説明

デジタルデータの送信装置,受信装置及び送受信システム

【課題】デジタルデータ送受信システムでデジタルデータを送受信する際に、デジタルデータの遅延時間を容易に確認できるようにする。
【解決手段】送信装置1は、送信装置1内部のデジタル処理によるデジタルデータの遅延時間を記憶しており、この遅延時間を示す遅延情報を送信する。受信装置2は、送信装置1から送信された遅延情報を取得する。また、受信装置2も、受信装置2内部のデジタル処理によるデジタルデータの遅延時間を記憶しており、送信装置1から送信された遅延情報が示す遅延時間と、受信装置2で記憶した遅延時間とを合計した遅延時間を示す遅延情報を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばデジタル音声信号のようなデジタルデータを送受信する送信装置,受信装置及び送受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、映像音響作品の制作には、デジタルワイヤレスマイクロホン、デジタルオーディオミキサー、デジタルビデオカメラなどの多くのデジタル機器が用いられる。そして、これらデジタル機器内部では、音声や映像の収録や編集を行うためにデジタル処理が行われている。
【0003】
このデジタル処理には、従来のアナログ機器内部で行われるアナログ処理と同様なリアルタイム処理に加えて、デジタルフィルタリング,デジタル圧縮など、遅延時間を伴う処理が存在する。
【0004】
例えば、ENG取材やスタジオ内の収録で、複数の音声(音楽であれば、歌手の歌声や、ギターの音や、ベースの音など)をそれぞれ別々のデジタルワイヤレスマイクロホンを用いてデジタルオーディオミキサーやデジタルビデオカメラに入力させる場合、各音声は、それぞれを伝送するデジタルワイヤレスマイクロホンの内部の回路の仕様やファームウェアの相違によって、デジタルミキサーやデジタルビデオカメラに入力されるまでの遅延時間が異なることになる。
【0005】
そのため、それらの音声(さらには、それらの音声とデジタルビデオカメラで撮影した映像)をひとつの作品としてまとめる前には、デジタルミキサーやデジタルビデオカメラに入力した各音声の遅延時間を調整することが必要となる。
【0006】
ところが、従来は、個々のデジタルワイヤレスマイクロホンでの遅延時間がわかっていないので、収録担当者や編集担当者が、各音声の遅延時間の測定作業を行い、その上で各音声の遅延時間を調整していた。そのため、遅延時間の調整に手間や時間がかかっていた。
【0007】
また、従来から、デジタル映像データに属性情報(撮影日時、シーン番号など)や撮影条件の情報(使用したカメラ、シャッタースピードなど)をメタデータとして付加して送信することが行われており、また受信したメタデータを映像にスーパーインポーズして表示させる技術も提案されている(特許文献1参照)。しかし、デジタルデータの遅延時間の調整に役立つ情報を送受信したり表示するような技術は従来提案されていなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2004−312281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の点に鑑み、例えばデジタルワイヤレスマイクロホンのようなデジタルデータ送受信システムでデジタルデータを送受信する際に、デジタルデータの遅延時間を容易に確認できるようにすることを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、デジタルデータを送信する送信装置において、
前記送信装置内部のデジタル処理によるデジタルデータの遅延時間を記憶した記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された遅延時間を示す遅延情報を送信する遅延情報送信手段と
を備えたことを特徴とする。
【0011】
この送信装置では、送信装置内部のデジタル処理によるデジタルデータの遅延時間が記憶されており、この記憶された遅延時間を示す遅延情報が送信装置から送信される。
【0012】
したがって、この送信装置から送信されたデジタルデータを受信する受信装置側では、この遅延情報を取得すれば、送信装置でのデジタルデータの遅延時間を容易に確認することができる。
【0013】
次に、本発明は、送信装置から送信されたデジタルデータを受信する受信装置において、
前記送信装置から送信された、デジタルデータの遅延時間を示す遅延情報を取得する遅延情報取得手段と、
前記受信装置内部のデジタル処理によるデジタルデータの遅延時間を記憶した記憶手段と、
前記遅延情報取得手段で取得された前記遅延情報が示す遅延時間と、前記記憶手段に記憶された遅延時間とを合計した遅延時間を示す遅延情報を作成する遅延情報作成手段と
を備えたことを特徴とする。
【0014】
この受信装置では、送信装置から送信された、デジタルデータの遅延時間を示す遅延情報が取得される。また、受信装置にも、受信装置内部のデジタル処理によるデジタルデータの遅延時間が記憶されており、受信装置に記憶された遅延時間と、送信装置から送信された遅延情報が示す遅延時間とを合計した遅延時間を示す遅延情報が作成される。
【0015】
したがって、この受信装置で作成された遅延情報を用いれば、送信装置及び受信装置でのデジタルデータの合計の遅延時間を容易に確認することができる。
【0016】
次に、本発明は、デジタルデータを送信する送信装置と、
前記送信装置から送信されたデジタルデータを受信する受信装置と
から成るデジタルデータ送受信システムにおいて、
前記送信装置は、
前記送信装置内部のデジタル処理によるデジタルデータの遅延時間を記憶した記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された遅延時間を示す遅延情報を送信する遅延情報送信手段と
を備え、
前記受信装置は、
前記受信装置内部のデジタル処理によるデジタルデータの遅延時間を記憶した記憶手段と、
前記送信装置から送信された前記遅延情報を取得する遅延情報取得手段と、
前記遅延情報取得手段で取得された前記遅延情報が示す遅延時間と、前記記憶手段に記憶された遅延時間とを合計した遅延時間を示す遅延情報を作成する遅延情報作成手段と
を備えたことを特徴とする。
【0017】
このデジタルデータ送受信システムは、前述の本発明に係る送信装置と受信装置とから成るものであり、受信装置で作成された遅延情報を用いれば、このデジタルデータ送受信システム全体でのデジタルデータの遅延時間を容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、デジタルデータ送受信システムでデジタルデータを送受信する際に、デジタルデータの遅延時間を容易に確認することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて具体的に説明する。なお、以下では、デジタルワイヤレスマイクロホンに本発明を適用した例について説明する。
【0020】
図1は、本発明を適用したデジタルワイヤレスマイクロホン(以下単にワイヤレスマイクロホンと呼ぶ)の外観例を示す図である。このうち、図1Aは、音声の送信側の装置であるワイヤレスマイクロホントランスミッター(以下トランスミッターと呼ぶ)1を示している。トランスミッター1の表面には、受信アンテナ1aや、マイク入力端子1bや、液晶ディスプレイから成る表示部1cが設けられている。トランスミッター1は、腰のベルト等に取り付けて、マイク入力端子1bにケーブルでマイクロホン(ピンマイク等)を接続するタイプのトランスミッターである。
【0021】
図1Bは、音声の受信側の装置であるワイヤレスマイクロホンレシーバー(以下レシーバーと呼ぶ)2を示している。レシーバー2の表面には、受信アンテナ2aや、液晶ディスプレイから成る表示部2bが設けられている。また、図には表れていないが、レシーバー2の表面には、デジタル音声出力端子や、モニター用の音声出力端子が設けられている。レシーバー2は、ポータブルタイプのレシーバーである。
【0022】
図2は、トランスミッター1の構成例を示すブロック図である。トランスミッター1には、マイク入力端子1b(図1A)に接続されたマイクロホン(図示略)からの入力音声信号を増幅するアンプ10と、アンプ10で増幅された音声信号をアナログ/デジタル変換するA/D変換器11とが設けられている。
【0023】
また、トランスミッター1には、A/D変換器11から出力されたデジタル音声信号のデータ量を圧縮するデジタル圧縮回路12と、デジタル圧縮回路12で圧縮されたデジタル音声信号をパケット化するパケット化回路13とが設けられている。パケット化回路13は、FPGAで構成されている。
【0024】
また、トランスミッター1には、パケット化回路13から出力されたパケット信号によって変調した電波を送信するデジタル変調回路14,UHF変調回路15及び送信アンテナ1a(図1A)とが設けられている。
【0025】
また、トランスミッター1には、トランスミッター1内部を制御するCPU16と、表示部1c(図1A)を構成している液晶モジュール17とが設けられている。
【0026】
A/D変換器11でのデジタル処理と、デジタル圧縮回路12でのデジタル処理と、パケット化回路13でのデジタル処理と、デジタル変調回路14でのデジタル処理とは、それぞれ遅延時間を伴う処理である。これらの回路での遅延時間の長さは、回路の仕様やファームウェアの相違によって変化するが、回路の仕様やファームウェアが同じ場合には一定である。
【0027】
CPU16内のメモリには、予め、A/D変換器11とデジタル圧縮回路12とパケット化回路13とデジタル変調回路14とでの総遅延時間(すなわち、トランスミッター1でのデジタル処理によるデジタル音声信号の遅延時間)が記憶されている。
【0028】
CPU16には、パケット化回路13を制御するプログラムとして、このメモリに記憶されている遅延時間を示す遅延情報を付加したパケット信号を生成させるプログラムが格納されている。図3は、この制御によるパケット化回路13での遅延情報の付加の様子を例示する図である。この例は、CPU16内のメモリに2.9msという遅延時間が記憶されている(例えば、A/D変換器11での遅延時間が0.5msであり、デジタル圧縮回路12での遅延時間が1.0msであり、パケット化回路13での遅延時間が1.0msであり、デジタル変調回路14での遅延時間が0.4msである)場合の例であり、2.9msを示す遅延情報が付加されている。
【0029】
また、CPU16には、液晶モジュール17を制御するプログラムとして、CPU16内のメモリに記憶されている遅延時間を表示させるプログラムが格納されている。図4は、この制御による表示部1c(図1A)での遅延時間の表示の様子を、図3と同じく2.9msという遅延時間が記憶されている場合を例にとって示す図である。
【0030】
図5は、レシーバー2の構成例を示すブロック図である。レシーバー2は、2つのトランスミッター1からの2チャンネルのデジタル音声信号を受信可能なタイプのレシーバーであり、受信アンテナ2a(図1B)に2系統の復調回路20,21が接続されている。
【0031】
また、レシーバー2には、復調回路20,21で復調されたパケット信号からそれぞれデジタル音声信号と前述の遅延情報とを抽出するアンパケット化回路22,23が設けられている。
【0032】
アンパケット化回路22,23で抽出されたデジタル音声信号は、デジタル伸長回路24,25でそれぞれ伸長された後、遅延時間を設定可能な遅延回路26,27に送られる。
【0033】
遅延回路26,27から出力されたデジタル音声信号は、サンプリングレートコンバータ28,29(レシーバー2内部のリファレンスクロック発生回路30からのリファレンスクロックに基づいてデジタル音声信号のサンプリングレートを変換する回路)を経て、パケット化回路31,32にそれぞれ送られる。アンパケット化回路22,23からパケット化回路31,32までの回路は、FPGA33上に構成されている。
【0034】
また、サンプリングレートコンバータ28,29から出力されたデジタル音声信号は、D/A変換器34,35でそれぞれアナログ音声信号に変換され、ミキシング回路36で合成(加算処理)される。ミキシング回路36で合成されたアナログ音声信号は、モニター用の音声出力端子37から出力される。
【0035】
アンパケット化回路22,23で抽出された遅延情報は、レシーバー2内部を制御するCPU38に送られる。
【0036】
CPU38には、アンパケット化回路22からの遅延情報が示す遅延時間とアンパケット化回路23からの遅延情報が示す遅延時間とを比較し、両者に差がある場合には、遅延回路26,27のうち、遅延時間が短いほうの遅延情報を送ったアンパケット化回路に対応する遅延回路の遅延時間をその差分の長さに調整する(残りの一方の遅延回路の遅延時間はゼロに設定する)プログラムが格納されている。
【0037】
このプログラムでの処理の具体例を挙げると、アンパケット化回路22からの遅延情報が示す遅延時間が2.9msであり、アンパケット化回路23からの遅延情報が示す遅延時間が2.3msであるとすると、アンパケット化回路23に対応するほうの遅延回路27の遅延時間を0.6msに設定する。
【0038】
この処理により、ミキシング回路36では、2チャンネルのアナログ音声信号が、遅延時間を揃えた状態で合成されるようになる。図6,図7は、2チャンネルの音声信号の加算処理の例として、1kHzの音声信号と2.5kHzの音声信号との加算処理の様子を示す図である。
【0039】
このうち、図6には、1kHz,2.5kHzのいずれの音声信号も遅延していない状態での加算処理の様子を図6Aとして示し、2.5kHzの音声信号だけが0.1ms遅延した状態での加算処理の様子を図6Bとして示している。一方の音声信号だけが遅延していると、いずれの音声信号も遅延していない場合とは異なる加算処理結果が得られ、音声を正確に合成できないことがわかる。
【0040】
他方、図7には、1kHz,2.5kHzのいずれの音声信号も遅延していない状態での加算処理の様子を図7Aとして示し、1kHz,2.5kHzの音声信号の両方が0.1ms遅延した状態での加算処理の様子を図7Bとして示している。両方の音声信号の遅延時間を揃えることにより、いずれの音声信号も遅延していない場合と同じ加算処理結果が得られ、音声を正確に合成できることがわかる。
【0041】
したがって、CPU38による遅延回路26,27の遅延時間の設定により、ミキシング回路36では2つのアナログ音声信号が正確に合成されるので、モニター用の音声出力端子37に接続したイヤホンなどで正確な合成音声をモニタリングすることができる。
【0042】
復調回路20,21でのデジタル処理と、アンパケット化回路22,23でのデジタル処理と、デジタル伸長回路24,25でのデジタル処理と、サンプリングレートコンバータ28,29でのデジタル処理と、パケット化回路31,32でのデジタル処理とは、それぞれ遅延時間を伴う処理である。これらの回路での遅延時間の長さは、回路の仕様やファームウェアの相違によって変化するが、回路の仕様やファームウェアが同じ場合には一定である。
【0043】
CPU38内のメモリには、予め、復調回路20,21とアンパケット化回路22,23とデジタル伸長回路24,25とサンプリングレートコンバータ28,29とパケット化回路31,32とでの総遅延時間(すなわち、レシーバー2でのデジタル処理によるデジタル音声信号の遅延時間)が記憶されている。
【0044】
CPU38には、パケット化回路31,32を制御するプログラムとして、このメモリに記憶された遅延時間と、アンパケット化回路22,23で抽出された遅延情報が示す遅延時間のうちの長いほうの遅延時間とを合計した遅延時間を示す遅延情報を付加したパケット信号を生成させるプログラムが格納されている。
【0045】
図8は、この制御によるパケット化回路31,32での遅延情報の付加の様子を例示する図である。この例は、前述の例のようにアンパケット化回路22,23からの遅延情報が示す遅延時間がそれぞれ2.9ms,2.3msであり、且つ、CPU16内のメモリに3.8msという遅延時間が記憶されている(例えば、復調回路20,21での遅延時間が0.3msであり、アンパケット化回路22,23での遅延時間が1.0msであり、デジタル伸長回路24,25での遅延時間が0.8msであり、サンプリングレートコンバータ28,29での遅延時間が0.7msであり、パケット化回路31,32での遅延時間が1.0msである)場合の例であり、2.9msと3.8msとの合計である6.7msを示す遅延情報が付加されている。
【0046】
また、CPU38には、表示部2b(図1B)を構成している液晶モジュール39を制御するプログラムとして、CPU38内のメモリに記憶された遅延時間と、アンパケット化回路22,23で抽出された遅延情報が示す遅延時間のうちの長いほうの遅延時間とを合計した遅延時間を表示させるプログラムが格納されている。図9は、この制御による表示部2bでの遅延時間の表示の様子を、図8と同じく合計の遅延時間が6.7msである場合を例にとって示す図である。
【0047】
図5に示すように、パケット化回路31,32から出力されたパケット信号は、それぞれデジタル音声出力端子40,41から出力される。
【0048】
このワイヤレスマイクロホンでは、トランスミッター1に、トランスミッター1内部のデジタル処理によるデジタル音声信号の遅延時間が記憶されており、この記憶された遅延時間を示す遅延情報が、デジタル音声信号に付加されて送信される。
【0049】
レシーバー2では、トランスミッター1から送信されたデジタル音声信号からこの遅延情報が抽出されて、トランスミッター1でのデータの遅延時間が確認される。
【0050】
また、レシーバー2にも、レシーバー2内部のデジタル処理によるデジタル音声信号の遅延時間が記憶されており、レシーバー2に記憶された遅延時間と、トランスミッター1から送信された遅延情報が示す遅延時間とを合計した遅延時間を示す遅延情報が作成される。
【0051】
そして、この合計の遅延時間を示す遅延情報が、デジタル音声信号に付加されてレシーバー2から出力される。
【0052】
したがって、このレシーバー2からデジタル音声信号が入力されるデジタル機器では、入力したデジタル音声信号からこの遅延情報を抽出する処理を行えば、ワイヤレスマイクロホンでのデジタル音声信号の総遅延時間を容易に確認することができる。
【0053】
また、図9に例示したようにレシーバー2の表示部2bにこの総遅延時間が表示されるので、この表示部2bの表示を見ることによってもワイヤレスマイクロホンでのデジタル音声信号の総遅延時間を容易に確認することができる。
【0054】
さらに、レシーバー2内では2チャンネルのデジタル音声信号の遅延時間を揃える処理が行われるので、レシーバー2からデジタル音声信号が入力されるデジタル機器では、1個のレシーバー2から入力される2チャンネルのデジタル音声信号の遅延時間を調整する必要はなくなり、複数個のレシーバー2からデジタル音声信号を入力する場合にのみ各レシーバー2からのデジタル音声信号の遅延時間を調整すれば足りるようになる。
【0055】
また、図4に例示したようにトランスミッター1の表示部1cにもトランスミッター1での遅延時間が表示されるので、2個のトランスミッター1から送信されたデジタル音声信号を、レシーバー2以外の2チャンネル対応のレシーバーで受信するような場合にも、各トランスミッター1の表示部1cの表示を見ることによって各チャンネルのデジタル音声信号の遅延時間を容易に確認することができる。
【0056】
図10,図11は、このワイヤレスマイクロホンを用いたシステムを例示する図である。このうち、図10は、2個のトランスミッター1と1個のレシーバー2とを1組として、2組のワイヤレスマイクロホンを用いて4チャンネルの音声をデジタルオーディオミキサー50に入力させ、デジタルオーディオミキサー50でミキシングした音声をデジタルオーディオレコーダ51に収録するようにしたシステムである。
【0057】
各トランスミッター1,各レシーバー2は、それぞれ図2,図5に示した構成のものであれば、互いに回路の仕様やファームウェアが相違していてもかまわない(各々の仕様やファームウェアでの遅延時間が、各トランスミッター1のCPU16内のメモリや各レシーバー2のCPU38内のメモリに記憶されている。)
【0058】
例えば音楽の収録であれば、各トランスミッター1は、歌手や各楽器の演奏者が1個ずつ使用する。
【0059】
デジタルオーディオミキサー50に、各レシーバー2からの入力デジタル音声信号に付加されている遅延情報を抽出する機能や、この遅延情報に基づいて各レシーバー2からの入力デジタル音声信号の遅延時間を調整する機能(図5の遅延回路26,27のような遅延時間を設定可能な遅延回路を用いて遅延時間を揃える機能)を搭載すれば、自動的に各音声の遅延時間を調整して、それらの音声を正確に合成することができる。
【0060】
また、デジタルオーディオミキサー50がこうした機能を有しない場合でも、デジタルオーディオミキサー50を操作する収録担当者は、各レシーバー2での遅延時間の表示を見ることにより、各音声の遅延時間を容易に確認することができる。したがって、従来のように各音声の遅延時間の測定作業を行うことなく、各音声の遅延時間を調整することができる。
【0061】
図11は、2個のトランスミッター1と1個のレシーバー2とから成る1組のワイヤレスマイクロホンを用い、レコーダー(VTRあるいは光ディスク装置)一体型のデジタルビデオカメラ52のスロットに装着したレシーバー2からデジタルビデオカメラ52に入力させた音声を、デジタルビデオカメラ52で撮影される映像とともにデジタルビデオカメラ52に収録するようにしたシステムである。
【0062】
各トランスミッター1は、それぞれ図2,図5に示した構成のものであれば、互いに回路の仕様やファームウェアが相違していてもかまわない(各々の仕様やファームウェアでの遅延時間が、各トランスミッター1のCPU16内のメモリに記憶されている。)
【0063】
例えば対談番組の収録であれば、各トランスミッター1は、対談する2人の人物が1個ずつ使用する。
【0064】
レシーバー2からビデオカメラ52に入力される2チャンネルのデジタル音声信号は遅延時間が揃っているので、デジタルビデオカメラ52ではこの2チャンネルのデジタル音声信号の遅延時間を調整する必要はない。
【0065】
また、デジタルビデオカメラ52に、レシーバー2からの入力デジタル音声信号に付加されている遅延情報を抽出する機能や、この遅延情報とデジタルビデオカメラ52内部でのデジタル処理によるデジタル映像信号の遅延時間の情報とに基づいて音声と映像との遅延時間を調整する機能を搭載すれば、自動的に、音声と映像とを遅延時間を調整して収録することも可能になる。
【0066】
なお、図2,図5に示したトランスミッター1,レシーバー2の構成例では、トランスミッター1から、遅延情報をデジタル音声信号に付加させて送信している。しかし、別の例として、トランスミッター1から、デジタル音声信号とは別の周波数帯の電波によって遅延情報を送信するようにしてもよい。図12,図13は、そのようにした構成例を示すブロック図であり、図2,図5と共通する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0067】
図12に示すように、トランスミッター1には、デジタル変調回路14によって変調されて送信される電波を主搬送波として、この主搬送波とは別の周波数帯(例えば主搬送波が800MHzである場合に2.4GHz)の副搬送波を送信するためのデジタル変調回路18及びUHF変調回路19が設けられている。
【0068】
CPU16は、CPU16内のメモリに記憶されている遅延時間を示す遅延情報を、パケット化回路13でデジタル音声信号に付加させる代わりに、デジタル変調回路18に送ることによって送信アンテナ1aから副搬送波として送信させる。
【0069】
図13に示すように、レシーバー2には、図5に示した復調回路20,21とは別に、2つのトランスミッター1からのこの副搬送波を復調する復調回路42,43が設けられている。CPU38には、この復調回路42,43で復調された遅延情報が送られる。
【0070】
また、以上の例では、2つのトランスミッター1からの2チャンネルのデジタル音声信号を受信可能なタイプのレシーバー1に本発明を適用している。しかし、本発明は、1つのトランスミッター1からのデジタル音声信号のみを受信可能なタイプのレシーバーや、3つ以上のトランスミッター1からのデジタル音声信号を受信可能なタイプのレシーバーにも適用してよい。
【0071】
1つのトランスミッター1からのデジタル音声信号のみを受信可能なタイプのレシーバーに適用する場合には、図5に示した遅延回路26,27のような遅延回路は必要なく、そのトランスミッター1から送信された遅延情報が示す遅延時間と、CPU38内のメモリに記憶された遅延時間とをそのまま合計すればよい。
【0072】
3つ以上のトランスミッター1からのデジタル音声信号を受信可能なタイプのレシーバーに適用する場合には、図5に示した遅延回路26,27のような遅延回路を用いて、遅延時間が最長のデジタル音声信号以外のデジタル音声信号を、この最長の遅延時間に一致させるように遅延させるとともに、各トランスミッター1から送信された遅延情報が示す遅延時間のうちの最長の遅延時間と、CPU38内のメモリに記憶された遅延時間とを合計すればよい。
【0073】
また、図1に示したトランスミッター1,レシーバー2の外観はあくまで一例であり、本発明は、図1に示した以外の適宜の形状やサイズのトランスミッター,レシーバー(例えば、マイクロホンとトランスミッターとが一体となったハンドマイクタイプのトランスミッターや、据置き型のレシーバー)にも適用してよい。
【0074】
また、以上の例ではワイヤレスマイクロホンに本発明を適用している。しかし、本発明を、ワイヤードでデジタル音声信号を送受信するシステムに適用して、遅延情報を付加したデジタル音声信号を1本のケーブルで送信したり、あるいは遅延情報をデジタル音声信号とは別のケーブルで送信するようにしてもよい。
【0075】
また、本発明は、デジタル音声信号以外のデジタルデータの送信装置や受信装置や送受信システムにも適用してよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明を適用したワイヤレスマイクロホンの外観例を示す図である。
【図2】図1のトランスミッターの構成例を示すブロック図である。
【図3】図3のパケット化回路での遅延情報の付加の様子を例示する図である。
【図4】トランスミッターの表示部での遅延時間の表示の様子を例示する図である。
【図5】図1のレシーバーの構成例を示すブロック図である。
【図6】2つの音声信号の加算処理の様子を例示する図である。
【図7】2つの音声信号の加算処理の様子を例示する図である。
【図8】図5のパケット化回路での遅延情報の付加の様子を例示する図である。
【図9】レシーバーの表示部での遅延時間の表示の様子を例示する図である。
【図10】本発明を適用したワイヤレスマイクロホンを用いたシステムを例示する図である。
【図11】本発明を適用したワイヤレスマイクロホンを用いたシステムを例示する図である。
【図12】図1のトランスミッターの別の構成例を示すブロック図である。
【図13】図1のレシーバーの別の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0077】
1 ワイヤレスマイクロホントランスミッター、 1c 表示部、 2 ワイヤレスマイクロホンレシーバー、 2b 表示部、 11 A/D変換器、 12 デジタル圧縮回路、 13 パケット化回路、 14 デジタル変調回路、 16 CPU、 18 デジタル変調回路、 20,21 復調回路、 22,23 アンパケット化回路、 24,25 デジタル伸長回路、 26,27 遅延回路、 31,32 パケット化回路、 36 ミキシング回路、 38 CPU、 42,43 復調回路、 50 デジタルオーディオミキサー、 52 デジタルビデオカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルデータを送信する送信装置において、
前記送信装置内部のデジタル処理によるデジタルデータの遅延時間を記憶した記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された遅延時間を示す遅延情報を送信する遅延情報送信手段と
を備えたことを特徴とする送信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送信装置において、
表示手段と、
前記記憶手段に記憶された遅延時間を前記表示手段に表示させる制御手段と
をさらに備えたことを特徴とする送信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の送信装置において、
前記遅延情報送信手段は、前記送信装置から送信するデジタルデータに前記遅延情報を付加する付加回路から成ることを特徴とする送信装置。
【請求項4】
請求項1に記載の送信装置において、
マイクロホンと、
前記マイクロホンからの音声信号をアナログ/デジタル変換するアナログ/デジタル変換器と、
前記アナログ/デジタル変換器からのデジタル音声信号によって変調した電波を送信する変調・送信手段と
を有する音声送信装置であることを特徴とする送信装置。
【請求項5】
送信装置から送信されたデジタルデータを受信する受信装置において、
前記受信装置内部のデジタル処理によるデジタルデータの遅延時間を記憶した記憶手段と、
前記送信装置から送信された、デジタルデータの遅延時間を示す遅延情報を取得する遅延情報取得手段と、
前記記憶手段に記憶された遅延時間と、前記遅延情報取得手段で取得された前記遅延情報が示す遅延時間とを合計した遅延時間を示す遅延情報を作成する遅延情報作成手段と
を備えたことを特徴とする受信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の受信装置において、
複数の送信装置から送信されたデジタルデータを受信し、
前記遅延情報取得手段は、前記複数の送信装置から送信された前記遅延情報をそれぞれ取得し、
前記遅延情報取得手段で取得された前記遅延情報に基づき、前記複数の送信装置から受信したデジタルデータのうち遅延時間が最長のデジタルデータ以外のデジタルデータを、該最長の遅延時間に一致させるように遅延させる遅延手段をさらに備え、
前記遅延情報作成手段は、前記記憶手段に記憶された遅延時間と、前記遅延情報取得手段で取得された前記遅延情報が示す遅延時間のうちの最長の遅延時間とを合計する
ことを特徴とする受信装置。
【請求項7】
請求項5に記載の受信装置において、
表示手段と、
前記遅延情報作成手段によって合計された遅延時間を前記表示手段に表示させる処理手段と
をさらに備えたことを特徴とする受信装置。
【請求項8】
請求項5に記載の受信装置において、
前記送信装置から受信したデジタルデータと、前記遅延情報作成手段によって作成された前記遅延情報とを出力する出力手段をさらに備えたことを特徴とする受信装置。
【請求項9】
請求項5に記載の受信装置において、
前記遅延情報取得手段は、前記送信装置から受信したデジタルデータから、該デジタルデータに付加されている前記遅延情報を抽出する抽出回路から成ることを特徴とするデジタルデータ送受信システム。
【請求項10】
請求項5に記載の受信装置において、
ワイヤレス音声送信装置から送信された電波を受信してデジタル音声信号を復調する受信・復調手段と、
前記受信・復調手段によって復調されたデジタル音声信号を出力する音声出力端子と
を有するワイヤレス音声受信装置であることを特徴とする受信装置。
【請求項11】
デジタルデータを送信する送信装置と、
前記送信装置から送信されたデジタルデータを受信する受信装置と
から成るデジタルデータ送受信システムにおいて、
前記送信装置は、
前記送信装置内部のデジタル処理によるデジタルデータの遅延時間を記憶した記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された遅延時間を示す遅延情報を送信する遅延情報送信手段と
を備え、
前記受信装置は、
前記受信装置内部のデジタル処理によるデジタルデータの遅延時間を記憶した記憶手段と、
前記送信装置から送信された前記遅延情報を取得する遅延情報取得手段と、
前記記憶手段に記憶された遅延時間と、前記遅延情報取得手段で取得された前記遅延情報が示す遅延時間とを合計した遅延時間を示す遅延情報を作成する遅延情報作成手段と
を備えたことを特徴とするデジタルデータ送受信システム。
【請求項12】
請求項11に記載のデジタルデータ送受信システムにおいて、
前記受信装置は、複数の前記送信装置から送信されたデジタルデータを受信し、
前記受信装置の前記遅延情報取得手段は、前記複数の前記送信装置から送信された前記遅延情報をそれぞれ取得し、
前記受信装置は、前記遅延情報取得手段で取得された前記遅延情報に基づき、前記複数の前記送信装置から受信したデジタルデータのうち遅延時間が最長のデジタルデータ以外のデジタルデータを、該最長の遅延時間に一致させるように遅延させる遅延手段をさらに備え、
前記受信装置の前記遅延情報作成手段は、前記記憶手段に記憶された遅延時間と、前記遅延情報取得手段で取得された前記遅延情報が示す遅延時間のうちの最長の遅延時間とを合計する
ことを特徴とするデジタルデータ送受信システム。
【請求項13】
請求項11に記載のデジタルデータ送受信システムにおいて、
前記送信装置は、
表示手段と、
前記記憶手段に記憶された遅延時間を前記表示手段に表示させる制御手段と
をさらに備え、
前記受信装置は、
表示手段と、
前記遅延情報作成手段によって合計された遅延時間を前記表示手段に表示させる処理手段と
をさらに備えたことを特徴とするデジタルデータ送受信システム。
【請求項14】
請求項11に記載のデジタルデータ送受信システムにおいて、
前記受信装置は、
前記送信装置から受信したデジタルデータと、前記遅延情報作成手段によって作成された前記遅延情報とを出力する出力手段
をさらに備えたことを特徴とするデジタルデータ送受信システム。
【請求項15】
請求項11に記載のデジタルデータ送受信システムにおいて、
前記送信装置の前記遅延情報送信手段は、前記送信装置から送信するデジタルデータに前記遅延情報を付加する付加回路から成り、
前記受信装置の前記遅延情報取得手段は、前記送信装置から受信したデジタルデータから前記遅延情報を抽出する抽出回路から成ることを特徴とするデジタルデータ送受信システム。
【請求項16】
請求項11に記載のデジタルデータ送受信システムにおいて、
前記送信装置は、
マイクロホンと、
前記マイクロホンからの音声信号をアナログ/デジタル変換するアナログ/デジタル変換器と、
前記アナログ/デジタル変換器からのデジタル音声信号によって変調した電波を送信する変調・送信手段と
を有するワイヤレス音声送信装置であり、
前記受信装置は、
前記ワイヤレス音声送信装置から送信された電波を受信してデジタル音声信号を復調する受信・復調手段と、
前記受信・復調手段によって復調されたデジタル音声信号を出力する音声出力端子と
を有するワイヤレス音声受信装置であることを特徴とするデジタルデータ送受信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−258837(P2008−258837A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97595(P2007−97595)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】