説明

ディーゼルエンジンの排気浄化装置

【課題】 本発明は高地低圧状態であっても、良好に作用するディーゼルエンジンの排気浄化装置を提供する。
【解決手段】 排気浄化手段の再生時に、前記大気圧検出手段によって検出された大気圧と前記回転数検出手段によって検出されたエンジン回転数に基づく吸入空気量Vmが、スロットル弁を全開にし、且つ、EGR弁を全閉にしたときの基準空気量V0を下回ると、燃料噴射量を増量する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディーゼルエンジンの排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出される排気ガス(以下では単に「排気」と呼ぶ。)には粒子状物質(Particulate Matter;以下では単に「PM」と呼ぶ。)が含まれるため、このPMの除去は重要な課題である。PMの除去は、例えばパティキュレートフィルタ(以下では単に「フィルタ」と呼ぶ。)を上記排気系に設けるのが周知である。ところが、当該フィルタにPMが堆積すると目詰まりが発生し、ディーゼルエンジンの出力低下等の問題がある。PMの堆積を解消するには、PMを酸化(燃焼)して再生する温度(例えば650℃程度;以下では単に「再生温度」と呼ぶ。)にフィルタを昇温し、当該フィルタに捕集されたPMを酸化して再生すればよい。
【0003】
特許文献1には、内燃機関の置かれる環境下において大気圧が減少した場合、例えば、内燃機関を備える車両が高度の低い土地から高い土地へと移動した場合、吸入空気量を増量する技術が開示されている。高度の高い土地では空気の密度が低下して実際に内燃機関へ吸入される空気量が減少し、それにより燃料噴射量が減少し、それにより排気の温度が低下し、それにより排気浄化装置の暖気を十分に行えないという問題が生じるが、この技術によれば、吸入空気量を増量することで、排気浄化装置の暖気を十分に行うことができる。
【特許文献1】特開2005−016396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
V型8気筒等の多気筒エンジンではアイドル回転数を4気筒より大幅に下げることが可能であり、また、下げることで燃費を向上できる。しかし、アイドル回転数を下げて吸入空気量が減少すると次のような問題が起こる。それは、排気浄化装置の再生走行中に減速してアイドル状態になり吸入空気量が所定値を下回ると、PM燃焼の発熱と空気による持ち去り熱のバランスが崩れてOT(オーバーシュート;以下では単に「減速OT」と呼ぶ。)が起こることである。よって、フィルタの昇温制御中は必ず所定値以上の吸入空気量を確保する必要がある。
ガソリンエンジンであれば、スロットル弁を開くことで所定の空気量を確保することができるが、ディーゼルエンジンの場合、常圧であれば、かなりアイドル回転数を下げても所定の空気量を確保できるのだが、高地低圧になると、スロットル開度等の補正を行つても所定の空気量が得られなくなる場合がある。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みてなしたものであり、高地低圧状態であっても、フィルタの昇温制御中に必ず所定値以上の吸入空気量を確保することができるディーゼルエンジンの排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するための手段(以下では単に「解決手段」と呼ぶ。)1は、ディーゼルエンジンの排気通路に設けられた排気浄化手段と、大気圧を検出する大気圧検出手段と、気筒内に設けられた燃料噴射弁から噴射される燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御手段と、ディーゼルエンジンの回転数を検出する回転数検出手段とを備えたディーゼルエンジンの排気浄化装置であって、
前記排気浄化手段の再生時に、前記大気圧検出手段によって検出された大気圧と前記回転数検出手段によって検出されたエンジン回転数に基づく吸入空気量Vmが基準空気量V0を下回ると、燃料噴射量を増量するように前記燃料噴射量制御手段を制御することを特徴とする。
【0007】
上記解決手段1にいう「エンジン回転数」にはアイドリング回転数を含む。また、「基準空気量V0」は、スロットル弁を全開にし、且つ、EGR弁を全閉にしたときの吸入空気量である。
大気圧Piとエンジン回転数Neに基づく吸入空気量Vmが、例えば、スロットル弁を全開にし、且つ、EGR弁を全閉にしたときの基準空気量V0より少ないときには、燃料噴射量を増加させて、エンジン回転数Neを増加させることによって、高地低圧状態であっても、OT(オーバーシュート;以下では単に「減速OT」と呼ぶ。)を防止できる。
【0008】
解決手段2は、排気浄化手段の再生時に、前記大気圧検出手段によって検出された大気圧と前記回転数検出手段によって検出されたエンジン回転数とに基づく吸入空気量が、スロットル弁を全開にしたときに算出される基準空気量を下回ると、燃料噴射量を増量するように前記燃料噴射量制御手段を制御する。
このスロットル弁を全開にすると、新たな吸入空気を最大に取り入れることができ、燃料噴射量を増量することができる。
【0009】
又、解決手段3は、排気浄化手段の再生時に、前記大気圧検出手段によって検出された大気圧と前記回転数検出手段によって検出されたエンジン回転数とに基づく吸入空気量が、スロットル弁を全開にし、且つ、EGR弁を全閉にしたときに算出される基準空気量を下回ると、燃料噴射量を増量するように前記燃料噴射量制御手段を制御する。
大気圧Piとエンジン回転数Neに基づく吸入空気量Vmが、スロットル弁を全開にし、且つ、EGR弁を全閉にしたときの基準空気量V0より少ないときには、燃料噴射量を増加させて、エンジン回転数Neを増加させる。スロットル弁を全開にし、且つ、EGR弁を全閉にしたときは、新たな吸入空気量を最大にすることができ、燃料噴射量をより増加させることができ、高地低圧状態であっても、OT(オーバーシュート;以下では単に「減速OT」と呼ぶ。)を防止できる。
【0010】
解決手段4は、ディーゼルエンジンの排気浄化装置を多気筒のディーゼルエンジンに適用するものである。
解決手段5は、解決手段1に記載した内燃機関の排気浄化装置であって、大気圧検出手段によって検出された大気圧と前記回転数検出手段によって検出されたエンジン回転数を所定時間に基づく平均値とすることによって、大気圧とエンジン回転数の変動に対して、円滑な運転ができる。
【0011】
解決手段6は、解決手段1または2に記載した内燃機関の排気浄化装置であって、吸入空気量Vmが基準空気量V0を下回るか否か(ステップS16)の判断をΔ時間毎に行うことによって、円滑な運転ができる。
【発明の効果】
【0012】
解決手段1〜4の発明によれば、高地低圧状態であっても、フィルタの昇温制御中に必ず所定値以上の吸入空気量を確保することができる。
又、解決手段5の発明によれば、平均値を採用することによって、円滑な運転が可能である。
又、解決手段6の発明によれば、Δ時間毎に吸入空気量Vmが基準空気量V0を下回るか否かの判断をおこなうので、円滑な運転ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本発明を実現するために構成したエンジンシステムの一例を表す説明図である。このエンジンシステムは、ディーゼルエンジン80や、当該ディーゼルエンジン80を電子制御するECU(電子制御ユニット)98などを備える。
【0014】
8気筒からなるディーゼルエンジン80には、各気筒に吸入空気(以下では単に「吸気」と呼ぶ。)を送る吸気マニホールド(インテイクマニホールド)78と、各気筒から排出した排気を集合させて排気管34,48に送り出す排気マニホールド(エキゾーストマニホールド)66,92とが接続されている。各気筒には、シリンダ内に燃料を噴射するための燃料噴射ノズル(インジェクタ)72がそれぞれ配置されている。これらの各燃料噴射ノズル72は燃料噴射弁に相当する。また、エンジン内を循環する冷却水の温度に応じた信号をECU98に出力する水温センサ84や、エンジン回転数に応じた信号をECU98に出力する回転数センサ82などを備える。この回転数センサ82は回転数検出手段に相当し、例えばレゾルバやエンコーダ等を用いる。
【0015】
燃料タンクから燃料ポンプ70,86を通じて供給された燃料は、コモンレール74,76を経て燃料噴射ノズル72に送られると共に、開閉弁68,94および還元剤供給管62,88を経て還元剤噴射ノズル60,96に送られる。
尚、これら還元剤噴射ノズル60,96や開閉弁68,94等については後述する。
燃料ポンプ70,86は、ディーゼルエンジン80の出力軸(クランクシャフト)から出力される動力(すなわち回転トルク)を駆動源として作動するポンプである。要素の一部について図示を省略するが、燃料ポンプ70,86に備えたポンププーリと、ディーゼルエンジン80の出力軸に備えられたクランクプーリとがベルトによって連結され、当該ベルトを通じてディーゼルエンジン80の動力の一部が燃料ポンプ70,86に伝達される。各燃料噴射ノズル72の開閉タイミングや開口度は、ディーゼルエンジン80の運転状態に応じてECU98から出力される信号によって制御される。よって燃料噴射ノズル72から噴射される燃料噴射量を制御する点で、ECU98は燃料噴射量制御手段に相当する。
【0016】
次に吸気系について説明する。吸気マニホールド78は、各気筒ごとに備えた吸気ポートに接続してある。ただし、図1では、見易くするために吸気ポートの図示を省略している。
吸気マニホールド78には、集合吸気管54とEGR通路52,56とが接続されている。集合吸気管54は、吸気管36と吸気管46を集合させたものであり、スロットル弁42を備える。従って、吸気(すなわち空気)は、吸気管36,46から吸気マニホールド78を経てディーゼルエンジン80の各気筒(すなわち燃焼室としてのシリンダ)に導入される。
前記スロットル弁42の開閉制御(もしくは開度制御)は、ECU98から出力された信号に従って作動するアクチュエータ40によって行われる。アクチュエータ40には、例えばステップモータやソレノイド等を用いる。
吸気管36,46の途中には、エアクリーナ24、コンプレッサ16a,26a、インタークーラ38,44などを備える。
【0017】
吸気に含まれる粉塵等を取り除くエアクリーナ24には、吸気管36,46を流れる吸気の流量(すなわち吸入空気量)に応じた信号をECU98に出力するエアフローメータ18を備える。コンプレッサ16aは後述するタービン16bとともに過給機16を構成し、コンプレッサ26aは後述するタービン26bとともに過給機26を構成する。これらのコンプレッサ16a,26aは、いずれもエアクリーナ24を通じて取り入れられた吸気を圧縮する。インタークーラ38,44は、コンプレッサ16a,26aで圧縮されて高温になった吸気を冷却する。なお、吸気管36,46の入口部には、大気圧に応じた信号をECU98に出力する気圧センサ22を備える。この気圧センサ22は大気圧検出手段に相当する。
【0018】
さらに排気系について説明する。排気マニホールド66,92は、各気筒ごとに備えた排気ポートに接続している。排気マニホールド66,92には還元剤噴射ノズル60,96を備えるとともに、排気管34,48とEGR通路52,56とが接続されている。
【0019】
還元剤噴射ノズル60,96は、排気マニホールド66,92内に燃料(還元剤として用いる)を噴射するように噴射口を臨ませてあり、ECU98からの信号に従って噴射が制御される。こうして噴射される燃料は燃料ポンプ70,86から還元剤供給管62,88を経て供給され、ECU98からの信号に従って作動する開閉弁68,94によって噴射量等が制御される。
【0020】
排気通路に相当する排気管34,48の途中には、タービン16b,26b,フィルタ12,28,流量センサ14,30などを備える。流量センサ14,30は必要に応じて備えられ、排気管34,48を流れる排気の流量(以下では「排気流量」と呼ぶ。)に応じた信号をECU98に出力する。タービン16b,26bは上述したコンプレッサ16a,26aとともに過給機16,26を構成し、排気管34,48を流れる排気によって回転してコンプレッサ16a,26aを作動させる動力源となる。すなわち排気流量に従ってタービン16b,26bが回転し、当該タービン16b,26bに連結されたコンプレッサ16a,26aが作動して吸気を圧縮する。
排気浄化手段に相当するフィルタ12,28は、例えば吸蔵還元型NOx触媒を担持し、PMや未燃焼の炭化水素等の捕集や再生を行う機能を果たす。なお、フィルタ12,28の温度に応じた信号をECU98に出力する温度センサ10,32を個別に備えてもよい。
【0021】
EGR通路52,56は排気マニホールド66,92と吸気マニホールド78との間を連絡する通路であって、排気の一部を吸気として再循環させる機能を果たす。当該EGR通路52,56の途中には、EGRクーラ64,90や流量調整弁50,58などを備える。EGRクーラ64,90は、EGR通路52,56内を流れる排気(以下では「EGRガス」と呼ぶ。)を冷却する。このEGRクーラ27には、ディーゼルエンジン80を冷却するための冷却水の一部が循環する冷却水通路(図示省略)が設けられている。EGR弁に相当する流量調整弁50,58は、例えば電磁弁などで構成され、印加電力の大きさに従ってEGRガスの流量を調整する。
【0022】
次に、ECU98の構成や機能について簡単に説明する。当該ECU98は、CPU100を中心に構成されており、ROM102やRAM104などの記憶手段や、信号を入出力する回路などを有する。このうちROM102には、後述する空気量確保制御処理などの手続きを実現するプログラムや各種のマップ等が格納されている。ECU98は、エアフローメータ18,気圧センサ22,温度センサ10,32,流量センサ14,30,回転数センサ82,水温センサ84などから各々出力された信号を受けて処理する。
【0023】
またECU98は、燃料噴射ノズル72に信号を出力してシリンダ内に供給する燃料の噴射を制御したり、開閉弁68,94や還元剤噴射ノズル60,96に信号を出力してPMや未燃焼の炭化水素等の発生を抑えるために燃料を噴射する制御等を行う。
【0024】
上述のように構成されたエンジンシステムにおいて、フィルタにPMが溜まった時に実行されるフィルタの再生処理中に行われる空気量確保制御処理の処理内容について図2を参照しながら説明する。なお、図2に示す処理はフィルタの再生中は繰り返し実行される。
【0025】
図2に表す空気量確保制御処理において、まず、現在の運転状態がアイドル状態であるか否かを判別する〔ステップS10〕。もし、現在の運転状態がアイドル状態でなければ(ステップS10でNO)、処理を終える。
一方、現在の運転状態がアイドル状態であれば(ステップS10でYES)、現時点におけるエンジン回転数Neを回転数センサ82で検出し〔ステップS12〕、更に、大気圧Piを気圧センサ22で検出する〔ステップS14〕。
【0026】
そして、スロットル弁42を全開にし、且つ、EGR弁(流量調整弁)50,58を全閉にしたときにの、前記検出したエンジン回転数Neと前記検出した大気圧Piに基づく吸入空気量Vmを予め備えてあるマップから読み取る。
そして、減速OTの発生を防止するために必要な吸入空気量である基準空気量V0を前記吸入空気量Vmと比較し、前記吸入空気量Vmが基準空気量V0より多いとき(ステップS16でYES)には、スロットル弁42と流量調整弁50,58で調整して、基準空気量V0以上の吸入空気量を確保した後に、この処理を終了する。
【0027】
しかし、前記吸入空気量Vmが基準空気量V0以下であるとき(ステップS16でNO)には、スロットル弁42を全開にし、且つ、流量調整弁50,58を全閉にし〔ステップS18〕、燃料噴射量を増加させるアイドルアップを行い〔ステップS20〕、処理を終える。
尚、このステップS20において、アイドルアップで増加させる燃料噴射量(エンジン回転数)は、予め実験等で求められている大気圧Pi−アイドルアップ量(噴射量)のマップから求める。
【0028】
上述した実施の形態によれば、検出した大気圧Piとエンジン回転数Neに基づく吸入空気量Vmをマップで求め、この吸入空気量Vmが基準空気量V0を下回ったときは、スロットル弁42を全開にし、且つ、EGR弁(流量調整弁)50,58を全閉にして、燃料噴射量を増量するようにECU98を制御する。
この制御によって、新たな吸入空気量は最大となり、燃料噴射量が増えるので、エンジン回転数が上がると共に、コンプレッサ16a,26aによって実際に吸入する空気量も増える。よって高地低圧状態であっても、フィルタの昇温制御中に必ず基準空気量V0以上の吸入空気量を確保でき、減速OTの発生を防止できる。
【0029】
尚、この実施の形態では、図1に示すように8気筒のディーゼルエンジン80に対して適用したが、他には直列4気筒や6気筒等のような多気筒のエンジンにも同様に適用することができ、同様の作用効果を得ることができる。
この場合、気筒数が増すほど必要なエンジン回転数が低下してゆくので、作用効果も高まってゆく。
又、図2のステップS16において、変数は大気圧Piだけであるので(アイドル回転数は固定であると考えた場合)、ステップS16の式を簡略化し、大気圧Piと基準圧力を比べる式に変更してもよい。
【0030】
又、前記では、本発明を実施する一形態について説明したが、本願の発明は、この形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することができる。
例えば、前記検出した大気圧Piとエンジン回転数Neは、1ポイントではなく、所定時間の平均値を採用することであってもよい。この平均値を採用する場合には、図2に示すステップS12〜ステップS14において、大気圧Piとエンジン回転数Neを予め決められた時間内において、複数回、検出し、各々の検出値を加算した後に、その加算値を検出回数で割ることによって平均値を求める。
そして、この平均値を採用して、ステップS16において、吸入空気量Vmと基準空気量V0を求めて比較するものである。このように、大気圧Piとエンジン回転数Neの平均値を採用して処理をすることによって、大気圧Piとエンジン回転数Neの変動が激しいときであっても、円滑な制御ができる。
【0031】
又、図2のステップS16において、変数は大気圧Piだけであるので(アイドル回転数は固定であると考えた場合)、ステップS16の式を簡略化し、大気圧Piと基準圧力を比べる式に変更してもよい。
【0032】
次に、図3は、前記図2におけるステップS18において、スロットル弁42のみを全開に制御する方式である〔ステップS17〕であり、他のステップは同じであるので、説明を略す。
この実施の形態において、スロットル弁42のみを全開に制御するのは、例えば、ステップS16における判断において、僅かな量の差によって、EGR弁(流量調整弁)50,58も全閉にするのは、急激な変更になり、好ましくない。
そこで、先ず、新たな吸入空気を確保するために、スロットル弁42のみを全開に制御して、次回のステップS16における判断によって制御を行う。
従って、この制御方式を採用することによって、例えば、大気圧Piの僅かな変動に対処できる。
尚、この図3に示す実施の形態と図2に示す実施の形態の双方を採用して、制御してもよい。即ち、先ず、ステップS16における「NO」の判断に基づいて、先ず、スロットル弁42のみを全開にし、その後、所定時間が経過しても、ステップS16における判断が「NO」であるなら、EGR弁(流量調整弁)50,58を全閉にして、燃料噴射量を増量する。
【0033】
次に、図2のステップS18において、スロットル弁42を全開にし、且つ、流量調整弁50,58を全閉にするに当たって、検出した大気圧Piとエンジン回転数Neの変動を考慮して、例えば、図4に示すように、所定時間をかけて徐々に変更するように構成するものであってもよい。
この図4に示す制御フローは、前記図2における同じ作用のステップには同じ符号を付して説明を略す。尚、この図4は、図3に示す制御フローのステップS17のスロットル弁42にも適用できることは言うまでもない。
【0034】
ステップS16において、吸入空気量Vmが基準空気量V0を下回ったとき(ステップS16でNO)には、スロットル弁42の現在の開度にα(0〜1.0)だけ開度を増加する一方、流量調整弁50,58の現在の開度に、β(0〜1.0)だけ開度を減少する〔ステップS31〕。
そして、Δ時間、経過した後に〔ステップS32〕、スロットル弁42が全開、流量調整弁50,58が全閉であるか否かを判断し〔ステップS33〕、スロットル弁42が全開ではなく、且つ、流量調整弁50,58が全閉でないとき(ステップS33でNO)には、前記ステップS12に戻る。このステップS12に戻ることによって、再度、大気圧Piとエンジン回転数Neを検出して、ステップS16の条件を満たすか否かを判断する。
【0035】
この前記操作は、Δ時間、経過毎に、ステップS16の条件を満たすか否かを判断するので、検出した大気圧Piとエンジン回転数Neの変動に対処できる。即ち、検出した大気圧Piとエンジン回転数Neが、一時的に、ステップS16の条件を満たさないとしても、次のΔ時間後に、満たす場合(ステップS16でYES)には、燃料噴射量を増加させず、通常状態で燃料噴射を行う。
一方、前記ステップS33でYESのときには、燃料噴射量を増加させて、この処理を終了する〔ステップS33〕。
【0036】
以上のように、Δ時間毎に、大気圧Piとエンジン回転数Neを検出し、ステップS16を判断することによって、即座に、スロットル弁を全開に、EGR弁を全閉にすることなく、円滑な運転が可能になる。
【0037】
なお、前記図2〜4に示す実施の形態では、スロットル弁42とEGR弁(流量調整弁)50,58を備えているが、どちらか一方しか備えていない内燃機関や、どちらも備えていない内燃機関であっても本願の発明を実施することは可能である。この場合、例えば、スロットル弁とEGR弁の双方を備えていない内燃機関における基準空気量V0は、エンジン回転数Neと大気圧Piから求めることになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】エンジンシステムの一例を表す説明図である。
【図2】空気量確保制御処理の手続き例を表すフローチャートである。
【図3】空気量確保制御処理の手続きの他の例を表すフローチャートである。
【図4】空気量確保制御処理の手続きの他の例を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
12,28 フィルタ(排気浄化手段)
18 エアフローメータ
22 気圧センサ(大気圧検出手段)
36,46 吸気管
34,48 排気管
42 スロットル弁
50,58 流量調整弁(EGR弁)
72 燃料噴射ノズル(燃料噴射弁)
80 ディーゼルエンジン
82 回転数センサ(回転数検出手段)
98 ECU(電子制御ユニット;燃料噴射量制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの排気通路に設けられた排気浄化手段と、大気圧を検出する大気圧検出手段と、気筒内に設けられた燃料噴射弁から噴射される燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御手段と、ディーゼルエンジンの回転数を検出する回転数検出手段とを備えたディーゼルエンジンの排気浄化装置であって、
前記排気浄化手段の再生時に、前記大気圧検出手段によって検出された大気圧と前記回転数検出手段によって検出されたエンジン回転数とに基づく吸入空気量が基準空気量を下回ると、燃料噴射量を増量するように前記燃料噴射量制御手段を制御することを特徴とするディーゼルエンジンの排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載のディーゼルエンジンの排気浄化装置であって、
前記排気浄化手段の再生時に、前記大気圧検出手段によって検出された大気圧と前記回転数検出手段によって検出されたエンジン回転数とに基づく吸入空気量が、スロットル弁を全開にしたときに算出される基準空気量を下回ると、燃料噴射量を増量するように前記燃料噴射量制御手段を制御することを特徴とするディーゼルエンジンの排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のディーゼルエンジンの排気浄化装置であって、
前記排気浄化手段の再生時に、前記大気圧検出手段によって検出された大気圧と前記回転数検出手段によって検出されたエンジン回転数とに基づく吸入空気量が、スロットル弁を全開にし、且つ、EGR弁を全閉にしたときに算出される基準空気量を下回ると、燃料噴射量を増量するように前記燃料噴射量制御手段を制御することを特徴とするディーゼルエンジンの排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のディーゼルエンジンの排気浄化装置であって、
多気筒のディーゼルエンジンに対して燃料噴射量を増量するように燃料噴射量制御手段を制御することを特徴とするディーゼルエンジンの排気浄化装置。
【請求項5】
請求項1に記載のディーゼルエンジンの排気浄化装置であって、
前記大気圧検出手段によって検出された大気圧と前記回転数検出手段によって検出されたエンジン回転数を所定時間に基づく平均値とすることを特徴とするディーゼルエンジンの排気浄化装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載のディーゼルエンジンの排気浄化装置であって、
吸入空気量が所定値を下回るか否かをΔ時間毎に判断することを特徴とするディーゼルエンジンの排気浄化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−51586(P2007−51586A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237644(P2005−237644)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】