説明

ディスクブレーキ用冷却ダクト

【課題】冷却風の取り込みに加えて熱風の排出経路を十分に確保し、高い冷却効果を得ることのできるディスクブレーキ用冷却ダクトを提供する。
【解決手段】ディスクブレーキにおけるキャリパ50のパッド配置部へ冷却風を送風する冷却ダクト10であって、冷却風供給口に接続され、キャリパ50のインナ側に配置されたメインダクト12と、キャリパ50のインナ側へ冷却風を導くインナダクト14と、キャリパ50のアウタ側へ冷却風を導くアウタダクト16と、を有し、アウタダクト16は、キャリパ50におけるロータの回入側または回出側の少なくとも一方に引き回されることを特徴とする。また、アウタダクト16は、キャリパ50の外周側に配置され、内周側へ開口部を向けた送風口20を有するようにすると良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却ダクトに係り、特にディスクブレーキを構成するキャリパを冷却する際に好適な冷却ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
ベーパーロック(Vapor lock)現象や、いわゆる熱ダレを防止するためにディスクブレーキでは、制動時にパッドとロータとの間で生ずる熱が、ピストンを介して作動油にまで伝達されないように防止する必要がある。
【0003】
通常、ブレーキキャリパは走行中外気に晒され、走行風による冷却状態にある。しかし、高速域でのスポーツ走行や、長い下り坂でのブレーキの使用過多時には、走行風によるキャリパ外表面を主とした冷却では、冷却作用が間に合わなくなり、上記問題が生ずる事がある。
【0004】
このような実状を鑑み特許文献1に開示されているディスクブレーキでは、冷却風をキャリパの内側へ、積極的に取り込む技術が開示されている。特許文献1に開示されているディスクブレーキでは、キャリパのインナ側フレームとアウタ側フレームを繋ぐセンターブリッジを冷却風送通用のダクトとし、このダクトを介してキャリパのインナ側フレームとアウタ側フレームにおけるパッド配置部へ冷却風を導く形態としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−213576号公報(段落0019−0028、図1−6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているディスクブレーキによれば、冷却風をキャリパの内側へ積極的に取り込むことが可能となることより、従来よりも高い冷却効果を得られるように思える。しかし、特許文献1に開示されているような構造のディスクブレーキにおいて、必要とされる冷却効果を得るためには、センターブリッジを通過させる冷却風の風量を相当量確保する必要がある。
【0007】
冷却風の風量を増す場合には、センターブリッジの容積を増やす必要がある。しかしこの場合、キャリパ中央における開口部の大半を塞ぐような構造となり、パッドおよびロータから発せられる高温の熱を排出しづらくなり、十分な冷却効果が得られなくなってしまうといった虞がある。
【0008】
そこで本発明では、冷却風の取り込みに加えて熱風の排出経路を十分に確保し、高い冷却効果を得ることのできるディスクブレーキ用冷却ダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためのディスクブレーキ用冷却ダクトは、ディスクブレーキにおけるキャリパのパッド配置部へ冷却風を送風する冷却ダクトであって、冷却風供給口に接続され、前記キャリパのインナ側に配置されたメインダクトと、前記キャリパのインナ側へ冷却風を導くインナダクトと、前記キャリパのアウタ側へ冷却風を導くアウタダクトと、を有し、前記アウタダクトは、前記キャリパにおけるロータの回入側または回出側の少なくとも一方に引き回されることを特徴とする。
【0010】
また、上記のような特徴を有するディスクブレーキ用冷却ダクトにおいて前記アウタダクトは、前記キャリパの外周側に配置され、内周側へ開口部を向けた送風口を有することが望ましい。
【0011】
アウタダクトは、ロータを跨ぐ経路を通過してキャリパの外周側へ引き回される。このため、キャリパの外周側に開口部を設けた方が、冷却風の圧力損失を少なくすることができる。また、キャリパのアウタ側には、十分なスペースが存在するため、キャリパの外周側から内周側へ冷却風を送通させた場合であっても、ピストンやパッドを効率良く冷却することが可能となる。
【0012】
また、上記のような特徴を有するディスクブレーキ用冷却ダクトにおいて前記アウタダクトは、前記キャリパのインナ側ボディとアウタ側ボディとを前記ロータの回入側と回出側とで接続するサイドブリッジに沿って引き回され、前記サイドブリッジの外表面を前記アウタダクトの一部として前記冷却風を送通させる構成とすることができる。
【0013】
このような構成とすることにより、アウタダクトの形状形成を簡素化することができる。また、冷却風がサイドブリッジの外表面を通過することとなるため、熱交換によりキャリパボディの冷却を行うことが可能となる。
さらに、上記のような特徴を有するディスクブレーキ用冷却ダクトにおいて前記インナダクトは、前記キャリパの内周側に配置され、外周側へ開口部を向けた送風口を有するようにすると良い。
【0014】
キャリパのインナ側の内周側には、ナックルやハブなどの機械要素が存在するため、冷却風の通過が妨げられることとなる。これに対し、冷却風を内周側から外周側へ送通させるようにすることで、ピストンやパッドを効率良く冷却することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
上記のような特徴を有するディスクブレーキ用冷却ダクトによれば、冷却風の取り込みに加えて、発熱部冷却後の熱風の排出経路を十分に確保することが可能となる。このため、ディスクブレーキに組付けた際に、高い冷却効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】キャリパに、実施形態に係る冷却ダクトを組付けた状態を示す図であり、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は底面図である。
【図2】キャリパに、実施形態に係る冷却ダクトを組付けた状態を示す右側面図である。
【図3】実施形態に係る冷却ダクトを組付けるキャリパの構成を示す図であり、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は底面図である。
【図4】実施形態に係る冷却ダクト単体の構成を示す図であり、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は底面図である。
【図5】実施形態に係る冷却ダクトにおけるアッパーカバーの構成を示す図であり、(A)は底面側から見た斜視図、(B)は正面図、(C)は平面図である。
【図6】実施形態に係る冷却ダクトにおけるアンダーカバーの構成を示す上面図である。
【図7】整流板を設けたアッパーカバーの構成例を示す図である。
【図8】整流板を設けたアンダーカバーの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のディスクブレーキ用冷却ダクトに係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、本実施形態に係るディスクブレーキ用冷却ダクト(以下、単に冷却ダクトと称す)を組付けるキャリパ50の構成について、図3を参照して説明する。なお、図3(A)はキャリパの上面構成を示す図であり、図3(B)はキャリパの正面構成を示す図であり、図3(C)はキャリパの底面構成を示す図である。
【0018】
本実施形態に係るキャリパ50は、ラジアルマウントタイプのキャリパであり、インナ側ボディ52、アウタ側ボディ54、サイドブリッジ56,58、およびセンターブリッジ60を基本として構成される。
インナ側ボディ52は、キャリパ50を車両に組み付けた状態において、車両側に位置することとなるボディである。インナ側ボディ52には、図示しない凹部であるシリンダ(図3に示す形態では3つのシリンダが設けられる)と、前記シリンダに対して作動油を供給するための作動油供給口72、作動油のエア抜きを行うためのブリーダ孔74、およびラジアルマウントを行うための取付孔70を有する。なお、シリンダは、図示しないロータの摺動面に対向する位置に設けられる。
【0019】
アウタ側ボディ54は、キャリパ50を車両に組付けた状態において、図示しないロータを介して、上述したインナ側ボディ52と対向する位置に配されるボディである。アウタ側ボディ54には、インナ側ボディ52におけるシリンダ配置位置に対向する位置に設けられたシリンダが設けられる(不図示)。インナ側ボディ52に設けられたシリンダには、詳細を後述するサイドブリッジ56,58等に形成された送通路を介して、インナ側ボディ52に設けられた作動油供給口72から供給された作動油が流入可能な構成とされている。
【0020】
サイドブリッジ56,58は、図示しないロータを跨いで、上述したインナ側ボディ52とアウタ側ボディ54とを接続する接続要素である。サイドブリッジ56,58は、キャリパ50におけるロータの回入側と回出側に対を成すように設けられる。このため、サイドブリッジ56,58は、インナ側ボディ52とアウタ側ボディ54との両端部をそれぞれ接続するような形態で設けられることとなる。サイドブリッジ56,58には上述したように、図示しない送通路が設けられ、インナ側ボディ52に供給された作動油をアウタ側ボディ54に送り込む役割を担う。
【0021】
本実施形態に係るキャリパ50では、対を成すサイドブリッジ56,58間に形成される開口部に、センターブリッジ60を配置する構成とした。開口部に配置されるセンターブリッジ60は、インナ側ボディ52とアウタ側ボディ54の両端部に設けたサイドブリッジ56,58よりも幅が狭くなるように構成し、開口部にできるだけ広い開口面積を確保すると共に、機械的な強度をも向上させるようにしている。開口部の開口面積を広くすることにより、詳細を後述するブレーキパッド64とロータとの間で生ずる熱の放熱作用を高めることが可能となる。
【0022】
インナ側ボディ52とアウタ側ボディ54のそれぞれに設けられたシリンダには、ピストン62が配置される。ピストン62は、円柱状、あるいはキャップ形状を成し、シリンダ内に作動油が供給されることにより、シリンダ内からロータ配置方向へと押し出されることとなる。本実施形態に係るピストン62は、ピストン62の先端側に複数の貫通孔を形成して冷却特性を高めた、ハイクーリングピストンを採用している。作動油の温度上昇を抑制するだけでなく、キャリパ50を介したホイール等への熱伝達を抑制することが可能となるからである。
【0023】
ピストン62の先端には、ブレーキパッド64が配置される。ブレーキパッド64は、ピストン62により押圧されるプレッシャプレート66と、プレッシャプレート66に貼付された摩擦材であるライニング68とを基本として構成される。このようなブレーキパッド64が配置されることにより、作動油の供給で、ピストン62がシリンダから押し出されると、ブレーキパッド64がピストン62により押圧されてロータを挟持する。ブレーキパッド64によりロータが挟持されると、ブレーキパッド64はキャリパ50におけるロータ回出側のサイドブリッジ(例えばサイドブリッジ58)に押し当てられると共に、その移動が制限されることにより、ロータの摺動面とブレーキパッド64のライニング68との間で摩擦が生じ、熱エネルギーが発生する。このような作用により、運動エネルギーが熱エネルギーに変換され、制動力を生じさせる。
【0024】
本実施形態に係る冷却ダクト10は、上記のようにして生ずる熱エネルギーを効率良く排出し、冷却効果を高め、熱ダレやベーパーロック現象によるブレーキ性能の劣化を防ぐ役割を担う。
【0025】
本実施形態に係る冷却ダクトの構成について、図1、図2、および図4〜図6を参照して説明する。なお、図1(A)は図3に示すキャリパに冷却ダクトを組付けた状態の上面構成を示す図であり、図1(B)は同状態の正面構成を示す図であり、図1(C)は同状態の底面構成を示す図である。また、図2は、図3に示すキャリパに冷却ダクトを組付けた状態の右側面の構成を示す図である。図4は冷却ダクト単体の構成を示す図であり、図4(A)は上面図、図4(B)は正面図、図4(C)は底面図である。また、図5は冷却ダクトにおけるアッパーカバーの構成を示す図であり、図5(A)は斜視図、図5(B)は正面図、図5(C)は平面図である。また、図6は冷却ダクトにおけるアンダーカバーの上面構成を示す図である。
【0026】
本実施形態に係る冷却ダクト10は、メインダクト12と、インナダクト14、およびアウタダクト16を基本として構成される。メインダクト12は、車両側のエア供給原(例えば車両の前面に設けられた走行風取込口に接続されたダクト)に接続されるダクトであり、詳細を後述するインナダクト14とアウタダクト16の双方に冷却エアを供給する役割を担う。なお、メインダクト12の基端側開口部とエア供給原との接続には、蛇腹ダクトなどの可撓性部材を採用することで、ナックル(不図示)を介した車輪の挙動によるエア供給原からの離脱を防ぐことができる。
【0027】
インナダクト14は、キャリパ50のインナ側へ冷却風を導く役割を担う。インナダクト14は、キャリパ50のインナ側に配置されたメインダクト12から分岐し、キャリパ50の内周側(図示しないロータを基準として内周側)に配置される。インナダクト14の先端側開口部は、キャリパ50の内周側から外周側へ向けて配置されており、この開口部が送風口18となる。キャリパ50のインナ側には、特に内周側にナックルやハブ(不図示)などの機械要素が配置されている。このような機械要素は、キャリパ50を基準として内周側へ流れ込む気体の抵抗となってしまう。本実施形態のごとくインナダクト14の開口部を配置することで、キャリパ50のインナ側における冷却風の流れは、内周側から外周側へ向かうもの(図1(B)における下側から上側へ向かう流れ)となり、冷却効率の向上を図ることができる。また、本実施形態に係る冷却ダクト10におけるインナダクト14では、送風口18は、キャリパ50の内周側から外周側へ向けて扇状に形成されている。送風口18をこのような形態とすることにより、送風範囲を広げることができ、キャリパ50内に複数配置されたピストン62を効果的に冷却することが可能となる。
【0028】
アウタダクト16はキャリパ50のアウタ側へ冷却風を導く役割を担う。アウタダクト16は、キャリパ50のインナ側に配置されたメインダクト12から分岐し、キャリパ50におけるサイドブリッジ56,58に沿って引き回された後、キャリパ50の外周側(図示しないロータを基準として外周側)に配置される。本実施形態に係る冷却ダクト10では、ロータの回入側と回出側の双方に当たるサイドブリッジ56,58に沿うように、2本のアウタダクト16が設けられている。アウタダクト16を2本に分割し、回入側と回出側の双方に設けられたサイドブリッジ56,58に沿って引き回す構成としたことにより、アウタダクト16一本あたりの厚み(容積)を抑えつつ、キャリパ50のアウタ側への冷却風の送風量を十分に確保することが可能となる。アウタダクト16の先端側開口部は、キャリパ50の外周側から内周側へ向けて配置されており、この開口部が送風口20となる。キャリパ50のアウタ側には、内周側に十分なスペースが設けられるため、送風口20を内周側へ向け、冷却風が外周側から内周側へ流れるような構成(図1(B)において上側から下側へ向かって流れるような構成)とした場合であっても、十分な冷却効率を得ることができる。なお、送風口20が内周側を向くのであるから、アウタダクト16の開口部は、対を成すサイドブリッジ56,58の間に設けられる開口部に設けられることとなる。
【0029】
また、本実施形態に係る冷却ダクト10は、2本のアウタダクト16のそれぞれに送風口20を設け、それぞれの送風口20を離間して配置する構成としているため、冷却風の送風範囲を広げることができる。よって、キャリパ50内に複数配置されたピストン62を効果的に冷却することが可能となる。
【0030】
上記のような基本構成を有する冷却ダクト10は、樹脂や、繊維強化プラスチック(FRP)など、キャリパボディ(例えばアルミニウムや鉄)よりも軽量な部材により形成することができる。本実施形態に係る冷却ダクト10を製造する場合、例えば図5に示すようなアッパーカバー22と、図6に示すようなアンダーカバー24を組み合わせ、これをキャリパ50に組付けることで構成することができる。
【0031】
ここで、アッパーカバー22とアンダーカバー24の形状を比較すると、アッパーカバー22はアンダーカバー24に比べてアウタダクト16を構成する2本のサイドダクト16aが、アンダーカバー24に設けられるサイドダクト16bよりも長く形成されていることを読み取ることができる。一方、アンダーカバー24はアッパーカバー22に比べてインナダクト14を構成するセンターダクト14bが、アッパーカバー22に設けられるセンターダクト14aよりも長く形成されていることを読み取ることができる。このように構成される、アッパーカバー22とアンダーカバー24との重複部分は、メインダクト12を構成する部分と、インナダクト14とアウタダクト16におけるキャリパ50当接前の部分となる。このため、キャリパ50とアッパーカバー22、若しくはキャリパ50とアンダーカバー24が重複する部分については、キャリパ外表面が、インナダクト14、若しくはアウタダクト16の一部を構成することとなる。
【0032】
このような構成とすることにより、冷却風を各ダクトの送風口18,20へ確実に送りつつ、冷却ダクト10の軽量化を図ることができる。また、冷却風がキャリパ50の外表面(本実施形態においてはサイドブリッジ56,58)に沿って流れることとなるため、熱交換による冷却効果を期待することができる。
【0033】
このような構成のアッパーカバー22とアンダーカバー24には、図7や図8に示すような整流板26,28を設けるようにすると良い。整流板26,28は、冷却風の流れを送風口18,20へ導く際に、屈曲部などに生ずる淀みを軽減し、スムーズな流れを形成することで、冷却効率の向上を図る役割を担う。なお、図7、図8においては、各ダクトを構成するラインに3枚の整流板26,28を設ける構成としているが、その数についての規制は特に無く、枚数を増減することができる。なお、整流板26,28の数を減らす場合の注意点としては、整流効果を得られる限度とすることが望ましい。また、整流板26,28の数を増やす場合には、冷却風の流動抵抗が高くなりすぎない程度とすることが望ましい。
【0034】
上記のような構成の冷却ダクト10によれば、アウタダクト16の引き回しにサイドブリッジ56,58を利用したことにより、キャリパ50のセンターブリッジ60を太くする必要性が無くなった。このため、キャリパ50におけるロータの回入側と回出側に設けられるサイドブリッジ56,58間に形成される開口部の面積を広く採ることが可能となり、冷却後の熱風の排出経路を十分に確保することが可能となった。よって、従来に比べて高い冷却効果を得ることが可能となった。
【0035】
また、従来技術のように、ブリッジ内に送風経路を設けず、冷却ダクト10とキャリパ50を別体としたことにより、必要十分な強度を保ったままブリッジの薄肉化を図ることが可能となり、キャリパ50を軽量化することができる。また、冷却ダクト10を軽量部材により構成することができるため、車両足回りの軽量化に貢献し、高い運動性能の確保を図ることができる。
【0036】
上記実施形態では、キャリパ50としてセンターブリッジ60を有するものを採用している。しかしながら、本実施形態に係る冷却ダクト10は、キャリパ50のサイドブリッジ56,58に沿って配置されるアウタダクト16を有するため、センターブリッジ60の無いタイプのキャリパへの採用も可能となる。また、この場合には、より冷却効果の向上を期待することができる。
【0037】
また、上記実施形態では、キャリパ50のアウタ側への送風量を確保するために、アウタダクト16を2本としてロータの回入側と回出側の双方に引き回す構成とした。しかしながら本発明に係る冷却ダクトは、少なくともロータの回入側または回出側の一方を通ってキャリパ50のアウタ側へ冷却風を送ることのできるアウタダクトを備えていれば良い。このため、アウタダクトを一本とした場合であっても、本発明の一部とみなすことができる。また、上記実施形態では、アウタダクト16をキャリパ50のサイドブリッジ56,58に沿わせる構成としていたが、キャリパ50におけるロータの回入側、回出側を引き回す経路を通る構成であれば、アウタダクト16をサイドブリッジ56,58に沿わせる必要性も無い。
【産業上の利用可能性】
【0038】
上記実施形態に係る冷却ダクト10は、ラジアルマウント型のオポーズドタイプのキャリパ50への組付けを対象として説明した。しかしながら本発明に係る冷却ダクトは、アキシャルマウント型のオポーズドタイプのキャリパへも対応することができる。また、キャリパをオープンバック型(ブリッジ部に開口を有する形態)とした場合には、キャリパ浮動型のディスクブレーキにも対応させることができる。
【符号の説明】
【0039】
10………冷却ダクト、12………メインダクト、14………インナダクト、16………アウタダクト、18………送風口、20………送風口、22………アッパーカバー、24………アンダーカバー、26………整流板、28………整流板、50………キャリパ、52………インナ側ボディ、54………アウタ側ボディ、56………サイドブリッジ、58………サイドブリッジ、60………センターブリッジ、62………ピストン、64………ブレーキパッド、66………プレッシャプレート、68………ライニング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクブレーキにおけるキャリパのパッド配置部へ冷却風を送風する冷却ダクトであって、
冷却風供給口に接続され、前記キャリパのインナ側に配置されたメインダクトと、
前記キャリパのインナ側へ冷却風を導くインナダクトと、
前記キャリパのアウタ側へ冷却風を導くアウタダクトと、を有し、
前記アウタダクトは、前記キャリパにおけるロータの回入側または回出側の少なくとも一方に引き回されることを特徴とするディスクブレーキ用冷却ダクト。
【請求項2】
前記アウタダクトは、前記キャリパの外周側に配置され、内周側へ開口部を向けた送風口を有することを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ用冷却ダクト。
【請求項3】
前記アウタダクトは、前記キャリパのインナ側ボディとアウタ側ボディとを前記ロータの回入側と回出側とで接続するサイドブリッジに沿って引き回され、前記サイドブリッジの外表面を前記アウタダクトの一部として前記冷却風を送通させる構成とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のディスクブレーキ用冷却ダクト。
【請求項4】
前記インナダクトは、前記キャリパの内周側に配置され、外周側へ開口部を向けた送風口を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のディスクブレーキ用冷却ダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−241876(P2011−241876A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113303(P2010−113303)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】