAATGC(配列番号14)
d6−3’−F:GAAGTGGAACCTTAAGATTCATGAAGGACC(配列番号15)
を使用して、テトラヒメナΔ−6−デサチュラーゼ遺伝子のフランキング領域を単離できた。ゲノム配列の完全構造を図11に示す。
【0090】
実施例7
pBDES6発現生成体の調製
ベクターpBICH3(Gaertig et al.、1999、Nature Biotech.17:462〜465)は、テトラヒメナ・サーモフィラBTU1遺伝子の非コード調節配列によりフランキングされる、Ichthyophthirius I抗原(G1)プレタンパク質をコードする配列を含む。開始点にNsiI切断部位を含む、修飾プラスミド(pBICH3−Nsi)(米国GA州アセンズ所在ジョージア大学のJ.Gaertig博士より親切にも提供された)を使用して、Δ−6−デサチュラーゼ発現生成体pBDES6を調製した。このために、PCRを使用して、テトラヒメナΔ−6−デサチュラーゼをコードする配列の始点および終点にNsiIおよびBamHI切断部位を挿入した。Δ−6−デサチュラーゼ(pDES6)の完全cDNA配列を含む、単離プラスミドを、PCRの鋳型として使用した。
【0091】
プライマー
D6−Nsi−F:5’−GCATTATGCATGTTGATAAGACTTAAGAAG−3’(配列番号16)
D6−Bam−R:5’−TATGGATCCTCAAAGGTGAGATTTTTCAAAAATAG−3’(配列番号17)
は、NsiIおよびBamHI切断部位によりフランキングされる、Δ−6−デサチュラーゼをコードする完全配列を含む、PCR産生物を作製した。PCR産生物およびプラスミドpBICH3−Nsiを、制限酵素NsiIおよびBamHIで切断し、アガロースゲル上で精製し、共にライゲートした(プラスミド作製図参照)。得られたpBDES6発現生成体は、BTU1遺伝子の調節配列の正しいリーディングフレーム内に挿入された、完全Δ−6−デサチュラーゼをコードする配列を含んでいる(図12参照)。
テトラヒメナを形質転換するために、生成体を、制限酵素XbaIおよびSalIで消化することにより線形化した。形質転換が成功裡にできれば、BTU1遺伝子を、相同的組換えにより、これらの生成体と交換し、よって、細胞はパクリタキセルに耐性となった。
【0092】
実施例8
形質転換体の脂肪酸構成(スペクトル)の決定
脂肪酸構成(スペクトル)は、フレームイオン化検出器(米国ウィルミントン所在ヒューレットパッカード社)ガスクロマトグラフ(HP GC 6890)を使用して決定した。使用したカラムはFFAP(遊離脂肪酸相)Permbond(Macherey&Nagel GmbH、デューレン)であった。脂肪酸は、脂肪酸メチルエステル標準の保持時間との比較により同定した。既知濃度の標準に基づいて、試料中の脂肪酸の濃度を決定することができた。
脂肪酸スペクトルを決定するために、単離した形質転換体を、24〜96時間、MYG培地中で30℃で150rpmで培養した。50mlの培養液を、1500Gで15分間遠心分離し、その後、上澄を廃棄し、ペレットを−80℃で凍結し、続いて凍結乾燥した。50mgの凍結乾燥試料を秤量し、1mlの20%メタノール性HClおよび1mlのメタノール性標準溶液(1mg/ml)で処理した。脂肪酸を遊離し、それらを脂肪酸メチルエステルにエステル交換するために、試料を、60℃で2時間、封をした試験管の中で水浴中で撹拌し、次いで室温まで冷却した。次いで、1mlの炭酸水素ナトリウム飽和水溶液を加えて、注意深く混合しながら、試料を中和した。脂肪酸メチルエステルを、n−ヘキサンを添加することにより抽出した。続いて、調製物を、激しく十分に混合し、4300rpmで2分間遠心分離することにより相分離を起こした。上の有機相の約2/3を取り出し、1μlの試料を、GCカラムに注入し、分析した。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
これらの条件下で、形質転換体は、非形質転換株CU522と比べて22〜32%増加した、全脂肪酸スペクトル中のGLA含量を示している(表1)。GLA含量の変動に加えて、高含量の不飽和脂肪酸への、脂肪酸スペクトルの顕著な変動も驚きである。形質転換体では、不飽和(主)脂肪酸と飽和(主)脂肪酸の比も、ほぼ2倍である(表2)。
【0096】
実施例9
Δ−6−デサチュラーゼノックアウト生成体pgDES6::neoの調製
ノックアウト生成体を調製するために、プラスミドp4T2−1ΔH3(Gaertig et al.(1994)Nucl.Acids Res.22:5391〜5398)からのneoカセットを、Δ−6−デサチュラーゼゲノム配列に挿入した。このneoカセットは、テトラヒメナヒストンH4プロモーターの制御下のネオマイシン耐性遺伝子およびBTU2遺伝子の3’−フランキング配列からなる。テトラヒメナでは、この生成体は、パロモマイシンに対する耐性を媒介する。プラスミドp4T2−1ΔH3をEco RV/SmaIで切断し、約1.4kbサイズのneoカセット断片を、EcoRVで切断しておいたプラスミドpgDES6に含まれるテトラヒメナΔ−6−デサチュラーゼゲノム配列にライゲートした(図14参照)。これにより、プラスミドpgDES6::neoが得られる。形質転換が成功裡にできれば、Δ−6−デサチュラーゼをコードする遺伝子を、この生成体と、相同的組換えにより交換し、よって、細胞はパロモマイシンに耐性となった。
【0097】
実施例10
デサチュラーゼ発現生成体pBDES6を使用したテトラヒメナの巨核形質転換
5×106個のテトラヒメナ・サーモフィラ細胞(CU522)を、形質転換に使用した。細胞を、250mlの三角フラスコ中50mlのSPPA培地中、30℃で150rpmで振盪しながら、細胞密度が約3〜5×105細胞/mlに達するまで培養した。細胞を、5分間遠心分離(1200G)することによりペレット化し、細胞ペレットを、50mlの10mMトリス−HCl(pH7.5)に再懸濁し、前記のように遠心分離した。この洗浄段階を繰り返し、細胞を、細胞密度3×105細胞/mlで、10mMトリス−HCl(pH7.5、抗生物質も加える)に再懸濁し、その後、それらを250mlの三角フラスコに移し、30℃で16〜20時間振盪せずにインキュベートした(飢餓期)。飢餓期後、細胞数を、再度決定し、その後細胞を、上記のように遠心分離し、その後、10mMトリス−HCl(pH7.5)で、5×106細胞/mlの濃度まで調整した。1mlの細胞を形質転換に使用した。形質転換は、微粒子撃ち込みにより行なった(下記参照)。
【0098】
再生のために、細胞を、SSPA培地にとり、30℃で三角フラスコ中で振盪せずにインキュベートした。3時間後、パクリタキセル(登録商標)を加えて、最終濃度を20μMとし、細胞を、100μlずつ、96穴マイクロタイタープレートに移した。細胞を、30℃で、湿気のある暗いボックス中でインキュベートした。2〜3日後、パクリタキセル耐性クローンを同定できた。陽性クローンを、25μMのパクリタキセルを含む新しい培地に接種することにより移した。完全「表現型組合せ」(Gaertig&Kapler(1999))は、細胞を、濃度をあげたパクリタキセル(80μMまで)中で培養することにより行なった。クローンを解析するために、約4mlの培養液を、パクリタキセル含有SPPA中で増殖し、その後、DNAを単離し(Jacek Gaertig et al.(1994)PNAS 91:4549〜4553)、BTU1座に組込んだDNAを、PCRにより増幅した。
使用したプライマーは、BTU1特異的プライマーBTU1−5’F(AAAAATAAAAAAGTTTGAAAAAAAACCTTC、開始コドンの約50bp上流、配列番号18)およびBTU1−3’R(GTTTAGCTGACCGATTCAGTTC、終結コドンの3bp下流、配列番号19)であった。
PCR産生物を、非切断状態で、または、HindIIIまたはEcoRV(pBDES6)またはEcoRI(pBDES9)で切断しておいて、1%アガロースゲル上で解析した。完全「表現型組合せ」は、BTU1特異的プライマー(Gaertig&Kapler(1999))を使用して、RT−PCRにより確認した。
【0099】
実施例11
ノックアウト生成体pgDES6::neoを使用した、テトラヒメナの微小核および巨核形質転換
異なる対を形成する型(CU428VIIおよびB2086II)のテトラヒメナ株を、別々に、SPPA培地中で、30℃で振盪(150rpm)しながら、三角フラスコ中で培養した。細胞密度が3〜5×105細胞/mlの時に、細胞を、5分間室温で遠心分離(1200G)した。細胞を、3回、50mlの10mMトリス−HCl(pH7.5)で洗浄し、最後に、50mlの10mMトリス−HCl(pH7.5)に再懸濁し、その後、抗生物質溶液を加えた。細胞を30℃で振盪せずに三角フラスコ中でインキュベートした。約4時間後、2つの培養液を再度計測し、10mMトリス−HCl(pH7.5)で3×105細胞/mlまで希釈し、その後、30℃でさらに16〜20時間インキュベートした。この飢餓期後に、2つの培養液からの同じ(絶対)数の細胞を、2L三角フラスコ中で混合した。細胞を30℃でインキュベートし(コンジュゲーションの開始)、コンジュゲーションの効率を、2時間後に決定した。形質転換を成功させるためには、約30%の細胞が、この時点で対として存在すべきである。
微小核形質転換のために、各場合とも、1×107のコンジュゲート細胞(5×106対)を、コンジュゲート開始の3時間、3.5時間、4時間および4.5時間後に、1200Gで5分間遠心分離し、細胞ペレットを1mlの10mMトリス−HCl(pH7.5)に再懸濁した。
新規巨核原生生物の形質転換のために、細胞を、上記のように、コンジュゲート開始の11時間後に遠心分離し、トリス−HClに再懸濁した。形質転換は、微粒子撃ち込みにより行なった(上記参照)。Δ−6−デサチュラーゼノックアウト変異体を培養するために、200μgのルリヂサ油(20〜25%GLA;シグマ)を培地に加えた。
【0100】
パロモマイシン耐性を選抜することにより、形質転換した細胞を同定できた。微小核の形質転換の場合、パロモマイシン(最終濃度100μg/ml)を、コンジュゲート開始の11時間後に加え、細胞を、100μlずつ96穴マイクロタイタープレートに分配した。細胞を、30℃の加湿ボックス中でインキュベートした。2〜3日後に耐性クローンを同定できた。6−メチルプリンに対する巨核形質転換体の耐性に基づいて、真の微小核形質転換体を識別できた。
巨核を形質転換する場合、パロモマイシン(最終濃度100μg/ml)を、形質転換の約4時間後に加え、細胞を、100μlずつ96穴マイクロタイタープレートに分配した。細胞を30℃の加湿ボックス中でインキュベートした。2〜3日後に耐性クローンを同定できた。陽性クローンを、120μgのパロモマイシン/mlを含む新しい培地に接種することにより移した。完全「表現型組合せ」(Gaertig&Kapler(1999))は、この高いパロモマイシン濃度中で細胞を培養することにより数世代後に達成された。B*VI株と微小核形質転換体を交雑することにより、ホモ接合性ノックアウト変異体を作成することができた(Bruns&Cassidy−Hanley、Methods in Cell Biology、第62巻(1999)229〜240)。
【0101】
実施例12
微粒子銃による形質転換(微粒子撃ち込み)
テトラヒメナ・サーモフィラを、Bruns&Cassidy−HanleyMethods in Cell Biology、第62巻(1999)501〜502);Gaertig et al.(1999)Nature Biotech.17:462〜465)またはCassidy−Hanley et al.((1997)Genetics 146:135〜147)に記載のように、微粒子銃による形質転換により形質転換した。バイオリスティック(登録商標)PDS−1000/He粒子送達系(バイオラッド)の操作は、添付マニュアルに詳述されている。形質転換のために、6mgの金粒子(0.6μm;バイオラッド)に、10μgの線形化プラスミドDNA(Sanford et al.(1991)Biotechniques 3:3〜16;Bruns&Cassidy−Hanley(1999)Methods in Cell Biology、第62巻:501〜512)を装着する。
【0102】
金粒子の調製:
60mgの0.6μmの金粒子(バイオラッド)を、1mlのエタノールに再懸濁した。このために、粒子を、3回、各場合について1〜2分間、ボルテックスで激しく混合した。続いて、粒子を1分間遠心分離(10000G)し、上澄をピペットを使用して注意して取り出した。金粒子を、1mlの無菌水に再懸濁し、上記のように遠心分離した。この洗浄段階を、1回繰り返し、粒子を、1mlの50%グリセロールに再懸濁し、100μlずつ−20℃で保存した。
形質転換体の調製:
マクロ担体ホールダー、マクロ担体およびストップスクリーンを、数時間、100%エタノール中で保存し、一方、破裂ディスクはイソプロパノールに保存した。マクロ担体を、続いて、マクロ担体ホールダーに挿入し、風乾した。
【0103】
金粒子にDNAを装着する:
全段階を、4℃で実施した。金粒子、調製したベクター、2.5M CaCl2、1Mスペルミジンおよび70%および100%エタノールを、氷上で冷却した。10μlの線形ベクターDNA(1μg/ml)を、100μlの調製した金粒子に加え、混合物を、注意して10秒間ボルテックスにかけた。続いて、100μlの2.5M CaCl2を、最初に加え、その後、混合物を10秒間ボルテックスにかけ、次いで、40μlの1Mスペルミジンを加え、混合物を注意して10分間ボルテックスにかけた。200μlの70%エタノールを添加した後、粒子を1分間ボルテックスにかけ、次いで10000gで1分間遠心分離した。ペレットを、20μlの100%エタノールに再懸濁し、遠心分離し、次いで35μlの100%エタノールに再懸濁した。このように調製しておいた粒子をピペットを使用して、注意してマクロ担体の中心に加えた。続いて、マクロ担体を、形質転換が生じるまで、吸湿性シリカゲルを含むボックスに保存した。
【0104】
形質転換:
1mlの調製細胞(上記参照)を、ペトリ皿中の、10mMトリス−HCl(pH7.5)で加湿しておいた丸いフィルターの中心に加え、バイオリスティック(登録商標)PDS−1000/He粒子送達システム形質転換チャンバー中の最も低いスライドイン棚に挿入した。形質転換は、形質転換チャンバー中、900psiの圧力と(2つの450psiの破裂ディスク)、27インチHgの減圧下で、調製した金粒子を使用して実施した。次いで、細胞を、直ちに、50mlのSPPA培地を含む三角フラスコに移し、振盪せずに30℃でインキュベートした。
[配列表]









【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2に示したアミノ酸配列を有するテトラヒメナから得られるΔ−6−デサチュラーゼをコードする核酸。
【請求項2】
請求項1記載の核酸のΔ−6−デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも8個のヌクレオチドを含む部分。
【請求項3】
繊毛虫から得られることを特徴とする請求項1または2に記載の核酸。
【請求項4】
テトラヒメナ・サーモフィラから得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項5】
DNAまたはRNAであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項6】
DNAが二本鎖DNAあることを特徴とする請求項5に記載の核酸。
【請求項7】
33位から1091位までの配列番号1に示した核酸配列を有するDNAであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項8】
1つ以上の非コード配列を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項9】
配列番号3に示した請求項1から8のいずれか一項に記載の単離核酸。
【請求項10】
請求項9記載の核酸のΔ−6−デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも8個のヌクレオチドを含む部分。
【請求項11】
ベクターに含まれることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項12】
ベクターが発現ベクターであることを特徴とする請求項11に記載の核酸。
【請求項13】
核酸は、構成性および/または誘導性プロモーターと機能的に結合していることを特徴とする請求項12に記載の発現ベクター。
【請求項14】
核酸は、構成性および/または誘導性プロモーターおよび終結シグナルと機能的に結合していることを特徴とする請求項12に記載の発現ベクター。
【請求項15】
核酸を化学的に合成する、または核酸をプローブを使用して遺伝子ライブラリーから単離することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の核酸の調製方法。
【請求項16】
配列番号2に示したアミノ酸配列を有するポリペプチド。
【請求項17】
請求項16記載のポリペプチドのΔ−6−デサチュラーゼ活性を有する少なくとも12個のアミノ酸を含む部分。
【請求項18】
適切な発現系または宿主生物において請求項1から10のいずれか一項に記載の核酸を発現することを特徴とする請求項16または17に記載のポリペプチドの調製方法。
【請求項19】
配列番号2に示したアミノ酸配列を有するポリペプチドに対向する特異的抗体。
【請求項20】
請求項1から14のいずれか一項に記載の核酸を有する非ヒトトランスジェニック生物。
【請求項21】
配列番号1を含む請求項1に記載の核酸。
【請求項22】
部分が少なくとも15個のヌクレオチドを含む請求項2または10に記載の核酸。
【請求項23】
部分が少なくとも20個のヌクレオチドを含む請求項22に記載の核酸。
【請求項24】
部分が少なくとも100個のヌクレオチドを含む請求項23に記載の核酸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−78425(P2011−78425A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260328(P2010−260328)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【分割の表示】特願2001−523771(P2001−523771)の分割
【原出願日】平成12年9月8日(2000.9.8)
【出願人】(303007359)ヌートリノーヴァ ニュートリション スペシャリティーズ アンド フード イングリーディエンツ ゲー・エム・ベー・ハー (3)
【Fターム(参考)】